〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第82話】 「定額減税」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 「・・・しかし・・・評判が悪いですねえ・・・」 浅田調査官は、ため息をついて、中尾統括官に声をかける。 「・・・評判が悪いって、例の・・・定額減税のこと?」 中尾統括官は、含み笑いをして、尋ねる。 「ええ、そうです・・・納税者の人と話すと、減税をする制度なのに、その手続が煩雑なことから、定額減税は止めるべきだと言うんですよ」 浅田調査官も苦り切った表情になる。 「・・・しかし、令和6年の税法の改正で、6月1日以後、最初に支払う給与等につき源泉徴収を行う際から定額減税をすることになったのだから・・・源泉徴収義務者は、定額減税をやるしかないね」 中尾統括官は、冷たく言う。 「定額減税の対象になる人は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下の人ですが・・・中尾統括官は、定額減税の対象となるのですか?」 浅田調査官は、真剣な顔をして尋ねる。 「・・・何を冗談言っているのだ・・・私は、税務署に40年近く勤務しているが・・・給与収入が2,000万円を超えたことなど一度もない」 中尾統括官は、憮然と言う。 「・・・ところで・・・統括官の扶養親族は・・・何人でしたか?」 浅田調査官は、そのまま質問を続ける。 「かみさんと子供1人だ」 「・・・ということは、本人分と同一生計配偶者と扶養親族の分で・・・」 と言いながら、浅田調査官は、罫紙に計算式を書く。 「・・・そうすると、中尾統括官の月次減税額は、90,000円ということです・・・」 浅田調査官は、中尾統括官を見る。 「・・・確か・・・かみさんは、パートで働いているけど・・・給与等の収入金額は、103万円を・・・超えていなかったと思うけれど・・・」 中尾統括官は、不安そうな顔になる。 「・・・しかし、これは、あくまでも見込みの金額ですから・・・もし、103万円を超えた場合には、年末調整で調整すればいいことになっています」 浅田調査官は、ハッキリと言う。 「それで・・・住民税は、企業の負担を考慮して、6月の天引きは行わないことになっています・・・すなわち、減税分を引いた住民税1年分を11回に分割して、令和6年7月から令和7年5月の給与から天引きすることになります・・・住民税に関しては、1人当たり1万円を減税することになっていますから、中尾統括官の場合、住民税は、次のように計算されます・・・」 そう言うと、浅田調査官は、罫紙に計算式を書く。 「・・・例えば、中尾統括官の住民税が年間47万円であると仮定したら、次のように計算され、7月から来年の5月まで天引きされます」 再び、浅田調査官は、罫紙に計算式を書く。 「地方自治体も事務が大変だな」 浅田調査官の話を聞いて、中尾統括官は、市町村に同情する。 「・・・しかし、6月の給与に限っていえば、月次減税額と、そして、住民税が天引きされないことから、手取り額はかなり増えますよ・・・」 浅田調査官は、羨ましそうに中尾統括官を見る。 「・・・そういう浅田君も手取りが増えるだろう・・・」 中尾統括官は、浅田調査官の顔を覗く。 「いえ、私は、定額減税を受けることができないのです」 浅田調査官は、平然と答える。 「・・・失礼な言い方だが、君の税務署での給与等の収入金額では・・・2,000万円を超えることはないだろう」 中尾統括官は、苦笑しながら言う。 「もちろんですよ」 浅田調査官も笑い出す。 「・・・実は、今年の2月に、祖父から遺贈で譲り受けた土地を譲渡したのですよ・・・そのキャピタルゲインが1,800万円ぐらいあるので、この土地の譲渡所得を給与所得と合算すると、定額減税の対象外になってしまうのです」 浅田調査官は、残念そうに話す。 「そうか・・・それは・・・残念だな・・・」 中尾統括官は、浅田調査官の顔を見る。 「この件で・・・ちょっと、中尾統括官に・・・お聞きしたいのですが・・・」 浅田調査官は、急に、真面目な顔になる。 「売った土地なんですが・・・その売買契約の日は、昨年の12月10日で、土地の引渡日が今年の2月3日なんです・・・そうすると、納税者は、譲渡の日を、契約の日か、又は引渡の日か、いずれか選択できることになっています・・・」 浅田調査官は、続ける。 「もちろん、昨年の契約の日を譲渡の日とすると、今年の3月15日までに確定申告をしなければならなかったのですが・・・もちろん、まだ、申告をしていません」 中尾統括官は、そこまで聞くと、浅田調査官が、何を言いたいのか、ようやく分かってきた。 「つまり、今から、期限後の令和5年分の譲渡所得の申告をして、定額減税を受けようと考えているの?」 中尾統括官が浅田調査官に問う。 「はい・・・どうでしょうか」 浅田調査官は、舌をペロッと出す。 「納税者は、譲渡の日について、契約の日か、引渡の日か、いずれかの日の選択ができることから、税法上は特に問題はないだろう・・・しかし、君は・・・独身で、扶養家族もいないから、所得税と住民税を合わせて、4万円の定額減税だろう、そのために・・・わざわざ期限後の申告をすることもないと思う・・・それに・・・土地を売却して、大金を持っているのだから、そんなセコいことを考えなくてもいいと思うのだが・・・」 そう言うと、中尾統括官は、笑いながら、浅田調査官の肩を叩く。 (つづく)
《速報解説》 会計士協会、「倫理規則」及び「倫理規則に関するQ&A」を改正 ~秘密保持の重要性の高まりに係る趣旨理解促進のため、用語表現を修正~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2024年6月28日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は、「倫理規則」の改正(定期総会に付議する予定の改正案の公表)及び「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」」の改正を公表した。 倫理規則の改正には、日本公認会計士協会の定期総会での承認が必要となることから、今般公表する倫理規則は定期総会に付議する予定の改正規定案であり、2024年7月18日開催の定期総会の承認後に確定する予定である。 また、「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」」の改正については、「倫理規則」の改正が定期総会で承認されることを前提として公表するものである。 上記のとおり、定期総会の承認を前提とするものの、2024年1月24日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられた主なコメントの概要とその対応も公表されている。 これは、国際会計士倫理基準審議会(The International Ethics Standards Board for Accountants: IESBA)の倫理規程の改訂等を踏まえた対応である。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 上場事業体及び社会的影響度の高い事業体の定義に関する規定 会計事務所等は、本パートを適用する上で、事業体が次の類型のいずれかに該当する場合には、その事業体を社会的影響度の高い事業体として取り扱わなければならない(倫理規則R400.22項)。 社会的影響度の高い事業体に該当する場合、例えば、報酬依存度(特定の社会的影響度の高い事業体に対する報酬依存度が5年連続して15%を超える場合には、原則として監査人を辞任する)に関する規定の遵守が求められる。 2 業務チームの定義及びグループ監査業務に関する規定 用語集の「監査業務チーム(Audit team)」について、例えば、「監査業務の結果に直接的に影響を及ぼすことができる、会計事務所等内の、又は会計事務所等と契約しているその他の全ての者」が対象となるように規定する。 用語集において、グループ監査業務(Group audit)に関連する定義を設ける。また、「セクション405 グループ監査業務」を新設する。 3 テクノロジーに関する規定 例えば、「テクノロジーの利用に伴う阻害要因の識別」などが規定されている。 倫理規則における「テクノロジー」の範囲は広範であり、将来的な未知のテクノロジーを含むあらゆるテクノロジーを包含することを意図しているとのことである。 4 「守秘義務の原則」の用語変更 現行の倫理規則では、「守秘義務」の用語を用いて規定しているが、それを「秘密保持」に変更する。「守秘義務の原則」は「秘密保持の原則」に変更される。 今回の変更は、情報の秘密保持がいっそう重要となっていることなどの趣旨について会員の理解を促進するために用語の表現を修正するものであり、従来の考え方を変えるものではない。 現行の倫理上の基本原則では、「守秘義務」は業務上知り得た秘密を守ることとされているが、「秘密保持」は業務上知り得た情報の秘密を守ることとする。 用語集は、秘密情報(Confidential information)について、形式や媒体を問わず(文書、電子、映像、口頭を含む)、公に入手可能となっていない情報、データ又はその他の文書とし、業務上知り得た秘密情報とは、会員が、会計事務所等又は所属する組織から知り得た秘密情報並びに専門業務を行うことにより知り得た依頼人及びその他の事業体の秘密情報をいうとしている。 5 「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」(倫理規則実務ガイダンス第1号)の改正 倫理規則の改正を踏まえ、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」(倫理規則実務ガイダンス第1号)についても所要の改正を行う。 例えば、「守秘義務」を「秘密保持」に変更することなどである。 Ⅲ 施行時期等 2025 年4月1日から施行する。 早期適用できる。 (了)
《速報解説》 ASBJから「移管指針の適用」等が公表される ~JICPA公表の実務指針等のうち会計に関する指針をASBJに移管~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2024年7月1日、企業会計基準委員会は、移管指針「移管指針の適用」等を公表した。これにより、2024年4月3日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられた主なコメントの概要とその対応も公表されている。 これは、日本公認会計士協会が公表した実務指針等について、会計に関する指針のみを企業会計基準委員会に移管するものである。 なお、同日、日本公認会計士協会から「移管に伴う会計制度委員会が公表した実務指針等の廃止について」が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 移管対象の日本公認会計士協会が公表した実務指針等の所管を、企業会計基準委員会に移すことを主たる目的とし、当該移管により実務を変更しないことを意図することとしている。 このため、移管指針では、実務への影響を最小限とするように、次の方針に基づいて移管している。 「移管指針の適用」においてこれらの内容を全般的に定め、当該移管指針に個別の移管指針が紐付く体系としている。 移管対象となる実務指針等には、「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号)、「金融商品会計に関するQ&A」、「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(会計制度委員会報告第7号)、「持分法会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第9号)、「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第15号)など多くのものがある Ⅲ 適用時期等 移管指針及び別紙に記載した移管指針は2024年7月1日以後適用する。 「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)10項にかかわらず、「移管指針の適用」別紙に記載した移管指針の適用は会計方針の変更に関する注記を要しない。 (了)
《速報解説》 国税庁、令和6年分の路線価及び能登半島地震に係る調整率表を公表 ~コロナ禍後の訪日客増加等に伴い全国平均路線価上昇~ Profession Journal編集部 令和6年7月1日、国税庁は令和6年分の路線価(令和6年1月1日時点)を公表した。路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額であり、相続税及び贈与税の算定基準となる。 令和6年分の全国平均路線価は前年比で2.3%の増加となり、3年連続の上昇となった。 コロナ禍の影響を最も受けた令和3年分の全国平均路線価は下落に転じたものの、令和4年分・5年分は上昇し、昨年3月に新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に移行した後は、インバウンド(訪日客)もコロナ禍前の水準に近づいたことで、令和6年分の上昇が顕著なものとなった。 インバウンドの影響を大きく受けた長野県白馬村は、税務署ごとの最高路線価の上昇率で1位となり、前年比32.1%の増加となったほか、上昇率2位となった熊本県菊陽町は、台湾の半導体メーカーの進出等を背景に前年比24.0%の増加となっている。 なお、各国税局における令和6年分の国税局管内各税務署の最高路線価は以下のとおり公表されている。 〈各局が公表した最高路線価(別表)のページ〉 また、都市部においては上記のインバウンドの増加に加え、コロナ禍で落ち込んだオフィス需要が回復傾向にあることや継続するマンション需要に支えられ、三大都市圏の平均路線価は前年比で東京5.3%、愛知3.2%、大阪3.1%上昇している。ちなみに今年も地点別路線価の最高額となったのは、東京都中央区銀座5丁目の「鳩居堂」前で、1平方メートルあたり4,424万円(前年比3.6%増加)となった。今回で39年連続全国路線価トップとなっている。 なお、国税庁は令和6年分の路線価の公表と同日に、令和6年能登半島地震の被災地の路線価に適用する「調整率」も明らかにしている。 令和6年能登半島地震に係る調整率は、令和5年2月28日から令和6年12月31日までの間に相続等により取得した特定地域(※)内にある土地等及び令和5年1月1日から令和6年12月31日までの間に贈与により取得した特定地域内にある土地等の価額を計算するために用いる。 (※) 令和6年3月25日現在、新潟県全域、富山県全域、石川県全域が該当。 被災者の相続税及び贈与税の負担を軽減することができるため、特定地域内の土地等を実務等で取り扱う場合には相続・贈与時期などを確認のうえ、該当する場合は調整率の適用を失念することがないよう留意したい。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 国税庁、電子帳簿保存法の一問一答を改訂 ~電子取引関係に6問新設~ Profession Journal編集部 令和6年6月28日、国税庁から「電子帳簿保存法一問一答」の改訂が公表された。前回の改訂から約1年ぶりとなる。 電子帳簿保存法一問一答は上記のとおり3つに分けられているが、今回それぞれが改訂されており、中でも【電子取引関係】は一部修正に加えて6つの設問が追加されている(【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】及び【スキャナ保存関係】は、設問の追加なし)。 この追加された設問のうち「問2-2」、「問9-2」、「問27-2」、「問40-2」、「問40-3」の5問は「お問合せの多いご質問(令和6年3月)」を反映したものとなっているほか、残りの1問である「問69」は大阪国税局から公表された令和6年3月19日付の文書回答事例を反映したものと思われる。 なお、上記のうち「問27-2」では、電子取引の取引情報に係る電磁的記録(電子データ)と書類(紙)が取引において混在しており、電子データ自体の保存は電子帳簿保存法上の保存要件に沿って適切に対応しているが、電子メール等一定の電子データについては経理事務の便宜のため、書面に印刷してその他の書類と一緒にファイルに綴り整理しているケースについて問題ないかとの問いに対し、「電子取引の取引情報に係る電磁的記録を削除せず、電子帳簿保存法の保存要件に沿って保存した上で、当該電磁的記録を書面に出力し、その他の書類と一緒に整理することは、問題ありません」と回答している。 (了)
《速報解説》 会計士協会が「2024年度品質管理レビュー方針」を策定 ~「会計上の見積りの監査」に係る指摘事項等を記載した昨年度の事例解説集も公表~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2024年6月28日、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 これらは、監査法人又は公認会計士が行う監査の品質管理の状況をレビューする制度(品質管理レビュー制度)に基づくものであり、基本的な対象は、監査法人又は公認会計士である。 しかしながら、これらに記載されている内容については、一般の事業会社における会計処理等にも関連するものがあり、実務の参考になるものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 2024年度品質管理レビュー方針 1 レビュー方針 2022年5月の公認会計士法の改正により、上場会社等の監査について、法律上の登録制が導入されており、登録の審査のためのレビュー又は通常レビューにおいて、上場会社等の監査を行う監査事務所としての適格性の確認を行い、上場会社等の監査を行う上で求められる業務管理体制の整備についても確認するほか、品質管理システムの整備及び運用状況について重要な不備事項の要因の領域及び項目の具体例を明確化し、前年度に引き続き、高い規律付けの一環として、新たな目線で、品質管理レビューを実施する。 2 当年度の重点的実施項目 重点的実施項目とは、監査事務所における品質管理システムの構成要素のうち、特定の部分及び特定の監査手続等を示し、品質管理レビューにおいて必ず確認し、必要に応じて指導するものである。 当年度の品質管理レビューにおける重点的実施項目は次のとおりである。 Ⅲ 2023年度 品質管理レビュー事例解説集Ⅰ部・Ⅱ部 1 品質管理レビュー事例解説集Ⅰ部 「会計上の見積りの監査」に関して、下記に関する指摘事項が記載されている。 2 品質管理レビュー事例解説集Ⅱ部 例えば、次のような事項が指摘されている。 (了)
《速報解説》 経産省、企業情報開示のあり方について 課題と今後の方向性をまとめた中間報告を公表 ~持続的な企業価値向上に資する2つのイメージ案示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2024年6月25日、経済産業省に設置された企業情報開示のあり方に関する懇談会は、「企業情報開示のあり方に関する懇談会 課題と今後の方向性(中間報告)」を公表した。 これは、有価証券報告書、コーポレート・ガバナンスに関する報告書及び統合報告書などの日本企業の情報開示について、その課題と将来の方向性について検討したものであり、多岐にわたる意見が記載されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 企業情報開示の体系に関する課題 次の事項が課題として述べられている。 Ⅲ 新たな情報開示のあり方に関するアイデア等 1 2つのイメージ 「持続的な企業価値向上に資する企業情報開示の姿」とはどのようなものかについて議論を行い、次の2つの案が議論されている。 図を用いてイメージが示されている。 2 イメージ案1・2に共通するポイント イメージ案1・2に共通するポイントとして、次の事項が記載されている。 (了)
《速報解説》 相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例について 「質疑応答事例」(資産課税課情報第10号)が公表される ~建物の想定価額や被災価額の計算例、承認申請書の記載例も~ Profession Journal 編集部 令和5年度税制改正で創設された「相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例(措法70の3の3)」は令和6年1月1日以後に災害により被害を受けた場合から適用が開始されているが、国税庁は6月26日に、本制度に関する質疑応答事例を公表した(資料日付は6月20日)。 本特例は、相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与(死因贈与を除く)により取得した「土地又は建物」が、災害によって一定の被害を受けた場合、所轄税務署長への申請を行い承認を受けることで、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算される土地又は建物の金額を、贈与時の価額から、災害により被害を受けた部分に対応するものとして計算した金額(被災価額)を控除した残額とすることができるもの。 上述の通り本特例は、令和6年1月1日以後に災害によって相当の被害を受けたことなど一定の要件を満たす場合に適用されるため、令和5年12月31日以前の贈与により取得した土地・建物も含まれ、また令和6年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」も適用対象とされる。 本特例の適用にあたっては、贈与価額から控除される「被災価額」の計算が必要であり、また被災割合(10%以上の要件)を確認するため被災財産が建物の場合に「想定価額(災害発生日における建物の想定上の価額)」の計算も必要になる。さらに贈与財産の種類や贈与時期等、様々なケースも考えられよう。 このため今回公表された質疑応答事例では、冒頭で制度の概要や適用要件について解説された後、下記のようにその紙面の多くを計算例が占めている。 また、他制度との重複適用の可否についても、災害減免法(問2-5)、特定土地等に係る相続税の特例(措法69 の6)(問7-2)、個人版事業承継税制(措法70の6の8)(問7-3)において、それぞれ解説されている(災害減免法のみ重複適用不可))。 さらに問6-1以降では本特例の適用手続が取り上げられており、巻末には申請に必要な「災害により被害を受けた場合の相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例に関する承認申請書」の記載例が搭載されている。 なお本特例は、対象となる財産が土地又は建物に限定されており、借地権などの土地の上に存する権利は含まれていない等の制約はあるものの、対象となる災害は「震災、風水害、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び火災、鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害」(措法70 の3の3①、措令40 の5の3①)と規定されるのみで、純損失・雑損失の繰越控除の特例(3年→5年)とは異なり、「特定非常災害」には限定されていない。 (了) ↓お勧め連載記事↓
2024年6月27日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.575を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第39回】 「課税処分相互間の関係」 -課税処分取消訴訟の訴訟要件(広義の訴えの利益)を中心に- 大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫 Ⅰ はじめに 納税義務の確定制度とりわけ申告納税制度においては、納税義務の確定行為相互間の関係、すなわち、納税申告相互間の関係、納税申告と課税処分との関係及び課税処分相互間の関係が問題になる(谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」第11回4、第15回2・3も参照)。 納税義務の確定行為相互間の関係については、国税通則法制定前から議論されてきたところであるが、税制調査会「国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)」(昭和36年7月)62-63頁は次のとおり「基本的な考え方」を述べた(下線筆者)。 上記説明中の(a)の考え方については、これを「併存説」と呼ぶことに異論はないであろうが、(b)の考え方については、「消滅説」と呼ばれる考え方として理解することも「吸収説」と呼ばれる考え方として理解することもできるように思われる。というのも、「更正等の処分により前の申告等の効力はその行為時にさかのぼつてなかったものとされ[る]」という記述は、前の申告等が更正等の処分により当然に消滅することを意味するのか(消滅説)又は更正等の処分内容としてこれに吸収されて一体となりその外形が消滅することを意味するのか(吸収説)が、上記の説明では必ずしも明らかでないからである(学説の名称に係る用語法には種々のものがみられるが、「併存説」(「独立追加処分説」、「段階説」、「分離説」などとも呼ばれる)も含め、「消滅説」(「蒔き直し説」とも呼ばれる)と「吸収説」(「吸収消滅説」、「一体説」とも呼ばれる)に関する以上の理解については、園部逸夫「判解」最判解民事篇(昭和56年度)275頁、282-283頁参照)。 もっとも、前記説明中の「これらの解決のあり方を統一的に説明する基本的な考え方」は、その前半(「更正等の処分の効力は、増差額に関する部分についてのみ生ずる」)が併存説を意味し、その後半(「その処分が行われた結果として、前にされた申告等は、更正等に吸収され、あわせて一体のものとなる」)が吸収説を意味する、両説のいわば「折衷説」(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])E296~298頁[新井隆一・波多野弘執筆])ともいうべき考え方であるように思われる。 いずれにせよ、国税通則法は、そのような「基本的な考え方」に基づいて20条(修正申告の効力)、29条(更正等の効力)、73条1項1号(時効の中断及び停止。現行規定は時効の完成猶予及び更新)、81条(他の審査請求に伴うみなす審査請求。現行規定は90条)、82条(併合審理等。現行規定は104条)、87条1項3号(不服申立ての前置を要しない場合。現行規定は115条1項2号)等の各規定を整備したものと解されるが、それらの規定は学説の多くが国税通則法の立場を併存説として理解する根拠とされるものである(差し当たり、清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)257頁参照)。ただ、それらの規定は少なくとも直接的には訴訟とりわけ課税処分取消訴訟に関する事項を定めた規定ではないので、訴訟のレベルにおいて更正・決定と再更正との関係をどのように考えるかは、広義の訴えの利益という訴訟要件の判断において重要な意味をもつにもかかわらず、基本的には国税通則法制定前と同じく解釈に委ねられてきたといわざるを得ない。この点については、夙に次のとおり指摘されていたところである(清永敬次「更正と再更正」シュトイエル100号(1970年)91頁、95-96頁)。 なお、広義の訴えの利益という訴訟要件については次のとおり説明されている(泉徳治ほか『租税訴訟の審理について〔第3版〕』(法曹会・2018年)43-44頁。下線筆者)。 Ⅱ 更正と再更正との関係に関する判例の立場 1 更正と増額再更正 更正と増額再更正との関係について裁判所は、次の見解(園部・前掲「判解」283頁)が述べるように、国税通則法の制定前後を通じて、消滅説ないし吸収説の立場に立っていたといわれている(裁判例について詳しくは最高裁判所事務総局編『続々行政事件訴訟十年史』(法曹会・1981年)406頁参照)。 上記見解はこれに続けて「同説ないし同説を採る裁判例が、通常、確立した判例として引用する最高裁の判例は、次の二つである。」(園部・前掲「判解」283頁)と述べ、最判昭和32年9月19日民集11巻9号1608頁と最判昭和42年9月19日民集21巻7号1828頁を挙げている。もっとも、これらのうち後者については、「右の事件では、第二次更正処分は、第一次更正処分との関係では減額再更正の性質を有するのであり、第三次更正処分は第二次更正処分との関係では増額再更正処分であるが、第一次更正処分との関係では同額再更正処分に当たるという、まことに変則的な事案であって、増額再更正処分について吸収説をとった判例というには、事案として必ずしも適当なものではない。」(園部・前掲「判解」290頁。最判昭和55年11月20日訟月27巻3号597頁(以下「昭和55年最判」という)に係る鈴木実「解説」同号599頁も同旨)といわれるように、その先例性は疑わしいように思われる(碓井光明「判批」判例評論275号(1982年)10頁、12頁も同旨)。 このような先例性に関する疑義があるとはいえ、租税訴訟実務では、更正と増額再更正との関係については、次の見解(泉ほか・前掲書49頁)が支配的であるように思われる。 この見解が吸収説を採用するものとする判例のうち後二者はいずれも原審の判断(①東京高判昭和53年1月31日訟月24巻2号414頁、②東京高判平成8年2月28日税資215号797頁)を正当とするにとどまるものであるから、それらの原審判断を以下に引用しておくことにする。 上記①の東京高判が「確立した判例」として参照する最判昭和42年9月19日民集21巻7号1828頁の先例性については、前述のとおり疑わしいように思われ、また、上記②の東京高判は申告と更正との関係について、しかも不服申立ての対象を問題にする判決であるから、これを正当とする上告審・最判平成9年11月14日税資229号652頁が、更正と再更正との関係について課税処分取消訴訟の対象を判断する場合に先例性を有するかどうかも疑問であることから、結局、前記見解が言及する最高裁の判断のうち、上記①の東京高判が「確立した判例」として参照する最判昭和32年9月19日民集11巻9号1608頁(これは下記のとおり判示している。下線筆者)と、これを先例とする限りで(碓井・前掲「判批」12頁参照)昭和55年最判の2つの判断のみが、更正と増額再更正との関係に関する判例としての意義を有すると考えられる。 念のため、昭和55年最判の判示を引用しておくと、次のとおりである。 2 更正と減額再更正 ところで、「更正と再更正の問題は、従来主として増額再更正について論じられてきた」(園部・前掲「判解」281頁)が、それでも、更正と減額再更正との関係についても、従来、増額再更正の場合と同じく吸収説の立場に立ち当初の更正処分の取消しを求める訴えの利益はないとする裁判例のほか、「実務の大勢は、減額再更正処分について、当初更正処分の一部取消し(講学上の職権による一部取消し『一部撤回』)と同じ性格のものとみている」(同293頁)という立場に立って、減額再更正処分の取消しを求める訴えの利益はないとする裁判例がみられた(裁判例について詳しくは最高裁判所事務総局編・前掲書406-407頁参照)。 最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁(以下「昭和56年最判」という)の事件(本案では事業所得と給与所得との区分が争われたいわゆる弁護士顧問料事件)において、第一審・横浜地判昭和50年4月1日訟月21巻6号1332頁(下記①)及び控訴審・東京高判昭和51年10月18日訟月22巻12号2876頁(下記②)は吸収説の立場に立ち以下のとおり判示し(下線筆者)、減額再更正処分の取消しを求める訴えの利益はあるが当初更正処分の取消しを求める訴えの利益はないとした。 これに対して、昭和56年最判は次のとおり判示して(下線筆者)「いわゆる一部取消説に立つことを明言し」(片山博仁「判批」法務省訟務局内行政判例研究会編『昭和56年行政関係判例解説』(ぎょうせい・1983年)425頁、431頁)、減額再更正処分の取消しを求める訴えの利益はないとした。 昭和56年最判については、「本判決は、減額再更正の場合について、従来の実務の大勢に沿い、これを確認するもので、前記増額再更正の場合に関する最高一小判昭和55年11月20日[=昭和55年最判]と並んで、更正と再更正との関係に関する争いに、一応の終止符を打ったものと理解することができる。その意味で本判決は、この分野における重要な先例的意義を有するものといえよう。」(園部・前掲「判解」293頁)と解説されている。 Ⅲ 広義の訴えの利益という訴訟要件の解釈 以上で更正と再更正との関係に関する裁判所の立場をみてきたが、これについて、昭和55年最判及び昭和56年最判で「一応の終止符」(園部・前掲「判解」293頁)が打たれる以前から、次の批判的見解(清永・前掲論文105頁。下線筆者。以下「一貫性否認論」という)がみられた。 一貫性否認論は、昭和55年最判及び昭和56年最判についても妥当し、むしろ昭和56年最判の前記判示によってその妥当性は確定的なものとなったといえようが、その後、両最判の整合性を承認する次の見解(占部裕典『租税法と行政法の交錯』(慈学社出版・2015年)248頁[初出・2012年]。下線筆者。以下「整合性承認論」という)が唱えられるようになった。 一貫性否認論は、「再更正の性質」の観点から判例の立場を理解しようとするものであるのに対して、整合性承認論は、「総額主義のもとで常にもっとも大きい税額の更正処分を争わせるというスタンス」の観点から判例の立場を理解しようとするものであり、その「スタンス」は、訴訟レベルでの「総額主義か争点主義かという理論的な問題」(占部・前掲書248頁)に関するものである。 租税訴訟実務の支配的見解は、更正と増額再更正との関係に関しては、一貫性否認論と整合性承認論の両方の観点を踏まえ、下記のとおり吸収説と総額主義を結びつける理解(泉ほか・前掲書48頁。下線筆者)を示した上で、既にⅡの1で述べたように、吸収説を採用した判例として昭和55年最判を挙げている。 しかし、吸収説と総額主義を結びつける上記の理解は、更正と減額再更正との関係については妥当しない。というのも、昭和56年最判は、減額再更正の「実質」を「当初の更正処分の変更であり、それによって、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分」とする理解を示したからである。 そうすると、昭和56年最判は減額再更正について吸収説を採用しなかったことは明らかであるから、再更正の性質の観点からはやはり一貫性否認論が妥当であるといえよう。しかし、租税訴訟実務の支配的見解は次のとおり述べて、一貫性の欠如を問題にしていない(泉ほか・前掲書50頁。下線筆者)。 ここで租税訴訟実務の支配的見解が減額再更正について「職権による更正・決定の一部取消処分と異なるところはな[い]」と述べているのは、当然のことながら、「職権による更正・決定の一部取消処分」が減額更正処分とは別に実定税法上可能であることを前提としてそのように述べているのではなく、再更正の性質の観点から、昭和56年最判の前記判示と同じく減額再更正の「実質」をそのように述べているものと解される。そうすると、一貫性否認論の説く「うらみ」を解消するには、減額再更正の「実質」の意味を明らかにしておく必要があるように思われる。この点について、昭和56年最判に関する判例評釈で述べられている次の見解(原田尚彦「判批」ジュリスト768号(昭和56年度重判解・1982年)49頁、50-51頁)は示唆に富むものである。 この見解の説くように「増額再更正と減額再更正とでは利益状態が異なる」ことは明らかであり、そのことをもって一貫性の欠如を正当化することには説得力があるように思われる。ただ、この見解が利益状態の差異に関して挙げる問題もあろうが、より直截的かつ一般的には、昭和56年最判が説示するとおり減額再更正が「税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分」であることこそ、増額再更正との利益状態の差異であり、「訴えの利益の解釈に当たっては・・・・・・十分に踏まえる必要がある」とされる「行政行為等の実質的側面」(泉ほか・前掲書44頁)であると考えるところである。 この差異は、更正と再更正との関係を実体法のレベルで考えると、その意味がより一層明確になるように思われる。このことは、次の見解(碓井・前掲「判批」13頁。下線筆者)の説くところからいえるように思われる。 この見解によれば、増額再更正と減額再更正とで利益状態が異なるということは、「課税標準や税額の器」ないし「更正や再更正の効果としての器」に入る課税標準や税額の「量」の増減を意味していることになるが、その「量」の増(追加)又は減(排除)こそが納税者にとって不利か又は有利かを決定する最も重要な要素であると考えられ、しかもそう考えるのが「国民の一般常識」(碓井・前掲「判批」14頁)に合致していると考えられる。この点について昭和56年最判に即していえば、次の理解(清永敬次「判批」民商法雑誌85巻6号(1982年)1023頁、1031-1032頁)が正当であろう。 いずれにせよ、そうすると、昭和56年最判は、減額再更正については、その性質(「実質」)を更正の一部取消処分として理解する立場(一部取消説)に立ち、これを納税者にとって有利な処分とみて、「右の再更正処分に対してその救済を求める訴の利益」を否定したものと解される。ここでいう「訴の利益」は、広義の訴えの利益のうち狭義の訴えの利益であると解される。 以上の検討の結果をまとめると、増額再更正については、昭和55年最判は広義の訴えの利益のうち訴えの対象を問題にし、吸収説の立場から更正を訴えの対象として認めなかったのに対して、減額再更正については、昭和56年最判は狭義の訴えの利益を問題にし、一部取消説の立場から減額再更正に対する狭義の訴えの利益を認めなかったものと解される(このような判例の立場が紛争の一回的解決を重視したものと考えられることについては、拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【147】参照。なお、納税申告に対する増額更正処分の取消訴訟との関係で広義の訴えの利益を検討するものとして、拙著『税法創造論』(清文社・2022年)1022頁以下[初出・2016年]参照)。 確かに、判例は、一貫性否認説の説くとおり、再更正の性質に関しては増額再更正と減額再更正との間で一貫性を欠く立場に立ってはいる。しかし、この一貫性の欠如は訴訟要件の判断において異なる結論に帰着することにはなっていない。それは、昭和55年最判が増額再更正について広義の訴えの利益のうち訴えの対象を問題にし、昭和56年最判が減額再更正について狭義の訴えの利益を問題にしたからである。 Ⅳ おわりに 以上、今回は、更正と再更正の関係について、判例が再更正の性質及び広義の訴えの利益の点において増額再更正と減額再更正とで異なる取扱いを行っていることを確認し、その理由を検討した。 このような取扱いは、裁判所の正常な機能を維持する等という広義の訴えの利益の要請(Ⅰの最後参照)には適合しているのであろうが、納税者の権利救済の観点からは問題があるとされる場合がある。それは下記の場合(原田・前掲「判批」51頁)である。 この問題をどのように考えるかは、訴訟レベルで「総額主義か争点主義かという理論的な問題」(占部・前掲書248頁)の判断にかかっているが、昭和56年最判は減額再更正について「それ自体は、再更正処分の理由のいかんにかかわらず、当初の更正処分とは別個独立の課税処分ではなく、その実質は、当初の更正処分の変更であり、それによって、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分と解するのを相当とする。」(下線筆者)と判示したことから、総額主義の立場から判断したものと解される。総額主義は、前述したように吸収説と結びつけることができる(泉ほか・前掲書48頁参照)だけでなく、一部取消説と結びつけることもできるのである。 要するに、更正と再更正との関係が争点となる課税処分取消訴訟において納税者の権利救済の「壁」となるのは総額主義である。この「壁」をいかに克服するかが課税処分取消訴訟の重要な課題である(いわゆる理由の差替えとの関係でこの「壁」の克服については、金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)1098-1102頁、前掲拙著『税法基本講義』【165】等参照)。 最後に、今回の検討にも関連するが、更正と再更正との関係が争点となる課税処分取消訴訟においては、納税者の地位の安定の確保も重要な課題である。この課題について次の見解(原田・前掲「判批」51頁。下線筆者)は傾聴に値すると思われるので、引き続き検討していくことにしたい。 (了)