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〔会計不正調査報告書を読む〕【第6回】ネットワンシステムズ株式会社・元社員による不正行為「特別調査委員会調査報告書」

筆者:米澤 勝

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第6回】

ネットワンシステムズ株式会社・

元社員による不正行為

「特別調査委員会調査報告書」

 

税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝

【概要】
不正行為の判明および平成25年3月期第3四半期報告書提出遅延ならびに当社株式の監理銘柄(確認中)への指定見込みに関するお知らせ, 國廣正, 五味祐子, 中村克己, 田島照久, 当社元社員による不正行為に係わる調査結果に関するお知らせ, 平成25年3月期第3四半期報告書の提出並びに平成25年3月期第3四半期決算短信の訂正に関するお知らせ

 

【ネットワンシステムズ株式会社の概要】

ネットワンシステムズ株式会社(以下「NOS」という)は東京都に本店を置くネットワーク関連企業で、特定のメーカーの系列にはない。連結売上高157,633百万円、連結経常利益15,470百万円。従業員2,023名(数字はいずれも2012年3月期)。東証1部上場。

 

【報告書のポイント】

1 元社員と共犯関係にある者の所属会社との共同調査

NOSでは、国税局による税務調査をきっかけに、社員Aが、取引先である金融機関の行員B、システム会社の社員Cと共謀して、金融機関との商談の原価として、NOSに対し、架空外注費を支払わせ、これを騙取した疑いが生じた。外部の弁護士も参加したNOS調査チームは、社内調査だけでは限界があると判断し、金融機関に共同して調査を進めることを申し入れて、調査を進めた。

その結果、NOSが調査結果を公表した日に、株式会社十六銀行(以下「十六銀行」という)は、自行の元行員が関与していることを認めるリリースを出し、ITホールディングス株式会社は、子会社であるTIS株式会社の元社員が関与していたことを認め、どちらも特別調査委員会により調査中であるとコメントしている。

 

2 第三者委員会ガイドラインに準拠した調査

社内調査の段階で、内部通報制度の外部窓口を担当している弁護士2名が参加していることから、特別調査委員会は、ガイドラインが規定する「第三者委員会」には該当しない可能性があるが、独立した調査の実質を確保するために、「第三者委員会ガイドライン」に準拠して調査を行うことを確認する契約書を取り交わしたうえで、調査を実施している。

今後も、内部通報を受けた外部窓口の弁護士を中心に社内調査を進め、ある程度、不正の存在の確証を得てから、第三者委員会へ移行をする必要が生じるケースは増えることが予想されるので、本件は、そうした事案の先駆けとなるものである。

 

3 調査結果により判明した事実

(1) NOSから金銭を騙取するに至った事情
NOS元社員Aは、十六銀行でBと共にシステム部門に属していた。発注先の一つであるTISのCは業務を通じて両者と親密さを深め、Aが十六銀行在籍時から、十六銀行が発注し、TISが直接又は間接に受注する案件において、不正行為を行っていた模様である(詳細はNOS特別調査委員会では把握できていない)。

2000年10月、AがNOSに入社し、2004年4月部長、2006年4月本部長と、NOS社内の発言力を強めていく中で、十六銀行が発注し、NOSが直接又は間接に受注する案件についても、不正を重ねていく(NOSにおける最初の不正は2005年4月であった)。

不正の手口としては、TIS元社員Dが設立したZ社を架空の発注先として使い、Bが不正行為の原資となる商談を銀行内で確実に実行させるよう手を尽くし、AがNOS社内手続を行わせて、Z社に対して架空発注と支払いを行わせ、Cが騙取した金銭を現金化して配分する役目を分担していた。

特別調査委員会が認定したZ社への支払金額は、7億8,900万円余りであった。

(2) 元社員Aに対する社内の特別扱い
元社員Aは、NOSに入社以来、金融機関のネットワークビジネスに詳しい「優秀な営業マン」として評価を高め、中部支店から東京に転勤となってからも、十六銀行との商談では転勤前と変わらない役割を果たし、大きな売上・利益をもとに強い支配力を持つに至った。

周囲は、Z社の実態に疑問を抱きつつも、「治外法権の聖域化」している十六銀行との商談については、「ハンコを押すだけ」の役割に徹し、あるいは意見を言えないまま、思考停止状態に陥っていた。

(3) 国税局による税務調査
2012年2月から国税局による税務調査が始まり、Z社に対する外注費に実態がない(原価性が認められない)のではないかという疑いが争点となった。

元社員Aは、対応に当たる財務経理部門、中部支店の営業担当者に対し、シナリオに沿った回答をするよう指示し、自らは、Z社が納入した「成果物」と称するDVDを捏造し、変換ソフトを用いてファイルのプロパティを書き換えることにより、Z社が納入したものであるかのように偽装して提出した。

長引く税務調査の重大性を経営陣が認識したのは同年11月、税務調査対応メンバーではない業務管理グループの担当者が、強い懸念を担当役員に報告したことをきっかけに、外部弁護士を加えた調査チームが設置されることとなった。

 

4 原因分析と責任の所在

(1) 機能していない購買部門による統制
購買部門によるチェックは、外注先が登録されているかどうか、書類に整合性があるかどうかを確認する形式的なものであり、営業手配の外注に対する牽制としては不十分であった。

登録時に「多額の仕入はリスクあり」とされたZ社であるが、業者登録には承認基準がなく、いったん承認されれば更新も行われないため、継続的な発注が可能であった。外注管理規程には一定の牽制効果がある条項が定められていたが、Z社への発注については規程に基づく管理は行われておらず、規程自体も2001年以降改正されていないなど、有名無実化していた。

(2) 社風
現社長は、就任後、個人商店的発想(属人的な企業風土)や過度の営業重視などの古い企業体質に危機意識をもって、行動指針を策定、企業風土の変革に取り組んでいる。

しかし、調査委員会のヒアリングでは、こうした行動指針は単なる「タテマエ」に過ぎない実態が残ってしまっており、それは本件について「内部通報制度」が機能していなかったことにもつながっている。

(3) 内部監査
2011年7月、Z社との異常取引を発見して、問題点を把握し、調査に着手した時点までの内部監査部門の対応は適切であったが、元社員Aが準備したDVDの検証も不十分なまま、その説明を鵜呑みにして監査を終了させたことには大いに疑問が残るところだ。

まして、信用調査で「代表1名、売上高約5,000万円」という情報を事前に得ておきながら、Z社を訪問すらしていない点、元社員Aの存在がいかに聖域になっていたとはいえ、監査部門の対応としては不十分であった。

 

5 調査報告書の特徴

報告書自体の読みやすさ、興味を惹く記述に驚かされる。時系列に沿った事件の解明、差し挟まれる従業員の肉声。まるでノンフィクション作品を読んでいるかのようであり、これまで数多くリリースされてきた調査報告書とは一線を画するものとなっている。

また、元社員Aの税務調査対策の模様もリアルに描かれている。
口裏合わせのための打合せ。証拠の捏造。中でも出色だったのは、元社員Aが、国税局の調査において自らの意に沿わない経理財務部門の関係者を恫喝し、「おまえたちを殺すことなど、おれは何とも思わない。」とか「駅のホームでおまえたちに何かあっても気づく人はいない。」と脅迫した場面である。
元銀行マンで、営業担当の本部長という要職を占めている人の発言とも思えないが、こうした発言にただうつむく管理職ばかりで、発言を諌める人、こうした行為を経営トップに伝える人が社内にいなかったことが、最大の問題であったように感じる。

ただ、調査報告書の最後に「NOS社員の大多数は、このような真面目な社員であることを付言しておく」というコメントを入れたことについて、筆者は、違和感を禁じ得ない。そのようなことは言うまでもないことであり、連結経常利益150億円以上、東証1部上場企業に対するコメントとしては、かえって失礼なものではないだろうか。

(了)

「会計不正調査報告書を読む」は、不定期の掲載となります。

連載目次

会計不正調査報告書を読む

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第51回~

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筆者紹介

  • 米澤 勝

    (よねざわ・まさる)

    税理士・公認不正検査士(CFE)

    1997年12月 税理士試験合格
    1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
    1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
    2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
    2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

    【著書】

    ・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

    ・『架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2011)

    ・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

    【寄稿】

    ・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

    ・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

    【セミナー・講演等】

    一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
    「会計不正の早期発見
    ――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

    公益財団法人日本監査役協会主催
    情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

    株式会社プロフェッションネットワーク主催
    「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

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