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《速報解説》 監査役協会・会計士協会より「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」の改正案が公表される~監査基準の改訂等を反映し、KAMや「その他の記載内容」等について記載~

《速報解説》 監査役協会・会計士協会より「監査役等と監査人との 連携に関する共同研究報告」の改正案が公表される ~監査基準の改訂等を反映し、KAMや「その他の記載内容」等について記載~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年1月27日、日本監査役協会と日本公認会計士協会は、「「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」の改正について(公開草案)」を公表し、意見募集を行っている。 これは、監査基準の改訂等を反映させるためのものである。 意見募集期間は2021年2月26日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 監査基準における規定 監査役等と監査人の連携に関連する規定として、「監査基準における規定」を追加し、「監査上の主要な検討事項」(KAM)などについて記載している。 2 「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」関係 監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」に関連して、次の記載を行っている。 3 「監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容」関係 監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」が2021年1月に改正される予定である。 「その他の記載内容」(監査人が監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容)に関して、「4.連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示」に、「その他の記載内容」に関するコミュニケーション項目(入手時期等)を記載している。 (了)

#No. 404(掲載号)
#阿部 光成
2021/01/29

プロフェッションジャーナル No.404が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年1月28日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.404を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/01/28

これからの国際税務 【第23回】「令和3年度税制改正における国際金融都市対応の項目」

これからの国際税務 【第23回】 「令和3年度税制改正における国際金融都市対応の項目」   千葉商科大学大学院 客員教授 青山 慶二   1 はじめに 2021年は、我が国にとっても国際金融を巡る税務環境が変わる潮目となる年となるかもしれない。その背景としては、コロナ禍による経済不況やデジタル化を含めた産業構造の変革に対応するため、積極的な財政・金融政策を支えるための金融インフラへの期待が挙げられるが、それに加えて、欧州ではBrexitに誘発されるロンドンからの金融にかかわる機能・人材の流失と、アジアでは一国二制度の下で発展してきた香港からの金融にかかわる機能・人材の流失への対応といった、グローバル金融拠点の流動化への対応が重要課題となっている点も付加せねばならないからである。政府は、昨年7月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2020」で、世界中から優秀な人材や資金、情報を集めアジアの国際金融ハブとしての「国際金融都市」の確立を目指す方針を掲げた。この目的に沿った税制改正案が、今回提示されている。 租税競争に対しては、BEPSプロジェクトの下で、デジタル課税の第2の柱の施策(低課税国事業体へのミニマムタックス課税)等によって、「法人税の税率引下競争」を抑制する方向でのコンセンサスは強化されているが、他方で、グローバルな金融ハブ機能の育成・支援という政策目標の遂行の観点からは、立地候補国間での、法人税率にとどまらぬ多面的な租税競争が依然として展開されてきた。我が国税制は、ファンドマネージャーをはじめとしたグローバル投資を担う人材とこれを活用する運用会社にとって、税率以外にもフレンドリーとはいいがたい面があると評価されてきたが、法人税・相続税・所得税にまたがる今回のパッケージの提案は、そのような障害の除去を目指すいわば租税競争支援策でもある。 租税競争についてのこのようなダブルスタンダードは、足の速い金融所得の特徴に対応するための租税政策をリードする「二元的所得課税論」によって、正当化されてきた。税制改正大綱が提案する「国際金融都市に向けた諸改正」も、二元的所得課税論に依拠する現行制度をさらに補完する文脈で捉えることができ、ライバルとなる立地国税制への我が国のキャッチアップの具体化と評価できよう。本稿では、その改正内容を確認し、若干のコメントを付加する。   2 法人税関連 資産運用会社は非上場会社であることが多く、有価証券報告書の提出がないため、役員に対し業績連動給与を支払った場合、法人税法上損金算入できないという課題が、我が国では指摘されてきた。海外で資産運用を行う人材を国内に呼び込む上で、雇用契約に業績連動給与支給対象である旨の記載があり、加えて、同給与の算定方法等が記載された事業報告書が金融庁ウェブサイトへ掲載されることを条件に、特定投資運用業者に該当する青色申告法人について、業績連動給与の損金算入を認める特例が提案されている。 なお、この人材活用の特例に加えて、投資組合契約(LPS)で設立されたファンド(仮に「第1ファンド」と呼ぶ)への投資家(有限責任組合員)もまたLPS契約で設立されたファンド(仮に「第2ファンド」と呼ぶ)である場合に、投資家レベルで我が国でのPE課税等が免除される要件(第1ファンドに対する持分割合が25%未満等)を、これまでの第2ファンド単位ではなく、それに投資する個別投資家単位で認定するという、実定法面での外国投資家課税の軽減策も提案されている。   3 所得税関連 日本での資産運用を担うファンドマネージャーの所得課税軽減策として、当該マネージャーが出資持分を有するファンドからその出資割合を超えて受け取る組合利益の分配(キャリード・インタレスト)について、分配割合が経済的合理性を有する(具体的には利益の配分が恣意的でなく、ファンドマネージャー20%、他の投資家80%などの一般的な商慣習等に基づいていること)など一定の場合には、役務提供の対価として総合課税の対象となるのではなく、株式譲渡益等として金融所得の分離課税の対象となることの明確化等を行うことが提案された。 海外からの人材に不評であった最高55%にも達する累進税率に服する総合課税のリスクを排除し、一律20%の分離課税を保障するものであり、米国の制度(キャピタルゲインとしての20%課税)と同等のものである。併せて、その際のファンドマネージャーによる申告の利便性・適正性を確保する措置も付加されている。   4 相続税関連 高度外国人材の日本での就労等を促進する観点から、就労等のために日本に居住する外国人に係る相続等については、その居住期間にかかわらず、国外に居住する外国人や日本に短期的に滞在する外国人が相続人等として取得する国外財産を相続税等の対象としないこととされた。 従来は、日本に居住する期間が10年以下の外国人が死亡した際に、相続税の課税対象を国内財産に限定するとされていたが、被相続人の居住期間にかかわらず国外財産への追及をなくすことにより、諸外国に比べ重いとされる相続税の負担から解放し、安心して国内就労できる環境を保障するものである。   5 若干のコメント 金融に対する課税は、経済状況などの時代背景によって大きく振れてきた。リーマンショックの際には、欧米を中心に、不当な利益を保持した金融機関に対し、ボーナス税を課したり、金融安定化のための拠出を求める世論が高まった。今回の税制改正をサポートする状況が現在認められることは否定しがたい事実と思われるが、2017年のトランプ税制改革の際には、キャリードインタレスト課税の特例廃止案(未実現)が、格差是正の観点から議会で検討されていたことも忘れてはならないであろう。 また、先進国の中で高いとされる相続税負担水準については、日本の優秀な金融人材の海外流失リスクを防止する観点からの改正ニーズについても、今後の金融のグローバル化の進展の下で念頭に置く必要があると思われる。 (了)

#No. 404(掲載号)
#青山 慶二
2021/01/28

令和2年度税制改正における国外財産調書制度の見直し 【第1回】

令和2年度税制改正における 国外財産調書制度の見直し 【第1回】   税理士 谷口 勝司   -はじめに- 令和2年度税制改正において国外財産調書制度の見直しが行われている。 この国外財産調書制度については、過少申告加算税又は無申告加算税(以下「過少申告加算税等」という)の軽減措置又は加重措置が設けられているが、この軽減措置・加重措置についても、併せて改正が行われている。 また、この税制改正に伴い、平成25年3月29日付課総8-1ほか「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書及び財産債務調書関係)の取扱いについて(法令解釈通達)」(以下「調書通達」という)について、令和2年12月15日付課総9-91により改正が行われ、併せてFAQも改定されている。 国外財産調書制度は、少し馴染みの薄い制度であることから、その全体像が把握できるよう、制度概要とともに改正内容等についてご紹介することとしたい。 Ⅰ 改正前の制度概要 最初に、改正前の制度概要について紹介したい。   1 国外財産調書の提出 居住者(非永住者を除く)は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合には、その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した調書(以下「国外財産調書」という)を、その年の翌年の3月15日までに、所轄税務署長に提出しなければならない(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(以下「調書法」という)5①)。 ただし、国外財産調書の提出期限(その年の翌年の3月15日(注2))までに、国外財産調書を提出しないで死亡し、又は出国したときは、国外財産調書の提出は要しない(調書法5①ただし書)。 (注1) 適用対象者、国外財産の意義及び価額、国外財産調書の記載事項、提出先税務署長等の詳細については、国税庁HPのFAQ等を参照いただきたい。 (注2) 〔編集部追記:2021/2/5〕令和2年分の国外財産調書の提出については、令和3年4月15日(木)まで延長されている(国税庁HPのFAQ)。   2 過少申告加算税等の軽減措置又は加重措置 国外財産調書制度は、自己の保有する国外財産に関する情報を納税者本人から提出を求める仕組みであることから、適正な調書提出に向けたインセンティブとして、以下に述べるように、特例として、過少申告加算税等の軽減措置又は加重措置が設けられている。 ごく簡単に言えば、①国外財産調書を提出した場合には、記載された国外財産に関して所得税(復興特別所得税を含む。以下同じ)又は相続税の申告漏れ等による修正申告等があったときは、その修正申告等による過少申告加算税等を5%軽減する一方、②国外財産調書の提出がない場合又は提出された国外財産調書に修正申告等の基因となる国外財産の記載がない場合(重要事項の記載が不十分な場合を含む)には、当該国外財産に係る所得税の修正申告等の過少申告加算税等を5%加重するというものであった(旧調書法6)。 (1) 国外財産調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置 国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税に関し申告漏れ(過少申告)又は無申告(以下「国外財産に係る事実」という)による修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は更正若しくは決定(以下「修正申告等」という)があり、過少申告加算税又は無申告加算税の適用がある場合において、提出期限(翌年3月15日まで)内に提出された国外財産調書に、その修正申告等の基因となる国外財産についての記載があるときは、この修正申告等につき課される過少申告加算税等の額については、その「国外財産に係る事実」に基づく本税額(加算税の計算の基礎となる本税額)の5%に相当する金額を控除した金額とする(旧調書法6①)。 この特例の対象となる「国外財産に係る所得税」は、国外財産に直接基因して生ずる「所得」に対する所得税である(調書法施行令11①、調書法規則13)。例えば、国外財産から生ずる利子・配当、国外財産の貸付け・譲渡、国外ストックオプション等の行使所得、国外生命保険金・国外年金その他国外財産に基因して生ずる所得がこれに該当する(下記(2)の加重措置においても同様)。この点は、国外財産自体が課税対象となりうる「相続税」と異なることに留意する必要がある。 (2) 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置 国外財産に係る所得税に関し申告漏れ(過少申告)又は無申告による修正申告等(死亡した者に係るものを除く)があり、過少申告加算税又は無申告加算税の適用がある場合において、提出期限内に国外財産調書の提出がないとき又は提出された国外財産調書にその修正申告等の基因となる国外財産についての記載がないとき(重要な事項の記載が不十分であると認められるときを含む)は、この修正申告等につき課される過少申告加算税等の額については、その「国外財産に係る事実」に基づく本税額(加算税の計算の基礎となるべき本税額)の5%に相当する金額を加算した金額とする(旧調書法6②)。 ここで特に留意しておきたいことが、改正前の加重措置は所得税のみが対象とされており、相続税について加重措置は無かったという点である。 (注) 上記(2)のとおり、国外財産調書を提出した場合であっても、修正申告等の基因となる国外財産について「重要な事項の記載が不十分であると認められるとき」は、記載がなかったとき又は国外財産調書の提出がなかったときと同様に加重措置の対象となるが、この「重要な事項の記載が不十分であると認められるとき」とは、申告漏れ等の基因となる国外財産であるかどうかの特定に必要な「国外財産の種類、数量、価額、所在」といった記載事項につき、記載誤り又は記載事項の一部が欠けていることにより、所得の基因となる国外財産の特定が困難である場合をいう(調書通達6-3、調書法規則12①)。 (3) 期限後に提出された調書の取扱い 国外財産調書が提出期限後に提出され、かつ、修正申告等があった場合において、当該国外財産調書の提出が、当該国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税についての調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、当該国外財産調書は「提出期限内に提出されたもの」とみなして、上記(1)又は(2)の軽減措置・加重措置を適用する(旧調書法6④)。   3 故意の国外財産調書の不提出等に対する罰則規定 この制度においては、故意に、不提出、虚偽記載による提出、虚偽答弁等の行為をした者に対して、罰則規定(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が設けられている(調書法9、10)。   4 国外財産調書の提出状況等 国税庁HPにおいて公表されている平成30年分(平成30年12月31日時点)の国外財産調書の提出状況は以下のとおりである。 (1) 提出状況 (2) 加算税の特例措置適用件数 (注) また、国税庁は、「令和元年度 査察の概要」において、上記3の国外財産調書の不提出に関する罰則適用について、初めて告発したと公表している。   (了)

#No. 404(掲載号)
#谷口 勝司
2021/01/28

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第1回】「5年超前の過誤納固定資産税の還付が認められた判例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第1回】 「5年超前の過誤納固定資産税の還付が認められた判例」   税理士 菅野 真美   ▷固定資産税の課税 固定資産税は、その年1月1日に土地、家屋、償却資産を有する者について、市町村(東京都特別区においては東京都)がこれらの価額に基づいて課税するものである。所得税等は納税者の申告に基づいて課税される制度であるが、固定資産税は賦課決定という課税主体(市町村)が課税標準や納付すべき税額を決める制度である。課税標準となる固定資産の価格は、固定資産評価基準によって決定しなければならない(地方税法403条1項)。どのようにして決めていくかというと、市町村の職員が、納税者とともにする実地調査、納税者に対する質問、納税者の申告書の調査等のあらゆる方法によって、公正な評価をするように努めなければならないとされている(地方税法403条2項)。 固定資産税の課税標準については減額制度がいくつか設けられているが、住宅地については課税標準となるべき価格の3分の1の額とされ、小規模住宅用地については6分の1の額とされる。軽減措置の適用を受けるために市町村は納税者に必要事項を申告させることができ(地方税法384条1項)、もし、納税者が正当な事由がなくて申告しなかった場合は、条例で10万円以下の過料を課す規定を設けることができる(地方税法386条)。 固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合は、期間制限があるが、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができ、価格以外の課税の内容について不服がある場合は、行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。市町村は、過誤納金がある場合は速やかに還付しなければならないが(地方税法17条)、過去にさかのぼって還付できる期間は通常5年とされている。それでは、5年を超えた過去の過誤納部分の還付を受けることは可能だろうか。 本件は、国家賠償法1条(国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる)に基づく還付(ただし過失相殺による2割減額)が認められた事案である。   ▷どのような事案か   ▷争点は何か 主たる争点として下記3点があった。 ① 国家賠償法上の違法性があるか 納税者は、東京都が小規模住宅用地及び市街化区域農地として賦課決定すべき職務上の義務を負っていたにもかかわらず、非住宅用地及び一般住宅用地として課税し、過大な固定資産税等を賦課したことは国家賠償法1条1項の違法があると主張した。 東京都は、納税者が申告義務を履行していないから、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく認定を誤ったとはいえないから違法性はないと主張した。 ② 消滅時効は完成しているか 国家賠償法に基づく損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅するとされている(国家賠償法4条、民法724条1号)。 納税者は、平成26年10月頃に指摘されて初めて誤りを知ったが、同時点においても具体的にどのような損害があったのか認識できておらず、平成27年2月に過去5年分の過納付金の還付を受けて初めて具体的な損害の発生を認識した。そのため消滅時効の起算点は、平成27年2月、又は早くとも平成26年10月頃であると主張した。 東京都は、毎年度送られる課税明細書等には「全部非住宅用地」と記載されており、住宅用地の特例の案内や住宅用地所有者の申告義務について注意を喚起する文言が記載された文書を同封していたことから、請求が事実上可能であったのは平成17年分から平成21年分の納税の時点からである。既に3年以上経過しているから、消滅時効は完成していると主張した。 ③ 過失相殺はあるか 納税者は、口頭の説明の形式で申告することも認められるべきであり、平成16年3月又は4月に都の職員が訪問した時に資料を交付して、固定資産税等の評価のために必要な説明をしているから住宅用地の申告をしているし、職員から申告書の提出も求められなかった。また、市街化区域農地について一般住宅用地又は非住宅用地と認定したことは、申告書の提出と無関係の誤った課税であるから、申告書の提出は過失相殺にならないと主張した。 東京都は、住宅地の所有者として申告義務を負っているのに義務を履行しなかったから過失相殺するのが相当と主張した。   ▷裁判所の判断 ① 国家賠償法上の違法性があるか これは違法性があるとした。固定資産税は賦課決定制度であり、小規模住宅用地や市街化区域農地の所有者の申告要件で軽減が認められるものではない。建物の外観から、多数の住居からなる居住用建物であることがわかり小規模住宅用地に該当することが明らかであり、農地であることの判別が外観上困難である事情もなかった。つまり、職員が、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことがなく特例を適用せずに評価・認定したから違法性があるとした。 ② 消滅時効は完成しているか 消滅時効は、平成26年10月頃に職員から連絡が来るまで何らの対応をしていないことから、同月以前に過誤納付による損害を知っていたものと認めることはできないとした。 ③ 過失相殺はあるか 過失相殺として2割控除するとした。納税者の不申告が損害の発生及びその増大に一定程度寄与しているから過失相殺は考慮すべきであるが、申告したとしても、非住宅用地又は一般住宅用地と認定するような誤りが是正されず残った可能性もある。本件は東京都側の複数のミスが重なった結果というべきだから、納税者の過失を過大に評価することはできないとした。 *   *   * このように、5年を超えた固定資産税の過誤納の還付は可能であるが、本ケースにおいて納税者が無申告でも過失相殺が2割であったのは、明らかに手抜きであったと疑われるようなミスが原因の過誤納であったからと考える。それでは、納税者が税理士の場合でも過失相殺2割が認められただろうか。 (了)

#No. 404(掲載号)
#菅野 真美
2021/01/28

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第14回】「災害で滅失した居住用家屋の跡地を月極駐車場で貸していた場合」-災害跡地の譲渡-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第14回】 「災害で滅失した居住用家屋の跡地を月極駐車場で貸していた場合」 -災害跡地の譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、12年前に敷地と共に取得した居住用家屋が、一昨年9月の大型台風で滅失してしまいました。 昨年1月から、その敷地を月極駐車場として貸していましたが、本年11月に売却したところ、多額の譲渡損失が発生しました。 他の適用要件が具備されている場合に、Xは、当該土地のみの譲渡について、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 「災害」により滅失したその居住の用に供している家屋の敷地の用に供されていた土地等の譲渡、その居住の用に供している家屋でその居住の用に供されなくなったものの譲渡、又は、その家屋とともにするその家屋の敷地の用に供されている土地等の譲渡が、これらの家屋をその居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されている場合には、その譲渡資産は、その居住の用に供されなくなった以後どのような用途に供されている場合であっても、「特例」の適用を受けることができます(措法41の5⑦一ロ、措通41の5-6(災害滅失家屋の跡地等の用途))。 なお、「災害」については、震災、風水害、火災その他政令で定める災害をいうものと規定されています(所法2①二十七、所令9、措通31の3-13(「災害」の意義))。 したがって、本事例の場合、居住用家屋が災害により滅失した跡地を月極駐車場として貸していましたが、居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されていることから、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることができます。 おって、この取扱い規定は、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても準用されます(同条⑦一ロ、措通41の5の2-7(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用))。 (了)

#No. 404(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/01/28

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例94(相続税)】 「特定事業用及び特定居住用宅地等に該当する借地権の計上を失念したため、結果として小規模宅地の選択誤りとなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例94(相続税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆借地権者の地位に変更がない旨の申出書 親が借地している土地の所有権(底地)を子が地主から買い取った場合に、親と子の間で地代の授受が行われないときは、親の所有していた借地権は、子が土地を買い取ったときに借地権者である親から子に贈与があったものとして取り扱われる。ただし、子が土地の所有者となった後も、引き続き借地権者は親であるとして「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を子の所轄税務署長に提出したときは、贈与として取り扱わないことになっている。 なお、この申出書の提出があった場合において、将来親に相続が開始したときは、その借地権は親の相続財産として取り扱われる。 ◆小規模宅地等についての相続税の課税価額の計算の特例(措法69の4) 相続により取得した財産のうちに被相続人の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で建物や構築物の敷地の用に供されているものがある場合には、一定要件のもとこれらの宅地等につき一定割合の評価減が受けられる(下表参照)。なお、この特例は借地権にも適用がある。 ◆小規模宅地等の特例における申告要件(措法69の4⑦) 小規模宅地等の特例の適用に関しては、申告要件が付されており、相続税の期限内申告書(その申告に係る期限後申告書及び修正申告書を含む)にこの特例の適用を受ける旨を記載し、一定の書類の添付がある場合に限り適用することとされている。 したがって、当初申告において小規模宅地等の特例の適用がある宅地等に特例を適用しないで申告した場合には、更正の請求はできない。 ◆小規模宅地等の特例における宅地等の選択替えの可否(措令40の2⑤) 小規模宅地等の特例の適用において、特例対象宅地等が2以上ある場合又は特例対象宅地等を取得した者が2人以上あるときは、その選択に関する一定の書類を相続税の申告書に添付することとされている。 したがって、特例対象宅地等の選択は、相続税の申告において確定することとなり、その後において、宅地等についての選択替えは認められず、更正の請求もできない。       (了)

#No. 404(掲載号)
#齋藤 和助
2021/01/28

〔弁護士目線でみた〕実務に活かす国税通則法 【第9回】「更正等の期間制限を意識する」

〔弁護士目線でみた〕 実務に活かす国税通則法 【第9回】 「更正等の期間制限を意識する」   弁護士 下尾 裕   これまで数回にわたり、本連載では、附帯税に関する議論を取り扱ってきたが、本稿では、更正等の期間制限について取り扱う。   1 更正等の期間制限の意義等 (1) 更正等の期間制限の意義 更正等の期間制限とは、国税通則法では「国税の更正、決定等の期間制限」と表記されており、端的には、課税庁が納税者に更正処分等を行うにあたってのタイムリミットである。更正等の期間制限は、民法の消滅時効とは異なり、途中でそのカウントが停止したりすることはなく、「除斥期間」、すなわち、法定の期間が経過すれば一律に更正等が制限される性質のものであるなどと説明されている。 税務調査対応にあたっては、上記更正等の期間制限が存在することにより、どのタイミングで更正等を受けるか、さらには後述する「偽りその他不正の行為」により期間制限が延長されるかにより、最終的な増差税額等に差異が生じてくることになる。よって、税理士等の立場においては、税務調査における税務当局からの指摘事項につき、最大何年度又は何事業年度に遡って更正等を受ける可能性があるのかを意識することが重要であることは言うまでもない。 この期間制限については、国税通則法第70条が原則的期間を定めるほか、一定の場合に原則的期間経過後も特例として更正等を認める建付けとなっており、詳細は以下のとおりである。 【原則的期間】 (※1) 期間制限の満了間際になされた更正の請求に係る更正又はその更正に伴って行われる加算税の賦課決定については、更正の請求があった日から6ヶ月を経過する日まですることができる(国税通則法第70条第3項)。また、期間制限満了前3ヶ月以内にされた税務申告に伴う無申告加算税又は不納付加算税の賦課については、税務申告書の提出日から3ヶ月を経過する日まですることができる(国税通則法第70条第4項)。 (※2) 国外転出等特例の適用を受ける所得税の更正決定等については、法定申告期限から7年(国税通則法第70条第5項第3号)。 【特例】 (2) 国税徴収権の消滅時効との差異 更正等の期間制限とよく似た概念として、国税徴収権の消滅時効(国税通則法第72条)がある。両者の差異は、上記更正等の期間制限が更正により納税義務を発生させるにあたっての期間制限であるのに対し、国税徴収権の消滅時効は既に存在する納税義務を前提に納付すべき税金を徴収するにあたっての期間制限である点にある。 また、この消滅時効は、納税者において消滅時効の利益を放棄できないなど民法の消滅時効とは異なる部分があるが、請求行為を行うなどの対応により消滅時効の完成猶予又は更新が可能である点において、更正期限とは異なる。   2 「偽りその他不正の行為」の意義 上記のとおり、納税者において「偽りその他不正の行為」が存在する場合には、期間制限が7年間に伸長される。よって、更正等の期間制限を正確に理解するにあたっては、上記原則的期間制限における例外である「偽りその他不正の行為」の意義を理解しておく必要がある。 ここでの「偽りその他不正の行為」は、脱税の処罰規定(所得税法第238条第1項等)においても用いられている用語である。最高裁平成18年4月25日判決・民集60巻4号1728頁(TAINSコード:Z256-10377)の最高裁判所調査官による判例解説においても、「脱税事案においては長い除斥期間を定め課税の適正を図ることを意図した」規定と理解され、上記脱税の罰則規定における文言と同様に、「逋脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能若しくは著しく困難ならしめるような何らかの偽計その他の工作を行うこと」(最高裁昭和42年11月8日判決・刑集21巻9号1197頁(TAINSコード:Z999-9099))を意味するものと説明されている(『最高裁判所判例解説民事編平成18年度(上)』630頁以下)。 この上記刑事犯の考え方だけを読むと、「偽りその他不正の行為」については「逋脱の意図」(すなわち、脱税の意図)が必要であるように理解されるが、実際の実務においては、「重加算税の課税要件である「仮装隠蔽」とこの条の「偽りその他不正の行為」とは現実には多くの場合相互に一致して重なりあうなどと説明され、脱税として処罰される場合以外の仮装隠蔽行為等にも広く適用されているように見受けられる(志場喜徳郎他編『国税通則法精解 第十六版』(大蔵財務協会、2019)863頁)。 また、上記最高裁平成18年4月25日判決は、税理士が納税者との意思の連絡なく、脱税に相当する行為を行った事案であるが、重加算税の要件である仮装隠蔽行為との関係では納税者と税理士間の意思の連絡があることを要求した一方、「偽りその他不正の行為」との関係では、納税者の認識を問わず、税理士の「逋脱の意図」のみをもって期間制限の延長を認めており、納税者自身の「逋脱の意図」は不要と整理している。 私見では、元々が脱税の刑事処罰規定の概念であるはずの「偽りその他不正の行為」について、主観面の人的範囲をより広く理解するという上記判例の解釈には違和感が残るものの、事情を知らなかった納税者に本税は納めさせつつ、附帯税等のペナルティは課さないという結論ありきでの判断とみれば、結論自体は理解しうるようにも思われる。ただ、今後、税理士自身に「逋脱の意図」がない場合において、納税者にどの程度の主観的認識があれば「偽りその他不正の行為」が認められるのかについては、なお議論を残しているものと言わざるを得ない。 今後の留意点については、重加算税の賦課が問題となる事案では、課税庁より広く「偽りその他不正の行為」の存在が主張され、更正期限が7年に伸長される危険性があることを念頭に置いておく必要があろう。 (了)

#No. 404(掲載号)
#下尾 裕
2021/01/28

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第46回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第46回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   (6) 資産の引渡しの時の価額等の通則を定める法人税基本通達2-1-1の10 法人税法22条の2第4項は、資産の販売等に係る収益の額として1項又は2項の規定により、益金の額に算入する金額は、原則として、「その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額」(以下「引渡し時の価額等」という)とする旨定めている。 この引渡し時の価額等について、法人税基本通達2-1-1の10は、原則として資産の販売等につき第三者間で取引されたとした場合に通常付される価額をいうとしている。この通達の趣旨は、次のとおりである(国税庁「平成30年5月30日付課法2-8ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明」26頁参照)。 上記通達が「原則として」資産の販売等につき第三者間で取引されたとした場合に通常付される価額と表現しているように、第三者間で付された金額でありながら、「時価」について問題とされる事例も存在することから(長島弘「収益認識基準対応としての法人税法22条の2の問題点」会計・監査ジャーナル30巻12号115頁参照)、特殊なケースにおいては細心の注意を払う必要がある。 多くのケースにおいて、「引渡し時の価額等」=「第三者間で取引されたとした場合に通常付される価額」という図式が当てはまるため、これを簡便的に用いるとしても、価格決定に特殊な事情や考慮が認められる限界事例においては、やはり、「資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額」の意味するところに立ち返って熟慮する必要がある。 上記法人税基本通達2-1-1の10は、なお書きで「資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度終了の日までにその対価の額が合意されていない場合は、同日の現況により引渡し時の価額等を適正に見積もるものとする」ことを明らかにしている。販売代金の額が確定していない場合の見積りについての旧法人税基本通達2-1-4《販売代金の額が確定していない場合の見積り》の取扱いを平成30年度税制改正後も同様に維持するということである。 例えば、棚卸資産の販売による収益は、原則として引渡基準により計上することになるが、棚卸資産の引渡しは了したにもかかわらず、その販売代金の額が最終的に折り合っていない(合意されていない)場合に、上記の取扱いによれば、その引渡しの日の属する事業年度末の現況により、その販売代金の額を合理的に見積もって収益計上することとなる。本通達のなお書は、契約上の対価の額が決まっていない場合でも、期末の現況により適正に見積もられた金額は、本通達の本文の「価額」又は「通常得べき対価の額」に該当することを確認的に明らかにしているのである(上記趣旨説明26頁参照)。 それでは、見積計上額とその後に確定した対価の額に差額がある場合の取扱いはどうなるのか。この点に関して、本通達(注)1は次のとおり定めている。 ところで、実際の取引価額等が法人税法22条の2第4項が定めるところの時価と異なる場合に、その全ての取引を時価に引き直す処理(申告調整)をする必要があるかという問題がある。 国税庁の説明によれば、例えば、法人が販売促進目的で、現金に換えて有価証券(時価100万円、簿価20万円)を贈与したとすれば、法人税法上は、収益が100万円生じ、その譲渡原価が20万円計上され、販売促進費が100万円計上されるという(上記趣旨説明26~27頁参照)。 取引価額等が時価と異なる取引であっても、借方が損金不算入項目でない場合には、引渡しの時の価額がその取引に関して支払を受ける対価の額を超える部分、本件については無償であるため譲渡資産の帳簿価額を超える部分である80万円が益金の額に算入され、差引きしたところの譲渡資産の簿価相当額が損金の額に算入されることになる。 この点を踏まえて、上記通達(注)2は、資産の引渡しの時の価額が、その取引に関して支払を受ける対価の額を超える場合において、その超える部分が、寄附金又は交際費等その他のその法人の所得の金額の計算上損金の額に算入されないもの、剰余金の配当等及びその法人の資産の増加又は負債の減少を伴い生ずるもの(損金不算入費用等)に該当しない場合には、その超える部分の金額を益金の額及び損金の額に算入する処理(申告調整)を行う必要はないことを留意的に明らかにしている(上記趣旨説明27頁参照)。 上記超える部分の金額について、その超える部分が損金不算入費用等以外であれば、両建て処理をする必要はないということであり、実務上も、これまでもそうしていたであろうことを明確化したものということになる。 後に改めて検討するが、『平成30年度 税制改正の解説』においても次のような説明がされている。 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』276頁   (了)

#No. 404(掲載号)
#泉 絢也
2021/01/28

〔強制適用前におさえておきたい〕監査上の主要な検討事項(KAM)への対応と留意点 【第1回】「KAMの基礎的事項」

〔強制適用前におさえておきたい〕 監査上の主要な検討事項(KAM)への対応と留意点 【第1回】 「KAMの基礎的事項」   RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋   2018年7月5日に、金融庁・企業会計審議会から「監査基準の改訂に関する意見書」が公表された。この公表により、「監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters:KAM)」が導入された。 KAMとは、「監査の過程で監査役等と協議した事項の中から、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項」をいう(日本公認会計士協会 監査基準委員会報告書(以下、「監基報」という)701.7)。 今まで、監査報告書はどの会社も同じ文面であった。しかし、KAM導入後は、企業によって、KAMが異なるため(KAMは会社固有の事項について記載するため)、金融商品取引法の監査報告書も企業によって異なる。 なお、KAMはあくまでも監査上、特に重要な事項を記載するだけであって、個々の論点について個別の監査意見を表明するわけではなく、有価証券報告書の注記を代替するものではない(監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」(以下、「監研報6」という)4)。 〈KAM導入による効果〉 従来の監査報告書では、どの会社でも同じ文面であったため、個々の会社においてどのような監査が実施されたのかについて外部から知ることはできず、監査がブラックボックス化していると言われていた。そのため、KAMを導入することにより、以下の効果が期待されている(監研報6.4)。   1 KAMの決定過程 監査人は、毎期、監査の過程で監査役等と協議する。 そして、その協議した事項から、以下の項目等(※1)を考慮して、「特に注意を払った事項」を決定する(監基報701.8)。 (※1) 上記(1)から(3)の項目は限定列挙ではない。そのため、(1)から(3)に該当しない項目が「特に注意を払った事項」に該当する場合もある。 (※2) 特別な検討を必要とするリスクとは、監査人が識別し評価した重要な虚偽表示リスクの中で、特別な監査上の検討が必要と監査人が判断したリスクをいう(監基報315.3(3))。 最後に、「特に注意を払った事項」から当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要(相対的な重要性)であると判断した事項(=KAM)を決定する(監基報701.9)。特に重要であるかどうかは、相対的な重要性を考慮して決定されるため、同業他社等との比較において重要であるかどうかは考慮する必要はない(監研報6 Q2-7)。 【KAM決定のイメージ図】 KAMは各社の相対的な重要性により決定されるため、KAMがゼロになるケースは稀であると考えられる。ただし、強いて挙げると、事業活動を行っていない純粋持株会社における個別財務諸表においてKAMがゼロになるケース等はあると考えられる(監研報6 Q2-6)。   2 監査報告書の記載事項 (1) 冒頭の記載 監査人は、KAMについて、監査報告書の「監査上の主要な検討事項」の区分の冒頭に以下を記載する(監基報701.10)。 (2) 個々のKAMの記載 上記(1)の記載の下に個々のKAMに適切な小見出しを付して、以下を記載する(監基報701.12)。 なお、連結財務諸表及び個別財務諸表の監査を実施していて、連結財務諸表の監査報告書において同一内容のKAMを記載している場合、個別財務諸表の監査報告書においてその旨を記載し、当該内容の記載を省略することができる(監基報701.12)。 【監査報告書の全体像】   3 KAMと企業による開示との関係 企業に関する情報を開示する責任は経営者にあり、KAMの記載は、経営者による開示を代替するものではない。監査人がKAMを記載するために、企業がまだ未公表の情報を記載する必要があると判断した場合には、経営者に追加の情報開示(注記、有価証券報告書の経理の状況より前での開示、決算短信等)を促すことが考えられる。また、必要に応じて監査役等と協議を行うことが適切である(監査基準の改訂について 二1(5))。 なお、監査人が追加的な情報開示を促した場合において経営者が情報を開示しない場合、監査人が正当な注意を払って職業的専門家としての判断において当該情報をKAMに含めることは、監査基準に照らして守秘義務が解除される正当な理由に該当する(監査基準の改訂について 二1(5))。   4 適用対象及び適用時期 (1) 適用対象 金融商品取引法上の監査報告書(年度)に適用される。なお、非上場企業のうち、「資本金5億円未満又は売上高10億円未満」かつ「負債総額200億円未満」の企業は除かれる(監研報6 Q2-1)。 〈IPOの場合〉 IPO会社の新規上場時の有価証券届出書に係る監査報告書におけるKAMの記載が必要か否かは「直前期」の資本金、売上高、負債の金額で判定する(監研報6 Q2-1)。 直前期が「資本金5億円未満又は売上高10億円未満」かつ「負債総額200億円未満」に該当しない場合(以下、「金額基準以上」という)、直前々期及び直前期の監査報告書において、KAMの記載が必要である。一方、直前期が「資本金5億円未満又は売上高10億円未満」かつ「負債総額200億円未満」に該当する場合(以下、「金額基準未満」という)、直前々期及び直前期の監査報告書において、KAMの記載は不要である。 なお、直前々期は金額基準以上であるが、直前期では金額基準未満である場合、直前々期及び直前期ともにKAMの記載は不要である。このように判断するのは、KAMの記載が必要か否かの判断は「直前期」で行うためである。   (2) 適用時期 2021年3月31日以後に終了する連結会計年度及び事業年度から適用される。ただし、2020年3月31日以後に終了する連結会計年度及び事業年度から早期適用することもできる。   5 会社法の監査報告書 会社法においては、実務的な負荷が大きいため、会社法の監査報告書においては、KAMの記載は求められていない。なお、任意でKAMを記載することは可能である。 (了)

#No. 404(掲載号)
#西田 友洋
2021/01/28
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