Ⅺ 今後の改正予定
ASBJより、2019年10月30日に以下の公開草案が公表されている。
・企業会計基準公開草案第69号(企業会計基準第24号の改正案)「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」の公表
・企業会計基準公開草案第68号「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」の公表
・企業会計基準公開草案第66号(企業会計基準第29号の改正案)「収益認識に関する会計基準(案)」等の公表
当該公開草案では、「収益認識に関する会計基準(案)」以外に以下の公開草案も公表されている。
➤企業会計基準適用指針公開草案第66号(企業会計基準適用指針第30号の改正案)「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」
➤企業会計基準公開草案第67号(企業会計基準第12号の改正案)「四半期財務諸表に関する会計基準(案)」
➤企業会計基準適用指針公開草案第67号(企業会計基準適用指針第14号の改正案)「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針(案)」
➤企業会計基準適用指針公開草案第68号(企業会計基準適用指針第19号の改正案)「金融商品の時価等の開示に関する適用指針(案)」
1 「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」の公表
「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に係る注記の充実を図るべく、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)(以下、「遡及基準案」という)」が公表された。
(1) 関連する会計基準等の定めが明らかでない場合
「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」とは、特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しないため、会計処理の原則及び手続を策定して適用する場合をいう(遡及基準案44-4)。
例えば、以下が該当する(遡及基準案44-4、44-5)。
- 関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が出現した場合に適用する会計処理の原則及び手続で重要性があるもの
- 対象とする会計事象等自体に関して適用される会計基準等については明らかではないものの、参考となる既存の会計基準等(他の会計基準設定主体が定めた会計基準等を含む)がある場合には、当該既存の会計基準等が定める会計処理の原則及び手続
- 業界の実務慣行とされている会計処理方法で重要性があるものも該当すると考えられ、企業が所属する業界団体が当該団体に所属する各企業に対して通知する会計処理方法
(2) 重要な会計方針に関する注記
関連する会計基準の定めが明らかな場合も明らかではない場合も採用した会計処理の原則及び手続(会計方針)を注記することは有用である。
そのため、遡及基準案では、関連する会計基準の定めが明らかではない場合も会計方針の変更注記が必要であることを明らかにしている。
具体的な「重要な会計方針に関する注記」は、企業会計原則注解(注1-2)の定めを引き継いだ以下の内容である(遡及基準案44-6)。
重要な会計方針について、採用した会計処理の原則及び手続の概要(遡及基準案4-3)。
会計方針の例としては、以下がある。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる(遡及基準案4-4)。
① 有価証券の評価基準及び評価方法
② 棚卸資産の評価基準及び評価方法
③ 固定資産の減価償却の方法
④ 繰延資産の処理方法
⑤ 外貨建資産及び負債の本邦通貨への換算基準
⑥ 引当金の計上基準
⑦ 収益及び費用の計上基準
なお、会計基準等の定めが明らかで、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、会計方針の注記を省略することができる(遡及基準案4-5)。
(3) 適用時期
[原則]
2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用する(遡及基準案25-2)。
[容認]
公表日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができる(遡及基準案25-2)。
遡及基準案を適用したことにより新たに注記する会計方針は、表示方法の変更には該当しないが、遡及基準案を新たに適用したことにより関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続を新たに開示するときには、追加情報としてその旨を注記する(遡及基準案25-3)。
2 「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」の公表
日本では、IFRSと異なり、「見積りの不確実性の発生要因」に係る注記が少ない。そのため、このような注記情報を充実させるために「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)(以下、「会計上の見積り案」という)」が公表された。
(1) 会計上の見積り
「会計上の見積り」とは、資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出することをいう(会計上の見積り案3)。
(2) 開示目的
会計上の見積りでは、入手可能な情報に基づき合理的な金額を算出するが、見積りの方法や、見積りの基礎となる情報が財務諸表作成時にどの程度入手可能であるかは様々である。そして、財務諸表に計上する金額の不確実性の程度も様々である。
また、財務諸表の計上金額だけでは、当該金額が含まれる項目が翌年度の財務諸表に影響を及ぼす可能性があるかどうかを財務諸表利用者が理解することは困難である。
以上から、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを目的とする。
(3) 開示する項目の識別
会計上の見積りの開示を行うにあたり、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目を識別する。識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債である(会計上の見積り案5)。この識別した項目が注記対象となる。
〔項目の識別における留意事項〕
- 翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目を識別するにあたり、翌年度の財務諸表に及ぼす影響の金額的な大きさとその発生可能性を総合的に勘案して企業が判断することが考えられる(会計上の見積り案19)。
- 時価評価する資産及び負債の市場価格の変動は、項目を識別する際に考慮しない(会計上の見積り案5)。
- 固定資産について減損損失の認識は行わない場合でも、翌年度の財務諸表に及ぼす影響を検討したうえで、当該固定資産を開示する項目として識別する可能性がある(会計上の見積り案21)。
- 翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い場合には、当年度の財務諸表に計上した収益及び費用(一定期間にわたり充足される履行義務に係る収益の認識や、ストック・オプションの費用処理額の見積りなど)、会計上の見積りにより、当年度の財務諸表に計上しないこととした負債(引当金など)を識別することを妨げない(会計上の見積り案21)。
- 金融商品や賃貸等不動産の時価情報などのように、注記において見積りを行ったものについても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い場合には、これらを識別することを妨げない(会計上の見積り案21)。
- 翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目を識別するため、比較的少数の項目を識別することになると考えられる(会計上の見積り案23)。
- 翌年度の財務諸表に与える影響は、見積りの方法の変更を行った場合(新たに見積ることが可能となった場合を含む)の影響ではなく、見積りの前提となる状況又は仮定が見直されることに起因するものである。このため、企業会計基準第24号第4項(7)の「会計上の見積りの変更」による影響と必ずしも一致するものではない(会計上の見積り案27)。
(4) 注記
上記(3)により識別した項目ごとに以下の内容を注記する。なお、当該注記は独立の注記項目とする(会計上の見積り案6、7、8)。
(5) 適用時期
[原則]
2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用する(会計上の見積り案10)。
[容認]
公表日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる(会計上の見積り案10)。
適用初年度においては、表示方法の変更として取り扱う。ただし、財務諸表の組替え(企業会計基準第24号第14項の定め)を行わず、上記(4)の注記事項について、比較情報に記載しないことができる(会計上の見積り案11)。つまり、当期の注記のみで足りる。
3 「収益認識に関する会計基準(案)」等の公表
2018年3月30日に公表された企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」では、注記について、当該会計基準を早期適用する場合の必要最低限の以下の注記事項のみ定め、当該会計基準が本適用される時(2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首)までに、注記事項の定めを検討することとなっていた。
《注記事項》
- 企業の主要な事業における主な履行義務の内容
- 企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
また、以下の表示科目についても、同様に当該会計基準が本適用される時(2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首)までに検討することとなっていた。
《表示科目》
- 収益の表示科目
- 収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)の区分表示の要否
- 契約資産と債権の区分表示の要否
今回、検討が行われた結果、以下の公開草案が公表された。
- 企業会計基準公開草案第66号「収益認識に関する会計基準(案)(以下、「収益認識基準案」という)」
- 企業会計基準適用指針公開草案第66号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)(以下、「収益認識指針案」という)」
- 企業会計基準公開草案第67号「四半期財務諸表に関する会計基準(案)(以下、「四半期基準案」という)」
- 企業会計基準適用指針公開草案第67号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針(案)(以下、「四半期指針案」という)」
- 企業会計基準適用指針公開草案第68号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針(案)(以下、「金融商品指針案」という)」
(1) 表示科目
① 顧客との契約から生じる収益
▷顧客との契約から生じる収益とそれ以外の収益を区分して損益計算書に表示「する」場合
企業の実態に応じて、適切な科目(例えば、売上高、売上収益、営業収益等)をもって損益計算書に表示する(収益認識基準案78-2、収益認識指針案104-2)。
▷顧客との契約から生じる収益とそれ以外の収益を区分して損益計算書に表示「しない」場合
顧客との契約から生じる収益の額を注記する(収益認識基準案78-2)。
② 収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)の区分表示
顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合、顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)を損益計算書において区分して表示する(収益認識基準案78-3)。
③ 契約資産、契約負債又は顧客との契約から生じた債権
▷契約資産、契約負債又は顧客との契約から生じた債権を、企業の実態に応じて、適切な科目をもって貸借対照表に表示「しない」場合
それぞれの残高を注記する(収益認識基準案79)。
【金融商品の時価注記】
契約資産と顧客との契約から生じた債権を貸借対照表上、区分して表示していない場合、当該貸借対照表の科目の貸借対照表計上額、貸借対照表日における時価及びその差額を注記する。
ただし、当該貸借対照表の科目のうち、顧客との契約から生じた債権のみに対応する貸借対照表計上額、貸借対照表日における時価及びその差額を注記することもできる(金融商品指針案4(1))。
(2) 注記事項
注記事項が以下のように改正されている。
なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表では、収益認識に関する注記のうち、(ⅰ)「収益の分解情報」及び(ⅲ)「当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報」について注記しないことができる(収益認識基準案80-25)。
一方、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表では、(ⅱ)「収益を理解するための基礎となる情報」の注記を記載するにあたり、連結財務諸表の記載を参照することができる(収益認識基準案80-26)。
(※1) 以下を注記する(収益認識基準案80-18)。
・履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
・一定の期間にわたり充足される履行義務について、収益を認識するために使用した方法及び当該方法が財又はサービスの移転の忠実な描写となる根拠
・一時点で充足される履行義務について、約束した財又はサービスに対する支配を顧客が獲得した時点を評価する際に行った重要な判断
(※2) 開示目的:顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示すること(収益認識基準案80-4)。
(※3) 注記を記載するにあたり、どの注記にどの程度の重点を置くべきか、また、どの程度詳細に記載するのかを考慮する。重要性に乏しい詳細な情報を大量に記載したり、特徴が大きく異なる項目を合算したりすることにより有用な情報が不明瞭とならないように、注記は集約又は分解する(収益認識基準案80-6)。
(※4) 上記(※2)の開示目的を達成するように、収益認識に関する注記について財務諸表利用者が理解できるようにするための情報を開示している限り、収益認識基準案第80-10項から第80-24 項(下記(ⅰ)から(ⅲ))の注記事項の構成に従って注記を記載しないことができる。また、開示目的(上記(※2)参照)に照らして、企業の収益及びキャッシュ・フローを理解するために適切であると考えられる方法で注記を記載する(収益認識基準案80-7)。
(※5) 収益認識に関する注記の内容を、重要な会計方針として注記している場合には、収益認識に関する注記として記載しないことができる(収益認識基準案80-8)。
(※6) 収益認識に関する注記の内容を財務諸表上の他の注記事項として記載している場合には、収益認識に関する注記を記載するにあたり、当該他の注記事項を参照することにより記載に代えることができる(収益認識基準案80-9)。
(ⅰ) 収益の分解情報
当期に認識した顧客との契約から生じる収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解して注記する(収益認識基準案80-10)。
また、「収益の分解情報」と「セグメント情報の各報告セグメント」について開示する売上高との間の関係を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を注記する(収益認識基準案80-11)。
(ⅱ) 収益を理解するための基礎となる情報
顧客との契約が、財務諸表に表示している項目又は収益認識に関する注記における他の注記事項とどのように関連しているのかを示す基礎となる情報として、以下の(ア)から(オ)を注記する(収益認識基準案80-12)。
(ア) 契約及び履行義務に関する情報
収益として認識する項目がどのような契約から生じているのかを理解するための基礎となる情報を注記する。この情報には、以下のa、bが含まれる(収益認識基準案80-13)。
a 履行義務の内容(収益認識基準案80-14)
企業が顧客に移転することを約束した財又はサービスの内容を記載する。例えば、以下の内容が契約に含まれる場合には、注記に含める。
➤財又はサービスが他の当事者により顧客に提供されるように手配する履行義務(企業が他の当事者の代理人として行動する場合)
➤返品、返金及びその他の類似の義務
➤財又はサービスに対する保証及び関連する義務
b 重要な支払条件(収益認識基準案80-15)
例えば、以下の内容を注記する。
➤通常の支払期限
➤対価に変動対価が含まれる場合のその内容
➤変動対価の見積りが収益認識基準案第54項(※)に従って通常制限される場合のその内容
➤契約に重要な金融要素がある場合のその内容
(イ) 取引価格の算定に関する情報(収益認識基準案80-16)
取引価格を算定する際に用いた見積方法、インプット及び仮定に関する情報を注記する。例えば、以下の内容を注記する。
➤変動対価の算定
➤変動対価の見積りが収益認識基準案第54項(※)に従って制限される場合のその評価
➤顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合の対価の額に含まれる金利相当分の調整
➤現金以外の対価の算定
➤返品、返金及びその他の類似の義務の算定
(ウ) 履行義務への配分額の算定に関する情報(収益認識基準案80-17)
取引価格を履行義務に配分する際に用いた見積方法、インプット及び仮定に関する情報を注記する。例えば、以下の内容を注記する。
➤約束した財又はサービスの独立販売価格の見積り
➤契約の特定の部分に値引きや変動対価の配分を行っている場合の取引価格の配分
(エ) 履行義務の充足時点に関する情報(収益認識基準案80-18)
履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)の判断及び当該時点における会計処理の方法を理解できるよう、以下の事項を注記する。
➤履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
➤一定の期間にわたり充足される履行義務について、収益を認識するために使用した方法及び当該方法が財又はサービスの移転の忠実な描写となる根拠
➤一時点で充足される履行義務について、約束した財又はサービスに対する支配を顧客が獲得した時点を評価する際に行った重要な判断
(オ) 本会計基準の適用における重要な判断(収益認識基準案80-19)
本会計基準(収益認識基準案)を適用する際に行った判断及び判断の変更のうち、顧客との契約から生じる収益の金額及び時期の決定に重要な影響を与えるものを注記する。
(※) 収益認識基準案第54項では、「変動対価の額には、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める。」と規定されている。
(ⅲ) 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
【契約資産及び契約負債の残高等】(収益認識基準案80-20)
履行義務の充足とキャッシュ・フローの関係を理解できるよう、以下の事項を注記する。
➤顧客との契約から生じた債権、契約資産及び契約負債の期首残高及び期末残高(区分して表示又は注記していない場合)
➤当期に認識した収益の額のうち期首現在の契約負債残高に含まれていた額
➤当期中の契約資産及び契約負債の残高の重要な変動がある場合のその内容
➤履行義務の充足の時期が通常の支払時期にどのように関連するのか及びそれらの要因が契約資産及び契約負債の残高に与える影響の説明
また、過去の期間に充足(又は部分的に充足)した履行義務から、当期に認識した収益(例えば、取引価格の変動)がある場合には、当該金額を注記する。
【残存履行義務に配分した取引価格】
既存の契約から翌期以降に認識することが見込まれる収益の金額及び時期について理解できるよう、残存履行義務に関して以下の事項を注記する(収益認識基準案80-21)。(※1)
a 当期末時点で未充足(又は部分的に未充足)の履行義務に配分した取引価格の総額
b 上記aに従って注記した金額を、企業がいつ収益として認識すると見込んでいるのか、以下のいずれかの方法により注記する。
✓残存履行義務の残存期間に最も適した期間による定量的情報を使用した方法
✓定性的情報を使用した方法
以下のいずれかの条件に該当する場合には、上記a、bの注記は記載しないことができる(収益認識基準案80-22)。(※2)
➤履行義務が、当初の予想期間が1年以内の契約の一部である。
➤履行義務の充足から生じる収益を収益認識指針案第19項(※3)に従って認識している。
➤以下のいずれかの条件を満たす変動対価である。
✓売上高又は使用量に基づくロイヤルティ
✓完全に未充足の履行義務(又は単一の履行義務に含まれる1つの別個の財又はサービスのうち、完全に未充足の財又はサービス)に配分される変動対価
(※1) 顧客との契約から受け取る対価の額に、取引価格に含まれない変動対価の額など、取引価格に含まれず、結果として収益認識基準案80-21の注記に含めていないものがある場合(収益認識基準案54参照)には、その旨を注記する(収益認識基準案80-23)。
(※2) いずれかの条件に該当するため、注記しなかった場合には、以下の事項を注記する(収益認識基準案80-24)。
➤いずれの条件に該当しているか、及び当該条件を適用している履行義務の内容
➤履行義務の残存期間
➤注記に含めていない変動対価の概要(例えば、変動対価の内容及びその変動性がどのように解消されるのか)
(※3) 収益認識指針案第19項では、「提供したサービスの時間に基づき固定額を請求する契約等、現在までに企業の履行が完了した部分に対する顧客にとっての価値に直接対応する対価の額を顧客から受け取る権利を有している場合には、請求する権利を有している金額で収益を認識することができる。」と規定されている。
(3) その他の注記
① 債権又は契約資産に係る減損損失の注記
顧客との契約から生じた債権又は契約資産について認識した減損損失の注記は、不要である(収益認識基準案157)。
② 工事損失引当金の注記
工事損失がある場合、以下の事項を注記する(収益認識指針案106-9)。
(ⅰ) 当期の工事損失引当金繰入額
(ⅱ) 同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合には、以下のいずれかの額(該当する工事契約が複数存在する場合には、その合計額)
➤棚卸資産と工事損失引当金を相殺せずに両建てで表示した場合:その旨及び当該棚卸資産の額のうち工事損失引当金に対応する額
➤棚卸資産と工事損失引当金を相殺して表示した場合:その旨及び相殺表示した棚卸資産の額
(注) 受注制作のソフトウェアにおける受注損失についても、上記の注記が必要である(収益認識指針案106-10)。
(4) 四半期財務諸表における注記
四半期(連結)財務諸表では、収益認識に関する注記として、以下を記載する(四半期基準案19(7-2)、25(5-3))。
〈収益の分解情報に関する事項〉
① 期首からの累計期間に認識した顧客との契約から生じる収益について、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報
② 上記①に従って開示する収益の分解情報と、セグメント情報の注記の報告セグメントの売上高との間の関係を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報
(5) 適用時期
[原則]
2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(収益認識基準案81)。
[容認]
➤2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる(収益認識基準案82)。
➤2020年4月1日に終了する連結会計年度及び事業年度から2021年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することもできる。この適用にあたって、早期適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に係る四半期(中間)連結(個別)財務諸表においては、早期適用した連結会計年度及び事業年度の四半期(中間)連結(個別)財務諸表について、当該年度の期首に遡って適用する(収益認識基準案83)。
(6) 表示方法の変更
本会計基準の適用初年度に本会計基準の適用により表示方法の変更が生じる場合には、当該変更は、遡及基準第13項(1)の「表示方法を定めた会計基準又は法令等の改正により表示方法の変更を行う場合」として取り扱う(収益認識基準案89-3)。
表示方法の変更が生じる場合の、組替え等の対応は、以下のとおりである。
財務諸表の組替え
遡及基準第14項の定めにかかわらず、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができる。
なお、適用初年度の比較情報を、新たな表示方法に従い組替えを行わない場合には、表示方法の変更により影響を受ける適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表の主な表示科目に対する影響額を記載する(収益認識基準案89-4)。
注記
収益認識会計基準案第78-2項(上記(1)①)、第79項なお書き(上記(1)③)及び第80-2項から第80-26項(上記(2))の注記を適用初年度の比較情報に注記しないことができる(収益認識基準案89-5)。
(連載了)