《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和6年10月~12月)」 ~注目事例の紹介~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 国税不服審判所は、2025(令和7)年6月18日、「令和6年10月から12月までの裁決事例の追加等」を公表した。追加で公表された裁決は表のとおり、国税徴収法関係が3件、国税通則法関係及び法人税法関係が各2件、相続税法関係が1件で、合計8件となっている。公表された裁決には「全部取消し」となった事例はなく、1件のみ「一部取消し」であったが、他は「棄却」となっている。 【表:公表裁決事例令和6年10月から12月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された8件の裁決事例のうち、e-Taxでの電子申告の誤操作を正当な理由と認めなかった事例(②)、固定資産の取得対価の一部が寄附金であると認定した事例(③)及び換価の猶予の不許可処分が争われた事例(⑧)について、国税不服審判所の判断内容を概説したい。 なお、複数の争点がある裁決については、下記の概要の中で、その一部を割愛して、中心的な争点のみについて絞らせていただいたことを、あらかじめお断りしておく。 1 e-Taxシステムの誤操作による期限後申告に対する無申告加算税の賦課決定処分・・・② (1) 事案の概要 本件は、審査請求人が、所得税等の期限後申告書を提出したことから、原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、期限内申告書を提出できなかったのは国税電子申告・納税システム(e-Taxシステム)に誤操作を生じさせる問題があったためであり、正当な理由があるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 審査請求人は、令和5年3月1日、e-Taxシステムの確定申告書等作成コーナーを利用して、令和4年分の所得税等の確定申告書のデータ並びに令和4年12月31日分財産債務調書等のデータを作成したうえ、同日、財産債務調書等データを送信した。 次いで、審査請求人は、令和5年3月2日、消費税及び地方消費税の納付書を利用して、確定申告書のデータにより算出した令和4年分の所得税等の納付すべき税額に相当する金額を納付した。 令和5年6月29日、審査請求人は、e-Taxシステムを利用して確定申告書データを送信することにより、本件確定申告書を提出した。 (2) 争点 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、まず、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、期限内申告書が提出されなかったことについて、例えば、災害、交通や通信の途絶等、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当であると述べたうえで、認定事実から、審査請求人は、法定申告期限後である令和5年6月29日に、e-Taxシステムを利用して本件申告データを送信し、確定申告書を提出したことから、確定申告書は期限後申告書に該当し、単に期限後申告書を提出したという客観的な事実のみにより、原則として、請求人に無申告加算税が課されることとなるという判断を示した。 そのうえで、国税不服審判所は、審査請求人による「利用者の意思に反する誤操作が生じてしまうe-Taxには、システム上の問題がある」という主張に対しては、e-Taxシステムにおいては、利用者が財産債務調書のみを提出する場合も想定し、「財産債務調書を送信する」という項目が用意されていることからすれば、審査請求人が操作を誤って「財産債務調書を送信する」を選択して送信したからといって、そのことをもってe-Taxシステムに、システム上の問題があるとはいえないし、e-Taxシステムには、申告等データが正常に受信されないといったシステム上の障害は確認されていないことを踏まえると、審査請求人が期限内申告書を提出しなかったのは、請求人が、e-Taxシステムの操作を誤って財産債務調書等データの送信しか行っていなかったにもかかわらず、財産債務調書等データの即時通知を見て、申告データも送信されたと誤って認識したという審査請求人自身の主観的な事情によるものにほかならないというべきであるとして、審査請求には理由がないから棄却する裁決を行った。 2 固定資産の取得対価の一部が寄附金であると認定した事例・・・③ (1) 事案の概要 本件は、農業生産法人である審査請求人が、取得した固定資産について工事請負契約書等に基づく支出金を取得価額として資産計上し、減価償却費等の額を損金の額に算入して法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該固定資産の取得に係る支出金には請求人の関連法人に対する寄附金の額が含まれており、かつ、当該工事請負契約書等は仮装されたものであるとして、更正処分、重加算税等の賦課決定処分及び青色申告の承認の取消処分をしたのに対し、請求人が、当該固定資産の取得に係る支出金には対価性があるから、原処分庁が当該支出金の一部を寄附金として認定したのは事実誤認であるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、(争点2)について、建設会社及び建築士の申述に基づき、審査請求人が、支払った固定資産の取得対価のうちから、審査請求人の代表取締役が代表取締役を務める審査請求人の関連法人等に、指定した金額を振り込ませたのは事実であり、建設会社及び建築士は、審査請求人の関連会社から役務の提供(反対給付)は受けておらず、審査請求人が建設会社及び建築士を介して、審査請求人の関連会社に対し金銭を対価なく移転するもの(資金の贈与)であると認められ、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人が当該資金の贈与を行うことに通常の経済取引として是認することができる合理的理由は認められないことから、建設会社及び建築士に振り込ませた金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当するものと認めるのが相当であるという結論を導いたものである。 なお、原処分庁が寄附金と認定した3件の固定資産の取得対価のうち、1件については、国税不服審判所は、建設会社が審査請求人の関連法人に対し組立作業等及び農業用資材の購入の対価として支払をしたものと認められることから、その支払額は、審査請求人が建設会社を介して、関連法人に対し金銭を対価なく移転するもの(資金の贈与)であると認めることはできないとして、原処分の一部を取り消す裁決を行った。 3 換価の猶予の不許可処分・・・⑧ (1) 事案の概要 本件は、審査請求人が、原処分庁に対し、売上げの減少により納税資金を捻出することが困難であるとして換価の猶予の申請を行ったところ、原処分庁が、請求人は申請に係る国税を一時に納付することができないとは認められないとして不許可処分をし、また、請求人の滞納国税を徴収するため、債権の差押処分をしたのに対し、請求人がこれらを不服として原処分の全部の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 審査請求人は、本件猶予申請において、納付すべき国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあったと認められるか否か。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、国税徴収法第151条の2が規定する換価の猶予の制度は、滞納者につき国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合において、その者が納税について誠実な意思を有すると認められるときは、税務署長が納付を困難とする金額を限度として、その申請に基づき、1年以内の期間に限り、原則毎月の分割納付を条件として、その納付すべき国税につき滞納処分による財産の換価を猶予することができるという制度であり、納税者が個人であるときは、①事業に不要不急の資産を処分するなど事業経営の合理化を行った後においても、なお国税を一時に納付することにより事後の決済資金に不足を生じ、その結果、滞納者がその事業を休止若しくは廃止せざるを得ない又はこれと同等の状態に至るおそれがあると認められる場合、又は②国税を一時に納付することにより、滞納者の必要最小限の生活費程度の収入が確保できなくなると認められる場合のいずれかに該当する場合をいうものと解されるという見解を示した。 そのうえで、国税不服審判所は、換価の猶予が納税者救済のための例外的な制度であることから適用に当たっては、納税者間において不公平が生じることを回避し、税務行政の適正妥当な執行を確保する必要があるため、猶予取扱要領 により、一定の判断基準及び運用方針を定めており、その趣旨に鑑みると、猶予取扱要領の定めが合理性を有するものと認められる場合には、これを当該事案に適用することが不合理であるという特段の事情がない限り、当該定めに従った判断は相当であるというべきであるとして、猶予取扱要領65の定めに基づき、換価の猶予の申請に係る国税の額から、現在納付可能資金額を控除した納付困難な額が算定されるか否かを検討した結果、本件猶予申請においては、納付困難な額が算定されないこと、提出された証拠資料等によっても、審査請求人につき、猶予取扱要領の定める基準を適用することが不合理であるといえる事情もないことから、国税徴収法第151条の2第1項に規定する国税を一時に納付することによりその事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあったとは認められないという判断を示したうえで、審査請求は理由がないから、棄却する裁決を行った。 (了)
《速報解説》 国税庁が「インボイスの取扱いに関するご質問」を6/10付けで更新 ~適格請求書の交付に当たって金銭的負担を求めることの適否など計3問を追加~ 税理士 石川 幸恵 令和7年6月10日、国税庁はホームページ上で「インボイスの取扱いに関するご質問(令和7年6月10日更新)」を掲載し、「適格請求書の交付に当たっての金銭的負担」を含む計3問を公表した。 今回公表された3問は次のとおり。 1 適格請求書の交付に当たっての金銭的負担(問Ⅴ) 適格請求書は書面による交付に代えて電子データで提供することも可能である。書面と電子データのいずれによるかは取引の相手方との関係性を踏まえて事業者が判断することとなる。 問Ⅴでは、電子データによる提供を原則としている場合で、取引先から書面での交付を求められたときに社会通念上相当と認められる程度の手数料を徴収することは差し支えない点を明らかにしている。なお、手数料の徴収にも適格請求書の交付義務が生じることとなる点には留意が必要である。 一方で、取引上の地位に差のある相手に、著しく高額な手数料負担を求めるような場合には、独占禁止法の優越的地位の濫用に該当する恐れがあるので注意されたい。 2 適格請求書の交付に当たっての期間制限(問Ⅵ) 小売業は適格簡易請求書の交付が認められている。顧客からレシートの亡失を理由に再交付を求められたときに、レジシステムの機能上、再交付できないケースの対応が問Ⅵの論点である。 問Ⅵでは既に適格簡易請求書を交付していれば、交付義務は果たされているものとされ、改めて交付する必要はないとしている。一方で、そもそも一度も交付していない場合で、出力可能期間の徒過等により出力できなくなったときは、手書きなど他の手段により交付しなければならない。 問Ⅵでは触れられていないが、再交付を受けられなかった顧客はどうしたらよいのだろうか。再交付を受けられなかった場合、適格簡易請求書の保存要件を満たせないため、原則として仕入税額控除は認められない。ただし、令和11年9月30日までは経過措置により税込1万円未満の課税仕入れについては帳簿の記載のみで、仕入税額控除が可能とされている(インボイスQ&A問111、28年改正法附則53の2、改正令附則24の2①)。この経過措置を受けられるのは一定の規模以下の事業者に限られるため、適用の有無について確認が必要である。 3 プラットフォーム課税の対象となる取引に係る適格請求書等(問Ⅶ) 令和7年4月1日よりプラットフォーム課税がスタートした。以前、下記拙稿にて、プラットフォーム課税が適用される取引に関する適格請求書の交付について言及したが、今回公表された国税庁の問Ⅵにより、特定プラットフォーム事業者により交付されることが確認された。また、電子データによって交付された時の保存についても改めて確認している。 (了) ↓お勧め連載記事↓
2025年6月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.623を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第140回】 「アメリカの税制改正の行方」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 魚住 康博 〇One Big Beautiful Bill Act トランプ政権の関税政策が世界中で話題となっている一方、アメリカの連邦議会で審議が進むOne Big Beautiful Bill Act(OBBBA)の行方にも高い注目が集まっている。 既に5月22日には下院で法案が可決されており、現在、ステージは上院での審議に移っている。法案に含まれる「報復措置」による影響が欧州のみならず日本でも甚大になる恐れがあることから、上院での審議を経た上での上下両院での修正作業がどの程度の期間で完了するのか、内容的にどういった修正が施されるのかなどについて、税制関係者の間で話題になっている。 〇近年の大型税制改正 アメリカでは、第一次トランプ政権とバイデン政権の間に2度の大型税制改正を実施してきた。 前者は、2017年のTax Cuts and Jobs Act(TCJA)である。TCJAでは、1.5兆ドルもの財政赤字を前提とした大型の減税を実施した。例えば、法人税率の35%から21%への引下げや個人所得税の減税、外国子会社の配当免除、過大利子費用控除制限などを行ったほか、国際課税に関してBEAT(Base Erosion and Anti-Abuse Tax)やGILTI(Global Intangible Low Tax Income)、FDII(Foreign Derived Intangible Income)を導入した。 後者は、2022年のInflation Reduction Act(IRA)である。財政支出増と増税・歳入増が均衡した財政中立を前提とした制度改正で、IRAはエネルギーインフラ整備、製造業の競争力向上、気候変動対策強化の実現に予算的な道筋をつけたほか、新型コロナ対策としての財政支出も含んでいた。税制関連では、大企業に対する会計上利益15%の代替ミニマム税の導入や内国歳入庁(IRS)の執行能力の強化、自社株買いにおける市場価格の1%の物品税の課税、気候変動対策に関する大幅な税額控除などが措置された。 今般のOBBBAでは、トランプ大統領が選挙公約として掲げてきた税制改正項目の実現に向けて、議会での調整が進んでいる。 〇議会の勢力図と仕組み 2024年11月に大統領選挙と同時に実施された連邦議会議員選挙の結果、下記【図1】の通りに共和党が連邦議会の上院及び下院ともに多数派となったことを踏まえると、下院を通過した税制改正法案が大幅に覆ることは考え難い。トランプ大統領とベッセント財務長官は、7月4日の独立記念日までの法案成立を期待している。 【図1】2024年に実施された連邦議会議員選挙結果 アメリカの上院における審議において、通常、反対の立場にある少数党は「フィリバスター」と呼ばれる議事妨害行為を実施する。これは、オランダ語の「海賊」に由来する言葉で、法案を阻止するために少数派が際限のない審議を要求して時間稼ぎをすることで、法案を廃案に追い込む牛歩戦術である。 アメリカの連邦議会上院規則において、いかなる上院議員も、他の議員の討論を、その議員の同意無しには中断させることができないと定められ、原則的に議員の発言時間が無制限となっていることを利用し、長時間にわたり討論を続けることで議事進行を意図的に遅延させる行為である。また、上院の法案は会期を越えて審議を行うことができないため、フィリバスターを活用し、会期終了まで審議を引き延ばせば、法案を廃案に追い込むことが可能である。 ただし、それではフィリバスターが際限なく認められることで、議会が機能不全に陥る恐れがあることから、現在は全上院議員の5分の3以上(60議席以上)の賛成を得て「クローチャー(討論終結)」と呼ばれる決議を行えば、議員の発言時間に制限が設けられ、討論を終了させて議決に持ち込むことができる仕組みとなっている。 さらに、予算決議の審議プロセスでは、フィリバスターを回避できる「財政調整措置」が設けられている。これは、本来は財政収支の改善を目的として、財政調整法案に関する審議のスピードを速めるためのものである。そのため、TCJAにおいても同措置を活用して、過半数の支持で減税を成立させるための手段として用いられた。 ここで注意が必要になるのが、財政調整法は予算の対象期間に限定された時限立法であり、予算の対象期間を超えると効力を失う等の制限が設けられていることである。2018年度予算案は、将来10年で1.5兆ドルの財政赤字拡大を許容限度とする一方で、2027年度以降の財政赤字拡大を禁止する前提で成立したのである。その財政収支を実現するために、TCJAには個人所得税減税の2025年末での失効と、2026年以降の法人税増税項目がビルトインされていたことから、このまま何も措置しなければ、近い将来に増税が見込まれることになる。 〇トランプ大統領の選挙公約項目と下院法案の内容 トランプ大統領は選挙公約として法人税、個人所得税、関税について主に次のような項目を掲げて当選した。 OBBBAでは、法人税及び個人所得税について上記項目のほとんどを含んだ形で、合計3.9兆ドルに及ぶ減税規模を見込んでいる。 例えば、国内研究開発費については、納税者の選択により、①即時損金化、②資産化した上で耐用期間(最低5年)による償却、③資産化した上で10年間での償却、のいずれかを、2025年度以降2029年末までに開始する課税年度に支払いあるいは発生した費用に適用するなどの企業の競争力強化に向けた方策が盛り込まれている。国際課税においても、GILTI、FDII、BEATにかかる措置の延長が含まれている。 〇内国歳入法899条の創設 OBBBAの中で最も注目すべきは、内国歳入法899条の創設である。具体的には、「unfair foreign tax(DST、UTPR等)を持つ国(discriminatory foreign country)」の居住者、法人に対する次の追加課税を適用するとしている。 日本が対象国に該当する場合、日本法人を親会社とするグループの米国外法人にも適用があることも懸念される。ただし、下院法案における「discriminatory foreign country」である「unfair foreign taxを持つ国」の定義が不明確であり、立法していることを意味するのか、適用していることを意味するのかによって扱いが異なる可能性もある。 適用時期については、源泉税以外の税率引上げ及びBEAT厳格化では、次のうち最も遅い日より後に開始する「課税年度」から適用するとされている。 日本の場合、UTPRの適用開始が2026年4月1日からとなるため、3月決算日本法人の場合は2027年4月1日からと考えられる。 源泉税率の引上げは、外国法人が適用対象者である期間に開始する「暦年」における支払いから引上げ幅を適用開始するとされている。ただし、当該国がアメリカの財務省が公表するdiscriminatory foreign countryのリストに記載されている場合のみに適用される。 日本の場合、UTPRの適用開始が2026年4月1日からとなるため、2027年1月1日からの支払いより5%の引上げが開始すると考えられる。親子間の配当や利子等について、租税条約で源泉税免税だった場合は0%から50%まで5%ずつ引き上げられると考えられる。 〇今後の動き 今後は上院での審議結果にもよるが、仮に下院法案の微修正に留まる場合には、両院協議会による調整が迅速に進み、7月4日までに上下院で再度修正法案を可決した後にトランプ大統領が署名することで法案が成立する。他方、上院での法案修正の程度によっては、その後の両院協議会による調整が難航し、議会の夏季休暇を挟んで9月まで結論を持ち越す可能性もある。 既にUTPRあるいはDSTの適用を開始している欧州諸国やオーストラリア、韓国などの国々にとっては、こうした「報復措置」が早期に適用される可能性がある。そのため、各国政府による政府間交渉や企業及び業界団体によるロビイングが、ワシントンDCや法案の鍵を握る連邦議員の地元を中心に、積極的に繰り広げられていると考えられる。わが国にとっても、企業のビジネスモデルによって現状で日米間での配当や利子、ロイヤリティの支払いが多く発生している場合など、多大な影響が生じるリスクが高いため、注意が必要である。 (了)
相続税の実務問答 【第108回】 「遺産分割期限の延長が認められるやむを得ない事情」 税理士 梶野 研二 [答] 相続税の申告期限から3年が経過した時において遺産分割がされていない場合であっても、その分割されていないことが一定のやむを得ない事情によるものであるときには、当該申告期限の翌日から2ヶ月以内に税務署長に承認の申請をし、その承認を得ることにより、特例の適用期限の延長が認められます。 しかしながら、質問者の場合には、「やむを得ない事情」があったとは認められませんので、承認申請書を提出したとしても適用期限の延長は認められないものと考えられます。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 未分割の宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用 (1) 申告期限において、宅地等の分割がされていない場合 被相続人又は被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族の居住の用又は事業の用に供されていた宅地等(以下「特例対象宅地等」といいます)であっても、相続税の申告書の提出期限(以下「申告期限」といいます)までに共同相続人又は包括受遺者によって分割されていないものについては、租税特別措置法第69条の4第1項に規定する「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(以下「小規模宅地等の特例」といいます)を適用することはできません(措法69の4④本文)。 ただし、その分割されていない宅地等が、申告期限から3年以内に分割された場合には、その分割された宅地等については、この特例を適用することができます(措法69の4④ただし書)。申告期限において未分割の宅地等について、3年以内に分割し、小規模宅地等の特例を適用しようとする場合には、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておきます(措法69の4⑦、措規23の2⑧六)。 (2) 申告期限から3年以内に宅地等の分割がされていない場合 相続税の申告期限から3年が経過するまでに分割されていない特例対象宅地等については、小規模宅地等の特例を適用することができません。 しかしながら、特例対象宅地等が申告期限から3年を経過するまでに分割されなかったことについて2に掲げる一定のやむを得ない事情があり、納税地の税務署長の承認を受けた場合においては、その特例対象宅地等の分割ができることとなった日から4か月以内に分割がされたときには、その特例対象宅地等について小規模宅地等の特例を適用することができます(措法69の4④ただし書のかっこ)。 2 小規模宅地等の特例の適用期限の延長が認められる一定の事情 (1) 相続税法施行令で定めるやむを得ない事情 上記1の(2)の納税地の税務署長による承認を受けることができるやむを得ない事情とは次の事情をいいます(措令40の2㉓、相令4の2①)。 (2) 税務署長が認めるやむを得ない事情 上記(1)の④に規定する「申告期限の翌日から3年を経過する日までに分割されなかったこと及び当該財産の分割が遅延したことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合」とは、上記(1)の①、②又は③に掲げる場合と同視し得る事情があると認められる場合、すなわち、遺産の範囲や遺言の効力など遺産の前提となる事項について紛争が存在し解決のための法的手続がとられているような場合、遺産の分割に向けた法的手続がとられているような場合又は遺産の分割が法的に不可能な状態にあるような場合と同視し得る事情があると認められる場合をいうものと解することができます(参考裁決:平成24年7月18日裁決(非公表))。 相続税法基本通達では、税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合について、次のような例示をしたうえで、客観的に遺産分割ができないと認められる場合をいうとしています(相基通19の2-15)。 〇【参考裁決】やむを得ない事情が認められなかった事例 (平成24年7月18日裁決(非公表)) 3 ご質問の場合 お母様の相続開始に係る相続税の申告期限から3年を経過する時において、あなたとお姉様との間で遺産分割がされていませんので、申告期限の翌日から3年を経過する日までに遺産分割がされなかったやむを得ない事情について、同日の翌日から2ヶ月以内に税務署長の承認を受けなければ、小規模宅地等の特例を適用することはできません。 あなたの説明だけでは具体的な状況は分かりませんが、感情のもつれが原因で遺産分割の協議を先延ばしにしていたに過ぎないように思われます。そうであるならば、あなた方の場合、上記2の(1)の①、②若しくは③のいずれにも該当しませんし、税務署長がやむを得ない事情として認める事情として上記2の(2)に掲げる例示のいずれにも該当しませんし、そのほか遺産分割ができなかったと認められる客観的な事情はありません。 したがって、承認申請書を提出したとしても、税務署長の承認を受けることはできないと考えられます。 (了)
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第73回】 「外国税額控除権の行使 (地判平25.11.19、高判平26.3.26、最判平26.12.18)(その1)」 ~旧所得税法95条2項、同条6項(平成21年改正前)~ 税理士 水野 正夫 1 事案の概要 本件は、原告が、平成21年分の所得税について、所得税法(平成21年法律第13号による改正前のもの。以下、本稿において同じ。)95条2項に基づき、平成19年分の控除限度額を繰り越して使用することにより外国税額控除をして確定申告をしたところ、税務署長から、原告の平成20年分の確定申告書には同条6項所定の事項(「外国税額控除に関する明細書」や同控除の計算の基礎となる書類等の添付もされていなかった)の記載等がなかったから、平成21年分所得税について、同項に規定する手続要件を満たしておらず、同条2項に基づく外国税額控除をすることはできないとして更正処分等を受けた事案である。 なお、平成20年の確定申告書について、原告は、平成21年5月、平成20年分確定申告書記載の株式譲渡等の繰越損失の適用に誤りがあったとして、修正申告をした。また、原告は、平成22年2月17日、平成20年分の外国所得税額の控除漏れ等を理由として、「外国税額控除に関する明細書」及び同控除の計算の基礎となる書類を添付した上で、平成20年分の所得税に係る更正の請求をした。渋谷税務署長は、平成20年分更正の請求について、平成20年分確定申告書に所得税法95条5項に規定する金額の記載や書類の添付がなかったことから、同条1項の適用は認められないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をし、原告は、同通知処分に対して不服申立てをしていない。 本件の主な争点(※1)は、所得税法95条2項の外国税額控除の適用の前提となる同条6項に規定する手続要件の充足の有無である。 (※1) 所得税法95条7項に規定する「やむを得ない事情」の有無がもう1つの争点となっているが、本稿では紙面の関係上割愛する。 所得税法95条(外国税額控除)2項は、各年において納付することとなる外国所得税の額がその年の控除限度額を超える場合に、その年の前3年以内の各年の控除限度額のうち繰越控除限度額があるときは、その年分の所得税の額から控除する旨を規定している。 これを受けて、同法95条6項は、「第2項及び第3項の規定は、繰越控除限度額又は繰越外国所得税額に係る年のうち最も古い年以後の各年について当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した確定申告書を提出し、かつ、これらの規定の適用を受けようとする年分の確定申告書にこれらの規定による控除を受けるべき金額を記載するとともに、当該申告書に繰越控除限度額又は繰越外国所得税額の計算の基礎となるべき事項を記載した書類その他財務省令で定める書類を添付した場合に限り、適用する。」と規定している。 原告は、平成19年分確定申告書に外国税額控除に関する記載をし、かつ、「外国税額控除に関する明細書」を同申告書に添付して確定申告を行ったものの、平成20年分確定申告書においては、外国税額控除に係る事項を記載せず、当該申告書に明細書の添付もしていなかった。本件処分は、平成21年分の所得税について、所得税法95条6項所定の要件、すなわち、平成20年の外国税額控除に係る控除限度額及び外国所得税の額を記載した確定申告書の提出、を充足しておらず、同条2項に基づく外国税額控除を受けるための要件を欠いているとして行われたものである。 原告は、平成24年10月17日、本件各処分の取消しを求めて本件訴えを提起した。 原告の主張の要旨は、以下の通りである。 本件は、地裁判決で納税者が敗訴し、高裁判決も地裁判決を支持し(※2)、最高裁は納税者による上告を不受理としていることから、本稿では東京地裁判決(以下、「本判決」という)を検討することにする。 (※2) 東京高裁では、地裁判決の判断をそのまま引用する形で判断をし、控訴人の補充主張にのみ判断を下しているが、当該補充主張の判断については紙面の関係上本稿では取り扱わない。 2 判示 (1) 外国税額控除制度の趣旨及び仕組み 我が国の所得税法は、非永住者以外の居住者につき、国内及び国外から生ずる全ての所得について所得税を課するものとしていることから(同法7条1項1号)、当該居住者の国外所得について国外において課税される場合には、我が国の課税との間でいわゆる国際的二重課税の問題が生じるところ、同法は、我が国の国際的競争力の維持発展を図るという政策的要請の下に、国際的二重課税を防止し、海外取引に対する課税の公平と税制の中立性を維持することを目的として、外国所得税の額を一定の限度で我が国の所得税の額から直接控除することを認める外国税額控除の制度(同法95条)を採用したものと解される(下線筆者)。 そして、所得税法は、上記の趣旨、目的を超える控除を制限するため、①居住者が各年において納付することとなる外国所得税につき、その年分の所得税の額のうち国外所得に対応する部分である控除限度額を限度として、その額をその年分の所得税の額から控除することを認めるとともに(同法95条1項、同法施行令222条)、②国外所得の発生時期と外国所得税の納付時期とのずれを一定の範囲で調整するため、各年の外国所得税の額が控除限度額に満たない場合の控除余裕額又は各年の外国所得税の額が控除限度額を超える場合の控除限度超過額につき、翌年以降の繰越使用を3年以内に限り認めている。 (2) 外国税額控除に係る手続要件の趣旨 所得税法95条5項は、同条1項の外国税額控除の規定につき、確定申告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載等がある場合に限り、適用するものと定めているところ、これは、外国税額控除制度において控除限度額が設けられているとともに、控除余裕額又は控除限度超過額の翌年以降の繰越使用が認められていることから、外国税額控除の規定の適用には確定申告の段階で外国税額控除を受けること及びその計算関係等を明示することを要するものとすることによって、税額の計算の安定を確保し、もって租税法律関係の明確化を図る趣旨であると解される(下線筆者)。 また、所得税法95条6項は、控除余裕額又は控除限度超過額の繰越使用による外国税額控除を定める同条2項及び3項の規定につき、所定の事項を記載した確定申告書の提出等がされた場合に限り適用するものと定めているところ、当該繰越使用に係る手続要件についても、上記と同様に、税額の計算の安定を確保し、もって租税法律関係の明確化を図る趣旨のものと解するのが相当である(下線筆者)。 (3) 所得税法95条6項の「各年」の意義 所得税法95条6項は、同条2項の規定は、繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年以後の各年について当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した確定申告書を提出した場合に限り適用するものとしているところ、当該要件は、(1)のとおり同条2項に基づき控除し得る額が前3年以内の各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額のそれぞれに基づいて計算されることを踏まえて、その計算の基礎となる控除限度額及び外国所得税の額を当該各年分の確定申告書に記載する方法で逐次明らかにさせておくとともに、納税者に従前の控除余裕額を翌年以降の繰越使用の対象とする意思があることを各年分の確定申告書上に明らかにさせることよって、税額の計算の安定を確保し、もって租税法律関係の明確化を図ったものと解される(下線筆者)。 そうすると、所得税法95条6項にいう「各年」とは、「繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年」、すなわち、同条2項に基づく控除を受けようとする年の前年以前3年以内であって同法施行令224条1項に基づきその年の控除限度超過額に充てられることとなる国税の控除余裕額の存在する年のうち最も古い年を始まりとして、それ以後同法95条2項に基づく控除を受けようとする年までの各年を意味するものと解すべきである。また、このような解釈は、「各年」につき開始時点以外には明確な限定を付していない同項の文理に照らしても自然なものということができる(下線筆者)。 この点につき、原告は、所得税法95条6項の「各年」とは、文理上、「繰越控除限度額が発生した年」すなわち「国税の控除余裕額が発生した年」を意味し、そのためには、その年において同条5項の要件を満たし、同条1項が適用されることが必要である旨を主張する。 しかし、(1)のとおり、所得税法95条2項に基づき控除余裕額の繰越使用により所得税の額から控除し得る額は、これを受けようとする年の前3年以内の各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額のそれぞれに基づいて計算されるものであって、「繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年」(すなわち、(2)のとおり、同項に基づく控除を受けようとする年の前年以前3年以内であって同法施行令224条1項に基づきその年の控除限度超過額に充てられることとなる国税の控除余裕額の存在する年のうち最も古い年)以後の各年について、その年分の所得税につき同法95条1項の適用がされたか否かにかかわらず、その年の控除限度額又はその年において納付することとなった外国所得税の額は、上記の控除し得る額の計算に影響するものである(同法95条1項の適用がされないが上記の計算に影響する例として、例えば、本件において平成20年分の所得税に関して国外所得が発生していたが、それに対応する外国所得税額の納付時期が平成21年以降となることが予想されるとした場合において、納税者としては、平成21年以降における同法95条2項に基づく従前の控除余裕額の繰越使用を見越して、平成20年分の所得税の確定申告に際して、同年分における控除限度額を記載しておくことが考えられる。)。そうすると、確定申告書に控除限度額及び納付することとなった外国所得税の額を記載すべきであるのは同法95条1項が適用される年に限られる旨の原告の主張は、このような同条2項に基づく控除余裕額の繰越使用により所得税の額から控除し得る額の計算の仕組みに照らし、根拠に乏しいものといわざるを得ない(下線筆者)。 さらに、原告の主張は、所得税法95条6項に規定する「繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年以後の各年について」との文言について、「『繰越控除限度額に係る年のうち』『最も古い年以後の各年』について」というように、「繰越控除限度額に係る年のうち」が直後の「最も古い年」のみならずそれを超えて「各年」まで直接修飾するという解釈をするものと考えられるが、特に文言上の手掛かりがないにもかかわらずこのような解釈を採ることは、文理上困難といわざるを得ない。 もとより、原告の主張のように、所得税法95条1項が適用されずに外国税額控除が行われない年については確定申告書への控除限度額及び外国所得税の額の記載を要求せず、後に同条2項に基づく控除余裕額の繰越使用により控除を受けようとする年に、それ以前の各年に係る控除限度額及び外国所得税の額をまとめて確定申告書に記載することを要求するという手続上の仕組みも、立法政策としては考え得るところである。しかし、所得税法の規定を見ると、(2)のとおり、同法95条に定める外国税額控除に係る手続要件は、税額の計算の安定を確保し、もって租税法律関係の明確化を図る趣旨のものと解されるところであって、そのような趣旨からしても、同条6項の文理からしても、(2)のとおり、同項所定の要件は、同条2項に基づき控除し得る額の計算の基礎となる控除限度額及び外国所得税の額を各年分の確定申告書に記載する方法で逐次明らかにさせておくとともに、納税者に従前の控除余裕額を翌年以降の繰越使用の対象とする意思があることを各年分の確定申告書上に明らかにさせることによって、税額の計算の安定を確保し、もって租税法律関係の明確化を図ったものと解釈するのが合理的であり、本件においても、平成21年分の所得税について同項に基づく控除をするために、平成20年分の所得税の確定申告書(外国税額控除に関する明細書)に、その年分の控除限度額及び外国所得税の額がいずれも0であるような場合も含めてその記載を要求することは意味のないことではない(下線筆者)。 以上のとおりであるから、原告の主張を採用することはできない。 ((その2)へ続く)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第170回】 いわき信用組合 「第三者委員会調査報告書(公表版)(2025年5月30日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【いわき信用組合第三者委員会の概要】 【いわき信用組合の概要】 いわき信用組合は、1948(昭和23)年7月31日設立。設立時の名称は江名町信用組合。 1966(昭和41)年9月、いわき信用組合に名称変更。自己資本22,976百万円、預金残高204,164百万円、貸出残高121,586百万円。組合員数は41,810名で、その出資金は15,864万円である。経常収益は3,495百万円、経常利益は230百万円。 福島県いわき市内に14店舗、福島県双葉郡楢葉町に1店舗を有している。常勤役職員数は185名。本店所在地は福島県いわき市(令和6年3月31日現在)。 会計監査人は、2019年6月まではEY新日本有限責任監査法人、同年7月以降は鈴木和郎公認会計士事務所及び公認会計士鈴木一徳会計事務所。 いわき信用組合が2024(令和6)年11月15日に公表した不祥事は、次の三事案である。 同じ三事案について、いわき信用組合第三者委員会による事実認定は次のとおりである。 【第三者委員会による調査報告書の概要】 1 第三者委員会設置の経緯 2024年9月8日頃から同月30日頃にかけて、ソーシャル・ネットワーキング・サービス「X」(旧 Twitter)上に、「元信用組合職員」を名乗るアカウントから、いわき信用組合が隠蔽してきた不祥事件や不正会計(粉飾決算)について発信していく旨、並びに、三事案の存在をうかがわせる内容の投稿がなされた。同年10月2日に全国信用協同組合連合会(全信組連)仙台支店からいわき信用組合に対して上記投稿がなされている旨の情報提供がなされたため、旧代表理事らへの事実確認等の内部調査を行った結果、同月21日頃までに、三事案がいずれも概ね事実であることが判明した。 上記内部調査結果を踏まえ、いわき信用組合は、東北財務局福島財務事務所に対して不祥事件の届出を行うとともに、当該事案の重大性に鑑み、事実関係の調査、類似事案の有無の調査、原因分析及び再発防止策の検討を行いステークホルダーに対する説明責任を果たすため、2024年11月15日、いわき信用組合と利害関係のない外部専門家のみで構成される第三者委員会を設置し、同日、その旨を公表した。 2 第三者委員会の調査遂行上の問題点 第三者委員会は、調査結果の説明に先んじて、調査を受ける側のいわき信用組合の姿勢について、「組合の対応は、自ら積極的に事実関係を明らかにしようとするものとは真逆であり、意図して全体像を隠そうとしていると疑わざるを得ない」として、具体的には、 が頻繁に繰り返されたことを指摘するとともに、次のような証拠資料の隠滅処分や虚偽説明があったことを指摘している。 3 第三者委員会による調査の結果判明した事実 (1) 甲事案にかかる調査結果の概要 第三者委員会が、時系列に沿ってまとめた調査の結果の一部を引用する。 第三者委員会は、X1社グループへの不正融資により外部に流出した金額を複数の手法で推計して、最少で2,151百万円、最大で2,298百万円であるとした調査結果をまとめているが、これは、いわき信用組合による説明よりも「格段に規模の大きな不正融資」であったことを確認している。また、不正融資の実行には、融資申込書の作成、営業店における稟議書の作成、本部における審査、融資実行後の払出し、金銭の運搬・保管等の手続が必要となることから、不正融資には多数の役職員が関与していたほか、多数の役職員が少なくともその存在を認識し、又は推測していたことも明らかとなったとしている。 さらに調査によって解明できなかった点について、第三者委員会は、不正融資によって捻出した資金のうち、8.5億円から10億円の使途が明確になっていないことを挙げ、X1 社グループとは異なる別の企業・団体に資金提供が行われている可能性や、役員による横領の可能性も排除することはできないとしている。 (2) 乙事案にかかる調査結果の概要 第三者委員会は、調査の結果、Y氏による横領行為の発生期間は少なくとも2010年2月18日から2014年8月25日までのα支店及びβ支店在籍時であり、横領金額は少なくとも1億9,582万8,147円であること、その手口としては、①個人ローンを利用した横領、②預金担保付手形貸付(部店長決裁の融資)を利用した横領、③定期預金の解約・着服による横領があったことが判明したとしている。 また、第三者委員会は、Y氏の動機として、ギャンブルに大きな金額を賭けていく中で自己資金や借入金を費消してしまい、その穴埋めをするため、及び、ギャンブルに使用する新たな原資を得るためであったと認定するとともに、横領の発覚防止等の観点から、融資実行額の一部を既存の横領取引の返済に充てるなどしており、実際の資金の流れは相当複雑であり、横領に係る融資実行額と実際の横領金額(Y氏が費消したと思われる金額)との間には乖離があったことが判明したとしている。 さらに、第三者委員会の調査の結果、Y氏による横領行為は2回にわたっているが、その行為は当時の代表理事らによって隠蔽されたうえで、1回目は役員らの資金提供によって、2回目は本部の手持ち現金を流用した後、無断借名融資の手法を利用して捻出した資金によって穴埋めされ、Y氏自身が何らかの処分を受けることもなかったことが判明しているが、第三者委員会は、「役員らの資金提供による穴埋め」については、役員らの証言を裏付ける資料がなく、各自の提供金額の大きさからしても、自己資金及び親族からの借入によって直ちに容易に準備できるとは言い難いなど、不自然さを指摘している。 (3) 丙事案にかかる調査結果の概要 第三者委員会は、調査の結果、2009年6月に、いわき信用組合職員のZ氏が、支店内の金庫から20万円を横領または窃盗した後、返却したため、当時の支店長の判断において本部報告しなかったものであるといういわき信用組合による報告内容について、概ね事実であると認定したうえで、丙事案は、現在から15年以上前の事案であることに加え、いわき信用組合の一部の役員において当該事案を認識していたにもかかわらず、丙事案の発覚に伴い甲事案も発覚することを恐れ、当局へ丙事案の報告を行わず、報告書等の関係書類も作成していなかったことから、客観証拠としての証憑類が乏しいことを指摘している。 (4) 第三者委員会による調査の到達点 第三者委員会は、調査の結果、乙事案及び丙事案については概ね事実経過を確認することができたと考えられるが、甲事案すなわち不正融資の点については全容が明らかとなったとは言いがたいと評価し、その理由として、不正融資により捻出された金銭の使途として、X1社グループへの提供、乙事案に関する横領の補填、不正融資の利払いという3点では説明のできない約8.5億円から10億円に及ぶ使途不明金の行方が全く明らかとなっていないことを挙げるとともに、X1社グループへの提供額についても、その合計額が約11億円であるという当組合の説明を裏付ける客観資料は確認できず、こうした事実を認定するには至らなかったことを挙げている。 4 不正行為の原因(原因分析)(調査報告書179ページ以下) 第三者委員会は、発生原因の分析を、(1)三事案共通の原因、(2)甲事案、(3)乙事案、(4)丙事案に分類し、これらが生じた原因及びそれが長期間にわたり隠蔽され続けた原因などを分析しているので、これに沿って、分析内容を見ておきたい (1) 三事案共通の原因 第三者委員会が「三事案共通の原因」として挙げた項目を列挙する。 第三者委員会の原因分析では、2004年から理事長を務め、今回の不祥事発覚を機に引責辞任した元会長の江尻次郎氏による「人事権の掌握」を背景としたパワーハラスメントが生み出した「常軌を逸した上意下達の組織風土」という強い言葉が目に付く。 こうした組織風土は当然のように、「内部統制システムの機能不全」につながる。 第三者委員会は、本来、不祥事案を防止し、あるいは早期に発見するために機能すべき部門の構成員が不正行為そのものに関与し、また隠蔽にも積極的であったことから、監督体制が機能することはなかったと評価している。 (2) 甲事案 次いで、第三者委員会は、甲事案に特有の原因として、次の3項目を挙げている。 ここでは、「経営判断の合理性の著しい欠如」という第三者委員会の指摘を見ておきたい。第三者委員会は、X1社グループへの不正融資により当面の窮地を乗り切った上で経営の改善を図ることで、将来的には、正規融資債権及び本件不正融資により生じた債権を回収する旨の構想を立てていたようであるとしたうえで、X1社グループの業況は回復の兆しを見せず、毎月の運転資金にも窮する状況となっていたことから、それに対応するための場当たり的な融資がなされていたというのが実態であり、実現可能性のある事業計画に基づいて計画的な融資が行われていたとは認められないと断じている。実際に、X1社グループへの正規融資の残高は、2003年3月末時点で約47.7億円であったものが、2007年3月末には約53.9億円と増加している中での本件不正融資(迂回融資及び無断借名融資)は、計画性のない先延ばし・延命措置であったと評価されてもやむを得ず、経営判断としての合理性を見出すことは不可能であるという判断を示している。 そのうえで、第三者委員会は、2007年及び2008年頃に多数の無断借名融資を実行するという著しく合理性を欠いた経営判断がなされたことが、その後長期間にわたり多数の役職員を不正融資に関与させるという極めて問題ある事態を生じさせる大きな原因となったものと考えられると締めくくっている。 また、第三者委員会のヒアリングに対し、元会長の江尻次郎氏が、無断借名融資を含む迂回融資の実行について、「組合を守るためには仕方ない」、「いわきの中小企業のため組合が潰れるわけにはいかない」という趣旨の回答をしていることを取り上げ、顧客に直接迷惑をかけないのであれば組合の利益のために不正を働くのはやむを得ないという思想が根付いていたと指摘したうえで、不正融資によりいわき信用組合の資産・財産が流出し、毀損することの不利益という観点が欠如しているし、また、最終的にまさに今般のように不正が発覚した際に当組合の存続に危機が生じるほどの大問題となることは免れないという観点も欠如していると批判するとともに、組織防衛のためなら不正はやむを得ないとする圧力や不正の正当化が甲事案の発生と長期的な隠蔽の原因となっていると評価している。 (3) 乙事案 乙事案について、第三者委員会は、次の3項目を原因として挙げている。 第三者委員会は、いわき信用組合が、甲事案の不正行為をしていなければ、乙事案が発生・隠蔽されることもなかったと指摘した後、「横領発覚後の不適切な対応」として、1回目の横領行為の発覚時点で正当な懲戒処分等がなされていれば、少なくとも更なる横領は行われなかった可能性が高いし、不正行為を詳細に調査公表しておけば、横領可能な管理体制や手続体制を見直すことができたものであり、再度の横領がなされなかった可能性は高いと、いわき信用組合の対応を批判している。 (4) 丙事案 丙事案について、第三者委員会は、次の2点を原因として挙げている。 (5) 外部監査の機能不全 さらに、第三者委員会は、会計監査人による外部監査の問題点についても、6項目にわたって列挙している。 そのうえで、第三者委員会は、適切な会計監査が行われていたか否かを判断する際のポイントとして、次の6項目を挙げている。 なお、第三者委員会は、いわき信用組合において、適切な会計監査が行われていたかどうかについては、コメントしていない。 5 再発防止策の提言(調査報告書196ページ以下) 第三者委員会は、再発防止策を「基本的な考え方」と「具体的な再発防止策」とに分け、以下のように提言しているので確認しておきたい。 (1) 基本的な考え方 (2) 具体的な再発防止策 上記(1)の「基本的な考え方」を踏まえ、第三者委員会は、次のように具体的な再発防止策の提言を行っている。 【調査報告書の特徴】 213ページに及ぶ大部の調査報告書では、第三者委員会の調査に対するいわき信用組合の役員らの非協力的な対応、証拠隠滅行為や虚偽説明などが繰り返し説明されている。第三者委員会の設置を公表したときに当時の理事会会長が引責辞任し、調査報告書公表時には、理事長以下6名の理事と常勤監事1名が引責辞任をして、一応の経営責任を果たしたことになってはいるものの、第三者委員会が調査しきれなかった約10億円とも推定されている使途不明金の行方をどうするのか、本稿執筆時点までに、いわき信用組合はなんら公表をしていない。 いわき信用組合のサイトでは、新理事長である金成茂氏によるあいさつが公表され、「今般の不祥事は、強大な権力による支配によって、組織の正義が捻じ曲げられるように、権力のしたで、事実よりも権力の都合が優先される構造にありました」と原因を分析したうえで、「各人が損得や組織の都合よりも善悪の峻別(判断)を第一に考えられるような コンプライアンス意識を醸成し、対話を通した風通しの良い『コンプライアンスを最優先する組織風土づくり』を最重要課題と位置付け取り組んでまいる所存です」と再発防止に向けた決意を語っているものの、第三者委員会による調査結果については特に言及していない。 1 横領行為に及んだY氏からの資金の回収 第三者委員会の調査の結果、2度の横領行為発覚にもかかわらず、まったく処分されることがないまま2回目の横領発覚の翌年に退職したY氏は、横領の大半については資力の問題から返済はしていないのみならず、いわき信用組合からY氏に対して返済を請求したこともなかったことが判明している。 約2億円という巨額の横領事件にもかかわらず、なんらの処分を受けることもなく、横領した金員については、当時の役員らが資金提供をして、または、無断借名融資によって穴埋めをしていたという事実認定だけでも驚きだが、退職後のY氏について、いわき信用組合の当時の役員は、さらなる支援を行っていたことがわかっている。 乙事案を把握していた当時の役員らは、遅くとも2015年中に、Y氏自身の資力では横領金の返済はほぼ不可能であることから、会社を設立させて不動産関係の事業を行わせて収益を上げさせ、当該収益の中から当組合に横領金を返済させていくという方針を決め、実際に会社を設立したうえで、7,700万円を融資して3棟のアパート経営に当たらせた。 しかし、いわき信用組合が想定していた、不動産経営による収益の中から横領金を返済させるという計画は実現できず、2018年4月に3棟のアパートをすべて売却するとともに、融資金をすべて回収した。 第三者委員会による調査報告書では、Y氏は、いわき信用組合が無断借名融資を行っていることを把握し、その方法を模倣することで横領行為を重ねるに至ったこと、いわき信用組合としても、Y氏の横領行為が発覚すれば、甲事案も連鎖的に発覚しかねないとの懸念から、乙事案を隠蔽していたことが説明されているが、退職後も含め、Y氏に対するこうした処遇が、乙事案の発覚を防ぐことだけを理由として行われてきたとは信じがたいところである。 2 東北財務局による業務改善命令 いわき信用組合は、第三者委員会による調査結果を公表した同じ日に、「当組合に対する業務改善命令について」と題する文書をリリースし、東北財務局から、以下の内容の業務改善命令を受けたことを公表した。 3 役員による経営責任 いわき信用組合は、調査報告書の公表に合わせて、「新たな経営体制には、全国信用協同組合連合会からの新役員招聘とともにガバナンス及び内部管理業務に豊富な経験と知見を持つ外部人材2名を非常勤理事に迎えた新陣容をもって経営管理態勢を刷新してまいります」と説明しており、組合のサイトでは、新理事長である金成茂氏の「あいさつ」を読むことができるが、新しい経営体制はまだ公表されていないようである。 なお、公表されている最新の役員リストである2024(令和6)年7月1日現在の役員については、次のとおり、14名のうち8名が引責辞任をしている。 (了)
〈会計基準等を読むための〉 コトバの探求 【第11回】 「「減価償却」と「正規の減価償却」」 公認会計士 阿部 光成 ◆はじめに 「企業会計原則」は、定額法、定率法等の一定の「減価償却」の方法を規定している(「企業会計原則」第三 貸借対照表原則、五)。 一方、「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第81号)では、「正規の減価償却」という用語が用いられている。 そこで今回は、「正規の・・・減価償却」という用語の意味について取り上げる。 ◆正規の減価償却 前述のとおり、「企業会計原則」は「減価償却」の用語を用いており、その注解20では、固定資産の減価償却の方法として、定額法、定率法等をあげている。 一方、「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書」(1960年(昭和35年)6月 大蔵省企業会計審議会)第三「有形固定資産の減価償却について」では、減価償却は、費用配分の原則に基づいて有形固定資産の取得原価をその耐用期間における各事業年度に配分することであると述べ(第一、一)、「二 減価償却と損益計算」において、次のように、「正規の減価償却」の用語を用いている(下線は筆者による)。 上記の「二 減価償却と損益計算」は、連続意見書の中でも重要な記載であり、特に、「計画的、規則的に実施」と「正規の減価償却」は、ポイントとなる用語と考えられる。 ◆「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」 「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第81号)は、数度の改正を経て現行のようになっている(本稿執筆時点での最終改正は2012(平成24)年2月14日)。 実務指針第81号は、「正規の減価償却」の用語を用いており、その意義を次のように説明している(下線は筆者による)。 減価償却は所定の減価償却方法に従い、計画的、規則的に実施しなければならず、利益に及ぼす影響を顧慮して減価償却費を任意に増減することは許されないことが、連続意見書の精神と解される。 実務指針第81号の改正に際して、「正規の減価償却」の用語を「減価償却」の用語へと改正する機会はあったと思われるが、連続意見書の精神を引き継いでいることを示すためにも、あえて「正規の減価償却」の用語を残したものと考えられる。 (了)
給与計算の質問箱 【第66回】 「育児休業明けの給与計算」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 当社の女性社員A(30歳)は以下の日程で産前産後休業と育児休業を取得し、2025年6月16日から職場復帰しました。 当社の給与計算は末締め翌月25日払いです。上記の場合における女性社員Aの2025年6月分の給与計算についてご教示ください。 A 以下に解説する。 * * 解 説 * * 1 産前産後休業期間、育児休業期間の雇用保険料 免除されないので給与を支給した場合は、雇用保険料を徴収する。 2 産前産後休業期間の社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)の免除 会社は産前産後休業取得者申出書を年金事務所へ提出する。産前産後休業開始月から終了日の翌日の属する月の前月までの社会保険料が免除される。今回のケースにおいては、2024年5月から2024年7月までの社会保険料が免除される。 3 育児休業期間の社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)の免除 会社は育児休業等取得者申出書を年金事務所へ提出する。育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間の社会保険料が免除される。今回のケースにおいては、2024年8月から2025年5月までの社会保険料が免除される。 4 育児休業終了後の社会保険料 上記3のとおり社会保険料が免除されるのは2025年5月までなので、2025年6月分の給与から社会保険料を徴収する。産前産後休業、育児休業前の標準報酬月額にかかる社会保険料を徴収する。 〈具体例:基本給30万円、産休育休前の標準報酬月額30万円の場合〉 〔参考:令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)〕 (※) 協会けんぽホームページより (了)
税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第66回】 「3種類の定期借地権とその特徴」 ~事業用定期借地権の契約面における留意点~ 不動産鑑定士 黒沢 泰 1 はじめに 前回の連載では、定期借地権には一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3つの種類があることを紹介しましたが、それぞれの特徴については誌面の関係上、詳細は割愛させていただきました。 そこで、今回はこれらのポイントを比較するとともに、特に現在活用事例の多い事業用定期借地権について、契約面を中心とした留意点を述べておきます。 2 定期借地権の3種類 3種類の定期借地権につき、その概要を要約したものが〈資料〉です。 〈資料〉 定期借地権の種類 ここで留意すべき点は、以下のとおりです。 上記留意点のうち、①および②の書面に関する取扱いを確認する意味で、以下に借地借家法第22条および第23条の規定を掲げておきます(下線は筆者によります)。 これらの条文を対比させてみれば、次のとおり相違点があることが明確となります。 3 事業用定期借地権の地代についての留意点 前回も簡単に述べましたが、事業用定期借地権設定契約に関し、借地権者の事業収益との関連からその負担力に見合った地代が設定されている場合には、当該地域の標準的な地代水準よりも相対的に高く、なかには従来から供給されてきた普通借地権の利回りに比べて著しく高いものも見受けられます。 このようなケースにおいては、高い利回りの地代が将来にわたって継続するか否かの分析や借主からの解約申入れの可否、その際の違約金条項等についての確認が必要となります。 不動産鑑定士が事業用定期借地権の地代について意見を求められた場合、近隣水準との比較だけでなく、相対的に高い水準となっている場合には将来にわたりそれが維持される可能性についての検討も必要となってきます。 もちろん、将来のリスクを予測することは容易ではありませんが、契約上、リスクを回避する手段が講じられているか否かによってもアドバイスの内容も異なってくるものと考えられます。 (了)