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連結納税適用法人のための平成28年度税制改正 【第9回】「移転価格文書化制度(その2)」

筆者:足立 好幸

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連結納税適用法人のための

平成28年度税制改正

【第9回】

「移転価格文書化制度(その2)」

 

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト パートナー
足立 好幸

 

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(2) マスターファイル(事業概況報告事項)

① 概要

特定多国籍企業グループに係る事業概況報告事項の提供義務者である法人は、多国籍企業グループに係る事業概況報告事項を、 最終親会計年度終了の日の翌日から1年以内に、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax) により、税務署長に提供しなければならないこととする(措法66の4の5①)。 (*)

② 提供義務者

事業概況報告事項の提供義務者は、特定多国籍企業グループの構成会社等である内国法人又は構成会社等である恒久的施設を有する外国法人となる(措法66の4の5①)。

つまり、国別報告事項の提供義務者と同一の者となる。

なお、事業概況報告事項の提供義務者に該当する内国法人又は恒久的施設を有する外国法人が複数ある場合は、当該内国法人又は恒久的施設を有する外国法人のいずれか1法人が代表して事業概況報告事項を提供すればよい(措法66の4の5②)。

この場合、当該1法人が、次に掲げる事項を、最終親会計年度終了の日の翌日から1年以内に、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax) により、所轄税務署長に提供する必要がある(措法66の4の5②、措規22の10の5③)。 (*)

  • 提供義務者に該当する法人のうち、内国法人については、内国法人の名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号、代表者の氏名
  • 提供義務者に該当する法人のうち、外国法人については、外国法人の名称、本店又は主たる事務所の所在地、恒久的施設を通じて行う事業に係る事務所等のうち主たるものの所在地、法人番号、恒久的施設を通じて行う事業の経営の責任者の氏名

③ 報告事項

事業概況報告事項は、次に掲げる事項をいう(措法66の4の5①、措規22の10の5①)。

 特定多国籍企業グループの構成会社等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地並びに当該構成会社等の間の関係を系統的に示した図

 特定多国籍企業グループの構成会社等の事業等の概況として次に掲げる事項

(イ) 特定多国籍企業グループの構成会社等の売上、収入その他の収益の重要な源泉

(ロ) 特定多国籍企業グループの主要な5種類の商品若しくは製品又は役務の販売又は提供に係るサプライ・チェーン(消費者に至るまでの一連の流通プロセスをいう)の概要及び商品若しくは製品又は役務の販売又は提供に関する地理的な市場の概要

(ハ) 特定多国籍企業グループの商品若しくは製品又は役務の販売又は提供に係る売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額のうちに当該合計額を商品若しくは製品又は役務の種類ごとに区分した金額の占める割合が5%を超える場合における当該超えることとなる商品若しくは製品又は役務の販売又は提供に係るサプライ・チェーンの概要及び当該商品若しくは製品又は役務の販売又は提供に関する地理的な市場の概要

(ニ) 特定多国籍企業グループの構成会社等の間で行われる役務の提供(研究開発に係るものを除く)に関する重要な取決めの一覧表及び当該取決めの概要(役務の提供に係る対価の額の設定の方針の概要、役務の提供に係る費用の額の負担の方針の概要及び役務の提供が行われる主要な拠点の機能の概要を含む)

(ホ) 特定多国籍企業グループの構成会社等が付加価値の創出において果たす主たる機能、負担する重要なリスク(為替相場の変動、市場金利の変動、経済事情の変化その他の要因による利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれをいう)、使用する重要な資産その他構成会社等が付加価値の創出において果たす主要な役割の概要

(ヘ) 特定多国籍企業グループの構成会社等に係る事業上の重要な合併、分割、事業の譲渡その他の行為の概要

 特定多国籍企業グループの無形固定資産その他の無形資産(無形資産)の研究開発、所有及び使用に関する包括的な戦略の概要並びに無形資産の研究開発の用に供する主要な施設の所在地及び研究開発を管理する場所の所在地

 特定多国籍企業グループの構成会社等の間で行われる取引において使用される重要な無形資産の一覧表及び無形資産を所有する構成会社等の一覧表

 特定多国籍企業グループの構成会社等の間の無形資産の研究開発に要する費用の額の負担に関する重要な取決めの一覧表、無形資産の主要な研究開発に係る役務の提供に関する重要な取決めの一覧表、無形資産の使用の許諾に関する重要な取決めの一覧表その他構成会社等の間の無形資産に関する重要な取決めの一覧表

 特定多国籍企業グループの構成会社等の間の研究開発及び無形資産に関連する取引に係る対価の額の設定の方針の概要

 特定多国籍企業グループの構成会社等の間で行われた重要な無形資産(無形資産の持分を含む)の移転に関係する構成会社等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地並びに移転に係る無形資産の内容及び対価の額その他構成会社等の間で行われた移転の概要

 特定多国籍企業グループの構成会社等の資金の調達方法の概要(特定多国籍企業グループの構成会社等以外の者からの資金の調達に関する重要な取決めの概要を含む)

 特定多国籍企業グループの構成会社等のうち特定多国籍企業グループに係る中心的な金融機能を果たすものの名称及び本店又は主たる事務所の所在地(構成会社等が設立に当たって準拠した法令を制定した国又は地域の名称及び構成会社等の事業が管理され、かつ、支配されている場所の所在する国又は地域の名称を含む)

10 特定多国籍企業グループの構成会社等の間で行われる資金の貸借に係る対価の額の設定の方針の概要

11 特定多国籍企業グループの連結財務諸表(連結財務諸表がない場合には、特定多国籍企業グループの財産及び損益の状況を明らかにした書類)に記載された損益及び財産の状況

12 特定多国籍企業グループの居住地国を異にする構成会社等の間で行われる取引に係る対価の額とすべき額の算定の方法その他構成会社等の間の所得の配分に関する事項につき特定多国籍企業グループの一の構成会社等の居住地国の権限ある当局のみによる確認がある場合における確認の概要

13 前各号に掲げる事項について参考となるべき事項

④ 使用言語

日本語又は英語(措規22の10の5②)。

⑤ 提供義務の免除

直前の最終親会計年度における多国籍企業グループの連結財務諸表における総収入金額(売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額。連結財務諸表がない場合には、多国籍企業グループの財産及び損益の状況を明らかにした書類に基づいて計算した当該合計額に相当する金額)が1,000億円未満である場合における当該多国籍企業グループについては、国別報告事項の提供義務が免除される(措法66の4の4④三、措法66の4の5①、措規22の10の4⑦)。

つまり、国別報告事項の提供義務の免除と同一の要件となる。

⑥ 提供期限

最終親会計年度終了の日の翌日から1年以内(措法66の4の5①)。
つまり、国別報告事項の提供義務者と同一の期限となる。

⑦ 適用時期

平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度に係る事業概況報告事項について適用する(平成28年所法等改正法附則1、98⑥)。

つまり、国別報告事項の提供義務の適用時期と同じく、連結親法人の平成29年3月期の事業概況報告事項について、平成30年3月31日までに税務署長に提供する必要がある。

⑧ 提供義務の担保策

国別報告事項を提供期限内に税務署長に提供しない場合は、30万円以下の罰金に処する(措法66の4の5③④)。

 

(*)
国税庁ホームページにおいて平成28年6月30日に公表された『多国籍企業情報の報告』サイトに、具体的な様式・例示が公表されている。

*  *  *

次回はローカルファイルについて解説する。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
法規・・・法人税法施行規則
地方法・・・地方法人税法
地法・・・地方税法
措法・・・租税特別措置法
措令・・・租税特別措置法施行令
措規・・・租税特別措置法施行規則
国通・・・国税通則法
(例)法法34①二・・・法人税法34条1項2号

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 

▷平成31年度税制改正(全8回)

▷平成30年度税制改正(全9回)

▷平成29年度税制改正(全9回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

はじめに

[1] 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

1 改正内容

2 『自己創設営業権』の評価問題が解消!

3 連結納税開始日・加入日が平成29年10月1日の場合は旧税制が適用に!

4 どうせ時価課税されるなら、合併で時価譲渡になる方がいいのか、スクイーズアウトで時価評価される方がいいのか?(時価課税の有利・不利)

【第2回】 スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

[2] スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

1 改正内容

2 連結納税の不利益を受けずに少数株主排除が可能に!

3 連結納税開始日が平成29年10月1日以後であっても、株式交換等が平成29年9月30日以前に行われた場合は旧税制が適用される!

4 全部取得条項付種類株式方式又は株式併合方式により連結納税に加入した場合、「完全支配関係を有することとなった日」はいつになるのか?

【第3回】 研究開発税制の見直し

[3] 研究開発税制の見直し

【第4回】 所得拡大促進税制の見直し他

[4] 所得拡大促進税制の見直し

[5] 役員給与等の見直し

[6] 地域未来投資促進税制の創設

【第5回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その1)

[7] 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充

1 中小企業経営強化税制の創設

【第6回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その2)

2 中小企業投資促進税制の見直しと適用期限の延長

3 商業・サービス業活性化税制の適用期限の延長

【第7回】 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限、災害特例措置

[8] 震災・災害に関する税制措置の整備

[9] 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限

【第8回】 連結法人の申告期限の延長の見直し

[10] 連結法人の申告期限の延長の見直し

1 法人税の申告期限の延長について

2 事業税の申告期限の延長について

【第9回】 地方税率の改正時期の変更他

[11] 地方税率の改正時期の変更

[12] 組織再編税制に係る改正

[13] タックス・ヘイブン税制の総合的見直し

▷平成28年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率等の改正

~はじめに~

[1] 連結法人税、連結地方法人税、住民税、事業税の税率の改正

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し

[2] 連結欠損金の繰越控除制度の見直し

[3] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[4] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第3回】 減価償却制度の見直し

[5] 減価償却制度の見直し

【第4回】 役員給与の見直し

[6] 役員給与の見直し

【第5回】 雇用促進税制の見直し

[7] 雇用促進税制の見直し

【第6回】 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

[8] 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

【第7回】 組織再編関連税制の見直し

[9] 適格現物出資の見直し

[10] 組織再編税制の見直し

【第8回】 移転価格文書化制度(その1)

[11] 移転価格文書化制度

1 多国籍企業グループの移転価格文書化制度

(1) 国別報告書

【第9回】 移転価格文書化制度(その2)

(2) マスターファイル(事業概況報告事項)

【第10回】 移転価格文書化制度(その3)

(3) ローカルファイル(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)

2 国外事業所等との内部取引に係る移転価格文書化制度

【第11回】 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

[12] 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

【第12回】 その他国際税務の改正・固定資産税の特例措置

[13] 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン税制)の見直し

[14] 国際課税原則の帰属主義への変更の円滑な実施

[15] 機械装置の固定資産税の特例措置の創設

▷平成27年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率の引下げ

~はじめに~

[1] 連結法人税率の引下げ

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その1)

[2] 連結欠損金の控除限度額の段階的引下げ

(1) 連結欠損金の控除限度額の段階的引き下げ

(2) 連結所得金額の100%を控除限度額とする特例

① 中小法人等

② 経営再建中の法人

【第3回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)

③ 新設法人

【第4回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その3)

[3] 連結欠損金の繰越期間の延長

[4] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[5] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第5回】 受取配当等の益金不算入制度の見直し

[6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し

【第6回】 研究開発税制の見直し

[7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し

【第7回】 地方拠点強化税制の創設(その1)

[8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設

(1) 改正の概要

(2) 地方拠点建物等の取得費の特例措置

【第8回】 地方拠点強化税制の創設(その2)

(3) 雇用促進税制の拡充

【第9回】 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

[9] 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

【第10回】 所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し

[10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し

[11] その他の租税特別措置法上の見直し

【第11回】 事業税の改正

[12] 連結納税適用法人に係る事業税の改正

【第12回】 国際税務の改正

[13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正

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