日本の企業税制 【第100回】 「第1の柱の利益Aに係る 「ネクサスとソースルールに関するモデルルール案」の公表」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 OECD/G20包摂的枠組みは、2月4日、第1の柱の利益Aに係る「ネクサスとソースルールに関するモデルルール案」を公表した。今回のモデルルール案に対するコメントの募集締切りは2月18日前となっている。 第1の柱に関しては、昨年12月に公表された第2の柱のモデルルール(前回参照)のように、最終版が決定されたわけではなく、制度のパーツごとにモデルルール案が策定されコンサルテーションに順次付されていく途上にある。今回のモデルルール案に続き、課税ベース、二重課税除去、セグメンテーションなどに関するモデルルール案の提示も順次行われる見込みである。 〇ネクサス 「ネクサス」とは法域としての課税権の有無、すなわち利益の配分を受けることができるかどうかを判定する基準である。従来の国際課税の原則では恒久的施設(PE)の存在の有無が決め手となっていたのであるが、第1の柱は、恒久的施設がなくとも売上の生じている市場国に利益を配分するという新しい考え方に基づくものであることから新しい基準が必要となったのである。 ネクサスに関しては、対象となる多国籍企業グループの一定期間の売上高が100万ユーロ(GDPが400億ユーロ未満の法域においては25万ユーロ)以上の法域に利益Aの配分が行われる。一定期間が12ヶ月に満たない場合や12ヶ月を超える場合には、それに比例して売上高の基準を調整することとされている。 〇ソースルール ソースルールとは、上記のネクサスの有無を判定するとともに、どの法域にどれだけの利益を配分するのかを割り出すため、売上の源泉地(ソース)を特定するためのルールである。 ソースルールは、実務上の関心が非常に高い事項であり、今回のルール案でも、別紙(Schedule A)にて詳細な設計が提示されている。 (1) 取引類型 それぞれの取引ごとに(transaction-by-transaction basis)、その主たる取引の実質的な性格に応じて次の7種類の取引類型に分け、それぞれに応じた配分方法(Reliable Method)が提示されている。なお、付随的取引は主たる取引の分類に準じることとされている。 (2) 配分方法 配分方法は、「信頼できる指標(Reliable Indicator)」によって決定されることが原則である。 例えば完成品の販売(直販)であれば最終消費者への配送宛先あるいは最終消費者への販売を行う店頭の場所が「信頼できる指標」となる。 完成品の販売であっても、独立販社を経由した販売の場合には、「信頼できる指標」は、原則として、直販の場合と同じく、最終消費者への配送宛先となるが、独立販社が多国籍企業グループとの間の契約により、独立販社の所在する法域でのみ販売することが認められている場合や、独立販社が完成品の最終消費者への配送宛先の法域に所在すると推定することが合理的な場合には、独立販社の所在地をもって「信頼できる指標」とすることができる。 また、部品の販売の場合には、原則として、部品が組み込まれた完成品の配送宛先が「信頼できる指標」となる。 ただし、上記の部品の販売のように完成品のメーカーに問い合わせなければ完成品の配送宛先は判明できないが、そのような情報を確実に得られるかどうかはわからない。そこで、多国籍企業グループが「信頼できる指標」を見いだすのに合理的な手段(Reasonable Steps)を講じたにもかかわらず、「信頼できる指標」により源泉地の特定が困難であると結論付けられる場合には、最終消費支出額や従業員数等などのマクロ指標に基づいた配分キー(Allocation Key)を用いることが許容され、さらに適切な配分キーが見いだせない場合には、国連貿易開発会議が公表している最終消費支出額やGDP比によって按分するグローバル配分キー(Global Allocation Key)という最終手段も用意されている。 (了)
〔令和4年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】 「「研究開発税制の見直し」 「大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直しと延長」」 公認会計士・税理士 新名 貴則 令和3年度税制改正における改正事項を中心として、令和4年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。第2回は「デジタルトランスフォーメーション (DX) 投資促進税制の創設」、「カーボンニュートラル投資促進税制の創設」及び「繰越欠損金の控除上限の特例の創設」について解説した。 第3回は「研究開発税制の見直し」及び「大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直しと延長」について解説する。 1 研究開発税制の見直し 研究開発税制とは、青色申告書を提出している法人において試験研究費が発生する場合に、その金額の一定割合について税額控除が認められる制度である。 令和3年3月期までは、基本の税額控除である「総額型(中小企業者等においては中小企業技術基盤強化税制)」とその上乗せ措置、及び「オープンイノベーション型」が設けられていた。 【令和3年3月期における研究開発税制のイメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 これが令和3年度税制改正によって見直されており、その主なポイントは次の通りである。 ① 「一般型(旧総額型)」の税額控除率の見直し(令和5年3月31日まで) 「総額型」を「一般型」に変更し、研究開発投資の増加インセンティブを強化するため、税額控除率の見直しが行われている。試験研究費の増減割合に応じて税額控除率が変動するが、改正前は、増加率8%を基準点として税額控除率が変動した。改正後は増加率9.4%が基準点となるため、9.4%を超えて試験研究費を増加させるほど税額控除率が上昇することになる。 税額控除率の下限が6%から2%に引き下げられたが、中小企業者等においては変化はない。 ② 「一般型(旧総額型)」の控除限度額の上乗せの見直し(令和5年3月31日まで) 「一般型」の控除限度額は法人税額の25%となっているが、売上高試験研究費割合(平均売上高に対する試験研究費の割合)が10%を超える場合には、その割合に応じて控除限度額が上乗せ(法人税額の0~10%)されることとなっていた。この上乗せ措置が2年間延長されている。 また、中小企業者等においては、試験研究費増加率が8%を超える場合は、控除限度額に法人税額の10%を上乗せする措置が設けられていた。これが、試験研究費増加率が9.4%を超える場合に適用されることと改正された。 ③ 「一般型(旧総額型)」の控除限度額上乗せの追加(令和5年3月31日まで) 「一般型」「中小企業技術基盤強化税制」ともに、基準年度(令和2年2月1日前に最後に終了した事業年度)と比較して、売上高が2%以上減少しながらも試験研究費を増加させた場合は、税額控除額の上限に5%上乗せすることとされた。 ④ 「オープンイノベーション型」の拡充 「オープンイノベーション型」の対象となる研究の範囲が拡大されたり、事務手続の運用改善が行われたりしている。主な改正のポイントは次の通りである。 ⑤ 試験研究費の範囲の拡大 次の通り試験研究費の範囲が拡大されている。 以上より、令和4年3月期における研究開発税制のイメージは下記となる。 【令和4年3月期における研究開発税制のイメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2 大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直しと延長 所得が増加しているにもかかわらず、賃上げや設備投資に消極的である大企業については、研究開発税制等の税額控除が適用できない制度が設けられている。令和3年度税制改正において、対象となる税額控除に「デジタルトランスフォーメーション (DX) 投資促進税制」、「カーボンニュートラル投資促進税制」が追加された上で、令和6年3月期まで3年間延長されている。 この改正は令和3年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるので、令和4年3月期決算申告にも適用される。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)
〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第35回】 「業績連動給与の減額可否」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 業績連動給与の概要 「業績連動給与」とは、利益の状況・株式の市場価格の状況を示す指標等、内国法人の業績を示す指標を基礎として算定される額の金銭による給与、及び当該業績を基礎として算定される数の株式や新株予約権による給与等をいう(法法34⑤)。この業績連動給与の損金算入制度は、法人が役員に中長期的なインセンティブ効果を持たせること等を目的として、多様な形態の給与を支給する事例が増加しつつある背景と、旧・利益連動給与との不整合を整理するために改正されたものである(※1)。 (※1) 藤山智博他編『平成29年版 改正税法のすべて』(大蔵財務協会、2017)301頁。旧・利益連動給与では計算根拠として認められていなかった株式の市場価格の状況を示す指標、そして売上高の状況を示す指標も算定指標として追加されたことが大きな特徴といえる。 業績連動給与の支給額を損金算入するためには、内国法人である非同族会社等(※2)が業務執行役員に対して支給する業績連動給与で、一定の要件を全て満たすことが必要となるが(法法34①三)、最も重要な要件はその算定方法を有価証券報告書にて開示することだろう。 (※2) 同族会社のうち、同族会社以外の法人との間に当該法人による完全支配関係があるものも対象となる。 具体的な算定方法としては、「交付される金銭の額」、「株式・新株予約権の数」及び「交付される新株予約権の数のうち無償で取得・消滅する数」の算定方法が、 を基礎とした客観的なものであることが必要となる(法法34①三イ)。 なお、具体的な利益の指標について法人税法施行令69条10項に定めがあり、経済産業省「『攻めの経営』を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~(2021年6月時点版)(以下、「導入の手引き」という)」83頁に分かりやすく図示されているため以下に引用する。 【参考】一般的に用いられる利益指標の例 注:その他、利益に一定の調整を加えた「修正ROE」、「平準化EBITDA」や「潜在株式調整後EPS」なども対象に含まれる。 企業は、これら一定の指標に準拠し、有価証券報告書に記載する算定方法をある程度自由に定めていると考えられる(※3)。 (※3) 金融庁「記述情報の開示の好事例集2020」のうち、「7.『役員の報酬等』の開示例」にて、参考となる事例が揃っている。なお、2022年2月4日に更新された2021年版は、本稿公開時点で「7.『役員の報酬等』の開示例」が示されていない。 (2) 業績連動給与の減額可否 ここで、企業があらかじめ有価証券報告書で業績連動給与の算定方法について開示した後、支給する役員報酬額を任意に減額できるのか否かが問題となる。というのも、企業の業績悪化や対象役員の病気・不祥事等の個別的な事情等から、企業が算定方法開示済みの報酬の減額を検討するケースも考えられるからだ。 法人税法施行令69条が用意する「臨時改定事由」及び「業績悪化改定事由」は、業績連動給与について定める法人税法34条1項3号をその対象としていないため、業績連動給与はこれらの事由による改定ができない。 ここで、旧・利益連動給与の損金算入性について争点となった国税不服審判所令和元年6月7日裁決があるのでその概要を紹介する(※4)。 (※4) 裁決事例集未登載、TAINS:F0-2-912。 本件は、審査請求人たる納税者が有価証券報告書に記載した算定方法として、考課係数を採用し、「上限を1.0にする」、「マイナス考課により、考課係数を1.0未満とすることができる」、「マイナス考課については、取締役社長が算定する」と示していたのみであり、代表取締役社長に考課係数1.0を適用していなかったことで問題となった事例である。 この事例の意義は、「マイナス考課とするか否かも含めて、事後的に取締役社長が決定」していたという事実認定がなされた上で、有価証券報告書に示す算定方法は「個々の業務執行役員の給与の支給時期・支給額の決定に恣意が働かないような算定方法、すなわち、当該算定方法に利益に関する指標等を当てはめさえすれば個々の業務執行役員に対して支払われるべき利益連動給与の額が自動的に算出される算定方法」である必要があると示した点にある。 上記事例は業績連動給与として改正される前の論点ではあるが、上記赤字「客観的なもの」の意義について判断に迷い、有価証券報告書にどこまで記載すべきか悩むこともあり得る現状において、参考となる事例であるといえる。「導入の手引き」Q71において、社長や役員の裁量により報酬額を確定するような報酬は、業績連動給与として損金算入できない旨の記載があることからも、有価証券報告書に厳密に算定方法を記載しなければならないことが分かる。 同時に、「導入の手引き」Q73では、業績連動給与を減額する場合について「その対象となる行為、減額する額又は割合などの算定方法をあらかじめ定めて開示していれば損金算入ができると考えられます」とも記載があるが、上記裁決例が示唆する通り、業績連動給与を減額するためには、「指標等を当てはめさえすれば自動的に算出」できる水準で算定方法を明らかにしておく必要があるだろう。 (了)
基礎から身につく組織再編税制 【第37回】 「現物出資の概要」 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 前回までは「分割」について解説してきましたが、今回からは組織再編税制における「現物出資」について解説していきます。まずは「現物出資」に関する基本的な考え方を解説します。 1 現物出資の概要 通常、会社の設立や増資は現金を出資して行われますが、現金の代わりに株式や不動産などを出資して会社を設立したり増資したりすることができます。 こうした会社の出資に際し、金銭以外の財産が出資されることを現物出資といいます(会社法28)。 また、現物出資のうち、法人が新設されるものを新設現物出資といいます(法令4の3⑬)。 (注1) 「現物出資法人」とは、現物出資によりその有する資産の移転を行い、又はこれと併せてその有する負債の移転を行った法人をいいます(法法2十二の四)。 (注2) 「被現物出資法人」とは、現物出資により現物出資法人から資産の移転を受け、又はこれと併せて負債の移転を受けた法人をいいます(法法2十二の五)。 2 現物出資の課税関係 現物出資に係る課税関係を非適格・適格ごとに表にまとめると、次のようになります。 なお、現物出資は分社型分割と同様の課税関係となるため、現物出資法人、被現物出資法人の課税上の取扱いの詳細については、分社型分割の回(【第29回】~【第32回】)をご参照ください。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 また、被現物出資法人の処理のイメージは下記となります。 【被現物出資法人の処理イメージ】 ① 非適格現物出資 又は ② 適格現物出資 ◆現物出資の概要のポイント◆ 現物出資は、現物出資法人から被現物出資法人への資産等の譲渡が原則、時価で行われたものとして取り扱います。 現物出資があった場合には、原則として現物出資法人は移転資産等の譲渡損益を認識します。 特例として適格現物出資の場合には、現物出資法人は移転資産等を簿価で移転したものとされ、課税は生じません。 現物出資法人の株主は、現物出資法人株式の譲渡損益、みなし配当を計上する必要はありません。 (了)
相続税の実務問答 【第68回】 「相続開始前3年以内に住宅取得等資金の贈与を受けていた場合」 税理士 梶野 研二 [答] お父様から贈与を受けた3,000万円のうち、住宅取得等資金の贈与の特例を受け、贈与税の課税価格に算入しなかった2,500万円については、相続開始前3年以内に受けた贈与であっても、相続税の課税価格に加算する必要はありません。 したがって、相続税の課税価格に加算する金額は、3,000万円から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けた2,500万円を控除した残額である500万円となります。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 住宅取得等資金の贈与の特例 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上で、かつ、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下である者が、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築等の対価に充てるための金銭(この金銭を「住宅取得等資金」といいます)を取得し、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をし、同日までにその家屋に居住し又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれる場合において、一定の要件を満たすときは、贈与を受けた住宅取得等資金のうち非課税限度額までの金額は、贈与税の課税価格に算入されません(措法70の2①)。この特例を「住宅取得等資金の贈与の特例」といいます。 この特例における「非課税限度額」は、住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日、その住宅用家屋が省エネ等住宅に該当するかどうか、住宅用家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率により異なります。 この特例措置は、厳しい経済情勢を背景に住宅市場の活性化を図るとともに、若年世代への早期の資産移転及び良質な住宅ストックの形成などをも目的に設けられたもので、自己の居住の用に供する住宅の取得を検討する者にとって、非常に魅力的な特例制度であるといえます。 (※) 住宅取得等資金の贈与の特例は、令和3年12月31日までに贈与を受けた住宅取得資金等について適用されますが、現在、国会で審議中の「所得税法等の一部を改正する法律(案)」において、特例の対象となる受贈者を「20歳以上」の者から「18歳以上」の者とし、非課税限度額等について所定の見直しを行ったうえで、令和5年12月31日まで延長されることとされています。 2 相続開始前3年以内の贈与 ところで、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該被相続人の相続開始の日前3年以内に当該被相続人から財産の贈与を受けた場合には、相続税法第19条第1項の規定により当該贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算するとともに、当該財産の贈与に対して課された贈与税額は相続税額から控除することとされています。 しかしながら、この住宅取得等資金の贈与の特例に係る贈与者に相続が開始した場合には、この特例により贈与税が非課税とされた住宅取得等資金の金額は、その住宅取得等資金の贈与者の相続開始に係る相続税の課税価格に加算する必要はありません(措法70の2③)。 これは、一定の要件を満たすものとして贈与税の課税対象とはされなかった住宅取得等資金が、贈与者である被相続人の相続開始前3年以内に贈与されたものであることをもって、相続税の課税価格に加算されるとすると、同特例に託された政策目的を達成することを妨げる要因となりかねないためであると考えられます。 3 ご質問の場合 お父様の相続開始前3年以内にあなたがお父様から贈与を受けたマンション取得資金3,000万円のうち、2,500万円は、住宅取得等資金として税特別措置法第70条の2第1項の規定を適用し、残りの500万円についてのみ贈与税の課税価格の計算の基礎に算入して贈与税の申告をしたとのことです。そして、あなたは相続時精算課税の選択をしていないとのことですから、この500万円に対する贈与税額の計算に当たっては、贈与税の基礎控除額110万円を控除しているものと考えられます。 そうしますと、 なお、この500万円に対する贈与税の計算上、基礎控除額として控除した110万円についても加算の対象となることにご注意ください。つまり、ご質問の場合に相続税の課税価格に加算するのは、基礎控除額110万円を控除した後の390万円ではなく、基礎控除額を控除する前の500万円となります。 (了)
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第24回】 「主である建物と附属建物がある場合の特定居住用宅地等の特例の適否」 税理士 柴田 健次 [Q] 被相続人である甲(相続開始は令和4年2月1日)は、下記の宅地(330㎡)の上にA建物及びB建物を所有していました。A建物は主である建物120㎡、附属建物50㎡となっており、被相続人及びその配偶者乙が主である建物に居住し、附属建物は、離れ家のトイレと部屋のみであり、長男丙及び丙の配偶者の寝室として利用していました。B建物は丙と丙の配偶者及び子が居住の用に供していました。 甲の推定相続人は、乙及び丙の2人であり、乙がA建物及び上記土地の2分の1を取得し、丙がB建物及び上記土地の2分の1を取得しています。丙は被相続人と生計を別にしている親族に該当します。 区分登記がされていない建物である場合には、被相続⼈⼜は被相続⼈の親族の居住の⽤に供されていた部分が被相続人の居住用宅地等として取り扱うこととされていますので、乙及び丙が取得した宅地等のうち、A建物の敷地部分は特例の対象になると考えていいでしょうか。 [A] A建物のうち主である建物の敷地部分については、特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下単に「特例」という)の対象になりますが、附属建物の敷地部分については、特例の対象にすることはできません。 乙は取得した宅地等のうち、A建物に係る主である建物の敷地部分のみ特例の適用を受けることができますが、丙は取得者の要件を満たしていませんので、特例の適用を受けることはできません。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特定居住用宅地等の意義 被相続⼈⼜は当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた当該被相続⼈の親族(以下「被相続人等」という)の居住の⽤に供されていた宅地等(当該宅地等が2以上ある場合には、政令で定める宅地等に限る。「第19回で解説」)で、当該被相続⼈の配偶者⼜は一定の要件を満たす当該被相続⼈の親族(当該被相続⼈の配偶者を除く)が相続⼜は遺贈により取得したものをいいます(措法69の4③二)。 なお、被相続人の居住の用に供されていた建物が一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物を除く)である場合には、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等として取り扱います(措令40の2④、措通69の4-7)。 一定の要件を満たす被相続人の親族は、下記のいずれかを満たす親族をいいます。 (1) 同居親族 当該親族が相続開始の直前において当該宅地等の上に存する当該被相続⼈の居住の⽤に供されていた⼀棟の建物(当該被相続⼈、当該被相続⼈の配偶者⼜は当該親族の居住の⽤に供されていた部分として政令で定める部分に限る)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること。 政令で定める部分とは、次に掲げる場合の区分に応じてそれぞれに定める部分をいいます(措令40の2⑬、措通69の4-7の4)。 (2) 別居親族 当該親族が次に掲げる要件の全てを満たすこと(措令40の2⑭⑮、措規23の2④)。 (3) 生計一親族 当該親族が当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を⾃⼰の居住の⽤に供していること。 2 一棟の建物の意義 一棟の建物の定義は、相続税や租税特別措置法等において明らかにされていませんが、登記ができる建物の要件として、不動産登記規則111条では「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。」とされています。 なお、登記上の「1個の建物」として登記されるべきものには、下記の3つがあります。 上記(1)については通常の建物が該当します。 上記(2)については不動産登記事務取扱手続準則78条1項において「効用上一体として利用される状態にある数棟の建物は、所有者の意思に反しない限り、1個の建物として取り扱うものとする。」とされており、主である建物と附属建物は、登記上は1個として扱うことができます。 上記(3)については、建物の区分所有等に関する法律1条において、「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。」とされており、構造上区分可能である場合には、区分登記の選択ができることとされています。 一棟の建物は、登記上の「1個の建物」ではなく、あくまでも「一棟の建物」ですので、通常は、上記の不動産登記規則111条に記載の建物を一棟の建物として考えることになるかと思います。 3 本問への当てはめ 本問の場合には、入口の要件として被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するのか、出口の要件として取得者の要件を確認することになります。 (1) 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の該当部分の判定 特例は、相続開始の直前において、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等が対象とされ、被相続人等の居住の用に供されていない部分は除外することとされています(措令40の2④)。被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するかどうかについては、一棟の建物ごとに判定すると記載されてはいませんので、あくまでも被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するかどうかを基準として考えます。 したがって、物置や母屋がある場合でも被相続人等が居住用家屋と一体として利用されている部分の敷地は、特例の対象になりますが、被相続人等が居住用家屋と一体で利用されていない物置や母屋がある場合には、その部分は特例の対象にならないことになります。 本問の場合のように主である建物に被相続人等が居住し、附属建物は生計を別にする親族が利用している場合には、附属建物の敷地部分については、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当しませんので、附属建物の敷地部分については特例の対象にすることはできません。 なお、区分登記がされていない建物である場合には、被相続⼈⼜は被相続⼈の親族の居住の⽤に供されていた部分が被相続人の居住用宅地等として取り扱うこととされていますが、その取扱いは、あくまでも⼀棟の建物内の取扱いであり、附属建物の取扱いではありませんので、混同しないように留意する必要があります。 (2) 取得者の要件 配偶者である乙については、取得者の要件はありませんので、乙は取得した宅地等のうち、被相続人等の居住の用に供していたと認められるA建物の主である建物の敷地部分のみ特例の適用を受けることができます。 一方の丙については、上記1の(1)同居親族に記載している「一棟の建物に居住していた者」に該当せず、同居親族の要件は満たしていません。また、上記1(2)②及び④の別居親族の要件も満たしていないことになります。したがって、丙は取得者の要件を満たしていませんので、特例の適用を受けることはできません。 ★実務上のポイント★ 区分登記されていない建物については、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等として取り扱いますが、この場合の一棟の建物は、登記上の1個の建物を意味するわけではありませんので、附属建物がある場合と混同しないように注意する必要があります。 (了)
給与計算の質問箱 【第26回】 「解雇予告手当と有給休暇の買取り」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 当社では2022年2月28日をもってA支店を閉鎖することにしました。A支店に勤務する従業員には会社都合で退職してもらいます。労働基準法に基づく解雇予告手当の支給のほか、従業員の未消化の有給休暇を買い取ることも検討しています。 解雇予告手当と有給休暇の買取りの計算方法についてご教示ください。 A 解雇予告手当と有給休暇の買取りの計算方法については以下のとおりである。 * * 解 説 * * 1 解雇予告手当 解雇の予告は30日以上前にしなければならないとされており、30日に満たない場合は不足日数分の解雇予告手当を支給する必要がある。解雇予告手当は退職手当等に該当する(所得税基本通達30-5)。 解雇予告手当から控除する源泉徴収税額の計算は、次のとおりである。 (1) 従業員が退職所得の受給に関する申告書を会社に提出した場合 会社は解雇予告手当から下記の算式をもとに計算した所得税及び復興特別所得税を控除して従業員に支給する。従業員は確定申告をする必要はない。 《図表1》退職所得控除額の計算の表 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 国税庁「タックスアンサーNo.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」より。 《図表2》退職所得の源泉徴収税額の速算表 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 国税庁「タックスアンサー別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表」より。 (2) 従業員が退職所得の受給に関する申告書を会社に提出しなかった場合 会社は解雇予告手当から20.42%の所得税及び復興特別所得税を控除して従業員に支給する。従業員は確定申告をする必要がある。 2 有給休暇の買取り 有給休暇の買取りは原則認められない。例外的に退職時に未消化で残っている有給休暇を会社が買い取っても差し支えないとされる。最後の給与に上乗せして支給する場合や単独で賞与として支給する場合は「給与所得」、退職金として支給する場合は「退職所得」になる。 有給休暇の賃金は就業規則等の定めにより、平均賃金、通常の賃金、健康保険の標準報酬日額相当額のいずれかとされる。 (了)
収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第72回】 千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也 (7) 委託販売に係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-3) ア 概要 《収益認識会計基準の取扱い》 商品又は製品を最終顧客に販売するために、販売業者等の他の当事者に引き渡す場合には、当該他の当事者がその時点で当該商品又は製品の支配を獲得したかどうかを判定する。当該他の当事者が当該商品又は製品に対する支配を獲得していない場合には、委託販売契約として他の当事者が商品又は製品を保有している可能性があり、その場合、他の当事者への商品又は製品の引渡時に収益を認識しない(指針75)。 この場合に、契約が委託販売契約であることを示す指標として、例えば次のものがある(指針76)。 企業会計原則注解(注6)では、受託者が委託品を販売した日をもって売上収益の実現の日とするとしつつも、仕切精算書が販売の都度送付されている場合には、仕切精算書が到達した日をもって売上収益の実現の日とみなすことができるとされている。 しかしながら、収益認識会計基準では、かような仕切精算書到達日基準の採用は認められていない。 《法人税基本通達の取扱い》 委託販売に係る収益の帰属時期について、法人税基本通達2-1-3の定める内容を図表で示すと次のようになる。 (※) 受託者が週、旬、月を単位として一括して売上計算書を作成している場合においても、それが継続して行われているときは、「売上の都度作成され送付されている場合」に該当。 本通達ただし書は、売上計算書が到達した日は近接日に該当するものとして、法人税法22条の2第2項の規定を適用すると述べるのみで、当該到達日の属する事業年度で益金算入するとまでは述べていない。 本通達ただし書に該当する場合においても、同項の他の要件を満たしていないなどの理由で同項の適用が認められない可能性があることを想定しているのかもしれない。 イ 本通達の趣旨 本通達ただし書は、法人税法22条の2第2項の近接日基準の適用を想定している。 本通達が認める売上計算書(仕切精算書)到達日基準による収益の計上が、同項の適用により認められるためには、少なくとも、①同基準が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当し、かつ、②目的物の引渡日に「近接する日」の属する事業年度の確定決算において収益として経理したものであることを要する(本連載第22回参照)。 国税庁によれば、本通達は次のとおり、上記①及び②を満たすとものであると考えられていることがわかる(趣旨説明41~42頁)。 (了)
マスクと管理会計 ~コロナ長期化で常識は変わるか?~ 【第1回】 「予算編成、これからどうする?」 公認会計士 石王丸 香菜子 ◇◆◇はじめに◇◆◇ 新型コロナウイルス感染症の影響により、企業を取り巻く環境は大きく変化しました。今後の見通しは依然として不透明であることから、それぞれの企業が不確実な環境にどのように向き合うかを考える局面をむかえています。 本連載は、これまでの管理会計における常識を再検証し、新しい視点を取り入れるべき点などを解説します。PNザッカ社のメンバーと一緒に、管理会計を利用して不確実な環境に前向きに取り組む方法を探っていきましょう。 ● ● ● 〔登場人物〕 ● ● ● 新型コロナウイルス感染症は2019年12月に初の感染者が報告されてから、瞬く間に世界的な流行を引き起こし、私たちのライフスタイルや企業の経営環境は短期間で劇的に変化しました。常にマスクをつけた生活、あらゆる場面での急速なオンライン化、リモートワークの浸透、黙って食べることが習慣化した子どもたち・・・。数年前には想像できなかったことですね。 こうした変化を受けて、従来の常識の一部は、常識ではなくなりつつあります。一方で、従来の方法やスタイルが引き継がれている場面もあり、フルタ部長のように両者の狭間で苦労している方も多いのではないでしょうか。 ● ● ● ● ● ● 予算編成の方法は企業によって様々ですが、“予算編成の主体がどこか"という観点からは、トップ・ダウン型の予算編成とボトム・アップ型の予算編成を想定することができます。 トップ・ダウン型の予算編成は、トップ・マネジメントの意向を反映して予算を編成し、各部門に執行を要請する集権的な予算編成方法です。一方、ボトム・アップ型の予算編成は、各部門に予算編成の権限を与えて、各部門から提出された予算案を積み上げて編成し、トップ・マネジメントがこれを承認するという分権的な予算編成方法です。 【トップ・ダウン型の予算編成】 【ボトム・アップ型の予算編成】 いずれの方法も一長一短があるため、実務上はトップ・ダウン型とボトム・アップ型の折衷型で予算を編成している企業が多いようです。 【折衷型の予算編成】 この方法で予算を編成する場合、調整に時間や手間がかかります。リモートワークの進む現在では、予算編成に関わる人々が一堂に集まる機会が減り、従来の予算会議などのスタイルで調整することが難しいケースが多いと考えられます。状況に応じて、調整の負担を減らせる方法や仕組みを検討してみるとよいでしょう。バラバラのファイルのやり取りでなく、オンライン上で各担当者が入力したり経営陣が承認したりできる仕組みなどがあればスムーズになることもあります。 また、このような予算編成プロセスは、経営陣と各部門という縦断的なコミュニケーションや、部門間の横断的なコミュニケーションを生み出す場として機能してきた一面もあります。オンライン化が進んでも、予算編成を通じてコミュニケーションやアイデアが生み出されるような場も設けられるとよいですね。 ● ● ● ● ● ● 企業を取り巻く環境は一層の不確実性に満ちあふれるようになりました。ライフスタイルの変化に伴い、思いがけないモノやサービスが爆発的に売れる、反対にこれまで順調に売れていたモノやサービスがさっぱり売れなくなるなど、多くの方が実感されていることでしょう。このように変化が激しい環境では、期首に編成した予算があっという間に環境にそぐわないものとなってしまう可能性があります。 ● ● ● ● ● ● 不確実な状況に適した予算編成方式として「ローリング予算」があります。ローリング予算は一定期間ごとに転がし方式で編成する予算です。各期間末において、経過した期間の予算を計画から取り除き、同じ長さの期間について新しい予算を追加していきます。引き継ぐ期間については、必要に応じて確度の高い数値に修正していきます。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 このように予算を定期的に見直していくことで、環境変化に対応した予算を常に維持でき、経営管理に役立ちます。状況によっては、四半期よりも短い期間(月次など)で更新していく方法も考えられます。 ローリング方式の予算編成の場合、予算を更新する手間は増えるので、前述のように手間を削減する方法と組み合わせて予算編成の在り方を見直すと効果的です。 ● ● ● (了)
収益認識会計基準を学ぶ 【第23回】 「開示③」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 【第21回】及び【第22回】に続いて、「開示(表示及び注記事項)」について解説する。 以下では、「収益認識に関する注記」の各項目について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 収益の分解情報 1 概要 収益認識会計基準は、収益の分解情報に関して、次のように規定している(収益認識会計基準80-10項、80-11項)。 収益の分解情報は、単一の区分により開示される場合もあれば、複数の区分により開示される場合(例えば、製品別の収益の分解と地域別の収益の分解)もあると考えられる(収益認識会計基準178項、収益認識適用指針106-3項)。 一方で、企業の収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす要因のすべてを考慮する必要がないことを明確にするために、収益認識会計基準では、「主要な」要因に基づく区分による収益の分解情報を求めている(収益認識会計基準178項)。 2 収益を分解するための区分の例 収益の分解に用いる区分を検討する際に、次のような情報において、企業の収益に関する情報が他の目的でどのように開示されているのかを考慮する(収益認識適用指針106-4項、190項)。 収益認識適用指針は、収益を分解するための区分の例として、次のものをあげている(収益認識適用指針106-5項)。 3 収益を分解するための区分に関する留意事項 次のことに留意する(収益認識適用指針190項、191項)。 Ⅲ 収益を理解するための基礎となる情報 顧客との契約が、財務諸表に表示している項目又は収益認識に関する注記における他の注記事項とどのように関連しているのかを示す基礎となる情報として、次の事項を注記する(収益認識会計基準80-12項)。 収益を理解するための基礎となる情報において注記する情報は、顧客と締結した契約の内容と、それらの内容がどのように収益及び関連する財務諸表の項目に反映されているかに関する情報を開示するものである(収益認識会計基準180項)。 収益を理解するための基礎となる情報を記載するにあたっては、単に収益認識会計基準等における取扱いを記載するのではなく、企業の置かれている状況が分かるように記載することになると考えられる(収益認識会計基準180項)。 1 契約及び履行義務に関する情報 収益として認識する項目がどのような契約から生じているのかを理解するための基礎となる情報を注記する(収益認識会計基準80-13項)。 この情報には、次の事項が含まれる。 収益認識会計基準は、「契約及び履行義務に関する情報」について、契約から生じる企業の義務と権利に着目しており、上記の①と②に区分したそれぞれについて記載する内容又は関連して記載する内容を例示している(収益認識会計基準181項)。 2 取引価格の算定に関する情報 取引価格の算定方法について理解できるように、取引価格を算定する際に用いた見積方法、インプット及び仮定に関する情報を注記する(収益認識会計基準80-16項、186項、187項)。 例えば、次の内容を記載する。 3 履行義務への配分額の算定に関する情報 取引価格の履行義務への配分額の算定方法について理解できるように、取引価格を履行義務に配分する際に用いた見積方法、インプット及び仮定に関する情報を注記する(収益認識会計基準80-17項、188項、189項)。 例えば、次の内容を記載する。 4 履行義務の充足時点に関する情報 履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)の判断及び当該時点における会計処理の方法を理解できるように、次の事項を注記する(収益認識会計基準80-18項、収益認識適用指針106-7項)。 履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)には、例えば、商品又は製品の出荷時、引渡時、サービスの提供に応じて、あるいはサービスの完了時が挙げられる。これには、請求済未出荷契約において履行義務がいつ充足されるのかも含まれる(収益認識適用指針106-6項)。 5 収益認識会計基準の適用における重要な判断 収益認識会計基準を適用する際に行った判断及び判断の変更のうち、顧客との契約から生じる収益の金額及び時期の決定に重要な影響を与えるものを注記する(収益認識会計基準80-19項、191項)。 (了)