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《税務必敗法》 【第4回】「e-Tax、eLTAXの送信を忘れた」

《税務必敗法》 【第4回】 「e-Tax、eLTAXの送信を忘れた」   公認会計士・税理士 森 智幸   【事例】 確定申告の期日に、顧問先のA社から「e-Taxのメッセージボックスを見たところ、法人税の確定申告に関する受信通知は来ているが、消費税の確定申告に関する受信通知は来ていない。消費税の申告はしてくれたのか?」という問い合わせの電話が来た。 担当者と上司が、電子申告ソフトを見てみると、送信ボックスに消費税の申告データが残ったままであった。原因は、担当者が法人税と消費税の申告データをまとめて送信したつもりが、操作方法の誤りにより、法人税の申告データしか送信できていなかったためであった。   1 はじめに 本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「e-Tax、eLTAXの送信を忘れた」である。 近年は、e-Tax、eLTAXにより電子申告で申告書等を提出することが多くなった。しかし、電子申告は便利である反面、送信ミスのリスクがある。 そこで、今回は、電子申告の送信ミスの原因とその対策について解説する。 また、電子申告に関連する事項として、Windows10のサポート終了に関する国税庁の対応についても解説する。 なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。   2 電子申告の送信ミスをする原因 (1) 送信ボタンの操作ミス 送信ミスで想定されるのは、電子申告ソフトの送信ボタンの操作ミスである。例えば、送信ボタンを押して送信したつもりが、送信できていなかったというケースが想定される。 また、事例で紹介したように、複数の種類の申告書をまとめて送信するときに、操作ミスで一部の申告書しか提出できていなかったというケースも想定される。 実は、筆者がこのミスをしてしまったことがある。消費税の確定申告に関する受信通知が来ないのでおかしいな、と思い送信ボックスを見たところ消費税の申告データが残ったままだったのである。すぐに自分で気が付いたので事なきを得たが、電子申告ソフトの操作方法には十分注意すべきである。 (2) 後で出そうと思って忘れていた 申告等データを作成し、後で送信しようと思ったものの、うっかり忘れてしまうというケースも想定される。 例えば、申告等データを作成するのは無資格の担当者であるが、電子署名・送信を行うのは税理士、というように担当が別の場合も、連絡ミス等によって申告を失念する可能性がある。 (3) 退職時の引継ぎ漏れ 職員の退職時も注意すべきである。前任者が申告等データを作成したものの、まだ送信していない場合、後任者への引継ぎ漏れで送信を忘れてしまうことが想定される。 (4) データの未添付 データを添付したつもりが未添付だったということもありうる。例えば、提出すべき別表のPDFの添付漏れという事態が想定される。   3 送信失念の影響 (1) 無申告加算税等の発生の可能性 電子申告で申告書の送信を失念し、確定申告期限を過ぎてしまうと無申告となってしまう。無申告となると、原則として無申告加算税(地方税の場合は不申告加算金)の対象となる。 (2) 延滞税等の発生の可能性 ダイレクト納付や自動ダイレクトの場合、申告ができなければ口座振替による納付も行われない。その結果、期限後納付となり、延滞税や延滞金が発生することになる。 (3) 顧問契約の解除の可能性 期限後申告となると、顧問先からの信用を失い、顧問契約が解除となる可能性がある。 (4) 損害賠償の可能性 届出書、申請書、別表の送信ミスが損害賠償につながる可能性もある。次のように届出書の送信ミスによる損害賠償事例も発生している。 (株式会社日税連保険サービス『税理士職業賠償責任保険事故事例(2021年7月1日~2022年6月30日版)』の事例14より引用) 関連する事例として、電子申告未対応の別表を、後日郵送で提出しようとしたものの、その郵送を失念してしまい、特別控除の適用を受けることができず損害賠償となった事例もある(株式会社日税連保険サービス『税理士職業賠償責任保険事故事例(2022年7月1日~2023年6月30日版)』の事例11より) なお、電子申告未対応の別表等については、PDF形式でも送信できる。この点は、国税庁「リリース前の別表等について」を確認されたい。   4 送信失念を防止するための対策 (1) 即時通知、受信通知を必ず確認する 申告等データを送信したら、即時通知と受信通知を確認することである。特に、受信通知は申告等データが税務署に到達したこと等を確認するものなので、受信通知が届いていないということは税務署に提出できていないということである。送信後は、メッセージボックスを必ず確認すべきである。 (2) 管理台帳を作成する 申告等データの作成と電子署名・送信の担当者が別である場合、連絡ミスや後で出そうと思って送信を忘れるというリスクがある。そのため、作成日と送信日を一覧にした管理台帳を作成して管理する方法が考えられる。 (3) 手続書を作成する 事務所内で、電子申告ソフトの使用方法に関する手続書を作成することも有用である。個人任せではなく、手続すべてを事務所全体で管理することが事故の防止につながるといえる。 (4) 退職者の引継ぎ事項を確認する 退職者が出た場合、申告等データを作成した後、未送信となっているものがないかどうかを引継ぎ時に確認するとよいであろう。 (5) 提出する申告書や別表を事前に整理する 電子申告に限った話ではないが、顧問先別に提出すべき申告書や別表を整理して一覧にしておくことも必要である。 筆者の周囲では、事業所税の申告書の提出を失念したため、不申告加算金約40万円が発生し、自己負担したという税理士がいる。事業所税のように顧問先によって提出の要否が異なる税金もあるので事前の整理が重要である。   5 Windows11への更新失念 (1) Windows10は推奨環境から除外へ Windows10は、2025年10月14日以降、Microsoftのサポートが終了する。 これに伴い、国税庁は同年4月25日付で「【重要】Windows 10をご利用の方へ」を公表し、同年10月14日以降、e-Taxソフトをはじめとしたソフト等の利用環境として、Windows 10を推奨しない予定であることを公表した。 これを受けて、税務申告ソフト各社も、OSをWindows10からWindows11に更新することをユーザーに呼び掛けている。 (2) Windows11に更新しなかった場合のリスク Windows11に更新しなかった場合、e-Taxソフトや市販の税務申告ソフトの動作がどのようになるかは不明であるが、仮に、Windows10で作動した場合であったとしても、例えば、申告時にエラーが発生するといったトラブルが想定される。 (3) 古いパソコンは要注意 Windows11への更新は無料であるが、古いパソコンだと対応できない可能性がある。そのため、現在使用しているパソコンがWindows11に対応しているかどうか確認しておくべきである。 今後、Windows10のサポート終了に伴うパソコンの買い替え需要が増加すると予想される。通常より納期が遅くなる可能性があるので、買い替えの場合は、早めの対応が必要である。   6 おわりに 今回は、e-Tax、eLTAXの送信の失念の原因や防止策について説明した。 何事もそうであるが、慣れたときにミスが出やすい。したがって、常に決められた手順に従い、丁寧に手続を進めるべきである。 本稿がe-Tax、eLTAXを使用する皆様の実務の参考になれば幸いである。 (了)

#No. 634(掲載号)
#森 智幸
2025/09/04

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第96話】「フェラーリは減価償却資産か?」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第96話】 「フェラーリは減価償却資産か?」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   浅田調査官は、昼食後に、ソファーにもたれて、判例(東京地裁令和5年3月9日判決)を読んでいる。 「・・・おかしいな・・・」 浅田調査官は、時々、呟きながら、思案顔になる。 そこに、昼食を終えた中尾統括官が、爪楊枝をくわえながら戻ってくる。 「・・・浅田君・・・休み時間ぐらい、のんびりしたらどうだい・・・」 熱心に判例を読んでいる浅田調査官に、中尾統括官は声をかける。 「・・・この判例って・・・おかしいと思いません?」 ソファーにもたれていた浅田調査官は、背筋を伸ばして中尾統括官の顔を見る。 差し出された判例の概要は、次のように記載されている。 「フェラーリF50・・・という車は・・・かなり高額なんだろう?」 中尾統括官は、浅田調査官に訊ねる。 「ええ、判例では・・・フェラーリF50は、フェラーリ社の歴史の中でも重要なコレクションカーであり、かつ、349台限定で製造されたことから、その機能面のみならず、美的側面や希少性も価格形成要因の相当部分を占めているものと認められる・・・と述べられています」 「・・・それで・・・いくらぐらいで売買されているの?」 中尾統括官が再度訊ねる。 「・・・数億円です・・・」 その答えを聞いて、中尾統括官は、驚く。 「・・・フェラーリF50って、そんな高いの?」 中尾統括官は、浅田調査官の顔を見る。 「・・・それで・・・フェラーリF50について、他の車両と同様に、減価償却をすべきかどうか、ということが争点になっているのです」 浅田調査官は、ソファーのテーブルで、譲渡所得の算式を書く。 「そして、取得費については、『使用又は期間の経過により減価する資産』であれば、減価償却相当額を控除することになります・・・」 「・・・例えば、1億円で購入したフェラーリF50を2億円で譲渡した場合、減価償却をしなければ、1億円がキャピタルゲインになりますが、減価償却を行い、その減価償却相当額が9,000万円であれば、1億9,000万円がキャピタルゲインとして課税されます・・・」 浅田調査官は、中尾統括官に説明する。 「なるほど・・・それでフェラーリF50が減価償却資産に該当するかどうかが争われた事件ということか・・・」 中尾統括官は、大きく頷く。 「ところで・・・裁判所は、フェラーリF50は、減価償却資産に該当するという判断をしていることに、君は納得しないということか?」 中尾統括官は、浅田調査官を見る。 「ええ、フェラーリF50は自動車の機能を有していることから、車両として減価償却すべきだと述べています・・・しかし、その価格形成要因としては、機能面よりも、美的側面や希少価値・・・すなわち、減価償却をすることが妥当でない要因が大きいと思うのです・・・だから、単純に、フェラーリF50全てを減価償却することに疑問があります・・・」 そう言うと、浅田調査官は、再び、ペンを持って図を描く。 「すなわち・・・フェラーリF50の取得費を、図に示したように、その価格形成要因で按分すべきだと思うのです・・・車両の機能面については、自動車の専門家であれば、おそらく客観的に計算は可能なように思えます・・・そうすると、取得費から車両の機能面を原価計算で算出し、その金額を控除すれば、美的側面・希少価値の評価額が導かれます・・・そして、車両の機能面の価額(2,500万円)のみを減価償却すれば良いと思います・・・」 浅田調査官は、図を見ながら説明をする。 「・・・判例は、次のように、フェラーリF50は、骨とうではないから、減価償却すべきであるといっていますが、骨とうでなくても減価しないものは他に多くあるし、また、それは、長期間であるという必要性はないと思います・・・」 「・・・そして、次のように判断していますが、価格推移に不確定な面があることは、減価償却をするか否かに直接関係しないことだと思います・・・これは強引な結論と思います・・・」 「・・・もともと減価償却は、仮定を前提とした計算ですから、その算出方法に合理性があれば、車両の機能面のみを減価償却することも可能だと思うのですが・・・」 浅田調査官は、不満そうに言う。 (つづく)

#No. 634(掲載号)
#八ッ尾 順一
2025/09/04

《速報解説》 各府省庁からの令和8年度税制改正要望が出揃う~研究開発税制の拡充・延長、大胆な投資促進税制の創設、暗号資産税制の見直し等~

《速報解説》 各府省庁からの令和8年度税制改正要望が出揃う ~研究開発税制の拡充・延長、大胆な投資促進税制の創設、暗号資産税制の見直し等~   Profession Journal編集部   本年も8月末から9月頭にかけて各府省庁より税制改正要望が公表された。 令和8年度税制改正要望では、国内産業基盤の維持・強化を図ることを目的とした設備投資や研究開発投資等の国内投資を後押しするための新税制の創設や研究開発税制などの既存制度の拡充・延長等が要望されているほか、時限措置として令和8年分所得税において講じられた生命保険料控除制度の拡充の恒久化や分離課税の導入を含めた暗号資産取引等に係る課税の見直し等の社会情勢に即した要望がされている。 以下では、令和8年度税制改正要望の一部を紹介する。   〇研究開発税制の拡充・延長及び大胆な投資促進税制の創設 経済産業省は、日本の成長力・国際競争力を高めるには中長期的に企業の研究開発投資の増加を促し、国際的に遜色のないイノベーション立地競争環境を確保するためのインセンティブ強化が必要として、研究開発税制の拡充及び延長を要望している。 具体的な要望内容としては、既存の一般型等とは別に日本の戦略技術領域を対象とした戦略技術領域型の創設、オープンイノベーション型の中に特定大学等戦略研究拠点との共同・委託研究の追加、大学等との共同・委託研究時の対象費用の明確化・手続き合理化、税額控除の繰越制度の導入、高度研究人材の活用に関する試験研究費の拡充、中堅企業に対するインセンティブ強化、試験研究費の範囲の明確化、一般型の控除率の上乗せ措置の適用期限の3年間延長(令和10年度末まで)等が示されている。 また、国内投資の拡大を通じて日本企業の「稼ぐ力」を向上させ、賃上げを含めた好循環を形成するため、5年間を集中投資期間と位置づけた上で、高付加価値化のための大胆な設備投資を促進する新税制の創設を要望しているものの、現状、具体的な要件等は明らかとなっていない。 そのほか、令和5年度に創設されたパーシャルスピンオフ税制(適用期限は令和9年度末)に関し、スタートアップの創出だけでなく、ノンコア事業を切り出し、コア事業に専念するための事業ポートフォリオの組替えも促進できるよう適用要件を見直した上で、本制度の恒久化を要望しているほか、車体課税の抜本見直し、オープンイノベーション促進税制の2年間延長(令和9年度末まで)等も要望している。   〇中小企業者等向けの主な税制改正要望 経済産業省から示された中小企業者等向けの主な改正要望としては、同じく上記の研究開発・イノベーション投資の促進を目的とした中小企業技術基盤強化税制における控除率の見直し等の拡充及び3年間の適用期限延長(令和10年度末まで)が要望されている。 また、事業承継税制に関しては、特例承継計画の期限延長が要望(※)されているほか、事業承継による世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念も踏まえ、事業承継の在り方について検討するとしている。 (※) 令和6年度税制改正と同様に、特例承継計画の提出期限の延長の要望であり、適用期限の延長は要望されていない。 加えて、1984年以来見直しがされていない企業の従業員への食事支給に係る所得税を非課税とする制度(従業員が食事価額の50%以上を負担し、企業が負担した金額が月額3,500円以下の場合に、食事に係る所得税を非課税とする制度)について、足元の物価上昇等を踏まえ、非課税限度額の引上げを行う見直しを要望しているほか、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置については、昨今の経済状況等やインボイス制度の対応状況を踏まえた所要の見直しと2年間の適用期限延長(令和9年度末まで)を要望している。   〇暗号資産取引等に係る課税の見直し 令和7年度税制改正大綱において検討事項(下記参照)として織り込まれた暗号資産取引に係る課税については、暗号資産取引に係る必要な法整備と併せて、分離課税の導入を含めた暗号資産取引等に係る課税の見直しを金融庁が要望している。 ※自由民主党ホームページ「令和7年度税制改正大綱」の106頁より抜粋 また、NISAについては、あらゆる世代が自身のライフプランに沿った形で資産形成を行えるよう、対象商品の拡充を含めたNISAの一層の充実のための措置及びNISAに係る所在地確認の手続きの簡素化が要望されている。   〇生命保険料控除制度の拡充の恒久化等 そのほか、金融庁は農林水産省・厚生労働省・経済産業省との共同要望として、令和7年度税制改正により令和8年分所得税において講じられた生命保険料控除制度の拡充(23歳未満の扶養親族を有する場合の一般生命保険料控除枠の所得控除限度額に対する2万円の上乗せ措置)を恒久化すること等を要望している(現行は1年間の時限措置)。 なお、ここ何年か検討が続いている金融所得課税の一体化や文部科学省との共同要望である教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置の適用期限の3年間延長(令和10年度末まで)等も要望されている。   〇住宅ローン減税等の住宅取得等促進に係る所要の措置 国土交通省からは、住宅価格の高騰等による厳しい住宅取得環境を踏まえ、令和7年末に適用期限を迎える住宅ローン減税等について必要な検討を行い、所要の措置を講じること及び新築住宅に係る固定資産税の減額措置等についても同様の観点から所要の措置を講じることが要望されているほか、既存住宅のリフォームに係る特例措置及び居住用財産の買換え等に係る特例措置の2年間の延長等も要望されている。 (了)

#Profession Journal 編集部
2025/09/03

プロフェッションジャーナル No.633が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年8月28日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.633を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/08/28

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第51回】「類推解釈と「疑わしきは納税者の利益に」」-借地権利金「経済的実質」事件・最判昭和45年10月23日民集24巻11号1617頁-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第51回】 「類推解釈と「疑わしきは納税者の利益に」」 -借地権利金「経済的実質」事件・最判昭和45年10月23日民集24巻11号1617頁-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 今回は、借地権の設定に伴い授受される権利金(以下「借地権利金」という)に係る所得税法上の所得区分が争われた事件に関する最判昭和45年10月23日民集24巻11号1617頁(以下「本判決」という)を検討する。 本判決は次のとおり判示して(以下「判旨A」という。下線筆者)、昭和34年法律第79号による改正前の所得税法(昭和22年法律第27号。以下「旧所得税法」という)の下で一般論としては類推解釈により一定の借地権利金の譲渡所得該当性を認めたものであり、税法の分野では類推解釈ないし類推適用を認めた(と解される)数少ない判例の1つである(他の判例については拙著『税法創造論』(清文社・2022年)147-149頁[初出・2021年]参照。なお、類推解釈と類推適用は、類推すなわち「ある事案を直接に規定した法規がない場合に、それと類似の性質・関係をもった事案について規定した法規を間接的に適用すること」(田中成明『現代法理学』(有斐閣・2011年)468頁)を法適用過程における法適用者の視線(同459-460頁参照)の「先」に着目して別異に表現したものであると解されるので、以下では特に区別することなく用いることにする)。   Ⅱ 実質主義に基づく類推解釈と「疑わしきは納税者の利益に」 本判決は、「土地賃貸借における権利金授受の慣行」の一般化及び権利金の額の高額化や「借地法等による借地人の保護」というような土地賃貸借をめぐる法状態の変化に基づく借地権利金の「経済的実質」の変化に着目し(判旨A第2段落。「借地権価格の発生と権利金授受の慣行化」については白石満彦「借地権課税80年のあゆみ」税大論叢6号(1972年)209頁、240頁以下参照)、実質主義の考え方に基づき類推解釈を認めたものと解される(富沢達「判解」最判解民事篇(昭和45年度)1041頁、1046-1047頁参照)。 実質主義は「実質課税の原則」とも呼ばれ、税法の解釈の場面では、「租税法の基礎原則の1つ」としての「租税負担の公平の原則」に基づく「実質課税」を要請する「解釈原理」(田中二郎『租税法〔第3版〕』(有斐閣・1990年)128頁)であり、国税通則法の制定に当たって、「税法の解釈及び課税要件事実の判断については、各税法の目的に従い、租税負担の公平を図るよう、それらの経済的意義及び実質に即して行なうものとするという趣旨の原則規定をもうけるものとする」(税制調査会『国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)』(昭和36年7月)4頁)と答申されながらその実定法化が見送られたものであるが、判例では「税法上条理として是認されていたもの」(最判昭和39年9月17日集刑152号837頁)とされてきた(谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第6回、拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【42】等参照)。 ただ、類推解釈は、一般に、租税法律主義の下では許容されないと考えられており(清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)35頁、金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)123頁等参照)、租税法律主義との相克が問題とされてきた実質主義に基づく場合はなおさらである。夙に、「租税法律主義は、納税義務の限界の租税法による明確化を要請しているのであるから、納税義務者に不利な税法の類推適用の禁止を要請する(・・・・・・)と共に、納税義務者にとつて有利な恣意的な税法の類推適用の禁止をも要請するのである。」(中川一郎『税法の解釈及び適用』(三晃社・1961年)155-156頁)とさえ説かれていたのであり、これらの「要請」は、執行上の原則としての租税法律主義(形式的租税法律主義)すなわち合法性の原則(前掲拙著『税法基本講義』【37】参照)が税法の解釈適用について要請するところである(同【41】参照)。にもかかわらず、本判決が一定の借地権利金の所得区分について旧所得税法9条の類推解釈を認めたのはなぜであろうか。 確かに、借地権利金のうち「借地権設定契約が長期の存続期間を定めるものであり、かつ、借地権の譲渡性を承認するものである等、所有者が当該土地の使用収益権を半永久的に手離す結果となる場合に、その対価として更地価格のきわめて高い割合に当たる金額が支払われるというようなもの」(判旨A第3段落)については、実質主義に基づき、「経済的、実質的には、所有権の権能の一部を譲渡した対価としての性質をもつものと認めることができる」(同段落)として、所得の「経済的実質」(判旨A第2段落)の類似性の観点から、「公平な課税の実現のために」(同第2段落)、「譲渡所得に当たるものと類推解釈する」(判旨A第3段落)という法律構成は、形式論理的には成り立つであろう。 しかし、そのような法律構成は、「法文からはなれた自由な解釈」(清永・前掲書35頁)に帰結するものであり、「すべての法解釈の出発点」(田中成明・前掲書467頁)で「最も説得力のある権威的論拠とされる法文および文言に忠実な文理解釈」(前掲拙著『税法基本講義』【44】)が可能である場合に採用すべきものではない。そうすると、「所得税法は最初の九つの種類の所得に属しないものをもってすべて最後の所得分類である雑所得に含ましめているのであるから、なぜ雑所得に該当しないと判断したのかその理由も必要であったと考えられる。」(清永敬次「判批」民商法雑誌65巻3号(1971年)437頁、444頁。下線筆者)との指摘は、法解釈方法論の観点からみた本判決の問題の核心を突くものであると考えられる。 上記の指摘の前に、「本件の場合、不動産所得に属するかそれとも譲渡所得に属するか疑わしい場合であったとして、その場合、なぜ譲渡所得に属するものと判断したのか必ずしも十分な説明が与えられているとは思えない。」(清永・前掲「判批」444頁)との指摘もされているが、これらの指摘はいずれも正鵠を射たものといえる。そうすると、本件借地権利金の所得区分につき雑所得該当性を検討せず不動産所得と譲渡所得との対比において後者と類推解釈するという本判決の法律構成を、前記のように実質主義に基づき形式論理的に理解するだけでは本判決の表面的な理解にとどまることになろう。本判決の真意を理解するには、上記の法律構成を正当化する価値判断を明らかにする必要があるように思われるのである。 その価値判断は本判決では明示的には述べられていないが、本判決は原審・東京高判昭和41年3月15日訟月12巻5号768頁(以下「原判決」という)の次の判示(下線筆者)を原則として是認したものと解される。 上記判示のうち「法律の解釈上疑わしい場合には、国民の利益に解するのが当然であるというべきであ[る]」という考え方は、「疑わしきは納税者の利益に(in dubio contra fiscum)」として税法の解釈原理たり得るか否かが夙に議論されていたところであるが(中川・前掲書128-135頁等参照)、下記の見解(清永・前掲書37頁。下線筆者)の説くところからすると、「疑わしきは納税者の利益に」は法解釈者の価値判断の問題として理解するのが妥当であるように思われる。下記の見解は「不明確な立法をしたことによる不利益を課税する側に負担させること」に対する積極的・肯定的価値判断に基づくものと解されるからである(岡村忠生ほか『租税法〔第4版〕』(有斐閣・2023年)29-30頁[岡村忠生執筆]も参照)。 要するに、本判決は原判決の前記判示を原則として是認し、その判示に含まれる「疑わしきは納税者の利益に」という価値判断をもって類推解釈を正当化する立場を踏襲したものと解される。   Ⅲ 実質主義及び遡及適用の禁止による類推解釈の限界づけ もっとも、原判決は、本判決と異なり、借地権利金の「経済的実質」について言及していない。むしろ、原判決は本件借地権利金について次のとおり判示し(下線筆者)その性質を明らかにすることができないことを自認している。 これに対して、本判決は下記のとおり判示し(以下「判旨B」という。下線筆者)、「性質の明らかでない権利金で・・・・・その後の法律の改正により譲渡所得と擬制されることになつた要件を充たすようなもの」(判旨B第2段落)について「法の改正前においても」(同段落)譲渡所得と類推解釈することを相当とした原判決には「法律の解釈を誤り、その結果審理を尽くさなかつた違法」(同段落)があるとして、原判決を破棄し本件を原審に差し戻した(差戻控訴審・東京高判昭和46年12月21日民集24巻11号1638頁では、本件借地権利金は「性質のあいまいな権利金」として不動産所得に該当するとされた)。 本判決は判旨Bで原判決に「法律の解釈を誤」った違法を認めたが、その理由について調査官解説は次のとおり解説している(富沢・前掲「判解」1047-1048頁。下線筆者)。 この調査官解説は、類推解釈の「限界」を「譲渡所得に当たると類推解釈すべき経済的実質」の有無に見出していると解される。すなわち、本判決について、これを類推解釈が実質主義に基づくものであるかどうかによって類推解釈の許容性を判断した判決とみて、解説を行っていると解されるのである。この解説によれば、「疑わしきは納税者の利益に」という価値判断によって正当化される類推解釈であっても、「譲渡所得に当たると類推解釈すべき経済的実質」を有しない権利金を譲渡所得とする類推解釈は、「法律の解釈を誤[ったもの]」(判旨B第2段落)であるということになろう。 これに加えて、本判決は、「性質の明らかでない権利金で・・・・・その後の法律の改正により譲渡所得と擬制されることになつた要件を充たすようなもの」(判旨B第2段落。下線筆者)について「法の改正前においても」(同段落)譲渡所得と類推解釈することを相当とした原判決には「法律の解釈を誤り、その結果審理を尽くさなかつた違法」(同段落)があると判断したが、これは、「租税法律主義の原則を強調し、経済生活の法的安定と予測可能性の必要を説き、税法の厳格解釈、税法における類推の禁止、遡及適用の禁止等を解釈原理として主張する論」(富沢・前掲「判解」1046頁。下線筆者)に立って、原判決が「その後の法律の改正により譲渡所得と擬制されることになつた要件」について「解釈原理」としての「遡及適用の禁止」に反する「法律の解釈」を行った、と判断したものと解される。 なお、昭和34年の所得税法改正による一定の借地権利金の譲渡所得扱いについて、次の説明(税制調査会『税制調査会答申及びその審議の内容と経過の説明』(昭和36年12月)558頁。下線筆者)がされている。 この説明からも明らかであるように、昭和33年所得税法改正は、実質主義の考慮に基づいてのみ借地権利金の譲渡所得該当性の要件を定めたのではなく、他の「諸点」をも考慮してその要件を定めたものであり、この点について次の解説(金子・前掲書266-267頁。下線筆者)は正鵠を射たものである。 これらの説明・解説によれば、原判決は、昭和34年所得税法改正の趣旨ないし理由に照らしてみると、本判決における実質主義に基づく類推解釈と異なり、いわゆる過剰包摂(overinclusion)をもちらす類推解釈を採用した点でも、「法律の解釈を誤[ったもの]」(本判決判旨B第2段落)として破棄され、「性質の明らかでない」(同段落)本件借地権利金について「権利金の性質等につき審理する必要がある」(同段落)として、原審に差し戻されたと解される。 本判決は、本件直後の昭和34年所得税法改正に「先導」されて安心して(恣意的判断の誹りの憂いなく)類推解釈を行ったことも否めないであろうが、ただ、同改正を「前倒し」して類推解釈を行ったのではなく、あくまでも実質主義に基づき類推解釈を行ったものとみるべきであろう。   Ⅳ おわりに 今回は、本判決が借地権利金の所得区分につき採用した実質主義に基づく類推解釈に関する法律構成を検討し、その類推解釈の正当根拠と限界を明らかにした。 問題は、その正当根拠としての「疑わしきは納税者の利益に」という価値判断を税法の解釈方法論の観点からどのように位置づけるかである。この点について、筆者は以下のように考え(前掲拙著『税法基本講義』【44】参照)、「疑わしきは納税者の利益に」という価値判断に基づく類推解釈が、法創造根拠理由の1つとしての実質主義に基づき許容されると考えるものである(前掲拙著『税法創造論』151-153頁[初出・2021年]参照)。 租税法律主義・合法性の原則の下で税法の解釈については厳格な解釈の要請が妥当するが、最も説得力のある権威的論拠とされる法文及び文言に忠実な文理解釈こそが、厳格な解釈の要請に最もよく適合する。もっとも、このことは、文理解釈が著しく不当・不合理な結果をもたらすものでない場合を前提にして、いえることである。そうでない場合のうち、文理解釈の結果が納税者にとって著しく不当・不合理な結果なものである場合には、裁判官は納税者に有利な「解釈」によってその結果を除去すべきである。 というのも、文理解釈の結果が課税権者たる国家にとって著しく不当・不合理なものである場合であれば国家は立法権を行使して法改正によりその結果を除去することができるのに対し、納税者は直接的には自らその結果を除去する権限を持たず、裁判を受ける権利(憲32条)を行使して裁判所に対してその結果の除去を請求し得るにとどまるが、裁判官は裁判を受ける権利を実質化し司法的救済を実現するためには、文理から離れた法創造によってでもその結果を除去し納税者の権利を救済しなければならないからである(司法的救済保障原則については前掲拙著『税法基本講義』【27】参照)。 (了)

#No. 633(掲載号)
#谷口 勢津夫
2025/08/28

国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正-防衛特別法人税等の企業への影響- 【第4回】

国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正 -防衛特別法人税等の企業への影響- 【第4回】   公認会計士・税理士 荒井 優美子   10 課税事業年度等 法人は各課税事業年度の基準法人税額に対して、当分の間、防衛特別法人税を課される(防衛財確法9)。課税事業年度は2026年4月1日以後に開始する各事業年度(法人税法第13条及び第14条に規定する事業年度)とされ、通算子法人については別途規定が設けられている(※1)(防衛財確法10)。納税地は法人税法の納税地と同一である(防衛財確法12)。 (※1) 通算親法人の2026年4月1日以後に開始する事業年度の期間内に開始する通算子法人の事業年度   11 課税標準と基準法人税額 (1) 課税標準法人税額 防衛特別法人税の課税標準は、各課税事業年度の課税標準法人税額とされ(防衛財確法12①)、課税標準法人税額は、法人が留保金課税がある場合とない場合とで計算が異なる。留保金課税がない場合は、各課税事業年度の基準法人税額から基礎控除額を控除した金額が課税標準法人税額とされる(防衛財確法12②一)。 【図表5】留保金課税がない法人の課税標準法人税額 各課税事業年度の基準法人税額には、留保金課税を受けた場合の留保税額(※2)を含む金額として計算されるが、この場合の課税標準法人税額は以下の金額の合計とされる(防衛財確法12②二)。 (※2) 基準法人税額のうちに特定同族会社の特別税率(留保金課税)により加算された金額 (注1) 基準法人税額から留保税額を控除した金額 (注2) 基準法人税額のうち留保税額 (注3) 基準法人税加算額から上記①で控除しきれなかった基礎控除額 【図表6】留保金課税がある法人の課税標準法人税額 (2) 基準法人税額の計算 法人税の計算過程と防衛特別法人税における基準法人税額の計算過程(地方法人税の基準法人税額の計算と同様である)は下記の【図表7】に示すとおりである。 内国法人の基準法人税額は、法人税の課税標準である各事業年度の所得の金額につき、法人税法その他の法人税の税額の計算に関する法令の規定(以下の規定を除く)により計算した法人税の額である(防衛財確法10一)。すなわち、基準法人税額は、【図表7】の①から②を控除し、③~⑥を加算し、⑦を控除せずに計算される。外国法人の基準法人税額は、恒久的施設の有無により、各事業年度の国内源泉所得に係る所得の金額の区分ごとに、法人税法その他の法人税の税額の計算に関する法令の規定(所得税額控除等の規定を除く)により計算した法人税の額の合計額である(防衛財確法10二)。 【図表7】内国法人に係る法人税の計算過程と防衛特別法人税における基準法人税額の計算過程との関係 *1 戦略分野国内生産促進税制のうち特定産業競争力基盤強化商品に係る措置による税額控除(措法42の12の6⑥⑦)、控除対象所得税額等相当額の控除(措法66の7④・66の9の3③) *2 通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額(措法42の14①④)のうち戦略分野国内生産促進税制のうち特定産業競争力基盤強化商品に係る措置による部分 (出典:財務省ホームページ「令和7年度税制改正の解説」を基に筆者作成) (3) 基礎控除額 基礎控除額は、年500万円とされ(防衛財確法13③一)、課税事業年度が1年に満たない法人は月数で按分する(1月未満の端数は切上げ)(防衛財確法13⑧⑨)。通算法人の場合には、500万円を各通算法人の基準法人税額又は加算前基準法人税額の比で配分した金額とされる(防確法13③二)。   (続く)

#No. 633(掲載号)
#荒井 優美子
2025/08/28

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例149(消費税)】 「国、地方公共団体、公共・公益法人等の仕入控除税額の計算の特例を知らなかったため、特定収入がある場合の仕入控除税額の調整を行っておらず、結果として不利な原則課税により申告していた事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例149(消費税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆国、地方公共団体、公共・公益法人等の仕入控除税額の計算の特例 国、地方公共団体、公共・公益法人等(人格のない社団等を含む)は、本来、市場経済の法則が成り立たない事業を行っていることが多く、通常は租税、補助金、会費、寄附金等の対価性のない収入を恒常的な財源としているのが実態である。 このような対価性のない収入によって賄われる課税仕入れ等は、課税売上げのコストを構成しない、いわば最終消費的な性格を持つものと考えられる。また、消費税法における仕入税額控除制度は、税の累積を排除するためのものであることから、対価性のない収入を原資とする課税仕入れ等に係る税額を課税売上げに係る消費税の額から控除することは合理性がない。 そこで、国、地方公共団体、公共・公益法人等については、通常の方法により計算される仕入控除税額について調整を行い、補助金等の対価性のない特定収入により賄われる課税仕入れ等に係る税額について、仕入税額控除の対象から除外することとされている。 ◆特定収入の意義(消基通16-2-1) 国、地方公共団体等に対する仕入れに係る消費税額の計算の特例に規定する「特定収入」とは、資産の譲渡等の対価に該当しない収入のうち、次の特定収入に該当しないものに掲げる収入以外の収入をいうのであるから、例えば、次の収入がこれに該当する。 ◆特定収入に該当しないもの(消令75) 資産の譲渡等の対価以外の収入で、次のようなものは特定収入に該当しない。 ◆特定収入がある場合の仕入控除税額の調整 国、地方公共団体、公共・公益法人等が簡易課税制度を適用せず、原則課税により仕入控除税額を計算する場合で、特定収入割合が5%を超えるときは、通常の計算方法によって算出した仕入控除税額から一定の方法によって計算した特定収入に係る課税仕入れ等の消費税額を控除した残額を、その課税期間の仕入控除税額としなければならない。 ただし、国、地方公共団体、公共・公益法人等が簡易課税制度を適用している場合又は特定収入割合が5%以下である場合には、この仕入控除税額の調整をする必要はなく、通常の計算方法によって算出した仕入控除税額の全額を、その課税期間の仕入控除税額とすることができる。 ◆特定収入割合 特定収入割合は、その課税期間中の特定収入の合計額を、その課税期間中の税抜課税売上高、免税売上高、非課税売上高、国外売上高の合計額(=資産の譲渡等の対価の額の合計額)及び特定収入の合計額の総合計額で除して計算する。       (了)

#No. 633(掲載号)
#齋藤 和助
2025/08/28

学会(学術団体)の税務Q&A 【第20回】「非居住者に対して講演謝金を支払う場合(来日講演又はオンライン講演)の税務上の留意点」

  学会(学術団体)の税務Q&A 【第20回】 「非居住者に対して講演謝金を支払う場合 (来日講演又はオンライン講演)の税務上の留意点」   公認会計士・税理士 岡部 正義   ▲▼▲[解説]▲▼▲ 学術集会の際に、海外の研究者(非居住者)に講演してもらうケースはよくあるが、その際、来日して講演してもらうケースと海外からオンラインで講演してもらうケースでは、税務上の取扱いが異なるため留意が必要である。   1 来日講演の場合 (1) 消費税 来日講演の場合、国内で講演してもらうため、国内の課税取引となる。そのため、仕入税額控除を行うためには、原則としてインボイスが必要となるが、海外の研究者が適格請求書発行事業者であるケースは考えにくいため、通常、仕入税額控除が制限されるものと考える。 インボイスの少額特例が適用可能な学会の場合、インボイスがなくても1万円未満であれば仕入税額控除を適用することが可能であるが、海外の研究者に対する講演謝金は、通常1万円以上であるケースが多いため、仮に少額特例が適用可能な学会であっても、海外の研究者に対する講演謝金に適用できるケースは多くないと思われる。 なお、令和11年9月30日まではインボイスの経過措置期間であるため、区分記載請求書の記載要件を満たした講演謝金に関する領収書(又は支払通知書)を保存しておけば、一定割合(80%・50%)について仕入税額控除が可能である。 (2) 源泉所得税 来日講演した非居住者に対する講演謝金は、原則として源泉徴収の対象となり、報酬額の20.42%を源泉徴収する必要がある。ただし、租税条約による免除規定の適用を受ける場合は免税となる。 〈講演料の支払と源泉〉 租税条約による免除規定の適用を受けるためには、講演謝金の支払い前に学会の所轄税務署に租税条約に関する届出書を提出する必要があり、講演者及び学会において一定の事務負担が生じることになる。そのため、実務においては、仮に租税条約の適用が可能な場合であっても、手続せずに20.42%で源泉徴収しているようなケースも見受けられる。   2 海外からのオンライン講演 (1) 消費税 海外からのオンライン講演は、国外から電気通信の利用を通じて役務の提供を受けていることになるため、事業者向け電気通信利用役務の提供に該当すると考えられる。そのため、当該取引はリバースチャージの対象となるが、一般的に学会では非課税売上となる取引は少なく、課税売上割合が95%以上(リバースチャージの適用対象外)の学会が大部分であると考えられるため、仕入税額控除の対象外となるケースが多いと考える。 (2) 源泉所得税 非居住者が海外からオンラインで講演を行う場合、国外源泉所得になると考えられるため、源泉徴収は不要である。   (了)

#No. 633(掲載号)
#岡部 正義
2025/08/28

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第52回】「重ダンプは人や物の運搬を主たる目的とする車両及び運搬具と断定できず、機械及び装置に該当しないといえないから、中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除等の適用が認められた事例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第52回】 「重ダンプは人や物の運搬を主たる目的とする車両及び運搬具と断定できず、機械及び装置に該当しないといえないから、中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除等の適用が認められた事例」   税理士 菅野 真美   ▷車両運搬具と機械及び装置 機械及び装置や車両及び運搬具は 減価償却資産の種類の1つであるが(法法2二十三)、税法上明確な定義がなされていない。 そこで一般的な定義を国語辞典である「大辞林第四版」で調べると「機械」及び「装置」は次のようになる。 (※1) 松村明編 『大辞林第四版』(2019、三省堂)634頁 (※2) 松村編 前掲 1577頁 車両運搬具として掲載されていないことから「車両」、「運搬」並びに「具」に分解して定義を調べると次のようになる。 (※3) 松村編 前掲 1265頁 (※4) 松村編 前掲 277頁 この3つから、車両運搬具とは、人や物を運ぶ手段であると考えられる。 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)の車両及び運搬具の中の特殊自動車は(この項には、別表第二に掲げる減価償却資産に含まれるブルドーザー、パワーショベルその他の自走式作業用機械並びにトラクター及び農林業用運搬機具を含まない)と定められている。つまり、自走式作業用機械は、機械及び装置に該当するから車両及び運搬具には該当しない。 また、耐用年数の適用等に関する取扱通達では、特殊自動車に該当しない建設車両等について次のように定められている。 ところで、重ダンプトラックというトラックの一種がある。これはどのようなものかJIS工業用語大辞典によると次のように定義されている。 (※5) 日本規格協会編『JIS工業用語大辞典 第5版』(2001、日本規格協会)948頁 この重ダンプトラックは、車両及び運搬具なのか、それとも機械及び装置に該当するものとして、中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除や、中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除を適用することができるのか。この点で争われた裁決事例を検討する。   ▷どのような事案か 納税者は、採掘加工販売等を営む法人であり、措置法42条の6(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)又は42条の12の4(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)で定められた中小企業者等で、かつ、納税者の営む事業は、上記法令で規定された指定事業に該当する。 納税者は、平成27年3月期、平成28年3月期、平成29年3月期に取得した重ダンプが、機械及び装置に該当するものとして措置法42条の6を適用して申告をした。また、平成30年3月期、平成31年3月期に取得した重ダンプについては、機械及び装置に該当するものとして措置法42条の12の4を適用して申告をした。 課税庁は税務調査を行い、上記特別控除を適用した重ダンプは、車両及び運搬具に該当するものとして更正処分等を行ったところ、この課税処分に不服な納税者が審査請求したのが本件である。   ▷争点 争点は2つあったが、本稿では各重ダンプが「機械及び装置」に該当するものとして、措置法42条の6(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)又は42条の12の4(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)に規定する「機械及び装置」に該当するかを検討する。   ▷裁決 裁決は、課税庁の処分のうち、法人税額の特別控除を不適用とした部分は違法であるとして処分の一部又は、全部取消しを行った。 要旨は以下である。 (※6) ■■■等は裁決書の記載である。 本件各重ダンプが行う主たる役務が運搬であると断定することができず、「車両及び運搬具」に該当するとまでは認められないことから、更正すべき理由はなく、措置法42条の6又は42条の12の4の規定に基づく法人税額の特別控除を不適用とした部分は違法である。 このように納税者の重ダンプは、特別控除が認められた。車両及び運搬具又は機械及び装置に該当するための判断基準は、主たる目的が、人や物を運搬することか、作業現場で作業することかである。本件の場合は、主たる目的が■■■等の運搬であるとは判断できなかった。このような車両について機械及び装置として特別控除を受けるためには、主たる目的が運搬ではないということを証明できることが重要である。 (了)

#No. 633(掲載号)
#菅野 真美
2025/08/28

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第78回】「定期傭船契約付き船舶の評価方法が争われた事例(地判令2.10.1)(その2)」~相続税法22条~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第78回】 「定期傭船契約付き船舶の評価方法が争われた事例 (地判令2.10.1)(その2)」 ~相続税法22条~   税理士 大野 道千     2 検討 【船舶の評価】 (1) 判断順序 本件では、「被告が本件各処分の適法性の根拠として本件各船舶の価格につき原処分庁鑑定価格(・・・)を主張している(・・・)ことから、以下においては、まず、原処分庁鑑定における評価対象船舶の価格評価が合理的に行われたものであるか否かについて検討し、その合理性が否定される場合に、原告鑑定における価格評価を採用することができるか否かについて検討することとする」とし、まず被告の船価方式について合理性の検討が行われ、その合理性が否定される場合に原告鑑定の検討に移るという順序で検討が行われている。 つまり、処分庁である被告鑑定に不合理な点がなかった場合は納税者である原告鑑定について検討が行われなかった可能性がある。 当判決が「(・・・)船価鑑定に一定の実績を有する訴外各専門業者からのヒアリング結果(・・・)からも明らかなように、船価鑑定の具体的な手法は精通者の間においても一様ではなく、鑑定方式の選択や価格形成要因の評価等の取扱いが異なっている(・・・)」と述べるように複数の評価額があり得る場合において原処分庁側の鑑定結果が優先的に採用される点については検討の余地がある(※1)。そこで、建替えを予定する不動産の財産評価において、評価通達によらない評価と評価通達による評価、それぞれの価額が検討された東京高判平成27年12月17日を基に検討を行う。 (※1) 渋谷雅弘は「このような判断過程においては、原処分庁鑑定の合理性が認められた場合には、X鑑定の合理性や、両者のどちらが優れているかといった点は検討されないことになる。その結果として、一応合理的であると認められる財産評価方法が複数存在する場合には、課税庁がそれらの中から優先的に評価方法を選ぶことができるということになる」とし、「納税者と課税庁との鑑定評価にまで優先劣後の関係を持たせることには、法的根拠を見出し難いように思われる」と疑問を呈している(渋谷雅弘「定期傭船契約付き船舶の評価方法」ジュリ1563号11頁(2021))。 (2) 平成27年12月17日東京高裁判決の事案の概要 贈与により建替え予定のある老朽化した不動産を取得した原告らが、不動産鑑定士の鑑定評価による当該不動産の価額を基礎として課税価格を計算し各々贈与税の申告をしたところ、各処分行政庁から、当該各不動産の価額は財産評価基本通達に定められた評価方式により評価したものとすべきであるとして、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を受けたため、本件各更正処分のうち原告らの申告に係る課税価格及び納付すべき税額を超える部分並びに本件各賦課決定処分の取消しを求めた事案である。 原告らは鑑定評価による価額が時価であり、評価通達による評価はこの時価を大きく上回っている旨主張した。原審は、不動産の建替えが実現する蓋然性が高かったにもかかわらず、蓋然性が高くなかったことを前提として評価した鑑定評価はその評価の前提を欠くものであって、評価通達による評価額が本件各贈与時における不動産の時価を上回っていたと認めることはできないとして、控訴人らの請求をいずれも棄却。控訴人らがこれを不服として控訴した。 (3) 平成27年12月17日東京高裁判旨 相続税法22条は、贈与等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価によるとするが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される(・・・)。(・・・)相続税法は(・・・)、財産が多種多様であり、時価の評価が必ずしも容易なことではなく、評価に関与する者次第で個人差があり得るため、 納税者間の公平の確保、納税者及び課税庁双方の便宜、経費の節減等の観点から、評価に関する通達により全国一律の統一的な評価の方法を定めることを予定し、これにより財産の評価がされることを当然の前提とする趣旨であると解するのが相当である。(・・・)。同法の上記趣旨を受けて、国税庁長官は財産評価基本通達を定め、この通達に従って実際の評価が行われている。 同法の上記趣旨に鑑みれば、評価対象の不動産に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、当該不動産の贈与税の課税価格がその評価方法に従って決定された場合には、上記課税価格は、その評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情の存しない限り、贈与時における当該不動産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認するのが相当である(・・・)。 (・・・)本件各贈与時にはAの建替えが実現する蓋然性が高かったというべきであるから、本件各贈与時においてAの建替えの実現性に不透明な部分があったということはできず、評価通達が定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することができない特別の事情が存在したということはできない。 したがって、上記建替えを前提として評価通達が定める評価方法に従って本件各不動産を評価して決定された課税価格は、贈与時における本件各不動産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認される。 そうすると、本件各贈与時においてAの建替えの実現性に不透明な部分があるとして上記建替え前の客観的な交換価値を算定する本件各鑑定評価額は、その前提を欠くというべきであるから、(・・・)本件各不動産につき評価通達による評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情をいうに足りないことは明らかである。   3 考察 (1) 財産の評価額 相続税法22条は、財産の価額はその取得の時における時価と定め(※2)、取得の時とは、相続税の場合は被相続人等の死亡の日、贈与税の場合は贈与によって財産を取得した日をいい(※3)、「取得の時」より後に何らかの理由で財産の価格が低落した場合も課税価格の基礎となる財産の価額は、原則的には相続時又は贈与時のその財産の時価であるとされる(※4)。財産の時価については、相続税法において一部の財産のみ規定するほかは解釈適用に委ねられているが、これを客観的に評価することは困難であり、納税者間の公平性の観点から、実務上は当該一部の財産を除いて国税庁が定める財産評価基本通達に従って行われている(※5)。 (※2) 相続税法22条は、「この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による」と定める。 (※3) 金子宏『租税法〔第24版〕』734頁(弘文堂、2021)。 (※4) 同上[金子]。 (※5) 同上[金子]。 (2) 参考判例における判断順序 参考判例が概ね引用した原審判決では、「評価通達に定められた評価方式が贈与により取得した財産の取得の時における時価を算定するための手法として合理的なものであると認められる場合においては、(・・・)納税者間の公平、納税者の便宜、効率的な徴税といった租税法律関係の確定に際して求められる種々の要請を満たし、国民の納税義務の適正な履行の確保(国税通則法1条、相続税法1条参照)に資するものとして、相続税法22条の規定の許容するところである」とした上で、(ⅰ)評価通達に定められた評価方式における合理性の有無、(ⅱ)評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情の有無①鑑定評価が時価を表すものであるか否か、②評価通達に定められた評価方式による評価額が時価を上回っているか否かの順に検討が行われている。 上記(ⅱ)の検討理由として、原審は「原告らは、本件各鑑定評価額が本件各贈与時における本件各不動産の時価であり、評価通達に定められた評価方式によって本件各不動産の価額として算定された金額は上記の本件各贈与時における本件各不動産の時価を上回っていると主張しており、本件各不動産について評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情がある旨を主張しているものと解されるので、これについて検討する。」と判示している。 (3) 本判決における納税義務者の主張及び検討 判決資料(別紙4「第2 原告の主張の要旨」)による原告の主張は次の通りである。 曰く、「被告は、被告評価額は、精通者である原処分庁鑑定業者の意見価格(原処分庁鑑定価格)を参酌して評価されたものであり、かかる評価方法によって適正な時価を適切に算定することのできない特別な事情もうかがわれないから、被告評価額は本件係争船舶の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認されると主張する。しかし、(・・・)原処分庁鑑定における鑑定方法は合理性を欠くものであって、上記の特別な事情が認められることになるから、被告評価額について適正な時価を上回るものではないとの推認は及ばないというべきである。 他方、精通者である原告鑑定業者が用いた鑑定方法は、(・・・)合理的なものであるから、原告鑑定業者の意見価格(原告鑑定価格)を参酌して評価した本件係争船舶の価額(・・・)をもって、本件贈与日時点における本件係争船舶の価額と認めるのが相当である。 そして、原告評価額及び当事者間に争いのない本件売却船舶の評価額を前提にすれば、本件株式の価額は0円であり、原告について平成21年分の贈与税の課税価格に係る贈与税額はないということになるから、原告に対してされた本件各処分は違法であって、取消しを免れない」。 本判決で双方が採用した方法はいずれも評価通達に認める評価方法であり、いずれも合理的であれば特段の事情について言及する必要はないように思われる。参考判例のように、原告側の評価通達に定める評価方式が合理的であり、評価額が適正時価である、との主張をした場合、本判決の判断過程は変わっただろうか。 財産の評価は納税者の利害に大きく影響することを考慮すれば、申告納税制度の下、納税義務者が自ら採用した評価通達に定める評価方式による評価額より処分庁における評価額の妥当性の検証を優先したことはいささか乱暴であったように受け取れる。 (4) 実務上の意義 船価鑑定の具体的手法が一様ではなく、船価鑑定における鑑定方式の選択や価格形成要因の評価等の取扱いが異なっている状況下で評価方式及びその合理性の認定過程が示されたことについての実務上の意義は大きい。しかしながら、通達において複数評価方法を認めつつ課税庁側の評価を優先的に取り扱う旨の判示は、確信的な自己申告を困難にする恐れがある(※6)。また、相続税法が定める「時価」の追求という意味では納税者側の評価の検討という視点もあろう(※7)という点で、特に評価手法の定まらない船舶の評価において「まず、原処分庁鑑定における評価対象船舶の価格評価が合理的に行われたものであるか否かについて検討し、その合理性が否定される場合に、原告鑑定における価格評価を採用することができるか否かについて検討することとする」とした本件判旨に反対である。 (※6) 碓井光明は申告納税制度が真に機能するための前提として納税者が自己の財産を自ら評価できる状態が必要であるとし、この前提が満たされない場合は申告内容に確信が持てず不安状態に陥るとしている(碓井光明「相続税・贈与税における資産評価-土地の評価を中心として」日税7号9頁(1988))。 (※7) 相続税法が定める「時価」の追求は、租税法律主義に基づいた判断に対する国民の期待に応えるものであると考える。金子宏は現実的には通達が法源と同様の機能を果たしているといえる実際的な重要性に鑑み、通達の内容が法令に抵触するものであってはならない、すなわち、法令が要求している以上の義務を通達によって納税者に課すことがあってはならない(同時に法令上の根拠なしに通達限りで納税義務を免除したり軽減することも許されない)とする(前掲(※3)116頁)。 なお、参考判例では建替えの蓋然性について、本判決では傭船契約継続の蓋然性が評価額に影響している。財産の価額はその取得の時における時価とされているものの、そこには将来見込まれる収益価値も蓋然性によっては考慮する必要があるとされた点に注意が必要である。 (了)

#No. 633(掲載号)
#大野 道千
2025/08/28
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