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税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第13回】「争いが生じやすい中古建物の評価」~鑑定評価で重視される市場性の観点~

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第13回】 「争いが生じやすい中古建物の評価」 ~鑑定評価で重視される市場性の観点~   不動産鑑定士 黒沢 泰     1 建物が古くなっても固定資産税評価額が下がらない理由 これに関しては次の2つの要因が考えられますが、本稿と深く関連するのは要因2です。 ➤ 要因1 固定資産税の評価の仕組みに起因する場合 ➤ 要因2 建物の評価額の下限が再建築価格の20%とされていることに起因する場合 ➤ 要因1について 建物は3年に一度の評価替時に次の算式で評価額を見直すこととされていますが、建物が古くなり経年減点補正率が下がっても、再建築価格が上昇していくことがあります(人件費や資材高騰によります)。このような場合、建物は見かけ上は古くなっても、前年度の評価額のまま据え置かれることがあります。 (※1) 課税の対象となった建物と同一のものを評価替えの時点で新たに建築する場合に必要とされる建築費をいいます。 (※2) 建物は築年数の経過によって損耗していくため、経過年数の状況に応じて価値を減少させるために適用する割合をいいます。 ➤ 要因2について 経年減点補正率は一定年数を経過しても、再建築価格の20%を超えて下がらない仕組みとなっています(本稿では掲載を省略しますが、関心のある方は固定資産評価基準別表第9「木造家屋経年減点補正率基準表」、別表第13「非木造家屋経年減点補正率基準表」を参照ください)。そのため、いくら建物が古くなっても、それだけの理由では評価額は下がらないということになります(イメージ図を以下に掲げます)。 〈一定年数以上経過した建物の場合〉 それでは、この20%の根拠はどこに求めればよいでしょうか。これに関しては賛否を含めていくつかの見解が示されていますが、筆者の調査したところによれば、おおむね次の2つに集約されます。   2 鑑定評価の視点 鑑定実務においては、建物価格を求めるに当たり定額法等を用いて減価修正を行う場合でも、残価率をゼロとして評価する(=再調達原価(※3)全体を減価の対象として捉える)ことが一般的です。 (※3) 固定資産税の評価では(※1)の再建築価格に相当するものです。 その理由は、鑑定評価では市場性の側面を重視して価格にアプローチしており、経済的耐用年数満了時においては、通常、市場価値はないものと判断しているためです。 もちろん、建物が建築後一定期間を経過したという理由だけでは、それがそのままゼロ評価につながるわけではなく、価格時点において今後何年使用に耐え得るかという点を判断の上で鑑定評価が行われます。その際、対象不動産の用途や利用状況に即して劣化の程度や市場競争力の程度を判定し、これに応じた経済的残存耐用年数を査定することが建物の鑑定評価では重要となります。 例えば、建築当初に経済的耐用年数が30年と見積もられていたところ、耐用年数が満了してもその後3年間は利用価値(経済価値)が認められると判定されれば、現価率(※4)は、 と計算されます。 (※4) ここでは、再調達原価に対する現時点での価値割合を示すという意味で「現価率」という用語を使用しています(「原価率」とは異なります)。 鑑定評価の経験則から推した場合、建築後の年数が相当経過した建物に関して固定資産税評価で適用される残価率(20%)は現実を反映しないのではないかという声が多く聞かれます(さらに、建物の老朽度が著しい場合は、冒頭に述べたように「建物及び敷地の評価額 = 更地価格 - 家屋の撤去費」という考え方が適用されることがあります)。   3 税務の常識(財産評価基本通達、固定資産評価基準)と鑑定評価の常識との相違点 以上、中古建物の評価額に関し、財産評価基本通達や固定資産評価基準を適用して算定した結果と鑑定評価額との間に乖離が生ずる場合の要因を検討してきました。これらを通じ、鑑定評価においては、財産評価基本通達や固定資産評価基準に比べて、物的な側面以上に市場性という観点が一層重視されることが読み取れたと思います。一概に中古建物といっても、鑑定評価では、他の類似物件と比較してそれが市場でどれだけの競争力を有しているかを評価に反映させるという考え方が重視されているということです。財産評価基本通達や固定資産評価基準のような税務評価と鑑定評価の間に捉え方や価格の乖離が生じる要因はこの点にあるものと推察されます。 なお、今まで述べてきた内容と一部重複する点もありますが、鑑定評価の過程では個々の建物を精査してその損傷度を把握する(= 物理的な減価要因の把握)だけでなく、機能的な減価要因(= 耐震性が劣る等)及び経済的な減価要因(= 代替不動産と比較して競争力が劣る等)も把握の上、評価額に反映させることが必要となります。 これらの事情も踏まえ、建物の評価に関しても税務の常識と鑑定評価の常識との間には本質的な相違点があるものと理解しておけば、疑問点の払拭に少なからず役立つのではないでしょうか。 参考までに、中古建物の評価額に関し、固定資産評価基準や財産評価基本通達の取扱い(再建築価格の20%とすることが妥当である旨)が争点とされた事例としては、例えば以下のものがあげられます。 (了)

#No. 403(掲載号)
#黒沢 泰
2021/01/21

〈知識ゼロからでもわかる〉ブロックチェーン技術とその活用事例 【第2回】「ブロックチェーンの技術と特徴」

〈知識ゼロからでもわかる〉 ブロックチェーン技術とその活用事例 【第2回】 「ブロックチェーンの技術と特徴」   東京ハッシュ株式会社 代表取締役 段 璽   はじめに ブロックチェーンは、取引記録が全てブロックの中に入っており、それらがチェーンによって繋がって今までの全ての取引が記録されていることになる。ブロックチェーンをより理解するために、ブロックチェーンに活用されている技術や使用される専門用語を今回は概説する。   1 P2Pネットワーク ブロックチェーンはP2P(Peer to Peer)ネットワークを用いてデータを管理し、システムダウンしない分散システムを実現している。P2Pネットワークとは、従来のクライアントサーバ型のような中心となるサーバが存在せず、対等の立場のネットワーク参加者がデータを保持又は送受信し合うネットワークのことである。 これにより、ネットワーク参加者であるノード(【第1回】参照)で取引記録を共有し、誰もがブロックチェーンを閲覧することができ、お互いに監視する仕組みができているのである。また、P2Pネットワークでは、世界中に点在しているネットワークの参加者たちが、全く同じ内容のデータをそれぞれで管理していることになる。 【図2-1】P2Pネットワークのイメージ   2 ゼロダウンタイム 取引情報はブロックチェーン上に公開され、参加者全員の合意や検証のもとで正当性が証明されている。全てのノードが平等につながっており、全く同じ機能を有している。すなわち、従来型の中央集権型と違い取引はノードごとに分散管理されているため、例えば、一部のノードが故障しても、他のノードが正常であれば、「ブロックチェーン」全体が停止することがなく、全て処理が続行される。このように、ブロックチェーンはサービスが停止することはない「ゼロダウンタイム」といった特徴を有している。   3 デジタル署名と公開鍵暗号 ブロックチェーンの安全性を確保する技術として、デジタル署名(電子署名)という方法が使用されている。デジタル署名とは、デジタル文書の作成者を証明する電子的な署名であり、デジタル署名をすることで、下記の妥当性を証明することが可能となる。 デジタル署名を生成する際には「公開鍵」と「秘密鍵」と呼ばれるペアとなるキーが作成される。署名者は秘密鍵を使ってデータに署名し、デジタル署名として受信者に送る。受信者は事前に受け取っていた対となる公開鍵を使うことで、そのデータが署名者によって作成されたことを確認する。署名者が秘密鍵の取扱いに注意すれば、データの中身が第三者に漏洩することはない。ブロックチェーンは、このデジタル署名を利用することで、なりすましや改ざんを防止している。   4 ハッシュ値とナンス値 ハッシュ関数は、⼊⼒された異なる⻑さのデータを固定⻑の⽂字列に変換する関数である。ハッシュ関数によって導き出された値はハッシュ値と呼ばれ、データの特定に長けた暗号化技術である。ブロックチェーンにおいては、ハッシュ値の下記のような特性を生かし、ブロックとブロックのデータの連続性の検証など改ざん耐性が高く効率的なデータの管理を実現している。すなわち、データを特定するIDとしていわば指紋のような機能を有するため、データの改ざんや破損があれば瞬時に検出できるのである。 また、ナンス(number used once)値は、ブロックチェーン上で、採掘者(マイナー)が新しいブロックを追加する際に生成する数値である。採掘(マイニング)は取引の整合性を採掘者が行う承認作業のことであり、新たに追加されるブロックを過去のブロックとチェーン状に繋いでいく作業である。ハッシュ値の生成には、過去全ての取引データ(トランザクションデータ)がまとめられ、暗号化されたハッシュ値に、新たにブロックに含める取引データ、そしてナンス値を加えることが求められる。 【図2-2】ハッシュ値とナンス値のイメージ   5 コンセンサスアルゴリズム 不特定多数の参加者から成るブロックチェーンにおいては、取引時に不正を働く参加者や正常に動作しない参加者が含まれる可能性があるため、これらが含まれていたとしても正しく合意を形成できる仕組みが求められる。ブロックチェーンにおけるコンセンサスアルゴリズムとは、不特定多数の参加者の間で正しく合意形成を得るための仕組みである。なお、主なコンセンサスアルゴリズムは、下記のとおりである。 (1) PoW(Proof of Work) PoWは、仕事量(計算速度)により、正当性を担保するコンセンサスアルゴリズムである。膨大な計算が必要な採掘(マイニング)作業を参加者に課すことで、改ざん等を困難にしている。なお、PoWを採用している代表例がビットコイン(BTC)である。 (2) PoS(Proof of Stake) PoSは、一定以上の資産を保有しなければ採掘(マイニング)に参加できないコンセンサスアルゴリズムである。PoSはPoWに比べ、低コストかつ51%攻撃(※)を防ぐことができる仕組みがあると言われている。なお、代表例として、イーサリアム(ETH)はPoWを採用していたが、イーサリアム2.0ではPoSに移行している。 (※) 「51%攻撃」とは、悪意のある採掘者(マイナー)が全体の51%以上の計算能力を持つことにより、ブロックチェーンネットワークをある程度コントロールできるようになることである。 (3) PoC(Proof of Consensus) PoCは誰でも取引承認できるわけではなく、あらかじめ承認者をバリデーターと呼ばれる取引の承認作業を行う特別なノードのみに限定し、その承認者(バリデーター)たちの80%以上の合意が得られたときに取引が承認される仕組みである。PoCはPoWに比べ、承認スピードが速いと言われている。なお、PoCを採用している代表例がリップル(XRP)である。 (4) PoI(Proof of Importance) PoIとは、重要度(貢献度)が高い参加者の中からブロック生成者を決める仕組みであり、重要度は、通貨の保有量や取引回数、取引量などの複数の指標から判断される。なお、PoIを採用している代表例がネム(XEM)である。   6 スマートコントラクト 「ブロックチェーン」上で、人の手を介さずに契約を自動実行させる仕組みを「スマートコントラクト」と言う。契約成立のための特定条件と成果を明文化して事前に実行コードとして共有しておくと、全参加者(ノード)による監視の下、公平にプログラムが自動実行される仕組みであり、近年注目を集めている。 【図2-3】ブロックチェーン技術まとめ (了)

#No. 403(掲載号)
#段 璽
2021/01/21

《速報解説》ASBJが「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」を公表~投資信託財産が金融商品・不動産である投資信託の時価の算定について取扱いを示す~

《速報解説》 ASBJが「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」を公表 ~投資信託財産が金融商品・不動産である投資信託の時価の算定について取扱いを示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年1月18日、企業会計基準委員会は、「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第71号。企業会計基準適用指針第31号の改正案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、投資信託の時価の算定と貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価について取扱いを示すものである。 意見募集期間は2021年3月18日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 投資信託財産が金融商品である投資信託の取扱い 「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号)5項に定める時価の定義により、金融商品取引所等の市場に上場している投資信託で市場における取引価格が存在する場合、通常は当該価格が時価になると考えられる(公開草案49-2項)。 市場における取引価格が存在しない場合について、次のように規定している。 「コメントの募集」では、フローチャートが記載されており、公開草案の理解に資するものと思われる。 1 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約又は買戻請求に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合(公開草案24-2項) なお、公開草案24-2項の取扱いを適用し、基準価額を時価とする場合、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がなく、当該基準価額で解約できることで、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断することができる(公開草案24-6項)。 2 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合(公開草案24-3項) 投資信託財産が金融商品である投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、次のいずれかに該当するときは、基準価額を時価とみなすことができる。 次の規定に注意する。   Ⅲ 投資信託財産が不動産である投資信託の取扱い 市場価格のない投資信託財産が不動産である投資信託について、金融商品会計基準に従い、時価をもって貸借対照表価額とすることで会計処理を統一している(公開草案49-9項)。 市場における取引価格が存在しない場合について、次のように規定している。 「コメントの募集」では、フローチャートが記載されており、公開草案の理解に資するものと思われる。 1 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約又は買戻請求に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合(公開草案24-8項) なお、公開草案24-8項の取扱いを適用し、基準価額を時価とする場合、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がなく、当該基準価額で解約できることで、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断することができる(公開草案24-10項)。 2 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合(公開草案24-9項) 投資信託財産が不動産である投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、基準価額を時価とみなすことができる。 次の規定に注意する。   Ⅳ 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記に関する取扱い 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資(「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号)132項、308項)については、金融商品時価開示適用指針4項(1)に定める事項の注記を要しないこととし、その場合、他の金融商品における金融商品時価開示適用指針4項(1)の注記に併せて、所要の注記を行う(公開草案24-15項)。   Ⅴ 適用時期等 (了)

#No. 402(掲載号)
#阿部 光成
2021/01/21

《速報解説》 国税庁、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」を公表~在宅勤務で生じた通信費等のうち非課税となる「業務のために使用した部分」の合理的な算定方法を示す~

《速報解説》 国税庁、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」を公表 ~在宅勤務で生じた通信費等のうち非課税となる「業務のために使用した部分」の合理的な算定方法を示す~   Profession Journal編集部   長期化するコロナ禍により大企業を中心に在宅勤務(テレワーク)が浸透しており、在宅勤務を行う従業員に対し在宅勤務に必要な費用として在宅勤務手当を支給する企業も増えつつある。 国税庁はこのたび1月15日付けで「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」を公表、企業が従業員に上記手当を支給した場合や費用負担を行う場合の給与課税の有無について、その取扱いを明らかにした。 FAQではまず、企業が従業員に対し在宅勤務に必要な費用を支給する場合、その費用の実費相当額を精算する方法によるものであれば、従業員に対する給与として課税する必要はないとした(一方、例えば企業が従業員に対し毎月5,000円を渡切りで支給するなど精算不要とするような場合については給与課税される)。 また、その精算方法については、①企業が従業員に仮払いした後、その費用に係る領収証等とともに従業員が精算する方法(超過分は企業へ返還)と、②従業員が立替払いした後、その費用に係る領収証等とともに実費を精算する方法が考えられるが、事務用品費はともかく通信費や電気料金については、業務のために使用した部分を明確に算定するのは難しい。 FAQでは「インターネット接続に係る通信料(基本使用料やデータ通信料など)」のうち「業務のために使用した部分」として、例えば以下の【算式】により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えないとしている。 なお、「電話料金」のうち「通話料」については通話明細書等により「業務のための通話に係る料金」が確認できるとしているが、「基本使用料」や、「業務のための通話を頻繁に行う業務(営業担当等)に従事する従業員の通話料」については、上記【算式】により算出したものを「業務のための通話に係る料金」として支給する場合には給与課税されない。 次に、従業員が負担した「電気料金(基本料金・電気使用料)」のうち在宅勤務に要した部分を企業が支給する場合に、例えば次の【算式】のように床面積割合で算出したものを「業務のために使用した部分」として支給した場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えないとしている。 なお上述したそれぞれの算式によらず、より精緻な方法で業務のために使用した金額を算出し、その金額を企業が従業員に支給している場合についても、給与課税はされないとしている。 いずれにせよ企業としては、在宅勤務に係る費用について、定額で渡切り(精算不要)として給与課税されるか、上記の管理を行って業務使用部分を精算(非課税)するかの判断が求められよう。 (了)

#No. 402(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/01/18

《速報解説》 本日が申請期限の「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」、緊急事態宣言の再発令により書類準備が間に合わない等特段の事情がある場合は、2月15日まで期限を延長

《速報解説》 本日が申請期限の「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」、 緊急事態宣言の再発令により書類準備が間に合わない等特段の事情がある場合は、2月15日まで期限を延長   Profession Journal編集部   新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者に対し政府から支給される「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」は、申請期限が本日1月15日(金)とされているが、経済産業省はこのたびの緊急事態宣言の再発令を受け、申請期限に間に合わない特段の事情がある場合については、2月15日(月)まで申請期限を延長することを明らかにした。 なお、持続化給付金については、本日(1/15)から1月31日までに、書類の提出期限延長の申込みを行う必要がある。 期限延長に伴う手続についてはそれぞれのポータルサイトで詳細が明らかにされているが、上記の通り持続化給付金については事前の申出が必要といったように手続が異なるため、十分注意されたい。 なお経済産業省は、緊急事態宣言の再発令に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出自粛などにより影響を受ける中小事業者に対する支援策をまとめたページを公表している。 (了)

#No. 402(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/01/15

プロフェッションジャーナル No.402が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年1月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.402を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/01/14

令和2年分 確定申告実務の留意点 【第2回】「新型コロナ税特法の措置と申告書様式の変更」

令和2年分 確定申告実務の留意点 【第2回】 「新型コロナ税特法の措置と申告書様式の変更」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   連載第2回は、令和2年4月30日に公布・施行された「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律(令和2年法律第25号)(以下、「新型コロナ税特法」という)」による措置のうち、令和2年分の確定申告に関係する主なものを解説する。 また、令和2年分の確定申告書の様式は、令和元年分から一部変更されている。主な変更点について解説する。   【1】 新型コロナ税特法による措置 新型コロナ税特法による措置のうち、令和2年分の確定申告に関係する主なものは、次のとおりである。 (1) 給付金の非課税 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響を鑑み、市町村又は特別区から給付される給付金のうち次のものについては、所得税は課されない(新型コロナ税特法4①)。 (2) 指定行事の中止等により生じた権利を放棄した場合の寄附金控除等の特例 指定行事の中止等により生じた入場料金等の払戻請求権の全部又は一部の放棄を、令和2年2月1日から令和3年12月31日までにした場合には、その年において放棄をした部分の払戻請求権の価額の合計額(最高20万円)について、寄附金控除又は税額控除(公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除)の適用を受けることができる(新型コロナ税特法5、所法78、措法41の18の3)。 指定行事とは、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに行われた又は行われる予定であった文化芸術・スポーツに関する行事のうち、新型コロナウイルス感染症が発生したことによる国又は地方公共団体からの要請を受けて、中止、延期、規模の縮小を行った行事として文部科学大臣が指定するものをいう(新型コロナ税特令3①⑦)。 指定行事は、文化庁及びスポーツ庁のホームページに公表されている。 なお、この特例の適用を受ける場合には、確定申告書に指定行事の主催者から交付を受けた次の書類を添付する必要がある(新型コロナ税特令3②⑤、新型コロナ税特規3)。 (3) 住宅借入金等特別控除の適用要件の弾力化 ① 中古住宅:入居期限要件(取得日から6ヶ月以内)の緩和 中古住宅を取得し、居住の用に供する前に増改築等を行った場合、住宅借入金等特別控除の適用を受けるには、その住宅を取得日から6ヶ月以内に居住の用に供することが要件とされている。 新型コロナ税特法ではこの入居期限要件が緩和され、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、住宅を取得日から6ヶ月以内に居住の用に供することができなかった場合でも、次の要件を満たすときは住宅借入金等特別控除の適用を受けることができる(新型コロナ税特法6①②③、新型コロナ税特令4①②)。 (※) 取得日から5ヶ月を経過する日又は令和2年4月30日から2ヶ月を経過する日のいずれか遅い日 ② 控除期間13年間の特例措置:入居期限(令和2年12月31日)の延長 住宅借入金等特別控除の控除期間13年間の特例措置について、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、その住宅を当該制度の入居期限である令和2年12月31日までに居住の用に供することができなかった場合でも、次の要件を満たすときはその適用を受けることができる(新型コロナ税特法6④⑤、新型コロナ税特令4③)。 (※) 新築:令和2年9月30日 中古住宅の取得、増改築等:令和2年11月30日   【2】 様式の変更 令和2年分の確定申告書の様式は、一部変更されている。 以下、B様式の第一表と第二表の主な変更点について解説する。 (1) 第一表の主な変更点 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 ① 収入金額等の「給与」欄 令和2年分の様式では、収入金額等の給与欄に「区分」欄が設けられた。「区分」欄には、所得金額調整控除の適用がある場合に、次のとおり記入する。 ② 雑所得の区分 令和2年分の様式では、雑所得の内訳として新たに「業務」欄が設けられた。 「業務」欄には、原稿料、講演料又はネットオークションなどを利用した個人取引若しくは食料品の配達などの副収入による所得について記入し、「その他」欄には生命保険の年金(個人年金保険)や互助年金等の所得について記入する。 ③ 「寡婦、ひとり親控除」欄 ひとり親控除の創設及び寡婦控除の見直しにより、「寡婦、寡夫控除」欄から「寡婦、ひとり親控除」欄へ変更された。 なお、令和2年分の様式において、「寡婦、ひとり親控除」欄に「区分」欄が新たに設けられている。この「区分」欄には、ひとり親控除の適用を受ける場合に「1」を記入する。 ④ 「公的年金等以外の合計所得金額」欄 令和2年分以後の公的年金等控除額は、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額に応じて金額が異なることとなった。公的年金等の収入金額がある納税者は、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額を本欄に記入する。    (2) 第二表の主な変更点 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 ① 「保険料控除等に関する事項」欄 令和2年分の様式では、「支払保険料等の計」と「うち年末調整等以外」の2つの欄が設けられた。「支払保険料等の計」欄には、控除の適用を受ける保険料等の金額を記入し、「うち年末調整等以外」欄には、「支払保険料等の計」欄に記入した金額のうち、年末調整で控除の適用を受けていない金額を記入する。 なお、給与所得者が、すでに年末調整で控除を受けた金額を記入する場合には、「保険料等の種類」欄(生命保険料控除及び地震保険料控除の場合には「支払保険料等の計」欄)に「源泉徴収分」と記入する。 ② 「本人に関する事項」欄 令和2年分の様式では、本人に関する事項(寡婦、ひとり親、勤労学生、障害者)をまとめて記入する「本人に関する事項」欄が設けられた。 ③ 「配偶者や親族に関する事項」欄 令和2年分の様式では、配偶者や親族に関する事項をまとめて「配偶者や親族に関する事項」欄に記入することとされた。令和元年分まで「住民税・事業税に関する事項」欄に記入していた同一生計配偶者や16歳未満の扶養親族に関する事項も、令和2年分では本欄に記入する。 「障害者」、「国外居住」、「住民税」、「その他」の各欄の記入方法は、次のとおりである。 (※) 別居の場合には、「住民税・事業税に関する事項」欄にある「上記の配偶者・親族・事業専従者のうち別居の者の氏名・住所」欄への記入が必要である。 *  *  * 次回(最終回)は、第1回及び第2回の内容を踏まえ、確定申告実務に関する留意点をQ&A方式で解説する予定である。 (了)   

#No. 402(掲載号)
#篠藤 敦子
2021/01/14

金融・投資商品の税務Q&A 【Q59】「暗号資産(仮想通貨)の売買に係る収益の認識時期」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q59】 「暗号資産(仮想通貨)の売買に係る収益の認識時期」   PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○●   1 暗号資産(仮想通貨)の売却により生じた総収入金額の収入時期 暗号資産(資金決済に関する法律第2条第5項に規定するものをいいます)は、原則として、雑所得に区分することとされています。雑所得の総収入金額の収入すべき時期は、その収入の態様に応じて、他の所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期の取扱いに準じて判定した日とされていますが、これは、雑所得に該当するものの収入の態様には様々なものがあり得るため、他の9種類の所得の収入金額、総収入金額の計上時期に関する取扱いに準ずるという趣旨であると考えられています。 暗号資産の売買による収益は譲渡所得には該当しないものの、当該収益は、暗号資産を購入し、それを売却することによって得られる値上がり益であるため、譲渡所得の総収入金額の計上時期の取扱いに準ずるのが相当であると考えられます。ここで、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日が原則とされていますが、納税者の選択により、その資産の譲渡に関する契約の効力発生の日によることも認められています。 したがって、暗号資産の売却により生じた総収入金額の収入時期は、原則として、暗号資産の引渡しがあった日の属する年であり、納税者の選択によって、暗号資産の売却に係る約定日の属する年とすることも認められるものと考えられます。このことは、国税庁が公表している「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」の問7においても、明らかにされています。   2 暗号資産の売買により生じた雑所得の金額の計算 暗号資産の売買により生じた雑所得の金額は、総収入金額から必要経費を控除して算出します。必要経費には譲渡原価、売却に際して暗号資産交換業者に支払った手数料等が含まれますが、この譲渡原価は、その年1月1日において有する暗号資産の価額とその年中に取得した暗号資産の取得価額の総額の合計額から、その年12月31日において有する暗号資産の価額を控除して計算します。 そして、暗号資産の価額は、総平均法と移動平均法のいずれかの方法を選択して評価することができますが、法定評価方法は総平均法ですので、納税者が選定手続きを行わない場合には、総平均法を適用することになります。   3 本件へのあてはめ 暗号資産の売却により生じた総収入金額の収入時期は、原則として、暗号資産の引渡しがあった日の属する年であると考えられますので、約定日が12月31日、引渡日が翌年1月2日である取引に係る売却収入については、翌年の総収入金額に含めて確定申告することになります。ただし、納税者の選択によって、暗号資産の売却に係る約定日の属する年の総収入金額とすることも認められますので、当年の総収入金額として取り扱うことも可能です。 引渡日が翌年1月2日である取引に係る売却収入を翌年の総収入金額に含める場合の、当年における雑所得の金額の計算(総平均法)は下記のとおりです。   (了)

#No. 402(掲載号)
#西川 真由美
2021/01/14

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第12回】「居住用家屋の敷地の一部を譲渡した後に家屋を取り壊した場合」-居住用家屋の敷地の一部の譲渡-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第12回】 「居住用家屋の敷地の一部を譲渡した後に家屋を取り壊した場合」 -居住用家屋の敷地の一部の譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、30年前に取得した家屋とその敷地300㎡を居住の用に供していましたが、昨年1月に、その家屋と一体として利用してきた庭部分100㎡を売却したところ、多額の譲渡損失が発生しました。 昨年3月に、その家屋を取り壊し、銀行で住宅ローンを組んで、残地部分に新たな家屋を取得し、昨年12月から居住の用に供しています。 他の適用要件が具備されている場合に、Xは当該譲渡ついて、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることはできません。 ●○●○解説○●○● 居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等の一部を区分して譲渡した後に同家屋が取り壊されていることから、「居住用財産買換の譲渡損失特例」適用対象の譲渡資産には該当しません(措通41の5-5(居住用土地等のみの譲渡)、措通41の5-9(居住用家屋の敷地の一部の譲渡))。 なお、この取扱い規定は、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても準用されます(措通41の5の2-7(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用))。 (了)

#No. 402(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/01/14

組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点と今後の課題 【第18回】「スピンオフ税制等」

組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の 現行法上の問題点と今後の課題 【第18回】 「スピンオフ税制等」   公認会計士 佐藤 信祐 《第11章:スピンオフ税制の拡充》 一般社団法人日本経済団体連合会『令和3年度税制改正に関する提言』(2020年9月15日)では、「経営・資本・上場の独立を通じた企業価値の向上を図る観点から、100%未満の子会社のスピンオフも課税の繰延を認める等、スピンオフ税制を拡充すべきである。」としている。 これに対し、『平成29年度税制改正の解説』317-318頁では、「『移転資産に対する支配が再編成後も継続している』かどうかについて、現行の組織再編税制は、グループ経営の場合には、グループ最上位の法人がグループ法人及びその資産の実質的な支配者であるとの観点に立って判断しているという側面もあり(例えば、適格組織再編成における株式の保有関係に関する要件)、この考え方を踏まえれば、グループ最上位の法人(支配株主のない法人)の実質的な支配者はその法人そのものであり、その法人自身の分割であるスピンオフについては、単にその法人が2つに分かれるような分割であれば、移転資産に対する支配が継続しているとして、適格性を認めうると考えられます。このような整理から、分割法人が行っていた事業の一部を分割型分割により新たに設立する分割承継法人において独立して行うための分割が適格分割とされました。また、これと同様の効果があると考えられる完全子法人の株式の全部の分配について、株式分配として組織再編成の一類型として位置づけた上、適格要件に該当するものについては現物分配法人における完全子法人株式の譲渡損益について課税しないこととするとともに、株主において帳簿価額の付替えをすることとされました。」としている。 すなわち、現行法上のスピンオフ税制では、①グループの最上位の法人を2つに分ける分割型分割と、②それと同様の効果がある完全子法人の株式の全部の分配が対象とされている。これに対し、グループ法人税制の対象にならない100%未満の子法人の株式を分配する行為をグループの最上位の法人を2つに分ける分割型分割と同様の効果があるというのは困難であり、現行法上の組織再編税制において、100%未満の子法人の株式の分配に対してスピンオフ税制を認めるべきではない。 これに対し、第6回で解説したように、支配関係の定義を「発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を保有する関係」としたうえで、グループ法人税制の対象を支配関係のある法人との取引にまで広げた場合には、100%未満の子法人であってもグループ法人税制の対象になることから、グループ法人税制の対象となる子法人の株式の全部の分配をスピンオフ税制の対象にすることができるし、また、そのように取り扱うべきであると考えられる。   《第12章:グループ法人税制の代替案》 1 他の者による支配関係が生じたことに伴う時価評価課税と繰越欠損金の使用制限 第16回で解説したように、グループ通算制度と異なり、グループ法人税制は親族等が保有する株式を含めて判定することから、グループ法人税制の加入に伴う時価評価課税を導入することは困難であると考えられる。 さらに、グループ通算制度と同様に、内国法人による完全支配関係が生じた場合に限定してしまうと、外国法人や個人が被買収会社株式を取得する場合には課税されずに、内国法人が被買収会社株式を取得する場合に課税されるという制度になってしまい、課税の公平が保たれなくなる。 これに対し、支配株主が変わったのであれば、今までの課税関係を精算するために、子法人が保有していた資産に係る時価評価損益を計上させ、繰越欠損金の使用制限を課すということに合理性は認められる。なお、本稿では、支配関係の定義を「発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を保有する関係」とすべきであると考えていることから、他の者により発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を取得された時点で、「他の者による支配関係が生じたことに伴う時価評価課税」を適用すべきということになる(※1)。 (※1) 当然のことながら、「他の者」は最上位の株主で判定すべきである。 第4回で解説したように、他の者による支配関係が生じたことに伴う時価評価課税が導入された場合には、株式交換、スクイーズアウト、株式交付及び相対取引による株式購入との間で整合性の取れた制度にすることができる。そして、第6回で解説したように、事業譲渡方式の場合には、被買収会社において事業譲渡損益が発生するとともに、事業譲渡代金を株主に分配した時点で被買収会社の株主において受取配当金が発生し(※2)、株式譲渡方式の場合には、被買収会社において時価評価損益が発生するとともに、被買収会社の株主において株式譲渡益が発生することから、課税の公平が保たれていると言える。 (※2) 事業譲渡代金を株主に分配せずに、内部留保した場合に対する措置として、同族会社等の留保金課税が設けられている(法法67)。 このように、他の者による支配関係が生じたことに伴う時価評価課税を導入することについては、一定の合理性が認められるが、すべてのケースにおいて時価評価課税を課してしまうと円滑な組織再編成を阻害してしまうことから、税制適格要件を設ける必要がある。しかしながら、グループ通算制度と異なり、共同事業要件を検討する相手先がいないことから、共同事業要件を検討するわけにもいかない(※3)。そうなると、現行法における支配関係内の適格合併(法法2十二の八ロ)のように、支配関係継続要件、従業者従事要件及び事業継続要件のみを課すという考え方もあり得るが、移転資産に対する支配の継続に該当するためには、事業を営んできた当事者が引き続き事業を営む実態が継続する必要があるのに対し(※4)、他の者による支配関係が生じたことに伴う時価評価課税は、事業を営んできた当事者が変わることから、移転資産に対する支配の継続では説明しがたいという問題がある。 (※3) 他の内国法人による支配関係が生じた場合にのみ共同事業要件を認め、それ以外の場合には、税制適格要件を認めないという考え方もあり得るが、それでは、外国法人又は個人による支配関係が生じた場合に比べて有利になってしまうため、課税の公平が保たれなくなる。 (※4) 『平成19年版改正税法のすべて』271頁(大蔵財務協会、平成19年)参照。 これに対し、事業を営んできた当事者が変わったとしても、今まで営んできた事業の実態が変わらないのであれば、今までの課税関係を精算する必要はないことから、他の者による支配関係が生じたことに伴う時価評価課税を適用する必要はないという考え方も成り立つ。そのため、支配関係継続要件、従業者従事要件及び事業継続要件を満たす場合には、時価評価課税を適用すべきではなく、かつ、繰越欠損金の使用制限も課すべきではないということが言える(ただし、第13回で解説したように、グループ通算制度と同様に、グループ法人税制が適用される他の内国法人がある場合において、みなし共同事業要件を満たさないときに、新たな事業を開始した事案に対して、繰越欠損金の使用制限及び特定資産譲渡等損失額の損金不算入を導入する余地は考えられ、その場合には、欠損等法人の規制(法法57の2)との整合性が保たれた制度にする必要がある)。 そのように考えた場合には、他の者による支配関係が生じたことに伴う時価評価課税が課されなかったとしても、共同事業要件の判定が行われていないことから、支配関係が生じてから5年以内に適格組織再編成を行った場合において、みなし共同事業要件を満たさないときは、繰越欠損金の引継制限、使用制限及び特定資産譲渡等損失額の損金不算入を課す必要があるという整理になる。 2 他の法人による支配関係がなくなったことに伴う時価評価課税と帳簿価額修正 第14回で解説したように、グループ通算制度の離脱に伴う時価評価課税が導入された制度趣旨は、資産の譲渡損と株式の譲渡損による損失の2回控除を防ぐためである。すなわち、所得税においては、株式譲渡損と他の所得との通算が制限されていることから(措法37の10①)、個人による支配関係がなくなったことに伴う時価評価課税を導入する必要はない。そして、法人税法と所得税法は課税体系が異なることから、所得税法において帳簿価額修正を導入すべきではない。 そのため、他の法人による支配関係がなくなった場合にのみ、時価評価課税と帳簿価額修正を適用すべきであると言える。なお、この場合における支配関係は最上位の法人株主により判定すべきであるため、X氏がP社を支配しており、P社がA社を支配しており、A社がB社及びC社を支配している場合において、A社がB社株式を外部に譲渡したときには、他の法人による支配関係がなくなったことに伴う時価評価課税と帳簿価額修正を適用すべきであるが、A社がB社株式をP社に譲渡したときには、時価評価課税と帳簿価額修正を適用すべきではないと考えられる。 3 子法人株式に係る譲渡損益の繰延べ 第15回で解説したように、グループ法人税制が適用される子法人の株式を譲渡した場合には、繰り延べられた子法人株式に係る譲渡損益を実現させないという制度を導入すべきである。 なお、前述の帳簿価額修正の制度を導入した場合には、X氏がA社及びB社を支配しており、B社がC社を支配している場合において、B社がC社株式をA社に譲渡した後に、A社がC社株式を外部に譲渡したときは、A社におけるC社株式の帳簿価額がC社の簿価純資産価額ということになるため、B社において譲渡損益を実現させるべきではないということになる。そのため、個人による支配関係がある他の内国法人に対して子法人株式を譲渡した場合にも、子法人株式に係る譲渡損益を実現させないという制度を導入すべきであると考えられる。 *   *   * 次回は最終回であり、本連載についてのまとめを行っていきたい。 (了)

#No. 402(掲載号)
#佐藤 信祐
2021/01/14
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