固定資産をめぐる判例・裁決例概説
【第39回】
「倍率方式で算定した相続税評価額は時価を上回るため違法であるという請求が認められなかった事例」
税理士 菅野 真美
相続税法22条において、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価と定められている。よって、「相続または贈与による財産の取得後に何らかの理由によってその価額が低落した場合も、課税価格に算入されるべき価額は、別段の定めがない限り、相続時または贈与時のその財産の時価である」(※)。
(※) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年)734頁
この「時価」とは、客観的な交換価値と考えられるが、財産の時価は一種類とは限らない。納税者が自分に都合の良い時価で相続税の申告書を提出すると課税の公平が保たれず課税実務が混乱する。よって、原則的には、財産評価基本通達(以下「評価通達」という)の定めによって評価した価額が時価である(評価通達1《評価の原則》(2))。
しかし、評価通達に従って算定した価額が、相続時の時価を上回るような場合は、時価で評価すべきである。これは、評価通達の定める方法によるべきでない特別の事情がある場合と考えられるが、どのような場合であろうか。
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