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金融商品会計を学ぶ 【第21回】「ヘッジ会計②」

筆者:阿部 光成

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金融商品会計学ぶ

【第21回】

「ヘッジ会計②」

 

公認会計士 阿部 光成

 

今回は「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)におけるヘッジ会計の要件について述べる。

なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ ヘッジ会計の要件-事前テスト

金融商品会計基準は、ヘッジ会計の要件として、①事前テストと②事後テストという要件を規定している(金融商品会計基準31項)。

ヘッジ会計を適用できるか否かの具体的な判定にあたっては、企業の利益操作の防止等の観点から、「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」における①事前テストと②事後テストというヘッジ会計の適用基準の考え方を踏まえて規定したものである(金融商品会計基準104項)。

◆ ヘッジ取引開始時(事前テスト) ◆

ヘッジ取引時において、ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、次のいずれかによって客観的に認められること(金融商品会計基準31項(1)、金融商品実務指針144項)。

① 当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること

② 企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該取引がこれに従って処理されることが期待されること

上記①による確認は、企業が次のような比較的単純な形でヘッジ取引を行っている場合に可能である(金融商品実務指針145項)。

(a) 個々のヘッジ取引を行う際に、企業の所定の方針に従って適切な社内承認手続が行われ、それが文書化されている場合

(b) 特定の種類の取引については自動的に特定のデリバティブによるヘッジを行う方針が文書化されており、それに従ってヘッジ取引が行われている場合

これに対し、多数のヘッジ取引を行っており、個別のヘッジ取引とリスク管理方針との関係を具体的に文書化することが困難な場合には、上記②のように、リスク管理に関する内部規定及び内部統制組織が適切に運用され、ヘッジ取引がそれに従って処理されていることが必要である。

具体的には、ヘッジのためのデリバティブ取引を実行する部門とは分離されたリスク管理部門を設け、ヘッジ取引の実行を適切に管理するシステムが確立されている必要がある。

企業はヘッジ取引開始時に、次の事項を正式な文書によって明確にしなければならない(金融商品実務指針143項、313項)。

(a) ヘッジ手段とヘッジ対象

  • ヘッジ手段とヘッジ対象の関係を正式な文書によって明確にする。
  • 他に適当なヘッジ手段がない場合には、ヘッジ対象と異なる類型のデリバティブ取引をヘッジ手段として用いることもできる(金融商品会計基準102項、金融商品実務指針314-2項)。
  • ヘッジ手段に関しては、その有効性について事前に予測しておく必要がある。

(b) ヘッジ有効性の評価方法

  • ヘッジ有効性の評価方法が適切であるかどうかは、リスクの内容、ヘッジ対象及びヘッジ手段の性質に依存する。
  • 企業は、ヘッジ開始時点で相場変動又はキャッシュ・フロー変動の相殺の有効性を評価する方法を明確にしなければならない。これには、金融商品実務指針171項に述べるオプションの時間的価値等の処理方法などが含まれる。
  • 企業は、ヘッジ期間を通して一貫して当初決めた有効性の評価方法を用いてそのヘッジ関係が高い有効性をもって相殺が行われていることを確認しなければならない。
  • 個別ヘッジの場合はヘッジ対象とヘッジ手段が単純に一対一の関係にあるので、ヘッジ対象とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動を直接結び付けてヘッジ有効性を判定する。
  • ヘッジ対象が複数であり、相場変動又はキャッシュ・フロー変動をヘッジ手段と個別に関連付けることが困難な場合、金融商品実務指針152項の要件を満たすものに限り、ヘッジ手段をヘッジ対象と包括的に対応させる方法(包括ヘッジ)も採用できる。
  • 企業は個別ヘッジによるか包括ヘッジによるかを事前に明示しなければならない。
  • 通常、同種のヘッジ関係には同様の有効性の評価方法を適用すべきであり、同種のヘッジ関係に異なる有効性の評価方法を用いるべきではない。

 

Ⅱ ヘッジ会計の要件-事後テスト

金融商品会計基準及び金融商品実務指針は、次のようにヘッジ取引時以降(事後テスト)の要件を規定している。

◆ ヘッジ取引時以降(事後テスト) ◆

ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること。指定したヘッジ関係について、ヘッジ取引時以降も継続してヘッジ指定期間中、高い有効性が保たれていることを確かめなければならない(金融商品会計基準31項(2)、金融商品実務指針146項)。

  • ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動との間に高い相関関係があったかどうか(ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動がヘッジ手段によって高い水準で相殺されたかどうか)をテストしなければならない。
  • 企業は、決算日には必ずヘッジ有効性の評価を行い、少なくとも6か月に一回程度、有効性の評価を行わなければならない。
  • ヘッジ有効性の評価は、文書化されたリスク管理方針・管理方法と整合性が保たれていなければならない。

(了)

「金融商品会計を学ぶ」は、隔週で掲載されます。

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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