ストーリーで学ぶ
IFRS入門
【第5話】
「概念フレームワークの改訂と公正価値」
仰星監査法人
公認会計士 関根 智美
(以下で説明する概念フレームワークは、2010年9月に公表されたものに準じています。)
● ○ プロローグ ○ ●
株主総会も終わり、仕事がひと段落した6月下旬。桜井はいつも通り7時半にオフィスに着いた。
今月は毎週木曜日の始業前に、同じ経理部の先輩である藤原からIFRSの前提となる基礎を教えてもらうことになっている。今日がその最終日だ。
桜井の勤める会社は機械部品を製造する上場会社である。
と言っても、規模はそれほど大きくはなく、「中堅」という言葉がピッタリだ。社長の意向によりIFRSの導入を検討することになったため、数年後の導入時を見据えて入社3年目の桜井も今のうちからIFRSを勉強することになったのだ。
桜井がオフィスに入ると、すでに藤原が待っていた。
「珍しいですね。いつも僕より遅いのに。」
始業時刻は9時のため、オフィスにはほとんど人がいない。
「蒸し暑い上に、今日も雨だ。少しでも空いた電車に乗りたいだろ?・・・でも、6時台でも意外と人が乗ってるんだな。座って寝れるかと期待したんだが。」
「それはご愁傷様でしたね。」
ブツブツ言う藤原の脇を通りすぎ、桜井は吹き出る汗をハンカチで拭いながら、自分の席へと移動した。確かに今日は一段と蒸し暑い。このところの梅雨独特の蒸し暑さに桜井もうんざりしていた。
● ○ 概念フレームワークのまとめ ○ ●
「それよりも、これを見てください。」
席に着いた桜井はカバンの中からノートを取り出すと、中身を藤原に見せた。そこには1つの図が描かれている。
「『概念フレームワークのまとめ』?お前が作ったのか?」
「そうです。仕事の方も落ち着いたので、復習がてら概念フレームワークの内容をまとめてみたんです。簡潔にまとまっているでしょう?」
自慢げな桜井を少し苛めてやりたくなった藤原は、無表情を崩さずじっとノートを見つめた。藤原のその様子から、何か漏れがあったのでは、と桜井はだんだん不安になってくる。
「おい。」と、藤原が低い声を出す。桜井はびくりとして、藤原の顔を覗き込んだ。
「おかしな所がありましたか・・・?」
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