● ○ 収益認識(IFRS第15号) ○ ●
2014年に公表されたIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」
「さて、今日のテーマは収益、つまりIFRS第15号『顧客との契約から生じる収益(revenue)』という基準だね。この基準は2014年に公表されたんだけど、これにより現在適用されている収益に関する基準、例えばIAS第11号やIAS第18号、いくつかのIFRICが廃止され、収益に関する基準が一本化されることになるんだ。」
「へぇ。IFRS第15号って数年前から耳にしていましたけど、まだ強制適用はされていないんですね。」
2018年1月1日以降開始する事業年度から強制適用
「そうなんだ。少し延期されたこともあって、2018年1月1日以後開始される事業年度から適用されることになるんだ。もちろん早期適用も認められるよ。」
「なるほど。とすると、ウチの会社ではこれからIFRSを導入していくわけですから、現行の基準ではなくIFRS第15号を勉強すればいいんですね。」
「うん、そういうことだね。」
伊崎はにっこりして答えた。
今回の学習項目は主に4つ
【今回の学習項目】
- IFRS第15号のポイント
- 収益認識の5ステップ
- 契約資産と契約負債
- 開示
「今回の学習項目は大きく分けて、『IFRS第15号のポイント』、『収益認識の5ステップ』、『契約資産と契約負債』、そして『開示』の4つだよ。」
伊崎は指を4本立てながら、さらに付け加えた。
「今回も基本的な内容に限定して、細かい論点についてはまた別の機会を作ろうね。」
「はい。分かりました。」
IFRS第15号の特徴
- IFRS第15号のポイント
- 収益認識の5ステップ
- 契約資産と契約負債
- 開示
「では、さっそく『IFRS第15号のポイント』についてだね。」
「はい。」
久しぶりの授業スタイルで、桜井は少し緊張気味に返事をした。
「ここでは、IFRS第15号がどんな基準なのか、主な特徴を説明するね。」
そう言うと、伊崎はホワイトボードに向かった。
IFRS第15号のポイント
-
ポイント① 収益に関する包括的な枠組みを提供
-
ポイント② 5つのステップにより中心となる原則に従って収益認識
ポイント① IFRS第15号は収益認識に関する包括的な枠組みを提供
伊崎は桜井の方に向き直って言った。
「IFRS第15号『顧客との契約から生じる収益』が適用されることで、廃止される基準はこれだけあるんだ。」
そう言うと、伊崎はホワイトボードにさらに6つの項目を書き加えた。
【IFRS第15号適用により廃止される基準等】
- IAS第11号「工事契約」
- IAS第18号「収益」
- IFRIC第13号「カスタマー・ロイヤルティ・プログラム」
- IFRIC第15号「不動産の建設に関する契約」
- IFRIC第18号「顧客からの資産の移転」
- SIC第31号「収益―宣伝サービスを伴うバーター取引」
「え、IFRS第15号によって置き換えられる基準等って、こんなにいっぱいあるんですか。」
桜井は、予想を超える基準の数に驚いた。
「そうなんだ。でも、今までのIFRSでは、複雑な取引への適用が困難であったり、重要なテーマについてのみの限定的なガイダンスしかなかったりしたんだ。」
「へぇ。」
「そこで、IASBはFASBと共同で収益認識に関する包括的な枠組みを開発することで、今後はあらゆる業種の顧客との契約に基づく収益を、その包括的な枠組みに従って認識することにしたんだよ。」
「その収益認識に関する包括的な枠組みが設定されているのが、IFRS第15号なんですね。」
桜井は納得して頷いた。
ポイント② 5つのステップにより中心となる原則に従って収益認識
「では、その包括的な枠組みはどんなものなのか、というのがポイント②だよ。」
「えーと、5つのステップにより中心となる原則に従って収益認識する、というものですね。」
「そう。まず、IFRS第15号では、『中心となる原則』が定められているんだ。」
「へぇ。それは、どんな原則なんですか?」
「財又はサービスの移転をその対価を反映する金額で描写するように収益認識を行う、というものだよ。基準の言葉だと下のように記されているね。」
【IFRS第15号の中心となる原則】
- 企業が収益の認識を、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスとの交換で権利を得ると見込んでいる対価を反映する金額で描写するように行わなければならない。
「ふぅん。」と桜井は眺めて答えた。
「この中心となる原則に従って収益認識するために、具体的には5つのステップを適用することになるんだよ。」
「なるほど。それが、学習項目の2つ目にある、『収益認識の5ステップ』というわけですね。」
伊崎はにっこりと頷いた。