検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10845 件 / 41 ~ 50 件目を表示

《税理士のための》登記情報分析術 【第32回】「「国籍」が登記事項に?」

《税理士のための》 登記情報分析術 【第32回】 「「国籍」が登記事項に?」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   2025年の終わりごろに不動産を取得し登記申請を行う際に、「国籍」を届出ることを義務化するという報道が大きくなされた。我が国では外国人による不動産の取得について制限が緩やかであるため、安全保障上の懸念が高まっていることや、所有者不明土地問題への対応といったことが背景にある。税理士は顧客の不動産取得等について関わることも多いと思われるため、現在検討されている制度の概要等について解説を行う。   1 所有権に関する登記事項 所有権に関する登記は登記記録の「甲区」に記録されるが、登記事項は不動産登記法に定められており、主なものとしては次のものがある。 【所有権に関する主な登記事項】 1 登記の目的 2 申請の受付年月日及び受付番号 3 所有者の住所、氏名、共有である場合は持分 4 所有者が法人であるときは、会社法人等番号 5 国外居住者である場合には、国内連絡先に関する事項 (国内連絡先がない場合には、「なし」とすることができる)   登記事項は登記記録に記載をされるため、誰でも手数料を払えば情報にアクセスできることになる。もし、今回話題となっている「国籍」も登記事項となるのであれば、所有者の国籍を第三者が閲覧可能になるが、プライバシーの観点からは懸念が生じる。   2 検索用情報とは 2026年4月1日に不動産の所有者の住所や氏名の変更登記の申請が義務化される。これは2024年4月1日にスタートした相続登記の申請義務化と同様に、所有者不明土地問題に対応するために行われるものである。 住所等の変更登記の申請義務化と同時に、所有者の負担を軽減するために、法務局が住基ネット情報を検索し、所有者の住所等に変更があれば職権で登記を行う「スマート変更登記」制度が開始される。法務局が所有者の住所等の変更の情報を調べて、所有者に代わって住所等の変更登記を行ってくれるのである。スマート登記制度の利用の対象となるためには、法務局が所有者の住基ネット情報を検索するために必要となる「検索用情報」を、法務局にあらかじめ申出ておく必要がある。検索用情報としては次のものがある。 【検索用情報】 検索用情報には、登記事項となっている(1)氏名や(3)住所などの情報もあるが、(2)ふりがなや(4)生年月日、(5)メールアドレスのように登記事項とはなっていない情報もある。検索用情報はあくまで法務局内部の事務処理に利用されるものであり、外部に公示される性質のものではない。 2025年4月21日以降に所有権を取得する登記を申請する場合には、登記申請書に検索用情報を記載して申出ることになっている。既に不動産の所有権を取得している人は、検索用情報の申出を独自にすることができる。   3 国籍を検索用情報として届出る 2025年12月23日に不動産登記規則の一部を改正する省令案がパブリック・コメントに付され、話題となっていた不動産登記申請時における「国籍」の届出は、検索用情報として申出ることが明らかとなった。検索用情報は公示されるものでないため、プライバシー保護の観点での懸念は少なくなったといえる。 国籍の申出は外国人に限らず日本人も必要となり、登記申請時に国籍が判る公的書面などを添付することが求められることになる。制度の施行は2026年中に予定されているが、国籍の届出をさせること自体に反対する声も多いと聞く。今後の動向に注目が必要であろう。   (了)

#No. 653(掲載号)
#北詰 健太郎
2026/01/22

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第73回】「知っているようで知らない「固定資産税評価に特徴的な画地計算法の一例」」~鑑定評価との比較も交えて~

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第73回】 「知っているようで知らない 「固定資産税評価に特徴的な画地計算法の一例」」 ~鑑定評価との比較も交えて~   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 前回は、「知っているようで知らない『固定資産税評価における路線価付設』の基礎知識」というタイトルで、固定資産税評価における路線価付設の仕組みを解説しました。そこでは、公示価格や鑑定評価によって求められた価格の7割を目安に路線価を付設するとともに、その基になる価格は近隣地域において間口・奥行、面積、形状等が普遍的な宅地(=標準的な画地)を前提としていることも併せて述べました。 そこで、今回は「7割評価」という目安がどのようにして設定されたかの背景及び拠り所を述べた後に、鑑定評価との比較も交えつつ、知っているようで知らない固定資産税評価に特徴的な画地計算法の一例を掲げてみたいと思います。   2 「7割評価」の背景及び拠り所 今から30年以上前に遡りますが、固定資産税の評価に地価公示や鑑定評価が活用されるに至った背景には、土地基本法の制定(平成元年12月22日)に伴う公的土地評価の均衡化及び適正化という解決すべき課題が迫っていたことが挙げられます。 すなわち、1980年代後半に地価が著しく高騰したことの影響を受けて、公示価格と固定資産税評価額のレベルとの間に著しい乖離(固定資産税評価額<公示価格)が生ずることとなりました。筆者の記憶をたどってみても、この頃の固定資産税評価額(宅地)の水準は、東京及びその近郊の都市圏では当時の時価の10分の1から10分の2くらいであったように思われます。 上記事情も相まって土地基本法が制定され、同法第16条(現行法では第17条)に、以下のとおり、公的土地評価の均衡化及び適正化の目標が掲げられました。このなかに、「課税の適正化に資するため」という規定も織り込まれています(下線は筆者)。 その後、平成3年1月には閣議決定として「総合土地政策推進要領」が策定され、「平成6年度以降の評価替えにおいて、土地基本法第16条の規定の趣旨を踏まえ、相続税評価との均衡にも配慮しつつ、速やかに、地価公示価格の一定割合を目標に、その均衡化・適正化を推進する」ものとされました。このような経緯を知っておくことは、現在、固定資産税の評価替えに当たり、地価公示及び鑑定評価が活用されている意義を理解する意味で非常に重要であるといえます。 そこで、「7割評価」の背景ですが、筆者の聞くところによりますと、 地価安定期であった昭和50年代における固定資産税評価額と公示価格の格差(固定資産税評価額<公示価格)は7割程度であったこと このような事情も勘案して7割程度の水準を目途に宅地の評価を行うことが妥当と考えられること をはじめとする検討結果に基づき、中央固定資産評価審議会の了承を得て決定されたと の由です。 また、「7割評価」の趣旨については、当時、依命通達の改正によって示されましたが、平成9年度評価替え時から大臣告示ということで固定資産評価基準に規定されています(その内容は前回、「固定資産評価基準第12節 経過措置」として掲載済です)。   3 固定資産税評価に特徴的な画地計算法の一例~鑑定評価との比較も交えて 固定資産税評価だけに限ったことではありませんが、土地の評価に当たってはまず画地の認定(=評価の単位となる画地の範囲を決定すること)が重要となります。その理由は、画地の範囲をどのようにとらえるかにより、結果的に評価額に少なからず影響を及ぼすことがあるからです。 固定資産評価基準(以下、「評価基準」といいます)では、一筆を一画地として評価することを原則としていますが、例外として、二筆以上の宅地にわたり建物が存在するなど複数の宅地が一体として利用されている場合は、二筆以上の宅地を一体で一画地として評価する旨定めています。 上記のとおり、評価基準においては、利用上の一体性に着目した画地の認定方法が重視され、所有者の一体性は基本的に問題とされていません。この点が鑑定評価と本質的に異なる点です。 すなわち、固定資産税評価においては、各筆の所有形態よりも現実的な利用状況に着目した画地の認定を行っている点に特徴が見られます。 例えば、一つの画地が甲の所有地と乙からの借地とに区分されていても、この上にまたがって甲が建物を建築し、敷地を一体利用していれば(下図参照)、各々の土地は所有者が異なっていてもこれらを合わせた範囲が一つの画地として認定されます。 その結果、各々を単独で評価した場合には評価額が異なっても、固定資産税評価の上では同一の単価で評価される仕組みとなっています(その背景には、固定資産税の目的からして、処分可能性(市場性)よりも一体利用という事実を重視し、各々の土地に対して等しく課税すべきであるという考え方があるものと推察されます)。 なお、各々の土地を単独で評価した場合、著しく差が生ずるのは乙所有地です。すなわち、甲所有地は一体地と比べ奥行距離が短くなる影響を受けるだけですが、乙所有地は無道路地となり市場における単独処分は困難で、甲所有地とは格段に価値の相違が生ずるからです。 鑑定評価では市場性という観点を視野に入れ、特段の評価条件を付して評価を行う場合(※1)は別として、このような条件が付されない限り、所有者の異なる各筆は別々の区画(画地)として単独で評価を行うこととなります(※2)。 (※1) この場合、例えば、乙所有地を隣接地の所有者甲が買い取って一体利用をする前提で評価します(鑑定評価の専門用語でいえば、求める価格は「限定価格」となります)。 (※2) この場合、乙所有地を不特定多数の者を対象として売却する前提で評価します(鑑定評価の専門用語でいえば、「正常価格」となります)。   4 まとめ 固定資産税評価額は、土地建物の所在する市町村等により算定されるため、その仕組みについては知っているようで知らない部分もあることと思います。 本稿が何かの参考になれば幸いです。 (了)

#No. 653(掲載号)
#黒沢 泰
2026/01/22

〈税務ライター・鈴木まゆ子の〉『ここがヘンだよ日本の税制』【第1回】「基礎控除の上乗せがナゾすぎる・・・納得いかない2つの理由」

〈税務ライター・鈴木まゆ子の〉 ここがヘンだよ日本の税制 第1回 基礎控除の上乗せがナゾすぎる・・・ 納得いかない2つの理由 税理士・税務ライター 鈴木 まゆ子   さて1回目のテーマは「基礎控除の上乗せ」。 そう感じる税理士の先生方は非常に多いのではないでしょうか。事実、私も違和感を覚えました。 今回は、基礎控除の上乗せの中身をつまびらかにし、なぜ私たちが「何かヘン」と感じるのかを明らかにしてまいります。   基礎控除の上乗せとは何か  基礎控除の上乗せとは、所得が一定額以下の納税者につき「本来の基礎控除に加えてさらに基礎控除を受けられるようにしよう」というものです。 令和7年度税制改正で創設されました・・・と言いたいところですが、正しく言うならば「令和7年度税制改正大綱に基づく法律の改正案を審議する国会の最中に登場しました」です。 当初、大綱ベースだと「基礎控除は従来の48万円から58万円に引き上げ」となっていました。 しかし国会審議中、野党からも与党からも修正案が提出されたのです。これを折衷させる形で登場したのが、最大37万円の基礎控除の上乗せだったと言われています。   基礎控除の上乗せの制度概要 この制度のポイントは、以下の通りです。 ●合計所得金額132万円以下はずっと「基礎控除37万円上乗せ」 上乗せ額の構造は次のようになっています。 合計所得金額 加算額 令和7年・8年 令和9年以降 132万円以下 37万円 132万円超 336万円以下 30万円 0円 336万円超 489万円以下 10万円 489万円超 655万円以下 5万円 引用元:令和7年 税制改正の解説(所得税法等の改正)|財務省 合計所得金額132万円以下(給与年収だと200万4,000円未満)であれば恒久的に基礎控除の上乗せが受けられます。元々の基礎控除は改正で58万円になったので、この所得層の基礎控除は総額で95万円となったのです。 引用元:令和7年分 年末調整のしかた|国税庁 ●合計所得金額132万円超655万円以下は「2年間だけ基礎控除上乗せ」 合計所得金額132万円を超えても655万円までは基礎控除の上乗せがあります。ただし上乗せ額は所得額に応じて減少します。加えて、加算措置は令和7年・令和8年の2年間限定です。 つまり令和9年以降、この所得層の基礎控除は上乗せナシの一律58万円となります。 ●基礎控除の上乗せ規定は租税特別措置法 引き上げの対象となった基礎控除は、所得税法に規定されています。しかし、基礎控除の上乗せは、租税特別措置法(以下「措置法」)に定められています。 ●基礎控除の上乗せは非居住者に適用なし 基礎控除の上乗せは非居住者に適用されません。なぜなのか。それは条文を読み解いていくと分かります。 非居住者に適用される所得控除は雑損控除・寄付金控除・基礎控除だけです。いずれも所得税法に規定されています。 【基礎控除の上乗せが非居住者に適用されるのか? 〈読み解き(その1)〉】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 引用元:所得税法|e-gov (左記を基に筆者が加工して作成) 基礎控除の上乗せは、一見「別段の定め」として非居住者にも適用されそうです。しかし、この上乗せを規定している措置法規定は、対象を居住者に限定しています。 【基礎控除の上乗せが非居住者に適用されるのか? 〈読み解き(その2)〉】 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 引用元:租税特別措置法|e-gov(左記を基に筆者が加工して作成) ゆえに、基礎控除の上乗せは非居住者にはなく、58万円の基礎控除を適用するのみとなります。 ●源泉徴収税額表にも基礎控除の上乗せは適用なし 令和7年度税制改正による基礎控除の引き上げは、令和8年1月1日以降の給与所得の源泉徴収税額(甲欄)にも影響します。 ただし、基礎控除の上乗せは、源泉徴収税額に反映されません。 以上が基礎控除の上乗せの概要ですが、納得のいかない点が2つあります。   「基礎控除の上乗せ」ここがヘン① 生存権を措置法で規定する愚 ●基礎控除とは何か 基礎控除とは、基礎的人的控除の1つとされます。 基礎的人的控除とは 「この金額までは、この人が生活して生きているためのどうしても必要な所得だから課税しないでおこう」 という最低生活費を所得全体から差し引くことです。 憲法25条の生存権「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に由来するとされています。人間の権利でもっとも尊重されるべきものです。 ●措置法とは何か 措置法とは、特定の政策や社会的な課題を解決するために、通常の法律では対応しきれない特定の事項に限定して優遇や制限、手続きなど特別な措置を定めた法律をいいます。 租税特別措置法であれば、特定の政策を達成するために税負担を軽減するなどの規定が設けられます。 令和6年に話題になった定額減税や住宅借入金等特別控除がこれに当たります。通常は期間限定です。 ●基礎控除は特定の政策実現のためのものなのか このように並べてみると「基礎控除」と「措置法」の性質がまったく別のものであることが分かります。 基礎控除:置かれた状況に関係なく恒久的な権利にもとづくもの 措置法:特定の政策のための期間・対象者限定のもの 時限立法である措置法で不変の権利にもとづく基礎控除を規定することがそもそもおかしいのです。   「基礎控除の上乗せ」ここがヘン② 中所得者層の上乗せが2年限定である理由が不明 改正内容の意図については財務省が毎年公表している「税制改正の解説」に示されていますが、基礎控除の引き上げ・上乗せについては「改正の趣旨」で次のように書かれています。 所得税については、基礎控除の額が定額であることにより、物価が上昇すると実質的な税負担が増えるという課題があります。 わが国経済は長きにわたり、デフレの状態が続いてきたため、この間こうした問題が顕在化することはありませんでしたが、足元では物価が上昇傾向にあります。一般に指標とされる消費者物価指数(総合)は、最後に基礎控除の引上げが行われた平成7年から令和5年にかけて10%程度上昇し、令和6年も10月までに3%程度上昇しており、今後も一定の上昇が見込まれています。また、生活必需品を多く含む基礎的支出項目の消費者物価は平成7年から令和5年にかけて20%程度上昇しています。こうした物価動向を踏まえ、所得税の基礎控除の額を最高48万円から最高58万円に10万円、20%程度引き上げることとされました。 そのうえで、低所得者層の税負担に対して配慮する観点や、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点から、所得税の基礎控除の特例を創設することとされました。 引用元:令和7年 税制改正の解説(所得税法等の改正)|財務省 この趣旨説明は、行政学でいうところの「行政の説明責任」によるものです。 行政機関としては十分に説明を果たした、となるのでしょうが、国民としてはイマイチ納得いきません。 「中所得者層の基礎控除の上乗せが逓減するのはなぜ? なぜ2年間限定なの?」という疑問は残ります。 「『物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減』という表現があるだろう? すでに所得制限だって税制上で行われているだろう? そこから行間を読みなさい」と言うのが行政の言い分なのかもしれません。 しかし、その税制の影響を直接受けるのは国民です。2年間限定の制度で年末調整と確定申告、さらには還付申告と更正の請求と修正申告が振り回されるのだから、もっと説明してほしいところです。 もっともこれは、財務省に説明を求めるのではなく、立法機関である国会の議員たちに求めるべきことかもしれません。   国民の理解を得られるような税制改正を 基礎控除の上乗せは基礎控除の引き上げ・給与所得控除の最低保障額の拡大と併せ「物価上昇にあえぎ苦しむ国民の生活を救済するため」のものです。 それゆえに令和7年度税制改正では与野党の攻防が激しく行われることとなりました。 その結果、給与年収160万円の壁が実現したわけですが、所得控除の所得要件が給与年収ベースで123万円以下となるなどのチグハグ感も否めません。 国民は立法機関と行政機関の奴隷ではなく、日本という国の主権者です。 ゆえに税制は国民のものであり、国民が理解できるものでなくてはなりません。 国民生活への配慮と同時に「国民が1人で申告書を書いて納税額に納得できる」税制を国会にいらっしゃる方々には考えていただきたいものです。 (了)

#No. 653(掲載号)
#鈴木 まゆ子
2026/01/22

《速報解説》 内閣官房から「人的資本可視化指針(改訂版)」(案)が公表される~経営戦略と人材戦略の連動の可視化に関するより具体的な考え方を示す~

 《速報解説》 内閣官房から「人的資本可視化指針(改訂版)」(案)が公表される ~経営戦略と人材戦略の連動の可視化に関するより具体的な考え方を示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026(令和8)年1月20日、内閣官房の非財務情報可視化研究会から、「人的資本可視化指針(改訂版)」(案)が公表され、意見募集が行われている。 これは、人的資本開示を行う場合に、どのような開示が企業と投資家の建設的な対話に有用であると考えられるか検討を行い、取りまとめたものである。 「第1部 経営戦略と人材戦略の連動」と、「第2部 4つの要素に従った開示」の2部構成となっている。 意見募集期間は2026年2月10日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 経営戦略と人材戦略の連動 「第1部 経営戦略と人材戦略の連動」は、人材戦略を経営方針・経営戦略等に関連付けて具体的に記載することを検討するすべての企業に役立つよう記載している。 改訂版の人的資本可視化指針(案)では、経営戦略と人材戦略の連動の可視化に関する、より具体的な考え方を示している。 「あるべき組織・人材の姿」を明確にし、それを踏まえた人的資本に関する課題に対処するための「必要となる人的資本投資」を整理することにより、自社にとっての経営戦略と連動した人材戦略を明確にすることが可能になると考えられるとしている。   Ⅲ 4つの要素に従った開示 「第2部 4つの要素に従った開示」は、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が開発するサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)に示された4つの要素を踏まえた開示を検討する企業に役立つよう記載している。 SSBJ基準において、4つの要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標)に基づく開示が求められている。 これらのうち、「(人材)戦略」と「(人的資本関連の)指標及び目標」に関して、経営戦略と関連付けた開示が投資家から期待されている。 「(人材)戦略」と「(人的資本関連の)指標及び目標」と関連付ける形で、「ガバナンス」と「リスク管理」の開示を行うことにより、4つの要素に従った開示となる。 (了)

#阿部 光成
2026/01/21

《速報解説》 国税庁、インボイス登録の再取得に関する新たなQ&Aを公表~経過措置適用期間中の再登録手続きを明確化~

《速報解説》 国税庁、インボイス登録の再取得に関する新たなQ&Aを公表 ~経過措置適用期間中の再登録手続きを明確化~   Profession Journal 編集部   国税庁はホームページ上で掲載している「インボイスの取扱いに関するご質問」を令和8年1月16日更新し、新たに1問を公表した。 なお、今回新たに公表された質問は「問Ⅹ 登録に係る経過措置により課税事業者となる期間における再登録」であるが、適格請求書発行事業者の登録に係る経過措置により課税事業者となった後、いったん登録を取りやめた事業者が、同一課税期間中に再度登録を受ける場合の手続きに関するものである。   1 具体的な質問内容 問Ⅹの具体的な質問としては、免税事業者である個人事業者として令和6年4月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けた後、令和7年12月1日に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出し、令和8年1月1日から適格請求書発行事業者の登録を取りやめたが、同年中に改めて登録を受け直したいと考え、その場合における手続の内容を確認するものとなっている(基準期間(令和6年)の課税売上高は1,000万円以下)。   2 登録に係る経過措置 免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、原則として、消費税課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者となる必要がある。令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合、適格請求書発行事業者の登録申請書(以下「登録申請書」)に登録希望日(提出日から15日以降の登録を受ける日として事業者が希望する日)を記載することで、その登録希望日から課税事業者となる経過措置(以下「登録に係る経過措置」)が設けられている。 登録に係る経過措置の適用を受ける場合(登録日の属する課税期間が令和5年10月1日を含む場合を除く)、登録日の属する課税期間の翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、適格請求書発行事業者の登録を取りやめたとしても、基準期間の課税売上高にかかわらず免税事業者となることはできない。   3 質問への回答 上記のことから、令和8年分も課税事業者として消費税の確定申告が必要となると言及した上で、再度登録を受けるに当たっては、改めて登録申請書の提出が必要としている。 また、新たに登録に係る経過措置の適用を受けることになるため、登録申請書には登録希望日を記載し、その登録を受けようとする日から起算して15日前までに提出する必要があるとしている。   4 留意事項等 留意事項等としては、①再度登録を受けた日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間は免税事業者となることはできないこと、また、②再度登録を受けるために提出する登録申請書の「事業者区分」については、便宜上、「免税事業者」とした上で、登録希望日を記載するよう言及されている。 なお、令和8年10月1日から再登録を受ける場合の例についても下記のイメージが示されている。 (出典) 国税庁ホームページ (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2026/01/19

プロフェッションジャーナル No.652が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年1月15日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.652を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/01/15

上西左大信・佐藤善恵の 「令和8年度税制改正大綱」のここに注目! 【第3回】「個人所得課税・資産課税の具体的改正内容」

上西左大信・佐藤善恵の 「令和8年度税制改正大綱」のここに注目! 【第3回】個人所得課税・資産課税の具体的改正内容 税理士法人ゆづりは 代表社員税理士 上西左大信 社員税理士 佐藤 善恵   はじめに 【第1回】・【第2回】では、令和8年度税制改正大綱の基本的考え方と政策的背景を中心に解説した。高市政権の「強い経済」「世界で輝く日本」というビジョン、物価連動による基礎控除等の引上げという画期的な仕組みの創設、「103万円の壁」から「178万円」への引上げをめぐる政治的駆け引き、そして防衛力強化への強い意志など、今回の大綱の特徴が浮き彫りになった。 【第3回】となる本稿では、個人所得課税と資産課税の具体的な改正内容について、実務的な観点も交えながら詳しく見ていく。基礎控除と給与所得控除の複雑な階層構造、住宅ローン控除の5年延長、NISA制度の0歳からへの拡充、暗号資産の分離課税化、青色申告特別控除75万円の創設、そして貸付用不動産の評価適正化など、実務に直結する重要な改正が目白押しである。   基礎控除・給与所得控除の詳細な仕組み──本則と特例の複雑な構造 佐藤:【第1回】・【第2回】で178万円の実現について概要をお聞きしましたが、実際の控除額の計算はかなり複雑になるのではないですか。 上西:そうですね、今回の改正は、①物価連動による「本則」の引上げと、②課税最低限178万円を実現するための「特例措置」、この2つを組み合わせた二階建て構造になっているため、相当複雑です。 まず、①の本則の引上げが、令和5年10月から令和7年10月までの2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率6.0%を踏まえ、基礎控除が58万円から62万円に、給与所得控除の最低保障額が65万円から69万円に引き上げられました。 佐藤:本則だけだと、基礎控除62万円+給与所得控除69万円で131万円ですね。これでは178万円に届きません。 上西:そこで、②の特例措置が登場します。これは物価高で厳しい状況にある中低所得者に配慮した令和8年・9年の時限措置で、基礎控除と給与所得控除にそれぞれ「上乗せ」を行います。 具体的には、基礎控除の特例の最低保証額については、改正前の37万円に5万円が加算された42万円となり、本則の62万円との合計で104万円となります。かつ、合計所得金額132万円以下に適用されていたものが、489万円のブラケットまでに適用が拡大されました。次に給与所得控除額の最低保障額の本則の69万円に5万円の加算特例があり74万円となります。 佐藤:なるほど。すべて合計した内訳は以下のとおりですね。 本則 特例 本則と特例の 合計 令和8年度改正 令和7年度改正 令和8年度改正 合計 基礎控除 62 万円 37 万円 5 万円 42 万円 104 万円 給与所得控除 69 万円 - 5 万円 5 万円 74 万円 合計 131 万円 47 万円 178 万円 上西:これらを足すと、ぴったり178万円になります。これにより、給与収入178万円までは所得税がかからない仕組みが実現しました。 【基礎控除の表】 (単位:万円) (注1) 改正後の給与所得控除額の最低保障額適用の分岐点は220万円(その場合の給与所得控除は74万円)。合計所得金額は206万円-74万円=132万円となる。なお、基礎控除額660万円未満のブラケットは別表第五を適用するので、端数は付くであろう(所法28②~④)。 (注2) 660万円超なので速算表で逆算した。 (注3) 令和8年度改正の特例(加算措置)は、令和8年と令和9年分のみを記載した。なお、令和10年以後の各年は合計所得金額が132万円以下に限って37万円の加算特例(恒久措置=令和7年度税制改正で措置)となる。 佐藤:給与収入と合計所得金額の数字が入り乱れていて紛らわしいですね。 上西:この特例措置は「生活保護基準額が178万円に達するまでは、物価連動による本則の引上げに応じて、同額を特例措置から振り替えていく」とされています。 佐藤:つまり、物価が上がって本則が増えれば、その分特例を減らして、トータルでの178万円ラインを維持・調整していくという考え方ですね。   配偶者控除等の対象については「136万円」が壁となる 佐藤:ここで気になるのが、いわゆる「扶養の壁」です。本人の課税最低限が178万円になったということは、配偶者控除を受けられる年収要件も178万円になるのでしょうか。 上西:いいえ、違います。 今回の改正で、配偶者や扶養親族の合計所得金額要件は、現行の58万円以下から62万円以下に引き上げられました。これは「本則」の基礎控除引上げ(58万円→62万円)に対応したものです。 一方で、給与所得控除の最低保障額は、本則で69万円になりました。 【給与所得控除の引上げと最低保証額の特例の創設】 給与等の収入金額 (A) 給与所得控除の額 令和7年分 (改正前) 令和8・9年分 (改正案) 190万円以下 65万円 69万円+5万円= 74万円 190万円超 220万円以下 (A) × 30% + 8万円 220万円超 360万円以下 (A) × 30% + 8万円 360万円超 660万円以下 (A) × 20% + 44万円 (A) × 20% + 44万円 660万円超 850万円以下 (A) × 10% + 110万円 (A) × 10% + 110万円 850万円超 195万円 195万円 佐藤:つまり、配偶者の給与収入がいくらまでなら扶養に入れるかというと・・・。 上西:同一生計配偶者の所得金額要件62万円 + 給与所得控除74万円 = 136万円。 つまり、本人の所得税がかからないのは178万円までですが、誰かの扶養に入れるのは給与収入136万円までなのです。 佐藤:「178万円の壁」という言葉だけが独り歩きしていますが、配偶者控除や扶養控除の判定においては「136万円」が基準になるわけですね。これは実務で混乱を招きそうです。 上西:おっしゃる通りです。この件で質問があったら、「ご自身の税金は178万円までかかりませんが、配偶者控除の対象となるのは136万円以下です」と明確に区分して伝える必要があります。 佐藤:また、基礎控除は所得税だけの改正ですが、給与所得控除は所得税と住民税の両方の改正ということも忘れてはいけませんね。   ひとり親控除の見直し──積み残しだった課題が解決 佐藤:さて、基礎控除や給与所得控除以外にも、個人所得課税で重要な改正がありました。 上西:はい、ひとり親控除の見直しです。これは前回の令和7年度改正で積み残しになっていた項目で、今回ようやく実現しました。 佐藤:具体的にはどう変わるんですか。 上西:所得税のひとり親控除が令和9年分以後の所得税では35万円から38万円に引き上げられました。そして、実はこの分野については住民税も実務上重要です。 佐藤:住民税の方はどうなりましたか。 上西:令和10年度分以後の個人住民税のひとり親控除は30万円から33万円になりました。所得税だけでなく住民税もかかってくるレベルの所得層にとっては、両方の引上げが効いてきます。 佐藤:ひとり親家庭への配慮ということですね。物価高の影響を特に受けやすい層への支援として意味があります。 上西:その通りです。前回積み残しになっていたものが今回解決したというのは、政治的にも意味のあることだと思います。   住宅ローン控除の5年延長──既存住宅への配慮と子育て世帯支援 佐藤:住宅ローン控除についても大きな変更が予定されていますね。 上西:はい。適用期限が令和12年末まで5年間延長されました。ポイントは、省エネ基準適合以上の「既存住宅(中古住宅)」への支援拡充です。 これまでは新築重視でしたが、既存住宅の流通促進と省エネ化を図るため、省エネ性能の高い既存住宅(認定住宅・ZEH水準)の借入限度額が引き上げられました。また、子育て世帯等への借入限度額の上乗せ措置についても、これまでは新築に限られていたものが、省エネ基準適合以上の既存住宅にも拡大されています。 佐藤:新築についてはどうですか。 上西:令和12年度以降、新築等が認められなくなる予定の省エネ基準適合住宅は、新築住宅・既存住宅ともに借入限度額を見直した上で、新築住宅は令和10年以降は適用対象外とされます。 特筆すべきは、いわゆる子育て世帯でなくても、合計所得金額が1,000万円以下の場合には、床面積要件の緩和(40㎡以上)が適用されるようになった点です。さらに、既存住宅であっても適用ができるようになりました。これで単身者やDINKS向けのコンパクトな中古マンションも購入しやすくなります。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (注1) 令和9年12月31日以前に建築確認を受けた場合又は令和10年6月30日以前に建築された場合に限り、借入限度額は2,000万円、控除期間は10年とする。 (注2) 「その他の住宅」は、省エネ基準を満たさない住宅のことを指す。 (注3) 開発・建築行為に規制が講じられている、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、浸水被害防止区域、災害危険区域(都市再生法に基づく勧告に従わないものとして公表の対象となった区域のみ)。 (注4) 所得税額から控除しきれない額については、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)の範囲内で個人住民税から控除する。   NISA制度の0歳からへの拡充──次世代の資産形成支援 佐藤:NISA制度にも動きがありました。 上西:これも画期的です。つみたて投資枠の対象年齢が0歳まで拡充されました。いわば「ジュニアNISA」の実質的な復活・恒久化です。口座保有者が0~17歳の間は、年間投資枠60万円、非課税保有限度額600万円が設定されます。 ※画像をクリックすると金融庁ホームページに移動します。 (出所) 金融庁ホームページ 佐藤:12歳以降は一定の要件の下で払出しが可能とされています。教育資金作りなどに活用できそうですね。 上西:そうですね。18歳になると自動的に成人のNISA口座(年間120万円・限度額1,800万円)に移行します。また、国内への投資還流を促すため、つみたて投資枠の対象指数に「JPXプライム150」などの国内株価指数が追加された点も注目です。   暗号資産の分離課税化──投資環境の整備と投資家保護 佐藤:以前から要望の強かった暗号資産(仮想通貨)の税制についても、ついに改正が入りました。 上西:はい。暗号資産取引業者が扱う等の一定の要件を満たす暗号資産(特定暗号資産)の取引については、申告分離課税の対象となり、税率は一律20%(所得税15%・住民税5%)となります(復興特別所得税等を含めると20.315%)。さらに、損失については3年間の繰越控除も可能になります。 ※画像をクリックすると金融庁ホームページに移動します。 (出所) 金融庁ホームページ 佐藤:上場株式と同じような扱いになるわけですね。 上西:ええ。ただし、すべての暗号資産取引が無条件で分離課税になるわけではありません。金融庁の登録を受けた「暗号資産取引業者」を通じた取引等が対象であり、それ以外の相対取引などで生じた所得は、従来通り総合課税(雑所得等)として最大55.945%の税率が適用される点には注意が必要です。   青色申告特別控除75万円の創設──優良な電子帳簿保存への誘導 佐藤:個人事業主にとって関心の高い青色申告特別控除にも新しい区分ができました。 上西:現行の最高65万円控除の上に、新たに75万円控除が創設されました。要件はかなり厳格で、複式簿記とe-Taxによる申告を前提とした上で、①優良な電子帳簿の保存又は②請求書データ等との自動連携が必要です。 佐藤:電子化を目指した記帳水準の向上を促す狙いですね。 上西:その通りです。会計ソフト等の進化に合わせて、より透明性の高い記帳を行っている納税者を優遇する措置です。前回65万円にした時のハードルは低かったですが、今回の75万円は相応の準備が必要になってくると思います。 佐藤:一方で、簡易簿記の方はどうなりますか。 上西:簡易簿記については事業所得又は不動産所得に係る前々年の収入が1,000万円超の人は控除額は0となります。 条件 控除額 複式簿記+電子申告+イ・ロのいずれか イ 優良な電子帳簿(訂正削除履歴) ロ 請求書データ等との自動連携 75万円 複式簿記+電子申告 65万円 複式簿記(書面申告) 10万円 簡易簿記【対象を限定】   給与所得者の実額控除──食事支給とマイカー通勤の非課税限度額 佐藤:給与所得者に関連する細かい改正もありましたね。 上西:はい、「税制上の基準額の点検・見直し」という項目で、長年据え置かれていた非課税限度額の見直しが行われました。具体的には、食事支給とマイカー通勤の通勤手当です。 佐藤:食事支給の非課税限度額はどうなりましたか。 上西:詳細は大綱に記載されていますが、物価上昇を反映した引上げが行われています。 佐藤:マイカー通勤の方はどうですか。 上西:これが少し複雑でして、令和7年11月に行われた改正(令和7年4月に遡及適用)とは別に、さらに上乗せの措置が行われるんです。 佐藤:地方では相当な距離を通勤する人がいますから、地方の実情に合わせた改正ということですね。 上西:ええ、都心部では考えられないような長距離通勤が地方では普通にありますからね。ガソリン代の高騰もありますし、この見直しは実務的に意味があると思います。   教育資金一括贈与・結婚子育て資金の特例措置──格差固定化の懸念から終了へ 佐藤:資産課税の改正についても見ていきたいと思います。まず、教育資金一括贈与と結婚・子育て資金の一括贈与、これらの特例措置はどうなるのでしょうか。 上西:教育資金一括贈与の特例措置については、令和8年3月末で適用期限を迎え、延長されないことになりました。事実上の終了です。 佐藤:結婚・子育て資金の方は? 上西:こちらは令和9年3月まで残っていますが、前回の大綱では「検討の上、廃止も含めた見直し」となっていましたから、次回でおそらく終了するでしょうね。   事業承継税制──計画書の提出期限の延長 佐藤:事業承継税制についても動きがありましたね。 上西:法人版の「特例承継計画の提出期限」が1年6か月延長されて令和9年9月30日まで、個人版は2年6か月延長され、令和10年9月30日までとされました。 佐藤:「来年3月までに何とかしないと」という切迫感は緩和されましたね。 上西:そうですね。ただし、実際の贈与や相続の期限は令和9年12月31日までで変更はありません。なお、個人版は令和10年12月31日が期限です。   貸付用不動産の評価適正化──マンション通達の「抜け穴」を塞ぐ 佐藤:今回の資産税関係の改正で実務的に最も影響が大きいのが、この貸付用不動産の評価適正化ではないでしょうか。令和6年1月から適用のマンション通達でタワーマンション節税には歯止めがかかりましたが、今回の改正はどのような内容ですか。 上西:大きく2つ。第一が「区分所有登記されていない一棟貸しマンション」。マンション通達は「区分所有登記された建物」を対象としているので、区分所有登記さえしなければ、従来通りの評価方法が使えます。 佐藤:建物として区分所有できる構造でも、登記していなければセーフだったと。 上西:そうなんです。今回の改正では、「区分所有登記が可能な建物であれば、実際に登記されているかどうかに関わらず」評価の適正化の対象になります。 佐藤:もう1つは? 上西:「不動産の小口化商品」です。 佐藤:不動産小口化商品は、税法上「有価証券」となり、売却した時の税率は20.315%の分離課税ですよね。 上西:総合課税の最高税率55.945%と比べれば、圧倒的に有利です。ところが、相続税・贈与税の評価は「不動産」として行うんです。つまり、路線価と固定資産税評価額で評価できる。 佐藤:評価は安く、売却時の税率も低い。しかも小口化されているから売りやすいし、贈与等もしやすい。 上西:たとえば税調の資料では、3,000万円で取得した小口化商品が、財産評価基本通達では480万円の評価になる。税負担の軽減割合が95%に達するケースもあったと報告されています。 佐藤:95%削減は、さすがにやり過ぎですね。 上西:他の事例でも98%、78%といった数字が並んでいます。ここまで来ると、税制の信頼性を著しく毀損すると言わざるを得ない。   新たな評価ルール──取得価格ベースへの転換 佐藤:それで、新しい評価ルールはどうなるんですか。 上西:一棟貸しと小口化商品で、それぞれ違う対応がとられています。 まず一棟貸しについては、相続開始または贈与前5年以内に取得または新築した貸付用不動産について、原則として「取得価格」で評価しますが、次のような調整があります。 佐藤:小口化商品の方は? 上西:こちらは厳しくて、取得時期に関わらず「通常の取引価格」で評価することになりました。 佐藤:「通常の取引価格」って、どうやって決めるんですか。小口化商品の市場価格なんて、簡単には分からないですよね。 上西:そこで、販売業者に資料提出義務を課すことになったんです。具体的には3つの方法が示されています。 第一に、出資者の請求等により販売会社等から提示される「適正な処分・買取り価格」。第二に、販売会社等が把握している「適正な売買実例価格」。第三に、定期報告書等に記載されている不動産の価格。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 佐藤:適用時期は「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」とされていますから、おそらく令和9年1月1日からですね。 (続く)

#No. 652(掲載号)
#上西 左大信、佐藤 善恵
2026/01/15

上西左大信・佐藤善恵の 「令和8年度税制改正大綱」のここに注目! 【第4回】「法人課税・消費課税・納税環境整備と今後の展望」

上西左大信・佐藤善恵の 「令和8年度税制改正大綱」のここに注目! 【第4回】(最終回) 法人課税・消費課税・納税環境整備と今後の展望 税理士法人ゆづりは 代表社員税理士 上西左大信 社員税理士 佐藤 善恵   はじめに 【第1回】・【第2回】では令和8年度税制改正大綱の基本的考え方と政治的背景を、【第3回】では個人所得課税と資産課税の具体的改正内容を見てきた。最終回となる【第4回】では、法人課税・消費課税の改正、納税環境整備、そして検討事項から見えてくる今後の税制改正の方向性について解説する。 中小企業向け税制の拡充、画期的な特定生産性向上設備等投資促進税制の創設、インボイス制度の経過措置延長など、実務に直結する重要な改正が並ぶ。また、大綱の検討事項に何が残されたのか、何が書かれなかったのかを読み解くことで、次の改正の方向性も見えてくる。   中小企業向け税制の拡充──少額減価償却資産30万円から40万円へ 佐藤:法人税の改正について見ていきたいと思います。まず、中小企業にとって使い勝手の良い制度として定着している少額減価償却資産の特例はどうなりましたか。 上西:取得価額の上限が30万円から40万円に引き上げられました。 佐藤:物価上昇を反映した改正ですね。実務的には、これまで30万円ギリギリで購入を抑えていたものが、40万円まで一括償却できるようになるので、かなり使いやすくなります。年間合計額の上限はどうなりますか。 上西:年間合計額については、従来通り300万円のまま据え置かれています。取得価額の上限は引き上げられましたが、年間で取得できる総額は変わっていないということです。なお、個々の金額の判定は事業年度に関係なく、令和8年4月1日からの事業供用分からとなります。 佐藤:取得価額の上限が上がったのは良いニュースですが、一方で要件が厳しくなった部分もありますね。従業員数要件が変更されました。現行では常時使用する従業員数が500人以下の法人が対象でしたが、改正後は400人以下に引き下げられます。つまり、従業員数が400人を超える法人は対象外になるということです。 少額減価償却資産の特例の見直しに連動して他の制度も引き上げられれましたね。 上西:そうなんです。少額減価償却資産の特例が40万円まで使えるようになったので、それと整合性を図るための改正です。ただし、制度によって改正された資産の範囲が違うので、そこは注意が必要です。金額基準が見直されたのは、中小企業投資促進税制では「工具」、中小企業経営強化税制では「工具及び器具備品」です。また、中小特例ではありませんが、特定事業継続力強化設備等の特別償却制度は「器具備品」が引上げ対象です。   大胆な設備投資の促進に向けた税制措置──建物も対象 佐藤:今回の税制改正の目玉の一つが、特定生産性向上設備等投資促進税制の創設ですね。対象企業はどのくらいの規模ですか。 上西:投資下限額が35億円となっていますが、中小企業については5億円となっているので、頑張っている中堅企業であれば十分に対象になり得ます。 佐藤:青色申告法人であれば業種は問われてないのですね。特例の内容はどうですか。 上西:即時償却または税額控除7%が選択できます。そして注目すべきは、建物や建物附属設備についても4%の税額控除が認められている点です。 佐藤:令和7年度改正の「100億円企業を目指す」改正の時に建物と建物附属設備が入ったことが話題になりましたが、今回創設された制度にはさらっと建物が含まれて4%になっています。   インボイス制度──経過措置の2年延長と2割特例の見直し 佐藤:インボイス制度についても動きがありました。 上西:大きく2つの改正があります。一つは2割特例の見直し、もう一つは適格請求書発行事業者以外からの仕入れに係る経過措置の延長です。 佐藤:まず2割特例の方から教えてください。 上西:新たにインボイス発行事業者になった小規模事業者に対して、消費税の納税額を売上税額の2割とする特例がありましたが、これを段階的に引き上げることになりました。 佐藤:個人についてのみ3割特例というのが新設されたんですよね。 上西:そうです。2割特例の後、いきなり簡易課税や本則課税に移行するのは負担が大きいので、「踊り場」として3割特例を設けたんです。2割特例が終わった後、3割特例を経て、簡易課税や本則課税に移行していく流れになります。 佐藤:二つ目の適格請求書発行事業者以外からの仕入れに係る経過措置の改正も確認しましょう。 上西:現行では、適格請求書発行事業者以外からの仕入れについて、80%、50%の2段階で経過措置が終了する予定でした。でも、小規模事業者が取引から排除されないようにするため、これを2年間延長することになったんです。 佐藤:具体的には、どういうスケジュールになりますか。 上西:80%控除の期間はそのまま維持します。その後、70%で2年間の「踊り場」を設け、50%の期間を3年間から2年間に短縮して1年間後ろに引っ張ります。そして、ゼロになる前に30%という新たな段階を1年間設けます。結果として、合計2年間延びることになります。 佐藤:かなり細かく刻んで、ソフトランディングを図っているんですね。 上西:ただし、濫用的な利用を防ぐための措置も同時に講じられています。免税事業者からの課税仕入れのうち、本経過措置の対象とできる上限が10億円から1億円に引き下げられます。本来小規模事業者を保護するための経過措置が、大規模な取引に利用されるケースがあったためです。例えば、新しく法人を設立して取引を分散させ、経過措置のメリットを享受するといった使い方も可能でしたから。 佐藤:本当に小規模でやっている事業者の方々を保護するための制度ですから、大規模な取引については制限を設けて、制度の趣旨に沿った運用を図るということですね。   納税環境整備──eLTAXのシステム障害対応 佐藤:納税環境整備についても見ていきましょう。 上西:今回、eLTAXのダイレクト納付について大きな利便性向上が図られました。 佐藤:どのように変わるんですか。 上西:現行では、eLTAXで申告等を行った後、改めて納付手続を行う必要があったんです。申告は申告、納付は納付と、二段階の手続が必要でした。 佐藤:確かに、それは少し手間ですね。 上西:今回の改正で、申告等を行う際に「自動ダイレクト」のチェックボックスにチェックを入れるだけで、法定納期限当日に自動的に納付が行われるようになります。改めて納付手続をする必要がなくなるんです。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 佐藤:申告と納付が一体化するということですね。 上西:そうです。ただし、法定納期限当日に申告と併せて自動ダイレクトのチェックを入れた場合は、金融機関の対応時間外である場合などは、実際の引き落としが法定納期限の翌取引日になります。 佐藤:それだと延滞金がかかってしまうのでは。 上西:そこが今回の改正のもう一つのポイントです。その場合でも、期限内納付があったものとみなして、延滞金を課さないという特例が設けられました。ただし、税額が1億円以下の場合に限られます。これで、e-Taxと同様になりました。 佐藤:法定納期限当日ギリギリに申告しても、延滞金の心配がないということですね。 上西:はい。これまでは、期限当日の金融機関の対応時間外に申告した場合などは、翌日以降に再度納付手続が必要で、延滞金が課されることがありました。今回の改正で、そういった心配がなくなります。 佐藤:適用時期はいつからですか。 上西:令和10年4月1日以後に行うダイレクト納付の手続について適用されます。   固定資産税の免税点引上げ──償却資産税150万円から180万円へ 佐藤:固定資産税についても改正がありましたね。 上西:償却資産税の免税点が150万円から180万円に引き上げられました。これは実務的に結構重要です。 佐藤:償却資産税は、事業用の機械や備品などにかかる固定資産税ですね。 上西:そうです。土地や建物の固定資産税は皆さんご存じですが、事業で使っている一定の機械、器具、備品などにも固定資産税がかかるんです。これを「償却資産税」と呼んでいます。 佐藤:150万円未満だと課税されないという免税点があったわけですね。 上西:そうです。償却資産の評価額が150万円未満の場合は課税されません。この基準が180万円に引き上げられたので、小規模な事業者の負担軽減になります。 佐藤:この改正は令和9年度以後の改正なので、令和8年度の申告(令和8年1月末期限)では、まだ従来通り150万円が基準になります。この点も間違えないよう注意が必要です。   検討事項──何が残されたのか 佐藤:今回の大綱の検討事項について見ていきたいと思います。 上西:検討事項は、例年に比べて項目数が絞られている印象です。重要度の高い項目に焦点を当てた構成になっていると言えるでしょう。 佐藤:具体的にはどんな項目が残っていますか。 上西:たとえば、国外居住親族に係る扶養控除等の適用についても、引き続き検討するとされています。令和2年度改正で、海外に何十人も扶養親族を持っている人がいたので、証明書類の提出を求めるなど要件を厳格化し、現行制度が令和5年1月1日から施行されて3年経つので、見直しを行うということです。 佐藤:実態調査を行うとも書いてありますね。 高校生年代の扶養控除については・・・。 上西:これは検討事項に残りました。「児童手当の支給対象の高校生年代までの拡充や高校無償化の所得制限の撤廃等の歳出面での対応や、本扶養控除の見直しの方向性を踏まえた住宅ローン控除や生命保険料控除の先行的な拡充も念頭に、引き続き検討を進め、結論を得る。」という表現になっています。 佐藤:結論が出るまでには、もう少し時間がかかりそうですね。 上西:そのようですね。他の制度との関係も含めて、慎重に検討されているということでしょう。 佐藤:ベビーシッター費用の控除についても言及されていますね。 上西:これは新しい項目です。人口減少に伴う人手不足が深刻化する中、育児や子どもの不登校を理由に会社を辞めなければならない人が出てくる。それを防ぐために、ベビーシッター制度をもっと育てていく必要があるということです。 佐藤:税制上の優遇措置を検討するということですか。 上西:そうですね。ベビーシッター費用の一部を所得控除や税額控除の対象にすることなどが考えられます。これは非常に良い方向性だと思います。   今後の税制改正の方向性 佐藤:最後に、今後の税制改正の方向性について、上西先生のお考えをお聞かせください。 上西:今回の大綱を通読して感じるのは、「公平性の確保」と「経済成長の促進」のバランスを取ろうとしているということです。 佐藤:具体的にはいかがでしょうか。 上西:公平性の確保という面では、マンション節税や小口化商品のような租税回避的なスキームに対する規制が強化されました。一方、経済成長の促進という面では、大型の投資促進税制や、研究開発税制の拡充が図られています。 佐藤:高市政権の「強い経済、世界で輝く日本」というビジョンが反映されているということですね。 上西:そうです。そして、物価連動による基礎控除の引上げという新しい仕組みの創設は、本当に画期的だと思います。今までは物価が上がっても控除額は据え置かれて、実質的な税負担が増えていた。それを解消する仕組みができたことは、大きな前進です。 佐藤:一方で、課題も残されていますね。 上西:給付付き税額控除については、大綱の表現を見る限り、「議論の中で検討する」とあります。今後の対応が注目されます。 また、法人税については、累次の税率引下げが本当に投資や賃上げにつながったのか、不断の検証が必要だと大綱に書かれています。内部留保が増えているだけではないか、という批判に対して、政府も意識しているということです。 佐藤:今後、税制がどう変わっていくか、注視していく必要がありますね。 上西:そうですね。特に、複数年財政均衡という考え方が強調されていることは注目すべきです。単年度主義に過度にとらわれない、柔軟な財政運営を目指すということですから、今後の税制改正にも影響してくる可能性があります。 佐藤:防衛財源の確保についても、引き続き議論が続きますね。 上西:令和9年1月から防衛特別所得税1%が始まり、復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がります。実質的な負担は変わりませんが、税制の形としては大きな変化です。 高市総理の所信表明演説を読むと、防衛力強化に対する強い意志が感じられます。今後の税制にも反映されていくでしょう。 佐藤:最後に、実務家に向けて何かあればお願いします。 上西:実務家として今後の税制改正の動向にも注意を払いながら、顧問先の皆様に最適なアドバイスができるよう、準備を進めていきましょう。 (連載了)

#No. 652(掲載号)
#上西 左大信、佐藤 善恵
2026/01/15

社長からの無理難題の断り方・かわし方 【第1回】「愛人への給与」

社長からの無理難題の 断り方・かわし方 第1回 愛人への給与 〈JUN税会〉 税理士 植西 正   ◆ ◇ ◆ 連載開始にあたって ◆ ◇ ◆ 「先生、これ何とか経費にしておいてよ」 「うまいこと処理するのが、先生の仕事でしょ?」 税理士業務の現場において、経営者から投げかけられるこうした「無理難題」。 コンプライアンスを盾に「無理です」と即答するのは簡単ですが、それでは社長の心情を害し、信頼関係にヒビが入りかねない――そんな実務家としてのジレンマに、日々頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。 本連載は、十数名の士業が集う勉強会「JUN税会」で検討された、現場の知恵と解決策を共有するものです。 机上の空論としての法解釈にとどまらず、「社長の意図を汲みつつ、いかに専門家として適切な方向へ導くか」という、実務の現場で求められる対応の勘所に焦点を当てます。 違法な要望に対しては、なぜそれが認められないのかを論理的に説く「断り方」。そして、正面衝突を避けながら、適法な代替案やリスクの所在を示すことで矛先を変える「かわし方」。本連載では、一筋縄ではいかない難問を前に、専門家集団がどのように法的・税務的論点を整理し、最適解を導き出していくのか、その思考プロセスを多角的に検証していきます。 *   *   * * * 解 説 * * 1 事実関係の把握 本件では、以下の事実が確認されました。   2 法的論点の整理 (1) 給与所得の成立要件 ① 所得税法上の「給与等」の意義 支払った給与が給与所得とされるためには、所得税法28条1項に定める給与等に該当しなければなりません。 ここでいう給与等とは、雇用契約(民法633)に基づくものや労働法上の賃金(労基法11)と同意であり、労働の対償として支払われるものを指します。 ② 最高裁判所の判断基準 最高裁は、給与等について次のように判示しています(昭和56年4月24日判決)。 (2) 役員給与としての取扱い 愛人への給与と認められない場合、私費流用として社長の個人所得(役員給与)とされる可能性があります。この場合、以下の2つの論点が生じます。 ① 事前確定届出給与との関係 所轄税務署長に事前確定届出給与に関する届出書を提出している場合(法法34①)、愛人への給与が社長個人への役員賞与と認定されると、届出どおりに支給されていた役員賞与も合わせて損金に算入することができなくなります。 1回でも事前の定めのとおりにされたものではないものがあるときには、役員給与の支給額全体が事前の定めのとおりにされなかったことになるとされた裁判例もありますので、注意が必要です。 ② 隠蔽・仮装による役員給与 本来は社長が経済的利益を受けているにもかかわらず、勤務実態のない愛人への給与としていることが、隠蔽又は仮装による経理に該当する可能性があります。 隠蔽又は仮装して経理することにより支給された役員給与であると認められると、その額は損金に算入されません(法法34③)。これには「経済的な利益」を含みますので、その金員が社長に直接支払われたかどうかは関係ありません(法法34④)。 (3) 特殊の関係のある使用人 仮に愛人が従業員として勤務している実態がある場合でも、支払金額の一部が損金不算入となる場合があります。 社長と「事実上婚姻関係と同様の関係にある者」(法令72二)に該当する場合、又は社長から「生計の支援を受けている者」(同令三)に該当する場合には、愛人は「その役員と特殊の関係のある使用人」となります。 この場合、愛人に支給する給与の額のうち、「不相当に高額な部分の金額」は、各事業年度の損金の額に算入することができなくなります(法法36)。 (4) 源泉所得税 社長個人の役員給与となる場合、所得税法183条により、甲社には源泉徴収義務が生じます。 源泉徴収義務は、実際に金員が支払われたかどうかに関係なく生じるものとされます。つまり、会社が愛人に直接支払った場合でも、それが社長への役員給与と認定されれば、社長に対する源泉徴収義務が発生します。 (5) 贈与税 愛人への給与が実質的に社長の役員給与からの横流しであるならば、社長から愛人への贈与と認められる可能性があります。   3 本件事例への当てはめ (1) 給与所得の成立要件について 本件では、労働条件通知書に署名し、発行された従業員証を身につけているという形式は整っています。 しかし、実態を見ると、以下の点が問題となります。 これらの事実から、労働条件通知書に署名し、従業員証を身につけているだけでは、愛人が甲社で勤務している実態があるとするのは大変困難です。 そのため、愛人に支払った給与は、所得税法28条1項に定める給与等には該当しないと考えられます。 (2) 役員給与としての取扱い ① 事前確定届出給与との関係 「事前の定めのとおりにされたものではない」役員賞与が生じているのであれば、その事業年度及び翌事業年度の役員給与の全額が損金不算入となります。 社長が事前確定届出給与の届出をしている場合、本件の愛人への給与が社長への役員賞与と認定されることにより、届出済みの役員賞与まで損金不算入となるリスクがあります。 ② 隠蔽・仮装の該当性 本来は社長が経済的利益を受けているにもかかわらず、勤務実態のない愛人への給与としていることが、隠蔽又は仮装による経理に該当する可能性があります。そうなると法人税法34条3項及び4項が適用され、この支払額は損金に算入されなくなります。 現状では、労働条件通知書に記載された内容の業務をしていないこと、勤怠管理をしていないことを課税庁が指摘したとしても、これらを隠蔽・仮装とまで認定するのは難しいと考えられます。 ただし、本来は社長が受けている利益を愛人への給与にすり替えているという実態があれば、隠蔽・仮装と認定されるリスクがあります。 ③ 無理に形式を整えることのリスク 勤務実態があるように見せるため、事実を意図的に変更することは、さらに大きなリスクを伴い、重加算税を課されることもあります (3) 特殊の関係のある使用人について 社長の愛人は「事実上婚姻関係にある者」とは認められませんが、「生計の支援を受けている者」に該当する可能性はあります。 ただし、法人税法36条は、勤務実態のある者が「役員と特殊の関係のある使用人」である場合に過大な給与が支払われた場合の規定です。 本件は勤務実態自体が認められない事例ですから、36条の適用対象ではありません。したがって、月額20万円の給与が「不相当に高額な金額」に該当するかどうかは関係がありません。 (4) 源泉所得税について 愛人に支払った給与の額が社長への役員賞与とされた場合には、社長に支払ったものとして源泉所得税が発生します。 この場合、以下の処理が必要です。 社長への通常の役員給与に愛人の給与額を加算した金額をもとに源泉徴収税額を計算することになりますので、金額が大きくなる可能性が高くなります。 (5) 贈与税について 愛人に支払う給与は、愛人の給与所得ではなく社長個人からの贈与となる可能性があると考えられます。 (6) その他 愛人に支払った電車賃やタクシー代金も(1)~(5)の検討対象に含まれます。   4 金銭の流れの整理   5 近年の裁判例 愛人や内縁の妻に支払った従業員給与をめぐる裁判例には次のようなものがあります。 判決 概要 裁判所の判断 東京地裁 令和元年5月 30日判決 納税者 敗訴 内縁の妻を有限会社の従業員として支払った給与 (月額45万円)。 重加算税も賦課。 法人代表者の役員給与の額と認定。法人税法34条3項・4項の隠蔽または仮装に該当。 高裁も原審を維持し、確定。 札幌地裁 令和6年1月 29日判決 納税者 敗訴 雇用契約書はあるものの愛人は労働契約を認識していない。重加算税も賦課。 労務の対価とは認められず生 活費援助と認定。  

#No. 652(掲載号)
#植西 正
2026/01/15

令和7年分 確定申告実務の留意点 【第3回】「特に注意したい事項Q&A-特定親族特別控除の創設に伴う申告書への影響等-」

令和7年分 確定申告実務の留意点 【第3回】 (最終回) 「特に注意したい事項Q&A -特定親族特別控除の創設に伴う申告書への影響等-」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   本連載の最終回は、令和7年度税制改正事項に関連するものの他、確定申告において注意が必要と考えられるもので、過去に取り上げていない5項目をQ&A形式でまとめることとする。 なお、本稿では、特に指定のない限り令和7年分の確定申告を前提として解説を行う。   〈令和7年分の確定申告書の様式〉 【Q1】 令和7年度の税制改正において、特定親族特別控除が創設された。令和7年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書にどのように記載するのか。 【A1】 第一表の㉔に「特定親族特別控除」欄が設けられている。ここに特定親族の人数及び合計所得金額に応じた控除額の合計額を記入する。 (※) 国税庁ホームページ「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」の5頁より抜粋。なお、赤の囲みは筆者追記。 また、第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄に特定親族の氏名等を記入し、「特親」欄に特定親族の合計所得金額に応じた控除額を万円単位で記入する。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 国税庁ホームページ「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」の6頁より抜粋。なお、赤の囲みは筆者追記。 -解説- 令和7年度税制改正において、大学生年代の子等を対象とする特定親族特別控除が創設された。特定親族特別控除の詳細については、下記拙稿をご参照いただきたい。 第一表の㉔欄の「人数」欄には、特定親族特別控除の適用を受ける人数を記入し、第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄には、特定親族ごとに「氏名」「個人番号(マイナンバー)」「続柄」「生年月日」と、各特定親族の合計所得金額に応じた控除額を万円単位で記入する。     〈第一表の「区分」欄〉 【Q2】 確定申告書第一表には、「区分」欄が設けられている項目がある。「区分」欄は、どのような場合に記入するのか。 【A2】 第一表の「区分」欄には、次のように記入する。 (※1) 「所得金額調整控除」については、拙稿「〈令和2年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第1回】」もご参照いただきたい。 (※2) 「給与所得者の特定支出に関する明細書」については、国税庁ホームページをご参照いただきたい。 (※3) 第二表「配偶者や親族に関する事項」欄に必要事項を記入する。   (※4) 第二表「特例適用条文等」欄に該当条文を記入する。 (※5) 第二表「特例適用条文等」欄に居住開始年月日を記入する。 以下の場合は、居住開始年月日の頭部に次のように記入する。 以下の場合は、居住開始年月日の末尾に次のように記入する。 特別特例取得等の定義については、国税庁ホームページ「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」の40頁もご参照いただきたい。     〈ワンストップ特例と確定申告〉 【Q3】 給与所得者で、ふるさと納税先は5団体、ふるさと納税の都度ワンストップ特例の申請をしている。医療費控除の適用を受けるため確定申告をする場合、ふるさと納税の金額も寄附金控除額の計算に含めるのか。 【A3】 確定申告をする場合には、ふるさと納税のワンストップ特例の申請は無効となる。よって、確定申告では、ワンストップ特例の申請分も含めて寄附金控除額を計算する必要がある。 -解説- ふるさと納税として寄附した金額について、控除を受けるためには、ふるさと納税を行った年分の確定申告をする必要がある(所法78)。 しかし、平成27年4月1日以後、確定申告が不要な給与所得者については、ふるさと納税先が5団体以下の場合に限り、ふるさと納税先自治体に申請を行うことによって寄附金税額控除の適用を受けることができる(地税附則7①②、「ワンストップ特例」)。 なお、5団体を超える先にふるさと納税を行った場合や、医療費控除等の適用を受けるため確定申告をする場合に、ふるさと納税について寄附金控除の適用を受けるためには、ふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含めて確定申告を行う必要がある(地税附則7⑥一)。     〈扶養控除と特定親族特別控除〉 【Q4】 次の生計を一にする親族を有する場合、所得者本人(居住者)が適用できる所得控除は何か(記載されている事項以外は考慮しない)。 【A4】 -解説- (1) 控除対象扶養親族の範囲 扶養控除の対象となる扶養親族を控除対象扶養親族という。控除対象扶養親族の範囲は、親族が居住者か非居住者かによって異なる(所法2①三十四の二)。 〈表1〉控除対象扶養親族の範囲 (2) 特定親族 特定親族特別控除の対象となる者を特定親族という。特定親族とは、居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等 (※)で、合計所得金額が58万円超123万円以下の人である(所法84の2①)。 (※) 配偶者及び青色事業専従者等を除く。 (3) 各ケースの検討 以上より、①から④のケースについて検討する。 ①の子は、(1)〈表1〉①に該当するので控除対象扶養親族に該当し、扶養控除の適用対象となる。 ②の子は、(2)の特定親族に該当する(給与収入150万円-給与所得控除65万円=給与所得85万円)ので、特定親族特別控除の適用対象となる。 ③の子は、(2)の特定親族に該当するので、特定親族特別控除の適用対象となる。なお、特定親族の要件は、控除対象扶養親族のように居住者と非居住者で違いはない。 ④の子は、(1)〈表1〉②のいずれにも該当せず、(2)の特定親族にも該当しない。したがって、扶養控除及び特定親族特別控除いずれの適用対象にもならない。   〈非居住者の基礎控除額〉 【Q5】 令和6年12月以前に海外支店へ転勤し、令和7年は1年を通して非居住者であった。日本国内に貸付用不動産を所有していることから、納税管理人を通して令和7年分の確定申告を行う。確定申告の対象となる所得が不動産所得350万円の場合、確定申告において適用できる基礎控除額はいくらか。 【A5】 基礎控除額は58万円である。 -解説- 令和7年度税制改正において、基礎控除の見直しが行われた。所得税法(本則)の規定による基礎控除額が48万円から58万円へ10万円引き上げられたことに加え、令和7年分以後は、居住者について合計所得金額が655万円以下である場合、一定の金額が加算される特例が設けられた(所法86①、措法41の16の2①)。 令和7年分の所得税の基礎控除額(本則分+特例分)は、以下のとおりである。 特例分は、居住者についてのみ適用されることから、令和7年中を通して非居住者であった場合に特例分は適用されない。   (連載了)

#No. 652(掲載号)
#篠藤 敦子
2026/01/15
#