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プロフェッションジャーナル No.139が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年10月8日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.139を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/10/08

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第34回】「公正処理基準の形成過程と税務通達(その1)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第34回】 「公正処理基準の形成過程と税務通達(その1)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   法人税法は、益金に算入する金額や損金に算入する金額の計算について、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(以下「公正処理基準」ともいう。)に従うこととしている(法法22④。企業会計準拠主義)。 こうした法人税法の構造がいかなる意味を持つのかを解明することは、同法を理解するにあたり極めて重要な意味を有するといえるだろう。 他方、この企業会計準拠主義が租税法律主義に反するのではないのかという問題も従来から議論されてきた。 もっとも、この点は、商法(会社法)にいう「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」に準拠したものであると考えれば、租税法律主義に反するものではないといえるだろう。すなわち、法人税法は商法(会社法)に準拠しているのであって、その商法(会社法)が企業会計に委任をしているとの理解である。法人税法22条4項は企業会計に白紙委任をしたものではなく法的根拠を有する基準であると論じることができるだろう(中里実「租税法と企業会計(商法会計学)」商事1432号26頁)。 しかし、それでも、企業会計準拠主義には租税法律主義を脅かす問題が伏在しているのではないだろうか。以下では、この点について、組合課税における通達の機能と商法(会社法)における「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」を素材として、これまでの議論とはやや異なる角度から検討を加えてみたい。   Ⅰ 問題点の所在 企業会計準拠主義を採用する法人税法22条4項における公正処理基準にかかる問題点について以下の2点に着目してみたい(金子宏『租税法〔第20版〕』318頁参照(弘文堂2015))。 企業会計原則や確立された会計慣行が、必ずしも公正妥当であるとはいい切れないとか、網羅的であるとは限らないということであれば、公正処理基準に依拠しようにも、その根底が揺らいでしまうことになりはしないだろうか。 なお、企業会計原則や財務諸表規則等の内容が抽象的である点や、わが国の場合、業界が自主的に具体的な会計基準を作成する動きが弱いことなどの理由から、租税行政庁がイニシアティブをとって通達を発遣し、健全な税務会計コンヴェンション(慣行)を導くべきであるという考え方もある(小宮保『法人税の原理』221頁参照(中央経済社1968))。 こうした考えによると、租税行政庁がイニシアティブをとって発遣した通達に基づく税務会計コンヴェンションが企業の会計実務として確立した場合には、当該通達は、先駆者としての機能を果たしたとして廃止すべきであるとされる。 要するに、企業会計が適切なルールを自主的に作成しないのであれば、租税行政庁主導の通達により会計処理の方法を示し、それが会計慣行として確立されたとき、当該通達は会計慣行確立により、その役目を終えるという考え方である。 しかし、こうした見解は妥当であろうか。いわば行政が主導するかたちで、通達等によりコンヴェンションを形成し、かかる会計慣行が成立すれば、租税法の理念である公平な課税の実現が担保できるという期待の下、公正処理基準に租税法的な意味が付与されるという点には肯定できるところもあるが、それでも本来の租税法律主義の見地からは強い躊躇を覚えるのである。   Ⅱ 税務通達と公正処理基準 1 租税訴訟にみられる見解 興銀事件控訴審東京高裁平成14年3月14日判決(民集58巻9号2768頁)は、税務通達と公正処理基準の関係性について次のように述べる。 どうやら、興銀事件において東京高裁は、国税庁の通達が会計処理の基準を補完するという意味で公正処理基準の一部を構成するものと捉えており、公正処理基準に租税法の観点を持ち込むことに肯定的な立場であるように思われる。 しかし、この考え方は、上告審最高裁平成16年12月24日第二小法廷判決(民集58巻9号2637頁)において否定されている。また、学説においても公正処理基準の中に租税法独自の観点を持ち込むような解釈を許すべきではないとの見解がある(例えば、山田二郎「法人税法上の貸倒損失」金判1134号2頁参照)。 こうした見解は、税法基準以前に公正処理基準が存在することを前提としていると思われるが、公正処理基準に租税法独自の観点を持ち込むべきではないとするこれらの見方はどのように考えるべきであろうか。そこで、次に、公正処理基準が依拠するとされている商法(会社法)における「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」について検証してみたい。 2 公正処理基準と商法(会社法) 法人税法22条4項の公正処理基準について、租税法の通説は、商法(会社法)を経由して、一般に公正妥当と認められる会計処理の「慣行」によると考える(金子宏『租税法〔第20版〕』316頁(弘文堂2015))。 したがって、公正処理基準を理解するためには、商法(会社法)にいう「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」を確認する必要があるだろう。 商法1条《趣旨等》2項は、「商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法・・・の定めるところによる。」とし、同法19条は、「商人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。」と規定する。また、会社法431条は、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」とし、同法614条は、「持分会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」と規定している。 では、商法(会社法)は、いかなるものを「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」とか、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」と考えているのだろうか。 この点、長銀配当損害賠償事件第一審東京地裁平成17年5月19日判決(判時1900号3頁)は、次のように判示する。 この事件において原告は、「会計慣行」とは、既に行われている事実に限らず、新しい合理的な慣行が生まれようとしている場合には、それを含むと解すべきであると主張していたが、これについて東京地裁は次のように述べる一方、特段の事情がある場合に限って例外が認められる旨を示している。 ここでは、特段の事情のある場合には、新しい会計処理の方法によることも会計慣行に従った処理をしたことになる旨を判示している点に注目したい。 〔東京地裁の考える「公正なる会計慣行」〕  (続く)

#No. 139(掲載号)
#酒井 克彦
2015/10/08

〈直前対策〉税理士事務所に必要なマイナンバー制度への対応と“おさえておきたい”ポイント 【第2回】「誤解の多い論点と実務上の正しい対応」

〈直前対策〉 税理士事務所に必要な マイナンバー制度への対応と “おさえておきたい”ポイント 【第2回】 「誤解の多い論点と実務上の正しい対応」   税理士 特定個人情報保護委員会事務局 総務課上席政策調査員 鈴木 涼介   本連載では、いよいよスタートするマイナンバー制度に対し、「何をすれば良いのか分からない」等といった不安を解消させるため、税理士事務所としてどのような準備をすればよいのか、そして、「不要な個人番号を保有していたら即番号法違反になる」とか「情報漏えいを起こしたら即罰則が適用される」等といった誤解を解消させるために、実務上どのように対応すればよいのかについて解説している。 第2回目の本稿では、誤解の多い論点について、実務上の正しい対応を解説する。なお、本稿は、筆者の個人的見解に基づくものであり、特定個人情報保護委員会などの公式見解ではない点にご留意いただきたい。   1 廃棄のタイミング 個人番号は、個人番号関係事務などの事務を処理する必要がなくなった場合で、法令により定められている保存期間を経過した場合には、できるだけ速やかに廃棄又は削除しなければならない。 ここで問題となるのは、廃棄のタイミングである。 法令により定められている保存期間を経過した後に、個人番号を保管していると「直ちに違法」になるという誤解が多い。 マイナンバーガイドライン(※1)におけるQ&A(※2)では としている。 (※1) 「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」(特定個人情報保護委員会) (※2) 「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」及び「(別冊)金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」 に関するQ&A」(特定個人情報保護委員会) 例えば、決算を終えて1年分の帳簿書類や資料を整理する段階で、必要なくなった過年度分の個人番号が記載された書類等を廃棄又は削除すればよいのである。 扶養控除等申告書であれば7年間の保存義務が課されているが、7年を経過した翌日(7年と1日目)に即廃棄することを求めているわけではないことをしっかりと理解する必要がある。   2 管理区域の考え方 物理的安全管理措置として、「特定個人情報ファイルを取り扱う情報システムを管理する区域(管理区域)」と「特定個人情報等を取り扱う事務を実施する区域(取扱区域)」とを明確にして物理的安全管理措置を講ずることが求められている。 この場合の「管理区域」とは、一般的にはサーバー室が想定される。サーバーに保存されている情報については、一度に大量に引き出したり喪失させたりすることができることから、サーバー室の入退室の管理や機器等の持ち込み制限が重要となる。 この点、「税理士ガイドブック」における取扱規程等のひな型においては、特定個人情報ファイルを管理するキャビネットがあるスペースも管理区域に含めていることから、「キャビネットを事務作業スペースとは別の部屋に置く必要がある」とか「入退室管理をしなければならない」といった誤解が多い。 キャビネットのあるスペースを管理区域に含めるかどうかは、税理士事務所の保有する特定個人情報ファイルの量などに応じて判断すればよく、税理士ガイドブックにおいてもすべての事務所でキャビネットのあるスペースを「管理区域」に含めることを想定しているわけではないと考えられる。 また、サーバーに対する措置とキャビネットに対する措置とは全く性質の異なるものであることから、キャビネットのあるスペースを管理区域に含める場合であっても、サーバー室のような部屋を設けて管理するのではなく、例えばキャビネットの鍵の受払簿を備えて管理するなど、状況に応じた措置を講ずればよいと考えられる。   3 税理士による本人確認 マイナンバー制度の肝の1つとして「本人確認」がある。 この番号法における本人確認は、「特定の者」が「特定の者」から個人番号の提供を受けたときに必要となる。具体的には、「個人番号利用事務実施者又は個人番号関係事務実施者」が「本人又は代理人」から個人番号の提供を受けるときに必要となる。 例えば、事業者(個人番号関係事務実施者)が従業員(本人)から個人番号の提供を受けるときに本人確認が必要となる。また、税務署長(個人番号利用事務実施者)が税理士(税務代理人)から納税者(本人)の個人番号の提供を受けるときに本人確認(代理人に対する本人確認)が必要となる。 そのため、納税者の申告書に個人番号を記載するために、税理士(税務代理人)が納税者(本人)から個人番号の提供を受けるときには、マイナンバー制度における本人確認は不要である。 ただし、税理士が税務署長から行われる本人確認(代理人に対する本人確認)について、「本人の番号確認書類の写し」を提出する必要(e‐Taxで申告する場合は不要)があることから、税理士は納税者から番号確認書類(個人番号カード、通知カードなどのコピー)を取得する必要がある。   4 罰則の適用 番号法では、一般法である個人情報保護法等の同種の法律における罰則よりも加重された罰則が規定されている。 税理士に関係する罰則としては、以下のものが挙げられる。 この罰則の論点で誤解が多いのが、「過失に基づく情報漏えいがあった場合に、即罰則の適用がある」というものである。 刑法では、原則として、罪を犯す意思(故意)がない行為は罰しない(刑法38①本文)こととされている。ある行為が「過失」や「重過失」に基づく場合に処罰されるのは、法律に特別の規定がある場合である(刑法38①ただし書き)。 番号法に規定されている上記の罰則は、いずれも「故意」に基づく行為を処罰するものである。「過失」に基づく行為により情報漏えい等が発生した場合は、原則として、特定個人情報保護委員会から是正する措置をとるべき旨の勧告・命令がなされ、それにもかかわらず、故意にその措置をとらなかった場合などに罰則の適用があることになる。 また、罰則におけるもう1つの誤解は、「従業員が情報漏えい事件を発生させると、事業者も即罰則の適用がある」というものである。 事業者においては、両罰規定(上記⑦)というものがあり、従業員が故意に情報漏えい等を発生させた場合に、事業者にも罰金刑が科される可能性がある。 ただし、この両罰規定においても、「従業員における故意の情報漏えい=事業者に対する罰金刑」というわけではなく、事業者においては、違反行為を防止するために相当の注意及び監督が尽くされていたことを証明することになる。 以上のように、罰則については「強化された」といっても、善良なる事業者においては、取り立てて不安に思うことではないという点をしっかり理解する必要がある。 なお、情報漏えい等を発生させた場合に、罰則の適用がなかったとしても、本人から損害賠償責任などの民事上の責任が問われる可能性があることには注意が必要であるが、これはマイナンバー制度固有の問題ではなく、通常の個人情報の場合と同様である。   (連載了)

#No. 139(掲載号)
#鈴木 涼介
2015/10/08

消費税の軽減税率を検証する 【第9回】「新聞、雑誌への軽減税率の適用」

消費税の軽減税率を検証する 【第9回】 「新聞、雑誌への軽減税率の適用」   税理士 金井 恵美子   Ⅰ 日本新聞協会等の主張 2013年12月13日、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日経新聞、産経新聞、東京新聞等の各紙は社説において、平成26年度税制改正大綱の公表に当たり、税率10%への引上げと同時に軽減税率を導入することを要求した。 日本新聞協会は、年に一度行う新聞大会の決議において、2012年、2013年、2014年の3年連続で軽減税率の適用を求めており、本年10月15日の大会でも、同様の決議が行われると予想される。 2013年1月15日の『新聞に消費税の軽減税率適用を求める声明』では、新聞に軽減税率を適用している国が多いことを挙げ、 と主張した。また、本年9月17日に公表した『消費税の軽減税率制度に関する声明』では、財務省が提示した『日本型軽減税率制度』(前回参照)について、「税制としてきわめて問題が多い」とし、 とした。 産経新聞9月8日の社説は「日本の消費税にあたる付加価値税が20%前後の欧州各国では、食料品や新聞などの生活必需品に軽減税率が適用されている」とし、読売新聞9月11日の社説においても「食料品をはじめ、活字文化の保護に欠かせない新聞や書籍が対象だ」とされている。 日本書籍出版協会等(※1)の主張も同様である。かねて共同声明として『文化を支える出版物に軽減税率が必要です』を発表しているが、『日本型軽減税率制度』(前回参照)の発案を受け、本年9月17日の『消費増税還付「財務省案」に反対し出版文化への軽減税率適用を求めます』という緊急声明において、 と主張している。 (※1) 日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の4団体。   Ⅱ 諸外国の状況 イギリス、ベルギー、デンマーク、ノルウェーは、新聞にゼロ税率を適用しており、他の欧州諸国のほとんどが軽減税率を適用している。 その理由について、「新聞の公共性に関する研究会」の「新聞への消費税軽減税率適用に関する意見書」(2013年9月5日)は、次のように述べている。 しかし、違った評価もある。関西大学の矢野教授は、フランスでは、 と分析している(※2)。 (※2) 矢野秀利「消費税の政治経済学 第18回 軽減税率の適用とその問題点-フランスの事例からみる-」税経通信68巻4号9頁(2013年)。 また、税制調査会の『税制調査会海外調査報告』(2004年9月)では、次のように報告されている。   Ⅲ 新聞、雑誌、書籍への軽減税率の適用 上述した「新聞の公共性に関する研究会」の「新聞への消費税軽減税率適用に関する意見書」は、新聞は、ニュースや情報、多種多様な意見ないし評論の提供を行い、高い識字率を支え、学習指導要領にその活用が明記される「誇るべき日本の文化である」とし、安価で手軽に入手できる状態が維持されることが何よりも必要であり、購読部数の減少は零細な新聞販売店に悪影響をもたらすことにも配慮すれば、新聞への軽減税率適用が不可避である、と結論付けている。 新聞や書籍が安価で入手できることの意義は大きいと思われる。しかし、所得の高い層ほど、複数の新聞、多くの雑誌や書籍を購読しているであろう。新聞や雑誌に軽減税率を適用した場合には、食料品以上に、高所得者に与える恩恵の度合いが増すものと考えられ、「潜在的な経済能力の豊かな者がより好むと思われる商品(教育・書籍など)に高率で課税を行うべしとする諸説もある。」(※3)とする論考もある。 (※3) 馬場義久「スウェーデンの消費税-軽減税率の実際」税研29巻1号17頁(2013年)。 軽減税率の設定は、何を保護しているかというメッセージ性が高い。したがって、新聞への軽減税率の適用は、逆進性の緩和や低所得者対策としての効果はなくとも、知識、情報、文字文化に対する国の姿勢を示す、という点が重要なのであろう。ただし、そのために払われる犠牲との比較衡量で検討すれば、わざわざ税制において表明しなければならないことなのかという疑問が生じる。知識や教育が国を支えるということは、誰もが承知していることであって、消費税の課税があることをもって、これを否定するメッセージと受け止める必要はないだろう。 そして、ここにも線引きの問題が生じる。スウェーデンでは、本、雑誌、新聞は6%であるが、CD、ノート、カレンダー、地図、クリスマスカードは25%である。今日において一般化している新聞や書籍に代わるデジタル配信をどう取り扱うのか。日本新聞協会は、電子媒体を含めて軽減税率を適用すべきとするが、デジタルの世界では、文字、画像、音楽を区分することは難しい。 また、有害図書、不健全図書は、軽減税率の対象から除外されるべきであろう。しかし、そもそも悪書とはいったい何を指すのであろうか。有害図書、不健全図書は、青少年保護育成条例等に基づいて都道府県知事が指定するが、問題は、それで解決できるほど単純ではない。 たとえば、2013年の松江市教育委員会による漫画「はだしのゲン」閲覧制限問題は、記憶に新しい。世界で5億部を発行したJ・Kローリングによる児童文学書『ハリー・ポッターシリーズ』は、魔法で人間をコントロールするような表現は子供の成長に悪い影響を与えるという理由で、オーストラリアの一部のクリスチャンスクールの図書室には置かれていない。 日本の新聞の中には、筆者の感覚では、電車内で広げるのを禁止してほしいと言いたくなるようなものもある。しかし、そうではないという考えもあろう。 これらの線引きは、芸術や文化、思想や教育についての価値観という根源的な問題を孕んでいると言える。 (了)

#No. 139(掲載号)
#金井 恵美子
2015/10/08

商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用・申告のポイント 【第1回】「平成27年度税制改正後の制度概要」

商業・サービス業・農林水産業活性化税制の 適用・申告のポイント 【第1回】 「平成27年度税制改正後の制度概要」   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行   平成25年度税制改正において創設された中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額の特別控除(以下「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」(租税特別措置法42条の12の3(法人税)、10条の5の3(所得税)))については、平成27年度税制改正において所要の見直しを行った上で、適用期限が2年延長されている。 本連載では、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用及び申告実務のポイントについて解説していく。なお以下の内容は、平成27年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする経営改善設備に係る内容を前提としている。   1 税制の概要 商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、中小企業者等が、認定経営革新等支援機関や認定経営革新等支援機関に準ずる法人(※)(以下「認定支援機関等」という)からアドバイスを受け、そのアドバイスの中で経営の改善に資する資産であるとして指導及び助言を受けた器具及び備品又は建物附属設備を取得、製作又は建設(以下「取得等」という)して、指定事業の用に供した場合に、認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しを納税申告書に添付することで、30%の特別償却又は7%の税額控除が受けられるものである。 (※) 商工会議所、商工会、商店街振興組合連合会などをいう。   2 適用対象者 適用対象者は、青色申告書を提出する中小企業者等(ただし、認定支援機関等に該当する中小企業者等を除く)であり、具体的には次の個人又は法人である。   3 適用対象期間 平成25年4月1日から平成29年3月31日までの期間内に、適用対象となる設備の取得等をして指定事業の用に供することが必要となる。   4 対象設備 対象設備は、認定支援機関等から経営の改善に資する資産として、「経営の改善に関する指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類」に記載された設備である。 ここで「設備」とは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令・別表第一の「建物附属設備」で、一の取得価額が60万円以上のもの、器具備品で一台又は一基の取得価額が30万円以上のもののうち、経営の改善に資するために取得する以下の設備である。   5 指定事業 指定事業は、次に掲げる事業である。 なお、風俗営業に該当するものは ① 料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する飲食店業で生活衛生同業組合の組合員が営むもの ② 宿泊業のうち旅館業、ホテル業で風俗営業の許可を受けているもの 以外は指定事業から除かれる。   6 特別償却と税額控除 (1) 特別償却 特別償却の場合、償却限度額は、普通償却限度額に取得価額の30%の特別償却限度額を加えた金額となる。 (2) 税額控除 税額控除限度額は、取得価額の7%相当額となる。ただし、その税額控除限度額がその事業年度の税額の20%を超える場合には、控除を受ける金額は、その20%相当額が限度となる(税額の20%を超えているため、税額控除限度額の全部を控除できなかった場合には、1年間の繰越しが認められる)。 なお、税額控除は、資本金の額又は出資金の額が3,000万円を超える法人以外の法人、個人が適用対象となる。   7 その他の留意事項 (了)

#No. 139(掲載号)
#石田 寿行
2015/10/08

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第36回】「非公開裁決事例⑦」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第36回】 「非公開裁決事例⑦」   公認会計士 佐藤 信祐   今回、紹介する事件は、ゴルフ場経営会社が預託金会員制のゴルフ会員権を、預託金額を下回る価額で購入した場合に、民法520条の混同により消滅し、債務消滅益を認識する必要があるか否かが争われた事件である。 実務上、債務者がサービサーから自己に対する債権を券面額を下回る価額で取得するケースが存在し、このような場合には、民法520条の混同により消滅することと解されているが、ゴルフ会員権は法的性格が異なることから、異なる結論となる。   21 平成20年2月25日裁決(TAINSコード:F0-2-311) (1) 事件の概要 本事件は、ゴルフ場を経営する法人である審査請求人(以下「請求人」という)が、自己が発行した預託金会員制のゴルフ会員権をゴルフ会員権業者から預託金額を下回る取得価額で購入して資産計上したところ、原処分庁が、同会員権の取得により預託金返還債務が消滅したから、預託金額と取得価額との差額については、同会員権を取得した日を含む事業年度の益金の額に算入すべきであるとして更正処分等を行ったことに対し、請求人が預託金返還債務は消滅していないとして、同処分等の全部の取消しを求めた事件である。 預託金会員制のゴルフ会員権の法的性質は、やや通常の預託金債権とは異なっており、後述するように、本事件では、租税法を理解する前に民法の理解が必要となってくる。 (2) 原処分庁の主張 請求人は、退会届は受領していないものの、本件リストは、本件会員権の該当欄が抹消され、「H17.12.22退会」と、また、本件会員台帳は、本件会員権の該当欄が抹消され、「H17.12.21退会」と記載して本件会員権の退会に係る処理を行っている。 さらに、本件会員権は、原処分に係る調査の実施日である平成18年6月15日現在において、請求人が保有しており、他に譲渡された事実はない。 そうすると、本件会員権の取得は、請求人と名義人たる■■■■■■及び譲渡者たる■■■■■■との間における本件会員権の取得の際の合意により取得代金の授受をもって個々の会員契約を解除し、当該契約の解除と同時に取得代金を超える預託金の返還債務が消滅していると認められる。 (3) 請求人の主張 本件リスト及び本件会員台帳に「平成17年12月21日退会」と記載したのは会員権の事務連絡上のミスが発生しないようにするためのものであり、本件会員権が消滅したという認識によるものではない。 平成17年12月に■■■■■■は本件会員権を会員権業者■■■■■■に譲渡した。本件クラブ規定第12条で「預託金の据置期間は名義書換後15年とする。」と定めているので、■■■■■■が■■■■■■に譲渡した時点でこの預託金の据置期間は15年延長され、その請求権は■■■■■■に移動している。据置期間が経過していない預託金については、当社にその返還債務は発生していない。 ■■■■■■が請求人に対して有する本件会員権は「退会届」が提出されたものではなく、ゴルフ会員権業者を介して取得したものである。 (4) 国税不服審判所の判断 民法第520条は「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」と規定しているところ、この混同によって債権が消滅しない場合として、①本条ただし書の「債権が第三者の権利の目的であるとき」のほか、債権が独立の財産として流通するようになった現在では、②債権と債務が帰属する財産がそれぞれ分離独立している場合、及び③証券化した債権などについて例外的取扱いが広く認められるべきであると解されている。 ゴルフ場経営会社が自己の所有するゴルフ場の流通する可能性のあるゴルフ会員権を取得してこれを消却せず、将来売却する目的で引き続き保有する場合には、上記イの③の証券化した債権に類似するものとして混同による消滅の例外とするべきと解するのが相当である。 この答述のようなプレー権を消失した会員権を一般の会員権と別異に扱う必要性は認められるところであって、その内容に格別不自然な点はなく、当該抹消及び付記されていることをもってのみ本件会員権が消却されたとすることはできない。 (5) 評釈 ゴルフ場には、預託金制、株主会員制、社団法人制の3つがあるが、このうち、社団法人制はいわゆる名門と言われているゴルフ場が多く、通常、譲渡が困難であると言われている。これに対し、預託金制、株主会員制のゴルフ会員権については、譲渡をすることが可能であり、バブル期には、資産運用のひとつとして取り扱われていた。 このうち、預託金制のゴルフ会員権は、①ゴルフ場施設の優先的利用権、②預託金返還請求権、③年会費支払義務などの債権債務関係を内容とする会員とゴルフ場経営会社との間の契約上の地位であるとされている(※)。 (※) 最高裁平成7年9月5日判決・民集49巻8号2733頁 すなわち、純粋な金銭債権としての性質を有しておらず、かつ、民法520条但書にあるように、「その債権が第三者の権利の目的」であるときは、混同により消滅しないと解されているところ、上記の国税不服審判所の判断では、これに留まらず、「証券化した債権」について混同により消滅する債権の例外であると解している。 これに対し、平成23年5月に法務省民事局参事官室が公表した「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明」では、以下のように説明されている。 このように、当時の民法においても、債権が証券化されている場合には、混同により債権が消滅することはないと解されており、ゴルフ会員権はまさにその典型であると言える。 そのため、通常の債権とは異なり、ゴルフ場経営会社がゴルフ会員権を買い取ることにより、実質的に債務の負担が減少したとしても、実際にゴルフ会員権が消滅するまでは債務免除益を計上すべきではないという結論になり、国税不服審判所の判断は妥当なものであったと考えられる。  (了)

#No. 139(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/10/08

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第36回】「国外転出(相続)時課税の適用を受ける場合の所得税及び復興特別所得税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第36回】 「国外転出(相続)時課税の適用を受ける場合の 所得税及び復興特別所得税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   平成27年10月5日、私の父(居住者)が亡くなりました。相続人は、私(居住者)、母(居住者)、弟(アメリカに在住。非居住者)の3人です。3人とも10月5日に相続の開始を知りました。10月5日時点の父の相続財産は、以下の通りです。 先日、遺産分割協議を行い、以下の通りに分割することになりました。 国外転出(相続)時課税が創設されましたが、対象になるのでしょうか? 国外転出(相続)時課税についてご教示ください。   1 概要 国外転出(相続)時課税とは、平成27年7月1日以後に相続開始の時点で1億円以上の対象資産を所有又は契約の締結をしている居住者(相続開始の日前10年以内に国内在住期間が5年超)が亡くなり、非居住者である相続人又は受遺者がその相続又は遺贈により対象資産の全部又は一部(相続対象資産)を取得した場合には、その相続開始の時にその相続対象資産の譲渡又は決済があったものとみなして、相続対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税される制度である。 次のいずれかに該当する場合には、相続人は国外転出(相続)時課税により課された税額を取り消すことができる。 また、納税猶予の適用を受けることで納税を猶予することができる。   2 対象資産   3 確定申告書の提出時期 相続人(母、私、弟)は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内(平成28年2月5日まで)に国外転出(相続)時課税の適用による所得を含めて被相続人(父)の所得税及び復興特別所得税の準確定申告書を税務署へ提出するとともに、納税しなければならない。 対象資産1億円以上の判定は、10月5日(相続開始の日)で行う。また、非居住者である相続人(弟)が相続により取得しなかった対象資産の価額を含めて行う。東京証券取引所のA社株式の10月5日(相続開始の日)の最終価格1万円に株式数1万株を乗じた額が1億円以上なので、国外転出(相続)時課税の適用を受ける。 (了)

#No. 139(掲載号)
#上前 剛
2015/10/08

税務判例を読むための税法の学び方【70】 〔第8章〕判決を読む(その6)

税務判例を読むための税法の学び方【70】 〔第8章〕判決を読む (その6)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   (2 判決をみるポイント) (② 結果を左右した要素を見極める) ((3) 判決の示した「一般的法命題」は何か) (承前) 前回【第69回】にて、判決において一般的法命題が示されない場合があり、それを「事例判決」という旨記した。 そこで今回は事例判決の例を見てみよう。 ストックオプションの所得区分に関する最高裁判決(最高裁第三小法廷平成17年1月25日判決)を、裁判所HPの裁判例情報から入手して読んでいただきたい。 判決の理由として、「1」の原審の適法に確定した事実関係の概要、「2」の事案の説明に続き、「3」に判断の根拠を述べている。 そしてこれに続く「4」に結論がきているが、この結論のどこにも一般的法命題は記されていない。 こういう判決を「事例判決」といい、最高裁判決ではあっても判例として機能する部分は極めて限られるものである。一般的法命題がない以上、その射程は判決の事案と同じ内容の事案のみに限られるのである。 そしてこの判決は、以下のように2つの部分に分けられる。 ① ストックオプションという制度の説明とそれを根拠とした行使益の性質 ② この事案特有の事情とそれを根拠にした判断 ①では、ストックオプションの場合に、本件権利行使益の発生及びその金額が、株価や自己の判断により増減するとしても、付与会社から受給者に与えられた「給付」であると結論付けている。しかしここではこの「給付」が、所得としてどの種類の所得となるかという点は、全く触れていない。 ②では認定事実から、当該事案では業務遂行における指揮命令者と経済的利益の支給者が実質的には異なるものではないと、すなわち「B社の統括の下にA社の代表取締役としての職務を遂行していた」という理解のもとで、指揮命令者は上告人が役員をしているB社ではなくA社であるとして、実質的な点からは、指揮命令者と経済的利益の支給者が同一であるとした上で、「本件権利行使益は、雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたもの」と判示する。 上告人が役員である会社の株式を100%有している親会社から給付されたものであるから、親会社は子会社の役員の人事権等の実権を握ってこれを支配しているものとみることができるという認定の下で「B社の統括の下にA社の代表取締役としての職務を遂行していたもの」とし、そしてその「職務を遂行したことに対する対価」としての性質を有することから「雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたもの」と結論付けている。 このように見るならば、その射程範囲は、ストックオプション一般に当てはまるものではなく、あくまでも、給付者は受給者が役員であるところの会社の100%株式を所有する親会社であり、また受給者はその子会社の役員である必要がある。判決ではこの前提があって初めて「役員の人事権等の実権を握ってこれを支配しているものとみることができる」と認定しているのである。 もっとも判決がこの事案におけるストックオプション制度について「執行役員及び主要な従業員に対する精勤の動機付けとすることなどを企図して設けられているもの」と認定しており、ここから役員以外の「従業員」も含まれると解する向きもあろうが、それは正当ではない。なぜなら理由付け命題は、直接性を持ち当該裁判における結論を理由付けるものが判例とされているからである 。 もっとも、子会社役員の人事権を親会社が有するのは、株主総会における選任権を有するからであり、その株式の所有割合を100%に限定する必然性は乏しい。原則、実質的に50%超を所有しているなら株主総会における選任権を有するのであるから、判決の100%に拘泥する必然性は乏しいともいえる。 したがってこの100%という株式所有割合に拘泥するつもりはないが、従業員は別である。というのも、この株主総会における役員の選任権を行使し得るのは、役員についてのみである。従業員についての人事権を有するのは子会社の役員である。また、この判決においては、従業員は結論に無関係であることから、傍論でしかない。したがって、この判決の射程は子会社の役員に限定されることになる。 なお、このことは第一審(東京地裁平成15年8月26日判決)にしか出てこないが、この事案の原告は、子会社の役員であるのみならず、米国親会社の副社長でもある。 しかし、現在、この判決をもって、このストックオプションの所得区分についてはすべて結論が出たとして実務が進んでいる。残念なことである。 (続く)

#No. 139(掲載号)
#長島 弘
2015/10/08

金融商品会計を学ぶ 【第12回】「その他有価証券の会計処理」

金融商品会計を学ぶ 【第12回】 「その他有価証券の会計処理」   公認会計士 阿部 光成   今回は、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)に規定する「その他有価証券」の会計処理について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ その他有価証券とは 「その他有価証券」とは、売買目的有価証券(第10回参照)、満期保有目的の債券(第11回参照)、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券のことをいう(金融商品会計基準18項)。 その他有価証券は、次のような性質をもっている(金融商品会計基準75項、金融商品実務指針72項)。   Ⅱ その他有価証券の会計処理 1 考え方 時価をもって貸借対照表価額とする(金融商品会計基準18項、64項~67項)。 評価差額の取扱いについては、次のように考え、原則として、その他有価証券の評価差額を当期の損益として処理することなく、税効果を調整の上、純資産の部に記載する会計処理を採用した(金融商品会計基準18項、77項~80項)。 2 貸借対照表価額及び評価差額 その他有価証券については、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は洗替方式に基づいて、次のいずれかの方法により処理する(金融商品会計基準18項、金融商品実務指針73項)。 次のことに留意する(金融商品会計基準18項、79項、80項、金融商品実務指針73項)。 3 償却原価法の適用 その他有価証券に分類される債券については、償却原価法を適用でき、次のように処理する(金融商品実務指針74項、276項、「金融商品会計に関するQ&A」Q26)。 4 市場価格の適用 その他有価証券の決算時の時価は、原則として、期末日の市場価格に基づいて算定された価額とする。ただし、継続して適用することを条件として、期末前1カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることもできる(金融商品会計基準注7)。 次のことに留意する(金融商品会計基準76項、金融商品実務指針75項。なお、「金融商品会計に関するQ&A」Q32に注意)。 5 その他有価証券の売却取引 その他有価証券を期中に売却した場合には、取得原価と売却価額との差額が売買損益として当期の損益に含まれることになる(金融商品会計基準79項)。 その他有価証券の評価差額は洗替方式により処理されることから、その他有価証券を売却した場合には、売却前の取得原価又は償却原価に移動平均法、先入先出法等を適用して算定した売却原価と売却価額との差額を当期の売却損益として処理する(金融商品会計基準18項、金融商品実務指針76項)。 6 その他有価証券の売却に係る損益の表示 「金融商品会計に関するQ&A」Q68では、その他有価証券(流動資産の有価証券に表示したものを除く)の売却損益は、原則として特別損益区分に表示しなければならないと規定している。 ただし、前述の定義で述べたように、その他有価証券には、多様な性格を有するものが含まれることから、転売目的で取得し、売却が相当程度の経常性を有する有価証券も、その売買がいわゆるトレーディングに該当しない限り、その他有価証券に含まれることになる。 このため、損益計算書の表示としては、特別損益は本来、経常性を有しない臨時的な損益を表示する区分であることから、その他有価証券の売却損益のうち特別損益に計上するのは臨時的なものに限定し、それ以外の場合には営業外損益に計上することが適当と考えられている。 (了)

#No. 139(掲載号)
#阿部 光成
2015/10/08

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第37回】KDDI株式会社「外部調査委員会調査報告書(平成27年8月21日付)」

  〔会計不正調査報告書を読む〕 【第37回】 KDDI株式会社 「外部調査委員会調査報告書(平成27年8月21日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【調査委員会の概要】   【KDDI株式会社の概要】 KDDI株式会社(以下「KDDI」と略称する)は、1984(昭和59)年6月創業の電気通信事業者。auブランドは、携帯キャリアとして、NTTドコモに次ぐ2位、約29%を占めている。連結営業収益4,573,142百万円、連結経常利益752,403百万円(数字はいずれも平成27年3月期)。従業員数28,172名。本店所在地、東京都新宿区。東京証券取引所1部上場。 今回不正が発覚したDMX Technologies Group Ltd.(以下「DMX」という)は、シンガポール証券取引所に上場。中国、香港を中心にアジアでシステムインテグレーション事業、デジタル・メディア事業を展開。KDDIは、2009(平成21)年12月1日、第三者割当増資によりDMX株式の約51.7%を取得し、シンガポールでの上場を維持したまま、連結子会社とした。KDDIの2015(平成27)年3月現在の持ち株比率は約51.3%である。   【調査報告書のポイント】 1  調査に至った経緯――会計監査人の指摘とCEO・CFOの逮捕 DMXは、2014年12月期決算について、PricewaterhouseCoopers LLP(以下「PwC」という)による会計監査を受けていたところ、DMX及びそのグループ会社の取引の一部に、実在性に疑いのある取引が存在することを指摘された。具体的には、中国本土における取引の実在性を証明する証憑の提出をPwCが求めたにもかかわらず、期日までにこれを提出することができなったというものである。 また、2015年2月3日には、当時DMXのCEOであったJismyl Teo 氏(ジスミル氏)、CFOであった Skip Tan氏(スキップ氏)の両名が、KDDIの資本参加前である2008年にDMXにおいて行われた中国企業との取引に関連する犯罪の嫌疑で香港警察当局に逮捕された。 KDDIでは、こうした事態を受けて、監査委員会の指揮のもと、社内調査委員会を設置し、香港の法律事務所を起用して、2008年から2009年の取引について社内調査を開始したところ、香港の法律事務所からも不適切な会計処理が行われている可能性が示唆されたため、外部調査委員会の設置に至ったものである。   2  調査報告書により判明した事実 (1) 本件調査対象取引の概要 調査の対象となった取引を図示すると次のとおりである。   DMXグループ会社においては、代理店に対し、請求日から30日以内に機器代金が支払われ、この時点で棚卸資産として資産計上が行われる。一方、売上認識は、エンドユーザーへの納品後14日後に販売額の95%が計上され、同時に納入機器の購入代金全額が売上原価として計上される。残り5%の売上計上は、エンドユーザーによる最終検収後に行われていた。 実在性に対する疑義が生じたのは、サプライヤーから出荷された製品がエンドユーザーに納入されたことを示す証憑が存在しないこと、IEファームからの代金回収が滞っており、調査対象取引に係る売上のほとんどが売掛金として残っていたことからである。 (2) 買収時のデュー・ディリジェンス 調査報告書によれば、財務デュー・ディリジェンスを担当したPwCからは、以下の指摘があったという(報告書p.19)。 この指摘を踏まえ、KDDIは情報収集を行い、以下の点から、売掛金回収サイトの長期化は財務体質の問題ではないと判断した。 結果的には、売掛金の相手は「政府系メディア」ではなく、IEファームと呼ばれる一般の事業者であり、売掛金残高の急増、回収期間の長期化といった、架空売上計上という会計不正につきものの兆候を指摘されていながら、買収の意思決定に至ったことについて、調査委員会は、「DMX側の一方的説明を額面通りに受け止めた姿勢そのものに問題があった」と断定している。 (3) 背景事情 調査委員会は、KDDIにおける背景事情として、以下の4点を指摘している(報告書p.39以下)。 調査委員会は、「KDDIは、DMXがシンガポール証券取引所に上場している企業であること、会計監査を大手監査法人であるDeloitte Tohmatsuが担当していることを根拠として、高い信頼を置いていたことが窺われる」としながらも、脇の甘さ、淡泊さ、リスク認識の乏しさ(無防備な姿勢)、縦割り発想の意識と仕組みといった背景事情が、経営上のスタンスの問題であるとしている。   3 再発防止策の提言 調査委員会は、この調査がKDDIによるDMX買収から5年余りを経過してから行われたことを踏まえ、買収当時の考え方や実務とともに、その後のKDDIにおける取組や施策を勘案して、再発防止策を提言している。 これらの中では、海外子会社の買収時に、子会社経営者の人物評価を行うべきであることを提言した、以下の部分を引用しておきたい。 筆者の知己でアジアを中心に活躍する公認不正検査士(CFE)から教示されたことであるが、日本企業がアジア進出を検討するにあたっては、インテグリティ・デュー・ディリジェンス(経営者のバックグラウンド、業界での評判、資本関係の変遷、背後関係などの調査)をきちんと行うことによって、リスクを回避できるだけでなく、相手との交渉を有利に運べる場合もあるということで、買収企業の経営者による不正リスクを回避するためには、欠かすことのできないプロセスと言えるであろう。   4  調査報告書の特徴 (1) 調査の前提 調査手法について、調査委員会は、「DMXにおける本件対象取引に関する事実関係の調査を直接行っていない」こと、よって、調査報告書における事実関係に関する記載については、調査報告書作成時点までに、「KDDIから提供された資料やヒアリング結果を通じて把握した事実関係を、本件調査の前提事項として記載するものにすぎない」としている。 なお、事実関係の全容については、「実在性の有無も含め、未だ明らかになっておらず、専らDMX及びKDDI自身により、現在も調査を継続中である」とのことで、今後、新たな事実が判明する可能性を示唆している。 (2) 損失計上額 KDDIは、5月12日付で「当社連結決算における特別損失計上及び外部調査委員会設置のお知らせ」の中で、将来発生が見込まれる損失総額33,798百万円を海外子会社事業損失(特別損失)として計上していることを公表している。 このように、調査委員会設置の前に、損失額を公表するというのは珍しいケースである。また、調査が継続中ということもあって、外部長委員会による調査の目的には、この損失計上額の妥当性に関する評価は含まれていない。 (3) 中国投資で躓く日本企業 2015年4月30日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請した東京証券取引所1部上場の江守グループホールディングス(以下「江守GHD」という)は、中国子会社の売掛金滞留に伴う貸倒引当金の計上により234億円の債務超過に陥ったものである。 6月3日には、株式会社LIXILグループ(以下「LIXIL」という)が、平成27年3月期決算において、中国子会社でハンブルグ証券取引所に上場するJoyou AGの破産手続き開始申立に伴い発生した損失が約332億円であり、平成28年3月期においても最大で約330億円の特別損失を計上する可能性があることを公表した。 江守GHDの場合は、架空計上された売掛金が破綻原因となったもので、KDDI連結子会社不正と類似した側面がありそうだ。一方、LIXILの場合は、連結子会社の破綻は巨額の簿外債務の存在によるものであり、損失発生原因は異なっているが、中国子会社の管理の難しさ、調査がなお進行中という点など、日本企業による中国企業のM&Aについて、多くの教訓をもたらす事例となりそうである。 (了)

#No. 139(掲載号)
#米澤 勝
2015/10/08
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