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暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第31回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第31回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   4 その他雑所得と必要経費 (1) 必要経費の問題 国税庁は、雑所得を①公的年金等に係る雑所得、②業務に係る雑所得、③その他雑所得(①・②以外の雑所得)に分けて、取扱いを整理している。 以下は、令和4年10月7日付課個2-21ほか2課共同「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について」(法令解釈通達)による改正後の所得税基本通達35-1及び35-2の抜粋である。 国税庁が公表している上記所得税基本通達の解説資料(「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」。以下「雑所得通達解説」という)1頁は、譲渡所得の基因とならない資産について、具体的には、金銭債権、外貨、暗号資産などの「資産の値上がり益が生じないと認められる資産」が該当すると説明している。 ここでも暗号資産の譲渡による所得の譲渡所得該当性を否定する国税庁の見解の背後には、まずは資産性否定説が存在していることがわかるが、いずれにしても暗号資産の譲渡による所得の譲渡所得は、業務に係る雑所得ではなく、その他雑所得に該当すると国税庁は整理していることになる。 それでは、この議論の先にはどのようなことが待ち受けているのか。 言い換えれば、仮に、国税庁の見解のとおり、暗号資産の譲渡による所得が雑所得のうちのその他雑所得に該当する場合には、どのような効果が生じるか、業務に係る雑所得とその他雑所得に区分する実益はどの辺りにあるのであろうか。 上記改正通達の「業務に係る雑所得」にいう「業務」は法令上の「雑所得を生ずべき業務」と対応していることを前提として所得税の法令を概観すると、例えば、次に示す規定など様々な箇所で「雑所得を生ずべき業務」に関する規定が存在することに気が付く。 上記のほか、注意しておきたいのは次の規定である。 現行所得税法は、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次の額であるとしている(所法37)。 上記①の「期間対応費用の必要経費不算入」に関して、業務に係るものではない「その他雑所得」の場合は、(販売費、一般管理費も含めて)「業務」について生じた費用である上記➋の期間対応費用を観念できないことになり、上記➊の個別対応費用のみが必要経費に算入されることになる。 そうすると、暗号資産に係る所得について、➊個別対応費用(原価)のみが必要経費に算入され、税理士報酬、有料サイト利用料など情報収集のための費用、暗号資産の計算ソフト利用料などが必要経費に算入できない可能性が出てくる。 もっとも、暗号資産FAQ「2-3 暗号資産の必要経費」は、次のとおり、暗号資産の売却による所得は原則として「その他雑所得」に区分されるとする一方で、その譲渡原価及び売却の際に支払った手数料に加えて、「インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、暗号資産の売却のために「直接」必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます」と説明している。 上記FAQは、「暗号資産取引に係る所得が、事業所得又は雑所得(業務に係る雑所得)に区分される場合には、その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額も必要経費に算入することができます」とも説明している。 よって、業務に係るものではない「その他雑所得」の場合は、(販売費、一般管理費も含めて)「業務」について生じた費用である上記➋の期間対応費用を観念できないことになり、上記➊の個別対応費用のみが必要経費に算入されることになるという上記理解は、国税庁の見解と整合していることがわかる。 また、上記FAQは必要経費の注意点として次の2つを挙げている。 暗号資産取引に係る利用料は暗号資産の売買のために「直接」必要なものに限られる。有料サイト利用料など情報収集のための費用や暗号資産の計算ソフト利用料は、「直接」必要なものではないとして、「その他雑所得」に該当する場合には必要経費算入が認められない可能性がある。 また、インターネットやスマートフォン等の回線利用料のうち、暗号資産取引に係る利用料を明確に区分できるのか、何らかの方法で合理的に区分した場合に「明確に区分できている」と認められるのか、実務家にとっては不安の種になりそうである。 パソコンの購入費用についても、暗号資産の売買取引専用のものであれば別であるが、それ以外のものは、同様の問題が生じるであろう。 結局、上記2つの所得税基本通達が改正されたことや、これに伴い暗号資産FAQに「直接」という語が挿入されたことが、実際の必要経費に関する執行に具体的にどの程度の影響を及ぼすのか、国税庁がその他雑所得との関係で、実際にどのような支出を必要経費として認めないのかは明らかではない。   (了)

#No. 546(掲載号)
#泉 絢也
2023/11/30

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第31回】「武田薬品工業事件-無形資産の形成による移転価格税制の影響-(大裁平25.3.18)(その3)」~租税特別措置法66条の4第1項、第2項~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第31回】 「武田薬品工業事件-無形資産の形成による移転価格税制の影響-(大裁平25.3.18)(その3)」 ~租税特別措置法66条の4第1項、第2項~   税理士 中野 亘     4 判断 (1) 認定事実 (2) 残余利益の配分計算に用いた請求人及びTAP社の分割指標について   5 考察 (1) 法的な無形資産の取引における「排他性」と「独自性」 本件では残余利益の一部である米国における「開発」(臨床試験)の帰属が請求人とTAP 社どちらのものであるかが大きなポイントとなった。米国における「開発」は「FDA 等の承認」が含まれるということになり、FDA 等の承認が無形資産の形成を成立させていることが分かる。具体的にはFDA 等の承認における特徴は日本における臨床試験を米国において用いることができないことにおいて「排他性」を発生させ、米国という人種において臨床結果を用いるという「独自性」が発生している点である。このことからFDA 等の承認を取得するためにTAP 社による臨床試験が法的な無形資産の形成に寄与したと判断された。 (2) 取引価格(費用負担)による経済的レント等の享受を「リスク管理の範囲」の観点から見た場合 本件では前臨床段階である「研究(Research Intangible)」と臨床試験である「開発(Development Intangible)」を一体としてリスク管理の範囲(R&D Intangible)とするか、分離してリスク管理の範囲とするかが大きなポイントとなった。ランソプラゾールの米国における販売は、そもそも日本において研究(販売)されていないと成立しなかった点を考慮すると、「研究」と「開発」を一体(R&D Intangible)としてリスク管理の範囲とすることも考えられる。 しかし、本件ではFDA 等の承認後もフェーズⅣによる「製造販売後臨床試験」が必要であり、「製品販売後臨床試験」にはTAP 社の医薬情報担当者(Medical Representatives)による情報収集や情報提供などの「マーケティング活動(Marketing Intangible)」が必要不可欠であり、「研究」と「開発」が一体となるよりむしろ「開発」と「マーケティング活動」を担ったTAP 社が米国における販売活動のリスク負担の下に行われたと解することが妥当だと考える。 医薬製品は製品完成後も市場への認知、医療医薬品の有効性・安全性が確立しなければビジネスとしての成功はなかった。つまり本件では「開発」と「マーケティング活動」がリスク管理の範囲から重要なものであることが証明された判例となった。 (了)

#No. 546(掲載号)
#中野 亘
2023/11/30

有価証券報告書における作成実務のポイント 【第1回】

有価証券報告書における作成実務のポイント 【第1回】   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   上場会社等において、有価証券報告書の提出が義務付けられ、その記載量は年々増えている。また、誤りが生じた場合、訂正報告書の提出や内部統制の評価へ影響する可能性がある。 そのため、限られた人員で正確に有価証券報告書を作成するためには、ポイントを抑えながら作成することが重要である。 大事なことは、最終的に提出する書類は有価証券報告書や計算書類等のため、最終のアウトプットを意識して(逆算して)、必要なエクセルを作成することである。また、システムで自動化する場合も、最終のアウトプットを意識して(逆算して)、システム化する必要がある。決算数値を固めるためにエクセルを作成して、有価証券報告書や計算書類等を作成するために、また別のエクセルを作成するというのでは、効率的にならない。 そこで、本解説では、有価証券報告書を効率的かつ正確に作成するための有価証券報告書間の整合性の確認ポイント、決算数値と有価証券報告書の記載の関係性を中心に解説する。 今回は、第一部【企業情報】第1【企業の概況】1【主要な経営指標等の推移】から3【事業の内容】までの作成実務ポイントについて解説する。 なお、本解説では2023年3月期の有価証券報告書(連結あり/特例財務諸表提出会社/日本基準)に原則、適用される法令等に基づき解説している。   1 【主要な経営指標等の推移】の作成実務ポイント 主要な経営指標等の推移では、重要な指標を記載する。作成ポイントは、以下のとおりである。 【事例:鹿島建設(株)2023年3月期の有価証券報告書】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。   2 【沿革】の作成実務ポイント 沿革では、設立から当連結会計年度末までの間の企業集団の重要な事項を記載する。作成ポイントは、以下のとおりである。 【事例:(株)ディー・エヌ・エー2023年3月期の有価証券報告書】   3 【事業の内容】の作成実務ポイント 【事業の内容】では、当連結会計年度末における提出会社及び関係会社の主な事業内容、事業を構成している提出会社又は関係会社の事業における位置づけ等について、セグメント情報との関連を含め系統的に分かりやすく説明する。 作成ポイントは、以下のとおりである。 【事例:日本電気(株)2023年3月期の有価証券報告書】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (了)

#No. 546(掲載号)
#西田 友洋
2023/11/30

〈会計基準等を読むための〉コトバの探求 【第9回】「会計基準の略称にも意味がある?」

〈会計基準等を読むための〉 コトバの探求 【第9回】 「会計基準の略称にも意味がある?」   公認会計士 阿部 光成   ◆はじめに 会計基準の名称は、省略した形で記載されることが多い。 だが、会計基準によっては略称を用いず、会計基準の番号をそのまま記載している場合もある。 今回は、会計基準の略称について取り上げ、略称の仕方の意味を考えてみる。   ◆略称の例 次のような略称の例が見られる。これらでは、会計基準の名称を利用しつつ、その内容がわかるように端的な記載をしているように思われる。 そのほか、次のような例も見られる。   ◆企業会計基準第24号の略称 企業会計基準第24号については、「正当な理由による会計方針の変更等に関する監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第78号)や、「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第63号)では、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)及び「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第24号)について、それぞれ、「過年度遡及会計基準」及び「過年度遡及適用指針」の略称を用いている。 前述のとおり、会計基準の略称を用いる場合には、会計基準の名称を利用しつつ、その内容がわかるように端的な記載をしているように思われる。 企業会計基準第24号は、公表された当時、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の名称であった。このため、会計基準の名称を利用しつつ略称を使用しようとすると、例えば、「変更・誤謬訂正基準」の略称も考えられたのではないだろうか。 しかしながら、「誤謬」や「訂正」の用語を使用することは、訂正有価証券報告書などを連想しかねないので、企業会計基準第24号で用いられている「過年度遡及修正に関する論点の整理」(27項)などを参考に、「過年度遡及会計基準」の略称を用いたのではないだろうか。 現在では、企業会計基準第24号は、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の名称となっており、「会計方針の開示」が加わっているところである。 (了)

#No. 546(掲載号)
#阿部 光成
2023/11/30

〈一問一答〉副業・兼業に関する担当者のギモン 【第6回】「簡便な労働時間管理の方法《管理モデル》」

〈一問一答〉 副業・兼業に関する担当者のギモン 【第6回】 「簡便な労働時間管理の方法《管理モデル》」   弁護士法人東町法律事務所 弁護士 木下 雅之   ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 管理モデルの趣旨 労働時間の通算規定(労働基準法第38条第1項)を前提とする副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方(原則的なルール)は【第5回】に述べたとおりであり、副業・兼業ガイドラインは、他の使用者の下での実労働時間の把握の困難等の事情に鑑み、労使双方の手続上の負担を軽減するための一定の配慮を示している。 それでも、副業・兼業の日数が多い場合や、本業先、副業・兼業先の双方において所定時間外労働がある場合等においては、労働時間の申告等や通算管理において、労使双方の手続上の負荷が大きくなることが考えられる。 そこで、副業・兼業ガイドラインは、労働時間の通算管理における通常の方法によることのほかに、労使双方の手続上の負担を軽減し、労働基準法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法として、いわゆる「管理モデル」の選択肢を提案している(副業・兼業ガイドライン3(2)オ(ア))。   2 管理モデルの内容 管理モデルの基本的な考え方は、次のとおりである(副業・兼業Q&A・Q1-6)。 これにより、使用者Aと使用者Bは、副業・兼業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した上限の範囲内で労働させる限り、他の使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく、労働基準法を遵守することが可能となる。 なお、管理モデルを採用した場合、他の使用者の下における実労働時間を把握する手続上の負担を回避することができるため、使用者としては、管理モデルの利用を副業・兼業の許可条件として設定する(管理モデル以外の副業・兼業を認めない)ことも考えられるが、副業・兼業ガイドラインは、そのような運用も許容している(副業・兼業Q&A・Q1-21)。   3 管理モデルの導入手順 管理モデルを実施するためには、使用者A、使用者Bおよび労働者の三者が管理モデルによって副業・兼業を行うことを了解し、それに従って行動することが前提となる。 そのため、副業・兼業ガイドラインは、管理モデルの一般的な導入手順として、副業・兼業を行おうとする労働者に対して使用者Aが管理モデルにより副業・兼業を行うことを求め、当該労働者がこれに応じるとともに、当該労働者を通じて使用者Bにも管理モデルにより副業・兼業を行うことが伝達され、使用者Bがこれに応じることによって導入されることが想定されるとしている(副業・兼業ガイドライン3(2)オ(ウ)a)。 副業・兼業ガイドラインは、このような導入手順に従って管理モデルを導入する場合、副業・兼業の開始後のトラブルを防止する等の観点から、管理モデルの実施にあたって必要となる情報は書面(電磁的方法でも可)により使用者A、使用者Bおよび労働者の三者間で共有しておくことが望ましいとしており、共有の方法として、使用者Aが労働者に対して管理モデルによる副業・兼業の実施にあたって必要な情報を通知し、当該通知を労働者が使用者Bに共有することが想定されるとしている(副業・兼業Q&A・Q1-9)。 なお、当該通知の様式例については、厚生労働省のウェブサイトから入手することが可能である。   4 管理モデル導入の留意点 管理モデルを採用した場合と採用しなかった場合(副業・兼業の原則的な労働時間通算が適用される場合)とでは、次の設例において、副業・兼業先の割増賃金の支払義務の有無に違いが生じ得る(副業・兼業Q&A・Q1-13)。 管理モデルを採用しなかった場合、原則的な通算方法の下では、A事業場における所定労働時間4時間→B事業場における所定労働時間3時間→B事業場における所定外労働時間1時間の順で通算することとなり(【第5回】参照)、通算の結果、1日の法定労働時間(8時間)の範囲内におさまるため、使用者Bの下で発生した所定外労働1時間は法定時間外労働には該当せず、使用者Bに割増賃金の支払義務は発生しない。 他方、管理モデルを採用した場合、管理モデルによる通算方法の下では、A事業場における所定労働時間4時間→A事業場における所定外労働時間の上限1時間→B事業場における所定労働時間3時間→B事業場における所定外労働時間1時間の順で通算することとなるため、使用者Bの下で発生した所定外労働時間1時間は法定時間外労働に該当し、使用者Bに割増賃金の支払義務が発生する。 この設例のように、使用者Aの所定労働時間および所定外労働時間の上限を合算しても法定労働時間に達しないような場合において、管理モデルを導入して労働時間通算を行うと、原則的な通算方法と管理モデルによる通算方法では通算順序が異なるため、使用者Bの割増賃金の支払義務の有無に違いが生じることがあり得る。したがって、副業・兼業先の企業の立場からは、管理モデルの採用を承諾するにあたり、この点は留意が必要である。 もっとも、副業・兼業ガイドラインは、設例のような場合においても、使用者Bが、労働者から、A事業場における日ごとの労働時間を申告等により把握しており、その把握の結果、A事業場において所定外労働が発生しなかったことが確認できた日(すなわち、A事業場における実労働時間が4時間以下であると確認できた日)については、B事業場における所定外労働1時間について、1日の法定労働時間の範囲内となるため、使用者Bがその1時間について割増賃金を支払わないとすることも差し支えないとしている(副業・兼業Q&A・Q1-13)。 (了)

#No. 546(掲載号)
#木下 雅之
2023/11/30

プラス思考の経済効果 【第21回】「阪神日本一の経済効果」

プラス思考の経済効果 【第21回】 「阪神日本一の経済効果」   関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩   1 はじめに 2023年11月5日、阪神タイガース(以下「阪神」といいます)はオリックス・バファローズ(以下「オリックス」といいます)との「関西ダービー」を制して38年ぶりの日本一になりました。阪神ファンは歓喜に沸き返っています。今回は阪神が日本一になったことによる経済効果について解説しましょう。   2 阪神とオリックスのリーグ優勝の経済効果 今年阪神は18年ぶりのセ・リーグ優勝を達成し、オリックスは3年連続でパ・リーグの優勝を果たしました。その経済効果を最初に紹介しましょう。以下は項目別の直接効果の金額です(阪神の金額については、連載【第20回】もあわせてご覧ください)。 〈阪神とオリックスの優勝による経済効果〉 阪神とオリックスの優勝による経済効果の計算の基になる直接効果の主な項目と金額について、上記の表から検証してみましょう。 まず、阪神もオリックスもファンの飲酒代が1番多いのが分かると思います。つまり、ファンは応援するチームが勝利すると、気分が高揚して、飲み屋やビヤホールなどの外でも自宅でも飲酒量が増加するのです。本稿では、1人1回の飲酒料金を平均約3,350とし、優勝するとファンはシーズンとクライマックスシリーズを通して3回は飲酒回数を増やすと仮定して計算しています。 続いては、やはり球場に応援に来てくれる観客の消費額です。チケット代、交通費、飲食費、グッズ代などは2番目に大きな消費額になっています。 3番目は、百貨店などの「優勝祝賀セール」です。今年の阪神リーグ優勝の翌日には阪神百貨店には開店前から約2,000人が行列を作りました。日本シリーズに勝って日本一になった時も阪神百貨店は「日本一祝賀セール」を開催しましたが、やはり開店前に約2,000人の行列ができました。オリックスの優勝が決まった時も近鉄百貨店がセールを行いました。 今年の9月の阪神百貨店の売上は対前年同月比で58.6%の増加、阪急百貨店は26%の増加となりました。近鉄百貨店のオリックス優勝記念セールによる9月の売上増加額は対前年同月比で22.7%でした。そして、大阪では阪神百貨店と近鉄百貨店だけではなく、ほとんどの百貨店の9月の売上が対前年比で大幅なアップを記録しました。さらに多くのスーパーや商店街でも祝賀セールを開催して売上を伸ばしました。つまり、大阪では、優勝チームに関係した百貨店だけではなく、ほとんどすべての百貨店、多くのスーパー、商店街も関西の球団(特に阪神)が優勝すると、その経済効果の恩恵を受けるのです。これが関西の野球ファンの特徴です。 なお、オリックスの直接効果の項目で阪神を上回っているのは株価上昇による消費増加効果で、やはり近鉄グループホールディングスの株式会社としての大きな影響力が表れています。 阪神の経済効果がオリックスよりも大きいのは、阪神ファンが全国で約950万人、他方オリックスファンが約200万人と推定されているので、ファンの人数の相違が根本的な理由だと考えられます。また、阪神は18年ぶりの優勝で大いに盛り上ったことも影響しています。特に、阪神ファンは道頓堀に飛び込む人も出てくるなど非常にテンションが高いようで、喜ぶ時は財布のヒモが緩むのでしょうか。オリックスの優勝は3年連続で、ファンは優勝慣れしていて、盛り上がりが阪神ファンほどではなかったのかもしれません。 これらの消費額を基にして「産業連関分析」で経済効果を計算したところ、関西地域での優勝の経済効果は、阪神が約872億円、オリックスが約323億円となりました。   3 日本シリーズ「関西ダービー」の経済効果 阪神とオリックスの関西同士の対戦による日本シリーズで関西地域は大いに盛り上がりました。日本シリーズの直接効果の項目と金額は以下の通りです。 〈日本シリーズの経済効果(阪神・オリックス共通)〉 シーズンとクライマックスシリーズの球場での入場料などの売上は、基本的に主催球団の収入になりますが、日本シリーズの入場料の収入は主催者の一般社団法人日本野球機構(NPB)の収入になります。そして、その入場料の収入の一部が両球団と選手に分配されることになります。   4 阪神日本一の経済効果 阪神が日本一になった経済効果を、阪神のセ・リーグ優勝の経済効果、オリックスのパ・リーグ優勝の経済効果、そして日本シリーズ「関西ダービー」の経済効果の合計額で計算すると、以下の通り全国で1,449億円、関西地域で1,304億円となりました。つまり、関西チーム同士の日本シリーズは、大阪を中心とした関西地域に大きな経済効果をもたらしたのです。 〈全国の経済効果〉 〈関西地域の経済効果〉   5 まとめ 阪神のセ・リーグ優勝、オリックスのパ・リーグ優勝、阪神の日本一の経済効果をまとめると次のようになります。 阪神とオリックスの「日本シリーズ~関西ダービー~」は阪神の日本一で終わりましたが、関西地域は大いに盛り上がり、経済効果は大きな金額を記録しました。この勢いを来年の大阪・関西経済も引き継ぎ、日本経済の活性化につないでいってほしいと願っています。 (了)

#No. 546(掲載号)
#宮本 勝浩
2023/11/30

《速報解説》 「企業のサステナビリティへの取組み及び監査等委員会の関与の在り方〈人的資本編〉」が監査役協会から公表される~サステナビリティ等と関連付けて人材戦略の議論がされているプライム市場上場会社は41.2%~

《速報解説》 「企業のサステナビリティへの取組み及び監査等委員会の関与の在り方〈人的資本編〉」が監査役協会から公表される ~サステナビリティ等と関連付けて人材戦略の議論がされているプライム市場上場会社は41.2%~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年11月27日、日本監査役協会 監査等委員会実務委員会は、「企業のサステナビリティへの取組み及び監査等委員会の関与の在り方 〈人的資本編〉」を公表した。 「人的資本」に関する議論を整理し、有価証券報告書における開示及びサステナビリティに関するアンケート結果が記載されている。 なお、2022年12月23日には、「企業のサステナビリティへの取組みおよび監査等委員会の関与の在り方 〈現状分析編〉」が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 人的資本とは 「人的資本」とは、人材を付加価値創造の源泉である「資本」として捉える表現である。 「人的資本可視化指針」では、「人的資本」について、「人材が、教育や研修、日々の業務等を通じて自己の能力や経験、意欲を向上・蓄積することで付加価値創造に資する存在であり、事業環境の変化、経営戦略の転換にともない内外から登用・確保するものであることなど、価値を創造する源泉である「資本」としての性質を有することに着目した表現である。」としている。 従前からの人材への取組みを「人的資本」という観点から捉え直し、人材戦略と企業戦略を関連付けて中長期的な企業価値向上に結びつけていくこと、さらにそれらの取組みを対外的に開示することが求められているとしている。   Ⅲ 人的資本経営の取組み 人的資本経営を実践していくには、「経営戦略と連動した人材戦略」と「人的資本の情報開示」の取組みが重要である。 「経営戦略と連動した人材戦略」の取組み例として、トップのコミットメント、従業員との対話、バリューチェーンにおける取引先等との連携などが記載されている。 「人的資本の情報開示」については、社内環境整備方針、自社が直面する重要なリスクと機会などについて、取締役・経営層レベルで密な議論を行った上で、自ら明瞭かつロジカルに説明することが期待されている。   Ⅳ 有価証券報告書における人的資本情報の開示 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等について説明し、2022年7月から2023年6月末までに提出された公開会社の有価証券報告書3,858社の分析結果が記載されている。 例えば、「管理職に占める女性労働者の割合」は、平均で9.0%であったとのことである。 アンケート結果も記載されている。 例えば、サステナビリティの目標等が中長期経営計画に組み込まれているかについては、「中期経営計画等(2025年まで目安)」に組み込まれているとする会社(78.5%)が最も多かったとのことである(前回の調査と比較して10.1ポイント増加)。 また、取締役会のアジェンダにサステナビリティに関する議題が含まれていることがあるかについては、85.2%の会社が「ある」と回答し、前回から11.3ポイント増加したとのことである。 有価証券報告書の「従業員の状況」の記載事項として、「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」、「労働者の男女の賃金の差異」を記載することが義務付けられたが、そのほかに開示している人的資本に関する目標(KPI)などとしては、「従業員の状況(男女比率、平均年齢、平均勤続年数、平均給与など)」が66.6%、次に「人材教育への取組み、社員研修の内容・目標・実績など」が55.3%、「働き方改革への取組み(多様な働き方、ワークライフバランスなど)」が48.2%と続いているとのことである(有価証券報告書以外の開示媒体での開示も含めて質問)。 人材戦略に関して、採用計画や人員配置といった従来の枠を超えて、サステナビリティや中長期的な事業戦略と関連付けた議論が取締役会において行われているかについて質問したところ、「議論されている」会社は、プライム市場上場会社で41.2%にのぼり、スタンダード市場上場会社やグロース市場上場会社においても25~28%ほどあったとのことである。   Ⅴ 株主総会での株主からの提案・質問 直近の株主総会において、サステナビリティに関する株主提案があったかについて質問したところ、「なかった」会社が98.1%であったとのことである。 同じく直近の株主総会において、サステナビリティに関する質問があったかについては、「なかった」会社は87.5%であるとのことである。   Ⅵ 今後の課題 今後の課題として次のことが記載されている。 (了)

#阿部 光成
2023/11/28

《速報解説》 四半期決算短信の一本化に伴い、東証が「四半期開示の見直しに関する実務の方針」を公表~1Q・3Qの四半期決算短信の監査人によるレビューは原則任意~

《速報解説》 四半期決算短信の一本化に伴い、 東証が「四半期開示の見直しに関する実務の方針」を公表 ~1Q・3Qの四半期決算短信の監査人によるレビューは原則任意~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年11月22日、東京証券取引所は、「四半期開示の見直しに関する実務の方針」(以下「実務の方針」という)を公表した。 「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が2023年11月20日に成立し、2024年4月1日以後に開始する四半期から四半期報告書が廃止され、半期報告書の提出が義務付けられることとなる。 金融商品取引法上の四半期報告書(第1・第3四半期)は廃止され、四半期開示については、原則として、東京証券取引所の規則に基づく四半期決算短信に一本化されることとなるので、上記の方針が公表されたところである。 今後、制度要綱を公表のうえ、パブリック・コメント手続を実施する予定であり、その際には、改めてお知らせするとのことである。 また、金融庁、企業会計基準委員会及び日本公認会計士協会などの関係者において、今回の見直しに伴う必要な検討が進められていることから、それらの動向を踏まえ、本実務の方針の一部を変更して取引所の規則改正等の手続を進める可能性があるとのことである。 なお、日本公認会計士協会から次のものが公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 1Q・3Q決算短信の開示内容 1 サマリー情報 サマリー情報の内容として次の記載がある。「サマリー情報の変更イメージ」が記載されている(実務の方針14ページ)。 2 財務諸表及び注記事項など(添付資料) 連結貸借対照表、連結損益計算書及び連結包括利益計算書を開示する。 キャッシュ・フロー計算書は、投資判断に有用な情報として、投資者ニーズに応じた開示を要請する。 「財務報告の枠組みのイメージ」が記載されている(実務の方針13ページ)。 現行の注記事項に「セグメント情報等の注記」「キャッシュ・フローに関する注記」を追加し、次のようにする。 次の事項の開示についても記載されている。 「投資判断に有用と考えられる情報」の具体例が示されている。   Ⅲ 1Q・3Q決算短信の開示タイミング 1Q・3Qは、短信に一本化されることから、決算短信において開示を予定している事項(義務付けられる事項(実務の方針10ページ)のほか、投資判断に有用な情報として開示する事項(実務の方針11ページ)を含む)が定まった場合に開示する。   Ⅳ レビューの一部義務付け 1Q・3Qの四半期決算短信については、監査人によるレビューは、原則として任意とする。 監査人のレビューが行われる場合、レビュー対象は四半期連結財務諸表及び注記と記載されている(実務の方針13ページの※3を参照)。 ただし、会計不正等により、財務諸表の信頼性確保が必要と考えられる場合には、監査人によるレビューを義務付けるとし、義務付けの要件が記載されている(実務の方針16ページ)。 レビュー(任意でのレビューを含む)は、準拠性に関するレビューを基本としつつ、新制度の財規等に準拠し、開示を省略しない場合には、適正表示に関するレビューとすることも考えられるとのことである。 「新制度の財規等」については、実務の方針13ページを参照していただきたい。 また、「適正表示の枠組み」と「準拠性の枠組み」の定義、保証水準及びレビュー報告書の文言イメージは、実務の方針17から19ページに記載されている。 「適正表示の枠組み」と「準拠性の枠組み」の相違などについては、非常に分かりにくいとの意見が多く聞かれたとのことから、日本公認会計士協会は、前述の「東京証券取引所「四半期開示の見直しに関する実務の方針」の公表について(お知らせ)」を公表し、図表などを用いて詳細に解説している。   Ⅴ エンフォースメント 取引所における開示に係る審査にあたっては、上場会社への確認が基本となるが、取引所において、エンフォースメントをより適切に実施していくため、監査人との連携を強化し、会計不正の概要を早期に把握できる仕組みを構築する。 法令上の不公正取引(風説の流布)の禁止についても、適切に理解されるよう周知を行う。   Ⅵ 見直し後の2Q・通期決算短信の取扱い 2Q・通期は、法定開示が存続することから、2Q・通期の決算短信については、現行の取扱いを維持し、法定開示(半期報告書・有価証券報告書)に対する速報という位置付けも変わらない。 2Q・通期の短信は、レビュー・監査の対象外とする(1Q・3Qにおいて、規則によりレビューが義務付けられる場合も同様)。 1Q・3Q短信との連続性を踏まえて、「中間決算短信」等ではなく、「第2四半期(中間期)決算短信」とする。 開示内容については次のとおりである。   Ⅶ 事業環境の変化に関する開示のポイントなど 事業環境の変化の発生後速やかに、影響の見込まれる領域の事業規模や利益感応度等の投資判断の前提となる客観的な事実を開示することや、影響を把握次第、その影響に関する定性的又は定量的な情報について適時に開示することが望まれるとのことである。 開示が望まれる事項の例、期待される開示のタイミングなどが記載されている。 また、バスケット条項の補足的説明の見直し(イメージ)が記載されている(実務の方針29ページ)。   Ⅷ 四半期開示の見直しに伴う監査及び四半期レビュー契約書への影響 冒頭で述べたとおり、2023年10月20日に開会した第212回臨時国会において、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が11月20日に成立している。 金融商品取引法(以下「金商法」という)の改正事項のうち、四半期報告書制度の廃止(金商法24条の4の7、24条の4の8の削除)は、2024年4月1日以降に開始する四半期から施行される(金融商品取引法等の一部を改正する法律附則1条3号、2条1項)。 上場会社(12ヶ月決算の場合を想定)との間の監査及び四半期レビュー契約書について、2023年10月1日以降に開始する事業年度に係るものが、当該改正の影響を受けるとのことである。 次の例が記載されている。 このため、上場会社との間で、2023年10月1日以降に開始する事業年度に係る監査及び四半期レビュー契約書を締結する場合、例えば、法規・制度委員会研究報告第1号「監査及びレビュー等の契約書の作成例」様式1~3の契約書において、「1.本業務の目的及び範囲」や「4.監査報告書等の提出時期」等の記載の調整や、場合によっては法規・制度委員会研究報告第1号「監査及びレビュー等の契約書の作成例」の改正後に覚書等で内容を追加することが必要となるとのことである。 (了)

#阿部 光成
2023/11/27

《速報解説》 国税庁、インボイス制度に関し「多く寄せられるご質問」全13問を公表~従業員立替や出張旅費の取扱いなど、一部柔軟な対応が可能であることが明らかに~

《速報解説》 国税庁、インボイス制度に関し「多く寄せられるご質問」全13問を公表 ~従業員立替や出張旅費の取扱いなど、一部柔軟な対応が可能であることが明らかに~   税理士 石川 幸恵   令和5年11月13日、国税庁はホームページで、適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」)に関し「多く寄せられるご質問」全13問を公表した。 今回の公表資料では、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(以下、「インボイスQ&A」)」のうち、「問合せの多いQ&A TOP10」とそのリンクのほか、「多く寄せられるご質問」として追加問や既存問の改訂である合計13問が収録されている。「多く寄せられるご質問」はインボイス制度が開始されて1ヶ月半という時期を反映し、実務に寄り添った問が中心となっている。特に下記の4点に関しては、制度開始前から運用面での困難が予想されていた事項について、柔軟な対応が可能であることが明らかとなった。   ◆買手による適格請求書等、区分記載請求書の記載事項の修正 適格請求書等の記載事項に誤りがあったときは、売手が修正した適格請求書等の交付をするのが原則であり、買手が正しい事項を記載した仕入明細書を作成して売手の確認を受ける方法も可能とされてきた。そのため、架電により修正事項を伝えてお互いに適格請求書や適格請求書の写しに加筆・修正することは不可と考えられてきた。 問⑥では、受領した適格請求書に買手が自ら修正を加えたものであったとしても、その修正した事項について売手に電話等で修正事項を伝え、売手が保存している適格請求書の写しに同様の修正を行ってもらえば、その書類を保存することで仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えないとされた。 ただし、連絡により売手・買手両者が修正さえすれば、どの記載項目についても追記・修正が可能なのかはまだ疑義が残るところである。 区分記載請求書については、今後も「軽減対象資産の譲渡等である旨」と「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額」について受領者が自ら請求書等に追記して保存することが認められる。   ◆適格請求書発行事業者が交付する適格請求書としての記載を満たさない書類の扱い 適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号のない請求書等についても仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けられることが示された。 特に10月初旬の制度開始直後には、適格請求書発行事業者の登録番号は書かれているものの、消費税率や消費税額の記載が漏れているなど適格請求書としての記載事項を満たさない領収書やレシートが見受けられた。売手に連絡をして修正を受けることが難しい場合は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けることになろう。   ◆従業員立替 経費を立て替えてもらった場合は、立替払いをした者宛の適格請求書及び立替払いをした者が作成した立替金精算書を保存することで仕入税額控除が可能とされている(インボイスQ&A問94、消基通11-6-2)。 このため、従業員が小売店などで事業に必要なものとして消耗品を購入した際に、適格簡易請求書の宛名が会社ではなく従業員本人となっていた場合には立替金精算書が必要と考えられてきたが、従業員の名簿等(電子データによる名簿も含む)の保存が併せて行われていれば、従業員が宛名となった適格簡易請求書の保存により仕入税額控除が認められることが確認された。   ◆実費精算の出張旅費 従業員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、通常必要であると認められる部分の金額については、適格請求書の交付を受けることが困難な取引として一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる(消令49①、消規15の4)。旅費に関しては、旅費規程で、概算払いではなく交通機関やホテルから交付される領収書等の提出を必要とする実費精算としている企業も多く、適格請求書ではない新幹線の利用票やホテルの宿泊予約の資料が提出された場合には仕入税額控除ができないのではないか、という疑義があったが、問⑪にて、実費精算に係るものであっても、その旅行に通常必要であると認められる部分(所得税法基本通達9-3に基づき判定)の金額については帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能であることが確認された。 なお、出張旅費につき帳簿保存のみで仕入税額控除を受ける場合は、帳簿に「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨」の記載が必要(インボイスQ&A問110)となることにも注意されたい。   (了) ↓お勧め連載記事↓

#石川 幸恵
2023/11/24

プロフェッションジャーナル No.545が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年11月22日(水)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.545を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/11/22
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