企業不正と税務調査
【第10回】
「粉飾決算」
(1) 棚卸資産の架空・過大計上
税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝
今回は、粉飾決算の手口の代表例である棚卸資産の過大(架空)計上をテーマに取り上げる。
本来、売上原価として当該事業年度の損金の額に算入しなければならないものを、棚卸資産(在庫)として貸借対照表に記載し、その分だけ、当期の売上総利益を大きく見せるという手法は、古典的ではあるものの、他の粉飾の手口と異なり、自社だけで不正が完結するという点で、利用されやすい。特に、ソフトウエア開発業者においては、開発中のソフトウエアの資産計上額(帳簿価額)を不正に大きく計上して、損失を先送りする例も多い。ソフトウエアは通常の商品在庫と違って目に見えないものであることから、会計監査における実地棚卸によっても粉飾が発見できないケースも考えられる。
今回は、こうした棚卸資産の過大(架空)計上による不正について、検討したい。
これまで見てきた、経営者による不正(売上除外、架空・水増人件費の計上)、従業員による不正(経理部担当者・営業担当者による横領)は、課税所得金額の減少を伴うものであり、課税庁(税務署)にとっては、「発見すれば追徴課税ができる」という意味から、不正発見に関してインセンティブが働くものであった。
しかし、今回から取り上げる「粉飾決算」は、本来納付すべき税額以上の税額を納付していることから、「発見したところで税収増には直結しない」不正であり、税務調査で発見されなかったり、発見されても是正されなかったりすることも少なくない。
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