役員インセンティブ報酬の分析
【第1回】
「特定譲渡制限付株式①」
-平成28年度税制改正後-
弁護士・公認会計士 中野 竹司
-本連載の趣旨-
平成27年6月に上場企業に適用が開始された、コーポレートガバナンス・コードの原則4-2、及び同補充原則4-2①において、経営陣の報酬について、中長期的な会社の業績等を反映させたインセンティブ付けが行われるべきとされ、取締役など役員に対するインセンティブ報酬のあり方について注目が集まるようになってきた。
インセンティブ報酬として、わが国では従来から、ストック・オプション、株式給付信託が用いられてきた。
これに加え、今年度は、平成28年度税制改正を踏まえたリストリクテッド・ストック型である特定譲渡制限付株式報酬の導入が進んだ。また平成29年度税制改正ではパフォーマンス・シェア型の株式報酬の選択肢が広がることが予想されるなど、役員インセンティブ報酬については様々な制度改正が進んでいる。したがって、インセンティブ報酬についてもさらなる多様な制度導入が進んでいくものと考えられる。
そこで本連載では、実際に役員インセンティブ報酬として導入されているプランについて、ガバナンスにおけるメリット・デメリットや企業の導入事例、会社法・会計・税務からみたポイントなどを広く解説していきたい。なお、各分野の詳細な解説は割愛しているため、より詳しい解説については他稿を参照されたい。
(※) 役員に対する各種報酬プランの概要については、本誌掲載の下記拙稿を参照されたい。
1 譲渡制限付株式を用いた報酬形態の概要
従来より役員のインセンティブ報酬のツールとして株式報酬の活用が期待されていたが、そのためには、税法上の取扱いを含め、制度導入手続の明確化が必要であった。
そこで、経済産業省が平成27年7月に公表した、「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書で、我が国において株式報酬を導入する際の手続を整理し、金銭報酬債権を現物出資するなど実務的に簡便な手法を用いる手続を整理した。
さらに平成28年度税制改正において、企業経営者に対する適切なインセンティブ付与促進が企図され、役員株式報酬のうち、いわゆる特定譲渡制限付株式の損金算入要件が明らかになった。続いて平成28年4月には、経済産業省から「「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬「いわゆる「リストリクテッド・ストック」の導入等の手引き~」が公表され、特定譲渡制限付株式報酬の導入に関する実務的な環境整備がなされた。
このような環境整備を踏まえ、実際に特定譲渡制限付株式報酬の事例が出てくるようになった。
この特定譲渡制限付株式は、役員インセンティブ報酬の中の、リストリクテッド・ストックの一形態と考えられるが、パフォーマンス・シェアとしての性格も有する制度も導入されている。
平成28年度税制改正により、法人税法で定められた特定譲渡制限付株式とは、役員報酬のうち損金算入が可能な事前確定届出給与に該当するものである。
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