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〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第39回】「別表6(19) 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第39回】 「別表6(19) 地域経済牽引事業の促進区域内において 特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 今回は、前回解説したいわゆる「地域未来投資促進税制」のうち、特別償却に代えて税額控除制度を適用する場合の「別表6(19) 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」(※1)の記載の仕方を採り上げる。 (※1) 平成31年度税制改正を受け法人税申告書の様式が改正され、一部変更の上、この別表は6(17)から6(19)に番号が変更となった。 Ⅱ 概要 この別表は、青色申告法人で地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律(以下「地域経済促進法」という)第24条に規定する承認地域経済牽引事業者に該当するものが、租税特別措置法(以下「措置法」という)第42条の11の2第2項(地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定の適用を受ける場合に作成する。 すなわちこれは、青色申告を提出する法人が、指定期間内(平成29年7月31日から令和3年3月31日までの間(※2))に、地域経済活性化に貢献する一定の事業計画に基づいた承認地域経済牽引事業について、一定の規模の機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物(以下「特定事業用機械等」という)を取得し、その事業の用に供したときは、その事業の用に供した日を含む事業年度において、その特定事業用機械等の基準取得価額(100億円(又は80億円)を限度とする)の2%又は4%(又は5%)(※3)の税額控除ができる制度である。 (※2、3) 平成31年度の税制改正において、本制度の適用期限が平成31年3月31日から2年延長されるとともに、主務大臣が確認を行う課税特例要件のうち、直近事業年度の付加価値額の増加率が8%以上の上乗せ要件を満たす場合には、機械装置・器具備品の投資について「50%」の特別償却もしくは「5%」の税額控除が新たに受けられることとなり、対象資産の取得価額の合計額は80億円が限度とされる改正が行われている。 本制度において適用される特別償却と税額控除の割合の一覧は次の通りである。 なお本税額控除制度は、中小企業者等以外の法人が平成30年(2018年)4月1日から令和3年(2021年)3月31日までの間に開始する各事業年度において、研究開発税制等の生産性の向上に関する特定の税額控除制度を適用しようとする場合に、以下の(イ)及び(ロ)の要件のいずれにも該当しない場合には、適用ができないことになっている。詳細は、【第35回】の解説を参考にしていただきたい。   Ⅲ 「別表6(19)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成31年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 (4) 別表の各記載欄の説明 〔特定税額控除規定の適用可否〕欄 〔法人税額の特別控除額の計算〕欄 〔機械設備等の概要〕欄 (※5) 本稿公開日現在、平成31年度税制改正を踏まえた特別償却の付表(6)の様式は公表されていない。 (了)

#No. 324(掲載号)
#菊地 康夫
2019/06/27

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第11回】「有価証券を寄附する場合の注意点」

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第11回】 「有価証券を寄附する場合の注意点」   公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香   - 質 問 - 有価証券を公益法人等に寄附する場合、租税特別措置法40条の適用を受けるために何か注意する点はありますか。   - 回 答 - 有価証券の寄附者が租税特別措置法第40条の適用を受けるためには、寄附財産そのものが当該公益法人等の公益目的事業において直接利用されることが必要とされます。 しかし、有価証券はその性質上、そのもの自体を公益目的事業の用に供することはできません。この場合、有価証券から生ずる果実(配当金)の全部が当該公益目的事業の用に供されるかどうかにより、当該財産が当該公益目的事業の用に直接供されるかどうかを判定することになっています。 したがって、当該有価証券からの配当が見込まれないような場合は、適用を受けられない恐れがあります(措置法40条通達13注書)。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 財産等が贈与又は遺贈に係る公益目的事業の用に直接供されるかどうかの判定は、原則として、当該財産等そのものが、当該贈与又は遺贈を受けた公益法人等の当該贈与又は遺贈に係る公益目的事業の用に直接供されるかどうかにより行われます。 しかし、有価証券のようにその性質上、そのもの自体を公益目的事業の用に供することができない場合は、当該有価証券から生じる配当金の全部を公益目的事業の用に供することをもって、判断するとされています。 したがって、定期的に配当が行われていない有価証券の場合は、この条件に該当しないため、租税特別措置法第40条の適用が受けられない恐れがあります。 なお、寄附先が行政庁から公益認定を受けた公益社団法人・財団法人であり、 以上全てを満たす場合には、承認特例の条件に該当することとなるため、国税庁長官への承認申請後3ヶ月以内にその申請について国税庁長官の承認がなかったとき、又は承認しないことの決定がなかったときは、譲渡所得税が非課税とされる制度もあります。 ただし、有価証券の寄附者が承認申請後一定の期日までに定められた書類の提出を行わなかった場合や、公益社団法人・財団法人の役員等及び社員並びにこれらの人の親族等に該当していた場合、若しくは該当することが予定されていた事実が後になって判明した場合には、非課税承認が取り消されます。 非課税承認が取り消された場合、書類の提出を怠ったケースでは寄附者に、役員等に該当もしくは該当することが予定されていたケースでは公益社団法人・財団法人に、原則としてその取り消された日の属する年分の譲渡所得等として所得税が課されることになります(措令25の17⑩⑫⑬)。   (了)

#No. 324(掲載号)
#中村 友理香
2019/06/27

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第30回】「被相続人が外国籍である場合の相続人・相続分の根拠法」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第30回】 「被相続人が外国籍である場合の相続人・相続分の根拠法」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 私は税理士ですが、このたび被相続人が外国籍である人の相続税の申告業務を依頼されました。未分割遺産の相続税の計算や、相続税の総額を計算する際には、法定相続人・相続分の情報が必要となりますが、この場合の「相続人・相続分」とは、日本の民法に基づくものですか、それとも被相続人の本国法に基づくものでしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷被相続人が外国籍である場合 被相続人が外国籍である場合、その者に関する相続はどこの法律に基づくかについては、日本においては、法の適用に関する通則法36条により、被相続人の本国法によることが定められている。また、その者が遺した財産について日本で相続税が課せられるかどうかは、相続税法に基づく。 ここで、相続税法により相続税の計算をする過程で必要となる相続人・相続分は、被相続人の本国法に基づくものか、日本法に基づくのかによって、その結果が異なる場合がある。 そこで本稿では、被相続人が外国籍である場合において、未分割遺産の相続税の計算をする場合の相続人・相続分及び、相続税の総額を計算する場合の相続人・相続分が、それぞれどの国の法律に基づくものかを検討する。   ▷未分割遺産の相続税計算における相続人・相続分の根拠法 申告期限までに遺産が分割されない場合は、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2(寄与分)を除く)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして、その課税価格を計算するものとされている(相法57①)。 ここで、被相続人が外国籍の場合、相続人・相続分は被相続人の本国法に基づくのか、日本法に基づくのかという論点がある。この点については、国税庁・質疑応答事例「被相続人が外国人である場合の未分割遺産に対する課税」で回答されている。 上記の質疑応答事例では、法の適用に関する通則法第36条により、相続は被相続人の本国法によることとされているから、被相続人の本国法の規定による相続人及び相続分を基として計算するとされている。 なお、この事例の基になったのは、昭和57年8月10日の裁決事例(TAINSコード:F0-3-051)と考えられることから、以下では、この裁決事例について検討する。   ▷裁決事例の概要 中華民国(台湾)国籍の被相続人の三女が被相続人の相続税の申告書を提出しなかったところ、課税庁から決定処分を受けたが、その取消しを求めて三女は審査請求をした。ちなみに三女は、中華民国の国籍を有する者と養子縁組をしており、実親の相続段階では、養子縁組は解消されていない。 三女は、不動産の名義人は被相続人であるが、実際には被相続人の弟が自分で働いて得たお金でその不動産を取得し自己の事業と居住の用に供したものであるから、所有権は弟に帰属しており、相続税の決定処分は不当であると主張した。 これに対して課税庁は、所有権が弟であるとする主張は認められないと主張した。その根拠の1つとして、被相続人名義の不動産の賃料収入が、被相続人の所得税の確定申告の中に含まれていた。 また、被相続人は中華民国国籍を有していることから、相続人については中華民国の民法が適用されるのが相当であり、それによると、妻、長女、次女、三女、長男、次男の6人が土地、建物を均分に取得したと認定するのが相当であると主張した。 審判所は、三女に対する相続税を課した処分が失当であるとして、原処分を全部取り消した。取り消した根拠は、中華民国の民法における養子の取扱いに基づいている。 日本の民法において、普通養子は、養子縁組後も実父母と実子の縁は継続される。他方、中華民国の民法では、日本の特別養子のように、養子縁組期間中は、養子は実親の遺産を相続できないと解されており、養子縁組が終了した時から生父母との関係が回復されると定められている。 この事案において、三女は実親の相続があった時点で、別の中華民国籍の者の養子となっていた。被相続人は中華民国籍であるから、相続は中華民国の民法に従うことになる。中華民国では、養子は実父母の遺産を相続できないと解されるから、他者の養子となっている三女は被相続人の財産について相続権がない。よって、三女に対して実親の相続により財産を取得した者として未分割遺産の課税を行うのは不当であるとして処分を取り消した。   ▷相続税の総額計算における相続人・相続分の根拠法 相続税額の計算過程においては、法定相続人や法定相続分が登場する。例えば、生命保険金や退職金を相続人が取得した場合の非課税金額(法定相続人の数×500万円)や、相続財産の総額から遺産に係る基礎控除額を差し引く場合(法定相続人の数×600万円)等である。 また、上記を含む手順を経て算出された課税遺産総額を法定相続分・代襲相続分に応じて取得したものとして、各取得金額について相続税額を計算したその合計額が、相続税の総額となる(その後は実際の取得財産の比率によって相続税の総額を按分する)。 上記の計算における法定相続人は、被相続人が外国籍の場合であっても、日本の相続法(民法)に基づいて計算するものとされている。なぜならば、これは政策的な非課税金額を算定するためや、遺産課税方式と遺産取得課税方式の折衷である日本の相続税の計算過程の一部であり、相続の問題というよりも、日本の相続税の算定のための技術的な要素である。よって、日本の相続法に基づき画一的に算定するのが合理的だからと考える。   (了)

#No. 324(掲載号)
#菅野 真美
2019/06/27

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第6回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第6回】   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   2 法人税法22条2項の考察 法人税法22条の2の規定内容を理解するために、法人税法22条2項に関するいくつかの論点について、補足的に考察をしておく。 (1) 収益の額と別段の定めによる益金算入額・不算入額との関係 法人税法22条2項にいう益金の額に算入すべき金額を構成する「収益の額」と「別段の定めによる益金算入額・不算入額」の関係について、受取配当金を例に確認しておこう。 法人税法は、法人株主の受取配当について、配当を支払う法人段階とそれを受け取る株主段階とを通じる税負担の調整を行うための仕組みとして、受取配当等の益金不算入制度を用意している(法法23)。 法人税・所得税の負担調整措置の一環として捉えられることもあるが、現在では、配当を支払う法人の段階で既に法人税が課税されていることに着目して、その二重課税(多重課税)を避けるため、内国法人からの配当を受け取る法人の段階でその配当の額を益金不算入としているといわれる。もっとも、現行法は、持株比率を目印として支配目的で所有する株式に係る配当金の益金不算入割合を高く設定している(いわば、持株比率の低い株式は、投資目的など支配目的以外で所有していると判断されることになる)。 持株比率の高い支配目的で所有する株式に係る受取配当金については、他の投資機会との選択に税制がバイアスを与えないように、益金不算入の割合を高くしたものと説明される(国税庁『昭和63年 改正税法のすべて』354~356頁、財務省『平成27年度 税制改正の解説』339~340頁参照)。 あるいは、法人間の配当を同一企業の内部取引と同視する考え方を採用しているという説明もわかりやすい。法人間で配当を繰り返せば、1つの経済的利益が課税によってどんどん目減りする一方で、親子会社形態ではなく本支店形態にしておけば、支店から本店への資金等の移転に法人税は課税されない。これでは、グループ法人の形態で行う事業を課税上不利に扱う結果となってしまう。よって、完全子法人株式からの受取配当はその全額が益金不算入となっている(法法23①一)(渡辺徹也『スタンダード法人税法〔第2版〕』119頁(弘文堂2019))。 例えば、持株比率100%の完全子法人株式等に係る配当等の額の益金不算入割合は高め(配当等の額の100%)である。他方、持株比率が5%以下の非支配目的株式等に係る配当等の額の益金不算入割合は低め(配当等の額の20%)である。 かような受取配当等の益金不算入制度を上記1(2)(本連載【第4回】)の【益金の額の算式】に当てはめるとどうなるか(下記に再掲)。法人税法23条は別段の定めであるから、「収益の額」を考慮することはありえないという見解があるかもしれない。他方で、同条1項は、あくまで一定の配当等の額は「その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない」という規定であるから、非支配目的株式等についていえば、当該株式等に係る配当等の額のうち益金不算入以外の部分(80%)を益金に算入する根拠規定とはなりえないという反論も可能である。 【益金の額の算式】(再掲) (※) ただし、上記算式は簡便的に表現したものにすぎない。 かかる反論を採用すると、配当等の額は法人税法22条2項の「収益の額」に含まれるため「益金の額」を増加させるが、一定の配当等の額は法人税法23条による「別段の定めによる益金不算入額」に該当し、「益金の額」に含まれないことになる、と説明されよう。 (※) 益金不算入部分(20%)も一旦は法人税法22条2項の収益の額に含まれるという説明もあるかもしれない。この説明は、法人税申告書別表四の調整計算と整合的に見えるが、別表四は収益そのものではなく、損益計算書に掲げた当期利益の額又は当期欠損の額を法人税の所得計算のスタートとしていることに留意を要する。 (2) 収益の計上時期の問題 商品の販売等に基づくものなど企業における通常の売上額は、「収益の額」に該当し、「益金の額」を増加させると考えてよい。受取配当金と異なり、別段の定めを検討しなければならない機会はそう多くない。もっとも、法人税法22条2項は、単に「益金の額に算入すべき金額」又は「収益の額」と表現しているわけではない。それぞれの頭に「当該事業年度の」という語を付している。このことを考慮して、上記1(2)の【益金の額の算式】に手を加えると次のようになる。 【当該事業年度の益金の額の算式】 (※) ただし、「収益の額」を経由して「益金の額」に算入される別段の定めのパターンもありうる。 ここでいう「当該事業年度の」とは、当該該事業年度に「帰属する」という意味であり、法人税法22条2項は収益の計上時期(帰属時期・年度帰属)を規律する定めとして設けられたものであるといわれている。 法人の収益をどの年度において計上すべきかという収益の計上時期の議論を簡単に確認しておく。法人税法22条2項は、昭和40年の法人税法全文改正で誕生した条文である。その制定に当たって、次のような議論がなされた。 結局、収益の計上時期の規律は、当該事業年度「の」という表現に託された。この「の」は、当該事業年度に「帰属する」という意味であり、それがいかなる基準により帰属するか、例えば商品の販売における引渡基準などを中心に今後の検討を待つこととされた。かような経過からもわかるように、法人税法22条2項は、収益の計上時期について具体的な決定基準を定めていない。 通説は、次のように理解している(金子宏『租税法〔第23版〕』310~313、357~360頁(弘文堂2019))。 ここでは、権利確定主義や管理支配基準というテクニカルな説明もなされているが、他方で、棚卸資産の販売益については引渡時、請負報酬については、物の引渡しを要する場合は仕事の目的物の引渡しと同時に権利が確定し、引渡しを要しない場合は約定の仕事を完成したときに権利が確定する、という実務的観点からの説明もなされている。実際、これまで法人税基本通達も、目的物の引渡しや仕事の完成といった実務的観点から収益の計上時期を定めていたのであり、この点に関する限り、学説と通達(課税実務)との間に隔たりは看取されなかった。 参考として、平成30年度の法人税関係法令等の改正のうち「収益認識に関する会計基準」の導入に伴う改正に対応するための通達改正(平成30年5月30日付課法2-8ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達))前の通達は、次のとおり、棚卸資産の販売による収益の帰属の時期について、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する旨を定め、請負による収益の帰属の時期について、引渡し日又はその約した役務の全部を完了した日の属する事業年度の益金の額に算入する旨を定めていた。 また、上記のとおり、通説は、収益をどの事業年度に計上すべきかという点について、法人税法は権利確定主義を採用していると解した上で、この場合の権利の確定は取引の類型や態様に応じて適切な基準を設定する必要があるとして柔軟な解釈態度を示しており、判例もほぼ同様の立場であったと思われる。すなわち、大竹貿易事件:最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決(民集47巻9号5278頁)は、要旨次のとおり判示している。   (了)

#No. 324(掲載号)
#泉 絢也
2019/06/27

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第28回】「収益性の分析(その2)」

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編-   【第28回】 「収益性の分析(その2)」   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   ←(前回) | (次回)→   ▷売上高や各利益の月次推移分析 対象会社の事業の特性によるが、季節により売上高や売上総利益、資金繰りの変動が生じる場合がある。例えば、 対象会社の内部管理体制によるが、自社の売上高の季節的変動を十分に理解している経営者は、意外と少ない。よって、売上高等の月次推移分析を行うことで季節的変動を把握し、同時に「前年同月比」という比較をすることが重要である。 毎月取締役会を開催し、月次損益を報告事項としている会社もあるが、本執筆が前提としている中小企業では、対象会社が自ら作成した月次損益の分析資料は、まず存在しないであろう。 ◆売上高月次推移の分析イメージ (松澤綜合会計事務所作成) 上記の対象会社は、8月及び9月の売上高が高く、12月の売上高が低いことがわかる。なお、製品ごとや顧客ごとにブレークダウンして分析を実施し、併せてEBITDA、資金繰り、運転資本の分析を実施すると効果的である。   ▷販売単価(Price)と数量(Quantity)推移分析 売上高及び売上総利益は、下図のようにブレークダウンが可能である。 ◆売上高ブレークダウン分析のイメージ (松澤綜合会計事務所作成) 一般的に売上高は、「販売単価」及び「販売数量」にブレークダウンでき、販売数量は、「市場規模」と「マーケットシェア」にブレークダウンができる。なお、販売数量のブレークダウンは、一例であり業種により異なる。 デューデリジェンスにおいては、対象会社の価格戦略の理解、及び市場の概要と競合他社の価格戦略を比較して分析する必要がある。例えば、売上高の前年対比分析を行う場合には、簡易的には下記のように分析が可能である。 そして、数量差異については、業種によってさらに分解することが可能であり、例えば、居酒屋業界においては、売上数量は「客数」を意味し、「レイアウト変更などによる座席数の影響」と、「1人当たり回転率による影響」にブレークダウンが可能である。 対象会社の経営者がどのような戦略をとっているのか、及び目指す予定かを確認し、分析結果と整合性を確認する必要がある。一般的に将来の売上高を増加させるには、「販売単価を上げる」か「販売数量を増やす」の2つの方法があり、単価と数量の両方がアップすることが理想であるものの、対象会社の多くは経営資源が限られていることから戦略が重要となる。デューデリジェンスでは、対象会社は、どちらの戦略に注力しているか、競合他社との戦略と比較しながら分析を行う。   ▷1人当たり売上高や各利益の分析 業種によって異なるが、対象会社の効率性や生産性を測る指標として、1人当たり売上高又は1人当たり営業利益(EBITDAを含む)がある。 なお、会社の生産性とは、会社の資源を有効活用してどれだけの売上高又は営業利益を生み出せるかを測るもので、会社の資源の1つである従業員の生産性を見る指標として、1人当たり売上高や営業利益、人件費などが使用される。売上高は、1年間の経営成績を示すフロー項目であるため、分母である従業員数は一般的に平均値が用いられる。 1人当たり売上高 = 売上高 ÷ 平均従業員数 又は 1人当たり売上高 = 売上高 ÷ 期末従業員数 対象会社が、他社よりも1人当たりの売上高が高いのであれば、それだけ会社としての競争力もあり、生産性を上げる努力が結果として現れたと見ることもできる。よって、1人当たり売上高は対象会社の競争力や努力の状況を判断する指標として活用が可能である。 また、当然のことであるが、1人当たり売上高は業種による差が大きい。そのため、対象会社や対象会社の競合他社が、複数の事業(業種)を営んでいる場合は、事業ごとに比較を行う必要がある。 一方、同一業種であっても経営戦略で差が出る場合もある。例えば、服飾メーカーであれば高級ブランドを主力としているメーカーと、大衆向けメーカーを比較しても、意味のないことは明らかであろう。 競合他社の数値が把握できない場合においては、業界平均値を用いても有用な分析が可能な場合がある。例えば、財務省による法人企業統計調査では流動比率や自己資本比率など主要な財務指標について、主要業界ごとに集計し公表しており、1人当たり売上高については掲載されていないものの、付加価値率と従業員1人当たりの付加価値額が掲載されているので、逆算して求めることができる。   ▷総売上高及び純売上高分析 純売上高は、総売上高から「売上値引」、「売上戻り」、「売上割戻」を差し引いた金額である。 純売上高 = 総売上高 - 売上値引 - 売上戻り - 売上割戻 なお、似たようなもので、「売上割引」があるが、これは上記のものと性質が異なる。売上割引とは、買手が製品等の売買時の掛代金を決済日前に支払ったとき、支払日から決済日までの金利に相当する金額を買主に返却(代金の減額)することをいう。すなわち、掛代金の早期決済による金利の払戻しとして利息の性質があるため、通常は、支払利息同様、営業外費用として取り扱われる。 デューデリジェンスにおいては、売上高値引、戻り、割戻などの発生状況と推移を分析するとともに、発生の原因を確認する必要がある。 また、買収価額に直接影響するため、対象会社によっては、直近期や進行期を良く見せたいとする粉飾決算リスクが存在する。そのため、売上高のカットオフエラー(期間帰属の誤り)の可能性を特に注意して検討する必要がある。 (了)

#No. 324(掲載号)
#松澤 公貴
2019/06/27

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例36】RIZAPグループ株式会社「通期連結業績と業績予想及び通期個別業績と前期実績値との差異に関するお知らせ」(2019.5.15)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例36】 RIZAPグループ株式会社 「通期連結業績と業績予想及び通期個別業績と前期実績値との差異に関するお知らせ」 (2019.5.15)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、RIZAPグループ株式会社(以下「RIZAP」という)が2019年5月15日に開示した「通期連結業績と業績予想及び通期個別業績と前期実績値との差異に関するお知らせ」である。親会社の所有者に帰属する当期利益(同社はIFRS適用会社)をマイナス7,000百万円と予想していたが、実績はマイナス19,393百万円になったという内容であり、同日に「2019年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」を開示している。   2 なぜ業績予想の修正を開示しなかったのか? 開示していた利益の予想値と新たな予想値又は実績値との間に30%以上の乖離があると、それに関して適時開示が必要になる。開示していた利益の予想値がマイナス7,000百万円であれば、新たな予想値又は実績値がマイナス9,100百万円で開示が必要になる。 RIZAPの場合、実績がマイナス19,393百万円になったのだから、開示が必要になることは、もっと早くに分かっていたはずである。こうした場合、開示の重要性をきちんと認識している会社であれば、決算短信の開示よりも前に、業績予想の修正を開示する。決算短信と同時に予想値と実績値の差異を開示するのは、開示に対する姿勢に問題があると言わざるを得ない。   3 報道されたにもかかわらず 実は、この開示の前、5月7日発売の「週刊現代」が、5月15日のRIZAPの決算発表で10,000百万円を超える赤字が報告されると報道していた。その時点で、開示が必要になることは分かっていたのに、開示をしなかっただけでなく、外部に情報が漏れていたのである。 報道された時点で、速やかに業績予想の修正を開示すべきであったが、それでも同社は開示せず、報道から開示までの1週間以上、投資家の間には憶測が蔓延することになった。同社の情報管理と開示の体制は、上場会社の水準ではない。   4 不安だったことが 本連載の【事例31】では、RIZAPが2018年11月14日に開示した「連結業績予想及び配当予想の修正、当社グループの構造改革に関するお知らせ~持続的成長に向けた抜本的な構造改革に着手へ~」を取り上げたが、その最後で次のように述べた。 しかし、結局、松本晃氏は、同社に来て、わずか1年で取締役を退任することになった(2019年4月24日に「取締役人事および当社グループの新経営体制に関するお知らせ~取締役会議長として中井戸信英氏を招聘し、コーポレートガバナンスの進化へ~」を開示)。 同社代表取締役社長の瀬戸健氏が大人になったから、松本氏は同社を去るのだろうか。そうではないだろう。瀬戸氏が大人になっていたら、今回のような開示はしていないだろう。   5 大人になるために 松本氏はRIZAPの「特別顧問」に就任するとのことだが、責任が伴う「取締役」とは異なる。同氏は、責任が伴う子育てからは距離を置くことにしたのだ。瀬戸氏は、今後、自分で成長していかなければならない。大人になるために何をすべきなのか。 日本経済新聞のインタビューで、決算短信に「継続企業の前提に関する重要事象」が記載されていることについて聞かれた瀬戸氏は、次のように答えている(2019年5月17日付日本経済新聞朝刊)。 瀬戸氏は、「継続企業の前提に関する重要事象」の意味を知らないのだろう。同氏が大人になるためにすべきなのは、「勉強」ではないだろうか。行き詰まることが容易に分かるM&Aを続け、現在の状況を招いてしまったのは、同氏の無知に起因する。 上場会社の経営者は、体力や人柄だけで務まるものではない。しっかり勉強して、適切な判断ができるように成長してほしい。それができないならば、代表を辞めるべきである。   6 黒字達成のプレッシャー なお、「2019年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」に記載されたRIZAPの2019年3月期連結業績実績値と2020年3月期連結業績予想値は、次のとおりである。 (単位:百万円) 瀬戸氏は、日本経済新聞のインタビューで「今期、営業黒字化できなければ私は辞める覚悟でやっていく」と答えている(2019年5月17日付日本経済新聞朝刊)。自身に黒字達成のプレッシャーをかけて、何としてもそれをやり遂げようとしているのだろう。 しかし、黒字達成のプレッシャーは、それが難しくなったとき、不正会計が生じるリスクへとつながる。そうならないことを願いたい。不正会計は、子供の悪戯では済まない。 (了)

#No. 324(掲載号)
#鈴木 広樹
2019/06/27

老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話 【第6回】「超高齢者の相続対策」~予備的遺言内容の遺言書は必要か~

老コンサルタントが出会った 『問題の多い相続』のお話 【第6回】 「超高齢者の相続対策」 ~予備的遺言内容の遺言書は必要か~   財務コンサルタント 木山 順三   〔時代はすでに認認介護?〕 世の中、まさに高齢化社会、少し大袈裟かもしれませんが、「老老介護時代」はすでに「認認介護時代」へと移行しています。すなわち、認知症の人が認知症患者を介護しなければならないのです。 この原因は、高齢化・少子化・非同居化・・・等々いろいろ考えられます。以前、ある「遺言川柳」の本に、『百歳の 相続をする 八十歳』との歌が載っていましたが、現にいま私のクライアントが『百三歳の 相続をする 八十三歳』の状況にあり、母親(103歳)に当たる本人は未だご健在ですが、場合によれば長男(83歳)の方が先に相続開始になる可能性もあります。いわゆる「逆縁」ですね。 ところがこの「逆縁」も、昔は若い子が両親に先立ち逝くことを指していたのですが、本件のような83歳の子ともなれば決して若くなく、むしろ親の長命を喜ぶのか、はたまた?・・・の時代となりました。 実は本クライアントについては、これから対応する問題がありました。   〔話の背景〕 この方(103歳)は既にご主人を見送られており、現在は関西の高級老人ホームに住まわれ何ら金銭面での不自由はありません。家族は一人息子(83歳)が東京に住み、時々来阪されホームに顔を出しています。 ご本人は約20年前に公正証書遺言書を作成されています。本来、相続人は一人息子ゆえ不要なのですが、当家は「旧家」につき親戚縁者にも遺贈したいということで作成した経緯があります。 最近はご本人も寄る年波に勝てず軽い認知症症状も起き、昨年初めには危篤状態となり、一時は関係者一同、覚悟を決めたほどでした。ところが孫の一人が見舞いに行くと元気を取り戻し、「自分が亡くなったら孫の〇〇ちゃんにも遺産を分けてほしい」と言うほどになりました。いわゆる年寄り特有の、直近の身内からのやさしい言葉が胸襟に触れ「自分のことを大切に思ってくれている」と拡大解釈するものでした。 もっともこれは認知症の症状もあり、どこまで本心で語っているのか判断が難しい状況です。推定相続人である長男としては、特定の孫(自分の子供)に依怙贔屓することで家庭の和を乱す恐れがあり、戸惑っています。現に自分(長男)が亡くなっても法定相続通り遺産分割することを希望しており、それが家族仲良く円満に過ごせるものと考えています。   〔予備的遺言内容の遺言書は作成すべきか〕 本人(母親)がもう少し若ければ、「予備的遺言内容の遺言書」を作成し、逆縁を想定した遺言で自分の意思を表すこともできたかもしれません。また、特定の孫への遺贈文言の加筆も考えられます。 現に多くの相続事例においても、必要に応じ「予備的遺言」の内容を加筆し、配偶者の相続や逆縁等の最悪の事態に備えているケースが見受けられます。 したがって「予備的遺言」は下記のように、せいぜい予測される目先の範囲で書かれることをお勧めします。 〈例1〉 これにより新たに遺言書を作成することなく、遺言者の希望通りの遺言執行が可能となります。 もっとも、遺言者がそこそこの年齢であれば、このような事態の変化があっても「予備的遺言文言」を入れることなく、何度も書き直すことで対応できます。問題は超高齢者のケースで、かつ、既に認知症により遺言書の書き換えが困難な場合です。 元気なうちに「予備的文言」を付け加えておけば安心ですが、特に本件のように、遺言者の配偶者が既に逝去し「超高齢者の逆縁相続に対応する予備的遺言」といった複雑な例は、後々、相続人間の利害が交差し、安易な書き換えは揉めるもとになるので注意を要します。 〈例2〉 上記〈例2〉のケースは、〈例1〉のように配偶者の逝去に対応するものではありません。まだ本来の推定相続人(子)がおり、当家の先々の推移を予測することが難しく、軽々に「予備的遺言書」を作成するのは、いかがなものでしょう? まさに「過ぎたるは及ばざるがごとし」の状態となります。 仮に、当家の相続人がすべて代襲相続人(孫)であれば、祖父母の意思を孫たちに明確に示すべく、むしろ必ず「遺言書」を作成すべきでしょう。要は「遺言書」作成は、その現状と未来予測をしっかりと把握し、その状況に合わせた内容にする必要があるのです。   〔アドバイスすべきは〕 「予備的遺言書」の作成は、ある意味二度手間を防ぎ、かつ、代襲相続人へも自らの意思を伝える手段としては、必要なものなのかもしれません。ただしここで注意を要するのは「その遺言書が効力を発揮する時期はいつになるのか?」ということです。その折の相続状況も大きく変化している可能性があり、場合によっては、かえって問題を大きくすることも考えられます。 したがって、「予備的遺言」は〈例1〉のように、せいぜい予測される目先の範囲で書かれることをお勧めします。すなわち、子供たちへの意思伝達の範囲で作成し、孫たちへの配慮は子供に任せるのが妥当ではないかと思います。 もともと「遺言制度」は、被相続人の意思を示すものとしてあるのですが、本件のような超高齢者の場合は、推定相続人の高齢リスクを考慮してもなお、自然の流れに任せた方が良いのではないでしようか。 したがって本件に関しては、今さら認知症のリスクを冒してまで、医者や弁護士立ち合いのもとに、本人(母親)の「遺言書」の追加書き換えはしない方が賢明と言えるでしょう。推定相続人である長男には、「予備的遺言書」の作成はせず、本人(母親)に、いかに快適に残りの人生を送ってもらえるかをアドバイスしているところです。 (了)

#No. 324(掲載号)
#木山 順三
2019/06/27

《速報解説》 軽減税率対策補助金、B-1型の交付申請書提出(指定事業者による代理申請)は6月28日(消印有効)まで

 《速報解説》 軽減税率対策補助金、B-1型の交付申請書提出 (指定事業者による代理申請)は6月28日(消印有効)まで   Profession Journal 編集部   6月21日に閣議決定された骨太方針2019では「政府は、2019 年10 月1日の消費税率10%への引上げに当たり、(中略)消費税率引上げ前後の需要変動の平準化を図り、経済の回復基調に影響を及ぼさないように取り組む。」との記載も見られるなど、消費税率の引上げ及び軽減税率の導入が現実味を帯びてきた。 中小企業や小規模事業者も複数税率対応のレジや受発注システムの改修・導入を必要とするケースがあり、これら導入コストをサポートする「軽減税率対策補助金」は既報の通り、本年から補助対象の拡充及び補助率の引上げが行われている。 軽減税率対策補助金は大きくA型(複数税率対応レジの導入等支援)、B型(受発注システムの改修等支援)、C型(請求書管理システムの改修等支援)に分かれており、共に本年9月30日までに導入・改修を完了させる必要がある。 ここで注意したいのが、システムベンダーや販売店のうち特定の事業者(指定事業者)へ受発注システムの改修等の依頼を行うB-1型については、事前に交付申請書を提出する必要があり、その提出期限が今週6月28日(消印有効)までとなっている点だ。 B-1型は専門知識を必要とするシステムの改修等のため、指定事業者による代理申請を行うこととされているが、導入企業と指定事業者間のコミュニケーション不足により提出を徒過することのないよう、現在の進捗(交付決定通知がなされているか等)について今一度確認を行っておきたい。また、指定事業者との契約は交付決定日以降に行う必要があり、決定日以前の契約・発注は補助の対象とならないため、この点も留意されたい。 〈B-1型の交付申請の手順〉 (※) 「申請の手引き【B-1】受発注システム・指定事業者改修型」P18 (了)

#No. 300(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/06/24

《速報解説》 パブコメを経て改正金商法施行令・開示府令等が公布される~譲渡制限付株式の募集等・監査人の異動に係る規定を見直し~

《速報解説》 パブコメを経て改正金商法施行令・開示府令等が公布される ~譲渡制限付株式の募集等・監査人の異動に係る規定を見直し~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 令和元年6月21日、「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令」(政令第34号)、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第13号)が公布された。これにより、平成31年4月19日から意見募集されていた改正案が確定することになる。 これは、以下の事項を改正するものである。 そのほか、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」等の一部も改正されており、「平成」表記の規定が「令和」表記の規定に改正されている。 パブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方も公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 株式報酬に係る開示規制の見直し 経営陣等にインセンティブを付与するための業績連動報酬としての株式報酬の導入が広がっており、労務の対価として一定期間の譲渡を制限した株式(譲渡制限付株式)を交付する企業が増加していることから、①交付対象者が発行会社等の役員等に限られていること、②発行する株式に譲渡についての制限に係る期間が設けられていることを条件として、当該譲渡制限付株式の募集又は売出しについて、ストック・オプションと同様に、有価証券届出書の提出を不要とし、臨時報告書の提出事由とする(「金融商品取引法施行令」2条の12、「企業内容等の開示に関する内閣府令」2条、19条、企業内容等開示ガイドライン)。 2 「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」報告書を踏まえた見直し 監査人の異動に関して、臨時報告書へ監査役等の意見の記載や当該異動する監査人の意見をより積極的に記載できるようにする(「企業内容等の開示に関する内閣府令」19条)。 臨時報告書へ監査人の異動の実質的な理由の記載がなされるように、企業内容等開示ガイドラインに具体的な交代理由を例示する。 企業内容等開示ガイドラインでは、監査公認会計士等の異動理由及び経緯について、次のように例示している。 3 電子開示手続等を行う場合の電子証明書の使用に関する留意事項の見直し 開示用電子情報処理組織を使用して電子開示手続又は任意電子開示手続を行う場合に、電子証明書を使用することができるとした留意事項を廃止する(電子開示手続等ガイドライン3-2)。   Ⅲ 適用時期等 「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令」は、令和元年7月1日から施行する(経過措置あり)。 「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」は、公布の日(令和元年6月21日)から施行する。ただし、改正内閣府令1条中企業内容等の開示に関する内閣府令2条及び19条2項2号の2の改正規定並びに附則2条及び3条の規定は、令和元年7月1日から施行する(経過措置あり)。 (了)

#No. 323(掲載号)
#阿部 光成
2019/06/24

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成30年10月~12月)」~注目事例の紹介~

 《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(平成30年10月~12月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、平成31年6月19日、「平成30年10月から12月分までの裁決事例の追加等」を公表した。 今回追加された裁決は表のとおり、全13件で、国税通則法、所得税法、法人税法及び相続税法が各3件、国税徴収法が1件となっている。13件の公表裁決のうち、国税不服審判所によって課税処分等の全部又は一部が取り消された裁決が6件、棄却された裁決が7件となっている。 【表:公表裁決事例平成30年10月~12月分の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された13件の裁決事例のうち、国税通則法、法人税法及び国税徴収法のそれぞれ1件について、その判断のポイントを中心に紹介したい。いつものお断りであるが、論点を整理するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。   1 消費税の課税を免れるため売上金額を調整した行為が事実の隠ぺい又は仮装に当たるとした事例・・・① 本件は、電気配線工事業を営む審査請求人が、原処分庁の調査を受け、所得税等の修正申告書及び消費税等の期限後申告書を提出した後、当該修正申告書及び期限後申告書の提出により納付すべき税額が過大であるとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、事実を証明する書類が提出されず、更正をすべき事実が確認できなかったとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことに対し、請求人がその全部の取消しを求めるとともに、原処分庁が、隠ぺい又は仮装の事実があるとして、修正申告書及び期限後申告書に係る重加算税の賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が、その全部又は過少申告加算税相当額若しくは無申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。 (1) 争点 争点は、以下の3点であるが、本稿では、争点②である「隠ぺい又は仮装」の事実があったかどうかに関する国税不服審判所の判断を検討する。 (2) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、「隠ぺい又は仮装」という不正手段に対する制裁について、「悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保」するものであるとしたうえで、その要件を次のように述べた。 そのうえで、請求人の申述内容を、「客観的な証拠や客観的な事実経過とよく符合する点が多く、その信用性を減殺すべき事情も認められないことから、信用できるものと認められる」と評価して、請求人による各年次集計表において、申告する売上金額に〇印や下線を付すなどして売上金額の合計が1,000万円以下になるように調整する行為は、調整後の金額のみ申告すれば足りるかのように装うものであるとともに、消費税等の納税義務がないかのように装うものであり、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別の隠ぺい又は仮装と評価すべき行為であると認められると判断して、請求を棄却した。 なお、請求のうち、平成21年分の所得税については、売上の計上漏れ金額よりも必要経費の計上漏れ金額の方が過大であること、偽りその他不正の行為によらない売上の計上漏れもあったことなどを理由に、請求人が偽りその他不正の行為により免れた税額であるとはいえないことから、納税義務の成立の日から5年を経過しており、平成21年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分を取り消す判断をした。   2 収益は、その収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金に計上すべきものとした事例・・・⑦ 本件は、原処分庁が、F弁護士を唯一の社員とし、債務整理事業及び一般事件業務を営む法人である審査請求人に対して、売上計上漏れがあったなどとして、法人税等の各更正処分等をしたのに対し、請求人が、売上計上漏れとした金額には誤りがあること、また、従業員らの横領行為による損失の額を当該行為の日の属する事業年度の損金の額に算入すべきであるなどとして、当該各更正処分等の全部の取消しを求めた事案である (1) 争点 争点は下記の5点であるが、本稿では、その中心的争点である益金の額の計上時期に関する争点①について、国税不服審判所の判断を検討する。 (2) 国税不服審判所の判断 益金の額への計上時期が争点となった報酬は次の3件である。 国税不服審判所は、法令解釈として、次のように述べた。 そのうえで、報酬1について、請求人は、平成23年12月期において益金の額に計上すべき金額は、紛議調停によって決定した3,150,000万円であると主張したが、審判所は、平成23年8月10日、委任契約に基づく報酬金を請求していることから、平成23年12月期に支払請求権が確定したものであり、紛議調停の成立によって減額された4,140,000円については、平成24年12月期の損金の額に算入されることとなると判断を示した。 次に報酬2について、請求人は、委任契約は解除され、着手金の支払もないことから、益金の額に計上すべき金額は零円であると主張したが、審判所は、弁護士報酬のうち着手金については、委任事務処理の結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価であることから、委任契約締結時に報酬支払請求権が確定しているものと認められるとして、その請求の日の属する事業年度である平成25年12月期の益金の額に算入されると判断を示した。 さらに、報酬3について、請求人は、請求した費用について支払がなく、委任契約も解除していることから益金の額に計上すべき金額は零円であると主張したが、審判所は、平成25年9月19日において、着手金、報酬金の請求書を送付していることから、同日までに当該報酬金の支払請求権が確定したものと認められ、平成25年12月期の益金の額に算入すべきであると判断を示した。なお、契約上免除すると規定されている日当については、益金の額には算入されないとした。   3 見積価額の適否は、公売公告処分の適法性には影響しないとした事例・・・⑬ 本件は、原処分庁が、審査請求人の滞納国税を徴収するため、動産(楽器類)の公売公告処分を行ったのに対し、請求人が、当該動産の見積価額が低廉であるから当該公売公告処分は違法であるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 (1) 争点 争点は、本件動産の見積価額が低廉であるという理由で本件公売公告処分は取り消されるべきか否か、である。 (2) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、見積価額は、国税徴収法第95条第1項に規定する公売公告事項ではなく、公売公告とは別個独立に公告されることが予定されているうえ、見積価額の公告は、公売公告がされた後においてもすることができることから、徴収法の定めに鑑みると、法的には、別個独立の公告が同時にされたものと評価するほかないものであるという判断を示した。 そのうえで、見積価額の適否は、徴収法上、見積価額公告の後に行われることとなっている最高価申込者の決定処分又は売却決定処分の違法事由を構成することはあるものの、公売公告処分の適法性には影響しないことから、本件公売公告処分の違法事由を構成することはできないというべきであるから、請求人の主張には理由がないとしてこれを斥ける判断を示した。 なお、参考までに国税徴収法第95条第1項を以下に引用する。 (了)

#No. 323(掲載号)
#米澤 勝
2019/06/21
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