~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第1回】
「追加調査で得た間接証拠から給与収入額の認定をした事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成22年7月6日仙台地方裁判所〔一部認容・一部棄却〕
◆平成23年4月13日仙台高等裁判所〔上告棄却不受理・確定〕
〔概要等〕
納税者(以下「甲」)は、遠洋マグロ漁船の漁労長兼船長として、外国法人A(以下「A社」という。)との乗船契約に基づきAからの給与収入を得ていたが、これを申告していなかったため、当該給与収入について更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分が行われた。
争点は、甲が居住者に該当するかどうかであり、また、予備的主張に関して甲の給与収入額についても争われた。裁判では、居住者該当性は地裁・高裁とも揺るがなかったが、給与収入額については、その一部の金員について地裁と高裁で判断が別れた。
以下、その点を検証する。
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