公開日: 2020/03/19 (掲載号:No.361)
文字サイズ

2020年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】

筆者: 西田 友洋

 

Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正

 

2018年9月14日と2019年6月28日にASBJより、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等の改正が公表された。

 

1 2018年改正

2018年9月14日にASBJよりIFRS第9号「金融商品」の適用に伴い、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「2018改正在外子会社取扱い」という)」及び実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「2018改正持分法取扱い」という)」の改正が公表された。

(1) 改正の内容

在外子会社等においてIFRS第9号「金融商品」を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合(OCIオプション(※))、連結決算手続上、当該資本性金融商品の売却損益相当額及び減損損失相当額を当期の損益として修正する(2018改正在外子会社取扱い 当面の取扱い(5))。

(※) OCIオプションとは、取得原価と時価の差額(評価差額)をその他の包括利益(OCI)として認識し、その後、リサイクリングを行わない(売却時の売却損益や減損損失を計上せず、利益剰余金に振り替える)ことをいう。

また、持分法適用関連会社において在外子会社取扱いに準じて処理を行う場合には、上記と同様に修正を行う(2018改正持分法取扱い 当面の取扱い)。

(2) 適用時期

[原則]

2019年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する(2018改正在外子会社取扱い 適用時期(3)①)。

[容認]

➤在外子会社取扱いの公表日以後最初に終了する連結会計年度及び四半期連結会計期間において早期適用することができる(2018改正在外子会社取扱い 適用時期(3)②)。

➤また、「2020年4月1日以後開始する連結会計年度の期首」又は「在外子会社等が初めて IFRS 第9号「金融商品」を適用する連結会計年度の翌連結会計年度の期首」から適用することもできる。なお、2019年4月1日以後開始する連結会計年度以降の各連結会計年度において、改正在外子会社取扱いを適用していない場合、その旨を注記する(2018改正在外子会社取扱い 適用時期(3)③)。

〈持分法適用関連会社の場合〉

改正持分法取扱いの適用時期も同様である(2018改正持分法取扱い 適用時期(2)①②③)。

(3) 適用初年度の取扱い

改正在外子会社取扱いの適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。

ただし、2018改正在外子会社取扱いの適用初年度においては、会計方針の変更による累積的影響額を当該適用初年度の期首時点の利益剰余金に計上することができる。

この場合、在外子会社等において IFRS 第9号「金融商品」を早期適用している場合は、遡及適用した場合の累積的影響額を算定する上で、在外子会社等においてIFRS第9号「金融商品」を早期適用した連結会計年度から在外子会社取扱いの適用初年度の前連結会計年度までの期間において資本性金融商品の減損会計の適用を行わず、在外子会社取扱いの適用初年度の期首時点で減損の判定を行うことができる(2018改正在外子会社取扱い 適用時期(3)④)。

〈四半期の場合〉

2018改正在外子会社取扱いの公表日以後最初に終了する四半期連結会計期間に2018改正在外子会社取扱いを早期適用し、会計方針の変更による累積的影響額を適用初年度の利益剰余金に計上する場合、会計方針の変更による累積的影響額を早期適用した四半期連結会計期間の期首時点ではなく連結会計年度の期首時点の利益剰余金に計上する。

また、早期適用した連結会計年度の翌年度に係る四半期連結財務諸表では、早期適用した連結会計年度の四半期連結財務諸表(比較情報)について2018改正在外子会社取扱いの定めを当該早期適用した連結会計年度の期首に遡って適用する(2018改正在外子会社取扱い 適用時期(3)⑤)。

〈持分法適用関連会社の場合〉

2018改正持分法取扱いも同様である(2018改正持分法取扱い 適用時期(2)④⑤)。

 

2 2019年改正

2019年6月28日にASBJより実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「2019改正在外子会社取扱い」という)」の改正が公表された。

当該改正では、IFRS第16号「リース」(以下、「IFRS第16号」という)及び米国会計基準会計基準更新書第2016-02号「リース(Topic 842)」(以下、「リース(Topic 842)」という)の適用に伴い、「考え方」が整理されている。

(1) 考え方の整理

IFRS第16 号及びリース(Topic 842)を対象に、修正項目として追加する項目の有無について検討が行われ、日本の連結財務諸表を作成するにあたり、修正項目の追加は行わないこととなった(2019改正在外子会社取扱い 本実務対応報告の公表及び改正の経緯 2019 年改正)。

つまり、在外子会社等がIFRS第16号やリース(Topic 842)を適用している場合、これらの適用に伴う会計処理について、修正することなく、日本の連結財務諸表に取り込む。

なお、在外関連会社の財務諸表がIFRS又は米国会計基準に準拠して作成されている場合、及び国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合については、当面の間、実務対応報告第18 号に準じて行うことができる。

(2) 適用時期

2019年6月28日以後適用する。

2020年3月期決算における会計処理の留意事項

【第3回】

 

RSM清和監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

連載の目次はこちら

Ⅵ 企業結合会計基準等の改正

 

2019年1月16日にASBJより、改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等が公表された。

主な改正点等は、以下のとおりである。

1 条件付取得対価の定義の変更

2 対価が返還される条件付取得対価の会計処理

3 「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」の記載内容の改正

4 適用時期

 

1 条件付取得対価の定義の変更

条件付取得対価の定義が変更されている(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下、「結合基準」という)」(注2))。企業結合において、条件付取得対価がある場合に、企業結合日後に返還される場合もあるため、これについて定義に含めている。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

3月期決算における会計処理の留意事項

「2024年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

Ⅰ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準

Ⅱ 資金決済法における特定の電子決済の手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い

Ⅲ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い

Ⅳ グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)

Ⅴ グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)

Ⅵ 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)

Ⅶ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正

Ⅷ インボイス制度

Ⅸ 分配可能額

Ⅹ サステナビリティ開示

XI 税制改正

XII 四半期報告制度の改正

XIII 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

◎ 金融庁の令和5年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2023年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)
  • 【第2回】
    Ⅲ 時価の算定に関する会計基準の適用指針
    Ⅳ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第3回】
    Ⅴ 会社法施行規則等の改正
    Ⅵ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第4回】
    Ⅶ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い
    Ⅷ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準
    Ⅸ 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2022年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第2回】
    Ⅳ 収益認識に関する会計基準等
    Ⅴ 時価の算定に関する会計基準等
  • 【第3回】
    Ⅵ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅶ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅷ その他の記載内容に関連する監査人の責任
  • 【第4回】
    Ⅸ 会社法施行規則等の改正
    Ⅹ 金融庁の令和2年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 開示の好事例
  • 【第5回】(追補)
    ◎最近の不安定な世界情勢下における会計処理等の留意事項

「2021年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ 監査上の主要な検討事項(KAM)
  • 【第2回】
    Ⅳ 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
    Ⅴ 会計上の見積りの開示に関する会計基準
    Ⅵ 新型コロナウイルス感染症に関連する会計処理及び開示
  • 【第3回】
    Ⅶ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅷ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅸ 会社計算規則等の改正
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成31年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ その他留意事項及び参考情報
    Ⅻ 今後の会計基準の改正
  • 【第5回】(追補)
    ◎ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(案)の公表

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項
~新型コロナウイルス感染症の影響への対応~」(全2回)

  • 【前編】
    Ⅰ 新型コロナウイルス感染症に関連する省庁や各団体からの公表物
  • 【後編】
    (【前編】公開以降の公表情報について)
    Ⅱ 新型コロナウイルス感染症における会計処理の検討事項
    Ⅲ 会計上の見積りにあたって

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」の公表
  • 【第2回】
    Ⅲ 会社法の改正
    Ⅳ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
  • 【第3回】
    Ⅵ 企業結合会計基準等の改正
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ 時価の算定に関する会計基準等の公表
    Ⅸ 収益認識基準の早期適用
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成30年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 今後の改正予定

「2019年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税制改正
    Ⅲ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第3回】
    Ⅳ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
    Ⅵ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ マイナス金利
    Ⅸ 仮想通貨の会計処理等
  • 【第4回】
    Ⅹ 企業結合会計基準等の改正
    XI 金融庁の平成29年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    XII 今後の改正予定

「平成30年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
  • 【第2回】
    Ⅲ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅳ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅴ 仮想通貨の会計処理
  • 【第3回】
    Ⅵ マイナス金利
    Ⅶ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組
    Ⅷ 金融庁の平成28年度有価証券報告書レビューの審査結果
  • 【第4回】
    Ⅸ 収益認識
    Ⅹ 税効果会計の改正
    ⅩⅠ 監査報告書の透明化

「平成29年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税効果会計の改正
    Ⅲ 減価償却方法の改正
    Ⅳ 法人税等に関する会計基準の改正
  • 【第3回】
    Ⅴ マイナス金利
    Ⅵ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅶ リスク分担型企業年金
  • 【第4回】
    Ⅷ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
    Ⅸ 短信及び有価証券報告書の改正
    Ⅹ 金融庁の平成27年度有価証券報告書レビューの審査結果

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

関連書籍

演習法人税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

適時開示からみた監査法人の交代理由

公認会計士 鈴木広樹 著

【電子書籍版】法人税事例選集

公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著

事例で解説 法人税の損金経理

税理士 安部和彦 著

法人税事例選集

公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著

原価計算の税務

税理士 鈴木清孝 著

【電子書籍版】会計税務便覧

日本公認会計士協会東京会 編

会計税務便覧

日本公認会計士協会東京会 編

先進事例と実践 人的資本経営と情報開示

EY新日本有限責任監査法人 編 EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 編

法人税申告の実務

公認会計士・税理士 鈴木基史 著

会社法決算書 作成の手引

東陽監査法人 編

あっという間に経営分析‼

税理士 黒永哲至 著

法人税申告書と決算書の作成手順

税理士 杉田宗久 共著 税理士 岡野敏明 共著
#