《速報解説》 金融庁、「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」報告書を公表 ~新規・成長企業がその成長プロセスに応じて適切な監査を受けるための環境整備を推進~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020(令和2)年3月27日、金融庁は、「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」報告書を公表した。 これは、近年、IPO を目指す企業は増加傾向にある一方で、監査事務所との需給のミスマッチ等により、必要な監査を受けられなくなっている問題について検討したものであり、新規・成長企業がその成長プロセスに応じて適切な監査を受けることができるための環境整備を進めるための取組みについて述べている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ IPOを目指す企業に対する質の高い監査の提供に向けた環境整備 監査法人、証券会社、ベンチャーキャピタル、取引所などの関係者に対して、以下の取組みが期待されている。 1 大手監査法人 2 準大手監査法人 3 中小監査事務所 4 日本公認会計士協会 前述の取組みが着実に実施されることを確保するように所要の対応を行うことが期待されている。 5 証券会社 引受証券会社については、IPOを目指す企業の監査人として大手監査法人を推す傾向がある等の指摘がなされているが、今後は中小監査事務所の活用も期待されている。 6 ベンチャーキャピタル ベンチャーキャピタルは、自らの知見やネットワークを活用するとともに対話の場に積極的に参加するなどの取組みを通じて、企業がその成長ステージに応じて必要な監査その他のサポートを受けることが可能となるよう、支援の充実を図る。 7 取引所 8 IPOを目指す企業 新規・成長企業は、その成長ステージに応じて、必要な内部管理体制を適切に構築していくことが重要であり、経営者は、専門的知見を有する公認会計士を積極的に活用していくことが望まれる。 また、IPOを目指す企業には、その目指す成長スピードを実現しつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上が図られるよう、監査法人や証券会社との対話を深め、上場準備その他の必要な対応を図っていくことが求められる。 (了)
《速報解説》 国税庁、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を公表 ~法人税や相続税、酒税などの個別延長が認められる「やむを得ない理由」を例示~ Profession Journal編集部 国税庁は3月25日、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を公表、既報のとおり2月に決定した申告所得税等の申告・納付期限の一括延長のほか、この一括延長の対象とされていない法人税や相続税、酒税などの手続の延長の取扱い等を明らかにした。 FAQでは、一括延長の対象とされていない手続(法人税や相続税、酒税など)については従来通りの期限としつつも、「地震等の自然災害、火災等の人為的な災害、申告等をする方の重傷病など、災害その他やむを得ない理由により、申告・納付等を期限までに行うことが困難な事情がある方(企業)については、税務署へ申請していただくことにより、申告期限等が個別に延長される制度がある」とし、次のような場合には個別延長が認められるとしている。 なお、上記下線部における「理由」の例示は以下のとおり。 上記④に関しては、「株主総会の開催が遅れる場合の消費税の申告等の期限延長」として、消費税及び地方消費税については法人税と異なり確定した決算に基づいて申告を行うものではないため、定時株主総会の開催延期により決算が確定しないという理由だけでその期限を延長することはできないとしつつ、「しかしながら、定時株主総会の開催延期という理由以外にも、例えば、社員の休暇勧奨などで通常の業務体制が維持できない状況となり、決算書類や申告書等の作成が遅れ、期限までに消費税及び地方消費税の申告・納付等が困難な理由がある場合には、期限の延長が認められます。」としている(「2 申告・納付等の期限の個別延長関係」問3)。 その他、資金繰りの悪化や事業に著しい損失や著しい売上の減少が生じた場合の納税の猶予制度について紹介(「4 納付の猶予制度関係」)、また相続税関係では「相続税の申告において相続人の1人が感染した場合の取扱い」なども明らかにしている(納税の猶予制度については国税庁「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ」を参照されたい)。 なお今回のFAQ含む新型コロナウイルス感染症に関する対応についての情報は、下記の国税庁ホームページにまとめられており、今後も更新されると考えられるため、適宜確認を行っていただきたい。 (了)
2020年3月26日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.362を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第69回】 「5Gサービス提供設備の早期開設に対する税の優遇」 税理士 山本 守之 1 5Gを考える 5Gとは、「第5世代移動通信システム」のことで、1980年代のアナログ方式の自動車電話の1Gから1990年代にはメールなどのデジタル方式のインターネット回線2G、2000年代には通信速度がさらに速くなり、携帯電話が海外でも使えるようになる3G、2010年代にはスマートフォン時代の4G、と10年ごとに進化して、今は社会のインフラとしてネットワークを支える「5G時代」と言えます。 5Gでは「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」がテーマになっていますが、中国等の世界各国に比べると日本は遅れているので、税の面から支援する必要があるとして考えられたのが、令和2年度税制改正で導入される税制優遇措置です。 2 優遇措置の概要 2020年より5G(第5世代移動通信システム)が導入されることになります。令和2年度税制改正では、5Gサービスの提供に必要なインフラ設備を早期に開設した事業者を対象に、新たな税制優遇措置が設けられることになりました。 その概要は次のようなものです。 3 背景と内容 世界各国では21世紀の基幹インフラ(通信、インターネット、携帯電話)として5Gを整備していますが、特に中国が進んでいます。日本では次のように対応しています。 (1) 成長戦略実行計画 2020年度末までに全都道府県で5Gサービスを開始するとともに、セキュリティの確保に留意しつつ、通信事業者等による5G基地局や光ファイバなどの情報通信インフラの全国的な整備に必要な支援を実施し、2024年度までの5G整備計画を加速するとして、2019年(令和元年)6月21日に閣議決定をしています。 (2) まち・ひと・しごと創生基本方針2019 Society5.0の実現に向けて、2020年度末までに全都道府県で5Gサービスを開始するとともに、通信事業者等による5G基地局や光ファイバなどの情報通信インフラの全国的な整備に必要な支援を実施し、2024年度までの5G整備計画を加速するとして、2019年(令和元年)6月21日に閣議決定をしています。 (3) 世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画 5Gのサービスを支える基地局や光ファイバなどの情報通信インフラの整備を進めるとともに、5G事業者による地域課題解決に向けた開発実証を推進していくとして、2019年(令和元年)6月14日に閣議決定をしています。 国際的には一部の国で5Gサービスがすでに開始されていますが、わが国では次のような問題を抱えています。 〔懸念される事項〕 〔問題点として〕 〔そこで、租税特例措置により〕 〔加えて、税制特例措置により〕 〔共同使用により税制特例措置〕 4 改正の内容 (1) 特別償却・税額控除(租税特別措置法第42条の12の5の2) 【対象となる事業者】 青色申告書を提出する法人で、一定のシステム導入(注)を行う認定導入事業者に該当するもの 【対象資産】 特定高度情報通信用認定等設備(認定導入計画に記載された機械その他の減価償却資産で、一定のシステム導入(注)の用に供するためのもの) (注) 「一定のシステム導入」とは、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律の「認定導入計画」に従って実施される同法の「特定高度情報通信技術活用システム」の導入で、その早期の普及を促すものであってその供給の安定性の確保に特に資するものとして基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたものをいいます。 【税制優遇借置】 ・特別償却:対象資産の取得価額 × 30% ・税額控除:対象資産の取得価額 × 15%(※) (※) 控除を受ける事業年度の法人税額の20%を限度とします。 なお、上記税制優遇借置は、特別償却については法人住民税及び法人事業税に、税額控除については中小企業者等に係る法人住民税にも適用されます。 【適用時期】 「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」の施行の日から2022年(令和4年)3月31日までの間に取得等をし、事業の用に供された資産について適用されます。 (2) 固定資産税・都市計画税(地方税法附則第15条第49項) 【対象となる事業者】 認定導入計画に基づき、電波法の規定によりローカル5G無線局に関わる免許を受けたもの 【対象資産】 主務大臣の確認を受けた償却資産(取得価額3億円以下のものに限る。) 【税制優遇措置】 対象資産の課税標準を最初の3年間のみ2分の1とする。 【適用時期】 「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」の施行の日から2022年(令和4年)3月31日までの間に新たに取得したものについて適用されます。 * * * なお、本稿公開日現在、「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律案」は国会で審議されており、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されることになっています(同法附則第1条)。 (了)
これからの国際税務 【第18回】 「令和2年度税制改正大綱における国際課税の焦点(その2)」 - 一国主義の税制改革と外国税額控除の制限- 21世紀政策研究所 国際租税研究主幹 青山 慶二 1 はじめに 電子経済を巡る国際課税ルールの改定がいよいよ大詰めを迎えつつある。本年(2020年)1月31日にOECD/G20の下にある包摂的枠組み国(約140ヶ国)が承認した文書では、まず、市場国へ新たに課税権を付与する多国籍企業の所得として、①自動化されたデジタルサービスと、②消費者向けビジネスから生じる超過収益を対象とする課税ルールの基本的枠組みが合意された(第1の柱)。 この提案枠組みは、これまで、GAFAに代表される高度にデジタル化されたビジネスモデルへの課税漏れを防止すべきと主張する欧州勢と、今後の経済のデジタル化進展を見据えて市場国での課税漏れ全般を対象に検討すべきと主張してきた米国、更には、高い成長力を背景に市場国としての税源配分を従来から広範に求めてきた新興国のそれぞれの立場を統合したアプローチであると解説されている。 この合意が達成されれば、現在欧州を中心に拡大しつつある1国限りのデジタルサービス税は廃止されることが期待されている。また、併せて低税率国への所得移転についての追加的措置として、最低税率を下まわる国に所在する関連企業に発生する所得を合算課税したり、それへの支払いの損金算入を否認したりするルール(第2の柱)についても、速やかに枠組み合意を経て2020年末の合意を目指すこととされた。 一方、我が国の令和2年度税制改正案中には、外国税額控除の対象となる税の限定について注目すべき項目が含まれている。すなわち、諸外国で国内法改正により我が国の法人税の課税対象とならない所得に課される税を外国税額控除の対象から外すことを明記する提案である。納税者から見れば二重課税残存のリスクが拡大することにもなりかねないので、本稿ではその内容及び課題について予備的に検討する。 2 令和2年度税制改正案とその効果 外国税額控除制度を規定する法人税法69条1項は、控除対象となる外国法人税を「外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるもの」と規定し、これを受けた法人税法施行令141条は、1項で「法人の所得を課税標準として課されるもの」と規定するとともに、2項及び3項でそれに含まれるもの及び含まれないものをそれぞれ列挙している。 今回の改正では、「含まれないもの」(つまり外国税額控除の対象から除外されるもの)としてリストアップする同条3項に、①外国法人の所得について、これを内国法人の所得とみなして当該内国法人に対して課される外国法人税の額と、②内国法人の国外事業所等において、当該国外事業所から本店等又は他の者に対する支払金額等がないものとした場合に得られる所得につき課される外国法人税の額が追加されることになる(令和3年4月1日以後開始事業年度から適用)。 上記①及び②の法人税額は、前述した2020年末の合意を目指す第2の柱で検討されている課税スキームに関連する可能性のあるものであり、中でも、既にトランプ税制改革により米国で導入された税源浸食・濫用防止税(BEAT税制)が念頭にあるように思われる。BEAT税制は、例えば日本法人NY支店が国外関連者に対して支払う利子等についても適用されるからである。 3 今後の課題 外国の国内法改正により、新たな法人所得に関係する課税が創出された場合には、それが租税条約の所得に関する課税に属するものかどうかにより、条約上の二重課税救済義務の対象になるかどうかが判定される。 BEAT税制については、①その立法経緯において、最終段階まで物品税(Excise Tax)として立案されたという経緯があり、また、課税標準も売上原価のみを控除するという特殊なものであること、②日米租税条約23条1項は、日本国居住者の外国税額控除については、外国で納付した租税を控除することに関する「日本国の法令の規定」に従って控除すると規定されていることから、今回の改正により、BEAT税制で課税を受けた内国法人への外国税額控除適用の可能性は明確に否定されることになろう。なお、このような事例は、英国が2015年から導入した迂回利益税についても既に発生していた。 各国が自国の税収を守る観点から国際協調を待たずに独自導入する事業体課税に関係する税制改正は、2020年末の電子経済課税の合意という期待を持てる動向はあるものの、まだ当分の間続くものと予測される。それによる二重課税のリスクは、タイムリーな多国間あるいは二国間の合意がない限り、納税者が当面負担するしかない。しかし、これらが蓄積するとグローバル経済のサプライチェーンにボディブローのような阻害効果をもたらしかねない。G20のリーダーシップによる国際課税ルール(ルール本体のみならず紛争解決手続を含む)の調和の促進がさらに求められるところである。 (了)
谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第32回】 「租税法律主義と租税回避との相克と調和」 -個別的否認規定と個別分野別の一般的否認規定との関係(その2)- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫 Ⅲ TPR事件東京地判にみられる誤解・不可解 1 ヤフー事件最判との関係 では、TPR事件東京地判は、法人税法132条の2の規定をどのように適用したのであろうか。この事件も、ヤフー事件と同様、未処理欠損金額の引継ぎ(法税57条2項)の事案であるが、その濫用防止規定(同条3項)に係る適用除外要件(否認緩和要件)のうち、本件合併については、ヤフー事件と異なり特定役員引継要件該当性ではなく、特定資本関係5年超要件該当性が問題となった(なお、法税132条の2の不当性要件に関する判断については、ここでは検討しないが、拙稿「判批」ジュリスト1538号(2019年)10頁参照)。 TPR事件東京地判は、ヤフー事件最判(「平成28年最判」)を参照した上で、法人税法132条の2と同法57条3項との適用関係について次のとおり判示している(以下「TPR事件東京地判ⓐ」という。下線筆者)。 この判示は、ヤフー事件最判❶と比較すると、法人税法132条の2が否認の対象とする租税回避(「組織再編成に係る租税回避」)の「手段」について、同条の趣旨及び目的の観点から「組織再編成」に係る私法上の形成可能性(選択可能性)のみを想定した説示を行うにとどまり、ヤフー事件最判❶とは異なり、同条の否認要件の観点から「組織再編税制に係る各規定」を想定した説示は行っていないことが注目される。このことは、TPR事件東京地判が法人税法132条の2の否認要件(不当性要件)と同法57条3項の否認要件との適用関係について、ヤフー事件最判が前提とすると解されるような、「組織再編税制に係る各規定」の法的性格・構造に関する前述のような検討(前記Ⅱ2)を前提として行うことなく、判断を示したことを意味するように思われる(このことについては、TPR事件東京地判の当てはめ判示との関係で後記3で検討する)。 もっとも、TPR事件東京地判も「組織再編税制に係る各規定」について一定の検討を行ってはいるが、それらをヤフー事件最判❷と対応させて整理すると、①法人税法57条2項の課税減免規定、②同条3項の否認要件、及び③当該否認要件に係る適用除外要件(否認緩和要件)である特定資本関係5年超要件について、次のとおり判示している(以下「TPR事件東京地判ⓑ」という。下線筆者)。 この判示をみると、TPR事件東京地判は、前記①②③の各規定について「一応表面的には」ヤフー事件最判❷と同じような理解を示しているようにもみえる。しかし、決定的に異なるのは、前記②の法人税法57条3項の否認要件に関する理解である。ヤフー事件最判❷は次の2でみるような「誤解」は示していない。 2 法人税法57条3項の否認要件に関する誤解 確かに、TPR事件東京地判ⓑが説示するように、法人税法57条3項が「未処理欠損金額を利用したあらゆる租税回避行為をあらかじめ想定して網羅的に定めたものとはいい難」いのは、事実である。すなわち、ここでいう「租税回避行為」は、TPR事件東京地判ⓐが法人税法132条の2の趣旨及び目的に関して説示した、「組織再編成」に係る私法上の形成可能性(選択可能性)を「手段(間接的手段)」とする租税回避(第22回Ⅲ参照)であると解されるが、「私的自治の原則ないし契約自由の原則の支配している私法の世界では、人は、一定の経済的目的ないし成果を達成しようとする場合に、強行規定に反しない限り自己に最も有利になるように、法的形成を行うことができる。」(金子宏『租税法〔第23版〕』(弘文堂・2019年)133頁。【66】(ロ)も同旨)以上、私法上の形成可能性(選択可能性)によってどのような「組織再編成」が行われるか及びそれに伴いどのような「租税回避行為」が行われるかを「あらかじめ想定して網羅的に定め」ることは困難、むしろ不可能といってよいであろう。 しかし、そうであるからこそ、法人税法57条3項は、「未処理欠損金額を利用した租税回避行為」を特定することなく包括的に否認する旨を否認要件として定めたのである。法人税法57条3項は、一般に、租税回避の個別的否認規定として性格づけられているが(TPR事件東京地判ⓐも同じ)、それは、否認の対象とする租税回避の「直接的手段」が同条2項の規定(本来的課税減免規定)に限定・特定されているからであって、その「間接的手段」としての「組織再編成」に係る私法上の形成可能性(選択可能性)は限定・特定されてはいないのである。その意味で、法人税法57条3項は、否認の対象とする租税回避の「間接的手段」の観点からは、むしろ、組織再編成(に係る未処理欠損金額の引継ぎ)という個別分野における「一般的否認規定」というべきものである。 したがって、TPR事件東京地判ⓑが法人税法57条3項を「典型的な租税回避行為としてあらかじめ想定されるものを対象として定めた具体的な否認規定」と理解したのは、同項の規定の法的性格・構造に関する誤解に基づく理解であり、誤りである。同項は、「未処理欠損金額を利用した租税回避行為」の否認要件と同要件に係る適用除外要件(否認緩和要件)を定めているが、私法上の形成可能性(選択可能性)の観点からみると、対象を個別的・限定的に定めているのは後者の否認緩和要件(特定資本関係5年超要件とこの要件に該当しない場合におけるみなし共同事業要件)であって、前者の否認要件は対象を限定・特定してはいないのである。 なお、一般的な否認要件と個別的な適用除外要件(否認緩和要件)との組合せという立法技術は、税法上の課税減免規定に係る濫用防止規定(租税回避否認規定)についてだけでなく、税法上の課税減免規定の適用を否認する規定一般について広く用いられるものである。例えば、役員給与の損金不算入(損金算入否認)を定める法人税法34条1項、「必要経費とされない家事関連費」(必要経費算入が否認される家事関連費)を定める所得税法施行令96条などのほか、租税優遇措置を定める租税特別措置法の規定の多く(表現は様々であるが、当該措置は「・・・・・・ない場合には、適用しない」、「・・・・・・ものについては、適用しない」、「・・・・・・ある場合に限り、適用する」等の規定)が、そのような立法技術を用いている(このことの当否は別途検討すべきであると考えるところであるが、ここでは立ち入らない)。 3 法人税法132条の2の適用に関する不可解 これに対して、前記③の法人税法57条3項の特定資本関係5年超要件に関するTPR事件東京地判ⓑの説示、すなわち、「特定資本関係5年超要件を満たす適格合併等であっても、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる行為又は計算が行われる場合が想定されないとはいい難い。」との説示は、その限りでは、妥当である。特定資本関係5年超要件についても、ヤフー事件で問題とされた特定役員引継要件と同様に、「形式的に該当させることなど」(前掲・斉木論文)による回避が問題になり得るのであり、したがって、同要件に係る適用除外要件の欠缺(隠れた欠缺)が問題になり得るのである。 そうすると、上記の説示を前提にすれば、論理的には、TPR事件東京地判も、特定資本関係5年超要件(法税57条3項の否認要件に係る適用除外要件=否認緩和要件)について、ヤフー事件最判が「重畳的」適用の前提としたと解される、否認緩和要件に係る適用除外要件(否認回復要件)の欠缺を問題にし、これを補充するために法人税法132条の2を適用する旨の判断を示すべきであったであろうが、しかしながら、ヤフー事件最判と異なり、そのような判断は示されていないし、法人税法132条の2の適用の前提としても意識されていないように思われる。 このことは、TPR事件東京地判における法人税法132条の2の否認要件(不当性要件)への本件合併の当てはめに関する次の判示からも明らかである。 この判示において法人税法132条の2の適用に関して「租税回避の手段」として示されているのは、TPR事件東京地判ⓑで挙げられている「組織再編税制に係る各規定」のうち前記①の法人税法57条2項だけであって、前記の②同条3項の否認要件及び③同条3項の特定資本関係5年超要件を定める各規定は示されていない(この点においてヤフー事件最判当てはめ判示と決定的に異なる)。したがって、前記③の規定に係る適用除外要件の欠缺(隠れた欠缺)は問題にされていないことになるが、そうすると、そのような欠缺の存在を想定する、この項の冒頭で引用した説示は、法人税法132条の2の適用においては考慮されていないことになり、そもそも、なぜそのような説示をしたのか不可解といわざるを得ない。 いずれにせよ、TPR事件東京地判は、法人税法57条2項の定める本来的課税減免規定の濫用による租税回避を同法132条の2によって否認したことになるが、しかし、争点を「法人税法57条3項の適用が排除される適格合併である、特定資本関係5年超要件を満たす適格合併につき、同項の規定が一般的否認規定の適用を排除するものと解されるか否か」(TPR事件東京地判ⓐ)として設定しこれを検討している以上、そこで検討すべきであったのは、前記③の法人税法57条3項の特定資本関係5年超要件につき濫用(「本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの」)があるか否かであるはずである。前記②の法人税法57条3項の否認要件の法的性格・構造(租税回避の「間接的手段」の観点からは、組織再編成に係る未処理欠損金額の引継ぎという分野における「一般的否認規定」)を前述(前記2)のとおり正しく理解していれば、同条2項の定める本来的課税減免規定の濫用に係る私法上の法的形成は、同条3項(否認要件)によって包括的に否認されるのであるから、同法57条2項との関係では同法132条の2の「出る幕」がないことに気がつくはずである。 要するに、法人税法132条の2の「出る幕」があるのは、前記③の同法57条3項の特定資本関係5年超要件(派生的課税減免規定)につき濫用が認められる場合だけである。その場合における法人税法132条の2の適用が、ヤフー事件最判について述べた「重畳的」適用である。 なお、TPR事件東京地判は、法人税法132条の2の否認要件(不当性要件)該当性の判断において、次のとおり、法人税法57条2項が適格合併に係る適格要件において、完全支配関係がある法人間の合併についても、事業の継続を「想定」している旨を判示し(下線筆者)、その「想定」を前提にして本件における不当性要件該当性を肯定していると解される。 しかし、その「想定」は、法人税法57条3項の特定資本関係5年超要件(否認緩和要件)に係る適用除外要件(否認回復要件)とは、論理的にも内容的にも直接関係がなく、当該適用除外要件(否認緩和要件)の欠缺を補充するためのものではないと考えられる。 本件においてその「想定」(事業の継続)が満たされないというのであれば、本件合併についてそもそも適格要件該当性を否定し、未処理欠損金額の引継ぎのみならず資産の簿価の引継ぎ等も含めて組織再編税制が認める課税減免を全て否認するのが、論理的に筋の通った判断であろうが、それにもかかわらず、その「想定」をもって未処理欠損金額の引継ぎのみを否認することも不可解である。この点について、TPR事件東京地判の次の判示は、説得力があるとは思われず、むしろ、これまで検討してきたことを踏まえると、法人税法132条の2の適用関係につき更なる混乱ないし不可解さをもたらすように思われる。 Ⅳ おわりに 以上、組織再編成に係る行為計算の否認規定(法税132条の2)と未処理欠損金額の引継ぎに係る個別的否認規定(同57条3項)との関係(とりわけ適用関係)について、ヤフー事件最判とTPR事件東京地判との比較検討を通じて、検討してきた。その結果、ヤフー事件最判における法人税法132条の2の適用を「重畳的」適用とみてその論理構造を明らかにし、これに照らしてTPR事件東京地判を検討しそこにみられる誤解や不可解を指摘した。 TPR事件東京地判にみられる誤解や不可解は、この判決が法人税法132条の2の適用に関する判断の前提として、「組織再編税制に係る各規定」の法的性格・構造及び「租税回避の手段」に関する整理を、ヤフー事件最判と異なり、論理的に整然とは行っていないことに基因するものと思われる。なお、TPR事件の控訴審・東京高判令和元年12月11日(未公刊)も原審の判断を支持する判断を示していることからすると、同様の問題があると考えられる。 ここで、前回からの検討を踏まえて、税法上の課税減免規定の濫用による租税回避について、未処理欠損金額の引継ぎの場合を例にとり、「組織再編税制に係る各規定」の法的構成・構造及び「租税回避の手段」に即して、「個別的否認規定と個別分野別の一般的否認規定との関係」をまとめておこう。 第1に、法人税法57条3項は、租税回避の直接的手段が組織再編税制に係る本来的課税減免規定(同条2項)に限定・特定されているという意味では「個別的否認規定」であるが、租税回避の間接的手段の観点からみると、納税者が本来的課税減免規定の適用を受けるために行使する組織再編成に係る私法上の形成可能性(選択可能性)を限定・特定せずそれらを包括的に否認する規定であるという意味では、組織再編成という個別分野における「一般的否認規定」である。 第2に、法人税法132条の2は、租税回避の直接的手段が組織再編税制に係る派生的課税減免規定(本来的課税減免規定の濫用防止規定に係る適用除外規定=否認緩和規定。特定資本関係5年超要件とこの要件に該当しない場合におけるみなし共同事業要件を定める規定)に限定・特定されているという意味では「個別的否認規定」であるが、租税回避の間接的手段の観点からみると、納税者が派生的課税減免規定の適用を受けるために行使する組織再編成に係る私法上の形成可能性(選択可能性)を限定・特定せずそれらを包括的に否認する規定であるという意味では、組織再編成という個別分野における「一般的否認規定」である。 第3に、法人税法57条3項と同法132条の2とを租税回避の間接的手段の観点から比較すると、適用範囲という点では、本来的課税減免規定の濫用を対象とする前者の方が、派生的課税減免規定を対象とする後者よりも、広いとみることができる。すなわち、後者の適用範囲は、前者の包括的な適用範囲から例外的に除外された、組織再編成に係る私法上の形成可能性(選択可能性)の範囲に限られるのである。 なお、一般には、法人税法57条3項が「個別的否認規定」、同法132条の2が「個別分野別の一般的否認規定」と性格づけられているが、そのような性格づけについては、観点の取り方がいわば「襷掛け」になっていることに注意すべきであろう。 最後に、前回からの検討を振り返るとき、30年ほど前にミュンヘン大学でお世話になったクラウス・フォーゲル教授の「税法における完璧主義」という論文(Klaus Vogel, Perfektionismus im Steuerrecht, StuW 1980, 206)の中の言葉が想起される。その言葉の一部の紹介(拙著『租税条約論』(清文社・1999年)186頁[初出・1993年])を以下に引用しておこう。 「組織再編税制に係る各規定」も「完璧主義」的立法の1つといってよかろうが、そのような立法は、租税立法者にとってだけでなく租税法律の解釈適用者にとっても「制御」が困難になる場合があろう。TPR事件東京地判の判断をみると、そのことを痛感せざるを得ない。控訴審でも同様の判断が示された今となっては、最高裁では、この判断とは異なり、ヤフー事件最判のように「組織再編税制に係る各規定」の法的性格・構造及び「租税回避の手段」に関する正確な理解を前提にした判断が示されることを強く期待したい。 次回は、税法上の課税減免規定の濫用による租税回避だけでなく、私法上の形成可能性(選択可能性)の濫用による租税回避(租税回避の第1類型。第22回Ⅱ)も含めて、租税回避一般について個別的否認規定と一般的否認規定との関係を、ドイツの議論を素材にして検討することにする。 (了)
〔免税事業者のための〕 インボイス導入前後の実務対応 【第5回】 (最終回) 「免税事業者が課税事業者(適格請求書発行事業者)になった場合の注意事項」 税理士 石川 幸恵 連載最終回となる【第5回】は、免税事業者が適格請求書発行事業者への登録を行った以後に注意すべき点や、再び免税事業者となる場合の手続を確認する。 1 事業者免税点制度の適用なし 適格請求書発行事業者は、登録日以降はその基準期間における課税売上高が1,000万円以下となる課税期間においても、免税事業者にはならない(インボイスQ&A 問11)。 2 課税期間の中途に免税事業者から課税事業者になった場合《経過措置》の注意事項 令和5年10月1日の属する課税期間中に免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けることとなった場合には、経過措置として登録を受けた日から課税事業者となる(【第3回】参照)。 課税期間の中途から課税事業者となるため、以下の取扱いがある。 (1) 棚卸資産の調整 課税事業者となる日の前日において所有する棚卸資産のうちに、納税義務が免除されていた期間において仕入れた棚卸資産がある場合は、その棚卸資産に係る消費税額を課税事業者になった課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなして、仕入税額控除の対象とする(改正令附則17)。 (2) 簡易課税制度選択届出書の提出期限 原則では、簡易課税制度の規定の適用を受けるためには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに、「簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 経過措置により登録日から課税事業者となった事業者が、登録日を含む課税期間から簡易課税の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を、その課税期間中に納税地の所轄税務署長に提出したときは、その課税期間から簡易課税の適用を受けることができる(改正令附則18)。 〔課税期間の中途から課税事業者となった場合〕 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 3 適格請求書発行事業者の登録を取りやめたい場合 (1) 手続 「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(以下、登録取消届出書)を納税地の所轄税務署長に提出することにより、適格請求書発行事業者の登録の効力を失わせることができる。 (2) 登録取消届出書の適用時期 ① 原則 登録取消届出書の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日から適用される。 ② 課税期間の末日から起算して30日前の日からその課税期間の末日までの間に提出した場合 その提出があった日の属する課税期間の翌々課税期間の初日から適用される。 〔適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書の適用時期〕 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (3) 適格請求書発行事業者でなくなった場合の注意事項 適格請求書発行事業者であった課税期間中に行った課税資産の譲渡等について、返品を受け、又は値引き、割戻しをした場合には、適格返還請求書を発行しなければならない(インボイス通達3-15)。 4 事業者免税点制度の適用を受けるには (1) 適格請求書発行事業者の登録申請書と併せて課税事業者選択届出書を提出した場合 適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する際に、課税事業者選択届出書を提出した場合には、登録取消届出書の提出等により適格請求書発行事業者の登録が失効しても、課税事業者選択届出書の効力が残る。 このため、納税義務の免除を受けるためには、「課税事業者選択不適用届出書」を提出しなければならない。 (2) 経過措置により令和5年10月1日の属する課税期間中に登録を受けた場合 令和5年10月1日の属する課税期間中に、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けた場合には、経過措置により、課税事業者選択届出書を提出せずに課税事業者となっている(インボイスQ&A 問9、問11)。 この場合、登録取消届出書の提出により、登録の効力が失われた課税期間から事業者免税点制度が適用され、課税事業者選択不適用届出書の提出は不要である(インボイス通達5-1(注)なお書き)。 5 適格請求書等保存方式開始に向けた免税事業者をめぐる現状と今後の留意点 免税事業者は、税理士の関与を受けず、商工会等の機関のサポートを年に数回受けて税務申告を行う者も多く、本連載で解説したような情報は、まだ十分には行き渡っていないと考えられる。 逆に、多数の外注先を抱える課税事業者において、免税事業者と思われる外注先への説明・指導をどうするか、個人事業者との契約の見直し、内製化の検討などが進んでいると思われる。 今後は登録開始に向けたスケジュールを意識しつつ、国税庁からの新たな情報の公表に留意が必要である。 (連載了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例84(相続税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆農地等の相続税の納税猶予及び免除等の特例(措法70の6) 農業相続人が、農業を営んでいた被相続人から相続又は遺贈により農地等を取得して農業を営む場合には、相続税の期限内申告書の提出により納付すべき相続税額のうち、その申告書に相続税の納税猶予の特例の適用を受ける旨を記載した農地等の価額のうち農業投資価格を超える部分に対応する相続税額は、一定の要件の下に、次の①から③のいずれか早い日まで納税猶予の特例の適用を受けることができ、次の①から③のいずれかに該当する日に免除される。 ◆特例を受けるための手続等 ◆農地等納税猶予税額の納付 次のいずれかに該当することとなった場合には、その農地等納税猶予税額の全部又は一部を納付しなければならない。 (※) 「準農地」とは、農用地区域内にある土地で、農業振興地域整備計画において用途区分が農地や採草放牧地とされているもののうち、10年以内に農地や採草放牧地に開発して、農業の用に供するもの。 (了)
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第39回】 「国外源泉所得について現地で還付があった場合の外国税額控除」 税理士 菅野 真美 - 質 問 - 私は日本の居住者ですが、このたび外国に所有している不動産を売却しました。売却時には現地国の税金が源泉徴収され、その分については日本の確定申告で外国税額控除されました。 この源泉徴収された分は、現地で確定申告をすると還付されるそうですが、この還付される税金については、どのように処理をすればいいのですか。現地で還付申告をした年には、外国税額を納付していません。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷国外の不動産を売却した場合の課税関係 日本の非居住者が日本にある不動産を売却した場合、原則的には、譲渡価額の10.21%の源泉税が課され、確定申告をして精算されるという制度になっている。 売却時に源泉徴収され、確定申告で精算する制度を採用するのは、徴収の難しい非居住者の所得に係る納税の確保が主たる要因と考えられる。このような制度を採用している国は日本だけではない。日本の居住者が日本と同様の税制度のある国の不動産を所有し、その不動産を売却した場合、現地において売却時に源泉徴収され、現地での確定申告において精算される。 居住者の場合、全世界所得について、日本で所得税が課されるから、現地でも所得について税額が課された場合は、外国税額控除で2重課税を調整することになる。 不動産を売却して、譲渡時に源泉税が課された場合、日本で、外国税額控除は可能であるが、外国税額控除ができる時期は、源泉徴収された時、つまり売却代金が支払われた時である。 さらに、確定申告で納税額が源泉徴収税額よりも大きい場合は、追加税額を納付することになるが、この追加納付額について外国税額控除ができるのは、確定申告により納税債務が確定した時(法定申告期限前に申告した場合は法定申告期限)である。 多くの国において、個人の所得の計算はカレンダーイヤーごとに計算し、申告納税するのは翌年となる。そのため、源泉徴収税額について外国税額控除をする年と、確定申告による追加税額について外国税額控除をする年が異なることになり、1回の不動産の譲渡所得に係る外国税額控除を2回行うことになる。 また、確定申告において、追加納税額が生ずる場合だけでなく、還付される場合がある。還付される場合の還付税額についてどのように取り扱われるのか、以下において簡潔に述べる。 ▷「還付年において納付した外国税額 > 還付税額」の場合 還付年において、他にも外国税額が生じ、納付した外国税額が還付税額よりも多い場合は、納付した外国税額から還付税額を差し引いた金額を外国所得税額として、その年の外国税額控除を計算していくことになる。 ▷「還付年において納付した外国税額 < 還付外国税額」の場合 ① 繰越控除限度超過額とは 外国税額控除は、納付した外国税額が全額控除できるのではなく、控除限度額の範囲内に限定される。控除限度額は所得税だけでなく復興特別所得税、道府県民税、市町村民税のそれぞれにあり、この控除限度額を超える外国税額がある場合は、控除限度超過額として翌年以後3年間にわたって繰り越されることになる。 ② 「繰越控除限度超過額 ≧ 差引還付外国税額」の場合 還付年において納付した外国税額よりも還付外国税額が大きい場合、還付外国税額から納付外国税額を差し引いた残額(以下「差引還付外国税額」)と、過年度3年間から繰り越された控除限度超過額の残額を比較する。繰越控除限度超過額がある場合は、古い年分の控除限度超過額から差引還付外国税額を控除していく。 繰越控除限度超過額が差引還付外国税額より大きな場合又は繰越控除限度超過額と差引還付外国税額が同額の場合は、繰越控除限度超過額と相殺後の差引還付外国税額が0となるので、差引還付外国税額が雑所得の総収入金額に算入されることはない。 ③ 「繰越控除限度超過額 < 差引還付外国税額」の場合 還付年において納付した外国税額よりも還付外国税額が大きい場合で、かつ、繰越控除限度超過額が差引還付外国税額よりも少ない場合、繰越控除限度超過額から控除しきれなかった差引還付外国税額が生ずるが、この控除しきれなかった差引還付外国税額相当額は雑所得の総収入金額に算入される。 ④ 繰越控除限度超過額がない場合 還付年において納付した外国税額よりも還付外国税額が大きい場合で、かつ、繰越控除限度超過額がない場合は、差引還付外国税額は、雑所得の総収入金額に算入される。 * * * このように、文章で説明すると複雑にみえるが、「外国税額控除に関する明細書」の「1 外国所得税額の内訳」や「2 本年の雑所得の総収入金額に算入すべき金額の計算」の各欄に、指示に従って記載していくと、上述したルールに則りスムーズに計算できるようになっている。 外国税額控除の処理は1年間で完結するものではなく数年間にわたって影響を及ぼす可能性があることから、繰越控除限度超過額等を毎年正確に記載していくことが重要である。 なお、記載例については、資産税審理研修資料(平成30年7月作成)(東京国税局課税第1部 資産課税課 資産評価官)の「Ⅲ 所得税の国際課税と海外不動産の譲渡に係る外国税額控除事例」が参考となる(TAINSで入手可能(資産税審理研修資料H300700))。 (了)
措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第20回】 「寄附財産が寄附日から2年以内に譲渡されても非課税措置を継続適用できる場合」 公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香 - 質 問 - 譲渡所得の非課税措置を受けるためには、寄附財産が、その寄附日から2年を経過する日までの期間内に寄附を受けた公益法人等の公益目的事業の用に直接供され、又は供される見込みである必要があります。 ただし、この2年の期間内に寄附を受けた公益法人等が贈与を受けた寄附財産を譲渡しても、非課税措置の適用が可能な場合があると聞きました。どのような場合でしょうか。 - 回 答 - 原則は、贈与を受けた寄附財産を2年以内に公益目的事業に直接供さなければならないのですが、以下のケースにおいて、一定の代替資産を取得し、その代替資産を公益目的事業の用に直接供するのであれば、非課税承認の特例措置を継続して受けることが認められています(措令25の17③、措規18の19②③)。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 譲渡所得の非課税措置(租税特別措置法第40条)を受けるためには、原則は、寄附を受けた財産をそのまま公益目的事業の用に直接供する必要がありますが、租税特別措置法施行令第25条の17第3項で規定された理由により、規定された財産を取得し、その財産を公益目的事業の用に直接供する場合は、継続して非課税措置の適用を受けることが認められています。 なお、上記⑦に規定された国税庁長官が認める「やむを得ない理由」及び「代替取得財産」は、以下のとおりです(措置法40条通達9)。 (了)