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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例60(消費税)】 「公表裁決事例(「個別対応方式による仕入税額控除額の計算に当たり、一括仕入れの調剤薬品等の仕入れを共通売上対応分であるとした用途区分に区分誤りはなかった」)を知り、所轄税務署で個別相談した結果、裁決と同様の計算が可能との回答を得たため、過去に遡って損害賠請求を受けた事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例60(消費税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆原則課税における仕入税額控除(消法30②) 消費税の原則課税における仕入税額控除の計算は、課税売上高5億円超又は課税売上割合が95%未満の場合には、全額控除は認められず、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかを選択しなければならない。 ◆個別対応方式(消法30②一) 個別対応方式は、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額のすべてを、①課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの(「課税対応」)、②非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの(「非課税対応」)、③課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの(「共通対応」)に区分が明らかにされている場合には、次の計算式により仕入税額控除を計算することができる。 仕入控除税額 = ①に係る課税仕入等の税額 +(③に係る課税仕入等の税額 × 課税売上割合) ◆一括比例配分方式(消法30②二、④) 一括比例配分方式は仕入控除税額の計算において、個別対応方式を適用できない場合又は個別対応方式を適用できる場合であっても一括比例配分方式を選択したときに適用される。一括比例配分方式は次の計算式により計算する。 仕入控除税額 = 課税仕入等の税額 × 課税売上割合 一括比例配分方式は、課税仕入れ等に係る消費税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算するため、個別対応方式に比べ手間がかからない。なお、一括比例配分方式を選択した場合には、2年間の継続適用要件がある。 【参考】国税不服審判所公表裁決事例要旨(平成18年2月28日裁決、裁決事例集No.71 719頁)       (了)

#No. 261(掲載号)
#齋藤 和助
2018/03/22

「使用人兼務役員」及び「執行役員」の税務をめぐる考察 【第7回】「両者の定義の差異と税務上の留意事項(まとめ)」

「使用人兼務役員」及び「執行役員」の税務をめぐる考察 【第7回】 「両者の定義の差異と税務上の留意事項(まとめ)」 (最終回)   税理士 大塚 進一   最終回となる今回は、これまでの内容を踏まえて使用人兼務役員と執行役員の定義を再確認し、そこから生じる差異及び税務上の留意事項を確認することとしたい。   1 使用人兼務役員と執行役員の定義 (1) 使用人兼務役員の定義 使用人兼務役員は、常勤の役員であるが、部長や課長など使用人としての職制上の地位を持ち、かつ、使用人としての業務を常時行う者である。 常勤の役員が上記のような使用人に該当すれば、常に使用人兼務役員になれるものではなく、代表権を有するとみなされる者で使用人を指揮監督する立場の者、会社法等で使用人を兼ねることが禁止されている者、役員の中でも会社に対する支配力が強い者は、使用人兼務役員になれない。法令上は法人税法に規定されている。 (2) 執行役員の定義 執行役員は、「役員」と称されるが、経営の意思決定に関わることはなく、雇用契約の場合は従業員の域を超えない使用人、委任契約の場合も経営に従事していないなら法人税法上も役員にあたらない。 法令上の規定はなく、しいて定義するなら、会社法第362条の 「重要な使用人」と解される。 よく似た名称に委員会設置会社における「執行役」や、非同族会社での業績連動給与が損金となる役員の「業務執行役員」があるが、これらはいわゆる執行役員と異なり、執行役は会社法418条に規定さる法人税法上の役員にあたり、業務執行役員も法人税法に規定される役員である。   2 一般的な使用人兼務役員と執行役員の差異 一般的な使用人兼務役員と執行役員の差異をまとめると、以下のようになる。   3 使用人兼務役員と執行役員と税務上の留意事項 使用人兼務役員については、税法上細かく規定されているため、それに該当すれば、その取扱いは法令や通達等で確認することができる。 しかし、執行役員は税法上規定されてないので、個々の場合について役員とみなされるか否かの判断が必要となる。 そこで役員に該当すれば、役員として取り扱い、そうでなければ使用人として扱うこととなる。   (連載了)

#No. 261(掲載号)
#大塚 進一
2018/03/22

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第44回】「青色繰越欠損金控除額の損金算入否認」~青色繰越欠損金の当期控除額の損金算入が認められないと判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第44回】 「青色繰越欠損金控除額の損金算入否認」 ~青色繰越欠損金の当期控除額の損金算入が認められないと判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して、「繰越欠損金の当期控除額の損金算入は認められないこと」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた和歌山地裁昭和54年2月26日判決(訟月25巻6号1689頁。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、本件理由付記について、端的に、理由付記としては十分であって不備はないと判断した。   4 検討 (1) 関係法令の確認 内国法人の各事業年度開始の日前9年(ただし、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年)以内に開始した事業年度において生じた欠損金額(以前に損金の額に算入されたもの及び欠損金の繰戻しによる還付の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となったものを除く)がある場合には、当該欠損金額に相当する金額のうち一定の金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される(法法57)。 (2) 求められる理由付記の程度 本件理由付記は、X社が、繰越欠損金の当期控除額として〇〇〇円を損金の額に算入していることを前提として、同時に更正した前事業年度の所得金額が40万円であり、繰越欠損金がないことを理由に、当該控除額の損金算入を認めないとするものである。よって、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当するものと解する。 すると、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、X社は、繰越欠損金の当期控除額として〇〇〇円を損金の額に算入しているものの、同時に更正した前事業年度の所得金額が40万円であり、前事業年度から繰り越された繰越欠損金がないので、当該金額を損金の額に算入することはできない旨を記載する。 本件理由付記には、X社が当該事業年度に損金の額に算入した前事業年度以前からの繰越欠損金の発生時期や金額の内訳などの記載がない。厳密にいえば、①前事業年度の増額更正処分に伴い、前事業年度において前々事業年度以前から繰り越されてきた欠損金を使い果たしてしまったケースと②当該事業年度に損金の額に算入した繰越欠損金は前事業年度に発生したものであり、前事業年度の増額更正処分に伴い、そもそも前事業年度には欠損金が発生しないことになるケースなどが考えられる。 本件理由付記は②のケースを表現する趣旨であるという読み方も不可能ではないが、いずれのケースを表現する趣旨であるかという点について明示性に欠ける。 しかしながら、X社とすれば、同時に処分された前事業年度の更正処分の内容や当事業年度の法人税確定申告書の別表7でこの点を確認できるはずであるし、いずれにせよ、本件理由付記は、前事業年度以前から繰り越される欠損金は存在しないことを処分の理由として記載しているという整理が可能である。よって、この点に関する記載がないからといって、理由付記の趣旨目的に反することにはならないであろう。 であれば、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであるため、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであると評価することに支障はない。したがって、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 (4) 更なる議論 ~本件更正処分の大前提である前事業年度に係る更正処分の理由が記載されていないことをどう評価すべきか~ 本件理由付記には、本件更正処分において繰越欠損金の当期控除額の損金算入を否認する大前提としての前事業年度に係る更正処分の具体的な理由が記載されていないが、このことをどう評価すべきか。 本件理由付記はあくまで当事業年度の本件更正処分に係るものであることなどを考慮すれば、この点に関する記載がないからといって、理由付記の趣旨目的に反することにはならないであろう。 *  *  * 次回は、医療法人Xに対して行われた「法人税法上のリース取引に該当せず、減価償却費の損金算入は認められないこと」を理由とする法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 261(掲載号)
#泉 絢也
2018/03/22

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《繰延資産・資産除去債務-敷金》編 【第1回】「敷金(1)」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《繰延資産・資産除去債務-敷金》編 【第1回】 「敷金(1)」   公認会計士・税理士 前原 啓二     はじめに 「中小企業会計指針」における資産除去債務の取扱いについては、従来、我が国における企業会計慣行の成熟を踏まえつつ、引き続き検討することとされてきましたが、その対応として、平成29年の同指針改正により、様々な資産除去債務のうち中小企業にもよく見られる建物等賃貸借契約上の原状回復義務だけが、『敷金』に関する会計処理に含めて明記されました。 今回は、この『敷金』に関する会計処理を、税法固有の繰延資産の処理と合わせてご紹介します。 【設例1】 A社(3月31日決算)は、×0年4月1日にO社と建物の賃貸借契約を締結し、敷金1,200,000円を支払って、同日から入居を開始しました。退去時には、敷金1,200,000円のうち400,000円(敷引)を差し引いた額から原状回復費用を控除してO社へ返還する契約となっています。 入居時において、A社の同種の賃貸建物への平均的な入居期間は5年、退去時の原状回復費用は300,000円と見積もられます。 1 仕訳 A社の仕訳は、次のとおりです。 (1) 繰延資産について まず、繰延資産について、「中小企業会計指針」では、敷金は取得原価で計上し、このうち、建物等の賃貸借契約において返還されないことが明示されている部分の金額については、税法固有の繰延資産に該当し、賃貸借期間にわたって償却することとされます(同指針39)。 この設例では、敷金1,200,000円のうち敷引400,000円が、賃貸借契約において返還されないことが明示されている部分の金額として、法人税法固有の繰延資産に該当します。 法人税法固有の繰延資産は、その支出金額が200,000円未満のものは、その支出した事業年度において損金経理によりその事業年度の損金の額に算入することができます(法令134)が、その支出金額が200,000円以上のものは、資産計上して法人税基本通達に定める償却期間により月割で均等に償却します(法基通8-2-3)。 この設例では、敷引が200,000円以上なので、×0年4月1日に400,000円を資産(長期前払費用)計上し、償却期間は、会計理論上は例えばA社の同種の賃貸建物への平均的な入居期間である5年、法人税基本通達では5年(契約による賃貸期間が5年未満の場合、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間。この設例では非該当)であり、両者一致している5年で償却をすることとします。 これにより、×1年3月期の長期前払費用償却は80,000円(=400,000円×12/60月)と算定されます。×1年3月期以降も建物を賃借し続けた場合、翌年度以降も同様に長期前払費用償却を行います。 (2) 資産除去債務について 次に、資産除去債務について、「中小企業会計指針」では、返還されないことが明示されていない部分の金額については、原状回復義務の履行に伴い回収が見込まれない金額を合理的に見積もることができる場合には、当該金額を減額し、費用に計上することとされます(同指針39)。 この設例では、敷金1,200,000円のうち敷引(400,000円)を除く800,000円が賃貸借契約において返還されないことが明示されていない部分の金額であり、原状回復義務の履行に伴い回収が見込まれない金額を300,000円と合理的に見積っています。したがって、×0年4月1日に800,000円を資産(敷金)計上し、そのうち300,000円を償却期間(上記の5年)にわたって同資産から減額し、費用(雑費)計上していきます。 これにより、×1年3月期の敷金減額による費用計上額は60,000円(=300,000円×12/60月)と計算されます。×1年3月期以降も建物を賃借し続けた場合、翌年度以降も同様に敷金減額による費用計上を行います。   2 決算書 決算書の金額は、次のとおりです。   3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整は、次のとおりです。 (1) 長期前払費用については、この設例では、償却期間が5年として、法人税基本通達に定める償却期間と一致しているため、会計上の処理と税務上の取扱いは一致しています。 (2) 上場企業等が資産除去債務を導入した時に、それに伴う新たな会計処理に対して、法人税上の改正は一切されませんでした。したがって、資産除去債務に係る費用の金額は、税務上それを計上した事業年度の損金の額に算入されません。  この設例では、会計上は、原状回復義務の履行に伴い回収が見込まれない金額として見積った300,000円を償却期間(上記の5年)にわたって同資産から減額し費用(雑費)計上していきます(×1年3月期の敷金減額による費用計上額60,000円=300,000円×12/60月。翌年度以降同様)が、税務上は、この雑費計上額をその計上した事業年度に損金算入できません。  ×1年3月期以降も建物を賃借し続けた場合、敷金の会計上と税務上の帳簿価額については、×1年3月期から×5年3月期までを示すと次のとおりです。 (了)

#No. 261(掲載号)
#前原 啓二
2018/03/22

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第29回】「「ありえない用語」が出てきたら注意」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第29回】 「「ありえない用語」が出てきたら注意」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例29-1】 制度改正前の用語が未だに使われている。 (注) 上記は平成29年3月期決算に係るものである。 【事例29-1】は、連結計算書類の連結注記表に記載されている「重要な外貨建の資産又は負債の本邦通貨への換算基準」の文章です。この文章の中に1ヶ所、ありえない用語が使用されています。 どれだかわかりますか? 「ありえない」というのは、「使用されるはずがない」という意味です。【事例29-1】のタイトルからも少しわかりますが、制度改正があったために、この年度の連結計算書類では使用されるはずがない用語ということになります。   2 「ありえない用語」はコレ では、正解を見てみましょう。以下のとおりです。 (注) 上記は平成29年3月期決算に係るものである。 「ありえない用語」の部分を正しい用語に置き換えてあります。赤丸で囲ったところです。 つまり、「ありえない用語」とは「少数株主持分」です。それを「非支配株主持分」に置き換えなければならなかったわけです。 「非支配株主持分」というのは、連結会計特有の勘定科目で、連結貸借対照表で表示される科目です。 非支配株主については【第15回】で簡単に触れましたが、「非支配株主持分」という用語は、平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から使用されています。連結貸借対照表上において、それまで「少数株主持分」と表示していたものを、「非支配株主持分」と表示することにしています。 【事例29-1】は平成29年3月期決算のものであると書いてあるので、「非支配株主持分」に変更されて2年度目です。 にもかかわらず、未だに「少数株主持分」となっている点が間違いでした。   3 会社法計算書類で「四半期」という用語が? ありえない用語が紛れ込んでいる事例は他にもあります。言われればそれとわかるものの、誰も言ってくれなければ作成者自らは気づきにくいのです。 【事例29-2】は、法人税法の改正に伴い会計方針の変更がなされた年度には、必ずといってよいほど見かけるうっかりミスの事例です。 【事例29-2】 連結計算書類に四半期報告書の用語が紛れ込んでいる。 この事例における「ありえない用語」は、「第1四半期連結会計期間」と「税金等調整前四半期純利益」の2つです。正しくは以下のように書き換えなければなりません。 おそらく、この事例の会社は上場会社であり、上場会社が義務付けられている開示書類の1つである四半期報告書において記載した注記文章を、会社法による連結計算書類(ここでは連結注記表)に丸々コピペしたものと思われます。【第5回】で解説した「フルコピー・ミス」ですね。 会社法では四半期決算という考え方がありませんので、基本的に「四半期」という用語は出てきません。この用語は、会社法計算書類では「ありえない用語」なのです。 したがって、「四半期」という用語が目に入ったら、「あれっ、これはおかしいのでは?」とすぐに気づかなければなりません。   4 個別注記表に連結で使用される用語が 【事例29-2】のようなミスをしなかった場合でも、油断はできません。税制改正による減価償却方法の変更の注記は、一般に、連結注記表だけでなく、個別注記表の方にもほぼ同じ内容が記載されます。 そのため、実務では、連結注記表の記載文章を個別注記表にフルコピーすることが多いのです。 そうやって起きたのが以下の事例です。 【事例29-3】 個別注記表に連結損益計算書の用語が紛れ込んでいる。 このミスも非常によく見られます。「税金等調整前当期純利益」という用語は連結損益計算書の用語であって、損益計算書では「税引前当期純利益」です。 この注記の作成者がそのことを知らなかったわけではないと思いますが、この「ありえない用語」が注記文章の最後に出てきているため、見落としてしまったのではないでしょうか。   〈今回のまとめ〉 会社法計算書類に「ありえない用語」が紛れ込んでいないか、常に注意を払いましょう。 (了)

#No. 261(掲載号)
#石王丸 周夫
2018/03/22

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-共通編- 【第2回】「デューデリジェンスのプロセス①」

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -共通編- 【第2回】 「デューデリジェンスのプロセス①」   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   ←(前回) | (次回)→   【Phase1 計画段階】 1 NDA(秘密保持契約書)の締結 LOI(基本合意書)を締結した後、デューデリジェンスを実施するためには、対象会社等の機密情報にアクセスする買い手候補の守秘義務を記したNDAを締結することになる。NDAの有効期間は通常1年~3年程度の期間で設定され、これは、取引が不成立(Deal Break)に終わった場合における開示資料の返還義務なども含まれている。 なお、一般的なNDAの構成は、下記のとおりである。 NDA締結後、売り手の指定するデータルームにおいて一定期間、資料の査閲と対象会社等のマネジメントや特定の従業員に対するインタビューを中心としたデューデリジェンスが許可されることになる。 なお、デューデリジェンスの実施に、公認会計士・弁護士等の外部の専門家を利用する場合は、同程度以上のレベルのNDAを締結することになる。また、データルームは、専用会議室のような物理的に用意される場合もあるが、近年ではバーチャルデータルーム(VDR)のように、クラウド上に用意される場合が多い。 【実務事例2-1】 対象会社である五反田商事は、買い手候補からのデューデリジェンスを受けるため、バーチャルデータルーム(VDR)を開設し資料の開示を行った。これにより、コピーしてファイルする手間も資料を社外に持ち出すこともなく、プロジェクトチーム以外の従業員に秘密裏にデューデリジェンスを進めることができた。 2 調査範囲・項目・手続 本項目は、[財務・税務編]で記載するので、本稿では詳細は割愛する。なお、実務的には、多くのケースにおいてスケジュールが先に決まっており、その制約の中で実施できる調査範囲・項目・手続を、調査目的の優劣を考慮しながら決定することになる。 デューデリジェンスにおいて外部の専門家を活用する場合、買収を検討する背景と重点調査項目について、外部の専門家と共有・協議することが必要である。これにより、専門家は専門分野を広くカバーすることに加え、買い手候補のニーズに沿った調査項目の深掘りが可能となる。特に、海外案件(In-Out案件)においては現地専門家を活用する必要があるが、本当に当該専門家が機能するか否か、見極めが必要である。 3 事前資料請求 売り手によって、アクセスを許可される情報の深度は、売り手や対象会社等の方針、ディールの秘匿性などにより影響を受ける。そのため、ほぼ全ての情報を開示してくれる場合から、大きなアクセス制限を受ける場合まで様々である。よって、資料の開示を依頼しても開示されない情報も多々あり、当初計画していた調査範囲・調査手続も当然に変更が必要となる。 ◆調査範囲・調査手続に影響を与える事象 なお、財務・税務デューデリジェンス及び法務デューデリジェンスにおける事前資料依頼リストのサンプルは、下記のとおりであり、優先度、必要な期間及び情報の受渡し方法などを付して依頼することとなる。  ※PDFファイルはこちら。  ※PDFファイルはこちら。 【実務事例2-2】 財務・税務デューデリジェンスを担当したKGA会計事務所は、対象会社の資料の提供状況が芳しくなく、期限まで時間がなかったため、買い手候補の了承を得て、事前依頼資料リストの優先度を見直し、依頼資料数を一部取り下げた。また、重要性の低い調査項目については、対象会社の担当者に口頭にて回答を求めることで簡易的な調査手続に変更した。   資料の提供状況をみながら、対象会社の担当者と打合せを実施し、経営者及び各部署の責任者等とのインタビューや現地調査を並行してアレンジすることになる。 (了)

#No. 261(掲載号)
#松澤 公貴
2018/03/22

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例23】株式会社JPホールディングス「第三者委員会調査報告書に基づく当社の対応に関するお知らせ」(2017.12.22)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例23】 株式会社JPホールディングス 「第三者委員会調査報告書に基づく当社の対応に関するお知らせ」 (2017.12.22)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社JPホールディングス(以下「JPホールディングス」という)が平成29年12月22日に開示した「第三者委員会調査報告書に基づく当社の対応に関するお知らせ」であるが、最初に次のような記載がある(下線は筆者による)。 タイトルのとおり、第三者委員会調査報告書の指摘への対応の基本方針を決定したという内容なのだが、注目していただきたいのは、下線を付した「公表(当社ホームページ)」という箇所である。平成29年12月5日に「第三者委員会調査結果報告書(詳細版)の受領に関するお知らせ」を公表したというのだが、それは同社のホームページ上に掲載したのみで、TDnet上への適時開示は行っていないのである。 それより前にも、同社は、平成29年11月16日に「調査報告書(要点版)」を、平成29年11月17日に「第三者委員会調査結果報告書の受領に関するお知らせ」を、いずれもTDnet上への適時開示は行わず、ホームページ上にのみ掲載している。 いずれも重要性の高い情報だと思われるし、何より「第三者委員会の設置に関するお知らせ」は平成29年10月17日にTDnet上で適時開示しているのだから、その後の経過もTDnet上で適時開示すべきである(東証による指導は無かったのだろうか?)。これらは開示漏れではない。開示すべき情報を意図的に開示しなかったのだから、開示漏れよりも悪質である。   2 社長交代の本当の理由 今回の開示に至る経緯について説明するには、JPホールディングスが平成27年2月17日に開示した「代表取締役社長の異動に関するお知らせ」にまで遡らなければならない。 同社創業者の山口洋氏(以下「山口氏」という)から現代表の荻田和宏氏(以下「荻田氏」という)に代表取締役社長が交代するという内容で、その「異動の理由」には、「体調不良による入院のための辞任」とだけ記載されていた。しかし、後に同社は、それが本当の理由ではなかったという開示を行うことになる(したがって、厳密にいうと、虚偽開示を行ったということになるのだが)。 それから2年半ほど経った平成29年9月28日、同社は「株主による臨時株主総会の招集請求に関するお知らせ」を開示したのだが、それは、山口氏が同社に対して臨時株主総会の招集請求を行ったという内容だった。山口氏の提案は、定款変更、現任取締役解任、新たな取締役選任の3つであったが、同社は、平成29年10月17日、「臨時株主総会の開催及び株主提案に対する当社取締役会の意見に関するお知らせ」を開示して、それら全てに対して反対の意見を表明した。 反対する理由の1つに「請求人が当社の経営に関与する人物として不適格であること」があげられており(同社は、山口氏が同社の経営に関与することを意図して、それらの提案をしていると考えていた)、その記載は次のとおりである。社長交代の本当の理由はセクシャル・ハラスメント(以下「セクハラ」という)だったというのである。   3 適時開示しなかった理由 そして、JPホールディングスは、同じ平成29年10月17日、「第三者委員会の設置に関するお知らせ」を開示した。その「第三者委員会設置の経緯」は次のように記載されている。山口氏によるセクハラの事実を明らかにして、山口氏の提案を否決に導こうという意図である。 結果はどうだったか。確かに、山口氏がセクハラだけでなくパワーハラスメント(以下「パワハラ」という)も行っていたという事実が明らかにされたのだが、明らかにされたのは、それだけではなかった。 同社が平成29年11月16日にホームページ上にのみ掲載した「調査報告書(要点版)」では、「現代表者及びその他の役員によるパワーハラスメントの存否」として次のように記載されている。 同社により設置された第三者委員会ゆえだろうか。随分と回りくどい言い方だが、荻田氏によるパワハラもあったのである。また、「現代表者及びその他の役員によるセクシュアルハラスメントの存否」としては、次のように記載されている。荻田氏の方も、パワハラとセクハラの両方を行っていたのである(職場環境を害しないセクハラとはどのようなものなのか、極めて興味深いが)。   4 本当に必要な対応とは? 今回取り上げた開示においては、今後パワハラやセクハラが生じないようにするための対応の基本方針を決定したとされている。今後、その基本方針に沿って具体的な施策を実行していくとのことだが、それにどのような効果があるのだろうか。 問題なのは、現代表の荻田氏によるパワハラとセクハラである。従業員によるパワハラとセクハラに対しては効果があるかもしれないが、代表者によるパワハラとセクハラに対して効果がないことは明らかである。 山口氏の提案は結局否決されたが(平成29年11月22日開示「臨時株主総会開催結果に関するお知らせ」)、今度は別の株主がJPホールディングスに対して臨時株主総会の招集請求を行うことになる。荻田氏の解任を提案するものであり、その理由は、同社が平成30年1月31日に開示した「株主による臨時株主総会の招集請求に関するお知らせ」によれば、荻田氏が同社の「コーポレート・ガバナンスを担う役員として不適切かつ不適格な人物であるため」とのことである。 同社は、その提案に対しても、平成30年2月20日に「臨時株主総会の開催及び株主提案に対する当社取締役会の意見に関するお知らせ」を開示して反対しているが、その理由には全く説得力がない(平成29年10月17日の開示に記載された反対理由にも、説得力があるとは言い難いが)。自分で自分を正当化しているに過ぎないからである。 パワハラとセクハラだけでなく、開示に対する姿勢を見ても、荻田氏には、上場会社の経営者としての資質が欠けていると言わざるを得ないだろう。同社が、あるいは荻田氏がとるべき対応は限られているのではないだろうか。 (了)

#No. 261(掲載号)
#鈴木 広樹
2018/03/22

AIで士業は変わるか? 【第7回】「デジタルで実現する未来の会計監査」

AIで 士業は変わるか? 【第7回】 「デジタルで実現する未来の会計監査」   新日本有限責任監査法人        アシュアランス・イノベーション・ラボ 統括責任者 公認会計士  加藤 信彦 公認会計士  小形 康博   会計監査はイノベーションの過渡期にある。第3次ブームとも言われるAI(人工知能)の進展と普及、業務の自動化を実現するRPA(robotic process automation)に注目が集まり、監査先企業に限らず筆者ら監査法人にとってもデジタル戦略が重要な経営課題になっている。 本稿では、デジタルを起点に、会計監査の将来像を示してみたい。なお、技術の進展は目覚ましく、あくまで執筆時点における筆者個人の一考察であることをお断りしておく。   ◆デジタル情報とアナログ情報 多くのビジネスの現場では、デジタルとアナログが混雑している。 例えば、文章作成ソフトを使用して社内文書を作成し、それを印刷して承認者の上司の捺印をもらう。前半はデジタル情報であったものが、紙にした途端にアナログ情報になる。この場合、会計監査では上司が捺印した紙の資料を提示してもらい、アナログ情報を監査することになる。 ところが、社内イントラネット上で上司の承認が完結されるようペーパーレスが進めば、会計監査ではそのデジタル情報を監査できることになる。もっとも情報がデジタルになることで、情報を保存するサーバの保守やデータへのアクセス管理といった別の内部統制の検証が監査手続として必要になってくる。 監査先企業の子会社や事業部ごとにデータの形式が異なることは珍しいことではないが、今後、形式の整ったデータが揃うことで、監査の範囲を効率的に飛躍的に拡大できる環境が整う。データの標準化は監査法人側に限らず、生産・販売管理、コンプライアンスなど監査先企業においても統合的な経営管理の重要な武器になる。 こうしたデジタル化は、監査先企業とそれを監査する監査法人のニーズが一致するのである。   ◆変わりつつある会計士の仕事 会計監査ではこれまで、表計算ソフトを用いて監査先企業から入手した財務データを加工し、経験をもとに異常点を識別していたが、前捌きである大量データ処理に時間を費やすことが多かった。 最近はデータをわかりやすく可視化するソフトウェアが普及し、ある程度のデータ加工はソフトウェアが担ってくれるため、会計士はデータをさまざまな角度から分析する時間に充てることができるようになった。円の大きさや色から視覚的に瞬時にリスクを捉えたり、子会社や商品などデータの並びを自在に変えたりすることで、短時間で様々な角度からの分析が可能となった。 財務データの動きから監査先企業の異常な取引やビジネスの変化を捉え、新たなリスクを識別した場合は早期に監査先企業に伝える。ようやく会計監査の仕事の醍醐味を多く感じることができるようになった。   ◆データ・アナリティクス人材の育成 当監査法人が加盟するEYは、昨年11月、EY Badges(バッジ)というデータ・アナリティクスやAIなど最先端技術のスキル取得を後押しする社内資格認定制度を導入した。 ドメイン(専門領域)ごとに「ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ」という4段階のレベルを設け、「研修・経験・貢献」の3つの視点からデジタルバッジを付与する。デジタル時代に即し、現在そして将来の会計監査を見据えた人材育成に活用し始めている。 特徴は、AI、RPA、ブロックチェーンといった最先端技術と並ぶもう1つの大きなドメインに、データ・アナリティクスを位置付けた点にある。例えば、データの可視化(data visualization)というサブ・ドメインでは専門研修を受けること、監査で実践した経験、分析結果を生かした業務改善などの貢献の3つを考慮し、デジタルバッジが与えられる。 制度導入から間もなく、日本エリアにおけるバッジ取得者第1号が監査法人で誕生した。 彼女はITとデータ分析を得意とするプロフェッショナルで、実は会計士ではない。 そうしたITリテラシーを備え、新たな領域に挑戦できる人材が、今後の会計監査の重要な戦力になってくるのではないか。   ◆大学との連携 データ・アナリティクスは、米国の大学で会計学を学ぶ学生にとって必要不可欠になりつつあるようである。 米国のEYでは現地の大学と連携し、その大学の学生が履修できるデータ・アナリティクスの専門プログラムを設けている。大学に分析ツールと分析データ(架空の企業のもの)を提供し、学生のデータ・アナリティクスのスキル養成を支援している。 非常に実践的なプログラムで、将来を担う会計人材の早期育成にもつながっているようである。   ◆AIと会計監査 AIについても少し触れておきたい。AIはデータ・アナリティクスを高度化させる要素技術の1つになる。 当監査法人では、分析に用いるデータを大きくマクロ情報とミクロ情報に区分し、AIの研究と監査業務での実用化を進めている。 まず、当法人では2016年7月より、有価証券報告書などの公開情報(マクロ情報)に機械学習を活用した「不正会計予測モデル」を実用化させ、昨年12月より一部の機能が監査チーム側でも利用可能になった。同業他社と時系列で比較した監査先企業の財務状況や、監査先企業で注目されているキーワードをワードクラウドで可視化するなど、監査現場で活用し始めている。 もう一方のミクロ情報については、昨年11月、監査先企業の会計仕訳データに機械学習を適用し膨大な仕訳データからの異常検知を効率的に行う「AIによる会計仕訳の異常検知アルゴリズム」を実用化させている。 これまでの勘定科目間の相関分析といえば、売上・売掛金・現金といった少数の勘定科目の相関に着目することが多かったが、このアルゴリズムは監査先企業が使用する全ての勘定科目の相関に着目する。実証実験では、約700科目間の相関を分析し、その中から異常な仕訳を識別した例もある。 膨大なデータを解析することに長けたAIの活用によって、効率的に監査範囲を拡大し、会計士に新たな示唆を提供してくれると期待している。   ◆未来の会計監査 当監査法人では昨年、少し先の未来の会計監査を描いたイメージ動画を制作した。 そのような未来の会計監査の姿とプロフェッショナルの将来像を示した。 なお、すでに一部の技術は実用化を進めている。 先端デジタル技術がいかに進展しても、会計監査の主役は人である。 私たちプロフェッショナルが長年の会計監査で培った知見・経験に先端デジタル技術を融合させ、デジタル時代に相応しい高品質な会計監査の実現、そして次世代の監査人の育成に注力していく所存である。 ➤➤アシュアランス・イノベーション・ラボ 未来の監査「Smart Audit」実現を目指す研究組織。公認会計士を中心に、コンピュータ・サイエンティストやデータ・サイエンティストらが関与し、AI・RPA・Blockchain・Droneを監査業務に実用化する研究開発を進めている。 開発した監査アプローチ・監査ツールを監査チームに組織的に展開する役割を担うDigital Audit推進部とともに、総勢100名以上の体制で、未来の監査「Smart Audit」実現を目指している。 (了)

#No. 261(掲載号)
#加藤 信彦、小形 康博
2018/03/22

《速報解説》 ASBJ、実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」を公表~ICOの取扱いについては今後の状況を踏まえ対応を判断~

《速報解説》 ASBJ、実務対応報告第38号 「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」を公表 ~ICOの取扱いについては今後の状況を踏まえ対応を判断~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年3月14日、企業会計基準委員会は、「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(実務対応報告第38号)を公表した。 これにより、平成29年12月6日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されたことに対応し、必要最小限の項目について、仮想通貨の会計処理及び開示を規定するものである(実務対応報告2項、22項)。 なお、実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」の主なコメントの概要とそれらに対する対応も公表されているので、本実務対応報告の理解に資するものと考えられる。 例えば、いわゆるICO(Initial Coin Offering)に関する会計上の取扱いについて検討すべきとのコメントに対しては、実務対応報告は、自己の発行した仮想通貨の会計処理を取り扱っておらず、今後、市場関係者からの要望の状況を踏まえ、別途の対応を図ることの要否を判断することになると考えられるとの対応が示されている(論点の項目(16))。 後述するように、国税庁から、「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 範囲 実務対応報告は、資金決済法に規定する仮想通貨を対象としている(3項)。 ただし、自己(自己の関係会社を含む)の発行した資金決済法に規定する仮想通貨は、実務対応報告の範囲から除かれている(3項、26項)。 いわゆる「マイニング」(採掘)などにより取得した仮想通貨は、通常、自己(自己の関係会社を含む)以外の者により発行されているため、ここでいう自己(自己の関係会社を含む)の発行した仮想通貨には該当しないことから、実務対応報告の範囲に含まれるとされている(26項)。 資金決済法では、前払式支払手段発行者が発行するいわゆる「プリペイドカード」や、ポイント・サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)における「ポイント」は、資金決済法上の仮想通貨には該当しないとされている。また、いわゆる仮想通貨が資金決済法上の仮想通貨に該当するか否かは、個別事例ごとに取引の実態に即して実質的に判断されるとされている(25項)。 2 定義 例えば、次の用語が定義されている(4項(1)(2)(3))。 3 期末における仮想通貨の評価に関する会計処理 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、次のように会計処理する(5項~7項)。 仮想通貨の売却損益の認識時点に関して、仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、仮想通貨の売却損益を当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識すると規定されている(13項)。 4 活発な市場の判断規準 実務対応報告5項における活発な市場が存在する場合とは、仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいう(8項)。 活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格や、仮想通貨の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱いについても、規定されている(9項~12項)。 5 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨については、次のように会計処理する(14項~15項)。 6 開示 表示及び注記について、次のように規定している(16項~17項)。 公開草案に対しては、貸借対照表、損益計算書及びキャッシュ・フロー計算書における表示区分を定めて欲しいとのコメントが寄せられたが、表示区分に関する論点については、各企業の状況に応じてそれぞれ判断することになると考えられるとの対応が示されている(論点の項目(10))。   Ⅲ 適用時期等 平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。 ただし、本実務対応報告の公表日(平成30年3月14日)以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することができる。 Ⅳ 国税庁Q&A 国税庁から次のものが公表されている。 上記①では、Q&A形式により、具体的な数値例などを用いて次のことが記載されているので、ぜひ、お読みいただきたい。 (了)

#No. 260(掲載号)
#阿部 光成
2018/03/19

《速報解説》 平成30年度税制改正関連法案、今国会の状況を踏まえ審議動向に注視~過年度の国会成立時期を確認~

 《速報解説》 平成30年度税制改正関連法案、今国会の状況を踏まえ審議動向に注視 ~過年度の国会成立時期を確認~   Profession Journal 編集部   財務省の決裁文書の書換えをめぐり今国会での法案審議に支障が生じかねない状況だが、既報のとおり2月はじめに国会へ提出された平成30年度税制改正関連法案は同月28日に衆議院で可決され、3月9日から(※)参議院へと審議の場が移されている。 (※)(追記:2018/3/19)地方税法の改正法案は3月16日から。 例年であれば3月末日の官報による公布(原則4月1日施行)に向け参議院において法案が可決・成立される流れになっている。 ここで財務省ホームページをもとに過年度の税制改正関連法案の成立日を遡って確認すると、次のようになっている(地方税も同様の日程)。 上記を確認すると、3月末日ぎりぎりの成立になっている年も見られることから、残り2週間の国会(参議院)における審議の動向には注意が必要だ。 (※)(追記:2018/3/27)衆議院の議決を受け取った後30日以内に参議院において議決できない場合は、衆議院の議決がそのまま国会の議決となります。 なお、ねじれ国会や東日本大震災の発生により3月末までの法案成立に至らなかった平成23年度のケースでは、その年の3月末で期限切れとなる租税特別措置の3ヶ月の延長等を定めたいわゆる「つなぎ法案」を成立させ、6月に税制改正関連法案が成立している(同年4月・12月にも震災対応の改正が行われた)。 (※) 財務省ホームページより (了)

#No. 260(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/03/16
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