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給与計算の質問箱 【第63回】「社会保険の料率の変更」~令和7年度対応~

給与計算の質問箱 【第63回】 「社会保険の料率の変更」 ~令和7年度対応~   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 令和7年度において各種社会保険の料率の変更はあるでしょうか。 A 労災保険、厚生年金保険、子ども・子育て拠出金の料率の変更はない。雇用保険、健康保険、介護保険(第2号被保険者)の料率は変更がある。 * * 解 説 * * 1 料率の変更がないもの (1) 労災保険 労災保険料は、会社が全額負担し従業員の負担はないことから給料計算には関係しない。 〔労災保険率表〕 (※) 厚生労働省ホームページより (2) 厚生年金保険 厚生年金保険の料率は、18.3%を折半して会社負担が9.15%、役員・従業員負担が9.15%である。役員・従業員は、標準報酬月額×9.15%=厚生年金保険料が給料から天引きされる。 例えば、標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×9.15%=27,450円の厚生保険料が給料から天引きされる。 〔令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)〕 (※) 協会けんぽホームページより (3) 子ども・子育て拠出金 子ども・子育て拠出金は、会社が全額負担し従業員の負担はないことから給料計算には関係しない。 子ども・子育て拠出金の料率は、0.36%である。子ども・子育て拠出金の額は、被保険者個々の厚生年金保険の標準報酬月額×0.36%の総額である。 例えば、厚生年金の標準報酬月額300,000円の役員1名だけが社会保険に加入している会社の場合、300,000円×0.36%=1,080円の子ども・子育て拠出金を年金事務所へ支払う。   2 料率の変更があるもの (1) 雇用保険 令和7年4月1日から令和8年3月31日までの一般の事業の雇用保険料率は、会社負担が0.9%(令和6年4月1日から令和7年3月31日は0.95%)、従業員負担が0.55%(令和6年4月1日から令和7年3月31日は0.6%)である。従業員は、給料の総支給額×0.55%=雇用保険料が給料から天引きされる。 例えば、給料の総支給額300,000円の場合、300,000円×0.55%=1,650円の雇用保険料が給料から天引きされる。 〔令和7年度の雇用保険料率〕 (※) 厚生労働省ホームページより (2) 健康保険 協会けんぽに加入の東京の会社の令和7年2月分(3月納付分)までの健康保険の料率は、9.98%を折半して会社負担が4.99%、役員・従業員負担が4.99%だった。令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険の料率は、0.07%引下げの9.91%を折半して会社負担が4.955%、役員・従業員負担が4.955%になった。役員・従業員は、標準報酬月額×4.955%=健康保険料が給料から天引きされる。 例えば、標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×4.955%=14,865円の健康保険料が給料から天引きされる。 (3) 介護保険(第2号被保険者) 第2号被保険者とは、40歳以上65歳未満の役員・従業員をいう。40歳未満及び65歳以上の役員・従業員の給料からは介護保険料を天引きしない。 協会けんぽに加入の東京の会社の令和7年2月分(3月納付分)までの介護保険の料率は、1.6%を折半して会社負担が0.8%、役員・従業員負担が0.8%だった。令和7年3月分(4月納付分)からの介護保険の料率は、0.01%引下げの1.59%を折半して会社負担が0.795%、役員・従業員負担が0.795%になった。役員・従業員は、標準報酬月額×0.795%=介護保険料が給料から天引きされる。 例えば、標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×0.795%=2,385円の介護保険料が給料から天引きされる。 (了)

#No. 611(掲載号)
#上前 剛
2025/03/19

《税理士のための》登記情報分析術 【第22回】「売買の登記」~不動産売買契約と所有権移転の時期~

《税理士のための》 登記情報分析術 【第22回】 「売買の登記」 ~不動産売買契約と所有権移転の時期~   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   事業承継対策や相続対策のために、税理士から顧客に対し、社長個人が所有する不動産の会社への売買や、親族間での不動産売買を提案することがある。不動産の売買を行う場合は登記を行うことになるため司法書士との連携が重要となる。 今回は司法書士の目線からみた不動産売買のポイントについて解説を行う。   1 売買の登記に必要な書類等 売買を原因として所有権移転登記を行う場合に、必要となる書類は以下のとおりである。 【売主の必要書類】 ※このほか登記記録上の売主の住所と現在の住所が異なる場合には、沿革を付けるため住民票等が必要になる場合がある。 【買主の必要書類】 買主の必要書類は、売買にあたり金融機関から融資を受けるか否かによって、内容が異なる。融資を受ける場合、購入した不動産に対して抵当権等の担保設定登記を行うことが多く、そのための書類が別途必要になるためである。 〔融資を受けない場合〕 〔融資を受ける場合〕 正式には司法書士から顧客に対して必要書類の案内を行うが、事前に税理士からもこれらの書類が必要になることを伝えておくと、顧客としても心づもりができスムーズに手続を進めることができる。 なお、不動産の売買に伴う手数料の見積りには、最新年度の固定資産税評価額が分かる固定資産税の評価証明書か納税通知書が必要となるため、早い段階で司法書士に共有するとよいだろう。   2 売買契約書のポイント 社長と会社間あるいは親族間での不動産売買では、司法書士が売買契約書の作成を行うことも多いが、司法書士として気になるポイントとして、次のものがある。 (1) 売買代金 「不動産をいくらで売買するか」ということは、売買契約書の基本的な要素である。 適正な金額でなければ、贈与税など税務上の問題が生じるリスクがあることは司法書士も認識しており、それらを踏まえ売買代金をいくらとすべきなのかという点については、税理士からの情報提供が欠かせない。 (2) 所有権移転の時期 売買契約は、契約締結と同時に売買対象物の所有権が売主から買主に移転することが原則である(民法176条、555条)。 ただし、不動産売買契約書には以下のように、所有権の移転の時期に関する条項が入っていることが多く、売買代金を買主が売主に対して支払ったときに移転すると定められていることが多い。 仮に上記条項の入った売買契約書を2024年12月1日に締結し、2025年1月15日に買主が売主へ売買代金を支払った場合には、所有権の移転の日付は「2025年1月15日」となる。 【売買の登記の登記記録例】 上記の条項を設けることで、売主としては、売買代金の支払いを受けるまで不動産の所有権が自分に留まることになるため、安心して取引を行うことができるという効果がある。 一方で、売買代金が高額である場合には、資金調達に時間を要したり、分割払いになることもある。また、事業承継対策や相続対策として売買を行う場合には、すぐに所有権を買主に移したいという事情もあり得よう。 そのような場合には、上記の条項を削除するか、下記のように記載を変更して、原則通り、売買契約締結と同時に所有権が移転することを明確にすることもある。   3 本人確認・意思確認が重要 前回取り上げた親族間で行われる贈与のケースにおいても、本人確認・意思確認の重要性について解説したが、売買のケースでも、その重要性は変わらない。 後々に疑義が生じないようにするためにも、司法書士がしっかりと本人確認・意思確認を行ったという事実は重要といえるだろう。 (了)

#No. 611(掲載号)
#北詰 健太郎
2025/03/19

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第63回】「震災減価率の査定は考えるほど容易ではない」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第63回】 「震災減価率の査定は考えるほど容易ではない」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 本連載の【第16回】では、土砂災害(特別)警戒区域内の土地を例として、鑑定評価や固定資産税評価、そして相続税評価におけるアプローチの方法等について取り上げました。そこでは、自然災害が現実に生じた場合、それが土地価格に与える影響度を不動産鑑定評価基準に速やかに取り込んで評価実務に活かすことが現時点では難しい反面、固定資産税評価においてはその影響度を何がしかの形で評価額に反映させて対応している自治体も見受けられる旨も併せて述べました(相続税の財産評価においては、財産評価基本通達に規定されている「特別警戒区域補正率表」の適用)。 このような相違がある背景としては、自然災害による影響度を不動産鑑定評価基準に的確に反映させるためには、被災地の市場における取引状況や減価度合いの普遍性といった観点から十分な検証を要するところ、税務においては課税の公平性という観点から被災地とそうでない土地との間で税額のバランスを図る必要があること等が指摘されています。 今回取り上げるテーマもこの延長線上にあるものですが、平成23年3月の東日本大震災及び令和6年1月の能登半島地震の発生を契機として、震災の影響を受けた土地の評価(震災による減価率の査定)をいかにすべきかが、鑑定評価上の課題となっています。 以下、税務における扱いとの関連も踏まえつつ、震災減価について述べていきます。   2 鑑定評価における格差率の目安 鑑定評価において土地価格を求める際には、その土地の収益性から試算した価格(=収益還元法による価格)とともに取引事例比較法による価格(=比準価格)が重要な役割を果たすことはいうまでもありません。そして、取引事例比較法を適用するに当たり、比較対象とする土地間の価格形成要因の相違を推し測る目安として活用されているものが「土地価格比準表」です。 しかし、「土地価格比準表」は経験則に基づく最大公約数的な価格形成要因の格差を比準に反映させるという要素が強く、経験則による定量化が難しい要因について、これを合理的根拠に裏付けられた形で指針として反映させることには困難が伴います。今回取り上げている大震災後の土地価格の評価は、その典型例です。 その最大の理由は、震災後における土地取引の件数が極めて少ないこと、該当地域で仮に取引が見受けられたとしても、それが果たして鑑定評価における正常価格の成立要件(=誰もが売り買いしても等しく当てはまるような状況で価格が成立すること)の検証が極めて難しい点にあります。また、それ以前の問題として、震災後の復旧が開始し元の状態に戻るまでの間に(あるいは復旧が進行中の段階で)取引需要そのものが存在するのか否かという根本的な課題が待ち構えています。 そのため、このような状況下で、震災減価率なるもの(=震災の影響を受けた土地の価格がどれだけ低下するか)を多数意見が一致するような形で査定すること自体、不動産鑑定士にとっても悩ましい問題です。   3 固定資産税評価や相続税の財産評価における被災地の補正率の例示 既に述べた理由により、税務評価においては自然災害による影響度を評価額に反映させる措置が採用されている事情もあることから、参考までにいくつかの例を掲げておきます(自治体のホームページで筆者が調査したものです)。 (1) 令和6年能登半島地震により被災した土地の固定資産税評価額の取扱い例 被害程度に対応した補正率を、「がけ地補正率」(=自治体ごとに取り決めた「がけ地を含むことによる減価率」を指します)を準用して適用している自治体があるほか、次のとおり被害の程度に対応した独自の補正率を設けている自治体もあります。 ① A市及びB町 ② C市 (2) 相続税の財産評価における取扱い 相続税の財産評価においては、「東日本大震災に係る財産評価関係質疑応答事例集(情報)」(平成23年10月国税庁資産評価企画官情報)が発出され、課税時期が東日本大震災の発生日より前である場合とそれ以後である場合に分けて、それぞれの評価方法が規定されています。 ただし、震災発生直後の価額に関しては、双方の場合とも、震災発生直後の価額は当時(平成23年)の路線価(倍率地域の場合は評価倍率)に調整率(※1)を乗じて計算する方法で統一されています。 (※1) 調整率は(状況に応じて)0.75・0.90に区分。   4 鑑定評価における震災減価率検討上の課題 鑑定評価という視点に立った場合、「震災減価率査定の拠り所をどこに求めればよいか」が課題となります。 ここで、震災減価率という形で格差率を「土地価格比準表」に反映させるためには、震災後の土地の取引事例が一定数収集可能であり、震災前後の価格水準の相違とその程度を市場参加者(売り手・買い手)の行動から経験的に付けることができることが、その前提となってきます。 しかし、現実問題として捉えた場合、震災被災地の土地取引(購入)需要はほとんど見出し難い状況にあり、震災後当分の間、インフラ復旧が進展しない限り購入の意思を示す人を探すのは困難であるのが実情です(※2)。 (※2) 例えば、公益社団法人福島県不動産鑑定士協会が実施した「東日本大震災後の福島県不動産市場動向に関するアンケート調査結果・第16回調査(平成30年7月)」によれば、不動産市場に関する自由回答として次のものが見受けられました。 「被災者の土地購入は激減」「売り物件が少なく、不動産取引(媒介)は低調」「問い合わせが激減しており、震災前よりもひどい状況である」「被災者からの問い合わせが全く無くなっており、市民の方々からの問い合わせも激減しています」 これらの点を踏まえれば、鑑定評価で求めるべき価格(正常価格)は市場性の著しい減退を反映したものとなるといえますが、現時点ではその程度を定量的に推し測るための実証的な資料に乏しいのが実情です。そのため、現時点で震災減価率なるものを画一的に定め、これを評価の指針とすることは精度上大きな問題を残すように思われます(※3)。 (※3) 実務的には、被災がないものとした場合の更地価格から復旧費用及びスティグマ(心理的嫌悪感)相当額を控除して求める方法も考えられますが、控除する金額を客観的にどのように見積もるかが次の課題となります。 今回のテーマを「震災減価率の査定は考えるほど容易ではない・・・・・・」と名付けた背景には、上記のような事情が潜んでいます。 (了)

#No. 611(掲載号)
#黒沢 泰
2025/03/19

《顧問先にも教えたくなる!》資産づくりの基礎知識 【第21回】「投資アドバイスを求められた時の注意点」

《顧問先にも教えたくなる!》 資産づくりの基礎知識 【第21回】 「投資アドバイスを求められた時の注意点」   株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事 日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(CFP®) 山中 伸枝   〇国民の約5人に1人がNISA口座を持つ時代に 今や“空前の投資ブーム”と言えるほど、国民の投資熱が過熱しています。2024年に制度が刷新されより利用しやすくなったNISAは、2024年6月末時点で、口座の保有数は約2,428万口座になりました。なんと、国民の約5人に1人が口座を保有している状況です。 もちろん自分年金作りに欠かせないiDeCoも、順調に加入者を増やしており、今般の税制改正大綱においては大幅な掛金上限額の拡大が発表され、大いに期待されています。 ここまで投資に対する関心が高まると、先生方におかれましても関与先から「投資について教えてくれないか?」などと請われることがあるかもしれません。 しかしながら、投資には必ずリスクが伴うものですから、安易にアドバイスを請け負うものではありません。最悪のケースでは損失を被った際に「先生がそう言ったから」と責任を押しつけられる可能性もあるので、慎重になるべきでしょう。 とはいえ、NISAやiDeCoは国の制度であるがゆえに、「税理士の先生であれば知っていても当然」と思われることもあるかと思います。 そこで今回は、ファイナンシャルプランナーとして筆者がどのような情報提供あるいは投資アドバイスを行っているのかをご紹介したいと思います。   〇不確実なことは口にしない まず、「しない」ことから申し上げます。 当然ながら「絶対に儲かる」は禁句です。 さすがに「先生はNISAでどのくらい儲かりましたか」など直接的な質問はないとは思いますが、それでも「どのくらいのリターンが望めるのかを知りたい」というのは自然なことです。 仮に先生方に投資キャリアがおありで、自信がある場合も同様です。なぜならば、その過去に再現性がないからです。 おそらく今手元にある投資で得た利益は、長い時間をかけて築いたものでしょう。また、必ずしもうまくいった時ばかりではなく、損失を被ったこともあるでしょう。それらをひっくるめての現在の状況を単純にお話してしまっては、相手をミスリードすることになります。 また、市況を語るのもNGです。知識があればあるほど、これからの経済の行方に対してひとこと言いたくなるかもしれませんが、将来どうなるかなど、誰ひとりとして予測することは不可能です。 同様に、「この会社の株価が上がるだろう」とか「この投資信託が良い」というような話もしません。証券会社や銀行の窓口では、「この株が買い」だとか、「この投資信託がお勧め」だという話もありますが、それは金融商品を販売することでビジネスをしている人たちの「売りたい商品」であり、私たち投資家が買ったところで、必ず利益が出るという確実性はまったくないものだからです。 つまり、投資アドバイスを求められた際に、不確実なことは口にしないというのが鉄則です。 特に筆者のように商品販売をしないファイナンシャルプランナーは、個別商品の推奨ができないことになっているので、再現性の乏しいこと、不確実性の高いことは、一切口にしない、としています。   〇アドバイスは「再現可能」で「確実」なことだけ では、どのような話を「アドバイス」するのか? それは再現可能で、確実なことです。 具体的には、次の5つがあります。 1つめは「制度の仕組み」です。NISAであれば、運用益非課税であることの詳しい説明。iDeCoであれば、掛金が全額所得控除、運用益非課税、受取時において利用できる控除の仕組みです。これらの制度をきちんと説明することが、何よりのアドバイスになります。 2つめは「投資と投機の違い」です。投資とは、私たちの暮らしをより安全に、豊にするために働く企業を長期で応援し、その成長の恩恵を受けることです。一方で投機は、誰かの損失を誰かが独り占めするような短期での利益の取り合いです。これでは私たちは報われません。 3つめは「コストの低減」です。例えば、1つめと重複しますが、税金はコストです。したがって、課税されない仕組みの中で投資ができれば、その節税分は確実な利益となります。あるいは、投資を実行する際のコストも挙げられます。投資信託であれば、購入時の手数料や信託報酬、解約時の手数料は、できるだけ負担しないように考慮すべきです。 4つめは「リスクをコントロールする技術」です。つまり「分散」です。投資タイミングを分散する、投資対象を分散するのが基本です。例えば前者はドルコスト平均法と呼ばれる定時定額で金融商品を購入する方法が最もメジャーな考え方ですし、後者は国際分散投資が投資ですべての財産を失わないための合理的な考え方です。 5つめは「お金との距離感」です。私たちの暮らしには、増えないけれど確実に流動性を保ちながら用意しておくべきお金もあれば、経済成長の恩恵を積極的に狙ってこそ備えるべきお金や、万が一の時に暮らしを守ってくれるお金もあります。そのようなお金の適材適所を知ることで、日々の暮らしを豊に送りながら、将来にも明るい未来を描けるようになります。 *  *  * 今、投資に関する情報があふれています。その多くが「こうしたら儲かる」「こうしたら得する」といったものばかりだからこそ、先生方には、あたり前のことだけれど意外と教えてくれる人がいない大切な情報を、クライアント様にお伝えしていただければと考えます。 投資への関心が高まっている今だからこそ、「金融商品を売ってビジネスをする人たち」とは異なる立場での適切なアドバイスとして、今回お伝えした内容を参考にしていただければ幸いです。 (了)

#No. 611(掲載号)
#山中 伸枝
2025/03/19

プロフェッションジャーナル No.610が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年3月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.610を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/03/13

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第138回】「消費税法における「課税仕入れの日」(その2)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第138回】 「消費税法における「課税仕入れの日」(その2)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   6 検討(承前) (2) 権利確定主義と無条件請求権説 消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行った日」がいつを指すのかについては、同法に明確に規定されているわけではないから、解釈に委ねられることになる。この点、「課税仕入れを行った日」と「資産の譲渡等」の時期を同様の基準により判断すべきか否かについては、本件地裁判決がこれを否定するのに対して、本件高裁判決はこれを肯定している。本件高裁判決が説示しているのは、所得税法や法人税法における課税の時期の議論で中心的に展開されている無条件請求権説である。無条件請求権説に立った引渡基準が採用されているといってよかろう。 本件高裁判決は、次のように論じる。 これは、所得課税法における権利確定主義の考え方、とりわけ無条件請求権説の考え方に近いものであるということができる。 そもそも、所得課税法における課税のタイミングとしては、権利確定主義が採用されていると解されている。 最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁。以下「最高裁昭和49年判決」という。)は、次のように説示する。 また、同最高裁は、権利確定主義について次のように説示する。 また、最高裁昭和46年11月9日第三小法廷判決(民集25巻8号1120頁。以下「最高裁昭和46年判決」という。)は、次のように説示する。 このように、最高裁昭和46年判決は、権利確定主義という表現こそ使っていないものの、収入実現の可能性(蓋然性)が高度であるタイミングによる課税を行う旨説明している。 権利の確定は収入実現の蓋然性の高さを意味すると思われるところ、権利確定主義は所得課税法において通説的に採用されている考え方である。これは、いわば、課税のタイミングにおける法的テストとしての性質をも帯有している。 しかし、本件高裁判決は、上記の最高裁昭和46年判決や同昭和49年判決のような説示の仕方をしているわけではない。 本件高裁判決が述べる「資産の譲渡等」の時期に係る説示を理解するために、ここで無条件請求権説について触れておきたい(岩﨑政明「所得の時間的帰属-収入すべき権利の確定時期と判断基準について-」税務事例研究140号34頁(2014))。 権利確定主義について、清永敬次博士は、「確定をいうのであれば、契約の目的物を相手方に引渡すことによって、すなわち売主が自己の給付義務を履行することによって相手方が同時履行の抗弁権を失ったとき、売主の代金支払を受くべき権利は一層確実となるのであるから、そのときに権利が確定したといってもよい」とされ、その具体例について、「割賦販売の場合、売買契約の締結によって代金債権は発生する。商品は直ちに相手方に引渡されるが、代金債権全部の実現は長期にわたり支払について若干の不安がないでもない。そこで、各賦払金の支払期の到来ごとに代金債権が部分的に確定していくのである。このように考えていけば割賦基準は立派な権利確定主義である。」とされる(清永「権利確定主義の内容」税通20巻11号90頁(1965))。 また、福岡地裁昭和42年3月17日判決(訟月13巻6号747頁)は、権利確定主義の立場から、「権利の確定の時期としては原則として法律上の権利の行使ができるようになったときを基準」と解するべきと説示する。 これは、いわゆる大竹貿易事件最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決(民集47巻9号5278頁)が、「売主は、商品の船積みを完了すれば、その時点以降はいつでも、取引銀行に為替手形を買い取ってもらうことにより、売買代金相当額の回収を図り得るという実情にあるから、右船積時点において、売買契約による代金請求権が確定したものとみることができる。」とするところに通じる。 例えば、商品の売主としては、商品の引渡しがいまだ済んでいないので、売買代金請求権が成立しているとはいっても、買主から同時履行の抗弁権の主張がなされるかもしれない。権利確定主義になぞらえて考えると、売主にとっての売買代金請求権の発生時期は、民法555条《売買》の売買契約の成立時期と符合する。すなわち、売買代金請求権の要件事実は、①財産権移転を約束することと、②代金支払を約束することである。したがって、これら2つの事実が認定されれば、資産の譲渡人としては売買代金請求権が成立することになる。しかしながら、他方で、商品の引渡しが完了していない限り、買主からの同時履行の抗弁権の主張がなされ得ることにもなる。 同時履行の関係が明確である場合には、売買代金請求権が必ずしも障害なく履行できるとはいえず、売買代金請求権に係る権利障害事実ないし権利阻止事実が完全に撤去されるまでは、権利確定主義にいう「権利の確定」とは評価されるべきではないということになりそうである。そこで、ここに「引渡基準」の法的根拠を説明することが可能となるのである。 このように考えると、売買代金請求権の成立事実(上記①及び②)の存在だけでは必ずしも収入実現の蓋然性が高いとはいえないのであって、同時履行のような権利抗弁の存在効果の発生のない状況になった段階で初めて収入実現の蓋然性が高くなるということができる。すなわち、この場合は、売買代金請求権に対する障害が取り除かれない限り、「収入実現の蓋然性」が高いとはいえないことになるのである。 かように、売買代金請求権に対する抗弁権の主張ができない段階、すなわち商品引渡しの段階においてはじめて権利確定主義の見地から課税のタイミングが到来したとする考え方を無条件請求権説という。 本件高裁判決が「資産の譲渡等を行った」時期について、次のように説示するのは、まさに上記に論じた無条件請求権説の考え方に近いものといえそうである。 本件高裁判決のその部分を再掲しておこう。 (3) 消費税法基本通達の立場 そこで、やや迂遠に感じられるかもしれないが、国税庁の発遣している消費税法基本通達の取扱いについて確認しておきたい。 国税庁は消費税法基本通達11-3-1において、次のように通達している。 消費税法基本通達11-3-1《課税仕入れを行った日の意義》 このように国税庁は、消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行った日」については、「資産の譲渡等」の時期の「取扱いに準ずる」と通達しているものの、かかる「取扱いに準ずる」の意味が判然とせず、本件高裁判決がいうようにこれらを「表裏⼀体的な関係にある」として、同じ時期を指すものという意味なのか、それともあくまでも「準ずる」にすぎず、完全一致を前提として解しているわけのものではないのかという点に解釈の余地が残されているようにも思われる。 さらに、同通達の逐条解説が次のようにコメントしている点からすると、より判然としない点もある(末安直貴『消費税法基本通達逐条解説〔令和6年版〕』640頁(大蔵財務協会2024)。 このようなコメントが付されており、「課税仕入れを行った日」の解釈について、資産の譲渡等を行った時期の「取扱いに準ずる」という点に加えて、さらに、基本通達本文にはない「原則として」という表現まで追加されている点をみると、厳格な意味において本件高裁判決がいうような「表裏一体的な関係にある」とみているのかどうかは判然とはしない。 もっとも、上記逐条解説は、さらに注目すべき次の一文を付している(末安・前掲書640頁)。 これはどのような意味を有するのであろうか。 なぜ、「課税仕入れを行った日」の解釈として、資産の譲渡等を行った時期の「取扱いに準ずる」ことが所得税や法人税における所得金額の計算上の資産の取得の時期や費用等の計上時期と同じになるのかについて、その理由は記載されていない。また、所得税や法人税における「資産の取得の時期」とは何を指しているのであろうか。少なくとも、「収入や収益の計上の時期」と記載しているのではない。「費用等の計上時期」と記載していながら、「収入や収益の計上の時期」とはせずに、「資産の取得の時期」と説明していることには特別の意味があるのであろうか。 少なくとも、この表現ぶりからすれば、消費税法上の資産の譲渡等の時期について国税庁は、所得税法や法人税法上の収入や収益の時期ではなく、両税法にいうところの資産の「取得」の時期に関心を寄せていることは明らかであろう。そうであるとすると、本件地裁判決が資産の所有権を基準に「課税仕入れを行った日」を読み解こうとした解釈と必ずしも離れた立場ではないのかもしれない。 所得税法や法人税法の取扱いにおいて資産の取得の時期が問題となるのは様々な例があろうが、その多くは償却資産などの取得の時期が論点とされよう。その時期が必ずしも収入や収益の計上時期である保障はないことからすれば、この点についても大いに関心を寄せるべきなのかもしれない。 しかしながら、上記消費税法基本通達は、同通達の第9章の取扱いに準ずるとしているところ、第9章の取扱いを確認すると不思議なことに気がつく。 そこで、第9章の代表的な通達を確認することとしよう。 消費税法基本通達9-1-1《棚卸資産の譲渡の時期》 消費税法基本通達9-1-2《棚卸資産の引渡しの日の判定》 このほかにも、消費税法基本通達第9章には多くの取扱いが示されているため省略するが、この第9章について上記逐条解説は次のような説明から始まる(末安・前掲書491頁)。 消費税法基本通達11-3-1にいう「課税仕入れを行った日」が示しているのは、同通達の解説に従えば、所得税や法人税にいう「資産の取得の時期」となるが、他方で、同通達第9章の解説に従えば、どうやら、「資産の取得の時期」とされているわけではなく、むしろ発生主義の説明から明らかなとおり、収入や収益の計上時期を指しているようである。 そこで、上記の消費税法基本通達9-1-1の解説を確認したい(末安・前掲書492頁)。 ここでは、❶所得税法には法人税法22条4項のような「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(公正処理基準)の適用がないこと(すなわち、企業会計原則が所得税法における法源とはなり得ないこと)が無視されていることや、❷「収入」概念と「収益」概念の混同により所得税法36条《収入金額》1項の「収入」の取扱いが全て法人税法22条2項の「収益」の説明に内包されてしまっていること、❸法人税法22条の2の取扱いはどのように消費税法上の取扱いに反映されるかについて言及されていないこと(後述)など、記述上気にかかる点はあるものの、考え方としては、消費税法基本通達第9章は所得税や法人税にいう収入や収益の計上時期の取扱いと同様に考えるということであろう。そして、消費税法基本通達11-3-1にいう「課税仕入れを行った日」についてはこの取扱いに準ずるというのであるから、例外の有無についていったん措くとすれば、国税庁としては、所得課税法の採用する課税のタイミングの考え方に従うという態度を示したものと解される。 そして、所得税法や法人税法の解釈においては無条件請求権説が通説として採用されていることを併せ考えれば、差し当たり、本件高裁判決の考え方は国税庁の見解と同様のものであるとみることができそうである。 (続く)

#No. 610(掲載号)
#酒井 克彦
2025/03/13

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第35回】「国税通則法97条(87条~96条・97条の2~97条の4)」-国税不服審判所の調査審理手続と争点主義的運営の要請-

谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第35回】 「国税通則法97条(87条~96条・97条の2~97条の4)」 -国税不服審判所の調査審理手続と争点主義的運営の要請-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   国税通則法97条(審理のための質問、検査等)   1 はじめに 第32回では、国税不服審判所創設の経緯及び背景を検討し、その創設の核心が「納税者の自主性と個別性の尊重という方向」にあり、ここにこそ、裁判所による権利救済制度とは別に国税不服審判所による権利救済制度を設ける意義があることを確認した上で、国税不服審判所制度を、「納税者の自主性と個別性の尊重」に方向づけられ民主主義的租税観によって支持される権利救済制度として位置づけた(1~2)。 今回は、国税不服審判所の調査審理手続に関して争点主義的運営の要請を検討するが、その検討を始めるに当たって、国税不服審判所の創設をめぐる議論の過程でその要請がどのようにして形成されてきたのかをみておくことにしよう。   2 争点主義的運営の要請の形成 第32回でみたように、国税不服審判所創設の直接の基礎となったのは税制調査会『税制簡素化についての第三次答申』(昭和43年7月。以下「税制簡素化第三次答申」という)であるが、この答申は、国税不服審判所の審理手続については、次のとおり述べていた(同答申51頁)。 このうち特に(ニ)で述べられていることは総額主義による審理を意味するものと解される。そのような審理方式は、国税不服審判所の前身である協議団(以下「旧協議団」という)において採用されていたものであるが、旧協議団における審理方式については、総額主義及び争点主義の用語法も含め、次のような理解が示されていた(松沢智『租税争訟法』(中央経済社・1977年)55-56頁。下線筆者)。 税制簡素化第三次答申において旧協議団時代の総額主義による審理が継承されていたことは、その答申を踏まえた「国税通則法の一部を改正する法律案」に関する第61回国会参議院大蔵委員会での次の質問及び答弁(第61回国会参議院大蔵委員会会議録第27号(昭和44年7月8日)。国立国会図書館国会会議録検索システムによる参照。下線筆者)からも、読みとることができる。 その後、前記法律案は第61回国会では審議未了(廃案)となったが、第63回国会に提出された「国税通則法の一部を改正する法律案」は第63回国会で可決された(その経緯については、国税不服審判所のホームページに掲載されている国税不服審判所「国税不服審判所の50年」(令和2年5月)23頁以下参照)。同法律案については衆議院でも参議院でも大蔵委員会がともに附帯決議を付して可決し本会議も可決したが、ここでは、争点主義的運営の要請を明示的に決議した参議院大蔵委員会の附帯決議(第63回国会参議院会議録第7号・官報号外(昭和45年3月27日)7頁)の全文を次のとおり引用しておく(下線筆者)。 この附帯決議は、第63回国会参議院大蔵委員会での次の質問及び答弁(第63回国会参議院大蔵委員会会議録第8号(昭和45年3月17日)。国立国会図書館国会会議録検索システムによる参照。下線筆者)を踏まえたものと考えられる(南博方『租税争訟の理論と実際〔増補版〕』(弘文堂・1980年)57頁参照)。 上の最後の国務大臣答弁で述べられている「考え」が争点主義的運営の要請であり、その「考え」が前記の参議院大蔵委員会附帯決議において宣明されたものと考えられるのである。 ここで、旧協議団における審理方式を継承した税制簡素化第三次答申から前記の参議院大蔵委員会附帯決議に至る過程において、「争点主義」の性格・位置づけが次のように変化してきたこと(松沢・前掲書127頁。下線筆者)を確認しておく。 以上の経緯をみると、争点主義的運営の要請は、とりわけ、旧協議団における総額主義による審理の「たてまえ」と「審査制度の本質」とをめぐる参議院大蔵委員会での真摯な質問及び答弁、、、、、、、、、を通じて形成され、同委員会の附帯決議、、、、によって実質的に国税通則法の内容に組み込まれたといってよかろう。このような立法過程は、議会制民主主義における租税立法過程についてそのあり方を検討する上で、わが国の議会制民主主義の状況に鑑みると、貴重な成功事例として位置づけることができよう(筆者のそのような問題関心からの研究として拙著『租税回避論』(清文社・2014年)第4章第2節[初出・2008年]も参照)。 この点に関連して、議会制民主主義は租税法律主義の民主的正統性を支える政治原理であるが、租税立法が「タックス・ポリシーの受け皿」であるだけでなく「法律問題の解決のための受け皿」であること(金子宏『租税法理論の形成と解明 上巻』(有斐閣・2010年)416頁[初出・1978年])を考慮すると、議会制民主主義における租税立法過程の改革・改善は、納税者の権利保護の要請を含む租税法律主義の実効性を確保するために不可欠であること(拙稿「租税法律主義の課題と展望」税研226号(2022年)39頁、40頁も参照)を指摘しておきたい。   3 争点主義的運営の要請の展開と課題-行政原理と司法原理との調和の追求- さて、以上のような経緯により形成された争点主義的運営の要請は、国税不服審判所の創設以来「国税不服審判所における事務運営の基本方針」として、「合議の充実」及び「納得の得られる裁決書の作成」と並んで重きが置かれてきた(差し当たり、久米眞司「国税不服審判所の概要及び特色」国税不服審判所編『国税不服審判所の現状と展望』(判例タイムズ社・2006年)12頁、21頁、国税不服審判所・前掲「国税不服審判所の50年」39頁参照)。 不服審査基本通達(国税不服審判所関係)97-1も、いわゆる留意通達すなわち「租税法の規定からみて当然にそのように解釈できるものを解釈の統一(課税の公平)を図るために,確認的に当該解釈を示すもの」(品川芳宣『租税法律主義と税務通達』(ぎょうせい・2003年)39頁)の形式で、次のとおり争点主義的運営の要請を確認的に示している(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)1205頁、武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)4624-4625頁、4695頁等参照)。 このように、国税不服審判所の調査審理手続において争点主義的運営は定着してきたとみてよいであろう。その比較的初期の段階で、南博方教授は争点主義的運営を「新たな調査は争点で、審理は総額で」と定式化されたが、南教授の見解はその定式でもって争点主義的運営の本質的意義を的確に明らかにしていると考えられる(久米・前掲論文21-22頁参照)ので、以下では、南教授の見解を少し長くなるが引用しておくことにする(南・前掲書58-59頁。下線筆者。同208-209頁も同旨)。 南教授の見解は、「理論上、判例上は総額主義が妥当するとしても、そのことから当然に、審判所の運営においても総額主義で行うということにはならない。理論と運営とは別個の問題である。」(南・前掲書208頁。下線筆者)という立場に立って、争点主義的運営の本質を、審理のための調査の問題(「調査の入り方、調査の範囲とその程度の問題」)として捉えるものと解される(南・前掲書35頁も参照)。同様の見解は、松沢智教授も次のとおり説かれていたところである(同・前掲書128頁。下線筆者。なお、同頁は同書「第二章 審判の法理」の一部であるが、その章の副題は「国税不服審判所における争点主義的運営の本質」(同書125頁。下線筆者)である)。 争点主義的運営の本質のこのような捉え方は、前記の参議院大蔵委員会附帯決議において争点主義的運営と並んで不服審査における質問検査権の濫用防止が要請されていたことからして、その決議の趣旨に適合したものといえよう。この点について、南教授も「衆議院大蔵委員会の附帯決議には、直接、争点主義に関する決議はないが、・・・・・・、質問検査権の行使に関する決議など、その趣旨を窺わしめるものがある。」(同・前掲書57頁)と述べておられるところである(同附帯決議(案)に関する広瀬秀吉委員の趣旨説明(第63回国会衆議院大蔵委員会会議録第8号(昭和45年3月4日)。国立国会図書館国会会議録検索システムによる参照)も参照)。 ここで不服審査における質問検査権の濫用というのは、国税不服審判所の機能に関する「見直し機能説」に基づく質問検査権の行使について問題になるものと解される。すなわち、この説は、「国税不服審判所も国税庁に属している以上は、単に納税者の権利保護を目的とするのみならず、むしろ上級庁の監督権の行使としての原処分の見直しの性格をもつものである」(松沢智『租税手続法』(中央経済社・1997年)336頁)と説き、「総額を探索しようと意図するから、積極的に争点外事項をも調査して、その結果原処分を上回る所得を発見したとして現に審査請求を棄却することも少なくない。」(同339頁)と説くが、そのように「総額を探索しよう」として「積極的に争点外事項をも調査」することが、不服審査における質問検査権の濫用を意味するものと解されるのである。 不服審査における質問検査権の濫用防止の要請は、国税通則法97条1項が平成26年6月改正前は、調査申立権を審査請求人にのみ認め原処分庁には認めていなかったことによっても担保されていたと考えられるが、同改正後は、原処分庁を含む審理関係人(92条の2括弧書)に認められることになったので、この改正を上記要請との関係でどのように評価すべきかが問題となる。この問題については以下のように考えるところである。 上記の改正については次の説明(宇賀克也『解説 行政不服審査法関連三法』(弘文堂・2015年)205-206頁。太字原文・下線筆者)がされている。 この説明は、「改正行政不服審査法には、かかる規定[=原処分庁の調査申立権に係る規定]はないが、これは、処分庁が審査庁となる場合はもとより、処分庁に上級庁がある場合にも最上級行政庁が審査庁となるのが原則であるため、あえて処分庁による調査申立権を規定する必要はないと考えられたからである。処分庁による調査申立権にかかる規定が整備法で新設されたのは、改正後の国税通則法97条1項のみであるが、これは、・・・・・・[=上記引用文]」(宇賀・前掲書205頁)との叙述に続く説明であることからすると、国税通則法97条1項の前記改正は、国税不服審判所が原処分庁の上級行政庁ではなく、原処分庁の属する執行機関としての国税庁からは一定の独立性を有する裁決機関であることを考慮した改正であると解される。その改正では、争点主義的運営との関係は考慮されていなかったように思われる。 とはいえ、原処分庁が審査請求人の主張する争点及び争点関連事項とは異なる争点及び争点関連事項について調査を申し立てた場合には、国税通則法97条1項がその申立権を原処分庁にも認めている以上、担当審判官としては、当該争点及び争点関連事項について質問検査権を行使しないわけにはいかないであろうが(不服審査基本通達(国税不服審判所関係)97-1も参照)、そうすると、国税不服審判所の審理が「新たな調査は争点で、審理は総額で」という方式ではなく「新たな調査も審理も総額で」という方式で運営されることになりかねない。このような結果は、争点主義的運営の要請に対する制約、場合によってはその放棄につながるおそれがあるといえよう。 確かに、前記の平成26年改正前の国税通則法97条1項は調査申立権の点で「一方審理手続的色彩」(南・前掲書38頁)を帯びた規定であり、同改正はこのことを「審理手続における当事者間の公平の確保等の観点」(前掲囲み内引用文)という当事者主義の観点から是正したとはいえよう。しかもこのような当事者主義の拡充が、国税不服審判所の独立性の強化(これについては次回検討する)と相俟って、国税不服審判所の準司法機関的な性格を強め納税者の権利救済に寄与するものであるとはいえよう(松沢・前掲『租税手続法』336頁参照)。その意味及びその限りで、「特に審理手続においては、行政機関としての審判所に司法原理を導入せしめて行政原理と司法原理を妥当に調和させ理想的な審判制度を確立させようとした[国税不服審判所創設]当初の意図」(同334頁。下線筆者)が達成されたといってよいかもしれない。 しかし、そもそも、「職権主義・当事者主義の問題は審理の主体性に関するものであるから、これも両者[=職権主義・当事者主義と総額主義・争点主義]に相似性があるからといって、適用上争点主義をとって調査の範囲・限界を画することとは、次元を異にする問題とおもわれる」(松沢・前掲『租税争訟法』58頁。下線筆者)という指摘は正鵠を射たものであろう。これに加えて、国税通則法97条1項の平成26年改正が争点主義的運営の要請に対する制約、場合によってはその放棄につながることになれば、その意味及びその限りでは、同改正は審理手続において「行政原理と司法原理を妥当に調和させ」たとはいえないことになろう。同改正後も、争点主義的運営の要請の実現のためには、やはり不服審査における質問検査権の濫用防止の要請を担保する必要があることに変わりはないと考えるところであるが、その担保措置については行政原理の観点からの検討が重要であるように思われる。 「争点主義的運営とは、争点及び争点関連事項以外には調査を差し控えるという運用上の制約を審判所自ら課しているのであるから、これを否定することは審判所の自殺、、といえよう。」(松沢・前掲『租税手続法』339頁。傍点原文)という松沢智教授の警鐘は、今日においても傾聴すべきものである。その意味で、南教授や松沢教授の前記の見解は今日においても妥当な見解として支持すべきものである。両教授は争点主義的運営の本質を、審理のための調査の範囲・限界の問題として捉えられた上で、担当審判官による質問検査権の行使が原処分のいわば「見直し調査」になることを防止すべきであるという問題意識に基づき、争点主義的運営の要請を行政原理の観点から展開されたものと解することができよう。 なお、前回は最後に、再調査の請求について、再調査の制限(税通74条の11第5項)という行政原理の観点から、一種の争点主義的運営の要請を定立し、再調査の請求と国税不服審判所に対する審査請求を争点主義的運営による権利救済手続という同一平面上に位置づける考え方を述べたが、筆者のこのような考え方は、「審査請求段階の国税不服審判所のみならず、異議申立て段階の税務署等の不服申立てにおいても」不服審査における質問検査権の濫用防止を要請していた前記の参議院大蔵委員会附帯決議の趣旨に適合するものであろう。また、南教授や松沢教授の前記の見解の延長線上に位置づけることもできるように思われる。 (了)

#No. 610(掲載号)
#谷口 勢津夫
2025/03/13

国際課税レポート 【第12回】「先行き不透明なデジタル国際課税(利益A・デジタルサービス税)の動向」

国際課税レポート 【第12回】 「先行き不透明なデジタル国際課税 (利益A・デジタルサービス税)の動向」   税理士 岡 直樹 (公財)東京財団政策研究所主任研究員   1月公表「米国大統領令」のインパクト 先月の国際課税レポートでは、本年1月20日に大統領に返り咲いたトランプ氏が、就任して直ちに公表した国際課税についての前例のない大統領令を取り上げた。そこではOECDのグローバルタックスディールからの離脱と、財務長官に対し、外国による差別的・域外適用的な税制をリストアップし、かかる課税から米国の利益を守るための「保護的な措置」の選択肢とともに、大統領に報告することを命じている点について述べた。 これにより、残念ながら2021年10月のOECD/G20・BEPS包摂的枠組みによる「2つの柱」実施への試みは、停滞ないし将来不安に見舞われることとなった。 当面のヤマ場はスコット・ベッセント財務長官がトランプ大統領に報告する差別的・域外適用的な税制リストであり、特に、そこに日本の措置の名前があるかどうかだ。報告期限は60日後の3月22日だが、実際には4月2日になるという情報もある。この点については米国からの追加の情報発表を待つ必要がある。 それでは、第1の柱「利益A」多国間条約によって一定の解決がなされるはずだったデジタル企業の利益に対する課税(施設がなくても事業展開できる問題があった)と、欧州等で導入国が拡大し米国の隣国であるカナダも導入したデジタルサービス税(DST)の廃止は、今後どうなるのだろうか。 今回はこの点について、あらためて状況を整理してみたい。   BEPSプロジェクトに向けた各国の温度差 2013年にOECDがBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを立ち上げた背景には、デジタル化経済において、物理的な存在を必要としないテクノロジー企業への国際課税ルールを見直したいという各国の意向があった。デジタル経済への税の対応は、15のテーマの1番目に位置付けられた(Action1:Addressing the Tax Challenges of the Digital Economy)。 しかし、すべての国がこのプロジェクトに対して前向きだったとは言い難い。つまり、米国のテクノロジー企業・多国籍企業によるアグレッシブな租税回避スキームが報道され、市民の関心を集めていた欧州各国が意欲的であった。 こうした各国の温度差も背景に、2015年のBEPS最終報告書はデジタル経済についての課税について合意には至らなかった。合意に失敗した背景の1つには、民主党オバマ政権下(当時)の米財務省が、米国企業が生み出した利益に対する課税権を渡すことを拒否したことにあった(米専門誌報道による)。   利益AとDST 「利益A」と「デジタルサービス税」は、互いに共存できないペアだ。 【表1】に、第1の柱「利益A」多国間条約とデジタルサービス税をめぐる動きをまとめた。 【表1】第1の柱「利益A」多国間条約とデジタルサービス税をめぐる動き(未定稿) (出所)財務省資料、OECD資料等から筆者作成 上表で分かるように、第1の柱「利益A」をめぐる国際的な議論の進展の背景には、欧州を中心とする各国が「独自の措置」として導入したデジタルサービス税(DST)の動きがある。 デジタルサービス税は、欧州各国が租税条約に抵触しないよう、「売上税」(間接税)という外形をまとい、国際協調によるのではなく、「独自の措置」として導入された税制である。課税の根拠についての理論はあるが(※1)、EUやOECDの議論において、こうした理論やポリシーをめぐり突っ込んだ議論が行われた形跡をうかがうことはできない。 (※1) 渡辺徹也「BEPS多国間条約の進展とデジタルサービス税に関する動向」参照(東京財団政策研究所「【政策研究】具体化する国際課税改革の展望・提言」収録)。 第1次トランプ政権(2017-2021年)は、フランスが導入したデジタルサービス税に対し、米国企業を狙い撃ちにした差別的な税であるとして、関税による報復に動いた。 その後、2021年1月に誕生した民主党バイデン政権は2021年10月、G20/OECD包摂的枠組みにおいて「2つの柱による解決策」に合意し、その後「利益A」実施のための多国間条約の作成・署名・発効に向けた努力が続けられてきた。 しかし、2025年3月現在、利益Aのための多国間条約は、条文すら採択することができていない。   今後の展望ー米国抜きの進展や修正の可能性はあるか 2025年1月、OECD(BEPS包摂的枠組み共同議長)が公表したステートメントによると、利益Aの多国間条約の条文の採択に反対したのは1ヶ国のみであり、その理由も条文に問題があるというものではなく、利益B(移転価格税制の簡素化のためのマトリクス)の適用をめぐる意見の相違であった(1ヶ国は、名指しはされていないが米国のことだ)。 それでは、米国の参加がなくても利益Aの条約に各国が参加し、進展する可能性はあるだろうか。 これはあり得ないことが明確といえよう。 それには次の3つの理由がある。 1つ目が、デジタル経済で大きな存在感をもつ米国多国籍企業の存在だ。 多国間条約ドラフト(合意未済)第48条において、条約の発効には30ヶ国、600ポイント以上のポイントを持つ国の批准(議会による承認)が必要とされており、ポイントの合計は999なので、仮にポイントを割り当てられている米国以外のすべての国が批准したとしても、486ポイントを持つ米国が承認しなければ、条約は発効しない。 なぜこのようなバランスを欠いた規定が採用されたのか。背景には、デジタル経済の課税において、米国多国籍企業の存在が大きいことがある。米国が対象にならなければ、利益Aの多国間条約によるデジタル企業の課税利益再配分の意味はない。このことは米国、そして多くの大規模多国籍企業(ここではグループの売上規模7.5億ユーロ超の多国籍企業を指す)を擁する国が参加しない国際課税ルールは意味をなさないし、「国際合意」と呼ぶこともできないことを意味している。 2つ目として、利益Aが、いわゆるグローバルサウスの国々の支持を得られる見込みが薄いという点である。 税収の観点からみると、仏、英など欧州各国においては利益Aの方がデジタルサービス税より有利であり、インドやケニアにおいてはデジタルサービス税の方が大きい可能性があるからだ。【図1】に欧州の研究機関であるEU Tax Observatoryの推計を示す。「青」は利益Aによる税収の推計額を、「オレンジ」は各国が導入したデジタルサービス税の税収を表す(税収をめぐる問題については本連載【第5回】を参照)。 【図1】主要国にとっての利益Aとデジタルサービス税の税収(推計) (注) 税収への貢献の観点からDSTとAmount A(推計)を比較すると、英、仏ではAmount Aの方が大幅に有利であり、伊、スペインも小幅だが同様。インド、トルコはAmount Aは税収的に不利。また、インドのDST(平衡税)税収は2.35億ユーロ(2021)である一方、Amount Aでは▲0.23億ユーロ(2020)と見積もられている。 (出所) Kane Borders et al(2023)「Digital Service Taxes」EU Tax Observatory,Figure 10、15頁 そして、最も大きな3つ目の問題は、「利益A」を米国が多国間条約に参加しないまま課税することは、米国との租税条約違反になるという点である。   デジタルサービス税をめぐる重い宿題 「利益A」多国間条約の停滞(失敗と呼んだ方が実態に近いという有力な指摘がある)(※2)の影響は、国際合意に基づくテクノロジー企業の課税の停滞を招くだけにとどまらない。「既存のデジタルサービス税をどう扱うのか」という、直ちに対応を迫られる重い宿題も残ることになる。 (※2) 包摂的会合共同議長やOECD関係者は、各国は金額Aの詳細(範囲、基準値、計算式、配分)について合意していると説明している。しかし、条約のテキストの公表には至っていない。また、廃止すべきデジタルサービス税の定義について、米国企業等を納得させることに十分成功していない。 欧州等のデジタルサービス税に対する米国の具体的な対応は、冒頭紹介した3月末における米国財務長官から大統領へのレポートで明らかにされる見込みだ。 【図2】「第1の柱」の多国間条約案による廃止対象の既存措置 (出所) 財務省資料   現時点での教訓 デジタル経済に対応した国際課税ルールの変更に向けた努力について、現状は黄色信号がともったどころではなく、先が見通せない厳しい状況にある。 米国国際課税の教科書の執筆者であり、議会証言等でも活躍しているハーツフェルド教授は、「利益Aは、米国のテクノロジー企業の利益に対する課税権を歳入獲得に飢えている(hungry for a revenue)国々を満足させるための政治的妥協案にすぎず、どのようなルールが理にかなっているかという原則とポリシーに根差した議論が欠けていた」(※3)と指摘する。 (※3) Herzfeld, Mindy「Amount A Revise, Restart or Ditch?」Tax notes誌Mar.3, 2025 また、ハーツフェルド教授は次のような問題提起をしており、より深刻な内容といえよう。 利益Aの多国間条約の失敗や、米国が第2の柱のグローバルミニマム課税を拒否した現状を考えると、OECDがデジタル経済への課税に関する新たな計画を主導する組織としてふさわしいかどうかについて懐疑的な見方が強い。 EU以外の国が、米国が参加していない合意に達するための手段として、欧州主導の組織を利用することに疑いをもたないのかも疑問である。 OECD統計によれば、規模の大きな多国籍企業は世界に8,000社あり、うち米国に1800、日本に900、中国に760、香港に230存在している。一方、欧州のG7国(独、仏、伊)を合計しても800社程度にしかならない。長期間安定する必要がある国際課税ルールの策定には、多数の多国籍企業を擁する国々の参加が重要だ。 筆者は、市場も資源も限られている日本にとっては、多国籍企業がグローバルかつ自由に活躍できることが重要であり、国際課税の安定はそのために極めて重要であると考えている。このため、国際課税ルールの安定や予測可能性、そして、コンプライアンスコストが過重なものとならないことが大切であると訴えてきた。 しかし、現状を鑑みると、残念ながら、そのような安定的な課税ルールを作ることに適した環境とは言い難い。利益Aをめぐる停滞は、これまで多くの時間を費やし、努力してきた各国関係者、そしてOECDのスタッフにとっては、個人レベルでも残念な出来事だろう。 しかし、当面は新たな成果を目指すより、現状を維持することに注力すべきだ。そうすることが、現時点においては多国籍企業に最低限の予測可能性を保証することにつながるのではないか。 (了)

#No. 610(掲載号)
#岡 直樹
2025/03/13

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第52回】「〔第5表〕個人と法人との間で権利金及び地代の授受がない場合における土地及び借地権の計上金額」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第52回】 「〔第5表〕個人と法人との間で 権利金及び地代の授受がない場合における 土地及び借地権の計上金額」   税理士 柴田 健次   Q 経営者甲(令和7年3月15日相続開始)が100%保有している甲株式会社の株式を長男乙が相続していますが、甲株式会社は昭和50年に甲からA土地を使用貸借により借り受け、A建物(店舗)を建築し、自己の事業の用に供しています。甲株式会社はA土地の固定資産税相当額を甲に支払っています。 また、甲は平成30年に甲株式会社からB土地を使用貸借により借り受け、甲名義でB建物(アパート)を建築し、第三者に賃貸しています。甲はB土地の固定資産税相当額を甲株式会社に支払っています。 A土地及びB土地の概要及び相続開始年における自用地としての相続税評価金額は、下記の通りです。 ■A土地及びB土地の概要 ■相続開始年における土地の自用地としての相続税評価金額 ・A土地及びB土地は普通住宅地区であり、借地権割合は60%の地域に該当します。 ・A土地及びB土地の地域は、昭和40年ぐらいから権利金の授受が行われています。 ・A土地及びB土地はそれぞれ使用貸借ですが、無償返還に関する届出書は提出されていません。 甲株式会社の株式価額の算定上、上記A土地及びB土地の相続税評価について第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」の資産の部に計上する相続税評価額は、いくらになりますか。 A 第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」の相続税評価額は、下記の通りとなります。  ◆  ◆  ◆ (1) 使用貸借取引の意義 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生じ(民法593)、使用貸借において借主は、借用物の通常の必要費を負担します(民法595①)。固定資産税は通常の必要費となりますので、A土地及びB土地については、私法上は使用貸借取引となります。   (2) 借地権の認定課税 ① 借地人が「法人」の場合 法人が土地を賃借する場合において、借地権の取引慣行があるにもかかわらず権利金を支払わないときは、次のイ・ロに掲げる場合を除き、その法人に対して借地権の認定課税が行われます(法法22、法令137、法基通13-1-2、13-1-3、13-1-7)。 ② 借地人が「個人」の場合 個人が法人から土地を無償で賃借する場合には、上記①と同様に、借地権の認定課税の問題が生じます。すなわち、借地権の取引慣行があるにもかかわらず、個人が法人に権利金及び相当の地代を支払わず、かつ、無償返還に関する届出書の提出もない場合には、その個人は法人から借地権相当額の贈与を受けたものとみなされ、法人との関係性により給与所得、一時所得等が課税されることになります(所法36①②)。 なお、個人が個人から土地を無償で賃借する場合には、借地権相当額の贈与税課税(相法9)の問題が発生しますが、個人間の場合には、土地の使用貸借に係る使用権の価額はゼロとして取り扱われますので(「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて(昭和48年11月1日直資2-189(例規)等(最終改正:令和3年4月1日課資2-2)」通達1)、課税関係は発生しません。   (3) 借地権の認定課税をめぐる改正経緯 法人の借地権の認定課税は、昭和30年の前半から問題とされるようになりましたが、当時は、権利金に種々の性質のものがあること、権利金の慣行が一様ではないことから、どのような場合に認定課税が行われるのか明確ではなく、個々の取引に応じて審理がなされていました。 親子会社等の間で権利金を収受しない場合の権利金課税の問題等が昭和36年12月の税制調査会においても審議され(「税制調査会答申及びその審議の内容と経過の説明」)、昭和37年の法人税法施行規則の改正及びその取扱通達により、借地権課税が整理されました。 その内容は、相当の地代を収受している場合には借地権の認定課税がされない一方、権利金等の取引上の慣行がある場合において通常収受するべき権利金又は相当の地代を収受していない場合には、借地権の認定課税を行うことが明確化されました。 ところで、個人から法人への使用貸借があった場合には、昭和55年の法人税基本通達の改正で土地の無償返還に関する届出書の制度が導入される以前においては、「営利を追求する法人を当事者とする使用貸借はありえず、使用貸借を擬制とする賃貸借取引において賃料が免除された」という解釈により、借地権の認定課税の対象とされていました。 これが昭和55年における法人税基本通達の改正により、通常収受するべき権利金又は相当の地代を収受しない土地の賃貸借取引又は使用貸借取引がある場合において、借地権の設定等に係る契約書において将来借地人等がその土地を無償で返還することが定められており、かつ、その旨を借地人等との連名の書面により遅滞なく土地所有者の納税地の所轄税務署長(国税局の調査課所管法人にあっては、所轄国税局長)に届け出たときは、借地権の認定課税は行われないこととなりました(法基通13-1-7)。 この通達は、昭和55年12月25日以後の土地の賃貸等に適用されていますが、同日前の土地の賃貸等については経過的な取扱いとして、借地権の認定課税が行われていない場合(認定課税の除斥期間を経過しているものを含む)において、この通達の適用を受けることにつき遅滞なくその旨の届出を行っている場合には、上記の通達の適用を受けることができるものとされています(法基通の経過的取扱い(8)借地権の設定等に伴う所得の計算に関する改正通達の適用時期等(1))。   (4) 借地権の財産評価 借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて計算した金額によって評価します(財産評価基本通達27)。 この借地権割合は、国税庁ホームページの路線価図や評価倍率表に表示されています。   (5) 貸宅地の財産評価 借地権の目的となっている宅地の価額は、自用地としての価額から借地権の価額を控除した金額によって評価します(財産評価基本通達25)。   (6) 本問への当てはめ ① A土地について 借地契約を設定した昭和50年当時は権利金収受の慣行があるため、本来であれば相場の権利金を支払うか又は相当の地代を支払う必要があり、いずれも該当しない場合には、借地権の認定課税の問題が発生します。 借地権を認識しない場合には、その後の昭和55年の法人税基本通達の改正により土地の無償返還に関する届出書を提出するべきところ、その提出もされていないことから、法人に借地権があるものとして財産評価を行うことになります。 したがって、A土地の借地権の価額は「自用地評価額(50,000千円)×借地権割合(60%)」により評価します。 ② B土地について 借地契約を設定した平成30年当時は権利金収受の慣行があるため、本来であれば相場の権利金を支払うか又は相当の地代を支払う必要があり、いずれも該当しない場合で使用貸借であれば、土地の無償返還に関する届出書を提出する必要があります。 本問の場合には、その届出書の提出もされていないため、個人に借地権があるものとして財産評価を行います。個人は借地権を有するものとして財産評価を行いますので、法人では貸宅地評価を行うことになります。 したがって、B土地の貸宅地の価額は「自用地評価額(40,000千円)-借地権価額(40,000千円×60%)」により評価します。   ☆実務上のポイント☆ 無償返還に関する届出書の提出期限は遅滞なくとされており、相続開始前に無償返還に関する届出書の提出を検討することが重要です。 無償返還に関する届出書を後日提出した場合の有効性については、本連載の【第22回】で解説しています。 (了)

#No. 610(掲載号)
#柴田 健次
2025/03/13

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第7回】「国内事業者に対するプラットフォーム課税の影響」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第7回】 「国内事業者に対するプラットフォーム課税の影響」   税理士 石川 幸恵   【Q】 令和7年4月よりプラットフォーム課税が導入されると聞きました。国内の事業者にはどのような影響があるでしょうか。 【A】 国内の事業者にとって主に以下の点が関係します。 プラットフォーム課税は、国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供で、かつ、特定プラットフォーム事業者を介してそのサービスの対価を収受する取引を対象としています。令和7年4月1日以後、その特定プラットフォーム事業者がその取引を行ったものとみなして申告・納税を行うことになります。 本稿執筆現在、4社が特定プラットフォーム事業者と指定されており、国税庁のホームページで公表されています。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 平成27年度の税制改正で電気通信利用役務の提供に関する課税関係が整備された。電気通信利用役務の提供の受け手の立場から、今回のプラットフォーム課税の導入と併せて課税関係等を整理しておきたい。   1 電気通信利用役務の提供の例示 電気通信利用役務の提供とは、電気通信回線(インターネット等)を介して国内の事業者・消費者に対して行われる電子書籍の配信等の役務の提供をいう。 電気通信利用役務の提供に該当する取引の具体例は以下のとおりである。 これらの取扱いは「事業者向け」か、いわゆる「消費者向け」(事業者向け以外)かにより次のように分けられている。 クラウド上のソフトウェア利用やデータベース利用、電子データ保存については、契約の内容を確認して事業者向けか消費者向けかを判断する必要があろう。   2 プラットフォーム課税の仕組み プラットフォーム課税は、消費者向け電気通信利用役務の提供が対象となる。国外事業者が行った日本国内へのアプリ配信等につき、プラットフォーム事業者が行った取引とみなして、プラットフォーム事業者に消費税の申告・納税義務を課す。 本稿執筆現在、特定プラットフォーム事業者として登録されているのは次の指定要件(制度開始時につき経過措置あり)に該当した4社のみである。 該当した事業者は、その課税期間の消費税の確定申告書の提出期限までに指定届出書を提出する必要がある。指定届出書の提出があった場合、国税庁長官はプラットフォーム事業者として指定し、提出期限から6ヶ月を経過する日の属する月の翌月の初日に指定の効力が生ずる。   3 国内事業者への影響 プラットフォーム課税の国内事業者への影響は限定的と考えられる。 ただし、これまで国外事業者からの電気通信利用役務の提供としてインボイスの交付がなかった取引では今後、特定プラットフォーム事業者からインボイスが交付される可能性がある。サブスクリプション等、継続的に支払っているものについて課税仕入れへの変更がないか確認されたい。 (了)

#No. 610(掲載号)
#石川 幸恵
2025/03/13
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