~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第9回】
「任意組合が行っていた航空機リース事業が終了する際に
組合員が受けた債務免除益等の所得区分を判断した事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成27年5月21日東京地方裁判所[国側敗訴](国側控訴)
(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。
〔概要等〕
原告(甲)は、他の出資者と共に組合契約を締結して民法上の組合を組成した上、金融機関から金員を借り入れて航空機リース事業を営んでいたが、予定前に航空機を売却して事業を終了することとなった。その際、①航空機の購入原資の一部となった借入金に係る債務の免除を受けたことによる利益(本件債務免除益)及び、②当該組合の業務執行者に対して支払うべき手数料に係る債務の免除を受けたことによる利益(本件手数料免除益)が発生し、これらの所得区分を巡って争いとなった。
なお、複数の同様の組合事業が運営されていたが、破綻したのは本件の組合事業だけである。
当事者の主張をみてみると、甲は、本件債務免除益も本件手数料免除益も一時所得に該当する旨主張し、他方、課税庁は、本件債務免除益は雑所得に、本件手数料免除益は主位的には不動産所得に、予備的には雑所得にそれぞれ該当すると主張した。
裁判所は、いずれの所得についても一時所得に当たるとの判断を下しているが、ここでは、本件債務免除益についてのみ取り上げる。
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