《相続専門税理士 木下勇人が教える》 一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第8回】 「社長貸付金の解消問題に関する本質論(ビジネス的視点)」 公認会計士・税理士 木下 勇人 社長貸付金の解消問題は相続税対策でしばしば取り上げられるが、その解決の一手法としてDES(債務の株式化)が存在する。しかし、DES(債務の株式化)の本来の目的は「財務の健全化」にあり、相続税対策だけがフォーカスされることには違和感を覚えてしまう。 そこで本稿では、DES(債務の株式化)を実行する原因となる社長貸付金そのものに焦点を当て、社長貸付金の解消問題に関する本質論をビジネス的視点を中心に検証する。 1 社長貸付金が増加する原因と投下資金の回収という視点 社長貸付金が増加する原因としては、主に次の場合が考えられる。 ただし、上記だけでは表面的な増加の原因を探れたに過ぎず、不十分である。貸付を受けた法人側では、当該資金を「運転資金」「設備資金」として資金投下、つまり、売上獲得のための資金投下となる。そのように考えた場合、投下資金の回収が図れたか否かが重要な視点となる。 2 業績の良い会社のケース 業績の良い会社が金融機関からの借入手続の煩雑さから解放されるために、社長からの借入を実行するのであれば、投下資金の回収を図れる可能性は高いといえる。つまり、投下資金を事業運用することで最終的には社長が回収可能な状態となる。また、社長が回収をせずに、会社が次の投資へそのまま投下資金を回すというのも選択肢の1つとなる。 3 業績の悪い会社のケース これに対して、業績の悪い会社の場合、金融機関からの融資が厳しく社長からの借入に頼るしかない状況となる。社長に余剰資金があれば、社長からの借入が「いつまでも」続くが、この場合の投下資金は、あっという間に底をついてしまう。つまり、「事業運用をして回収」というプロセスを構築できていない会社にいくら資金を投下しても、欠損金を生じさせる結果となってしまう。 ビジネスの視点からいえば、傷が深くなる前にビジネスそのものを再度見直すか、会社の廃業を検討すべきである。回収できる状況ではないが、資金は何とか回っている会社であっても変化の激しい昨今の社会情勢を鑑みた場合、現状維持では将来に不安を感じたほうが正常な状態といえる。 4 今後の税理士としてあるべき姿の検証 会社の将来性を考えた結果、これ以上の展開が望めないのであれば、今後は税理士としてもビジネスへのアドバイスをすべき時代である。もしくは、税理士がアドバイスしないまでも適切な専門家とアライアンスをしなければ、会社のビジネスそのものを破綻させてしまう可能性がある。ある意味、会計事務所そのもののビジネス構造とも似ているといえる。 5 「回収」という視点からの社長貸付金の検証 (1) 事業運用した上での資金回収 回収した資金を費消せずに保有したまま相続が発生すると、保有資金に対する相続税負担が生じるが、納税資金や遺産分割の調整資金となりうる。 (2) 債務免除(個人からは債権放棄) 債務免除は、資金を回収することなく債権そのものを消滅させるため、相続財産を構成することはない。ただし、法人側での出口戦略(繰越欠損金との相殺、みなし贈与課税)を検討する必要がある。 (3) DES(債務の株式化)の実行 DES(債務の株式化)を行うことで、債権が自社株に変換されるため、原則、額面評価(評基通204)から自社株評価(評基通178以降)へ変換される。そのため、類似業種比準方式の採用余地があり、一般的には相続税の圧縮効果があるといえる。ただし、回収という側面で考えた場合、会社法の各種手続(特定の株主からの自己株式買取手続や分配可能額確保等)や課税問題(原則、みなし配当課税)をクリアする必要があるため、リスク検証をして臨む必要がある。 今後は、社長貸付金の解消問題には税務論点だけでなく、「回収」という視点の出口戦略が求められる時代となる。なぜならば、時代の変化に応じ社長が検討する対策の方向性も変化するからである。そのため、常に「対策の流動性」を視野に入れたスキームの実行が、これからの税理士には求められると考える。 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第76回】 「継続的取引の基本となる契約書⑦ (リベート支払に関する覚書)」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 当社は商社です。下記の文書は販売先との間で締結した、商品売買基本契約に基づき、別途リベート支払について定める文書です。 この文書は、印紙税法上の課税文書に該当しますか。 当事者間において対象商品「〇〇〇〇」の仕入予定金額を定めており、令第26条第1号に規定する取引条件のうち、「取扱数量(取扱金額)」を定めた文書に該当することから、第7号文書に該当する。 [検討1] リベート対象商品「〇〇〇〇」は、令第26条第1号における「目的物の種類」を定める文書に該当するか リベート対象商品「〇〇〇〇」は、あくまでも、リベートの対象となる商品を定めたものであり、令第26条第1号に定める目的物の種類を定める文書に該当しない。 [検討2] 甲へのリベート支払日として売掛金と相殺すると定めている部分については「対価の支払方法」に該当しないか リベートの支払時期については、「甲へのリベート支払日とし、売掛金と相殺する」と定めていても、これはリベートの支払時期、支払方法を定めたものであり、令第26条第1号でいう継続的取引の基本となる売買における対価の支払方法を定める文書に該当しない。 [検討3] 仕入予定金額は、令第26条第1号で定める「取扱数量」を定める文書に該当するか 仕入予定金額について、令第26条第1号における、「取扱数量」を定める文書に該当するかどうかは、当事者間において、一定期間における取扱予定金額を定めるものであり、令第26条第1号の重要事項である取扱数量(取扱金額を含む)に該当する。 ▷まとめ 令第26条第1号に定める第7号文書の要件は、売買に関する2以上の取引を継続して行われるため作成される契約書で、当該2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法等、売買に関する2以上の取引に共通するものであり、仕入予定金額は売買に関する取扱数量を定めるといえるが、リベートの対象商品、支払時期については、リベートに係るものであり、第7号文書の要件の目的物の種類、対価の支払方法を定める文書には該当しない。 (了)
改めて確認したいJ-SOX 【第9回】 「内部統制に不備があった場合の対応とその手順」 仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 〈J-SOXに関する基準及び実施基準の改訂について〉 令和元年12月13日に金融庁の企業会計審議会から、財務報告に係る内部統制基準・実施基準の改訂が公表されています。 この改訂の概要は、内部統制監査報告書の記載に関する改正が中心で、財務報告に係る内部統制の評価の実務的な作業には影響がないと考えられます。 なお、この改正後の基準及び実施基準は、令和2(2020)年3月31 日以後終了する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用されます。 前回まで、財務報告に係る内部統制をどのように評価するのかといった評価の手順に焦点を当てて説明してきました。 どのような企業であっても、人の行う作業が介入するため、どれだけ立派な内部統制が構築されていたとしても、何かしらの不備が出てくるものです。 そこで今回は、内部統制に不備があった場合に、どのように対応しなければならないのかを説明します。 1 全体的な対応の流れ 財務報告に係る内部統制基準では、不備の評価について、次のようなことが規定されています。 そのため、この不備の評価作業は必ず行わなければなりませんが、実務的な手順として、内部統制に不備があった場合、まずは、不備を発見した者がその上位の管理者等適切な者に対して、不備があったということを速やかに報告することが大事だと考えられます。 最終的には、不備の内容、財務報告全体に及ぼす影響金額、不備の対応策、その他有用と思われる情報を取りまとめる必要がありますが、通常、財務報告全体に及ぼす影響金額や対応策は検討に時間を要することが多いと考えられます。そのため、内部統制の評価実務にまだ慣れていない場合はなおさら、まずは不備があったという事実を報告し、そこから上位者等の指示や助言を受けながら、影響額や対応策などを検討するのがよいでしょう。 発見された不備が開示すべき重要な不備に該当する場合には、経営者、取締役会、監査役等(監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会)及び会計監査人に報告しなければならないため留意が必要です。 なお、J-SOXでは、あくまで期末日時点の財務報告に係る内部統制の有効性を評価するため、期中に不備が発見され、それが期末日までに是正されていれば、財務報告に係る内部統制は有効と評価することができます。 2 それぞれの内部統制の不備への対応 内部統制に不備があった場合、それが財務報告に重要な影響を及ぼす可能性を検討しなければなりませんが、どの内部統制に不備があったかによって財務報告に与える影響も変わってきます。 そこで、ここからは内部統制の種類ごとに不備をどのように評価するかを説明します。 (1) 全社的な内部統制に不備がある場合 ① 不備の評価 【第4回】でも説明しましたが、全社的な内部統制は企業全体に広く影響を及ぼし、企業全体を対象とする内部統制です。そのため、全社的な内部統制に不備があるということは、業務プロセスに係る内部統制の有効な整備及び運用を支援できておらず、企業における内部統制全般を適切に構築できていないということになります。 一方で、全社的な内部統制は財務報告に直接的には関わらないことが多いため、仮に全社的な内部統制に不備があったとしても、それがダイレクトに開示すべき重要な不備になることは通常なく、業務プロセスに係る内部統制が単独で有効に機能することもあり得ます。 しかし、先ほど述べたように、全社的な内部統制に不備があるという状況は、基本的な内部統制の整備に不備があることを意味しているため、全社的な内部統制に不備がある状況で財務報告に係る内部統制が有効と評価されることは稀であるとされています。 したがって、全社的な内部統制に不備がある場合には、どの内部統制にどのような影響を及ぼすかを検討し、財務報告に重要な虚偽記載をもたらす可能性について慎重に評価する必要があります。 ② 不備の例示 財務報告に係る内部統制の実施基準において、開示すべき重要な不備となる全社的な内部統制の不備が例示されているため、参考として以下に記載します。 〈開示すべき重要な不備となる全社的な内部統制の不備の例〉 (2) 業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合 ① 不備の評価 業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合、虚偽記載が発生する可能性のある勘定科目等を特定し、影響度と発生可能性を考慮して具体的な影響額を推定して金額的重要性を評価し、さらに質的な重要性を評価して、開示すべき重要な不備に該当するか否かを判断します。 大まかにいうと、このような手順となりますが、いくつか補足事項もあるため、以下で詳細に説明していきます。 ② 詳細な対応手順 (a) 影響範囲の推定 業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合、当該業務プロセスで作られる勘定科目等の数値に虚偽記載が発生する可能性があります。そのため、業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合、どの勘定科目等に虚偽記載が発生するかを推定します。 (b) 重要性の判断 業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合、どの勘定科目等にどの程度の金額の虚偽記載が発生する可能性があるかを推定し、これの金額的及び質的な重要性を評価して、不備が開示すべき重要な不備に該当するか否かを判断します。 このとき、内部統制の不備が複数存在する場合には、不備ごとに単独に重要性を評価するだけではなく、同じ勘定科目に関係する不備はすべて合わせて虚偽記載の影響額に重要性が認められるか否かを評価します。 例えば、売掛金勘定の残高は、販売業務プロセスでの信用販売と入金業務プロセスの代金回収の影響を受けますが、この両方の業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合は、それぞれの不備がもたらす影響を合わせて、売掛金勘定の残高に及ぼす影響を評価しなければなりません。 〈不備が複数ある場合の影響額の評価イメージ〉 開示すべき重要な不備とは、内部統制の不備のうち、一定の金額を上回る虚偽記載、又は質的に重要な虚偽記載をもたらす可能性が高いものをいうため、上記のイメージを例に挙げると、売掛金勘定の残高に与える不備の影響額200や売上高に与える不備の影響額100に金額的重要性が認められるか、また、質的に重要な虚偽記載をもたらしていないかを評価して、内部統制の不備が開示すべき重要な不備に該当するか否かを判断します。 金額的重要性は、連結総資産、連結売上高、連結税引前利益などに対する比率で判断することが一般的で、実施基準では連結税引前利益については概ねその5%程度と例示されています。 質的重要性は、上場廃止基準や財務制限条項に関わる記載事項など投資判断に与える影響の程度や、関連当事者との取引や大株主の状況に関する記載事項など財務報告の信頼性に与える影響の程度で判断すると実施基準に定められています。 (c) 補完統制の検討 内部統制の不備による影響額を推定する際は、どの程度の金額の虚偽記載がどのくらいの発生確率(発生可能性)で起こるかを検討する必要があります。その際に気を付けなければならないのが補完統制の存在です。 特定の内部統制に不備があったとしても、他の統制で十分に虚偽記載が発生するリスクを低減できているということは実務上よくあります。このときの他の統制が補完統制です。 〈補完統制のイメージ〉 そのため、不備の影響額を推定する際は、当該不備だけで判断するのではなく、補完統制の有無、また、補完統制がある場合は、どの程度その勘定科目等の虚偽記載の発生可能性・金額的影響を低減しているかを考慮しなければなりません。 (3) ITに係る内部統制に不備がある場合 ITに係る内部統制に不備がある場合の対応については、【第8回】で説明しているため、ここでは説明を省略します。 * * * 今回までで、財務報告に係る内部統制の有効性をどのように評価するかを説明してきました。連載最終回となる次回は、評価した結果の報告をどのようにするか、すなわち、内部統制報告書の記載内容、記載文書の作成方法等を説明します。 (了)
企業結合会計を学ぶ 【第33回】 「結合当事企業の株主に係る会計処理」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 今回は、結合当事企業の株主に係る会計処理を解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 被結合企業の株主に係る会計処理 1 基本的な考え方 事業分離等会計基準は、一般に事業の成果をとらえる際の投資の継続・清算という概念に基づいて、実現損益を認識するかどうかという観点から、分離元企業の会計処理(事業分離等会計基準74項)と同様に、被結合企業の株主に係る会計処理を規定している(事業分離等会計基準115項)。 このため、企業結合により、保有していた被結合企業の株式が、結合企業の株式などの財と引き換えられた場合に、その投資が継続しているとみるか清算されたとみるかによって、被結合企業の株主に係る会計処理でも、一般的な売却や交換に伴う損益認識と同様に、交換損益が認識されない場合と認識される場合が考えられている(事業分離等会計基準115項)。 金融商品会計基準では、金融資産の交換について直接には規定していないが、金融資産の譲渡に係る消滅の認識は財務構成要素アプローチによること(金融商品会計基準58項)とされており、株式は金融資産であることから、金融商品会計基準との関係も考慮する必要がある(事業分離等会計基準115項)。 2 会計処理 投資が継続しているとみるか清算されたとみるかによって、被結合企業の株主は、企業結合日に、次のように会計処理する(事業分離等会計基準32項)。 (1) 被結合企業に関する投資が清算されたとみる場合 ① 被結合企業の株式と引き換えに受け取った対価となる財の時価と、被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額との差額を交換損益として認識するとともに、改めて当該受取対価の時価にて投資を行ったものとして会計処理する。 ② 現金など、被結合企業の株式と明らかに異なる資産を対価として受け取る場合には、投資が清算されたとみなされる(事業分離等会計基準35項~37項、41項)。 ③ ただし、企業結合後においても、被結合企業の株主の継続的関与(被結合企業の株主が、結合後企業に対して、企業結合後も引き続き関与すること)があり、それが重要であることによって、交換した株式に係る成果の変動性を従来と同様に負っている場合には、投資が清算されたとみなされず、交換損益は認識されない。 (2) 被結合企業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合 ① 交換損益を認識せず、被結合企業の株式と引き換えに受け取る資産の取得原価は、被結合企業の株式に係る適正な帳簿価額に基づいて算定する。 ② 被結合企業が子会社や関連会社の場合において、当該被結合企業の株主が、子会社株式や関連会社株式となる結合企業の株式のみを対価として受け取る場合には、当該引き換えられた結合企業の株式を通じて、被結合企業(子会社や関連会社)に関する事業投資を引き続き行っていると考えられ、当該被結合企業に関する投資が継続しているとみなされる(事業分離等会計基準38項~40項、42項~44項)。 Ⅲ 結合企業の株主に係る会計処理 1 基本的な考え方 結合当事企業の株主のうち、結合企業の株式を保有している株主は、企業結合によっても当該結合企業の株式を直接引き換えないが、当該企業結合に伴い、当該結合企業に対する持分比率が変動する。 この場合、結合企業の株主に係る会計処理は、連結会計基準や金融商品会計基準等に従って次のように整理することができる(事業分離等会計基準139項)。 (1) 結合企業の株主の個別財務諸表 ① 結合企業の株主が結合企業を子会社としていたが、企業結合により当該株主(親会社)の持分比率が減少し子会社に該当しなくなった場合には、結合企業の株主の個別財務諸表上、子会社株式から関連会社株式やその他有価証券に取得原価で振り替え、損益を認識しない。 ② 結合企業の株主が結合企業を関連会社としていたが、企業結合により当該株主(投資会社)の持分比率が減少し関連会社に該当しなくなった場合には、関連会社株式からその他有価証券に取得原価で振り替え、損益を認識しない。 (2) 結合企業の株主の連結財務諸表 ① 結合企業の株主が結合企業を子会社としており、企業結合により当該株主(親会社)の持分比率が減少した場合、親会社の持分の一部が非支配株主持分に振り替わることから生じる差額は、親会社の持分変動により生じた差額として、資本剰余金として処理する。 ② 結合企業の株主が結合企業を関連会社としており、企業結合により当該株主(投資会社)の持分比率が減少した場合、投資会社の持分の一部が他の持分に振り替わることから生じる差額は、原則として、持分変動差額として処理する。 上記の事業分離等会計基準139項の整理に対して、個々の株主にとっては、企業結合により、被結合企業の株主が新たに結合企業の株主となっても、引き続き結合企業の株主であっても、同様の経済的効果を有する場合があると考えられる(事業分離等会計基準140項)。 例えば、子会社であった被合併会社が合併により消滅し、被合併会社の株主は新たに合併会社を関連会社とする場合と、子会社であった合併会社が、合併により持分比率が減少し関連会社となった場合とは、結合当事企業の株主にとって、それぞれの合併による経済的効果は実質的に同じであるものと考えられる。 このような場合には、被結合企業の株主に係る会計処理と結合企業の株主に係る会計処理とは、同様になるべきであると考えられ、結合企業の株主に係る会計処理は、被結合企業の株主に係る会計処理に準じて行うものとされている(事業分離等会計基準48項、140項)。 2 会計処理 結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準48項)。 (1) 企業結合により結合企業の株主の持分比率が減少する場合 ① 子会社を結合企業とする企業結合により、当該結合企業の株主の持分比率が減少する場合、子会社を被結合企業とする企業結合における被結合企業の株主の会計処理(事業分離等会計基準38項)に準じて処理する。 ② 関連会社を結合企業とする企業結合により、当該結合企業の株主の持分比率が減少する場合、関連会社を被結合企業とする企業結合における被結合企業の株主の会計処理(事業分離等会計基準40項、41項)に準じて処理する(結合企業の株主が被結合企業の株式も有しており、結合後企業は当該株主の子会社又は関連会社となる場合については、事業分離等会計基準39項、42項、44項)。 ③ 子会社や関連会社以外の投資先を結合企業とする企業結合により、当該結合企業の株主の持分比率が減少する場合(その他有価証券からその他有価証券)、結合企業の株主は何も会計処理しない。 (2) 企業結合により結合企業の株主の持分比率が増加する場合 ① 企業結合前に、結合企業の株主が結合企業の株式に加え被結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該結合企業の株主としての持分比率が増加(被結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業は当該株主の子会社又は関連会社となる場合、有している被結合企業の株式が子会社株式であるときには事業分離等会計基準38項により会計処理し、有している被結合企業の株式が関連会社株式であるときには事業分離等会計基準40項により会計処理する。 ② 企業結合前に、結合企業の株主が結合企業の株式に加え被結合企業の株式(その他有価証券)も有していることから、当該結合企業の株主としての持分比率が増加(被結合企業の株主としての持分比率は減少)するが、結合後企業が引き続き子会社や関連会社以外の投資先である場合(その他有価証券からその他有価証券)、結合企業の株主は何も会計処理しない。 (了)
「働き方改革」でどうなる? 中小企業の労務ポイント 【第12回】 (最終回) 「『同一労働同一賃金』導入前に確認しておきたい基礎知識(その2)」 Be Ambitious社会保険労務士法人 代表社員 特定社会保険労務士 飯野 正明 前回は「同一労働同一賃金」の制度について、概要にはじまり、「同一労働」であることをどう判断するか、また、それを踏まえた待遇是正までの流れなどを解説しました。 続きとなる今回は、厚生労働省から公表されている「同一労働同一賃金ガイドライン」の内容を中心にみていきます。 ▷「同一労働同一賃金ガイドライン」で示されている目的 このガイドラインで示されている同一労働同一賃金の目的は、主に次のようになっています。 つまり、同じ企業で働く、通常の労働者、いわゆる正社員(無期フルタイム社員)と非正規労働者(短時間労働者又は有期雇用労働者)との間にある「不合理な待遇の相違」を解消することで、労働者がどんな働き方を選択しても「納得できる待遇」を受けられる労働環境を実現しよう、といった感じでしょうか。 その目的の実現のために「いかなる待遇の相違が不合理と認められるものであり、いかなる待遇の相違が不合理と認められるものでないのか等の原則となる考え方及び具体例を示したもの」が、このガイドラインです。なお、原則的な考え方とともに具体例として「問題となる例」「問題とならない例」も示されています。 しかし、そうは言っても、例えば「正社員の70%以上が同様の待遇であれば不合理な差ではない」などと明確な数値を示しているわけではなく、「違いがある場合には、その違いに応じた支給をしなければならない」といった書き方に留まっています。 したがって、「納得できる待遇」を実現するためには、「相違」について企業としての考えを明確に示し、労働者の納得感を得るような環境の整備が必要となると考えます。 なお、待遇については、基本給、諸手当、賞与などの賃金に関するものだけではなく、教育訓練や福利厚生施設の利用についても示されています。 ▷待遇に関する原則的な考え方 ガイドラインで示されている待遇に関する原則的な考え方を、以下ではいくつかご紹介します。 なお、家族手当、住宅手当、退職手当はガイドラインには示されていませんが、均衡、均等待遇の対象となっていることから、各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくことが望まれます。 ▷まとめ これまで、多くの企業が「非正規労働者を雇用する理由」を問われると、「期間の定めがあるので雇用調整がしやすい」「賃金等のコストが安い」といった理由を挙げていました。 前者は、「通算5年超の有期雇用者に対する無期転換義務」(いわゆる「無期転換ルール」)によってある程度解消されました。また、今回の法改正に伴い、後者の解消が図られることとなります。つまり、非正規労働者に働いてもらうためには「安定した雇用」と「それなりの待遇」が必要となるのです。 昨今の人材不足を支えているのは、女性の労働者です。おそらく、その中にはパートタイマー等の「多様な働き方」で働く方が多く存在しているはずです。今後の企業における働き方は、「フルタイム、残業もいとわない」といった働き方だけではなく、短い時間や少ない日数でも働いてもらうといった「多様な働き方」を企業として提供できるかどうかがポイントになってくることでしょう。そういった意味で今回の同一労働同一賃金の改正を1つのきっかけに、非正規労働者の働き方を会社として見直すべきです。 それには、前回説明したように、まずは自社の労働者である正社員と非正規労働者との間に待遇差があるかどうかの確認が必要です。実際、中小企業では、非正規労働者を対象とする就業規則や給与規程が整っていないケースも見受けられます。法改正まで、「まだ1年以上ある」ではなく「もう1年しかない」といった状況です。まずは、自社の実態の把握・整理から始めることをおすすめします。 なお、ガイドラインには、 と記載されています。 非正規労働者にも「納得できる待遇」で働いてもらうことが、これからの企業の生産性を高めるうえで重要なことであるといえるでしょう。 (連載了)
空き家をめぐる法律問題 【事例20】 「民泊施設として空き家の管理を委託する場合の留意点」 弁護士 羽柴 研吾 - 事 例 - 私(A)は、現在、東京で生活をしていますが、数年前に四国の実家(空き家)を相続しました。四国の実家には、盆暮れに立ち寄って掃除等をしておりますが、しばらくは四国に戻って生活する意思もありません。 近年、四国にも訪日外国人の方が多数訪れているらしく、実家を民泊施設として利用できないか考えています。ただ、私は東京で生活しているため、民泊施設の管理を業者に任せたいと考えています。管理を委託する場合には、どのようなことに留意するべきですか。 (※) 本事例では、当該地域で住宅宿泊事業法の民泊が実施できることを前提とする。 1 はじめに 訪日外国人観光客の増加に伴い、宿泊施設が不足し、既存の建物を宿泊施設(民泊施設)として利用することが期待されている。このような期待に対応するため、平成29年6月9日に住宅宿泊事業法が成立した。同法は、内外の観光客の需要に応えるだけでなく、空き家を有効活用する選択肢を提供するものである。 そこで今回は、空き家を住宅宿泊事業法に基づいて民泊施設として利用する際の留意点について検討することとしたい。 2 民泊の類型と対象となる施設 民泊には、①旅館業法の許可に基づくもの、②国家戦略特別区域法に基づいて行うもの、③住宅宿泊事業法に基づいて行うものの3類型がある。その中でも、今後普及が期待されているのが、③住宅宿泊事業法に基づく民泊である。 住宅宿泊事業法の対象とする「住宅」は、①設備要件(当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要な設備があること)及び、②次の居住要件のいずれかを満たす必要がある。 上記居住要件のうち、(3)の「随時その所有者・・・の居住の用に供されている家屋」とは、純然たる生活の本拠としては使用していないものの、これに準ずるものとして、その所有者等によって随時居住の用に供されている家屋をいい、当該家屋は少なくとも年1回以上使用しているものの、生活の本拠としては使用していない家屋のことをいう(住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)(以下「民泊ガイドライン」という)1-1の(1)の②)。 具体的には、相続により所有しているが、現在は相続人等が常時居住しておらず、将来的に居住の用に供することを予定しているような空き家等が想定されている。例えば、相続した空き家から遠方で居住している相続人が、盆暮れのような時期に清掃や管理等の目的で訪れているような場合は、これに含まれると考えられる。 なお、将来的な居住の用に供するかどうかは、未確定なことであることから、厳格に解するべきでなく、当該要件は、「居住する意思があれば居住できる状態の家屋」という程度の意味に理解するべきであろう。したがって、本件の場合、Aが相続した四国の建物も、住宅宿泊事業法の対象となる「住宅」に含まれると解される。 3 民泊施設の管理を委託する場合のいくつかの留意点 (1) 住宅宿泊管理業者への委託 住宅宿泊事業者は、次の場合には、住宅宿泊管理業務を1つの住宅宿泊管理業者に委託しなければならない(住宅宿泊事業法第11条第1項)。 空き家を相続した者が、当該空き家を民泊施設として利用する場合、(1)の②に該当することが通常である(「一時的な不在」とは、具体的には原則として1時間程度が想定されている)。また、当該相続人が、当該空き家から離れた地に生活の本拠があるような場合には、(2)の例外要件をいずれも満たさないであろう。そのため、本件の場合、Aが相続した建物を民泊施設として利用する場合には、住宅宿泊管理業者に委託しなければならない。 (2) 管理委託契約の締結 住宅管理業務の委託に関しては、国土交通省から「住宅宿泊管理受託標準契約書」(以下「標準契約書」という)が公表されているため、実務上、これを参考にした管理委託契約が締結されることになると考えられる。 住宅宿泊事業者が委託する業務内容は、住宅宿泊事業法第5条から同法第10条に規定されており、その中でも、住宅宿泊管理業者による宿泊者に対する騒音や周辺環境への悪影響の防止に関して必要な事項の説明や、周辺地域住民からの苦情等への対応については、近隣とのトラブル防止に関係する事項でもあるため、委託契約書にどのような条項を定めておくかが重要となる。 標準契約書の別表第1の(5)では、苦情発生時の住宅宿泊管理業者による現場急行や、苦情の対象となる行為の中止要請が具体的な委託内容として定められている。もっとも、標準契約書によれば、迷惑行為が行われた場合に、住宅宿泊事業者と民泊施設利用者との宿泊契約の解除権限までは委託されていないため、住宅宿泊事業者は、住宅宿泊管理業者からの報告に基づいて対応しなければならない。 このような負担を軽減するための方策として、委託事項の中に、住宅宿泊管理業者による解除権限まで定めておくことが好ましい(民泊ガイドライン2-2の(2)の⑥)。もっとも、住宅宿泊事業者に最終的な判断権を確保しておくために、委託契約書には、住宅宿泊管理事業者が解除を行う場合、事前に住宅宿泊事業者との協議を義務付けるなどの条項を設けることが考えられる。 (3) 監督官庁からの行政処分に係るリスク 次に、個人が相続をした空き家を民泊施設として利用する場合、各種行政法令に適合させるための改装費等を支出するために、金融機関から融資を受けることもありうる。通常、金融機関は、融資をする際の契約書に、監督官庁からの行政処分(許認可の取消しや営業停止処分)を期限の利益喪失事由として定めていることが多いため、業務停止命令等を受けた場合には、借入金の一括返済を行わねばならないリスクがあることに留意すべきである。 この点、住宅宿泊事業法では、都道府県知事は、住宅宿泊事業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、受託宿泊事業者に対する業務改善命令(同法第15条)を発令し、これに従わない場合には、業務停止命令等(同法第16条)をも発令することができる。また、民泊ガイドライン2-3の(1)の③によれば、「住宅宿泊事業の適正な運営を確保するため必要があると認めるとき」は、同法に違反している場合だけでなく、同法の目的等を踏まえて適正な運営がなされていない場合も含まれている。 そこで、住宅宿泊事業者としては、①金融機関との融資契約書の期限の利益喪失条項の内容を確認するとともに、②行政処分を受けるリスクを低減するために、住宅宿泊管理業者の業務内容を的確に把握することが重要になってくる。標準契約書第9条第3項では次の報告徴求権を定めており、住宅宿泊事業者にとって、このような条項を設けるべきであろう。 なお、個人の住宅宿泊事業者と法人の住宅宿泊管理業者との間の契約では、交渉力に差があるため現実的には難しいであろうが、住宅宿泊事業者としては、単に報告を求めるだけでなく、必要に応じて業務改善要求をすることができるように、第4項として、「甲は、前項の報告の結果、必要があると甲が判断した場合には、乙に対し、必要な改善を求めることができる。」などの改善措置要求条項を追加することも考えられる。 (4) 住宅宿泊管理業者の責任の範囲 標準契約書に付された解説コメントによれば、住宅宿泊事業法上、住宅宿泊管理業者が管理義務を負う事項について、責任を免除するような契約条項は無効になる旨指摘されている。そこで、住宅宿泊事業者としては、損害賠償条項において不当に住宅宿泊管理業者の責任が限定されていないかについて留意しておく必要がある。 (了)
〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第28話】 「税理士への損害賠償請求」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 中尾統括官は、険しい顔をしながら、新聞を読んでいる。 「これは厳しいな・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、ため息をつく。 「・・・何が厳しいのですか?」 傍らで書類を整理していた浅田調査官が尋ねる。 「税理士に対する損害賠償事件だよ。」 新聞の見出しには「税理士ミス、訴え頻発、賠償保険支払い5年で倍増」と書かれている。 浅田調査官は、中尾統括官が見ている新聞をのぞく。 「税理士の仕事も・・・けっこう危険ですね。」 浅田調査官は、含み笑いをする。 「私なんて、所得税しか知らないから・・・とても税理士の仕事などはできないよ・・・」 中尾統括官は自虐的に言う。 「えっ・・・統括官は退職後、税理士にならないのですか?」 浅田調査官は驚く。 「私は再雇用で・・・65歳まで税務署で働かせてもらうよ。」 中尾統括官は、読んでいた新聞を机の上にポンと置く。 「でも・・・せっかく税理士の資格を持っているのですから・・・税理士として開業しなければ、損だと思うのですが・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を見る。 「仮に税理士を開業しても、顧問先から仕事のミスで損害賠償の請求を求められ、大事な退職金を失ってしまう・・・なんて、最悪のシナリオになる可能性もあるだろう・・・」 中尾統括官は、真面目な顔で言う。 「そうですねえ・・・私も所得税部門ですから・・・法人税や資産税はほとんど知らないし・・・税理士の資格はあっても、仕事ができないですね。」 浅田調査官は、舌を出して笑う。 「しかし、君なんかまだまだ若いから、所得税以外の税目を勉強して、税理士になることは十分に可能だよ・・・」 中尾統括官は、浅田調査官を励ます。 「そうですかねえ・・・それに、税理士の将来はそんなに明るいとも思えない・・・」 浅田調査官の反応は、ネガティブである。 「・・・ところで、この税理士職業賠償責任保険の中で、支払金額がもっとも多い税目は、消費税らしい。金額・件数とも全体の半分弱(258件で約8億5,000万円)を占めているという・・・やっぱり・・・消費税のミスが多いんだな。」 中尾統括官は、机の上に置かれた新聞を見て言う。 「・・・消費税の仕入税額等の計算には、実額による控除と概算による控除があるが、この課税方式の選択を税理士が間違うことによって、結局、消費税の還付ができなくなったというケースが多いそうだ。」 中尾統括官は、同情的に言う。 「たしか、簡易課税制度選択不適用届出書提出失念による還付不能消費税額が発生した事例があったな。」 そう言いながら、中尾統括官は、コピーをとっておいた資料をファイルから取り出し、事件の概要を説明する。 浅田調査官は、黙って聞いている。 中尾統括官は、言葉を続ける。 「・・・税理士はなぜ、代替資産の資産計上時期を誤ったのか・・・それについて、代替資産は、平成27年3月期に完成引渡しを受けていたが、税理士は、引渡し事業年度の平成27年3月期に資産計上せず、収用対価補償金の入金が完了した平成28年1月に資産計上し、消費税については、平成28年3月期に原則課税により還付を受けたらしい・・・その後、税務調査が入って・・・否認された・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の説明に頷く。 「それは・・・明らかに、税理士のミスでしょう・・・過去の届出書を確認し、事前に簡易課税制度選択不適用届出書を提出していれば、有利な原則課税で申告できたわけですし・・・」 浅田調査官は、中尾統括官を見る。 「・・・その通りだ。」 中尾統括官は、頷く。 「このケースは、建物等の引渡し時期等について、書類の確認を怠り・・・税理士の思い込みで申告してしまった。」 中尾統括官は付け加える。 「・・・ところで、この事例では、保険金が支払われたのですか?」 浅田調査官が尋ねる。 「ああ、過大納付消費税額約1,100万円から税効果による回復額約200万円を差し引いた約900万円を認容損害額として、免責30万円を控除した約870万円が保険金として出たらしい。」 中尾統括官は、支払保険金の具体的な金額について、説明する。 「・・・しかし、このようなミスは・・・誰でもやりそうな気がする・・・もちろん、私もミスしそうだ・・・これに対して税務職員は、調査の結果、誤っていれば、それを是正すればよく、調査で納税者の誤りを発見できなくても、損害賠償の責任を負わない・・・」 2人は、互いに大きくうなずき合う。 (つづく)
-お知らせ- いつもプロフェッションジャーナルをご愛読いただきありがとうございます。 2019年下半期(7月~12月)掲載分の目次をアップしました。 2019年下半期(7月~12月)掲載目次ファイル ※PDFファイル PDFファイルを開いて各記事タイトルをクリックすると、該当の記事ページが開きます。 (※) お使いのブラウザによって開かないものがあります。 パソコンやクラウド等に保存していただくと、PDFファイルから各記事ページへすぐに移動できますので、ご活用下さい(PDFファイル内の文字検索もできます)。 Back Number ページからもご覧いただけます。 ▷半年ごとの目次一覧 2019年 1月~6月(No.301~324)⇒[こちら] 7月~12月(No.325~350)⇒[こちら] ★ 2018年 1月~6月(No.251~274)⇒[こちら] 7月~12月(No.275~300)⇒[こちら] 2017年 1月~6月(No.201~224)⇒[こちら] 7月~12月(No.225~250)⇒[こちら] 2016年 1月~6月(No.151~175)⇒[こちら] 7月~12月(No.176~200)⇒[こちら] 2015年 1月~6月(No.100~125)⇒[こちら] 7月~12月(No.125~150)⇒[こちら] 2014年 1月~6月(No.51~75)⇒[こちら] 7月~12月(No.76~100)⇒[こちら] 2013年 1月~6月(No.1~25)⇒[こちら] 7月~12月(No.26~50)⇒[こちら] 2012年 創刊準備1号~5号⇒[こちら]
《速報解説》 改正会社法を受けた取締役の報酬に関する法規の見直し ~令和2年度税制改正大綱~ 税理士 中尾 隼大 はじめに 令和元年12月20日、令和2年度税制改正大綱が閣議決定された。その中には、先般公布された「会社法の一部を改正する法律」及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」を踏まえた改正も含まれているため、以下に概観したい。 1 会社法の改正(役員報酬に関連する部分) 役員報酬は、取締役にとっては適切な職務執行のインセンティブを付与する手段となり得るものであるため、手続きの透明化を担保する必要性があった。したがって、会社法の改正により以下の措置がなされた。 【会社法361条7項(新設)】 監査役設置会社(公開会社かつ大会社に限る)及び監査等委員会設置会社に該当する株式会社の取締役会は、取締役の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による事項についての定めがある場合には、当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として、法務省令で定める事項を決定しなければならないとされた。 すなわち、取締役会にて各取締役の報酬を決定する場合、その決定方針等を定めなければならない。 ただし、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは、この限りでない。 【会社法361条1項3号~5号(新設)、6号(追加)】 取締役の報酬として株式等を付与する場合の株主総会の決議事項に、株式等の数の上限等が加えられた。例えば、以下の項目を決議しなければならない。 (これらの詳細は、会社法の一部を改正する法律該当箇所を参照) 【会社法202条の2(新設)】 当該条項の新設により、上場企業は定款又は株主総会で決議することによって、株式又は新株予約権を無償で交付することができるようになる。 これにより、会社は純然たる報酬として譲渡制限付株式を交付することが可能となり、これまでのように金銭債権として報酬を付与し、当該金銭債権の現物出資を受ける形をとる必要が無くなったと考えられる。 2 令和2年度税制改正大綱の内容 上記の会社法の改正に伴い、令和2年度税制改正において以下の対応がなされることとされた。 (1) 個人課税(税制改正大綱閣議決定版24-25頁、30頁) 平成28年度税制改正で整備された譲渡制限付株式の取扱い、すなわち、譲渡制限付株式は交付時点ではなく、譲渡制限が解除された時点で役員に収入が発生するとした措置について、以下の措置が講じられることとされた。 (注) 上記①の改正は、会社法の一部を改正する法律の施行の日以後に交付の決議がされる譲渡制限付株式について適用される。 上記の会社法の改正に合わせ、今後は無償で交付する譲渡制限株式もその対象に含まれるとされる。また、これまでは譲渡制限期間中に当該役員が死亡した場合の取扱いについて実務上見解が分かれていたが、その取扱いが示された形である。 (2) 法人課税(税制改正大綱閣議決定版62頁) 上記に合わせ、法人税法54条の譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例についても、会社関係制度の見直しを前提に、以下の措置が講じられることとされた。 法人課税における費用の帰属についても、無償にて交付する譲渡制限付株式が、費用の帰属年度特例に含まれることとなる。 その他、過大役員給与の形式基準についても、会社法の改正に合わせ、上限数を反映させること等が盛り込まれた。 (了)
《速報解説》 措置法40条特例、認定NPO法人等に対する寄附も適用対象に ~令和2年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香 1 特定買換資産の特例の制度 通常、個人が法人に現物財産を寄附した場合、その寄附時の時価で譲渡したとみなされ、譲渡所得税が課される。ただし、(1)その寄附が公益の増進に著しく寄与すること、(2)寄附した財産が、寄附があった日から2年以内に公益目的事業の用に直接供される、又は供される見込みであること、(3)その寄附により、寄附をした者の所得税又は寄附をした者の親族等の相続税若しくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められること、の要件を満たす場合には、当該譲渡所得税を非課税とする制度がある。 この特例措置を適用して受領した現物財産については、(ⅰ)そのまま継続して保有し、公益目的事業に利用するか、(ⅱ)公益目的事業の用に2年以上直接供した後、同種の資産等に買換えをして引き続き公益目的事業に利用するか、いずれかしか認められていなかった。 しかし、平成30年度の税制改正において、上記の非課税承認を受けた後、その寄附を受けた一定の公益法人等がその寄附財産を譲渡し、買換資産を取得する場合で、一定の要件を満たすときは、同種の資産への買換でなくても非課税承認を継続することができるという特例が創設された。 上記一定の要件とは、次の4つの要件をいう。 2 承認特例の制度 1で紹介した譲渡所得税非課税制度の特例は、国税庁長官の承認が出るまで通常2年以上の期間がかかるとされているが、次の3つの要件を満たす寄附であることを証する一定の書類を添付した申請書を、寄附をした日から4ヶ月以内に 納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出した場合で、その提出した日から1ヶ月以内(寄附財産が株式等である場合には、3ヶ月以内)に、その申請について国税庁長官の承認がなかったとき、又は承認をしないことの決定がなかったときは、その申請について承認があったものとみなされ、現物寄附を行った個人に対し、譲渡所得税が非課税とされる、承認特例という制度も設けられている。 この特例の対象となる法人は、国立大学法人等(国立大学法人、大学共同利用機関法人、公立大学法人、独立行政法人国立高等専門学校機構若しくは国立研究開発法人をいう)、公益社団法人、公益財団法人、学校法人又は社会福祉法人となっている。 3 令和2年度税制改正の内容 従来、認定及び特例認定NPO法人に対する寄附財産に関しては、1の特定買換資産の特例及び2の承認特例の制度は認められていなかった。 しかし、令和2年度税制改正により、2で示した3つの要件をすべて満たす場合には、他の承認特例対象法人(国立大学法人等、公益社団法人、公益財団法人、学校法人、社会福祉法人)と同様の承認特例を適用し、国税庁長官の承認手続きがを簡素化されることとなる。 また、寄附された財産を公益目的事業の用に供する別の資産に買い換える場合についても、一定の手続きの下で特定非営利活動に充てるための基金に、寄附された財産を組み入れて管理し、当該財産の譲渡収入の全部をもって取得した資産を、継続して基金において管理する場合には、公益目的事業の用に直接供した日から2年以内に買い換える場合であっても、非課税の措置を継続することとされた。 なお、本改正の施行時期については、大綱に記載されていない。 【参考図】 (※) 内閣府ホームページより (了)