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プロフェッションジャーナル No.491が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年10月20日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.491を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/10/20

日本の企業税制 【第108回】「新しい資本主義実現会議が総合経済対策の重点事項を取りまとめ」

日本の企業税制 【第108回】 「新しい資本主義実現会議が総合経済対策の重点事項を取りまとめ」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   10月4日、政府の「新しい資本主義実現会議」は、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の実施についての総合経済対策の重点事項を取りまとめた。 本年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では、人への投資、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX・DXへの重点投資を官民連携の下で推進するとともに、資産所得の倍増、経済社会の多極集中化、社会的課題を解決する経済社会システムの構築等に取り組むこととしていた。 政府では、10月中に総合経済対策を取りまとめる方向となっており、この「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の決定事項のうち、早期に実施する必要がある重点事項を総合経済対策に反映するため、今回の取りまとめに至ったものである。 今回の取りまとめには、税制改正に関連する事項が多数含まれている。   〇スタートアップ まず、スタートアップに関しては、「スタートアップに関わる税優遇措置を検討するとともに、公共調達によるスタートアップの支援の拡大や、創業時の経営者のリスクを軽減するために個人保証を不要とする制度を措置する」とされている。 10月3日の第210回国会における岸田総理の所信表明演説でも、「第2、第3のトヨタ、ホンダ、ソニーは、彼ら挑戦者の中から生まれる。その強い思いから、本年をスタートアップ元年とし、スタートアップ5年10倍増を視野に、5か年計画の策定に取り組んでいます。公共調達における優遇制度の抜本拡充、税制上の優遇措置や資金面の支援に加え、若く優れたIT分野の才能の発掘・育成、日本と海外のスタートアップ・エコシステムの接続など、スタートアップ人材への投資も進めます」と触れられていた。さらに具体的には、税制上の措置として次の5点が挙げられている。 政府では、スタートアップ育成5か年計画を本年末に策定するため、新しい資本主義実現会議のもとに検討の場としてスタートアップ育成分科会を設け、10月14日に第1回を開催した。   〇資産所得倍増 資産所得倍増プランに関連して、NISAについて、個人金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるべく、その抜本的拡充や恒久化について検討し、本年末の来年度税制改正において結論を得るとされている。また、iDeCoの加入可能年齢の引上げなど、iDeCo制度の改革について検討し、本年末の来年度税制改正において結論を得るとされている。 特にNISAについては、岸田総理が9月22日のニューヨーク証券取引所での講演で、「日本には、2,000兆円の個人金融資産がある。現状、その1割しか株式投資に回っていない。資産所得を倍増し、老後のための長期的な資産形成を可能にするためには、個人向け少額投資非課税制度の恒久化が必須だ」と述べており、その恒久化の期待が高まっている。 政府では、資産所得倍増プランを本年末に策定するため、検討の場として資産所得倍増分科会を設け、10月17日に第1回を開催した。   〇暗号資産の期末評価 この他、Web3.0に関する税制上の措置として、暗号資産事業を行う法人が自ら発行して保有する暗号資産について、事業運営のために継続的に保有する場合は、法人税の期末時価評価課税の対象として課税されないように措置することについて検討し、本年末の来年度税制改正において結論を得ることとされている。 (了)

#No. 491(掲載号)
#小畑 良晴
2022/10/20

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第3回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第3回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   3 暗号資産の私法上の性質・位置付け (1) 総論 暗号資産が所有権の客体となり得るならば、そのことから演繹的に暗号資産の法律関係を導く途が拓かれるが、有体物ではない、姿かたちのない暗号資産は所有権の客体にならないと考えられている(以下の記述については、金融法委員会「仮想通貨の私法上の位置付けに関する論点整理」のほか、泉絢也「暗号資産(仮想通貨)取引と課税」日本租税理論学会編『租税上の先端課題への挑戦』95頁以下(財経詳報社2020)及びそこで引用されている文献参照。後述の(2)の「《更なる考察》 『占有=所有』構成」、「《更なる考察》 私法の議論から得られる示唆」において同じ)。 暗号資産の私法上の性質ないし位置付けについては、上記のほか、知的財産権構成、財産構成、財産権構成、合意構成などによって説明を試みる見解が存在する。 結論を述べると、BTCに代表されるような暗号資産の私法上の性質は現時点では見解の一致をみないが、“消極的な形”での性質決定という点では局地的な共通理解を観察し得る。 すなわち、所有権の客体ではない、債権ではない、知的財産権ではないという点はおおむね見解が一致している。他方、“積極的な形”での性質決定、いい換えれば、暗号資産は所有権や債権などではないとしても、どのように説明すべきであるかという局面においては、見解が対立している。 (2) 各論 (1)のとおり、暗号資産の私法上の性質は現時点では見解の一致をみないが、個別の法的論点において、総論的な議論に関する、すなわち暗号資産の私法上の性質ないし位置付けに関する立場の違いによって結論が異なるかといえば、必ずしもそうとはいい切れない(もちろん、両者は無関係でもない)。 暗号資産の私法上の法律関係に係る個別の法的論点については、無権限者による移転、預託及び信託、ネットワーク参加者以外の者に対する効力(強制執行、相続等)など様々なものを想定し得るが、上記の総論的な議論との関係も含めて、個別の論点に関する私法上の議論はいまだ発展途上の段階にある。 以下では、各論レベルの議論のうち、税法の観点から注目すべき点を簡単に確認する。 ➤《更なる考察》 「占有=所有」構成 無権限者による処分の論点に関して、元の保有者が、無権限者に対し、物権に対する支配が妨げられたときに物権の内容を実現する物権的請求権(又はこれに類似する権利)として、BTCの返還を請求する権利を有するかという問題がある。 BTCについて、金銭における「占有=所有」と同じような規律を働かせる考え方があり得る。 金銭は、硬貨や紙幣といった動産によりその価値が表されているため、動産における事実上の支配すなわち占有の在りかによって、その権利(所有権)の帰属が定まることになり、占有を移転させることで、権利自体を移転させることができる。 BTCのような暗号資産についての事実上の支配は、秘密鍵(パスワード)とこれに対応するアドレスにより、ブロックチェーン上で電子的に記録されている残高を排他的に管理するという状態により実現される。 上記のようなブロックチェーン上の記録のみによって権利の帰属者が決せられるという考え方がある。これによれば、元の保有者に物権的返還請求権(又はこれに類似する権利)は認められない。 この考え方は、そのブロックチェーン上の記録の移転によりBTC自体も移転するとの関係を常に認めることにより、あたかも金銭における「占有=所有」と同じような規律を働かせるものである。 もっとも、BTCが、不特定の者との間で決済・売買等に用いることのできる支払手段として法的に通貨やこれに準じるものと評価できるものであるならば、ブロックチェーン上の記録のみによって権利の帰属が決せられると解し、金銭の「占有=所有」と同じような議論が可能になると考えられるが、BTC(あるいは他の暗号資産)がそのような意味での通貨やこれに準じるものといえるかについては、今後、暗号資産が社会にどのように受け入れられるか不透明であるということもあって、様々な見方があり得ることも指摘されている。 いずれにせよ、ここでは、暗号資産の性質を金銭に寄せることで、暗号資産の法律関係についても「占有=所有」理論を働かせる見解があり得ることに注目しておきたい。 ➤《更なる考察》 私法の議論から得られる示唆 暗号資産の私法上の議論は、暗号資産のあるべき課税関係を検討する際の参考になる。 以下、暗号資産の私法上の性質や法律関係などの議論から得られる示唆を検討する。 (了)

#No. 491(掲載号)
#泉 絢也
2022/10/20

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第43回】「役員への保証料の支払いについて適正額が示された事例」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第43回】 「役員への保証料の支払いについて適正額が示された事例」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 経営者保証の実態 中小企業が資金調達を検討する際、金融機関から融資を受けるという方法が第一の選択肢にあることは疑いがないと思われる。その場合、その法人の財務内容等によっては、金融機関から信用保証協会による保証や、経営者保証として役員個人による保証等を求められることがある。 法人側として、一般的に、信用保証協会による保証を受ける対価として保証料を負担するよりは、役員個人による保証を行うことで、資金調達コストを少なくできる。役員個人が保証することで、信用保証協会への保証料がコストカットできるからである。 この場合において、経営者保証を行った役員に法人が保証料を支払うケースもわずかながら存在する。役員に保証料を支払う方法は、節税や社会保険料削減を実現する手段の1つとして紹介されているものも散見されるところである。 しかし、平成26年2月1日以降、全国銀行協会及び日本商工会議所による「経営者保証に関するガイドライン」が運用開始となったことを受け、金融機関が役員個人にも保証を求めるケース自体が減少傾向にあると感じられるが、本稿では役員個人に保証料を支払うケースを取り上げてみたい。   (2) 役員への保証料の支払いについて適正額が示された事例 役員に支払った保証料の適正額について言及した事例に、宮崎地裁平成12年11月27日判決がある(※1)。以下にその概要について触れる。 (※1) 税務訴訟資料249号731頁、TAINS:Z249-8779。 役員に対して支払った保証料が過大とされた場合、一般的には各損金算入要件に当たらないため損金不算入とされるところ、本件は、役員に支払う保証料率につき税務上相当とされる上限の判断が示された事例であるという点で注目される。 本件においては、納税者は年利率2%の保証料が適正額であると主張し、その根拠として信用保証協会は中小企業育成の見地から保証料率を低く設定していること、民間におけるカードローン等の保証料率は高利率であること等を示したが、このような主張は採用されなかった。   (3) 当該事例が示唆すること 当該裁判例で上記の結論が導かれた理由を要約して示す。 ① 当該役員個人は保証の受託を業としていないため、保証の危険負担に見合う収入のために大量の保証を受託することはあり得ず、債務保証に対して保証料を支払う合理性について他の保証事例を参考とせざるを得ないこと。 ② 納税者の財務内容は健全で経済的信用があるにも拘わらず金融機関が役員個人に債務保証を求めたのは、専ら役員たる地位に着目して債務保証を求めたためである。すなわち、当該役員に対して債務保証という厳格な法的責任を負わせることによって、当該役員に自覚と責任をもって経営に当たらせることを目的としていたこと。 ③ 納税者の本店所在地を管轄する熊本国税局管内の同業類似法人のうち、役員あるいはその親族が債務保証をしている場合において、保証料を支払っているケースは納税者以外に皆無であったこと。 ④ 民間の保証会社は営利行為であり、保証事故発生等に備えて利益を確保するのに対し、役員による保証については保証によって利益を上げるべき要請がないため、民間の保証会社の保証料を参考にすることは相当ではないこと。 ⑤ 信用保証協会は営利目的ではないという点で役員による保証と共通していること。 上記示された内容によれば、法人がその役員に対して保証料を支払うこと自体が異例であること、そして民間の保証会社の情報を参考とすることは適切ではないということが示されており、いわば消去法にて信用保証協会による利率が採用されたといえる。 他方で、裁判所は、「会社の役員が当該会社の債務を保証するについては、諸々の個別的な事情が存在し得るものであり、・・・個々の保証の個別的事情を考慮してその適用の可否及び修正が検討されるべき場合もあり得る」とも判示し、個別的事情が認められることで一定以上の保証料の支払いが認められ得ることを示唆した。   (4) 役員に保証料を支払う場合の実務上の対応 上記事例では、年利1%の保証料率が適正である旨が示されたが、これを根拠に「役員に対する保証料率は1%までなら損金算入可能」と表面上だけで判断することは危険だと考える。実務上において、役員個人に保証料を支給することを検討する場合、少なくとも、その時点で対象会社に適用される信用保証協会による保証料率を確認すべきだといえる(※2)。 (※2) 保証料率については、例えば東京信用保証協会HP「信用保証料率の体系」参照。 その上で、それ以上の保証料率にて保証料を支払うことを検討する場合、役員個人が他社等から保証を引き受けているか、他社における保証料の支払事例等を確認することで、その妥当性と個別的事情の有無を検証することは必要だろう。 また、保証料として支払うという選択肢の他に、実務上、経営者保証の実施の有無を加味して定期同額給与として支給する役員報酬額を判断することも考えられよう。この場合には当然ながら定期同額給与の諸条件を充足することが必要となる。   (了)

#No. 491(掲載号)
#中尾 隼大
2022/10/20

基礎から身につく組織再編税制 【第45回】「適格現物分配」

基礎から身につく組織再編税制 【第45回】 「適格現物分配」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   前回は組織再編税制における「現物分配」に関する基本的な考え方を解説しました。今回は、適格現物分配の要件について解説します。   1 適格現物分配の要件 適格現物分配の要件は、次の2つです(法法2十二の十五)。   2 内国法人から内国法人への現物分配に該当すること 「内国法人から内国法人への現物分配に該当すること」とは、内国法人を現物分配法人とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者が内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります)のみであるものをいいます。   3 完全支配関係があること 「完全支配関係があること」とは、現物分配の直前において被現物分配法人と現物分配法人との間に完全支配関係があることをいいます。合併等と違い、完全支配関係の継続までは求められていません。 (1) 当事者間の完全支配関係 現物分配直前に、内国法人Aと内国法人Bとの間に完全支配関係があることが求められます。 (2) 同一の者との間の完全支配関係 現物分配直前に、内国法人Cと内国法人Dと内国法人Eとの間に同一の者による完全支配関係があることが求められます。   4 適格現物分配に該当しないもの (1) 現物分配を受ける株主が個人の場合 適格現物分配になるための要件は、現物分配により資産の移転を受ける者が内国法人との間に完全支配関係がある内国法人のみであることとされているため、下図のように、個人が現物分配により資産の移転を受ける場合には、非適格現物分配になります。 (2) 現物分配を受ける株主に外国法人がいる場合 適格現物分配になるための要件は、現物分配により資産の移転を受ける者が内国法人との間に完全支配関係がある内国法人のみであることとされているため、外国法人が現物分配により資産の移転を受ける場合には非適格現物分配になります。 〇留意点 個人、外国法人に対する現物分配があった場合には、内国法人に対する現物分配も含めて全体が非適格現物分配になります。   5 具体例 ① 法人株主と個人株主がいる場合 〔前提〕 〇適格要件の判定 金銭による配当と金銭以外の配当が行われた場合には、別々の取引が行われたものとして考えます。この場合、Cに対する配当は金銭によってなされたものであるため、現物分配を行ったとは考えず、A社に対してのみ現物分配を行ったと考えます。現物分配により資産の移転を受ける者が内国法人との間に完全支配関係がある内国法人のみとなるため、適格現物分配に該当します。 ② 現物分配後に完全支配関係が継続しない見込みの場合 〔前提〕 〇適格要件の判定 現物分配を行った後に現物分配法人を売却することを予定している場合においても、現物分配を受ける者が内国普通法人であり、現物分配直前に完全支配関係がある限り、適格現物分配に該当します。合併等で求められているような完全支配関係の継続は、現物分配では要求されていません。   ◆適格現物分配の要件のポイント◆ 現物分配を受ける者は、内国法人(普通法人・協同組合等)のみに限られています。 現物分配を個人、外国法人が受ける場合には、非適格現物分配に該当します。 完全支配関係が現物分配直前にあることが求められています。 合併等と違い、完全支配関係の継続は求められていません。   (了)

#No. 491(掲載号)
#川瀬 裕太
2022/10/20

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第2回】「グラクソ事件(最判平21.10.29)(その2)」~租税特別措置法66条の6、日星租税条約7条1項、ウィーン条約法条約32条~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第2回】 「グラクソ事件(最判平21.10.29)(その2)」 ~租税特別措置法66条の6、日星租税条約7条1項、ウィーン条約法条約32条~   税理士 中野 洋     7 判示2(コメンタリーが「解釈の補足的手段」となること) 本最高裁判決においては、もう1つ重要な判示がなされた。本件において、OECDモデル条約コメンタリー(以下、単に「コメンタリー」)が、「ウィーン条約32条にいう『解釈の補足的な手段』として参照されるべき資料」と判示されたのだ。 本件のように、国内法(CFC税制)と租税条約(7条1項)の抵触関係が問題となる場面における租税条約の解釈については、一般国際法であるウィーン条約法条約を参照することになる。原審では、OECDモデル条約に準拠した7条1項の解釈について「コメンタリーは、その性質上、法的拘束力を有するものではないが・・・・・解釈指針を説明した重要な資料として広く受入れられている」としていた。しかし、最高裁では、第一審よりも、一歩踏み込んだ判示をした。 では、ウィーン条約はどのような規定ぶりになっているのだろうか。下記は条約法に関するウィーン条約31条及び32条(以下、単に「31条又は32条」)の抜粋である。 上記31条と32条の関係については31条が原則的な規定である。32条の「解釈の補足的な手段」が問題となるのは、①31条の解釈手法により得られた意味を確認するため、又は、31条にあてはめて検討してもなお②32条(a)となる場合、あるいは③32条(b)となる場合である。32条の規定ぶりからは、解釈の補足的手段として、特に条約の準備作業及び条約の締結の際の事情が想定されているが、最高裁はここにコメンタリーが入ることを示し、適宜、コメンタリーを参照することに後ろ盾を与えた。ただし、コメンタリーが32条の「解釈の補足的な手段」として参照されるのは、主に上記①~③のいずれかのケースということになり、一足飛びに32条の問題とはならないはずである。 第一審では、コメンタリーが31条3項(a)、(b)に該当するとした国税側の主張が却下されており、それだけに、この点を取り上げた最高裁においては、判断のプロセスについて、各条項に照らした検証が必要であったと思われる。本件においては、31条1項の文脈により得られた意味を確認するため、解釈の補足的手段としてコメンタリーを参照したということになろう。 ただ、租税条約の規定全体について考えた場合、②32条(a)に該当するケースが多くなるのではないか。すなわち、租税条約の規定は、その多くが課税の根拠規定ではなく制限規定である(※6)ことから、必然的に抽象的な表現にとどめる場合が多い。したがって、意味があいまい又は不明確ということになり、32条(a)により解釈の補足的手段としてコメンタリーが参照されるようになるのではないか。 (※6) 増井良啓・宮崎裕子『国際租税法 第4版』東京大学出版会(2019年)31頁。   8 遡及解釈の問題 では、判示が参照したコメンタリーとはどのようなものか。本件は、平成11年の課税事案であるが、平成15年に改訂されたコメンタリーを引用している。改定コメンタリーでは、その1条の23パラグラフで「抵触しないということを、その条約において、明示的に確認したいと考える国もあるが、そのような確認は不必要である」(※7)が、7条の10.1パラグラフでは、CFC税制が源泉地国の企業の利得に基づき算定されるにもかかわらず7条1項ではこれを制限していない点、そして、居住地国に対するCFC課税は源泉地国の企業の利得への課税ではない点を述べ、源泉地国課税の問題と居住地国課税の問題とを切り離して考えるべきことが追加された。 (※7) 川端康之『OECDモデル租税条約2003年版』日本租税研究協会(2003年)55頁及び103頁。 このような解釈は、平成14年のフランス国務院判決などを受けて公表されたものと考えられ、平成11年の課税事案である本件に適用するのは遡及解釈であるとの批判がある。コメンタリー改正と条文解釈の関係については、条文改正が行われていない状態でコメンタリーの改正・追加が行われた場合、それ以前に締結された租税条約の解釈及び適用にも、改正・追加後のコメンタリーが遡及して適用されるとする見解がある(※8)。 (※8) 川田剛・徳永匡子『OECDモデル租税条約コメンタリー逐条解説』税務研究会出版局(2018年)20頁。 最後に、コメンタリーについて留意すべき点を2点挙げる。 1つ目は、コメンタリーがOECD加盟国の行政府、つまり課税する側の解釈であり、課税する側の立場から適宜、公表される可能性が否めないことである。国内法のように国会での審議を経て制定されるものではないこと。 2つ目は、コメンタリーの法的位置付けである。コメンタリーに法的拘束力があるといえるのかどうかについて、直接的には法源とはなり得ないものの、事実上の間接的な法的拘束力を有するといえる余地があること。 ((その3)へ続く)

#No. 491(掲載号)
#中野 洋
2022/10/20

相続税の実務問答 【第76回】「葬式費用の範囲①(告別式当日に初七日の法要を済ませた場合)」

相続税の実務問答 【第76回】 「葬式費用の範囲①(告別式当日に初七日の法要を済ませた場合)」   税理士 梶野 研二   [答] 初七日等の法要のための費用は、葬式費用には該当しません。しかしながら、あなた方のお住まいになられている地域において、初七日の読経等火葬場から戻った後に引き続き行われる儀式まで含めた一連の儀式を葬儀と認識できるほど慣習化しているのであれば、その一連の儀式に要した費用の全額を葬式費用に含める余地はあるのではないかと思われます。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 葬式費用として控除できる金額の範囲 相続税の納税義務者が、無制限納税義務者である相続人の場合、相続税の課税価格の計算上、被相続人の債務で相続開始の際に現に存するもののほか、被相続人に係る葬式費用で、その者の負担に属する部分の金額を控除します(相法13①)。 相続税の課税価格の計算において、葬式費用を控除するのは、葬式費用が「相続開始に伴う必然的出費であり、社会通念上も、いわば相続財産そのものが担っている負担ともいえることを考慮」したものであると説明されています(森田哲也編『相続税法基本通達逐条解説(令和2年11月改訂版)』(大蔵財務協会・2020年)274頁)。 広辞苑(第7版)によると葬式とは、「死者をほうむる儀式」のことをいいますが、相続税の申告において葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとされています(相基通13-4)。 一方、葬式費用に該当しない費用として、相続税法基本通達では、次のものを掲げています(相基通13-5)。 (※) 通達では、「香典返戻・・費用」と表記していますが、「香典返礼・・費用」の方が適切だと思われます。   2 葬式費用に該当するかどうかの判断 ところで、葬式の方式は、被相続人や家族の信仰する宗教、地域の慣習や社会環境、その家族の考え方によりさまざまであり、また、その時代背景によっても変化します。例えば、新型コロナウイルス感染症のまん延と共に、いわゆる家族葬による葬儀が多くなりました。葬式費用に該当するかどうかの判断は、つまるところ具体的な個々の事案ごとに、社会通念に従って判断することになります。 初七日の法要は、本来は、故人が亡くなってから7日目に、親族など故人と関係が深かった人に集まってもらい、執り行われます。しかしながら、葬儀の後、わずかな日数をはさんで親族などに再び集まってもらうことは、これらの者に負担をかけることとなり、現下の経済社会環境の下では、しだいに難しくなってきています。そのため、最近では、故人を火葬にしたその日のうちに初七日の法要を行ってしまうことも珍しくありません。このような法要のやり方を「繰上げ法要」ということもあるようです。 国税庁の通達では、法会に要する費用は葬式費用には該当しないとしています。ここでいう「法会」とは、故人の追善供養などで行われる法要(法事)の意味で用いられています。初七日の法要は、この「法会」に該当することとなりますので、初七日の法要のために要した費用は、相続税の課税価格の計算上、葬式費用として、控除することはできません。 〈参考:平成10年6月12日裁決(仙裁(諸)平9-54)(非公表)〉 しかしながら、初七日の法要が、通夜、告別式、火葬など一連の葬式の儀式と一体となって行われるような場合には、一概に、葬式費用には該当しないとは言えず、その地域の習慣や、時代背景により異なった判断がされることもあり得ると考えられます。   3 ご質問の場合 一般的には、初七日の法要のための費用は、葬式費用には該当しません。しかしながら、葬式の方式は、宗教、地域や家族の考え方などにより様々であり、ある費用が葬式費用に該当するかどうかは、結局のところ、個々の事案ごとに社会通念に従って判断することになります。葬式の日に火葬場から戻った後に、初七日の法要として、引き続き僧侶による読経、焼香、精進落としの食事が行われていたとしても、それがあなた方のお住まいになられている地域において葬式のスタイルとして慣習化しており、これらを含めて一連の葬式の儀式とみることができるようであるならば、その費用を葬式費用に含める余地があるのではないかと思われます。 (了)

#No. 491(掲載号)
#梶野 研二
2022/10/20

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第56回】「敷地所有権者の相続に係る貸付事業用宅地等の特例の適用(配偶者居住権設定後に二次相続があった場合)」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第56回】 「敷地所有権者の相続に係る貸付事業用宅地等の特例の適用 (配偶者居住権設定後に二次相続があった場合)」   税理士 柴田 健次   [Q] 甲の相続(一次相続)では、下記のとおり甲の建物持分について配偶者居住権が設定され、甲の配偶者である乙が配偶者居住権及び敷地利用権を取得し、甲の建物所有権の持分、敷地所有権及び土地所有権は、長男である丙が取得しました。甲の相続後は、乙がしばらくの間、居住の用に供していましたが、乙が老人ホームに入所するのを契機として、乙は丙の承諾を得て、第三者に賃貸することになりました。乙が貸付の用に供した後、3年経過後に丙に相続が発生しました。 丙の遺言書には、土地及び建物については乙に遺贈する旨が記載されています。乙は丙と生計を一にしていました。この場合に乙が適用できる小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例の適用面積は何㎡でしょうか。 なお、丙は乙から土地の賃料は受け取っていません。 【相続関係図】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 【丙の相続時における土地に係る相続税評価額】 [A] 乙は145㎡(200㎡ × 58,000,000円/80,000,000円)について小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例(以下単に「特例」という)を受けることができます。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 配偶者居住権等が及ぶ範囲 配偶者居住権が設定された場合には、居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得することになります(民法1028)。居住建物の全部というのは、配偶者が相続開始の時に居住していた建物の全部という意味ですが、被相続人が土地又は建物の持分を共有で有している場合には、配偶者居住権は被相続人の建物の持分に対して設定し、敷地利用権は、被相続人の土地の持分と建物の持分のいずれか低い方の持分に対して設定することになります(相法23の2①一かっこ書・③かっこ書、相令5の7)。 したがって、本問の場合には、甲の相続時において甲の建物持分である1/2部分に対して配偶者居住権及び敷地利用権が設定されます。 また、老人ホームに入所して居住の用に供しなくなった場合においても、下記の配偶者居住権の消滅事由に該当しなければ、配偶者居住権は存続することになります。第三者に居住建物の使用をさせるときは、居住建物の所有者の承諾を得る必要があります(民法1032)。この場合の賃料の帰属は、居住建物について使用及び収益をすることができる配偶者居住権者となります。 配偶者居住権の消滅事由の例としては、下記のものがあります。 なお、上記以外にも配偶者居住権の目的となっている建物及びその敷地を配偶者が取得した場合には、配偶者居住権と建物所有権が同一人に帰属することになりますので、配偶者居住権は混同により消滅することになります。本問の場合には、乙は丙の相続により居住建物及び敷地所有権を承継していますので、配偶者居住権及び敷地利用権は消滅することになります。   2 二次相続に係る配偶者居住権及び敷地利用権の相続税評価額 配偶者居住権の設定後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得した配偶者居住権の目的となっている建物及び敷地所有権の相続税評価額については、相続税法23条の2の規定に準じて計算することになります(相基通23の2-6)。 具体的には、二次相続発生時において配偶者居住権の設定があったものとして計算しますので、二次相続開始時における乙の平均余命年数等を使用することになります。当然ですが、乙の平均余命年数は、一時相続時よりも二次相続時の方が短くなっていますので、敷地利用権の相続税評価額は、路線価の上昇等がない場合には、二次相続時の方が低くなります。 なお、居住建物の一部が賃貸用である場合には、賃借人に権利を主張することはできないため、配偶者居住権及び敷地利用権の評価額の計算の基礎となる金額から「賃貸の用に供されている部分」を除くこととされています(相法23の2①一かっこ書・③一かっこ書、相令5の7)。ただし、そのような取扱いは配偶者居住権設定時(本問の場合には一次相続時)に賃貸している場合であり、本問の場合のように配偶者居住権設定後に賃貸している場合には、配偶者居住権に基づき賃貸していますので、賃貸の用に供されている部分は除外しないで配偶者居住権及び敷地利用権を計算することになります。 また、建物を賃貸している場合には、借家権控除を考慮する必要があるかどうかが問題となりますが、配偶者居住権に基づき賃貸されているため、配偶者居住権の権利内に賃借権も包括されていることから、借家権控除を考慮する必要はありません。   3 相続税評価額の算定と面積の計算 敷地利用権及び敷地所有権に区分し、相続税評価額と面積を計算します。上記2で解説のとおり、配偶者居住権に基づき賃貸している場合には、賃貸されている部分を除外する必要はなく、借家権控除を考慮して計算する必要もありません。 ・敷地利用権の相続税評価額: ・敷地所有権・土地所有権の相続税評価額: ・敷地利用権の面積: ・敷地所有権・土地所有権の面積: なお、敷地利用権は乙に属する財産となりますので、丙の相続時において丙の相続財産に計上する必要がありません。 また、乙が配偶者居住権の目的となっている建物及びその敷地を取得したことにより、配偶者居住権は消滅することになりますので、乙に相続(三次相続)が発生した場合には、通常の土地家屋の所有権として、貸家・貸家建付地として評価を行い、要件を満たせば特例の対象となります。   4 被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等の範囲 貸付事業用宅地等は、被相続⼈又はその被相続人と生計を一にしていた親族(以下「被相続人等」という)の貸付事業の⽤に供されていた宅地等であることが要件の1つとなっています。したがって、その宅地等が「誰の」、そして何の「用途」に供されていたかが重要となります。 租税特別措置法関係通達69-4-4の2(宅地等が配偶者居住権の目的となっている建物等の敷地である場合の被相続人等の事業の用に供されていた宅地等の範囲)では、下記のとおり定められています。 本問の場合には、上記通達の(2)に該当し、被相続人の生計一親族である乙の貸付事業の用に供されていた建物等(丙及び乙が所有)で、被相続人の生計一親族である乙が配偶者居住権者であるものの敷地の用に供されていたものに該当します。 したがって、生計一親族である乙の貸付事業の用に供されていた宅地等に該当することになります。   5 本問の場合の特例適用の可否 貸付事業用宅地等の意義は、【第39回】で解説していますが、生計一親族である乙が相続税の申告期限まで引き続き宅地等を有し、かつ、引き続き自己の貸付事業の⽤に供していれば特例の対象となります。 仮に乙ではなく丁が土地建物を相続により承継した場合には、配偶者居住権はそのまま継続し、乙が引き続き賃料を受領することになり、丁は貸付事業を承継していませんので、特例の適用を受けることはできません。   6 本問の場合の選択特例対象宅地等の面積 乙が取得した敷地所有権・土地所有権の面積145㎡となります。   ★実務上のポイント★ 配偶者居住権に基づき賃貸している場合には、借家権控除を考慮しないで敷地利用権及び敷地所有権を計算することになりますので、計算方法に注意しておきましょう。 本問の場合には、配偶者が取得することにより特例の適用を受けることはできますが、配偶者居住権は消滅し、配偶者死亡時には通常の所有権として財産評価をする必要があります。実務的には、二次相続の影響と三次相続の影響も踏まえて、二次相続の分割のアドバイスをする必要があります。   (了)

#No. 491(掲載号)
#柴田 健次
2022/10/20

給与計算の質問箱 【第34回】「年末調整書類の書式の前年からの変更点」

給与計算の質問箱 【第34回】 「年末調整書類の書式の前年からの変更点」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 年末調整書類の書式について前年から変更がありましたら教えてください。 A 年末調整書類の書式の変更点は以下のとおりである。 * * 解 説 * * 1 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 令和3年分と令和4年分の書式は同じであるが、令和5年分の書式には変更点がある。 【令和4年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の一部】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【令和5年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の一部】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 上記につき国税庁「令和4年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」及び「令和5年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」よりそれぞれ抜粋の上作成。 〈変更点①〉 30歳以上70歳未満の非居住者で次のいずれにも該当しないものは扶養控除の対象外になったため、「非居住者である親族」の欄にチェック欄が追加された。 【非居住者である扶養親族が30歳以上70歳未満の場合の源泉徴収事務における確認書類】 (注) 扶養控除等申告書を受領する時の親族関係書類及び年末調整を行う時の送金関係書類の確認については、現行のとおり必要となります。ただし、年末調整を行う時に38万円送金書類の確認をする場合には、現行の送金関係書類の確認をする必要はありません。 (出典:国税庁「令和4年分 年末調整のしかた」) 〈変更点②〉 住民税に関する事項に「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」の欄、「寡婦又はひとり親」の欄が追加された。   2 給与所得者の保険料控除申告書 令和3年分と令和4年分の書式は同じである。   3 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書 令和3年分と令和4年分の書式は同じである。 (了)

#No. 491(掲載号)
#上前 剛
2022/10/20

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第132回】元気寿司株式会社「特別調査委員会調査報告書(2022年8月29日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第132回】 元気寿司株式会社 「特別調査委員会調査報告書(2022年8月29日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【元気寿司株式会社特別調査委員会の概要】   【元気寿司株式会社の概要】 元気寿司株式会社(以下「元気寿司」と略称する)は、1979年7月設立(設立時の社名は元禄商事株式会社)。複数回の商号変更を経て、1990年3月から現商号。国内外での寿司レストランの展開を主たる事業内容とする。売上高44,607百万円、経常利益245百万円、資本金100百万円。従業員数566名(2022年3月期実績)。2012年5月に資本・業務提携に合意した株式会社神明ホールディングスが発行済株式の40.78%を所有する筆頭株主である。本店所在地は栃木県宇都宮市。東京証券取引所スタンダード市場上場。会計監査人は有限責任監査法人トーマツさいたま事務所(以下「監査法人トーマツ」と略称する)。 不適切な支出が発覚した店舗開発部の組織は、調査報告書で、次のように説明されている。   【特別調査委員会調査報告書の概要】 1 特別調査委員会設置の経緯 (1) 不適切な支出に係る内部通報 2022年5月10日、元気寿司の常勤監査役である山口高司氏(報告書上の表記は「A氏」。以下「山口常勤監査役」という)は、ヘルプラインの外部通報窓口を務める法律事務所から、新規店舗出店時の工事において不適切な支出がなされた疑いがあること等について通報(本件通報)があった旨の報告を受けた。 具体的には、本件通報においては、店舗開発部長であるB氏の指示により、甲店に関して床上げ工事やパーテーション工事が行われていないにもかかわらず、架空の工事費用が元気寿司から建築業者であるa社に対して支出されている疑いがあること、乙店に関して元気寿司が負担すべきでない解体工事費用が元気寿司からa社に対して支出されている疑いがあること、B氏が、複数の会社の肩書を持つ不動産仲介ブローカーであるa氏と話し合って、入札等を経ずにa社といった建築業者を店舗の建築業者として指定している疑いがあること等が指摘されていた。 また、2022年5月15日、元気寿司の会計監査人である監査法人トーマツは、本件通報と同内容の通報を受けたため、翌16日、元気寿司監査役会に対して、2022年3月期決算について適正な監査意見を表明できる状況にない旨を通知し、さらに、翌17日、代表取締役社長である法師人尚史氏(以下「法師人社長」と略称する)に対し、本件通報に係る事実及び本件事案に類似する事案の存否等について、調査を実施する必要がある旨の指摘を行い、元気寿司の経営層が本件通報を認識するに至った。 元気寿司は、会計監査人の指摘を踏まえ、本件事案及び本件事案に類似する事案の存否及び事実関係の調査を改めて行うこととし、また、公正で適正な調査を行うため、外部の有識者で構成される特別調査委員会を、2022年5月27日付で設置し、新規店舗出店時の工事における不適切な支出の有無に関する事実関係の解明等を目的とする調査(以下「本件調査」という)を行うこととした。 (2) 特別調査委員会に対する情報提供 特別調査委員会は、2022年7月27日、元気寿司の取引先から、B氏が新規店舗出店時において、仲介実体がないにもかかわらず、元気寿司から仲介業者等に仲介手数料・企画料を支払わせ、その中からバックリベートとして現金を受け取っていたとの情報提供を受けたことから、本件についても事実関係の解明等を目的とする追加調査を行うこととした。 2 特別調査委員会の調査により判明した不正の概要 調査委員会は調査結果を次のようにまとめている。 調査の結果、元気寿司において、店舗開発部長であったB氏が担当する複数の店舗に係る建築工事において、B氏が、架空工事の発注や工事費用の付け替えを指示したり、建築業者からの架空の名目での請求であると認識しつつも、その名目については重視せず、架空の名目での支払をそのまま承認した事実が認められ、建築工事費用に関して不適切な支出が行われていた。 また、B氏は、店舗開発担当者であるL氏が担当する複数の店舗において、バックリベートを受領するため、仲介業者であるu社に対して、業務の実体がないにもかかわらず、架空の仲介手数料・企画料名目の請求を指示し、元気寿司において仲介手数料・企画料に関して不適切な支出が行われ、B氏がバックリベートを受領していた事実が認められた。 しかし、特別調査委員会の調査に対し、B氏は、架空工事の発注や工事費用の付け替えについては、明確に自身の関与を認めておらず、バックリベートは一切受け取っていないと否定しているとのことである。 なお、特別調査委員会の調査によって、u社以外にも、仲介業者としての業務の実体を確認することができなかった社に対する仲介料・企画料の支払が、3社で12,670千円であったことが判明しており、調査委員会は、架空であるとの認定には至らなかったものの、架空の仲介手数料・企画料である強い疑いが残ると評価している。 3 2021年に元気寿司が実施した社内調査 (1) G氏に対する従業員からの報告とそれに基づく調査 常務執行役員で店舗開発部を担当していたG氏は、2021年7月、従業員から、B氏の攻撃的な言動や暴言で店舗開発部員が精神的苦痛を感じていること、甲店において、床上げ工事を実施していないにもかかわらず、B氏が、a社が工事をしたかのように工作し、元気寿司がa社に工事代金を支払ったと疑われること、B氏が、物件オーナー指定である等の理由により建築工事業者を相見積りなしに起用するよう指示することや、関西の物件について特定の仲介業者を起用することが多いといった報告を受け、まずは、甲店において架空の床上げ工事費用が請求された疑いに関する調査を行い、その後にB氏によるパワーハラスメントに関する調査を行うこととした。 2021年10月半ば頃、G氏は、それまでの調査結果を踏まえ、店舗開発部で設計を担当するC氏及びK氏に対して、顛末書を作成するよう指示し、事実関係をまとめさせたうえで、元気寿司オフィスにおいて、法師人社長に対して、甲店及び丙店に関する調査結果を報告し、また、併せて、乙店について、本来元気寿司が負担しない解体費用の支払の疑いがある点についても報告した。G氏は、法師人社長に対して、調査結果を踏まえてB氏に対するヒアリングを実施する予定である旨報告したが、法師人社長は、報告された問題の重要性を踏まえると、会社として十分な体制を整えて調査を行う必要があると考え、事前に法師人社長が情報を共有していた取締役専務執行役員大沢祐司氏(報告書上の表記は「P氏」。以下「大沢専務執行役員」という)及び執行役員人事部長瀧川沙織氏(報告書上の表記は「I氏」。以下「瀧川執行役員」という)、加えて内部監査室長のQ氏と一緒に、その後の調査を実施するよう、G氏に指示した。 (2) 関係者のヒアリング調査 2021年11月2日、G氏は、B氏に対するヒアリングを実施したが、B氏は工事費の付け替え、不適切な支出について否認。G氏は議事録を大沢専務執行役員、瀧川執行役員及び内部監査室長Q氏と共有した。大沢専務執行役員及び瀧川執行役員は、G氏とB氏の人間関係が良好ではないと認識していたため、B氏から直接話を聞く方が望ましいと考え、B氏に対するヒアリングを実施することとした。 2021年11月8日、大沢専務執行役員、瀧川執行役員及び内部監査室長Q氏は、B氏に対するヒアリングを実施したが、B氏は、工事費の付け替え等は認識していないと述べ、業者からのバックリベート等の個人的な利益も得ていないと述べた。ヒアリングの議事録は、法師人社長とも共有していた。また、同年11月17日には、大沢専務執行役員及び瀧川執行役員は、顛末書作成者であるC氏及びK氏に対するヒアリングを実施したが、顛末書作成の意図を聴取したにとどまり、架空工事の有無や工事費の付け替えの有無等に関する具体的な事実関係や証拠の確認は行わなかった。 大沢専務執行役員は、この問題の本質は、B氏とG氏のコミュニケーション不足によって、店舗開発部内の業務が円滑に回っていないという点にあり、また、工事費の付け替え等の疑いについては、会計上問題であるとの意識が乏しかったこともあり、今後事実関係が店舗開発部内において整理され、問題があれば店舗開発部内において対応が行われるべきであると考えていた。 こうしたヒアリング調査の結果、法師人社長は、より重視していたB氏によるバックリベート等による個人的利益の受領の点については、確固たる証拠はないと再度認識するとともに、顛末書に記載されたC氏及びK氏の供述の信用性には疑問がないとは言えず、工事費の付け替えや架空工事が行われていたとしても、そのような行為が行われているのは、一部の物件にとどまるものと考えた。そのため、法師人社長は、実際に工事費の付け替えや架空工事が行われたか、取引先への反面調査を実施するなどして確認することや、他に同様の行為を行った物件が存在しないか、更に調査を拡大する必要はないと判断した。 (3) 戊店の空賃料の問題に関する監査役会による調査及び関係者の処分 2021年9月のオープンが予定されていた戊店は、建築費用の大幅な予算超過を理由に設計変更が行われたため、店舗オープンが2022年3月まで遅れ、物件オーナーとの交渉の結果、同期間の賃料(空賃料)約900万円について、元気寿司が支払うこととなった。空賃料について、店舗開発部が、2021年10月15日の出退店委員会で報告をしたところ、議事録の共有を受けた監査役会は、経緯について明らかにする必要があると考え、2021年11月16日以降、店舗開発部関係者を対象として調査を行い、山口常勤監査役が主に関係者のヒアリングを行った。その結果、監査役会は、店舗開発部(少なくとも店舗設計課)は、2021年4月下旬から5月上旬頃には店舗オープンの遅れを認識していたものの、それを同年10月15日の出退店委員会まで報告しなかったことの問題等について、監査役会の意見をまとめた文書を同年12月14日に法師人社長及び大沢専務執行役員に提出した。 ヒアリング調査の結果、法師人社長、大沢専務執行役員及び山口常勤監査役は、賞罰委員会による賞罰検討の手続を行う必要があるとの結論に達した。2022年1月18日、賞罰委員会が開催され、法師人社長及び大沢専務執行役員が出席し、山口常勤監査役及び内部監査室長Q氏が同席し、「戊店開発時に、報告義務を怠り会社承認なく多額の費用決済がなされた」として、G氏については常務執行役員から執行役員への降格、B氏については出勤停止7日間とすることなどが決定された。 (4) 特別調査委員会による小括 特別調査委員会は、関係者の認識について、従業員から問題提起された、工事費の付け替えや架空の工事という問題は、それが事実であるとすれば、適切な経理処理に明確に違反するものであり、重大な事柄であるにもかかわらず、法師人社長の指示を受けてヒアリングを行った大沢専務執行役員及び瀧川執行役員は、B氏がバックリベートを受け取っているとすれば重大な問題であるとの認識はあったものの、工事費の付け替えや架空工事それ自体が会計上重大な問題を招来することについて十分に認識できていなかったと判断した。 さらに、法師人社長については、ヒアリングにおいて、バックリベートの受領の事実が認められなかったとしても、工事費の付け替えや架空工事それ自体、会計上不適切な行為であり問題であると認識していたと述べているものの、C氏及びK氏の顛末書に記載されていた工事費の付け替えや架空工事の疑いについては、工事費の付け替えや架空工事という話ではなく、ある工事で業者に泣いてもらう(代金を減額してもらう)代わりに他の工事で仕事をしてもらうといった価格交渉が行われていた可能性があると結論付けていると評価した。 そのうえで、法師人社長、大沢専務執行役員及び瀧川執行役員が、G氏らによる問題提起を意図的に握りつぶし隠蔽したとまでは認められないものの、問題の重大性に鑑みれば、法師人社長としては、顛末書の信憑性に疑問があるとの理由で調査を中止するのではなく、顛末書の内容が真実なのかを確認するため、実際に工事費の付け替えや架空工事が行われていたのか調査し、場合によっては、業者に対する反面調査を実施することも指示するべきであり、さらに、他の開発案件においても同様の行為が行われていないか調査を指示して然るべきであったという点で、当時、法師人社長が十分なリスク認識の下、十分な対応を尽くしたとは言い難いと批判した。 4 原因・背景(調査報告書44ページ以下) 特別調査委員会は、不適切な支出が行われた原因として、B氏が、店舗開発部において新規出店に関連する開発業務の支払の場面において、店舗開発部長として承認権者であったことを奇貨として、自らが担当する開発案件を当初設定された予算に近づけることのみならず、自らの利益を得るためにその権限を濫用していたことにあると考えられると結論づけたうえで、その原因と背景を次のようにまとめている。 ここでは、「コンプライアンス違反への対応体制の不十分さ」について、特別調査委員会による指摘を見ておきたい。 特別調査委員会は、元気寿司において、2021年度に発覚した工事関連の問題は、会計上の問題のみならず、不透明な支出が容認されている状態が、違法なバックリベート等のより深刻な不正行為の温床となり得ることを理解したうえ、経営判断上も重大な意味を持つ問題であると認識し、徹底的に事実関係を解明するとともに、速やかに他の建築工事でも同様の行為が行われていないか調査して然るべきであったと指摘したうえで、元気寿司の経営層の間では、こうした本件の問題の重大性についての認識が十分に共有されていたとは言い難いと結論づけている。 その背景には、本件の調査に関わった経営層において、特に会計に関する専門知識を十分に備えた者がおらず、会計上の問題について正確な問題意識を持つことができなかったという事情が存在するとともに、会計の知識・知見を有する経理部長や監査役会への情報共有が行われなかったために、会計の観点からの検討が不十分となったことを指摘した。 そして、結果として、コンプライアンス違反が窺われる事態に対して、多角的な視点でリスク分析をする体制が十分に構築されていなかったために、経営層において、本件が会計上の問題のみならず、経営判断上も重大な問題に繋がりかねない問題であるとの問題意識を共有することができず、徹底した調査を行うには至らなかったという判断を示している。 5 再発防止策の提言(調査報告書49ページ以下) 特別調査委員会は、上記の「原因・背景」を踏まえたうえで、再発防止策を次のように提言している。 特別調査委員会は、「コンプライアンス違反への対応体制の強化」について、次のような具体策を提言している。   【調査報告書の特徴】 回転寿司チェーンで国内第5位、「魚べい」「元気寿司」などのブランドで店舗展開を進める元気寿司で、内部通報をきっかけに発覚した架空工事代金の支払疑義は、調査の過程で、店舗開発部長によるバックリベートの受取りという横領事件へと発展した。 特別調査委員会の調査に対して、B氏は、最後までバックリベートの受取りを否認しているため、最終的には、刑事事件として裁判の場で事実が明らかになることと思われるが、第三者委員会等の調査結果が、裁判所により否定される事件が複数報じられていることもあってか、本調査報告書では、否認しているB氏に関して、抑制された表現に止まっているように感じられた。 1 店舗開発担当常務執行役員と店舗開発部長との軋轢 元気寿司の「人事異動に関するお知らせ」の履歴を追うと、B氏は、2018年4月1日付で店舗開発部長に昇進した平木剛氏であり、G氏は、平木氏の前任の店舗開発部長を兼務していた店舗開発部担当常務執行役員の大河原誠氏であったことがわかる(平成30年3月14日「人事異動に関するお知らせ」参照)。 両氏の社歴等は、報告書には記載がないのだが、関西地区での出店を推進していた元気寿司にとって、前職で関西地区での新店舗展開の経験を有していたB氏を昇進させて、出店を加速することが企図された人事異動であったかもしれない。 その後、2019年6月21日付で、取締役専務執行役員田中義昭氏が店舗開発部を担当することとなった(2019年6月24日「役員の異動に関するお知らせ」参照)が、同氏は、2020年6月29日付で非常勤取締役となって執行から離れている(2020年5月20日「役員の異動に関するお知らせ」参照)ことから、再び、G氏が店舗開発部を担当していたものとみられる(人事異動の公表はなく、執行役員の職務分掌の変更については判然としない)。 なお、G氏は、2021年末から2022年初め頃、法師人社長に対して、「B氏とのコミュニケーションが上手くいっていないことや新業態店舗の開発のプレッシャー等を理由に、役職を降りたい」と申し出て、その後、2022年2月に休職することとなっていることから、社内での立場は、むしろ部下であるはずのB氏の方が強かった面があったのかもしれない。 この点、調査委員会は、B氏による業務がブラックボックス化した背景として、「元気寿司が、これまで出店の経験が乏しい関西エリアへの出店を拡大していく中で、B氏の仕事の進め方について周囲が疑問を投げ掛けることができない雰囲気が形成されていた」との見解を示すとともに、B氏は、日常的に、部下に対して威圧的な言動をとることが多かったため、その仕事の進め方について疑問を投げ掛けにくい状況にあったとも評している。 2 2021年度調査における疑問―何のための社外取締役・社外監査役か 2021年の社内調査の時点で、元気寿司の社外取締役3名の内訳は公認会計士2名と弁護士1名であり、社外監査役3名は全員が公認会計士であった。特別調査委員会は、調査を行った執行役員らが、「工事費の付け替えや架空工事それ自体が会計上重大な問題を招来することについて十分に認識できていなかった」と評価していることから、社外取締役・社外監査役に報告したり、調査の協力を仰いだりという発想には至らなかったと言えばそれまでだが、社外取締役・社外監査役に有資格者の名前を並べて、コーポレート・ガバナンスに問題がないことを装っているのではないかと勘繰りたくなってしまう。 本来であれば、社外取締役・社外監査役に相談や報告がなかったことについて、執行部門の取締役に厳重に抗議をしたり、場合によっては、社外取締役・社外監査役を辞任したりすべき局面ではないかと思料するのだが、1人の社外取締役を除いて全員、株主総会で再任されているようである(退任した社外取締役も同じ事務所の別のパートナー弁護士と交代したものであり、円満な交代であったことが推測できる)。 3 不適切行為関連損失 元気寿司が、2022年8月29日に公表した「2022年3月期有価証券報告書」には、連結損益計算書上、「不適切行為関連損失」29,860千円が営業外費用として計上されている。 これは、注記によれば、「特別調査委員会の調査で判明した影響額等を不適切行為関連損失として適正に処理」したということである。 4 関係者の処分 元気寿司は、2022年9月29日、「当社従業員の処分に関するお知らせ」をリリースして、「不適切な支出を行っていたことに加え、当社取引先からバックリベートを受領していた事実が認められた従業員1名に対して、厳正な処分を行うことを検討しておりましたが、社内規程に基づき、2022年9月28日付で懲戒解雇処分」としたことを発表するとともに、「当該従業員に対して、刑事告発または民事上の損害賠償請求を行うことを検討」しているとした。 また、同日付の「代表取締役及び役員の異動に関するお知らせ」では、同日付で、法師人代表取締役社長が取締役執行役員へ、大沢取締役専務執行役員が取締役執行役員へとそれぞれ降格し、代表取締役会長藤尾益雄氏が社長を兼務する取締役会決議が公表された。なお、同リリースでは、異動の理由については「経営体制の強化のため」と説明されている。 (了)

#No. 491(掲載号)
#米澤 勝
2022/10/20
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