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〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第99話】「給付付き税額控除」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第99話】 「給付付き税額控除」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「給付付き税額控除か・・・」 中尾統括官は、新聞を広げながら呟く。 新聞の見出しは次のようになっている。 「立憲案では・・・食料品にかかる消費税の平均負担額を踏まえ、国民に一律4万円を給付することになる・・・そのうえで、所得税の課税額を調整し、実質的な給付額に差を付けるという・・・」 中尾統括官は、続けて新聞の先を読む。 (※) 朝日新聞digital(2025.9.26) 「・・・今の制度だと、税額が低い人や非課税の人は、控除のメリットをフルに受けることができない。給付付き税額控除だと、低所得者も恩恵を受けることができる・・・」 中尾統括官は独り言をいうと、図を描く。 〈控除額が10万円のケース〉 そこに、昼食を終えた浅田調査官がやってくる。 「・・・中尾統括官・・・何を描いているのですか?」 浅田調査官は、中尾統括官が描いている図を覗く。 「・・・給付付き税額控除の図ですか・・・」 中尾統括官は、その問いに頷く。 「そうだ・・・給付と控除をセットにすれば、税額が低い人や非課税の人は控除のメリットを受けることができる。ところで、新聞には、次のようなことが書かれている」 中尾統括官は、新聞を浅田調査官に見せる。 「・・・問題は、その財源だ。この新聞では金融所得課税の強化などで賄うと書いているが・・・それはなかなか難しいだろう・・・」 中尾統括官は、そう言うと浅田調査官の顔を覗く。 「・・・政府が、仮に金融所得課税を強化すると言えば・・・直ちに証券市場で株価が下落するからめったに言えない。もっとも、野党であれば無責任なことも言えるのかもしれませんが・・・」 浅田調査官は、苦笑する。 「・・・ところで、給付付き税額控除の目的は、低所得者の支援として、課税最低限以下の所得層や控除しきれない所得税額に対し給付を行うことで、生活支援や貧困の緩和を図ると言われていますが・・・その制度設計そのものに時間がかかるとか、又は執行上にも課題があるなどの批判があります・・・」 浅田調査官は、新聞を見ながら話す。 その言葉を聞いて、中尾統括官は思案顔になる。 「・・・僕は・・・給付付き税額控除の導入には賛成なのだが・・・」 そう言うと中尾統括官はペンをとって、「導入する場合の課題」を書き始める。 「・・・給付付き税額控除には、いろいろと課題があるのですね・・・」 浅田調査官は、中尾統括官が書いた罫紙を見る。 「・・・しかし、これらの課題は、もちろん議論を尽くすべきだが、最後は法律のルールを定める政治家が決めることになる・・・」 中尾統括官はハッキリと言う。 「・・・今は少数与党ですから・・・自民党もある程度は野党に妥協しなければならないと思うのですが・・・給付付き税額控除について、そんなに簡単に結論が出るのでしょうか?」 浅田調査官は首をかしげる。 (つづく)

#No. 647(掲載号)
#八ッ尾 順一
2025/12/04

《速報解説》 令和8年の平均貸付割合が年0.8%に改定される~4年ぶりの引上げで延滞税、利子税、還付加算金等の割合が変更~

《速報解説》 令和8年の平均貸付割合が年0.8%に改定される ~4年ぶりの引上げで延滞税、利子税、還付加算金等の割合が変更~   Profession Journal編集部   Ⅰ はじめに 令和7年11月28日、「租税特別措置法第93条第2項の規定に基づき、令和8年の同項に規定する平均貸付割合を告示する件」(財務省告示第305号)が官報本誌第1598号に掲載され、公布された。 これにより、令和8年(令和8年1月1日から令和8年12月31日まで)の平均貸付割合は年0.8%とされ、令和7年の年0.4%から0.4ポイント引き上げられることとなった。   Ⅱ 平均貸付割合とは 平均貸付割合とは、租税特別措置法第93条第2項に規定される割合であり、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として、各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示するものである。 この平均貸付割合は、延滞税、利子税、還付加算金などの計算における基礎となる特例基準割合等を算出する際の基準として用いられる重要な指標である。   Ⅲ 改定の内容 1 令和8年の平均貸付割合 今回の告示により、令和8年(令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間)の平均貸付割合は、年0.8%とされた。   2 前年との比較 令和7年の平均貸付割合は年0.4%であったことから、令和8年は0.4ポイントの引上げとなる。   3 近年の推移 参考までに、近年の平均貸付割合の推移は以下のとおりである。 令和4年以降、年0.4%で据え置かれていたが、令和8年において4年ぶりに引き上げられることとなった。   Ⅳ 実務への影響 今回の平均貸付割合の改定により、延滞税、利子税、還付加算金等の割合が変更となる。 令和8年における各割合は以下のとおりとなる見込みである。 (参考) 令和7年は、延滞税が年2.4%/年8.7%、利子税・還付加算金が年0.9%   Ⅴ おわりに 今回の平均貸付割合の引上げは、4年ぶりの改定となり、延滞税、利子税、還付加算金等の割合が変更となる。 令和8年1月1日以降の期間に適用されるため、納税者への助言等において留意されたい。 なお、国税庁ホームページ「延滞税の割合」等のページについては、今回の告示を受けて、今後、令和8年分の割合が追加される見込みである。実務担当者においては、最新情報を確認の上、適切に対応されたい。 (了)

#Profession Journal 編集部
2025/11/28

《速報解説》 金融庁が「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表~サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備等行う~

《速報解説》 金融庁が「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表 ~サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備等行う~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025(令和7)年11月26日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(案)等を公表し、意見募集を行っている。 これは、サステナビリティ開示基準の適用、人的資本開示に関する制度見直し、株主総会前の有価証券報告書の開示などについて規定するものである。 意見募集期間は2025年12月26日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備 1 サステナビリティ開示基準の適用(開示府令19条の9) 2 SSBJ基準の適用に伴う開示項目の追加 3 Scope3温室効果ガス排出量の虚偽記載等に係るセーフハーバー・ルールの整備 Scope3温室効果ガス排出量に関する定量情報について、一般に合理的と考えられる範囲で差異が生じる要因や推論過程等、社内の開示手続等に関する記載がされている場合には、虚偽記載等の責任を負うものではないとする考え方を明示する(企業内容等の開示に関する留意事項について「B 基本ガイドライン 5-16-2」)。   Ⅲ 人的資本開示に関する制度見直し 開示府令第二号様式「第二部 第4【提出会社の状況】」、同様式記載上の注意「(58-2)人材戦略に関する基本方針等」及び同様式記載上の注意「(58-3)従業員の状況」等を改正し、以下のとおりとする。 有価証券報告書において、新たに次の事項を開示する。 「従業員の状況」を「第1【企業の概況】」から「第4【提出会社の状況】」に移動した上で、使用人その他の従業員のみを対象としたストックオプション制度や役員・従業員株式所有制度を導入している場合には、「従業員の状況」に記載することもできることとする。   Ⅳ 株主総会前の有価証券報告書の開示 有価証券報告書において、株主総会前開示を行う場合であって、有価証券報告書の記載事項等が定時株主総会又はその直後に開催される取締役会の決議事項となっているときにおける当該決議事項等の概要(剰余金の配当に関するものを除く)の記載を原則不要とする(開示府令第三号様式「記載上の注意(1)一般的事項」等)。 半期報告書において、中間配当基準日現在における「大株主の状況」及び「議決権の状況」を記載することができることとする(開示府令第四号の三様式記載上の注意「(15)大株主の状況」及び同様式記載上の注意「(16)議決権の状況」)。   Ⅴ 適用日等 改正後の規定は公布の日から施行する予定である。 改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の規定のうち、「サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備」、「人的資本開示に関する制度見直し」、「株主総会前の有価証券報告書の開示」については、以下の適用を予定している。 1 サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備 2 人的資本開示に関する制度見直し 2026(令和8)年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等 3 株主総会前の有価証券報告書の開示 2026(令和8)年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等 (了)

#阿部 光成
2025/11/27

プロフェッションジャーナル No.646が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年11月27日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.646を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/11/27

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第54回】「定年延長と退職所得課税」-10年退職金事件・最判昭和58年12月6日訟月30巻6号1065頁の今日的意義と「雇用継続税制」-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第54回】 「定年延長と退職所得課税」 -10年退職金事件・最判昭和58年12月6日訟月30巻6号1065頁の今日的意義と「雇用継続税制」-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 近時、退職所得課税の見直しが盛んに議論されるようになってきた。政府税制調査会では比較的早くから退職所得課税について「支給形態の多様化」、「雇用の流動化」、「課税の中立性」を主たる課題として検討がされてきたところである(油井雅志「退職金制度等における課税上の諸問題について―定年延長等における打切支給の取扱いを中心に―」税務大学校論叢110号(2023年)79頁、125頁以下参照。税制調査会「我が国税制の現状と課題―令和時代の構造変化と税制のあり方―」(令和5年6月)96頁も参照)。今回の原稿執筆中にも、「退職金課税の改正見送り」という見出しで「政府・与党は退職金課税の改正を2026年度は実施しない方針だ。政府で本格的な議論に上がって以降、見送りは3年連続となる。」旨が報じられた(日本経済新聞2025年11月15日朝刊5面)。 そのような議論状況の下、「近年における少子・高齢化の進展や公的年金等の支給開始年齢の段階的な引上げ等に伴い、高齢者雇用に関する就業機会の確保が求められることになり、企業において定年延長等の雇用制度の変更による労働環境の整備がなされている」(油井・前掲論文140頁)昨今、「定年延長等に伴い、退職手当を定年延長前の旧定年で支給する、いわゆる打切支給の退職金が支給されるケースも増えていると想定される」(同100-101頁)ところ、今回は、かつていわゆる短期定年制の下での打切支給退職金の退職所得該当性が争われた10年退職金事件に関する最判昭和58年12月6日訟月30巻6号1065頁(以下「本判決」という)の判断内容を検討し、その今日的意義に関連して若干の立法論的提言を述べることにする。   Ⅱ 退職所得課税の一般法理 1 退職所得の3要件 本判決は、まず、その約3か月前に示された5年退職金事件・最判昭和58年9月9日民集37巻7号962頁(以下「別件最判」という)を参照してこれと文言・表現上もほぼ同じ判示をもって退職所得課税の趣旨並びに退職所得の意義及び要件に関する一般法理を明らかにした。この一般法理に関する別件最判の判示は次のとおりである(下線【A】【B】【C】【D】筆者)。 別件最判については、「退職所得の意義と範囲を正面から問題とした最初の最高裁判所の判決であり、その意味で今後判例として重要な位置を占めてゆくことになると思われる」(金子宏「判批」判例評論313号(判例時報1139号)17頁、18頁。筆者の評価も同じであるが、これについては拙稿「判批」別冊ジュリスト120号(租税判例百選〔第3版〕・1992年)58頁、59頁参照)と評されている。 別件最判は「退職所得に対する優遇課税についての立法趣旨」(前記判示下線部【B】。同【A】参照)に照らして「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」(所税30条1項)という定めを解釈し3つの要件(同【C】の(1)(2)(3))を定立した。ここで問題となるのは、その定めや要件(1)にいう「退職」を私法からの借用概念と解すべきか又は税法上の固有概念と解すべきかである(「これらの性質を有する給与」についてもこれが「退職により一時に受ける給与と同じ性質を有する給与」(金子・前掲「判批」20頁)を意味することから、同じ議論が成り立つ)。この問題について、前者と解する見解(退職=借用概念説)は、筆者の知る限り、その理解を少なくとも文字どおり説くものとしては見当たらないが、後者と解する見解(退職=固有概念説)にも、次の2でみるように大別して2とおりの見解があるように思われる。   2 固有概念としての「退職」 退職=固有概念説には、1つには、本判決について「判旨は、『本件金員の支給を受けた従業員は、一たん退職したうえ再雇用されるものではなく、従前の雇用契約がそのまま継続しているとみるべきである』と判示し、このことをもって結論を導く一つのファクターとしているように見える。」(金子・前掲「判批」19頁)と述べた上で、次のとおり述べる見解がある(同19-20頁。下線筆者)。 この見解は、退職=借用概念説によると、給与所得と退職所得とが労務の対価として同じ性質をもつ所得であることから、退職所得に対する優遇課税が給与所得から退職所得への所得種類の転換による一種の租税回避(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【248】参照)の明白かつ容易な誘因となることを考慮するものであり、優遇課税を定める規定の解釈に当たってその立法趣旨の探究上留意すべき観点を示すものとして説得力をもつと考えられる。別件最判に関する調査官解説が「退職」について、「退職(雇傭契約の終了)の実質」(新村正人「判解」最判解民事篇(昭和58年度)356頁、364頁)及び「再雇傭(新たな雇傭契約の締結)の実質」(同365頁)で構成される「実質」を伴う退職を問題にするのも、そのような観点を考慮したものと解される。 ただ、上記の調査官解説が退職について問題にする「実質」は、退職の法的実質を重視するもの(法的実質主義)であり退職の経済的実質までをも問題にするもの(経済的実質主義)ではないと考えられる(法的実質主義と経済的実質主義については前掲拙著【57】参照)。というのも、調査官解説は、借地権利金「経済的実質」事件・最判昭和45年10月23日民集24巻11号1617頁(第10回、第51回)を「所得分類の問題に関して経済的実質の同一性に着目して税法の類推解釈を示していることに先例性を有している」(山田二郎「所得税法における所得の分類」民商法雑誌78巻4号(1978年)297頁、304頁)とみて下記のとおり説く見解(同307頁。下線筆者)について、「右の見解は、本件事実関係において定年制の定めは全く存しないにもかかわらず、これがあるかのようにとらえている点で問題がある。」(新村・前掲「判解」371頁。下線筆者)として、「本判決はこれを採用しなかった。」(同370頁)と述べているからである。 この見解(山田説)は、退職ないし退職金の経済的実質を重視するものであり、退職=固有概念説に属するものといえようが、前記の調査官解説や前記の見解(金子説)のように退職の法的実質を重視するものとは区別すべきであろう。 このようにみてくると、退職=固有概念説に属すると考えられる上記の2とおりの見解の当否を考えるに当たっては、前記の調査官解説が説くように、企業における「定年制の定め」の有無及び内容が重要な意味をもつように思われる。そこで、別件最判の事案とは異なり、「勤続満10年定年制」が会社の就業規則・退職金規程で定められていた事案に関する本判決の判断を次のⅢで検討することにしよう。   Ⅲ 退職の「実質」を伴う定年制と退職所得課税 本判決は、退職所得課税の一般法理に関する前記の判示に続けて、これを本件についてみて、「勤続満10年定年制」について次のとおり判示した(下線筆者)。 その上で、本判決は、本件勤続満10年定年制に基づく打切支給退職金に対する退職所得課税について、次のとおり、退職・再雇用の「実質」(前記調査官解説参照)をうかがわせるような「特別の事情」が存することを必要とする旨を判示した(下線筆者)。 もっとも、本判決には、本件勤続満10年定年制に基づく打切支給退職金の「経済的実質」に着目しこれに対する退職所得課税を認める横井大三裁判官の反対意見があったが、本判決は、結論として、原判決を審理不尽の違法により破棄し、上記の「特段の事情」等について更に審理を尽くさせるために本件を原審に差し戻した。差戻控訴審・大阪高判昭和59年5月31日判タ534号115頁は本件について次のとおり判示して上記の「特段の事情」を認めなかった。 以上のように、本判決及びその後の差戻控訴審判決は、退職の「実質」に関する「特段の事情」を厳格かつ限定的に解し認定しようとする態度を示したものと解されるが、その態度は妥当である。退職の「実質」すなわち前記の調査官解説の言葉を借りると「退職(雇傭契約の終了)の実質」及び「再雇傭(新たな雇傭契約の締結)の実質」を厳格かつ限定的に捉えることは、一般に法的実質と経済的実質との区別が困難であり微妙な判断を要することからすると、租税法律主義の予測可能性・法的安定性保障機能の観点からみて妥当である。しかも本件とは異なり「租税回避の目的」が認められる場合の「特段の事情」の認定については特に慎重な態度が必要であると考えるところである(第15回、第16回、第24回、第25回等のほか、前掲拙著【73】以下参照)。 退職所得課税に関する所得税法30条1項の解釈適用について、同様の考え方及び態度は課税実務も採るものであると考えられる。所得税基本通達30-2は次のとおり定めている。 この通達規定について別件最判に関する調査官解説は次のとおり述べている(新村・前掲「判解」369頁。傍点原文・下線筆者。なお、上記通達規定の(5)については同370頁(注3)参照)。 この解説によれば、前記通達規定の(4)及び(5)の場合も「勤務関係の実態において、一たん退職し再雇傭されたとみるべき実質がある場合」に当たり、したがって、そこでいう「定年」は、退職の「実質」(法的実質)を伴う定年制によるものであるということになろう。   Ⅳ おわりに 今回は、勤続満10年定年制に基づく打切支給退職金の退職所得該当性について本判決の判断内容を検討し、本判決はその判断に当たって退職の「実質」を法的実質として厳格かつ限定的に捉える態度を示した妥当な判決であるとの理解を示した上で、同様の考え方及び態度は所得税基本通達30-2にも認められる旨を述べた。 そうすると、本判決の今日的意義は、この通達規定とりわけ(4)及び(5)の場合に見出すことができるように思われる。このことは、近時盛んに議論されてきた退職所得課税の見直しにおいても重要な意味をもつと考えるところである。 これまでは退職所得課税の見直しに当たってその優遇課税の弊害を中心に議論され、その議論は二分の一控除(所税30条2項)の制限又は排除という形で、平成24年度税制改正では特定役員退職手当等(同条5項)について、令和3年度税制改正では短期退職手当等(同条4項)について具体化された。 ただ、前記Ⅰで述べたような近年におけるわが国の雇用・労働環境の変化・整備の状況に鑑みると、企業・官公署等における定年延長に対応した退職所得課税の見直しも検討すべき時期に来ているように思われる。その見直しの一方途として、所得税基本通達30-2(4)及び(5)の定めを法令化し、定年延長に伴う打切支給退職金に対する退職所得課税について予測可能性及び法的安定性を確保し高めるべきであろう。更にいえば、それを手がかりに、雇用の継続を税制面から支援する「雇用継続税制」ともいうべき税制の整備を図ることも検討に値するように思われる。 (了)

#No. 646(掲載号)
#谷口 勢津夫
2025/11/27

〈令和7年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第4回】「通勤手当の非課税限度額の引上げ」~令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に適用~

〈令和7年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第4回】 (追補) 「通勤手当の非課税限度額の引上げ」 ~令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に適用~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   令和7年11月19日に所得税法施行令の一部を改正する政令が公布され、自動車等の交通用具を使用している給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられた(所令20の2二)。本改正は、令和7年11月20日に施行され、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用される(令和7年改正令附則)。 改正前の非課税限度額を適用して源泉徴収が行われている役員及び従業員について、改正後の非課税限度額を適用することにより過納となる税額が生じる場合には、令和7年分の年末調整において精算することになる。   【1】 改正の概要 自動車や自転車等の交通用具を使用している人に支給する通勤手当の1か月当たりの非課税限度額(改正前及び改正後)は、次のとおりである(所令20の2二)。 なお、交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当(1か月当たりの限度額15万円)等、上記以外の通勤手当の非課税限度額に改正はない(所令20の2一、三、四)。   【2】 改正後の非課税限度額が適用される通勤手当の範囲 改正後の非課税限度額は、「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当」に適用される(令和7年改正令附則2)。この「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当」とは、次に該当するものをいう。 反対に、次に該当する通勤手当には、改正後の非課税限度額は適用されない。 改正後の非課税限度額の適用の有無について、具体例を示す。   【3】 令和7年分の年末調整における対応 令和7年11月19日までに支払われた通勤手当について、遡って源泉徴収税額の再計算を行う必要はない。年末調整の際に過納となる税額をまとめて精算する。 改正後の非課税限度額を適用することにより過納となる税額が生じている役員や従業員については、以下の手続により年末調整で精算を行う。 なお、令和7年の中途で退職した人、死亡退職した人、非居住者となった人等、既に年末調整をしている人について、改正前の非課税限度額を超えた通勤手当を支払っていた場合には、改正後の非課税限度額により年末調整の再計算を行うことになる。   【4】 源泉徴収票の記入金額 令和7年分の源泉徴収票の「支払金額」欄には、改正により新たに非課税となった通勤手当の額を除いた金額を記入する。 年の中途で年末調整をした人に対し年末調整の再計算をした場合には、既に交付した源泉徴収票の「支払金額」欄の金額を訂正し、「摘要」欄に「再交付」と表示したものを再度交付する。   (※) 本稿では、年末調整で使用する各申告書等を次のとおり表記する。 (連載了)

#No. 646(掲載号)
#篠藤 敦子
2025/11/27

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例152(所得税)】 「買手が耐震工事をしなかったため「空き家に係る3,000万円の特別控除」の適用が受けられなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例152(所得税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合の3,000万円の特別控除(空き家に係る3,000万円の特別控除)(措法35③④⑥⑦) 「空き家に係る3,000万円の特別控除」とは、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に、相続により被相続人の居住用家屋及びその敷地等を取得した相続人が、その取得をした被相続人の居住用家屋及びその敷地等を譲渡した場合、居住用財産を譲渡したとみなして3,000万円の特別控除の適用を受けることができるものである。 この特別控除は、相続により被相続人の居住用家屋とその敷地の両方を取得し、相続があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合に限り適用があり、譲渡価額が1億円を超える場合には適用できない。 なお、居住用家屋とともにその敷地等を譲渡する場合には、居住用家屋が一定の耐震基準を満たすものでなければならないが、令和5年度の税制改正により、令和6年1月1日以後の譲渡については、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修又は除去の工事を行った場合には、工事の実施が譲渡後であっても適用対象となる。 ◆特例の対象となる被相続人居住用家屋 次の①及び②又は①及び③に該当することが要件になる。       (了)

#No. 646(掲載号)
#齋藤 和助
2025/11/27

国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正-防衛特別法人税等の企業への影響- 【第10回】

国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正 -防衛特別法人税等の企業への影響- 【第10回】   公認会計士・税理士 荒井 優美子   37 通算法人に係る取扱い 防衛特別法人税における通算法人の取扱いについては、法人税において規定されている通算法人の取扱いに対応する規定のほかに、防衛特別法人税の計算についてのみ設けられた通算法人の取扱いの規定がある。 法人税において規定されている通算法人の取扱いに対応する規定には、①通算子法人の課税事業年度、②仮決算をした場合の法人税の中間申告書の提出、③災害等による中間申告書・確定申告書の提出期限の延長、④清算中の内国法人の確定申告、⑤電子情報処理組織による申告の特例、⑥通算法人の連帯納付責任、⑦青色申告の取消し、⑧通算税効果額の取扱い、⑨電子情報処理組織による申請等、がある。 防衛特別法人税の計算についてのみ設けられた通算法人の取扱いの規定には、⑩基礎控除額の計算と、⑪通算法人に係る外国税額控除額の計算がある。本号では、⑤から⑪について解説する。 ⑤ 電子情報処理組織による申告の特例 法人税及び地方法人税において、特定法人(注)である内国法人は、申告書及び添付書類の電子申告が義務付けられている(法法75の4、地法19の3)が、防衛特別法人税の申告書についても同様とされる(防衛財確法27)。 (注) 事業年度開始の時における資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人、通算法人、保険業法に規定する相互会社、投資法人、特定目的会社 ⑥ 通算法人の連帯納付責任 通算法人は、その通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のその通算完全支配関係がある期間内に納税義務が成立した防衛特別法人税について、連帯納付責任を有する(防衛財確法41①一)。 ⑦ 青色申告の取消し 内国法人が一定の事実により青色申告の取消しの処分を受けた場合には、当該事実があった事業年度まで遡って青色申告が取り消される(法法127①)。 ただし、通算法人が青色申告の取消しの処分を受けた場合には、当該通算法人に係る通算制度の承認は、その通知を受けた日から、その効力を失い(法法64の10⑤)、青色申告の取消しの処分を受けた日の前日(当該前日が通算親法人の事業年度終了の日である場合には、処分の通知を受けた日)の属する事業年度以後、その効力を失う(法法127③)。 通算法人であった内国法人について、青色申告の取消事由に該当する事業年度が失効事業年度(注)前の事業年度である場合には、失効事業年度以後、効力を失う(法法127④)。 (注) 通算承認の効力を失った日の前日(当該前日が通算親法人の事業年度終了の日である場合には、その効力を失った日)の属する事業年度 すなわち、通算法人に係る青色申告の取消しは、当該事実があった事業年度まで遡及適用されないこととされている。法人税の青色申告が取り消された場合には、防衛特別法人税についても同様の扱いとされている(防衛財確法36②、③、④)。 ⑧ 通算税効果額の取扱い 法人税に定める通算税効果額(注)の益金不算入及び損金不算入の規定(法法26④、38③)は、防衛特別法人税についても防衛特別法人税通算税効果額の益金不算入及び損金不算入とされ(防衛財確法43)、防衛特別法人税通算税効果額を支払った額は利益積立金額を減算する(法令9一カ、防衛特法令19)。 (注) 損益通算又は欠損金の通算の規定その他通算法人のみに適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として通算法人と他の通算法人との間で授受される金額 ⑨ 電子情報処理組織による申請等 通算親法人が法人税及び地方法人税に係る申請等で、他の通算法人がその申請等を電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行ったものとみなされる場合(国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第5条(電子情報処理組織による申請等)第7項)については、防衛特別法人税に係る申請等にも適用される(防衛特法令8)。 ⑩ 基礎控除額の計算 各課税事業年度の防衛特別法人税の課税標準の計算における基礎控除額は、年500万円とされているが、通算法人(その事業年度がその通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る)の基礎控除額は、以下の算式のように、年500万円を各通算法人の基準法人税額の比で配分した金額として計算される(防衛財確法13③二)。 なお、通算親法人の課税事業年度の中途で離脱した通算子法人の離脱日の前日に終了する課税事業年度については、通算法人以外の法人の課税事業年度として計算する。 基準法人税額のうちに留保金課税による留保税額がある場合、課税標準法人税額の計算における基準法人税加算額から控除する基礎控除残額は、通算法人については基礎控除額の計算と同様に、各通算法人の基準法人税加算額の比で配分した金額として計算される(防衛財確法13④二)。 なお、通算親法人の課税事業年度の中途で離脱した通算子法人の離脱日の前日に終了する課税事業年度については、通算法人以外の法人の課税事業年度として計算する。 通算法人の法人税における遮断措置と同様に、基準法人税額、加算前基準法人税額、又は基準法人税加算額の計算に誤りがあった場合においても、課税標準法人税額を計算する場合における各通算法人に配分される基礎控除額及び基礎控除残額は、一定の場合を除き、当初申告書に記載された金額とされる(防衛財確法13⑤)。 ⑪ 通算法人に係る外国税額控除額の計算 内国法人の防衛特別法人税に係る外国税額控除限度額は、以下の算式により計算される(防衛特法令3①)。 通算法人の防衛特別法人税に係る外国税額控除限度額は、通算法人の防衛特別法人税の額の合計額のうち、その通算法人の国外所得金額に対応するものとして計算される(防衛財確法16④)。計算の仕組みは、法人税及び地方法人税の控除限度額計算と同様である(防衛特法令3④)。 各通算法人の過去の課税事業年度における、当初の外国税額控除額の誤りが発覚した場合には、法人税及び地方法人税の調整方法と同様の措置が規定されている。   (続く)

#No. 646(掲載号)
#荒井 優美子
2025/11/27

学会(学術団体)の税務Q&A 【第23回】「学会が賃上げ促進税制を適用する際の留意点」

  学会(学術団体)の税務Q&A 【第23回】 「学会が賃上げ促進税制を適用する際の留意点」   公認会計士・税理士 岡部 正義   ▲▼▲[解説]▲▼▲ 1 賃上げ促進税制 賃上げ促進税制においては、前事業年度と当事業年度の給与等支給額と比較して、増加割合及び増加額を計算する必要がある。給与等支給額は、損金の額に算入される給与等支給額で計算するため(措法42の12の5)、収益事業課税の学会においては、「収益事業に区分経理される給与等支給額」に基づいて賃上げ促進税制の計算を行うことになる。   2 給与等支給額の区分経理 収益事業の課税所得を計算するにあたっては、収益事業と非収益事業に共通する費用を合理的な基準により区分経理する必要がある。合理的な基準の例として、法人税基本通達では、従業員の従事割合や収入金額の比等が挙げられており(法基通15-2-5(2))、実務上は、これらの基準により按分計算している例が多いと思われる。   3 実務上の留意点 給与等支給額を収益事業と非収益事業に区分経理するにあたって、前事業年度と当事業年度の按分比率が変動してしまうと、給与等支給額全体は増加しているにも関わらず収益事業に区分される給与等支給額が減少するケースや、給与等支給額全体は減少しているにも関わらず、収益事業に区分される給与等支給額が増加するようなケースが生じる可能性がある。 〈給与等支給額全体が増加しているにも関わらず、収益事業の給与等支給額が減少するケース〉 〈給与等支給額全体が減少しているにも関わらず、収益事業の給与等支給額が増加するケース〉 このように収益事業と非収益事業の按分比率が前事業年度と当事業年度で変動してしまうと、賃上げ促進税制を正しく計算するのが難しくなってしまう。そのため、賃上げ促進税制を計算するにあたっては、前事業年度と当事業年度の給与等支給額の按分比率を固定化しておくことが望ましいと考える。   (了)

#No. 646(掲載号)
#岡部 正義
2025/11/27

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第54回】「水道光熱費の使用料金が極めて少なく、かつ、居住目的が特例の適用を受けるためと答述したことから、居住用財産に該当せず、特別控除の適用は認められないとされた事例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第54回】 「水道光熱費の使用料金が極めて少なく、かつ、居住目的が特例の適用を受けるためと答述したことから、居住用財産に該当せず、特別控除の適用は認められないとされた事例」   税理士 菅野 真美   ▷居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例 居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例は、居住の用に供している家屋の譲渡もしくはその家屋とともにするその敷地の用に供されている土地等を譲渡した場合、又は住まなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までに譲渡した場合の特例である(措置法35①)。 譲渡所得の金額から3,000万円を限度として控除でき、短期譲渡所得であったとしても、条件を満たす場合は適用でき、他の居住用財産の特例の多くは国内の不動産に限られるが、この特例については特に制限は設けられていない。 他方、譲渡先の制限、他の措置法との重複適用の制限、譲渡年の前年、前々年に特別控除の適用等を受けていないこと等の制限もある。 この制度の適用において重要な要件の1つは、「居住の用に供している家屋」とは何かである。これは、「譲渡者が短期間臨時にあるいは仮住まいとして起居していたというのみでは足りず、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋をいうものと解される。そして、譲渡資産がこれに該当するか否かについては、その者の日常生活の状況やその家屋の利用の実態、その家屋の入居目的、その家屋の構造及び設備の状況等の諸事情を総合的に考慮し、社会通念に従って判断する」(令和4年4月5日広島国税不服審判所)とされている。 つまり、住民票に記載された住所で形式的に判断するのではなく、生活の実態が備わっているかによって、最終的には判断することになる。今回、生活の実態が備わっているかについて争われた事案を検討する。   ▷どのような事案か 納税者が譲渡した家屋及びその敷地に係る譲渡所得について居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例を適用して所得税等の確定申告をしたところ、その家屋を生活の本拠とした事実が認められないから特例を適用できないとして、課税庁が更正処分等を行った。この処分に不服な納税者が審査請求を行ったのが本事案である。   ▷争点 争点は2つあったが、本稿では、本件家屋が特例の適用される納税者の居住用財産に当たるか否かに絞って検討する。   ▷家屋の経緯 本件家屋(以下「家屋1」)は、納税者の母から相続により取得したものである。相続した当時、納税者の姉が居住していたが、姉の死亡後、家屋1は空き家になったとされる。 平成8年10月15日に家屋1から約5m離れた場所に家屋(以下「家屋2」)を新築した。 平成28年4月21日に家屋1及びその敷地の売買契約を締結、同年6月28日に、実測に基づいて売買代金を減額する契約を締結し、同年7月13日に引き渡した。 平成28年分の所得税等の申告において、居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例を適用して申告したが、令和3年3月19日付で、特例の適用は認められないとして更正処分等を行ったところ、不服な納税者が審査請求した。   ▷なぜ、納税者はこの家屋が居住用家屋であると主張したか 納税者は、以下の理由から家屋1は居住用家屋であると主張した。 家屋1には、5つの和室があり、電気、水道を使うことができ、台所、風呂、トイレ等の生活に必要な設備が設置されていた。 納税者は、平成26年5月7日から平成27年2月19日までの期間、家屋1の所在地を住民票上の住所とし、実際に、家屋1で就寝し、家屋1の設備を利用することによって生活をしていた。 納税者は、家屋1から約5m離れた場所に家屋2を所有しているが、家屋2をほとんど利用しておらず、専ら家屋1で生活していたから、生活の拠点は家屋1である。 なお、納税者は、家屋1への入居目的が特例の適用を受け、申告に係る税金を安くするためと答述した。   ▷なぜ、課税庁はこの家屋は居住用家屋に該当しないと主張したか 家屋1のガスは、平成20年10月4日に閉栓され、水道の使用量についても平成24年1月から平成27年4月9日に閉栓されるまで、0立方メートルないし6立方メートルであった。電気の使用量の平均値は、約14.3kwhであるところ、これは、総務省統計局が公表している全国の単身世帯の1か月あたりの電気代の約7%である。 また、家屋2には、納税者の妻が居住していること、家屋2に係る平成24年から平成27年までの電気及びガスの1ヶ月あたりの使用料金は、総務省統計局が公表している2人以上の世帯の標準的な金額を超えていた。 納税者は、家屋2で入浴、洗濯及び食事をしていた旨申述していたことからすれば、納税者の生活の拠点は家屋1でなく、家屋2である。   ▷裁決 裁決では、納税者の請求を棄却した。 特例の適用対象となる家屋は、真に居住の意思をもって客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋をいい、特例の適用を受けるための目的で入居したと認められる家屋は、これに当たらない。 納税者は、家屋1への入居の目的が特例の適用を受けることにあった旨申述する。さらに、家屋1の電気の平均使用料金は、全国の単身世帯の1ヶ月あたりの電気の使用料金に比べ、極めて少ないことからすれば、納税者の家屋1への入居目的は、特例の適用を受けるためであったと認められ、居住の意思を持っていなかったことは明らかである。 したがって、家屋1は、納税者が真に居住の意思をもって客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていたとは認められないから、特例の適用される居住用財産に該当しない。納税者の主張は、客観的事実と整合しないから理由がない。 このように納税者の請求は棄却された。この裁決は、2つのポイントがある。 1つは、居住用財産は、通常は、住民票に記載された住所と考えられるが、居住性に疑義が生じた場合は、居住していたならば確実に使用される水道光熱費の利用状況が居住性の有無の重要な要素となること。 もう1つは、何のために居住したかと質問された時に「特例の適用を受けるため」と答えたこと。節税以外の合理的な理由がない場合まで優遇税制の適用を受けることはできない。 居住用財産の優遇税制全体に通ずることでもあるので、注意したい。 (了)

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#菅野 真美
2025/11/27
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