〔疑問点を紐解く〕
インボイス制度Q&A
【第18回】
「商品を返品した場合の適格返還請求書の取扱い」
税理士 石川 幸恵
【Q】
商品の返品については、買い手が返品伝票を記入して商品と一緒に返送します。この返品伝票を適格返還請求書として扱うことはできますか。
〔ポイント〕
(1) 適格請求書発行事業者には、課税事業者に売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されています。
(2) 買い手が作成する返品伝票に適格返還請求書として必要な事項が記載されていれば、売り手が改めて適格返還請求書を交付する必要はないと考えられます。
* * *
【A】
(1) 適格返還請求書の交付義務
適格請求書発行事業者には、課税事業者に売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されています(新消法57の4③、インボイスQ&A問28)
適格返還請求書も、適格請求書と同様に保存義務があります(新消令70の13①)。
(2) 適格返還請求書の記載事項
適格返還請求書の記載事項は次のとおりです(インボイスQ&A問58)
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(軽減税率対象資産の譲渡等である場合にはその旨)
④ 売上に係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率
(3) 買い手が作成する返品伝票
国税庁のインボイスQ&Aでは買い手が作成する返品伝票について触れられていませんが、販売奨励金の支払いに関し、
取引先(買い手)が作成する書類である奨励金請求書に販売奨励金に関する適格返還請求書として必要な事項が記載されていれば、貴社(売り手)と相手方(買い手)との間で、貴社の売上げに係る対価の返還等の内容について記載された書類が共有されていますので、貴社は、改めて、適格返還請求書を交付しなくても差し支えありません。
としています(インボイスQ&A問61。カッコ書きの買い手、売り手は筆者による補足)。
返品伝票も買い手が作成する奨励金請求書と同様と考えられますので、下図のように適格返還請求書の記載事項を満たす返品伝票を買い手が作成して、商品とともに送付することで、この返品伝票を適格返還請求書として扱うことが可能と考えられます。
(※) 売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日は、月単位の記載も認められています(インボイスQ&A問59)(記載事項②の注)。
〔凡例〕
・新消法・・・28年改正法及び所得税法等の一部を改正する法律(平成30年法律第7号)による改正後の消費税法
・新消令・・・消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成30年政令第135号)による改正後の消費税法施行令
・インボイスQ&A・・・消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(平成30年6月)(令和5年4月改訂)
(了)
「〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A」は、毎月第2週に掲載されます。