企業不正と税務調査
【第8回】
「従業員による不正」
(2) 営業部門・購買部門社員による横領
税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝
最も不正を行う機会に接している従業員は経理部門の社員であり、しかも出納業務を1人で任されている者であることは前回説明したとおりである。
今回は、「経理部門以外の従業員」のうち、営業部門・購買部門社員による横領事件を取り上げる。
前回の経理部門社員による不正との大きな違いは、単独で不正を行うことはできず、必ず「共犯者」が存在するということである。したがって、不正の発見にあたっては、共犯者の存在をうかがわせるような兆候を見つけることがポイントになる。
1 営業部門社員による不正の事例
ここでは、ネットワンシステムズ株式会社(以下、「ネットワン社」と略称する)が去る2013年3月8日に公表した「当社元社員による不正行為に係わる調査結果に関するお知らせ」をもとに、同社の元社員が中心となって行なった不正――架空発注した外注費の横領――について、その手口、不正発覚を回避するための隠蔽工作、不正が長く発見されなかった理由などを検証したい。
なお、本事例の詳細については、拙稿「会計不正調査報告書を読む【第6回】」を参照いただきたい。
(1) 会社による発表(3月8日付リリースより引用)
当社元社員が外部業者らと共謀して、架空の外注費名目で当社に対する不正な請求を行わせる手口で金員を騙取していたことが判明いたしました。なお、当社元社員は平成25年2月28日付で懲戒解雇いたしました。また、特別調査委員会の調査報告書により、元社員の部下1名の関与が判明しましたので、厳正な処分をいたします。
本件不正行為は、平成17年から平成24年にかけて行われ、被害金額は7億8,910万円であることが確定いたしました。
(2) 不正の手口
不正の手口としては、Z社を架空の発注先として使い、ネットワン社の得意先の銀行でシステム部門を担当する元行員Bが横領する金員の原資となる商談を銀行内で確実に実行させるよう手を尽くし、ネットワン社元社員Aがネットワン社社内手続を行わせて、Z社に対して架空発注と支払いを行わせ、別のシステム会社の元社員Cが騙取した金銭を現金化して配分する役目を分担していた。
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