● ○ エピローグ ○ ●
「おや、もうこんな時間だ。」
伊崎は腕時計を確認すると、立ち上がった。
「僕はそろそろミーティングに行かなくちゃいけないから、残りの作業頑張ってね。」
そう言いながら笑顔で手を振ると、伊崎は颯爽と部屋を出ていく。
再び一人になった桜井は、ホワイトボードの内容を手許にあった紙の裏に書き留めた後、背もたれに体を預けて、ふぅと溜め息をついた。
「確かに先輩の言うことも一理あるかも・・・」
桜井は年末に藤原からIFRS勉強に対して受身になっている姿勢を責められたのだが、図星だったこともあり、つい過剰に反発してしまったのだ。今でもお互い引っ込みがつかなくなり、気まずい関係が続いている。
藤原の指摘を少し冷静に考えることができるようになった桜井は、藤原よりもさらに忙しい伊崎にわざわざ時間を割いてもらって、IFRSを教わっているこの状況に少し疑問を感じた。
「このまま一から十まで教えてくださいって言うのは、甘えすぎだよなぁ・・・」
桜井は後輩の山口を思い浮かべた。自分も教わる立場から教える立場になったことで、藤原の言いたいことも実感している毎日だ。
しばらく考え込んでいた桜井だったが、勢いよく立ち上がって気合いを入れた。
「よーし、やるぞ!」
そして、桜井は目の前にズラリと積み重なっているファイルの山を見下ろした。作業はまだ半分も終わっていない。桜井はポリポリと頭を掻いて呟いた。
「まずは、この作業を終わらせないと・・・」
IFRS第15号のポイント
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ポイント① 収益に関する包括的な枠組みを提供
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ポイント② 5つのステップにより中心となる原則に従って収益認識
▼ ステップ1 ▼
契約の識別
強制可能な権利及び義務を生じさせる複数の当事者間の合意
【IFRS第15号 契約の要件】
- 契約の当事者が、契約を承認しており、それぞれの義務の履行を確約している。
- 企業が、移転すべき財又はサービスに関する各当事者の権利を識別できる。
- 企業が、移転すべき財又はサービスに関する支払条件を識別できる。
- 契約に経済的実質がある。
- 企業が、顧客に移転する財又はサービスと交換に権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高い。
▼ ステップ2 ▼
履行義務の識別
顧客に財又はサービスを移転する約束
【履行義務の区分要件】
かつ
▼ ステップ3 ▼
取引価格の決定
約束した財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込んでいる契約における対価の金額
[注意点]
- 変動対価は見積り。ただし、重要な戻入れが生じない可能性が非常に高い範囲内で測定。
- 対価の前払・延払による重要な金融要素が含まれる場合は、利息要素を分離する。
▼ ステップ4 ▼
取引価格の履行義務への配分
取引価格は、それぞれの履行義務の独立販売価格の比率で配分
企業が約束した財又はサービスを独立に顧客に販売するであろう価格
【独立販売価格の見積方法】
- 調整後市場評価アプローチ
- 予想コスト+マージンアプローチ
- 残余アプローチ
▼ ステップ5 ▼
履行義務の充足による収益の認識
(※1) 一定期間にわたり充足される履行義務の要件
- 顧客が、企業の履行によって提供される便益を、企業が履行するにつれて同時に受け取って消費する。
- 企業の履行が、資産を創出するか又は増価させ、顧客が当該資産の創出又は像以下につれてそれを支配する。
- 企業の履行が、企業が他に転用できる資産を創出せず、かつ、企業が現在までに完了した履行に対する支払を受ける強制可能な権利を有している。
(※2) 「支配の移転」の指標
- 企業が資産に対する支払を受ける現在の権利を有している。
- 顧客が支配に対する法的所有権を有している。
- 企業が資産の物理的占有を移転した。
- 顧客が資産の所有に伴う重大なリスクと経済価値を有している。
- 顧客が資産を検収した。
【IFRS第15号 主な開示事項】
〇 顧客との契約
- 顧客との契約から認識した収益の内訳
- 顧客との契約から生じた債権、契約資産及び契約負債の期首残高及び期末残高、期首現在の契約負債残高に含まれていた当報告期間に認識した収益、当報告期間に過去の期間に充足した履行義務から認識した収益等
- 顧客との契約における履行義務に関する情報
- 残存履行義務に配分した取引価格等
- 債権又は契約資産について認識した減損損失
〇 IFRS第15号を適用するにあたり行った重要な判断
- 履行義務の充足の時期
- 取引価格及び履行義務への配分額
〇 顧客との契約の獲得又は履行のためのコストから認識した資産
- 顧客との契約の獲得又は履行のために発生したコストの金額を算定する際の判断
- 各報告期間に係る償却の決定に使用している方法
(注)
・この記事はフィクションであり、実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません。
・各記事は公開日現在に公表されている基準等に基づいていますので、閲覧の際はご留意ください。
・この記事は基礎的な事項を中心に扱っており、IFRSの全てを網羅するものではありません。詳細につきましては、それぞれの専門家にご相談ください。
・文中、意見に関する部分は私見であり、執筆者の属する組織の公式な見解ではありません。
(了)
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