monthly TAX views -No.51- 「トランプ法人税改革における国境調整税の本質と障壁」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 オバマケア代替案のとん挫で、共和党内の亀裂が明らかになった。トランプ政権の次なる改革は、国境調整税(ボーダータックス)を含む税制改革である。国境調整税は、個人、法人税の減税と異なり、大幅な税制の変更を伴うだけに、共和党内のコンセンサスは極めて難しそうだ。この部分だけ切り離される可能性もある。 そういう状況の中、3月24日、IMFシニアエコノミストで、国境調整税の論文の共同著者であるMichael Keen 氏と直接話す機会があったので、それを踏まえていろいろ考えてみた。 * * * この税制は、正式名称を国境調整キャッシュフロータックス(BACFT)といい、欧州やわが国で導入しているVAT・消費税と同様の国境調整(輸入時課税、輸出時免税)を行う、つまり仕向地課税である。 WTO違反にならないように、税の中身(課税ベース)を、所得課税からキャッシュフローベースに置き換える。VATの課税ベースには賃金が含まれているが、国境調整税では除かれる。賃金部分は、個人段階で課税する(現行の所得税と同様)ので、国全体として税制が消費課税となる、これが国境調整税の基本的な考え方である。 国境調整は税関で行うのかどうかなど、未だ詳細については分からない部分が多いが、論理は極めて明快である。 この税体系の下では、わが国や欧州諸国のように、「所得税課税後に消費すると消費税が課税される、貯蓄から生み出す利子などが課税される、配当は法人段階と個人段階で二度課税される」というようなことは起きない。 また、投資は全額即時控除されるので、資本からの通常利潤は課税されず、超過利潤のみ課税されることになる。税率は立地に影響されないので、消費地に近いところ(つまり米国)への立地となる。その意味で、経済効率・経済成長に沿う税制といえる。 20%の国境調整税は、計算をすると、25%のVATと同じ機能を果たす。つまりスウェーデンのVATを、キャッシュフローをベースにして米国で導入する、と考えればよい。一見輸入品だけに課税されるように見えるが、国内品にも課税されるので、20%の国境調整税と25%のVATは同じ税収・税負担となる。 したがって、国民や企業がこの税制を受け入れるかどうかは、価格転嫁がうまく行われるかどうか、つまり全体としての税負担がどのように消費者や事業者に配分されていくかどうかがポイントだ。 * * * 国境調整税は、一見現行の法人税(直接税)のように見える。事業者も消費者も、VATのように、税負担がスムーズに次の取引段階に転嫁されて、最終的に消費者負担になるとは考えない。そこに国境調整税の問題点、受け入れ難さがある。 WTO違反かどうかということ、この点も重要なポイントとなる。 WTOは、間接税では輸出免税を認めているが、直接税で行うと輸出補助金として禁じている。では、直接税と間接税の区分は何か。「納税義務者と負担者が同じであると法律が予定しているのが直接税、異なる(転嫁する)と法律が予定しているのが間接税」、これが定義であり区分である。 しかしわが国の例でも、代表的な間接税である消費税引上げの際に、事業者がこれだけ反対するのは、間接税といっても実際に事業者も負担するからであろう。つまり、「法律が予定しているかどうか」ということは、現実の経済(転嫁できるかどうか)とは別の話である。 国境調整税は、米国の税制全体を、消費を課税ベースとした「間接税」に入れ替え、それにより国境調整(仕向地課税)が可能になり、輸出競争力が回復する。税率が立地に影響を与えない。輸出還付は、企業の社会保険料負担(ペイロールタックス:payroll tax)と相殺するとも言われており、社会保険料負担の軽減も視野に入っている。 わが国のコンテキストで考えると、究極の租税政策ともいえる、(地方)法人税軽減、消費税増税、社会保険料企業負担軽減、この3つが一挙に行えるという点で、示唆するものは大きい。 * * * いずれせよ、米国で国境調整税を成立させることは困難な状況と言える。 米国民や米国事業者がこの税制を間接税と認識するには、相当の時間がかかること、輸入企業と輸出企業の利害が対立し調整が難航すること、国境調整の具体的詳細(税関が行うのかどうか、など)が不明で、かつ不正還付をどう防止するのかなど課題が山積しているからである。 共和党のライアン下院議長の神話にも陰りが見え始めている。 5月の予算教書までに党内調整がつくとは考え難い。 (了)
電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる 会計処理と税務Q&A 【第1回】 「電子マネー・仮想通貨等の普及と会計・税務の動向」 公認会計士・税理士 八代醍 和也 A ◆非現金決済の普及と企業実務への影響 ▷進む非現金決済の普及 今に始まったことではないが、昨今の非現金決済の普及には目を見張るものがあり、またその拡がりのスピードは日に日に増しているように感じられる。 総務省が公表している各年度の「通信利用動向調査」によると、インターネットによる物品購入時の決済方法として、最もその割合の高さにおいて群を抜く「クレジットカード払い」が、平成25年末から平成26年末、平成27年末に至るまで年々増加し69.2%に至っているのに対し、代金引換やコンビニエンスストアでの支払等、いわゆる現金決済が軒並み減少していることからも、その傾向を容易に見て取ることができる(下図参照)。 (※) 以下、本連載では、電子マネーや仮想通貨などの現金以外のものについて「非現金」という。 〈インターネットで購入する際の決済方法〉 【通信利用動向調査(平成26年)】 (※) 総務省「通信利用動向調査(平成26年)」別添2の図表2-4 【通信利用動向調査(平成27年)】 (※) 総務省「通信利用動向調査(平成27年)」別添2の図表2-4 ▷企業実務における非現金化の潮流 上記の変化は、企業実務においてはどうであろうか。 ビジネスのさらなる効率化やスピード化が求められる今日、実務面からのこうした非現金決済への期待もまた大きくなっている。 例えば、家電量販店や商業施設におけるポイントカードにはクレジットカード機能が付加されていることがもはや常識となり、企業においても家電や備品を購入する際に、法人としてこれらのポイントカードの会員となり、これらのサービスを利用することが一般的になった。また、クラウドソフトを利用することにより、クレジットカードの利用履歴データを財務会計システムへ取り込むことで、仕訳を自動で起票するようなサービスも始まっている。 こうした高度な機能性・利便性を有する新サービスの登場が、『現金による決済から非現金決済へ』という変化を強く後押ししている側面があると筆者は考える。 一方、このような新たなサービスを利用することで、会計・税務面での処理方法について、経理実務担当者がどのように処理していいか苦慮する場面も増えつつあるのではないかと感じる。 例えば、備品購入の際に、その代金の一部についてポイントカードを利用した場合の値引き額の取扱いをどのようにすればよいか、あるいは、公共交通機関の発行するポストペイ式のカードについて、利用額に応じた値引きを受けた場合の取扱いならどうかといった、何となく普段は定型的に経理処理を行っているが、はたしてそれが正しいのかと疑問に感じるようなことが意外に多くあるのではないだろうか。 各論の詳細な解説は次回以降に委ねるが、非現金決済の普及が進む中で、これらを適切に経理・税務処理するために、企業が検討すべき事項もまた同様に増加してきていると考えている。 ◆仮想通貨をめぐる会計・税務の動向 ▷仮想通貨の今 非現金決済の普及との関連で無視できないのが、ビットコインに代表される仮想通貨の存在であろう。 仮想通貨とは、資金決済法において、 と定義されているが、平たく言えば、インターネット上の帳簿を通じて、通常の通貨と同様、不特定多数の間で物品やサービスの対価に使用できる通貨であると言える。 非常に将来性があるものとして語られることも多い仮想通貨だが、その技術的な理解に高度な知識を必要とすること、また、仮想通貨を物品や役務提供の決済手段として使用できる店舗が未だ我が国においては非常に限られており、実体経済における流通量も未だ決して多いとは言えない状況にあることから、企業実務において処理方法等を検討する場面は、現段階においては非常に限定されたケースになるのではないかと思われる。 ▷仮想通貨に係る会計上の取扱い 平成29年3月28日に開催された第357回企業会計基準委員会において、「仮想通貨に係る会計上の取扱い」が新規テーマとして提言され、当面の取扱いとして、必要最小限の項目について開発することが決定された。 これは、資金決済法が改正されたことに基づき、実際に取引を行う仮想通貨交換業者等の会計処理を明確化することや、仮想通貨交換業者等に対する財務諸表監査を円滑に行う必要があることから決定に至ったものである。 一方、開発にあたっては、今後の仮想通貨の拡がりやビジネス実務における浸透スピードを予測することは非常に困難であるから、まずは上記のような仮想通貨交換業者等の会計処理の明確化や財務諸表監査の円滑化といった基礎的な環境整備を第一に考えることが重要である。このため、第一段階として、「仮想通貨に係る会計上の取扱い」を定めることでスコープを必要最小限に絞って早急な環境整備を進めたうえで、仮想通貨の取引規模の状況を見ながら中長期的には会計基準等の開発を検討していくことになったものである。 ▷平成29年度税制改正においてその譲渡が消費税法上非課税に 税務の面においては、平成29年3月31日に「所得税法等の一部を改正する等の法律」が公布、翌4月1日から施行され、仮想通貨については、平成29年7月1日以後の譲渡等について、消費税が非課税とされることとなった。 これは、改正資金決済法で、我が国の法律において「仮想通貨」が初めて定義されたことを受け、法文上、法規定の対象とされたことや、国際的な課税のバランス、今後の仮想通貨の利用増加の可能性等に考慮して消費税を非課税とすることが要望されたものと考えられるが、これによって直ちに企業による仮想通貨の利用が大きく進展するとは考えにくいものと思われる。あくまでも「仮想通貨」に紙幣や小切手の同様の地位を与えるという環境整備が行われたにすぎないものと考えている。 とはいえ、世間的な注目が高まりつつあり、また将来においては利用できる場面も増えていくことが想定されるところ、その経理・税務処理方法についても、今後各論にて解説する予定である。 ◆本連載の趣旨 本連載では、上記の動向を踏まえ、電子マネーや仮想通貨等の非現金による取引を行った際の会計処理や税務について、想定される様々な切り口により、各原稿執筆時点の制度下において求められるものを分かりやすく解説していきたい。 (了)
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第20回】 「売上」 ~有料老人ホームの入居一時金を売上に計上しなければならないと判断した理由は?~ 千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也 -連載再開に当たって- 平成23年12月の税制改正により、課税庁は、原則として国税に関する法律に基づく申請に対する拒否処分や不利益処分を行う場合には、処分の通知書に処分の理由を付記(注1)しなければならないこととなった(国税通則法74条の14第1項、行政手続法8条、14条)。 しかしながら、理由付記に当たり、どの程度の記載をすべきであるかを定める条文は存在しないため、実際の事案において、具体的にどの程度の記載がなされていないと、理由付記が不備であるとして処分が取り消されることになるのかについては、必ずしも明らかではなく、議論や事例の集積が待たれるところである。 『理由付記の不備をめぐる事例研究』は2015年から2016年にかけて、本誌上において全19回にわたり、実際の裁判例・裁決例を素材として、青色申告書に係る法人税の更正の理由付記及び青色申告承認取消処分に係る理由付記についての事例研究を行ったところである。 ところが、【第19回】掲載後においても、青色申告書に係る法人税の更正の理由付記の十分性が争われた注目すべき裁判例等を目の当たりにすることがあり(注2)、理由付記をめぐる議論を整理し、進展させることの必要性を痛感した。 理由付記の十分性は、関係する法令等の内容や納税者が保存している帳簿書類の記載内容に応じて、個別の判断が求められるものである。このことから、議論すべき論点の洗い出しやその検討に当たっては、理由付記をめぐる個別の事例の集積及び整理が有用である。 そこで、理由付記をめぐる議論や争訟の発展に資するべく、実際の裁判例・裁決例を素材として、更正の理由付記の不備についての事例研究を行う趣旨である本連載を引き継ぐ形で、再開することとしたい。 (注1) 本連載では、判決文等の引用部分を除き、「理由附記」ではなく「理由付記」と表記する。 (注2) 本連載【第45回】で取り扱う予定の「法人税法上のリース取引に該当せず、減価償却費の損金算入は認められない」とする法人税更正処分に係る理由付記の十分性を認めた松山地裁平成27年6月9日判決(判タ1422号199頁)や、【第51回】で取り扱う予定の「過去の事業年度に係る外注費の損金算入は認められない」とする法人税更正処分に係る理由付記の十分性を認めた東京地裁平成27年9月25日判決(判例集未登載)などがある。 ◆ ◆ ◆ 今回は、青色申告法人である財団法人Xに対して行われた「有料老人ホームの入居一時金に係る売上計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁平成22年4月28日判決(訟月57巻3号693頁。以下「本判決」という)を素材とする。 1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 本件理由付記は、素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工して作成したものである。 2 本件理由付記から読み取ることができる関係図 3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、本件理由付記は本件更正処分における課税庁自らの判断過程を逐一検証することができるなどとして、理由付記に不備はないと判断した(この判断は、控訴審である東京高裁平成23年3月30日判決・税資261号順号11657においても維持されている。上告審である最高裁平成24年8月15日第一小法廷決定・税資262号順号12021は上告申立てを不受理)。 (1) 理由付記の趣旨目的と記載の程度 (2) 理由付記の十分性 4 検討 (1) 関係法令等の確認 法人の収益をどの年度において計上すべきかという収益の計上時期(年度帰属)の議論を簡単に確認しておこう。 法人税法22条2項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」と規定している。 ここでいう「当該事業年度の収益の額」における「当該事業年度の」とは、当該該事業年度に「帰属する」という意味であり、同項は収益の計上時期を規律する規定として定められたものであるといわれている。もっとも、法人税法22条2項は、収益の計上時期についてその具体的な決定基準を定めていない。 そこで、いわゆる大竹貿易事件の最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決(民集47巻9号5278頁)は、法人税法22条2項に規定する当該事業年度の収益の額は、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする」ことを規定する同条4項を媒介として、「ある収益をどの事業年度に計上すべきかは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべき」であるという解釈を示している。 この判示は、法人税法上の収益の計上基準として、財貨又は役務の提供とその対価としての現金等の受領をメルクマールとする企業会計上の実現主義と、収益の原因たる法的な権利の確定をメルクマールとする権利確定主義をイコールで結んでいるものであると読むことも可能である。 他方、違法な行為によって得た利得等のように法的な権利の確定自体を観念できないケースでは、利得が納税者における現実のコントロールの下に入ったことをメルクマールとする管理支配基準を、収益の計上基準として適用することが妥当であると解されている。 これらのことは、収益や所得の計上時期のみならず、そもそも収益や所得というものが生じているか否かという論点にも関わってくる。 (2) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、Xが受領した終身契約の会員費(入居者が、Xに対し、入居一時金を支払う一方、Xが、入居者に対し、原則として入居者の死亡まで、施設を利用させ、介護等の役務を提供することを主たる内容とする終身入居契約に基づいて、Xがその運営する有料老人ホームの入居者から入居に際して受領する金員の一種)のうち、当事業年度に入居者への返済が不要となる部分について、売上に計上すべきであるとするものである。したがって、Xが、その帳簿上、売上として計上していないことの否認という広い意味において、Xの帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するものと考える。 したがって、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 ア 信憑力のある資料の摘示の有無 本件理由付記は、Xが受領した終身契約の会員費のうち、当事業年度に入居者への返済が不要となる部分を当事業年度の売上として益金の額に算入すべきであるとする本件更正処分を行うに当たり、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、 を更正処分の根拠として摘示している。 したがって、本件理由付記は、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、更正処分の根拠を帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明示していると考える。 イ 理由付記の趣旨目的との適合性 本件更正処分においては、終身契約の会員費の売上計上時期が問題となっている。とりわけ、事実関係よりも、法人税法上の収益計上時期に係る各基準の内容、適用場面又は本件における当てはめに対する理解の相違が争いの原因となっている。 この点、素材とした本判決に係る訴訟において、Xは、要旨次のとおり主張している。 なるほど、「事実から結論に至る理由付けの記載」という点からすれば、本件理由付記には、課税庁が採用する法人税法上の収益の計上基準のことは少なくとも明記されていない。 この点、Xの上記主張に対して、本判決は、要旨次のとおり述べて、これを排斥している。 筆者も、下線部分の判示におおむね賛同する。 そうすると、本件理由付記は、更正処分に係る法律上及び事実上の根拠を示すものであって、結論に至る判断過程並びに判断の前提となる事実及びその証拠資料を記載するものであると考える。したがって、本件理由付記は、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであり、法の求める理由付記として十分なものであるといえる。 もっとも、課税庁は、本判決に係る訴訟において、収益の計上時期に関する議論として、実現主義、権利確定主義、管理支配基準に関する解釈等を詳細に主張していることにも目を向けておきたい。 これらの点に関する解釈等をそのまま定めた税務通達などは存在せず、課税庁の公式の立場は必ずしも明らかではないことを考慮すると、理由付記において、根拠条文として法人税法22条2項や4項の記載を省略するとしても、「Xが受領した終身契約の会員費のうち、当事業年度に入居者への返済が不要となる部分を当事業年度の売上として益金の額に算入するという内容の本件更正処分と、収益の計上基準としての実現主義、権利確定主義、管理支配基準との関係」について、記載すべきではなかったか、という疑問も生じる。 この点の記載を欠く場合には直ちに理由不備となるとはいい難いが、少なくとも、この点を明確に読み取ることができる内容を理由付記に記載してこそ、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると評価できるのではないであろうか。更正処分庁の恣意の抑制という点では、更正処分庁が、ケースに応じて御都合主義的に収益の計上基準を使い分けることを防ぐことができるように、理由付記の記載水準を設定すべきではないかとも思われるのである。 (4) 更なる議論① ~帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合か否か~ 上記(2)では、本件更正処分は、Xが、帳簿上、売上として計上していないことの否認という広い意味において、Xの帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するものと考えるという見解を示した。 この点、本判決においては、本件は帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に当たることに当事者間で争いがないことを前提として判断を進めている。終身入居契約書の記載内容自体を否定するものではなく、法人税法上の収益計上時期の各基準の内容、適用場面又は本件における当てはめに対する理解の相違が争点化していることに限定して考えるならば、そのような前提を置くことにも一理ある。 ただし、本判決は要旨次のような判示を補充的に示しており、そのような前提を置くことの適否について、正面からの回答は避けているのかもしれない。 なお、「帳簿」との関係において見れば、本件はXの帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するという上記(2)で示した立場からは、上記(3)アで述べたように、終身入居契約書又はその契約内容を「帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料」として摘示することで足りるであろう。 もっとも、帳簿上、売上として計上していないこと自体が有する「Xが受領した終身契約の会員費は、当事業年度に入居者への返済が不要となる部分も含めて、Xの当事業年度の売上には該当しないこと」に対する証明力(信憑力)を低く見積もれば見積もるほど、上記(2)③のハードル(更正処分の根拠を帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明示しなければならないこと)は低いものとなる。この場合には、本件が帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に当たるという立場を採用した場合と理由付記の記載の程度の要求水準が近接することになろう。 ただし、この辺りの議論は、実際の帳簿書類の記載内容や帳簿書類の作成等の状況のほか、理由付記の段階で、理由付記に摘示する資料が「帳簿書類の記載以上に信憑力のあるものであるか否か」をどこまで厳密に判断すべきであるかという論点とも関わる難しいものである。 (5) 更なる議論② ~本件理由付記は、Xが納得する程度のものではないことを課税庁が予見し得たことが与える影響~ 本判決は、Xと課税庁との間で半年以上にわたる折衝があり、Xが、課税庁担当官の「調査結果の税法通達及び判例に基づく説明」等に納得せず、厚生労働省老人保健局長通知に基づく会計処理をしていると反論するなど、両者の議論は平行線を辿っていたことが認められるといった税務調査の経緯からすれば、本件理由付記程度の記載では直ちにXが納得するものではないことを課税庁は予見し得たことを認めている。 その上で本判決は、処分行政庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的に照らせば、更正処分における理由の記載は、それ自体において処分行政庁の判断過程が理解され得るものであれば足り、それ以上に相手方を納得させるものであるまでの必要はないというべきであり、まして、本件のように、事前の折衝でも約半年余にわたり議論の対立が続いていた状況の下では、直ちに相手方を納得させる理由を記載することは困難というべきであるから、上記事情を勘案しても、理由付記の適法性が左右されるものではないと判示している。 * * * 次回は、「開店祝い金の雑収入計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)
租税争訟レポート 【第31回】 「架空請求により取得した簿外資金の役員給与該当性 (東京地方裁判所判決)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【事案の概要】 本件は、神奈川税務署長が、ダイレクトメール等の発送代行業務を行う株式会社である原告において、取引先等との間における架空取引により、簿外資金を作出した上、原告の代表者であるAが、簿外資金を利得し、所得税法28条1項に規定する給与等の支払を受けたとして、原告に対し、源泉所得税に係る本件各告知処分及び本件各賦課決定処分をしたところ、原告が、原告においては、Aに対し、簿外資金を貸し付けたにすぎず、上記の給与等の支払をしたものではない旨を主張して、本件各処分の取消しを求める事案である。 争点は、原告が、代表取締役であるAに対し、簿外資金を給与等として支払ったといえるか否か、である。 【架空請求による簿外資金の作出取引】 1 取引の概要 (1) 原告の代表取締役Aは、複数の取引先から発送代行業務を請け負うに際して、発送代行手数料の他に配送費用名目で金員を受け取り、これを「預り金」として処理するとともに、発注先から架空請求を行わせ、架空の仕入高又は販売促進費として、発注先に支払いを行っていた。 (2) 発注先では、一定の手数料を差し引いた後、原告の代表取締役Aに対して現金を引き渡し、または原告の預金口座に振り込む方法により、発注代金を還流させ、これを代表取締役Aが管理することにより、簿外資金を作出していた。 (3) 簿外資金は、代表取締役Aが鞄に入れて管理しており、そのなかから、複数の取引先等に対して貸付が行われたが、原告の取締役会でこれらの貸付が承認された議事録はなく、原告における帳簿等にも貸付の記録はなかった。 (4) 簿外資金のうち、約1,400万円については、代表取締役Aの株取引に充てられているが、簿外資金総額約2億1,500万円の約77%である1億6,500万円については、上記(3)に掲げる取引先への貸付に充てられていた。 2 原告に対する犯則調査等 原処分庁による告知処分等が行われる以前に、原告は、以下のように大阪国税局査察部(以下「査察部」と略称する)による犯則調査を受け、原告、代表取締役Aともに有罪判決が確定している。 (1) 査察部は、平成22年9月16日、原告の取引先に係る査察調査の一環として、原告の本店所在地にある事務所の調査を行った。 (2) 原告は、平成22年11月29日、神奈川税務署長に対し、平成20年12月期及び平成21年12月期の法人税及び平成20年12月課税期間の消費税等について、各修正申告書を提出した。 (3) 査察部は、平成23年2月9日から原告に対する国税犯則取締法に基づく犯則調査を実施した。 (4) 大阪地方検察庁検察官は、平成23年12月2日、法人税法違反に係る被疑事件につき代表取締役Aを逮捕し、同月22日、同法違反の罪で、原告及び代表取締役Aを大阪地方裁判所に起訴した。 (5) 大阪地方裁判所は、上記(4)の刑事事件について、原告及び代表取締役Aが、原告の法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するとともに、架空の販売促進費を計上するなどの方法により、その所得の全部を秘匿した上、神奈川税務署長に対し、内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成20年12月期及び平成21年12月期における法人税を免れたとして、法人税法違反により、原告を罰金1,500万円に処し、代表取締役Aを懲役1年に処し、その刑の執行を3年間猶予する旨の判決の宣告をし、同判決は確定した。 【原告・納税者の主張】 原告は、代表取締役Aに対し、本件各簿外資金を貸し付けたにすぎず、所得税法28条1項に規定する給与等の支払をしたものではないとして、以下のように主張した。 1 代表取締役Aは、その陳述書及び本人尋問において、簿外資金が、原告の利益のため、取引先の代表者らに貸付をする目的で作られたものであり、個人的に費消する目的で作られたものではなく、当初から簿外資金を原告に返済する意思であった旨を供述していること。 2 簿外資金のうち、実際に代表取締役Aから重要な取引先の代表者らに貸し付けられた1億6,500万円は、簿外資金の総額約2億1,500万円の約77%にも及ぶものであること。 3 代表取締役Aの遊興費その他、明らかに原告と無関係な目的に費消された事実がないこと、簿外資金は原告の社長室に常時置かれていた鞄の中で保管されており、その鞄が外へ持ち出されたことは一度もないこと。 4 Aは、原告の代表取締役かつ大株主であるから、原告と代表取締役Aとの間では、金銭消費貸借契約書をあえて作成して当事者間の同契約の存在を明確にする必要性がなく、また、取締役会を開催しなくても、実質的には、原告が原告から代表取締役Aに対する貸付けを承認していることは明らかであること。また、取締役会の承認の決議は事後の承認も認められており、原告から代表取締役Aへの貸付について、原告はいつでも事後的に取締役会の承認を経ることで会社法上の暇疵を解消できる立場にあるから、原告が代表取締役Aに貸付けをする際に、同法上要求されている手続を経ていないから貸付金ではなく給与等であるとする理論は成り立たないこと。 【被告・課税庁の主張】 被告は、以下のとおり、代表取締役Aは、原告の代表者である自己の権限を濫用して、原告の事業活動を通じて本件各簿外資金を利得・費消したものであることからすれば、本件各簿外資金は、実質的に、原告が代表取締役Aに対して支給した給与等であるというべきである、と主張した。 1 原告の業務及び経理に関する記録などからは原告が代表取締役Aに対して簿外資金を貸し付けた事実は一切認められないことに加え、原告と代表取締役Aとの間に簿外資金の返済に関する合意をうかがわせる事情も認められないこと 2 簿外資金は、原告に留保されることなく代表取締役Aが個人として管理し、その使途を決定して費消したものと認められること 3 簿外資金が原告の資産から支出されたものであることは明らかであること。 【東京地方裁判所の判断】 東京地方裁判所は、まず、一般論として、給与等の該当性について、過去の判例を引用する形で、こう判示した。 次いで、東京地方裁判所は、原告について、以下のように前提事実を述べる。 そのうえで、本件の架空取引を利用した簿外資金の作出については、代表取締役Aによって行われたもので、原告の業務は、その全てが代表取締役A自身によって、又はその指揮監督の下に行われていたものというべきであり、簿外資金については、原告の業務に係る架空取引を通じて作出され、代表取締役Aが利得したものであるということができる、とした。 そして、以下の事実認定を根拠に、代表取締役Aが利得した簿外資金については、代表取締役Aが原告の代表者として提供した労務又は役務の対価として受けた給付と評価することができるというべきである、と結論づけた。 【解説】 架空取引を通じて得た簿外資金が、代表取締役個人によって管理されている場合における給与認定について、東京地方裁判所は、原告・納税者に厳しい判断を示し、その請求を退けた。 大株主でもあり、実質的に1人で経営全般を取り仕切っていた代表取締役の地位を利用して、簿外資金を利得したとする判断は、簿外資金の使途そのものよりも、そもそも簿外とすることが法律違反行為であり、取締役会における決議や金銭消費貸借契約などが存在しない以上、その地位を濫用した会社資産の私的流用=給与に該当する結論を導き出したものである。 本事件の特徴をいくつかまとめておきたい。 1 原告及び代表取締役Aには法人税法違反での有罪が確定していたこと 前述のとおり、本事件は、大阪国税局査察部が、いわゆる反面調査として原告の調査を行った後、原告に対する国税犯則取締法に基づく犯則調査として、再度調査を行い、原告及び代表取締役Aは法人税法違反の容疑で起訴された後、有罪判決を受けていた。刑事事件においては、架空の請求書を発行していた業者の代表者なども法人税法違反や脱税のほう助の容疑で逮捕されており、悪質性が高いといえよう。 本件は、法人税法違反で、所得隠しとされた発注先への架空仕入高や架空販売促進費の計上という事実のもと、架空取引により還流された資金が簿外化され、代表取締役Aによって管理されていた簿外資金が給与等に該当すると認定されたものである。原告が裁判を通じて主張した、簿外資金の使途が取引先への貸付が中心であり、個人的の費消はなかったという事実はまったく斟酌されることなく、裁判所も給与等の該当性を認めている。 2 会社が簿外資金を貸し付けることは可能か 本件で、代表取締役Aが、還流された資金を簿外としたのは、原告の帳簿に記載すると、架空発注が露見し、所得隠しが簡単に発覚することを恐れ、または、還流された資金が新たな収入として課税されることを避けるためであろうかと推測できる。 そもそも原告の帳簿に乗せることができない資金であり、その簿外資金を原資にした金銭消費貸借契約の締結は不可能であろう。その点、裁判所が、その判事の中で、以下のように述べているところは、少し違和感を持たざるを得ない。 (了)
特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第9回】 「買換資産の家屋を改良、改造した場合」 -買換資産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、居住用の買換資産として家屋及びその敷地を購入しました。 その家屋が老朽化しているため、改良、改造を行いました。 また、敷地内に車庫と物置を建てました。 この場合、改良等の費用を買換資産の取得価額に算入して「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けることができるでしょうか。 A 買換資産に該当する家屋の取得に伴い改良、改造し、又は車庫と物置を取得したものであれば、買換資産として「買換えの特例」の適用を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 既に所有する家屋又はその家屋の敷地の用に供する土地等について、その者の居住の用に供するための改良、改造等を行った場合は、措通36の2-11(宅地の造成)に定めるところの、宅地を造成した場合の費用の額が相当の金額に上り、実質的に新たに土地を取得したことと認められるものを除いて、買換資産の取得には当たりません(【第7回】参照)。 しかしながら、買換資産に該当する家屋又は当該家屋とともにする当該家屋の敷地の用に供する土地等の取得に伴って、買換資産の取得期間(譲渡する日の属する年の前年1月1日からその譲渡の日の属する年の翌年12月31日までの間)内に次に掲げる改良、改造等を行った場合は、買換資産の取得に当たるものとして、「買換えの特例」の適用を受けることができます(措通36の2-12(買換資産の改良、改造等))。 (了)
〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《リース取引》編 【第2回】 「リース契約の中途解約の場合の会計処理 ~所有権移転外ファイナンス・リース取引(借手)」 公認会計士・税理士 前原 啓二 はじめに 【第1回】では、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理と、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を、対比して解説しました。今回は、それぞれの会計処理において、リース契約が中途解約された場合の取扱いをご紹介します。 1 一連のリース取引に係る仕訳 ケース1 通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理 〈×0年4月1日:リース取引開始日〉 〈×0年4月30日:第1回目リース料支払日〉 〈×1年3月31日:第12回目リース料支払日、決算日〉 〈×2年2月28日:第23回目リース料支払日〉 〈×2年3月1日:リース契約解約時〉 ケース2 通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理 〈×0年4月1日:リース取引開始日〉 〈×0年4月30日:第1回目リース料支払日〉 〈×1年3月31日:第12回目リース料支払日、決算日〉 〈×2年2月28日:第23回目リース料支払日〉 〈×2年3月1日:リース契約解約時〉 この設例は、【第1回】と同様に、所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当し、中小企業会計指針により、このリース物件については、(1)売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う方法と、(2)通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行い、未経過リース料を注記する方法のいずれかを選択適用します。リース解約時以前までのそれぞれの会計処理は、【第1回】において解説したとおりです。×2年3月のリース契約解約に係る会計処理は、次のとおりです。 ケース1 通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理 まず、×2年3月期の減価償却費を計上します。リース期間定額法により、耐用年数をリース期間5年に、残存価額をゼロとして、減価償却費を計算(6,000,000円×11月/60月=1,100,000円)します。次に、リース解約時点におけるリース資産残存簿価3,700,000(6,000,000円-減価償却累計額2,300,000円)を除却損として計上します。 リース解約に伴う残存リース料は、解約時点(×2年3月)において税込3,996,000円(6,480,000円-108,000円×23回)であり、3,996,000円全額のリース債務を消去します。この結果、リース債務残高もゼロとなります。 ケース2 通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理 リース解約に際して、リース解約に伴う残存リース料である税抜金額3,700,000円を解約損計上し、それに係る消費税296,000円を仮払消費税計上します。 2 リース解約に伴う残存リース料の消費税法上の取扱い 所有権移転外ファイナンス・リース取引について、契約期間終了前にリース契約を解約した場合、借手が貸手へ支払うこととなる残存リース料は、消費税法においては次のように取り扱われます。 リース物件の陳腐化のための借換えなどにより、貸手と借手との合意に基づき、解約するときの借手から貸手への残存リース料の支払は、リース債務の返済にすぎないため、消費税法上、課税仕入れに該当せず、課税の対象外となります。この設例のケース1は、これによっています。 ただし、貸手と借手との合意に基づき、リース物件の陳腐化のため、リース物件を廃棄するとともに、残存リース料の一部又は全部を減額する場合、リース料の値引きがあったものと認められ、この残存リース料の減額は仕入れに係る対価の返還等として取り扱われます。 一方、特例として、所有権移転外ファイナンス・リース取引につき、借手が賃貸借取引として会計処理している場合で、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間において課税仕入れとして消費税を申告しているときは、これによって差し支えないこととされますが、この方法によると、解約以後は賃貸借処理されなくなるので、それ以後の賃貸借処理の都度計上される予定であったリース料に係る消費税を仕入税額控除する機会が失われることになります。そもそも、残存リース料はリース資産の譲受対価であり、当然に仕入税額控除の対象となるはずです。したがって、この残存リース料は解約した日の属する課税期間における仕入税額控除の対象とされます。この設例のケース2は、これによっています。 3 決算書の金額 ケース1 通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理 ▷ ×2年3月31日決算期 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉 ケース2 通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理 ▷ ×2年3月31日決算期 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉 4 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 この設例のケースは、会計処理と法人税法上の取扱いに差異がないので、損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整はありません。 (《リース取引》編 終了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第132回】 金融商品会計⑮ 「建設協力金」 仰星監査法人 公認会計士 永井 智恵 〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① X1年4月1日(建設協力金の支払時) (*1) 5,200×1/(1+0.03)4+5,100×1/(1+0.03)5=9,019 (*1-1) 5,000+10,000×2%=5,200(返済1回目のキャッシュ・フロー(元本+利息)) (*1-2) 5,000+5,000×2%=5,100(返済2回目のキャッシュ・フロー(元本+利息)) (*2) 10,000-9,019=981 ② X2年3月31日 (*3) 981÷5年=196 (*4) 9,019×3%=270 ③ X3年3月31日 (*5) (9,019+270)×3%=278 ④ X4年3月31日 (*6) (9,019+270+278)×3%=287 ⑤ X5年3月31日(返済1回目) (*7-1) (9,019+270+278+287)×3%-200=95 (*7-2) 10,000×2%=200 ⑥ X6年3月31日(返済2回目) (*3-1) 981÷5年=196 ⇒ 197(端数調整) (*8-1) (9,019+270+278+287+95-5,000)×3%-100=48 ⇒ 51(端数調整) (*8-2) (10,000-5,000)×2%=100 〈会計処理の解説〉 建設協力金は、建物建設時に消費寄託する建物等の賃貸に係る預託保証金であり、契約に定めた期日に預託金受入企業が現金を返還し差入企業がこれを受け取る契約です(金融商品実務指針221項)。将来返還される建設協力金等の差入預託保証金は金銭債権であるため、金融商品に関する会計基準の対象になります(金融商品実務指針10項)。 建設協力金の典型例としては、当初無利息であり10年経過すると低利の金利が付き、その後10年間にわたり現金で返済されるものが挙げられます(金融商品実務指針221項)。 将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除きます)に係る当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値の合計です(金融商品実務指針133項)。現在価値に割り引くための利子率は、差入企業が対象となった土地建物に抵当権を設定することが多いため、その場合は原則としてリスク・フリーの利子率(例えば、契約期間と同一の期間の国債の利回り)を使用します。 本事例では、以下のとおりX1年4月1日時点の建設協力金の時価は9,019となります。 また、支払額と当該時価との差額は、長期前払家賃として計上し、契約期間にわたって各期の純損益に合理的に配分します(金融商品実務指針133項)。 本事例では、A社の支払額10,000と時価9,019との差額981を長期前払家賃として計上し、契約期間の5年にわたって各期に196ずつ支払賃料として配分しています。 建設協力金等の差入預託保証金は返済期日に回収されるため、当初時価と返済金額との差額を契約期間にわたって配分し、受取利息として計上します(金融商品実務指針133項)。 本事例では、各年度の利息計上額及び帳簿価額を以下のとおり算出しています。 (※) f ’は帳簿価額fの前期末残高です。 (注) 端数調整しています。 イメージとしては以下の図のようになります。 (了)
外国人労働者に関する 労務管理の疑問点 【第1回】 「外国人留学生をアルバイトで雇用するときは?」 社会保険労務士・行政書士 永井 弘行 -連載開始に当たって- このところコンビニや飲食店で、外国人留学生のアルバイトスタッフに出会う機会が多くなった、と感じる方は少なくないと思います。また企業の規模を問わず、外国人を社員として雇用するところが増えています。 これまで外国人を採用したことのない企業の人事担当者にとって、外国人を雇用する際にはどのようなことに注意しなければならないのか、日本人の採用と何が違うのか、などの疑問があると思います。 この連載では、「外国人雇用の経験がない、または少ない会社の人事担当者の疑問を解消する」ことを目的に、企業が採用時にどんなことを理解し、手続きしなければならないか、という視点で書いていきたいと思います。 1 「資格外活動の許可」を得ていなければ、アルバイトできません 日本の大学、専門学校、日本語学校に在籍する外国人留学生は、「留学ビザ」を得て、日本に滞在しています。「留学ビザ」というのは通称で、正確には法務省入国管理局が許可した「留学」の在留資格を得て、日本で生活しています。 在留資格は、行政機関(役所)である入国管理局が与える「許可」の一種であり、「日本で適法に滞在できる法的な資格」と言えます。日本での活動に応じた「許可」を得た外国人だけが、在留資格を得て、日本に長期間、滞在することができます。 「留学」の在留資格は、日本で学ぶためのもので、「就労不可」です。つまり、フルタイムで仕事に就くことはできません。 例えば、留学生が大学を卒業した後に、国内の貿易会社で社員として通訳・翻訳の仕事に就くためには、会社で勤務する前に、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザ(在留資格)に変更することが必要です。 留学生が在学中に、日本での生活費をまかなうためにアルバイトをするときは、あらかじめ法務省入国管理局から「資格外活動の許可」を得ていることが必要です。この資格外活動の許可を得ていなければ、アルバイトに就くことはできません。 もしアルバイトをすると、「不法就労」として、留学生本人だけでなく、事業主も罰せられることがあります。 2 「資格外活動の許可」を得ているかどうかは、どうやって確認するか 留学生をはじめ、日本で中長期間在留する外国人は、「在留カード」というカードを持っています。この在留カードは「常時携帯すること」が義務付けられています。 在留カードは運転免許証と同じ大きさで、顔写真、氏名、在留資格、在留期限などが記されていますが、その裏面に「資格外活動許可欄」があります。そこに「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と書かれていれば、入国管理局から資格外活動の許可を得ています。 もし、この「資格外活動許可欄」に何も書かれていなければ、まだ入国管理局の許可を得ていない状態です。この状態でアルバイトに就くと、不法就労になります。この場合、アルバイトを始める前に、留学生が入国管理局に出向いて「資格外活動の許可」を得ることが必要です。 また、カードの表面の一番下に「このカードは20XX年X月X日まで有効です」と書かれています。もしこの期限を過ぎていれば、有効期限を過ぎた運転免許証が無効(車を運転できない)なのと同じように、留学の在留資格そのものが無効になっています。つまり、日本に適法に滞在できない状態です。当然、アルバイトをすることはできません。 人事担当者の立場では、留学生のアルバイト雇用を始める前に、まずはその留学生に在留カードを提示してもらい、その表面を見て、「留学」の在留期間の有効期限内であることを確認してください。次に裏面を見て、「資格外活動許可欄」に「許可」と書かれていることを確認してください。 〔在留カードのサンプル〕 (※) 入国管理局ホームページ「入国管理局パンフレット(出入国管理のしおり)(2016年版)」10ページより 3 勤務可能な時間は週28時間が上限です 現在、留学生が資格外活動の許可を得てアルバイトできる時間は、週28時間が上限となっています。例えば1日6時間で週4日=週24時間などのアルバイト勤務が可能です。 この週28時間以内の取扱いは、入管法施行規則(出入国管理及び難民認定法施行規則)第19条で定められています。 4 日本人スタッフと同じ勤務シフトに入れない場合があります 例えば、パート・アルバイト従業員が1日6時間で週5日勤務するケースでは、1週間の所定労働時間が30時間になります。日本人でしたら(学生・一般を問わず)、この週30時間勤務のシフトに入り、アルバイトをすることに問題はありません(労働・社会保険等が適切に適用されていることが前提です)。 一方、外国人留学生は上記の通り、週28時間を超えてアルバイト勤務を行うことはできません。この時間を超えて勤務すると、不法就労になります。このため、外国人留学生は週28時間以内になるよう、シフトの時間を短縮するなどの対応が必要です。 5 夏休みなど長期休業期間に限り、1日8時間までアルバイト可能です この「週28時間以内」という制限は、学校の授業がある期間の取扱いです。夏休みなど学則で定められた長期休業期間に限って、1日8時間までアルバイトが可能です。 一般の日本人と同様に労働基準法などの労働関係法令が適用されますので、原則週40時間まで勤務することが可能です。 この「1日8時間以内」が可能なのは、「学則で定められた長期休業期間」だけです。たまたま授業の休講が多くても、学校の授業が行われている時期は、対象外です。 このため、1日8時間以内の勤務を行うときは、「学校が長期休業期間になっているか」を確認してください。 6 風俗営業等に従事することはできません この風俗営業等とは、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第2条で「風俗営業」として定められたもので、キャバレー、ホステス・ホストのいる飲食店、ナイトクラブ、照度10ルクス以下のバー・喫茶店、まあじゃん店、パチンコ店、性風俗関連特殊営業などが該当します。 留学生はこうした風俗営業等に従事することが禁止されています。もし留学生が風俗営業のアルバイトをすると不法就労になり、留学生を雇用する事業主も3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられることがあります(入管法第73条の2第1項)。 このように風俗営業等の事業所では、留学生をアルバイト雇用することができません。 逆に言えば、「風俗営業等」以外の分野、業種でしたら、留学生は原則、どんな職場でもアルバイトに就くことができます。 なお、どの分野、業種でアルバイトをしても、日本人と同様に労働基準法、最低賃金法などの労働関係法令が適用されます。当然、労災保険も対象になります。 7 ハローワークへの届出が必要です 留学生は昼間学生ですので、雇用保険には加入しません。しかし、アルバイトを雇用したとき、その会社はハローワークに「雇入れに係る外国人雇用状況届出書」の届出が必要です。外国人の在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍、資格外活動の許可の有無、雇入れ年月日などを記して届出します。 また、アルバイト雇用が終わったときも「離職に係る外国人雇用状況届出書」を届出します。 ハローワークに届出を行えば、入国管理局への届出(「中長期在留者の受け入れに関する届出」)は原則、不要です。留学生のアルバイト雇用の開始時・終了時には、それぞれハローワークで「雇入れに係る外国人雇用状況届出書」、「離職に係る外国人雇用状況届出書」の届出を行ってください。 なお、「雇入れに係る外国人雇用状況届出書」、「離職に係る外国人雇用状況届出書」の書式は、[こちらの厚生労働省ホームページ]から入手可能です。 【参考】 「雇入れ(離職)に係る外国人雇用状況届出書」 (※) 厚生労働省ホームページより (了)
これからの会社に必要な 『登記管理』の基礎実務 【第2回】 「登記管理を怠るリスク」 司法書士法人F&Partners 司法書士 本橋 寛樹 はじめに 前回定義した登記管理をもとに、今回はその登記管理を怠るリスクについて考察する。 自社や顧問先企業に当てはめて、リスクを洗い出す観点で読み進めてもらいたい。 登記管理を怠るリスク まず、事業活動と登記管理は「別物」であるという認識が肝心である。 事業活動の好不調にかかわらず、登記管理は適宜行う必要がある。リスクが潜在的にとどまっている間は、目の前の事業活動に直接的な影響が及ばないため、手当てを施す必要がないように思える。しかし、手当てをしない期間が長くなるにつれて潜在的なリスクが顕在化し、事業活動に打撃を与えるおそれが高まる。 いったんリスクが顕在化すると、正常の状態に戻すのは容易ではない。 では、実際にどのようなリスクが顕在化するのか。 下表は、リスクの顕在化前と顕在化後の一例をまとめたものである。 上表を図示すると、次のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 それでは、なぜリスクが生じてしまうのだろうか。次にその要因を考察する。 リスクが生じる要因 「企業が登記管理を怠る」というリスクが生じる要因は、主に次の3点である。 ① 会社主導の管理を要する点 ② 中長期にわたる管理を要する点 ③ 相次ぐ法改正等の対応不足 ① 会社主導の管理を要する点 役員の任期管理について、役所が会社に対して役員の任期到来の時期を前もって知らせる制度はない。このため、会社が自発的に任期の到来時期を把握し、その時期に役員の選任決議とその登記手続をする必要がある。 株主管理について、登記には株式の所有者情報や変動が反映されない。会社が主導となって、株主関係書類を作成のうえ、管理をする。 例えば、会社が株主名簿を作成、備置きし、必要に応じて、株主名簿記載事項証明書等の関係書類の発行を行う。また、株主構成に変動があれば、株主は会社に所定の書類を提出し、会社が株主名簿の更新等の処理をする。 ② 中長期にわたる管理を要する点 役員の任期管理では、任期が1年である場合を除き、任期満了に伴う役員変更の登記手続は数年に一度となる。会社の実務担当者が異動すると、業務の引継ぎにおいて漏れが生じる可能性がある。 株主管理は、会社が存続する間は継続して行う必要がある。例えば、株主名簿の名義書換えは、一つ一つの手続は独立しているが、その積み重ね次第で株主の管理状況が左右される。 議決権行使の観点から、株式の分散や、株主に起こりうる相続発生、判断能力の低下等に備えて、中長期にわたる対策を立てていく必要がある。 ③ 相次ぐ法改正等の対応不足 平成18年の会社法施行後、登記に直結する会社法、商業登記に関する法改正等が相次いでいる。 役員の任期を最長の10年と定めている株式会社や任期規定が適用されない有限会社であれば、最後の登記手続から長期間経過しており、現行制度や運用に沿っているか見直しの機会を設ける時期に差しかかっているだろう。 以下の表を通して、法改正等の対応がとられているか、今一度確認していただきたい。 【会社法施行後の、登記に直結する法改正等】 まとめ 登記管理を怠るリスクが生じる要因を振り返ると、以下のような体制づくりが実現できれば、リスク回避に結びつくと考える。 ◆法改正等に対応しながら ◆会社主導で ◆中長期的に管理し続けられる ⇒体制づくり * * * 次回からは、登記管理の軸となり、また登記管理を怠るリスクを回避する体制づくりの一環となる、「役員の任期管理」について解説していく。 (了)
家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第10回】 「よくある質問・留意点⑤」 -受託者として適任な者がいない場合の対応- 弁護士 荒木 俊和 - 質 問 - 私(夫)には妻がいるが、お互い高齢になりつつあり、漠然とした将来への不安がある。 私たちには子供がいないため、妻以外の相続人としては甥2人になるが、疎遠であり、10年以上会っていない。 財産として賃貸に出している木造アパート1棟があるため、誰かに管理を任せたいと思っている。 このような場合、家族信託を使うことで何とか対応できないか。 1 問題の所在 相続・資産承継対策として家族信託を検討する場合、大きな問題となりうるのが、「適切な受託者が見つからない」という問題である。 受託者の資格は、信託業法に触れない場合で、正常な判断能力を有する者である限り法律上の制限はないが、事実上の限定として、「委託者との間に信頼関係が築ける者」である必要がある。 質問のケースでは、妻は高齢であるため受託者となることが困難であり、甥2人とは疎遠のため信頼関係の構築が困難であることから、適切な受託者が選任できるのかが問題となる。 2 受託者となり得る者 (1) 信託銀行、信託会社 信託銀行は歴史的、実務的背景から、あまり積極的に個人向けの対応を行っていない。 一部の信託銀行については、一定規模以上の資産があれば家族信託についての対応を行うところも出てきているとの情報もあるが、「いかなる資産でも受託する」ところまでは至っていない。 一方、銀行機能を有さない信託会社では、相続・資産承継対策のための信託を受託するところも存在する。ただし一般的な受託基準が示されていないため、家族信託の対象として検討している財産について委託することが可能であるか、個別に確認する必要がある。 また、信託銀行、信託会社については、信託業として受託するものであるため、受託手数料が発生することに留意しなければならない。 (2) 自ら設立した法人 一部の意見では、受託者が見つからない場合、一般社団法人や会社等の法人を設立し、その法人を受託者とする方法を推奨する向きもある。 しかし、法人といえども内部(業務執行機関)には自然人が必要なのであり、法人を設立すれば直ちに問題が解決するわけではない。質問のケースでいえば、法人の役員を誰にするのか、という問題が生じることになり、役員として適任の者がいないのであれば問題は解決しない。 また、夫が一人株主として株式会社を設立し、夫が株式会社を受託者として信託したような場合は、夫と株式会社が実質的に同一主体であると見られ、自己信託ではないか(公正証書によらなければ成立しない(信託法第4条第3項))と見られる可能性もある。 (3) 弁護士、司法書士等の士業 成年後見制度と同様に、弁護士や司法書士等の士業に対し、受託者としての任務を期待する向きも存在する。 弁護士については弁護士法第3条の「一般の法律事務」として、業として受託者になれるとする見解もある。しかし、この見解はあくまでも解釈によるものであり明文の規定がないこと、受託者となった弁護士による横領等の不祥事が起こらないか不安の声もあること等から、弁護士が業として受託者になれるとする意見は少数にとどまっている。 また、仮に士業が業として受託者になれるとしても、家族信託の場合は原則的に信託財産に対する債務について、受託者の個人財産も引当てになる(信託財産だけで支払えない負債を抱えた場合は受託者の個人財産で支払わなければならない)ため、現実に個人としての士業が受託者になろうとするのかは疑問である。 3 問題点の再分析を 以上のことから、親族又は身近な人以外を受託者にすることは、容易ではない。 そのような場合には、「問題の再分析」を行うことが有効な解決への道となる場合が多い。 質問のケースでは、夫が「漠然とした将来への不安」と述べているだけであり、実は『何を目的とした対策を取りたいのか』という点が明確になっていない。 考えられる問題としては、 ことが挙げられる。 これらの問題に対応した対策はそれぞれ異なるため、どの問題を中心的な問題としてとらえるのか、聞き取り等によって明確にしておく必要がある。 例えば(ア)や(イ)への対応であれば早めにアパートを売却してしまうことが考えられるし、(ウ)であれば家族信託によらずとも、遺言を作成しておくだけで問題が解決する可能性がある(甥から遺留分減殺請求を受けることはない(民法第1028条参照)。また、それらを組み合わせることが最善の方法となるケースもあり得よう。 このように問題点を再分析することによって、解決の糸口が見つかる場合もある。 4 まとめ 以上のように、家族信託は親族又は身近な人で信頼のおける人を受託者として想定しているため、適任者が見つからないとなると、他の受託者を探すことは容易ではない。 そのような場合、家族信託以外の手法が有効であるということもある。 家族信託の具体的な内容を決めるときもそうであるが、困難が生じたときには頭を柔らかくして、様々な角度から対策を検討する姿勢が必要である。 (了)