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〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2025年8月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2025年8月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年8月1日から8月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 なお、四半期ごとの速報解説のポイントについては、下記の連載を参照されたい。   Ⅱ 金融商品取引法関係 次のものが公布されている。 〇 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第75号) (内容:「金融商品会計に関する実務指針」(改正移管指針第9号)、「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)等の修正を公表したこと等を受けもの) (了)

#No. 635(掲載号)
#阿部 光成
2025/09/11

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第13回】「退職予定者による機密情報の持出しと懲戒解雇の可否」

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第13回】 「退職予定者による機密情報の持出しと懲戒解雇の可否」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社の従業員で近々退職を予定している者(A)が当社の機密情報をGoogle DriveのAの私的アカウント領域にアップロードしたことが判明しました。当該機密情報が第三者に漏えいした事実は確認できていません。 Aは、情報のアップロードの目的は、退職日までの期間を利用して自己研鑽を図るためであり、第三者に開示するためではないと述べていますが、Aを懲戒解雇することは可能でしょうか。 【Answer】 Aが持ち出した情報の重要性などにもよりますが、Aによるアップロードは不正の目的によるものであると認められる可能性が高いのではないかと思われます。 よって、従業員Aを懲戒解雇するという判断には合理性が認められると思われます。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 1 はじめに 退職予定者による機密情報持出し・漏えい(以下、「持出し等」という)は、企業にとって重大な問題である。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査報告(※1)によると、営業秘密の漏えいの経路のうち「中途退職者(役員・正規社員)による漏えい」の割合は、同機構が2020年度に実施した調査の結果(36.3%)よりも減少したものの17.8%を占めるものであり、「契約終了後又は中途退職した契約社員・派遣社員等による漏えい」(14.6%)及び「定年退職者による漏えい」(12.0%)を合わせると44.4%にものぼる。 (※1) 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「『企業における営業秘密管理に関する実態調査2024』調査実施報告書」(2025年8月) そこで、本稿においては、退職予定者による機密情報の持出し等と懲戒解雇について論ずる。   2 機密情報の持出し等を理由とした懲戒解雇の判断基準 まず、機密情報の持出し等を理由とした懲戒解雇はどのような場合に認められるか。 この点、日本クリーン事件(東京高判令和4年11月16日)は、機密情報の持出し等を理由とした懲戒処分の検討にあり、「(1)当該行為の内容、性質、(2)行為の目的やそれが行われた経緯、(3)漏えいされた情報の真実性、(4)当該行為による結果やその後の影響、(5)控訴人における情報管理の状況、(6)処分対象者の言動・態度と再発の可能性、(7)処分対象者の処分歴の有無とその内容等といった点を順次検討した上で、これらの事情を総合して、懲戒処分の相当性を判断する」とした。 機密情報の持出し等を理由になされた懲戒解雇は、機密情報の漏えいが認められた場合には有効と判断されることが多い。一方、機密情報の漏えいがないことが確認された、ないし、漏えいの事実が確認できなかった事案においても懲戒解雇が有効とされた例もある(※2)。 (※2) 退職予定者が会社の技術資料を自宅に配送して持ち出した行為についてなされた懲戒解雇が有効とされた事案(中外爐工業事件・大阪地判平成13年3月23日)や退職予定者が会社のデータファイルを社外のクラウドストレージの自己の私的アカウント領域にアップロードした行為についてなされた懲戒解雇が有効とされた事案(伊藤忠商事ほか事件・東京地判令和4年12月26日)など。 機密情報の漏えいが認められなかった事案においても、機密情報の持出しに留まり漏えいに至らなかったのは、単なる偶然か、会社において適切な情報管理措置がとられていたために過ぎないことが多いことから、機密情報の漏えいが確認されなかったことのみをもって懲戒解雇に値しないと評価することは妥当ではない。 しかし、懲戒解雇が最も重い懲戒処分であることに鑑みると、退職予定者による機密情報の持出しについて懲戒解雇が認められるためには、機密情報の持出しにより会社が漏えいがなされた場合と同等の危険に晒されるものであったと評価できる必要があると思われる(※3)。 (※3) 日産センチュリー事件(東京地判平成19年3月9日)は、営業日誌の写しを自宅に持ち帰った行為について、第三者への開示と同等の危険に晒したとはいえないとして懲戒事由該当性を否定した。 具体的には、退職者が不正の利益を得るか、他人に損害を加える目的(不正の目的)で機密情報を持ち出す場合には情報の漏えいがなされる可能性が高く、かつ、持ち出された機密情報が会社にとって重要なものであれば漏えいがなされた場合に会社がダメージを受ける可能性が高いこと、すなわち、会社を機密情報の漏えいと同等の危険に晒すものと評価できることから、上記(1)ないし(7)のうち特にこれらの要素が認められるかがポイントになってくるのではないかと思われる。 このうち、不正の目的については、行為者の主観の問題であることなどから認定が難しく、実務上よく問題となる。よって、以下においては不正の目的の認定のポイントについて、退職予定者がよく持ち出す弁明と関連して説明する。   3 不正の目的 (1) 退職予定者が「会社の担当業務を遂行するために持ち出した」と弁明した場合 退職予定者から、情報を持ち出したのは担当している業務を遂行するためである、などと弁明がなされることがあるが、以下のような事情が認められる場合、かかる退職予定者の弁明にもかかわらず、不正の目的が認められることが多い。 上記④については、従業員が担当する業務によっては、担当業務に直接関係のない情報であっても閲覧等の必要性が認められる場合もあるという反論も考えられる(※4)。しかし、退職予定のない者についてはともかく、退職予定者が退職日までに遂行する業務は業務引継が完了するまでの限定的なものに過ぎない場合が多いであろうから、必要とされる情報も限られると思われる。 (※4) 従業員X(退職予定者ではない)が会社の顧客A社のサーバー内の資料を閲覧又はダウンロードした事案において、Xにアクセスが認められていたのは治験部門に関する情報だけであるにもかかわらず、Xが閲覧・ダウンロードした資料の中には治験部門以外の部門に関するものが含まれていた。会社は、治験業務関連の資料以外の資料はXの業務との関連が薄いと主張したが、裁判所は、XがA社の既存顧客及び新規顧客に対する営業活動を担当していたことから、将来の顧客の要望に備えてA社業務に関する幅広い知識を得ることは業務の一環といえるため、業務との関連が薄いとは認められないと判示した(Velocity Global Japan事件(東京地判令和6年9月25日))。 (2) 退職予定者が「自己研鑽のために持ち出した」と弁明する場合 退職者から、情報の持出しの目的は退職日まで自己研鑽を行うためであり、第三者に開示する目的ではないといった弁明がなされることがあるが、自己研鑽のためであれば単に閲覧すれば足りるものであり持ち出す必要まではないことから、不正の目的が認められる場合が多いと思われる。 また、仮に、持出し行為が自己研鑽のためであったとしても、退職予定者による自己研鑽とはすなわち退職後の自身のキャリア形成に向けられたものに過ぎず、専ら退職予定者の私的利益に向けられたものであるから、不正の目的を認定してよいのではないかと思われる(※5)。 (※5) 伊藤忠商事事件(東京地判令和5年11月27日)は、退職予定者の機密情報の持出し等(データのアップロード)について、退職予定者が主張するとおり、当該アップロード行為が転職先会社での業務遂行に直接役立てるための行為ではなく、自らの「学び直し」に向けられた行為であったとしても、退職後の自身のキャリア形成に向けられたものに過ぎず、専ら当該退職予定者の私的利益に向けられた公私混同行為というほかはないとして、就業規則上の禁止行為「公私混同」に該当するとした。 (了)

#No. 635(掲載号)
#柳田 忍
2025/09/11

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第22回】「成年後見制度の改正」~法定後見の終了~

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第22回】 「成年後見制度の改正」 ~法定後見の終了~   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 成年後見制度の改正議論では、法定後見の利用を終了しやすくする方向で改正されると聞きました。どのような改正になるのでしょうか? 【A】 成年後見制度への批判として「一度利用すると本人が亡くなるまで利用を終了できない」というものがあります。こうした批判を受けて改正議論では、法定後見の終了についての規律の見直しや、法定後見の利用に期間を設けることなどが検討されています。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ●   1 法定後見制度の利用の終了に関する現行の規律と批判 現行の規律では、「判断能力を欠く状態が通常である」などの法定後見制度の利用の原因となった事由が消滅したときは、家庭裁判所は本人や配偶者、四親等内親族などの請求により後見開始等の審判を取り消さなければならないとされています(民法10条、14条、18条)。よって、現行法でも法定後見制度の利用を一度開始しても、終了できないわけではありません。しかし、「判断能力を欠く」などの状態に陥った原因が高齢化に伴う認知症によるものである場合には、現在の医療や科学技術では大幅に回復することは見込めず、事実上本人が亡くなるまで利用が継続することにつながっていると指摘されています。 成年後見制度は認知症になったら誰もが利用することになるわけではなく、何らかのきっかけ(動機)があって利用につながっています。言い換えると、きっかけがなければいろいろと不都合はありながらも、親族等のサポートを受けながら本人はなんとか生活ができていたこともいえます。 【成年後見制度の利用の動機】 筆者が仕事上で目にすることが多いのは、不動産の処分や相続手続をきっかけとする成年後見制度の利用です。 不動産の処分については、高齢になった親が1人では生活することが困難となり、高齢者施設に入所することになったとします。それまで親が住んでいた家については、管理コストもかかりますし、施設の入居費用や生活費も確保する必要があるため売却を検討することになります。もし親が認知症により判断能力を失っていると売却ができないため、どうしても売却を進めたい場合には成年後見制度を利用することになります。 相続手続については、被相続人が遺言を残していなければ相続人間での遺産分割を行うことになります。相続人のうちに判断能力を喪失している者が1人でも存在していると遺産分割を進めることができないため、当該相続人に成年後見人の選任を申し立てる必要があります。特に被相続人が高齢で子供がいないケースでは、兄弟姉妹が相続人になりますが、認知症を患っている相続人が存在するケースが少なくありません。 不動産の処分や相続手続を利用のきっかけとする場合、不動産の売却や遺産分割が済めば法定後見制度の利用を終了させたいと本人の親族等が考えることが多いようです。しかし、本人の判断能力が回復していなければ、「後見制度の利用の原因となった事由が消滅した」とはいえず、法定後見の利用を終了させることができません。これは成年後見制度が判断能力の衰えた本人を保護することを目的としていることを考えるとやむを得ないともいえますが、金銭的、心理的なコストが少なくないことから批判が寄せられがちでした。   2 法定後見制度の終了に関する規律の見直し 改正議論では、法定後見制度が終了する場合として、本人の判断能力が回復した場合のほか、家庭裁判所が「必要がなくなった」と判断した場合は法定後見を終了させることができる規律を設けることが検討されています。【第21回】で解説したとおり、改正議論では現行のように成年後見人(保護者)に対して包括的な代理権を付与するのではなく、個別に必要となる代理権等を付与する案が検討されています。仮にこの案が採用されると、「不動産の処分」について代理権を付与された成年後見人が、不動産の売却を完了した場合には法定後見を利用する「必要がなくなった」として法定後見を終了させることが可能となるのです。 この案が採用されれば「一度利用すると本人が亡くなるまで利用を終了できない」という点は解消されるかもしれませんが、不動産の処分により多額の金銭を得た本人のサポートを本当に終了してよいのかという懸念もあります。今後も議論が続いていくものと思われます。   3 法定後見についての期間の設定 改正議論では、法定後見に期間を設定して、期間の満了時点で法定後見制度の利用の継続の必要性があると成年後見人等が判断する場合には、更新の申立てをさせて家庭裁判所が継続の必要性を判断する案や、法定後見の開始から一定期間後に後見人等から本人の判断能力や法定後見の必要性について報告をさせて、家庭裁判所が法定後見の継続の必要性を判断する案が議論されています。 この案が採用されれば定期的に法定後見の利用の必要性にチェックが入ることになりますが、後見人等や家庭裁判所の事務負担が増すことになることが懸念されています。 法定後見制度の終了についての規律の見直しは、今回の改正でも重要なポイントといえます。改正の動向に注目が必要です。 (了)

#No. 635(掲載号)
#北詰 健太郎
2025/09/11

プロフェッションジャーナル No.634が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年9月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.634を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/09/04

monthly TAX views -No.151-「はじまるか法人税増税の議論」

monthly TAX views -No.151- 「はじまるか法人税増税の議論」   東京財団 シニア政策オフィサー 森信 茂樹   8月17日付日経新聞は、「与野党、法人増税論が浮上 政策財源探し『唯一の選択肢』 賃上げとの整合性 焦点」と題する記事を掲載した。にわかに(?)浮上した法人税増税議論について、その背景を探ってみたい。 *  *  * わが国の法人税率は約40年間にわたって段階的に引き下げられ、現在の法人税率は、最高時より20ポイント程度低い23.2%で、実効税率ベースでは29.74%と、先進諸国と比べて遜色ないレベルになっている(※)。 (※) 財務省ホームページ「法人課税に関する基本的な資料」 累次にわたって引き下げられてきた理由は2つ。まずは、国際的な税の引き下げ競争への対応というものであった。冷戦終息前後の80年代後半からはじまった「税の引き下げ競争」に対抗するには、わが国でも法人税率を引き下げて「立地の競争力」を確保せざるを得ないということが主たる目的であった。 しかし先進諸国の法人税率は現在20%台に収束している。背景には、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」の「第2の柱」による多国籍企業向けの15%最低税率が合意、導入されたことがある。「底辺への競争」(Race to the bottom)には歯止めがかかったということだ。 法人税率の引き下げにはもう1つの理由があった。それは、成長志向の企業行動への変容を促すという国内経済への目標である。 *  *  * 失われた30年と揶揄されるわが国経済だが、その間の企業行動については令和6年度税制改正大綱で以下の指摘がされている。 さらに令和7年度税制改正大綱には、以下の記載がある。 これは、「課税ベースを拡大して税率を引き下げる」というこれまでの法人税制改正の哲学からの大きな転換といえる。 *  *  * このような状況の中で浮上してきたのがガソリン税暫定税率廃止問題である。秋の臨時国会で法案の成立を目指して与野党間で協議が続いているが、恒久財源の出口は見えていない。 暫定税率の廃止には年間1.5兆円の財源が必要で、そのうち地方財源が5,000億円である。2009年に一般財源化されたとはいえ、予算配分が実質的に道路インフラを優先しているといわれている。昨今問題となっている社会インフラの劣化への対応など恒久財源の確保は必須で、減税に地方自治体は強く反発している。 一方、法人税については、租税特別措置(以下、租特)とEBPM(証拠重視の政策)との関係が指摘されており、自民党は、「インセンティブ措置については、効果が立証されることが必要」との態度をとっている。政策効果のある租特は延長・拡充するが、そうでない租特は廃止・縮小するという方針である。 世界的に見ると、自国中心主義の風潮の下で国家資本主義的な政策が目立って導入されている。租特によりわが国の基盤となる最先端分野への集中的・重点的な投資を促進し競争力をつけることの重要性は高い。とりわけ米国トランプ政権が導入した即時償却制度は投資促進効果があり、わが国でも議論となるだろう。 経済界としては、令和8(2026)年4月1日に開始する事業年度から防衛特別法人税が課税される予定のうえ、政府の賃上げ要請との整合性が取れないなどと増税に簡単には了承できないであろう。しかし税率を引き下げてきたが賃上げをしてこなかったという事実は重いともいえる。 一方で恒久財源確保の必要性は、ガソリン税暫定税率だけでなく、高校無償化、防衛費増額などますます高まってくる。「財源調達機能としての法人税見直し議論」の帰趨は見えない。 (了)

#No. 634(掲載号)
#森信 茂樹
2025/09/04

日本の企業税制 【第142回】「中間取りまとめで示された“研究開発税制等の在り方”の方向性」

日本の企業税制 【第142回】 「中間取りまとめで示された“研究開発税制等の在り方”の方向性」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 魚住 康博   〇経済産業省研究会が報告書公表 経済産業省は8月29日、「研究開発税制等の在り方に関する研究会」の中間取りまとめを公表した。同研究会は、イノベーション・環境局が主管し、学者や経済界関係者が委員を務めたほか、12の業界団体や10の関係府省庁等がオブザーバー参加して報告書を取りまとめた。検討にあたっては、「産業構造審議会イノベーション・環境分科会イノベーション小委員会中間とりまとめ~『科学とビジネスの近接化』時代のイノベーション政策~」で示された方向性を踏まえて、今年度末で適用期限を迎える研究開発税制等の在り方について、本年5月の設置以降、合計5回にわたって議論を重ねた。 その結果として、「科学とビジネスの近接化」時代における「研究開発税制」、「イノベーション拠点(ボックス)税制」、「オープンイノベーション促進税制」、「外国組合員特例税制(PE課税特例)」の検討の方向性を後述の通りに示すとともに、今後の税制改正プロセス等において、これらを踏まえた制度が構築されるとともに、税制以外の政策も適切に講じられることにより、わが国の科学技術・イノベーション環境の発展に繋がっていくことが期待されている。 なお、中間取りまとめで示された方向性については現時点のものであり、今後の環境変化等を踏まえ、適時適切に、EBPM の観点も含め、検証が行われることが期待されている。   〇研究開発税制の在り方 研究会においては、毎回、有識者や委員等からのプレゼンテーションに基づいて、主要な論点について議論が行われ、第5回会合では中間取りまとめの案文について審議された。研究開発税制の在り方については、次の8つの論点が取り上げられ、方向性が示されている。   〇イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)の在り方 本年6月13日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」での指摘を踏まえ、対象知財を組み込んだ製品・サービスの売却益や合併、分割といった企業再編で承継した知財の取扱い、グループ経営の実態に即した知財の取扱い、実用新案権等を含めた対象範囲の早期見直しによる利便性向上に関する指摘があった。 具体的には、移転価格税制の考え方を活用し所得を決定する制度を構築する一方で、国内での検討と平行して、適切なタイミングでOECDとBEPSルールに準拠しているかの相談や税務当局同士での相談などが必要になることから、「経過措置期間後における、令和7年4月以前に研究開発が完了している場合の取扱い」に関する見直しが必要となる令和9年度税制改正要望において、これらの必要なニーズの実現に向け、来年春頃には制度案を構築すべく、検討を加速すべきであると考えられるとしている。   〇オープンイノベーション促進税制の在り方 更なる成長資金の供給強化、買収や合併等のM&A促進や未上場スタートアップ株式の流動性向上等による出口戦略の多様化等に取り組み、スタートアップ・エコシステムを本格形成する必要がある。 そのため、オープンイノベーション促進税制におけるM&A型に関しては、大企業や既に成長したスタートアップ等の事業会社と、スタートアップの連携を効果的に促し、またスタートアップ等の出口を多様化する観点から、現行制度においてインセンティブが措置されていない吸収合併や50%以下の発行済株式の取得等を対象とすることがオープンイノベーションの促進に有効であると考えられるとしている。   〇海外投資家の外国組合員特例税制(PE 課税特例)の在り方 アメリカ、イギリス、シンガポールにおいては海外投資家によるLP出資が非課税とされ、日本の課税制度と差異がある。海外投資家による投資の障害にならないように、予見可能性の見地から、諸外国の制度とのイコールフッティングを確保することが重要であり、PE 課税特例について、実態に沿わない要件や手続きを見直すことが有効であると考えられるとしている。 (了)

#No. 634(掲載号)
#魚住 康博
2025/09/04

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例78】「除染作業に関する業務のために委託先に支出した金員の損金性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例78】 「除染作業に関する業務のために委託先に支出した金員の損金性」   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、東北地方のとある県における第三の都市に本社を置き、産業廃棄物処理業を営むX株式会社(資本金5,000万円の3月決算法人)において総務部長を務めております。 ご承知の通り2011年の東日本大震災は、東北地方の太平洋側に多大な被害をもたらしました。特に津波による東京電力福島第一原子力発電所の被害は甚大で、近隣地域の放射能汚染への対応は喫緊の課題となりました。わが社も東北地方にある企業の端くれとして、地元再生への貢献を行いたい一心で、除染作業を受注すべく関係自治体を駆けずり回った結果、「汚染状況重点調査地域」の事業をいくつか請け負うこととなりました。 さて、この件に関し先日から所轄税務署の税務調査を受けておりますが、除染作業に関しノウハウのあるY社との業務委託契約に基づきわが社が支払っている支払手数料について、その損金性が問題となっております。すなわち、わが社はY社との間に業務委託契約があり、それに基づき除染作業で生じた廃棄物の処理に必要な圧縮袋をY社から調達したり、除染作業を安全に行うための様々なアドバイスを得ているのですが、税務署側は、そもそもY社との間で業務委託契約書が作成されていないためその内容が不明であり、また、Y社に臨場して反面調査を行ってみてもY社が実際に何を行っているのか分からないことから、重加算税の賦課対象となる架空の経費であると言わざるを得ないと吹っ掛けてきます。 実在する法人であり、かつ除染に関しノウハウのあるY社から様々な便宜を図ってもらったことへの対価の支払いについて、架空経費であるという課税庁の主張は荒唐無稽であると考えるのですが、税法上はどのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。 【A】 法人税法第22条第3項にいう損金の額に算入すべき金額、なかでも同項1号及び2号にいう当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、当該法人の業務との間に関連性を有するもの、すなわち、原告の事業の遂行上必要と認められるものが該当すると解するのが相当といえます。 そのため、法人が支出した金額であっても、その根拠となる業務委託契約書が交わされていないときには、課税庁はその業務内容について、支出した法人に存する証憑書類等のみではなく、支出先に反面調査を行い、十分な根拠書類や証言等により確認を行うことで、その妥当性を検証することになると思われます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 原発事故に伴う放射線被害と除染作業 東京電力福島第一原子力発電所の事故により、環境中に放出された放射性物質を取り除くための除染は、国が直轄事業として行ったもの(「除染特別地域」における事業)のほか、市町村が中心となって行ったもの(「汚染状況重点調査地域」として指定された市町村の事業)がある。国が直轄事業として行ったものの状況は以下のとおりである。 〇国直轄除染の進捗状況地図 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (出典) 環境省除染状況サイト「除染の状況(除染特別地域)」   (2) 損金の意義 この連載においてこれまで度々触れきた事柄ではあるが、再度ここで法人税法における損金の意義について確認しておきたい。 損金の意義について規定している法人税法第22条第3項によれば、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる①~③の金額としている。 法人税法上、費用として損金計上が認められるためには、利益を得るために直接必要なものであるという「必要性の要件」を満たせば十分であり、「通常性の要件」を満たす必要はないものと解されている(※)。 (※) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)350頁参照。   (3) 除染作業に関する圧縮袋等に係る業務のために支出した金員の損金性が争われた事例 それでは本件と同様に、除染作業に関する圧縮袋等に係る業務のために支出した金員の損金性が争われた事例(東京地裁令和6年2月15日判決・TAINSコード:Z888-2685)について、以下で確認してみたい。なお、本裁判例は伏字が多いことにご留意願いたい。 ① 事案の概要 本件は、原告が、平成29年5月1日から平成30年4月30日までの事業年度、課税事業年度及び課税期間につき、総勘定元帳に記載した「支払手数料」及び「外注委託費」の各支出を、法人税の所得金額の計算上損金の額に算入するとともに、消費税の計算上課税仕入れに係る支払対価の額に含めたところに基づき、法人税、地方法人税並びに消費税及び地方消費税の確定申告をしたところ、二本松税務署長から、ア.上記の支払手数料及び外注委託費はその使途が明らかではないから損金の額に算入できず、課税仕入れに係る支払対価の額にも含まれないとして、法人税、地方法人税及び消費税等の各更正処分等を受け、また、イ.上記の支払手数料及び外注委託費について隠蔽又は仮装に該当する事実があったとして、上記各税について各重加算税賦課決定処分を受けたため、上記各更正処分等のうち原告の主張する金額を超える部分及び上記各重加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。 原告は、本件期間において、平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故後の除染作業で生じた廃棄物の減容に使用される圧縮袋「CAH-01」を■■■社に納入していた。■■■社は、平成29年5月1日から平成30年4月30日までの期間において、福島県■■市から除染関連業務の発注を受けた■■■■■■■■■協同組合から同業務の発注を受けた■■■■■■株式会社に対し、原告から仕入れた本件圧縮袋を納入していた。 原告は、■■■社名義の預金口座に、1)平成30年3月30日に540万円、2)同年4月9日に1,143万720円、3)同月27日に157万4,640円を送金した。また、原告は、■■社名義の預金口座に、4)平成30年4月9日に420万120円、5)同月27日に323万6,436円を送金した。 ② 事案の争点 本件事業年度の法人税の所得金額の計算において、原告が■■■社名義の預金口座に「支払手数料」として送金した金額である、1)、2)及び3)合わせて税抜1,704万2,000円と、原告が■■社名義の預金口座に「外注委託費」として送金した金額である、4)及び5)合わせて税抜688万5,700円とを損金の額に算入することができるのか。 ③ 裁判所の判断 なお、本件は控訴されずに確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 本裁判例のポイントは、原告と委託先との間でどのような合意があり、どのような場合に報酬の支払いがなされるとされたのかという点である。 これについて裁判所は、「原告と■■との間では、■■が原告の希望する仕様等の実現のために当該地方自治体等へ働き掛けること、及び、上記仕様等が実現し、原告において物品を販売することができた場合にのみ報酬を支払うことについての合意はあった」と認定した。 それでは実際のところその活動内容はどうであったかであるが、「実際に■■が当該地方自治体に対して何らかの活動をしたか否かについて検討するに、■■取締役の証言内容ないし供述内容によれば、■■の原告に対する報告内容は抽象的なものにとどまっており、現時点においても、■■が原告の希望する仕様等を実現するために、当該地方自治体等に対して何らかの活動をしたとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。」とされ、結論として裁判所は「本件各支出が原告の事業の遂行上必要であったと認めることはできない」ことから、「本件各支出額を損金の額に算入することはできないと解するのが相当」と判断した。 上記の通り裁判所は、「本件各支出が原告の事業の遂行上必要であったと認めることはできない」と判断したが、一方で、それが重加算税の対象となるような架空の支払いであると認めているわけではない。すなわち、「原告において、■■の当該地方自治体等に対する具体的な働き掛けがあったと信じ、それによって■■に依頼した内容が達成されたと考え、その対価としての金員を協議の上、請求書の発行を依頼して支払ったことは、■■との合意に基づく支払及びその前提としての請求書の発行依頼として位置付けるのが相当であるから、これらを国税通則法68条1項にいう隠蔽、仮装と評価するのは相当ではない。」と判断して、課税庁の重加算税賦課決定処分を取り消している。課税庁による重加算税の賦課決定の乱発を戒める事案として、実務の参考になるものと考えられる。   (4) 本件へのあてはめ 法人税法第22条第3項にいう損金の額に算入すべき金額、なかでも同項1号及び2号にいう当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、当該法人の業務との間に関連性を有するもの、すなわち、原告の事業の遂行上必要と認められるものが該当すると解するのが相当といえる。 そのため、法人が支出した金額であっても、その根拠となる業務委託契約書が交わされていないときには、課税庁はその業務内容について、支出した法人に存する証憑書類等のみではなく、支出先に反面調査を行い、証憑書類や証言等によりそれが十分根拠づけられるかにつき確認を行うことで、その妥当性を検証することになると思われる。   (了)

#No. 634(掲載号)
#安部 和彦
2025/09/04

金融・投資商品の税務Q&A 【Q97】「JDRの元本の払戻しが行われた場合の取扱い」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q97】 「JDRの元本の払戻しが行われた場合の取扱い」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○●   1 受益証券発行信託の会計処理と税務上の取扱い (1) 受益証券発行信託の会計処理の改正 受益証券発行信託とは、信託行為において、受益権を表示する証券である受益証券を発行する旨を定めている信託をいい(信託法第185条)、その会計処理は、一般社団法人信託協会が公表している「受益証券発行信託計算規則」(以下「信託計算規則」といいます)に基づいています。信託計算規則においては、これまで信託元本を受益者に分配することが認められていなかったため、受益証券発行信託に係る分配は、すべて利益の分配とされていました。 今般、信託計算規則が改正され、2026年4月1日以後に終了する計算期間より、元本を直接減額して受益者に金銭として分配することができることになりました。 (2) 特定受益証券発行信託の税務 受益証券発行信託は、税務上、原則として、法人課税信託として取り扱われますが、下記の要件を充足するものは特定受益証券発行信託として、集団投資信託に区分されることになります。 そして、特定受益証券発行信託の収益の分配は、所得税法上、配当所得として取り扱われます。上記(1)に記載したとおり、これまでは会計上信託元本を受益者に分配することが認められていなかったため、税務上も分配金のすべてが配当所得として取り扱われていたところ、信託計算規則の改正により元本を直接減額して受益者に金銭として分配することが可能となったため、税務上の取扱いも整備されました。 具体的には、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる金額の範囲に、特定受益証券発行信託の受益権に係るその特定受益証券発行信託の元本の払戻しにより交付を受ける金銭の額が追加されました。   2 本件へのあてはめ 特定受益証券発行信託であるJDR(上場)に係る分配金は、利益の分配として支払われる場合、配当所得に該当することとなりますので、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率で源泉徴収され、確定申告においては、総合課税(所得税及び復興特別所得税として最高税率約46%及び地方税10%)と申告分離課税(20.315%)のいずれかを選択することができます。また、申告不要を選択し、源泉徴収のみで課税関係を完了させることもできます。 2026年4月1日以降は、JDRについて元本が払い戻される可能性があり、その場合、元本の払戻しとして交付される金銭の額は、税務上、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなります。したがって、分配金のうち、利益の分配に係る部分と元本の払戻しに係る部分とを区別する必要があります。 〇JDRとは   (了)

#No. 634(掲載号)
#西川 真由美
2025/09/04

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第75回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第75回】   東洋大学法学部教授 泉 絢也   (3) CARF・日本版CARFの概要③ ア 暗号資産 CARFは、暗号資産(Crypto-Asset)を「暗号化の方法により保護された分散型台帳又は類似の技術に依拠して取引の検証及び安全性の確保を行う価値のデジタル表現」と定義し、ここから中央銀行デジタル通貨、特定電子マネー商品(一定のステーブルコイン)、RCASPが支払や投資の目的として使用できないと適切に判断した暗号資産を除いたものを報告対象暗号資産(Relevant Crypto-Asset)と定義している。 「価値のデジタル表現」とは、暗号資産が価値に対する権利を表章しており、所有権(ownership)又は権利がデジタル方式で他者と取引可能、他者に移転可能であることを意味する。 例えば、暗号技術に基づいて生成されたトークンで、個人が価値を保管し、支払を行うことを可能にするものであり、他者に対する会員資格の請求権や権利、財産権、その他の絶対的又は相対的な権利を表さないものは暗号資産である。 さらに、個人又は事業体に対する会員資格の請求権や権利、財産権、その他の絶対的又は相対的な権利(例えば、 所定の日付、価格、その他の事前に定められた要素で、金融資産や暗号資産を含む資産を購入又は売却するためのセキュリティトークン、デリバティブ契約又は権利)であり、デジタル方式で法定通貨又は他の暗号資産と交換可能な場合、これも暗号資産である。 具体的には、ビットコインなどの典型的な暗号資産だけでなく、法定通貨建のものも含むステーブルコイン、暗号資産の形態で発行されたデリバティブ、ファンジブルなトークンにとどまらないデジタル方式で他者と取引できる収集品、ゲーム、芸術作品、物理的な財産、金融関係の書類に対する権利を表章するような一定のNFT(実際に支払目的や投資目的で使用できるNFT)など、伝統的な金融仲介機関を介さずに分散型で保有及び移転できる資産を包含するものである。 このような暗号資産それ自体の定義は、日本の資金決済法上の暗号資産の定義よりも広いものである(OECD, FOR AUTOMATIC EXCHANGE OF INFORMATION IN TAX MATTERS:CRYPTO-ASSET REPORTING FRAMEWORK AND 2023 UPDATE TO THE COMMON REPORTING STANDARD 13, 22, 49-51(2023))。 日本版CARFにおいても、CARFの内容を踏まえた上で報告対象となるものを「暗号資産等」として定めている。ただし、租税法として独自に定義するというよりも、資金決済法等の規制法の定義を借用する形で設計されている。 日本版CARFにおける暗号資産等とは、①暗号資産(決済2⑭)、②4号電子決済手段(決済2⑤四)、③電子記録移転有価証券表示権利等(金商29の2①八。ただし、資金決済法2条 14 項各号に掲げる財産的価値に限る)である(実特法10の9⑤三、実特令6の19①)。 これは、CRAF上の「暗号資産(Crypto-Asset)」に相当するものを規定する観点から定義されており、「暗号資産(Crypto-Asset)」の性質を有するものとして我が国の国内法において規定されているものが列挙されている(財務省「令和6年度 税制改正の解説」711頁)。 上記②の4号電子決済手段については、通貨建資産に該当しない一定の暗号資産型デジタル資産が想定されていることを踏まえ、本制度の対象とされているが、他方、資金決済法上の他の電子決済手段(決済2⑤一~三)については、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の対象となる「特定電子決済手段等」に該当することとされている(実特令6の8一ニ(1))(財務省「令和6年度  税制改正の解説」711頁)。 上記の定義では、NFTについては特に触れられていないが、NFTは日本版CARFの対象となるのであろうか。 この点について、特定のNFTが、日本版CARFでいうところの暗号資産等に該当するか否かは、個別の事案に応じて、上記①~③に該当するか否かで判断されることになる。一般にNFTと呼ばれているかどうかで形式的に判断されるわけではない。 すなわち、上記①~③のいずれかに該当する場合には、一般にNFTと呼ばれるものであっても日本版CARFの暗号資産等に該当する。 実務上は、金融庁の事務ガイドライン「第三分冊:金融会社関係 16 暗号資産交換業者関係」などの行政解釈を参考にして、個別判断が必要とされる(本連載第2回参照)。 CARFでは「暗号資産(Crypto-Asset)」に該当し、対象になるが、日本版CARFでは「暗号資産等」に該当せず、対象にならない、という事態も起こりうると考える。 日本版CARFにおける「暗号資産等取引」という語についても確認しておこう。 日本版CARFでは、報告暗号資産交換業者等との間でその営業所等を通じて、暗号資産等取引を行った者が一定の報告対象契約を締結している場合には、報告暗号資産交換業者等は、所轄税務署長に対して、報告対象契約に係る特定対象者の氏名や住所など所定の事項を報告しなければならない(実特法10の10①、実特規16の19④)。 上記でいう暗号資産等取引とは、次の①~④を行うことを内容とする契約の締結である(実特法10の9⑤三、実特令6の19 ②)。 これらはいずれも、実体的な「価値の移転」に直結する行為であり、租税回避や課税逃れの温床となりうる。したがって、取引の媒介者である報告暗号資産交換業者等に報告義務を課すことが、制度の中核的な仕組みとなっているのである。 最後に付言しておくが、上記のとおり、日本版CARFが「暗号資産等」の定義を資金決済法等の規制法の定義に依存して定めていることについて、これは、税制設計上の実務的な合理性を重視した結果であろうか。 すなわち、規制法において既に整備された法的定義を援用することにより、租税法における定義構築の負担を軽減し、行政実務における一貫性や整合性を担保する意図があったと考えられる。また、報告対象資産の範囲を明確化することで、報告義務を課される事業者にとっても予見可能性が一定程度確保されるというメリットがある。 言い換えれば、このような手法には、規制法側にすでに存在する又は将来定められる定義に「乗っかる」ことで、主として税制立案担当者や課税当局が定義構築に伴う曖昧性や解釈上の責任を回避しようとする側面があるという見方もできよう。いわば、制度上の責任の一部を他の法分野や所轄官庁に転嫁するかのような設計姿勢が透けて見えるのである。 しかしながら、税制が他の規制法の枠組みに過度に依存することには慎重でなければならない。そもそも税制は、課税の公平性や中立性、執行可能性といった独自の理念を基礎として構築されるべきであり、利用者保護や金融システムの安定といった規制法の目的とは本質的に異なる。 したがって、税制が他の規制法とどのような関係性を築くべきか、すなわち、制度的な依存関係をどこまで許容し、どこから自律性を確保すべきかという問題については、今後の制度設計において慎重な検討が必要となる。 これは単なる定義技術の問題ではなく、税制の自律性と法体系全体の整合性にかかわる構造的かつ重大なテーマであるといえよう。   (了)

#No. 634(掲載号)
#泉 絢也
2025/09/04

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第56回】「実質所得者課税の原則の具体的な判定基準」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第56回】 「実質所得者課税の原則の具体的な判定基準」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 国際的な取引における所得の帰属について、通説的な法律的帰属説の立場から、具体的にはどのように判断するのでしょうか。 〔A〕 課税物件である資産又は事業から生ずる収益についての実質所得者を判断するに当たっては、当該資産又は事業に係る経済的損益の帰属先のほか、取引全体の仕組み、取引に至る経緯あるいは関係者の認識、取引の実施状況など諸般の事情を総合的に考慮すべきであるという判断枠組みが示されました。 ●●●〔解説〕●●● 1 実質所得者課税の原則 (1) 所得の帰属とは 包括的所得概念を採用する現行の所得税法において、所得とは、人の担税力の増加をもたらす純資産の増加と定義されている。このことから、そもそも所得概念には人的要素が含まれているといわれる(※1)。すなわち、所得税法では、実現した所得に対し課税されるので、実現した所得が誰に帰属するのかがしばしば問題となる。 (※1) 谷口勢津夫『税法基本講義〔第4版〕』(弘文堂)242頁参照。 一般に「帰属」とは、「どこの物になるのか、どっちに入るか、ということ」(※2)であるが、税法においては、納税者と課税物件(※3)の結びつきのことに他ならない。かかる帰属の問題について、現行の所得税法では、明文規定は置いていないものの、いわば、暗黙の了解として、所得の帰属を課税要件としている。 (※2) 『新明解国語辞典 第二版』(三省堂・1979年) (※3) 金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂)178頁では、「課税物件(Steuerobjekt)とは、課税の対象とされる物・行為又は事実のことで、納税義務が成立するための物的基礎をなす」と述べている。 所得の帰属には、所得の人的帰属と、所得の年度帰属という2つの側面がある。前者は、課税要件としての帰属の問題そのものであり、後者は所得の計上時期の問題であるが、所得を確定させるためには、両者は密接に関連することになる。 (2) 実質所得者課税の原則とは 所得税法12条は、次のように規定されている。 同12条は、複雑難解といわれている税法規定の中でも、特に難解な規定の一つ(※4)といわれている。条文の構造自体は、「①=②の場合、収益は③に帰属する」という形に分解できるが、これら①~③が何を指すかについて異なる解釈が示され、次のような学説上の対立がある。 (※4) 谷口・(※1)248頁、『租税判例百選 第6版』有斐閣・2016年54頁など。 ➤法律的帰属説 法律的帰属説とは、(i)形式上も外形上も法律上の権利者である者が、同時に(ⅱ)名義上も権利の主体である場合で、(ⅲ)法律上真実の権利者が別にいる場合、(ⅲ)に収益が帰属すると解釈する考え方である。すなわち、法的形式と法的実体が乖離した場合に、法的実体の方を重視し、法的実体を備える者に収益が帰属すると判定するものである。これは、租税法のみならず、法律一般の概念であり、そのことから、所得税法12条の規定は、確認的なものと捉えられる。 ➤経済的帰属説 経済的帰属説とは、(i)法律上の権利者である者(法律的帰属説で取り上げるような区分は問題視しない)が、同時に(ⅱ)名義上も収益を享受する権利の主体である場合で、(ⅲ)(問題となる)収益から実現する経済的利益を享受する者が別にいる場合、(ⅲ)に収益が帰属すると判定する考え方である。経済的帰属説は法律的帰属説と異なり、法的形式と経済的実態が乖離した場合に、経済的実態を重視し、経済的実態を備える者に収益が帰属すると判定するものである。 経済的帰属説は、法形式と経済実態が異なる場合には後者を優先すべきということで、単純に図式化しやすく、理解も容易であるが、租税法律主義の見地から強い批判がある。すなわち、この考え方は、私法上の法律関係を離れ、経済的な実質主義により事実認定を行おうとするもので、これを採用すれば、他の法律分野とは異質の、税法独自の解釈となってしまう恐れがあるからである。そうすると、所得税法12条は創設的な規定ということになり、そのように解釈する場合には、その法的根拠が問われることになる。さらに、法的安定性を重視する見地からも、この説を主張する学説は少ないといわれている。 谷口勢津夫教授は、「法律的帰属説は、法律関係という形式(法形式)を事実認定の基準とするという意味で『形式主義』であり、そうであるからこそ、経済的帰属説に比べ、帰属の判定要素が明確であり、所得の人的帰属の判定において、納税者の予測可能性・法的安定性及び税務行政の公平な執行可能性の保障に資するものである」(※5)と述べている。さらに同教授は、「法律的帰属説と経済的帰属説とは、理論的な観点から見ると、それぞれの基礎にある考え方が異質(法律的思考と経済的思考)であることから、全く異なる判定結果を帰結するかのように思われるかもしれない。しかし、『法律上(私法上)の真実の権利者』と『収益に内容・実質を構成する経済的利得を経済的に享受している者』とは、実際上はほとんどの場合一致する(そうでなければ、私法制度の存立の基盤が失われることになる)から、両説で帰属の判定結果が異なる場合が仮にあるとしても、それはごく限られた場合であろう。」と述べている。 (※5) 谷口・(※1)52頁、245頁 以下では、国際取引において、実質所得者課税の原則と真実の法律関係が争われた事例を検討する。   2 裁判例 《東京地方裁判所令和4年2月1日判決(令和2年(行ウ)第271号)(確定)》(※6) (※6) TAINSコード:Z272-13665 (1) 事案の概要 外国法人A社(原告X)の東京支店は、その事業資金を調達するため、英国ロンドン市にあるA社のロンドン本店と財務代理人契約を締結し、同本店に対して社債(以下「本件社債」という。)を発行した。 その後、ロンドン本店は、ルクセンブルグに所在するA社の完全子会社であるB社に、B社は、内国法人であるC社に順次本件社債を25億ポンドで譲渡した。ただし、ロンドン本店・B社間の本件社債の譲渡に係る契約(以下「ファイナンス契約」という。)では、本件社債に係る経済的な損益が実質的にロンドン本店に帰属するように支払いを行う内容とされていた。 また、C社は、Xの英国子会社D社から25億ポンドの資金の提供を受け、B社に対して本件社債の購入対価を貸し付け、B社は当該貸付の担保として、本件社債をC社に譲渡した(貸付けに係る契約を「資産担保ローン契約」という。)。本件は、Xが、本件社債の利子(以下「本件利子」という。)の収益を実質的に享受している者はC社又はロンドン本店であるとして、本件利子の各支払に際して源泉徴収をしなかったところ、所轄税務署長から、本件利子の収益を実質的に享受している者はB社であり、利子の各支払は外国法人に対する利子の支払に当たるとして、本件利子についての源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び各不納付加算税賦課決定処分を受けたことから、本件各処分の取消し等を求める事案である。 Xの東京支店では、本件社債が発行される前まで、ロンドン本店から本支店間取引としての融資取引(以下「本件本支店間融資取引」という。)により資金調達を行っていたが、Xの英国における課税において、日本の課税額に係る外国税額控除を十分に受けられない年度が継続していた。そこで、本件本支店間融資取引の経済的実質を変えずにXの外国税額控除問題を解決する方法がXグループ内で検討され、上記の資金調達取引(以下「本件資金調達取引」という。)が考案され、実行された。 本件の一連の取引を図示すると、以下のとおりとなる。 (2) 争点 本件の争点は、本件利子の実質所得者(所得税法12条)がロンドン本店であるかB社であるかである(なお、C社が本件利子の実質所得者ではないこと、ロンドン本店が本件利子の実質所得者である場合には、Xは、本件利子に係る源泉徴収義務を負わないことについて、当事者間に争いはない。)。 (3) 裁判所の判断 東京地裁は、次のように判示し、Xの請求を容認した。 ① 判断枠組み ② 当てはめ (ア) 認定事実 (イ) 判断 (4) 検討 Xが本件資金調達取引を考案したのは、未控除の繰越外国税額を活用できるようXグループ内の資金調達の方法を見直したことが背景にある。その結果、本件本支店間融資取引の経済的実質を変えず、社債を発行した上で、当該社債を最終的に英国外の第三者が保有する方法によることが適切であると考えた。 しかし、社債を英国外の第三者が保有する場合、当該第三者が社債の保有等に係るリスクを回避する必要性から、第三者による社債の購入費用はXグループから提供され、資金調達を要しないこと、また、第三者が社債保有に係るリスクを一切負担せず、一定の手数料収入を享受できること、第三者の会計において、本件資金調達取引がパス・スルー(※7)として取り扱われ、資産、負債及び損益の計上が不要となるような仕組みを採用することが重要と考えられた。 (※7) 判決文では、「パス・スルー」という用語が3箇所登場するが、筆者は、この用語の本来の意味から判決文での使用に違和感がある。本件では、資産担保ローン契約に従いC社に対し本件社債が担保として供与されたにもかかわらず、元本となる25億ポンドのローンについては、D社からB社に直接資金移動されたことから、C社では当該ローン契約に係る債権債務が全く計上されていないことを表していると思われる。しかし、正しくはオフバランス処理されているというべきであろう。 本件では、純粋な第三者であるC社もXグループに所属するB社も、社債保有に係るリスク及び資金調達に係るリスクは一切負担していないように見える。後者については、調達した25億ポンドに対し最低限LIBOR利率の利息が保証されている。本判決の意義が、本件利子の実質的所得者の判定に当たって、リスクの負担者が誰か、という点を判断基準としているところにある(※8)とすれば、本件資金調達取引を考案し、諸リスクを負担するロンドン本店であるという結論は妥当なものといえよう。 (※8) 阿部雪子『資産の所有者とその資産の権利から生ずる収益の法律上(私法上)の権利者が分離している場合における当該資産の権利から生ずる収益の帰属』(ジュリスト、2024年1月 No.1592)148頁は、「本判決は、資産の所有者とその資産の権利から生ずる収益の法律上(私法上)の権利者が分離している事案であり、所得税法12条(実質所得者課税の原則)の適用にあたり、法律的帰属説の立場から、資産から生ずる収益の帰属の判断要素として、支配という概念を用いた上で、その資産に係る収益を保持しているのは誰であるのか、その資産に係るリスクを負担しているのは誰であるのかという点を考慮すべきことを明確に示したものとして、重要な意義が認められる。」と述べている。   (了)

#No. 634(掲載号)
#霞 晴久
2025/09/04
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