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〔まとめて確認〕会計情報の四半期速報解説 【2025年10月】第2四半期決算(2025年9月30日)

〔まとめて確認〕 会計情報の四半期速報解説 【2025年10月】 第2四半期決算(2025年9月30日)   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 3月決算会社を想定し、第2四半期(中間期)決算(2025年9月30日)に関連する速報解説のポイントについて、基本的に2025年7月1日から9月30日までに公開した速報解説を対象としている。 公開草案及び適用時期が将来のものは、基本的に記載の対象外としている。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 なお、月ごとの速報解説のポイントについては、下記の連載を参照されたい。   Ⅱ 会計関係 次のものが公表されている。 〇 修正「中小企業の会計に関する指針」 (内容:項番号の修正や関係法令の更新等に伴う所要の変更を行うもの。「会計参与の行動指針」も改正されている)   Ⅲ 金融商品取引法関係 次のものが公布されている。 〇 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第75号) (内容:「金融商品会計に関する実務指針」(改正移管指針第9号)、「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)等の修正を公表したこと等を受けもの)   Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「2025年度品質管理レビュー方針」 (内容:品質管理レビューの方針を示すもの) ②「2024年度 品質管理レビュー事例解説集Ⅰ部・Ⅱ部」 (内容:品質管理レビューの方針(内容:固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性、棚卸資産の評価などについての改善勧告事項について解説している) ③ 監査事務所検査結果事例集(令和7事務年度版) (内容:公認会計士・監査審査会による監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたもの) ④ 中小事務所等施策調査会研究報告第10号「第1四半期又は第3四半期の四半期決算短信に含まれる四半期連結財務諸表等に関する表示のチェックリスト」の改正 (内容:2025年6月30日時点で施行されている法令や会計基準等に対応して改正)   Ⅴ 監査役等の監査関係 監査役等の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 〇 「会計監査人非設置会社の監査役の会計監査マニュアル(第3版)」 (内容:前回の改定以降の環境変化に即するように記載内容を改定)   Ⅵ 過年度に公表されている会計基準等 過年度に公表されている会計基準等のうち、2025年4月1日以後に適用されるもの(早期適用を含む)として、次の会計基準等がある。 ① 「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)等 (内容:グローバル・ミニマム課税について、法人税及び地方法人税の会計処理及び開示の取扱いを示すもの。補足文書がある。2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(実務対応報告第46号14項)。ただし、実務対応報告第46号13項の四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記の定めについては、実務対応報告第46号14項の定めにかかわらず、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(実務対応報告第46号15項)) ② 2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正 (内容:包括利益の表示、特別法人事業税及び種類株式の取扱いについて改正するもの。早期適用の可否については、各会計基準等をお読みいただきたい。改正包括利益会計基準及び改正株主資本適用指針は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度の期首から適用する。改正法人税等会計基準及び改正税効果適用指針は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。改正「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第10号)は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後取得する種類株式について適用する) ③ 改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」 (内容:ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価評価に関するもの。2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる) ④ 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等 (内容:借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上するリースに関する会計基準。2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる) (了)

#No. 640(掲載号)
#阿部 光成
2025/10/16

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第70回】「定期建物賃貸借契約の基本的な仕組みと不動産鑑定の関わり(その3)」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第70回】 「定期建物賃貸借契約の基本的な仕組みと不動産鑑定の関わり(その3)」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 今回も、前回に引き続き、鑑定評価という側面から定期建物賃貸借契約の仕組みについて取り上げ、不動産の経済価値を求める際に留意が必要となる賃料増減請求権との関連について述べてみたいと思います。   2 賃料増減請求権に対する普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約との相違 建物(敷地も含みます)を賃貸中の状態で、これを所与として行う鑑定評価(貸家及びその敷地の鑑定評価)の場合、価格の試算の基になるのは純収益ですが、その捉え方は普通建物賃貸借契約であるか、定期建物賃貸借契約であるかにより大きく異なることは前回述べたとおりです。すなわち、普通建物賃貸借契約の場合は、更新を繰り返すことにより純収益を長期間にわたる継続的なものとして捉えるのに対し、定期建物賃貸借契約の場合は、更新がなく一定期間経過後に建物(敷地も含みます)が確実に貸主に返還されることを前提に、純収益を有限のもの(短期的なもの)として捉えるということです。これは、主に期間という面を意識して純収益の継続性を推し測っているといえます。 しかし、純収益の継続性を推し測るためにはもう1つの側面(将来における賃料増減額請求との関連)からの検討が必要であり、そのためには、これに関し建物賃貸借契約にどのような定めが置かれているかの確認が不可欠といえます。 (1) 普通建物賃貸借契約の場合 普通建物賃貸借契約の場合、契約書の中に、例えば「賃料は2年ごとに○%ずつ増額する」というような特約が付されていたとしても、契約期間の途中で近隣相場が大幅に下落した結果、従前の賃料が不相当となったという場合には、借地借家法第32条に定める賃料減額請求が認められるケースがあります(ここに例示したものは減額のケースですが、特約が付されていなくても、近隣相場が著しく上昇した結果、従前の賃料が不相当となったという場合には増額請求が認められる可能性もあります)。 〇借地借家法 (※1) 筆者注。このような特約は、借主に有利な特約として有効とされます。 このように、普通建物賃貸借契約の場合、未来永劫に現時点での純収益が継続するという保証はありませんが、鑑定評価を行う際には、その分のリスク(不確実性)を収益還元法適用に当たり還元利回りに反映させるなど、不動産鑑定士としても留意を払っています。 (2) 定期建物賃貸借契約の場合 これに対して、定期建物賃貸借契約の場合、借地借家法第32条(借賃増減請求権)の規定を排除する特約を設けることも認められますが、その根拠は以下の条文から読み取ることができます。 〇借地借家法 (※2) 筆者注。第1項の規定とは、定期建物賃貸借に関する規定を指します。 定期建物賃貸借契約においても、当事者間で増減額請求に関する特約を設けない限り、貸主あるいは借主からの請求は認められますが、このような特約を設けた場合は、第38条第9項に基づき特約がそのまま有効とされる点に留意が必要です。例えば、「契約期間中は家賃を定額とし、貸主からの増額請求または借主からの減額請求は行わない。」というようなものです。この点が、普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約との大きな相違点といえます。   3 まとめ 鑑定評価の対象となる物件に定期建物賃貸借契約が付されている場合、今後の契約期間における純収益の変動を予測するに当たり、賃料増減額請求に関する規定の有無は少なからず影響を及ぼすといえます。 (了)

#No. 640(掲載号)
#黒沢 泰
2025/10/16

《税理士のための》登記情報分析術 【第29回】「抵当権設定登記について」

《税理士のための》 登記情報分析術 【第29回】 「抵当権設定登記について」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   司法書士として業務を行うなかで、「顧問先で債権の焦げ付きが発生しそうになっており、保全の相談を受けている。どのようにすればよいか。」という趣旨の相談が税理士から寄せられることがある。債権保全の有効な方法の1つが不動産に対する抵当権の設定である。 本稿では、債権保全の場面で税理士が円滑に司法書士や弁護士と連携するために必要な抵当権の知識について解説する。   1 抵当権とは 抵当権とは、特定の貸金債権などを担保するために不動産に設定される担保権であり、住宅ローンにおいてよく利用される。抵当権は登記記録の乙区に登記されることになる。 【抵当権設定登記の登記記録例】 抵当権によって保全可能な債権は、貸金債権に限られず商取引で生じた売掛債権なども対象とすることができる。   2 抵当権の対象とすることができる不動産とは 抵当権の設定の対象とすることができる不動産は、債務者が所有している不動産に限らず、第三者が所有している不動産を対象とすることもできる(物上保証)。そのため債務者が会社である場合は、社長や役員が個人で所有する不動産も対象とすることができるため、調査を行うとよいだろう。 【物上保証のイメージ】   3 抵当権設定登記の流れ 商取引における売掛債権を保全するために抵当権を設定する場合の流れは次のとおりである。 商取引における売掛債権を保全する場合、債権の金額や返済条件を改めて合意するために「債務承認契約」や「準消費貸借契約」を締結したうえで、「抵当権設定契約」を締結することが多い。当事者で合意が整えられない場合は、弁護士に交渉や契約書の作成を依頼するとスムーズであろう。契約書の締結が終わったら司法書士が抵当権者と抵当権設定者の本人確認・意思確認を行い、登記に必要となる書類等を取り付け、登記申請をする。 抵当権設定登記に必要となる書類等は次のとおりである。 このほか抵当権設定登記には債権金額の0.4%の登録免許税と司法書士の報酬(8万~15万円程度)が必要となる。これらの費用の負担者は債務者や抵当権設定者になることが多いが、費用が捻出できない場合にはやむを得ず債権者が負担する場合もある。   4 速やかな対応が鍵 債権保全は速やかに行わなければ他の債権者に先を越されてしまう可能性がある。抵当権の設定登記も1番最初に登記をしなければ、不動産の競売代金から配当を受けられず抵当権設定登記に要した費用が無駄になってしまう可能性がある。顧客から相談が寄せられた場合は、できるだけ早く司法書士や弁護士と連携するとよいだろう。 【「債務承認契約」を登記原因とする抵当権設定登記の登記記録例】   (了)

#No. 640(掲載号)
#北詰 健太郎
2025/10/16

《顧問先にも教えたくなる!》資産づくりの基礎知識 【第28回】「証券会社の新しい認知症対策「家族サポート証券口座」とは」

《顧問先にも教えたくなる!》 資産づくりの基礎知識 【第28回】 「証券会社の新しい認知症対策「家族サポート証券口座」とは」   株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事 日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(CFP®) 山中 伸枝   「家族サポート証券口座」という新しい仕組みが、日本証券業協会によって創設されました。認知症対策の一環として注目されるこの制度ですが、どのような内容なのでしょうか。今回は、認知症に伴う金融資産凍結のリスクと、その備え方について考えていきます。   〇認知症と金融資産凍結のリスク 超高齢社会を迎えた今、私たち一人ひとりにとって「認知症」への理解と備えは欠かせません。認知症とは、様々な病気によって脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、記憶や判断力などの認知機能が衰えることで、日常生活に支障をきたす状態をいいます。 厚生労働省研究班の推計(政府広報オンライン 2025年1月16日)によれば、2022年度時点で65歳以上のうち約12%が認知症、約16%がその前段階とされる軽度認知障害(MCI)とされています。つまり、およそ3人に1人が認知機能の低下に関わる症状を有している計算です。 認知症になると、本人の判断能力が不十分とみなされ、各種の契約行為が制限されます。 例えば銀行の場合、預金の引き出しや解約などができなくなる「口座凍結」が起こることがあります。 これは本人の財産を不正利用や誤判断から守るための人権擁護措置として行われますが、同時に生活資金が引き出せないなどの問題も生じます。   〇銀行における既存の対応策 こうした場合、法定後見制度を利用して家庭裁判所が選任した後見人が手続きを行うことになりますが、申立てから開始までには一定の時間がかかります。そのため、事前に備えることが重要です。 比較的簡易な生活費の出し入れが中心であれば、銀行の代理人制度を活用する方法があります。これは、本人の判断能力があるうちに信頼できる家族を代理人として届け出るもので、代理人は預金の引き出しなどを代行できます。 より広い範囲の契約行為を想定する場合には、任意後見制度を利用して、信頼できる人に将来的な財産管理を委ねる方法も有効です。   〇証券会社における課題と新制度の誕生 一方、証券会社ではこれまで銀行のような代理人制度がなく、取引は原則として本人のみが行える仕組みでした。そのため、本人に判断能力の低下が見られると、売却も解約もできず「資産はあるのに動かせない」という問題が指摘されていました。 こうした課題に対応するため、日本証券業協会は2024年9月に「家族サポート証券口座」の制度枠組みを整備しました。これは新しい法律に基づく制度ではなく、民法上の任意代理契約(委任契約)を活用した自主ルールです。   〇家族サポート証券口座の仕組み 仕組みとしては、証券口座を持つ本人が信頼できる家族などと公正証書で委任契約を結び、その契約内容を証券会社に届け出ることで、本人の判断能力が低下した後でも代理人が一定の取引を継続できるようにするものです。 現時点では、生活費の確保などを目的とした売却・換金が中心であり、新規の株式買付けなどリスクを伴う取引は対象外とされていますが、制度としては大きな一歩といえるでしょう。   〇制度の課題と留意点 ただし、現段階でこの制度を導入している証券会社はごく一部に限られ、利用の詳細は各社によって異なります。また、売却資金の振込先は本人名義の銀行口座となるため、その銀行口座が凍結されていれば事実上資金が使えないという課題も残ります。 さらに、後見制度と異なり家庭裁判所などの監督が入らないため、代理人による不正利用防止の仕組みについても今後の検討課題と考えます。   〇総合的な備えの重要性 長生きの時代には、資産を「運用しながら取り崩す」こと、すなわち資産寿命を延ばす工夫が欠かせません。 認知症になった後の資産凍結リスクに備えるためには、 といった複数の選択肢を、家族や専門家と相談しながら組み合わせるのが理想です。 筆者は、元気なうちにお金の「使い方」「託し方」を考える時期を「ライフプランのお看取り期」と呼んでいます。人生の締めくくりを見据えた資産の活かし方を、今から少しずつ準備していくことが何よりも大切です。   〇まとめ 家族サポート証券口座は、これまでの金融実務では難しかった「判断能力低下後の資産活用」を可能にする新しい試みです。ただし、導入状況や内容は証券会社ごとに異なるため、利用を検討する際は必ず各社の最新情報や公証人への確認を行いましょう。 そして何より、制度を使うことが目的ではなく、自分と家族に合った安心のかたちをつくることこそが本質だといえます。 (了)

#No. 640(掲載号)
#山中 伸枝
2025/10/16

《編集部レポート》 第51回日税連公開研究討論会が横浜で開催される

《編集部レポート》 第51回日税連公開研究討論会が横浜で開催される Profession Journal 編集部   2025年10月10日(金)、日本税理士会連合会(太田直樹会長)は、第51回日税連公開研究討論会を横浜で開催した。 本年も会場での開催と同時にライブ配信も行うことで、遠方からも視聴可能なハイブリッド形式となった。 公開研究討論会は、税理士による研究成果の発表、討論の過程を通じて、税制・税務行政及び税理士業務の改善・進歩並びに税理士の資質の向上を図るとともに、本会が行う研修事業に資することを目的として実施する、との理念の下、毎年開催されているもの。 第51回となる今回は、東京地方税理士会、千葉県税理士会、関東信越税理士会の合同開催となった。 まず東京地方税理士会が担当した第1部「デジタル化社会における税理士の役割と納税者の権利利益の保護」では、AI技術がさらに発達した2050年の架空の社会と税務行政から見た、現在の税務行政におけるデジタル化の問題点や税理士業務のあり方、納税者権利保護の重要性について発表が行われた。 次に千葉県税理士会による第2部「多様性と税」では①「働き方の多様性」としてプラットフォームワーカーの所得区分に関し実態を反映した税制への提言、②「地域の多様性」として離島から見る財政と税制を取り上げ、平塚市の取組み(波力発電)を例に企業版ふるさと納税の役割を紹介、③「家族の多様性」として家族・婚姻制度の多様化と税制を取り上げ人的控除のあり方について、それぞれ発表が行われた。 第3部の関東信越税理士会による「成熟国家における公平な税制とは」では“灼熱教室”と題し、著名な5名の哲学者・経済学者それぞれの思考から見た公平な税制について「金持ち課税と貧困救済」、さらに「消費税は公平な税といえるのか?」へと議論が展開された。 研究発表後は望月爾立命館大学法学部教授、早川眞一郎東京大学名誉教授、中里実東京大学名誉教授より、それぞれ講評がなされた。 当日は全国から税理士が集い、研究発表の成果へ熱心に耳を傾け、来賓として黒岩祐治神奈川県知事、小宮敦史東京国税局長が来場、祝辞を述べられた。 (東京地方会の発表の様子) (千葉県会の発表の様子) (関東信越会の発表の様子) (了)

#No. 640(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2025/10/16

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(令和7年1月~3月)」~注目事例の紹介~

《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和7年1月~3月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、2025(令和7)年9月30日、「令和7年1月から3月までの裁決事例の追加等」を公表した。追加で公表された裁決は表のとおり、国税徴収法関係及び所得税法関係が各2件、国税通則法関係及び登録免許税法関係が各1件で、合計6件となっている。公表された裁決は、2件が「一部取消し」で、他は棄却となっており、前回と同じく、「全部取消し」となった事例はない。 【表:公表裁決事例令和7年1月から3月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された6件の裁決事例のうち、相続税が期限後申告となったことについて正当な理由と認めなかった事例(①)、事業所得の金額の計算上、消費税の必要経費算入次期が争点となった事例(②)及び債権の差押えの適法性が争われた事例(⑥)について、国税不服審判所の判断内容を概説したい。 なお、複数の争点がある裁決については、下記の概要の中で、その一部を割愛して、中心的な争点のみについて絞らせていただいたことを、あらかじめお断りしておく。   1 相続税の期限内申告書が申告期限までに提出できなったことについて「正当な理由」があると認めなかった事例・・・① (1) 事案の概要 本件は、歯科医を開業していた被相続人の医院で約20年間働いていた審査請求人が、被相続人から死因贈与により預金を取得したが、相続税の申告にあたり、相続人らの協力が得られず、被相続人に係る遺産の総額がわからないことを理由に相続税の期限内申告書を提出していなかったが、原処分庁の職員による調査を受けて相続税の期限後申告書を提出したところ、原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、審査請求人が、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるとして、当該賦課決定処分の全部の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 請求人が法定申告期限までに本件相続税の申告書を提出しなかったことにつき、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるか否か。 (3) 国税不服審判所の判断 「正当な理由があると認められる場合」とは、通常の納税者を基準として、納税者が相続税を申告することが期待できず、法定申告期限内に相続税の申告をしなかったことが真にやむを得ない事情のある場合に限られるものとの解釈を示したうえで、やむを得ない事情には、請求人において、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかった事実が認められる場合をいうとの判断を示した。 そのうえで、審査請求人は、死因贈与により取得した預金について、相続人から返還を求める内容証明郵便を受け取ったことにより、法定相続人が2名であり、被相続人の遺産に係る基礎控除額は4,200万円であることを把握していたこと、また、審査請求人は、被相続人が多くの貯蓄を有し、被相続人が開業していた歯科医院の建物及びその敷地である土地が被相続人の所有である可能性を認識できたと推認できることなどを理由に、被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えると認識できたと認められることから、通常の納税者を基準として、審査請求人において、被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったとは認められないとして、請求人が法定申告期限までに本件申告書を提出しなかったことにつき、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとはいえないと結論づけて、審査請求は理由がないから棄却するという裁決を行った。   2 納付すべき消費税等の額は、修正申告書を提出した日の属する年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入すると認定した事例・・・② (1) 事案の概要 本件は、コンクリート建造物の建設に使用する型枠の製造卸売業を営む個人事業者である審査請求人が、消費税等の修正申告により新たに納付すべきこととなった消費税等の額を、当該修正申告に係る課税期間と同一年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入して所得税等の修正申告書を提出したところ、原処分庁が、その年において債務の確定しないものは必要経費に算入すべき金額から除かれており、当該年分の必要経費には算入されないとして、所得税等の各更正処分をしたのに対し、審査請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 令和2年分及び令和3年分の修正申告により納付すべき消費税額は、それぞれの年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入できるか否か。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、所得税法第37条第1項について、必要経費に算入すべき費用の範囲及びその費用の額をどの段階で控除するかという課税上の年分帰属について、その通則を規定したものであり、費用の計上時期については、償却費を除き、その債務の確定の日をもってその計上時期としており、いわゆる債務確定主義を採用しているものと解されるとし、また、本件個別通達(下記【参考】参照)では、税込経理方式による経理処理を行う個人事業者の納付すべき消費税等について、納税申告書に記載された税額は、当該納税申告書が提出された日の属する年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入する旨定めており、必要経費に算入することができる費用について、その年において債務が確定したものでなければならないという所得税法第37条第1項の規定と整合するものであり、相当と認められるという判断を示した。 そのうえで、本件については、審査請求人は、令和5年12月19日に消費税等の各修正申告書を提出したのであるから、これによって各消費税額について納付すべきことが具体的に確定したといえることから、請求人の事業所得の金額の計算上、各消費税額を必要経費に算入すべき時期は、各修正申告書を提出した日の属する令和5年分となり、各消費税額は、各課税期間と同一年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできないとして、原処分はいずれも適法であり、審査請求は理由がないから、棄却するという裁決を行った。 【参考】 本件個別通達   3 第三者名義の債権に係る差押財産の帰属の認定・・・⑥ (1) 事案の概要 本件は、原処分庁が、審査請求人の滞納国税を徴収するため、債権の差押処分をしたのに対し、審査請求人が、当該債権は第三者に帰属するとして、当該差押処分の全部の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 原処分庁による差押処分が適法であるか否か。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、まず、審査請求人による本件審査請求の適法性について、差押処分等の国税に関する処分に対し不服申立てができる者は、その処分の取消しを求めることに法律上の利益を有する者、つまり、処分によって直接自己の権利を侵害された者でなければならないが、審査請求人は、差押処分の名宛人であり、差押処分により、その法律上の効果を受ける者であるから、差押処分の取消しを求めることができることは明らかであり、審査請求人には、不服申立適格及び請求の利益が認められ、ほかに審査請求人による再調査請求が不適法であるとする事情は認められないため、再調査請求は適法であることから、本件審査請求も適法であるという判断を示した。 次に、国税不服審判所は、審査請求人に対する差押処分の適法性について、請求人が滞納国税について、それぞれ督促状が発せられた日から起算して10日を経過した日までに完納しなかったのであるから、差押処分は、国税徴収法第47条第1項柱書及び同項第1号所定の要件を充足しているという判断を示した。 そのうえで、審査請求人による、差押処分時には、債権が第三者に帰属しているから、差押処分は無効であるという主張に対しては、仮に審査請求人の主張の事実が存在したとしても、差押処分によって不利益を受けるのは当該第三者であり、審査請求人ではないから、審査請求人がこうした事実を違法事由として主張することは、自己の法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由とするものであるとして、審査請求人の主張は、審査請求の理由として取消しを求めることができないものであるから、審査請求人の主張には理由がないとして、これを斥ける判断を示したうえで、審査請求には理由がないから、棄却するという裁決を行った。 (了)

#米澤 勝
2025/10/14

プロフェッションジャーナル No.639が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年10月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.639を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/10/09

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第59回】「〔第5表〕子法人から親法人に配当を行った場合の株式の価額の計算上の留意点」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第59回】 「〔第5表〕子法人から親法人に配当を行った場合の 株式の価額の計算上の留意点」   税理士 柴田 健次   Q 経営者甲はA社株式を100%所有しており、令和7年9月25日に甲の長男に株式の贈与を行っています。下記の通りB社及びC社はA社の完全子会社となります。 上記3社の決算月、発行済株式総数、直前期末以前2年間における1株当たりの配当金額は、下記の通りです。 (※1) A社の会社の規模区分は、中会社の中であり株式等保有特定会社に該当します。  A社はこれまで配当を行ったことはありません。 (※2) B社の会社の規模区分は、中会社の大であり特定の評価会社には該当しません。  B社の1株当たりの額面は50,000円で、赤字でない限り、毎期、額面の5%に相当する配当(1株当たりの配当2,500円)を実施しています。直前事業年度においては、A社が土地を購入するための原資として行った配当(500,000円)が含まれています。  なお、直前期末から課税時期までの間に行った配当(1株当たりの配当402,500円、配当効力発生日:令和7年5月25日)のうち400,000円はA社の資金繰りを考慮し実施したものです。 (※3) C社の会社の規模区分は、大会社となります。  C社の1株当たりの額面は50,000円で、赤字でない限り、毎期、額面の4%に相当する配当(2,000円)を実施していましたが、コロナの影響により令和2年から現在に至るまで赤字となっており、配当は前々事業年度まで行っておらず、比準要素数1の会社に該当していました。直前期の配当を行うことで比準要素数1の会社に該当せず、類似業種比準価額で計算ができるとの会計事務所のアドバイスを受け、直前事業年度のみ配当を行っています。  なお、直前期末から課税時期までの間に配当は行っていません。 上記の場合において、A社、B社及びC社の株式価額の算定上、配当金額に係る株式価額の影響について教えてください。 なお、純資産価額の計算においては、直前期末方式(直前期末の資産及び負債の帳簿価額に基づき評価する方式)により計算するものとします。 A 会社ごとに配当金の取扱いと株式価額への影響をまとめると下記の通りとなります。  ◆  ◆  ◆ 1 直前期末以前2年間における配当金額について 直前期末以前2年間における配当金額とは、直前期末以前2年間に配当金交付の効力が発生した剰余金の配当(資本金等の額の減少によるものを除く)をいいます。ここでいう配当金交付の効力の発生とは、株主総会の決議により剰余金の配当が確定したものをいいます。事業年度の変更がある場合や事業年度が1年未満である場合も含めて、すべて直前期末時点を起算として、2年間の間に配当金交付の効力が発生した剰余金を基に計算することになります。 また、配当金は毎期継続的に発生するものを対象とするため、特別配当や記念配当等は除きます。特別配当とは、会社の業績や財務状況により余剰資金が生じた場合などに通常の配当額に追加して行う臨時的な配当をいいますが、例えば、資産売却益による特別配当等が該当します。記念配当とは、会社において創業〇〇年など特別な出来事があったことを記念して、通常の配当額に上乗せして支給される配当をいいます。 非上場株式の評価においては、財産評価基本通達183(1)において、特別配当や記念配当等の将来毎期継続することが予想できない配当金額が除かれていますが、特別配当及び記念配当等の意義や範囲については、明らかにされていません。 平成16年3月23日の裁決(TAINSコード:J67-4-33)では、合併した際の記念配当が特別配当であるか否かが争点となっており、納税者は特別配当と主張し、課税当局は特別配当には該当しないと主張しましたが、国税不服審判所は、特別配当であると認定しました。 国税不服審判所における認定事実は、下記の通りとなります。 そして、国税不服審判所においては、1株当たりの配当金額を直前期末以前2年間の平均配当金額によることとしている趣旨及び異常配当を除外している趣旨について、下記の通り説明し、合併した際の記念配当が特別配当であると認定しています。   (下線部は筆者による) 【本問への当てはめ】 直前事業年度のB社の配当について B社の直前事業年度においてA社が土地を購入するための原資として行った配当(1株当たりの配当500,000円)があり、これは、毎期継続的に行われるものではなく、臨時的に行われるものと考えられるため、異常要素となる特別配当として除外することが相当になります。   2 比準要素数1の会社に該当しないために行う配当の取扱い 比準要素数1の会社とは、第4表で直前期末を基準に計算した「1株当たりの年配当金額(第4表の(B1)の金額)」「1株当たりの年利益金額(第4表の(C1)の金額)」及び「1株当たりの純資産価額(第4表の(D1)の金額)」のうちいずれか2の判定要素が0であり、かつ、直前々期末を基準にして計算した「1株当たりの年配当金額(第4表の(B2)の金額)」「1株当たりの年利益金額(第4表の(C2)の金額)」及び「1株当たりの純資産価額(第4表の(D2)の金額)」のうちいずれか2以上の判定要素が0であるものをいいます。 比準要素数1の会社に該当する場合には、類似業種比準価額の使用割合は25%に制限されることになり、類似業種比準価額<純資産価額である評価会社については、株式の価額が高くなります。 直前期末以前3年間が赤字であり、かつ、純資産価額がマイナスの場合には、比準要素数1の会社に該当しますが、配当を行うことにより、この比準要素数1の会社を免れることになります。配当は、毎期、継続的に行っている場合には、1株当たりの配当金額に含めて計算を行うことになりますが、この比準要素数1の会社を免れるためだけに配当を行った場合には、1株当たりの配当金額に含めて計算して問題ないかを慎重に検討する必要があります。 令和6年3月25日の裁決事例(TAINSコード:J134-4-07)は、比準要素数1の会社を免れるために、会社の事業年度の変更及び剰余金の配当を行い、相続税の負担を著しく軽減したとして財産評価基本通達6項(以下「総則6項」)が適用された事案となります。相続開始前における時系列は、下記の通りです。 【相続開始前における時系列】 本事例においては、納税者が平成29年3月1日に銀行と打合せを行った際に相続開始があった場合の影響について指摘を受け、税理士法人の紹介を受け、相続対策を実行した事案となります。その相続対策として、平成29年5月1日に配当金を出し、事業年度を変更したことが証拠資料から明らかになっています。 また、当該税理士法人から上記の相続対策の実行の効果として、10億円程度、株式の価額の引き下げ効果がある一方で株価引下げを目的とした決算期変更とみなされ否認される可能性もあることの説明がなされ、それを承知の上で、チャレンジすることを承認して実行したとされています。 国税不服審判所は、租税負担の軽減の意図について下記の通り判断しています。 (※) 下線部は筆者加筆 上記の裁決事例においては、当初申告においては、株式の価額は約21億円で評価されており、仮に配当等の行為がなく比準要素数1の会社として評価した場合には、約34億円と評価されていた事案となります。これに対して、課税当局は鑑定評価額を基礎資料として、約40億円の株式評価額として更正処分をしています。 総則6項が適用された場合には、相続税法22条の時価以下の金額で合理的な方法で評価することが容認されており、相続対策をしたが故に想定外の課税処分があることには注意が必要となります。 なお、配当を行い、比準要素数1の会社に該当しなくなったことと総則6項の適用関係については、今後注視されることになろうかと思料されます。本問のように、相続開始の直前において、相続対策のために行う配当及び事業年度の変更については、総則6項の適用対象になる可能性が高いといえます。しかしながら、事業承継に伴い、従業員や役員にも株式を持たせることを契機として、配当を行い比準要素数1の会社に該当しなくなった等の場合には、相続税の負担を免れる意図との因果関係は低く、総則6項は適用されるべきではないと考えられます。 そもそも直前の配当の有無で容易に株式の価額が大きく変動する財産評価基本通達のあり方についても見直しが必要になるかと考えられます。相続税法22条における時価と財産評価基本通達が乖離する要因として、一般的に類似業種比準価額が純資産価額と比べて極めて低くなっていることが考えられ、類似業種比準価額の使用割合や評価方法について見直しが必要になると思料されます。 【本問への当てはめ】直前事業年度におけるC社の配当について 本問の場合には、C社が行った配当についてどのように取り扱うかが問題となります。直前事業年度に行った配当を配当金額に含めることにより比準要素数1の会社を免れることになりますが、その一方で、配当を行ったことが相続税の負担を免れるものと認められた場合には、総則6項の適用となり、比準要素数1の会社で評価した金額以上の金額で課税されるリスクがあるといえます。そもそも、C社は、これまで赤字である場合には、配当を出していませんので、直前期のみの配当は、異常要素となる臨時配当と考えることができます。したがって、1株あたりの配当金額に含めないで計算することが相当かと思料されます。   3 直前期末から課税時期までの間に配当金交付の効力が発生した場合 第4表の類似業種比準価額の計算は、直前期末を基準としているため、直前期末の翌日から課税時期までの間に配当金交付の効力が発生した場合には、比準価額の修正を行う必要があります。具体的には、1株当たりの比準価額から1株当たりの配当金額を控除します(評価通達184)。 また、第5表における純資産価額の計算を直前期末方式により計算をしている場合において、直前期末の翌日から課税時期までの間に配当金交付の効力が発生した場合には、配当金の支払いを純資産価額に反映させるため、未払配当金として負債に計上することになります。 一方で、配当を受け取った法人の純資産価額の計算において、通常であれば、直前期末時点で課税時期までの未収配当金を考慮する必要はないと考えられますが、子会社や関係会社からの配当の場合には、子会社や関係会社が配当を支払った後の株式価額で評価されていることとの均衡から親会社は配当を受け取った後の株式価額とすべく純資産価額の計算において、未収配当金に計上することが相当かと思料されます。 【本問への当てはめ】直前期末から課税時期までに間に行ったB社の配当について B社は、直前期末から課税時期までの間に配当(1株402,500円、配当効力発生日:令和7年5月25日)を行っていますが、このうち400,000円はA社の資金繰りを考慮し実行したものとなります。直前期末から課税時期までの間に配当金交付の効力が生じた場合のB社における第4表における比準価額の修正、第5表における純資産価額の未払金の計上は、実際に配当が行われたことに伴うB社株式の修正であり、この配当に異常要素となる配当が含まれていたとしても、その部分も含めて計算を行うことになります。したがって、第4表ではB社の1株当たりの比準価額から1株当たりの配当金額402,500円を控除し、第5表の純資産価額の計算では80,500,000円(402,500円×200株)を未払金に計上します。また、A社の第5表の純資産価額の計算では、80,500,000円(402,500円×200株)を未収配当金に計上します。   ☆実務上のポイント☆ 年配当金額に計上するべき金額の趣旨と比準価額の修正の趣旨の違いを理解しておきましょう。また、比準要素数1の会社を免れるために行う配当については、税務リスクがある点については注意しておきましょう。配当を利用し、評価を著しく減額させた場合には、総則6項の適用対象のリスクもあり、想定外の課税がされる要因になり得ます。 (了)

#No. 639(掲載号)
#柴田 健次
2025/10/09

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第71回】「遺産の一部が未分割財産である場合の課税上の留意点」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第71回】 「遺産の一部が未分割財産である場合の課税上の留意点」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 佐藤 達夫   相談内容 私は、不動産賃貸業を営むX社を経営しており、X社の株式については、父から8年前に生前贈与により取得しました。 X社の先代経営者である父が今年1月に亡くなり、これまで父が残してくれた遺産について、母と妹との間で遺産分割協議を行ってきました。自宅は母が相続することで遺産分割が成立していますが、遺産のなかの山林については売却が難しく、年間の維持費も必要になるため、私も含め相続人全員がその相続に難色を示し、遺産分割協議が難航しています。そのため、相続税の申告期限が近付くなか、申告期限までにすべての遺産の分割協議が成立しない可能性が出てきました。 相続税の申告期限までに、遺産のすべて又は一部について分割協議が成立しない場合に、相続税申告書や相続税額への影響について、留意事項がありましたらご教示ください。 父の遺産及び相続人は次のとおりです。 上記以外に、父から私はX社株式80,000千円(相続開始時の価額)、妹は現金30,000千円の生前贈与を受けており、暦年課税により贈与税の申告をし、贈与税の納税をしています。この生前贈与は、いずれも父の相続開始日の8年前に行われています。また、いずれの生前贈与も、父の持ち戻し免除の意思表示はありません。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ 1 遺産の全部又は一部が未分割である場合の課税価格・相続税の計算 (1) 課税価格の計算 相続税の申告期限までに、相続財産の全部又は一部が分割されていないときは、その分割されていない財産は、相続分又は包括遺贈の割合によって相続財産を取得したものとして課税価格を計算することとされています(相法55)。その後、未分割財産の分割の結果、相続分又は包括遺贈の割合と異なることとなった場合には、修正申告や更正の請求をすることにより相続税の再計算を行うことができます(相法30~32)。 相続財産の一部が未分割となっている場合の相続税申告に当たり、その未分割財産を分割する方法としては、積上げ方式(※1)と穴埋め方式(※2)の2種類の考え方がありますが、判例により、穴埋め方式により課税価格を計算することになります(東京地裁 昭62・10・26)。穴埋め方式を採用する理由として、相続人は他の相続人に対し、遺産全体に対する自己の相続分に応じた価額相当額から、既に分割された遺産の価額を控除した価額相当分まで権利を主張できると解されていることなどが挙げられています。 《穴埋め方式》 被相続人から遺贈や生前贈与がある場合の穴埋め方式による各相続人の未分割財産の計算は、次のとおりです。 ご相談の場合、未分割により相続税申告書を提出する場合の各人の課税価格及び相続税は、次のとおりになります。相続税の計算において、配偶者の税額軽減の適用が制限されるため、遺産が分割されているときと比べて、相続税が多く計算されます(下記2参照)。 〈各相続人の課税価格及び相続税〉 (2) 特例規定の適用 配偶者の税額軽減の適用に当たっては、税額の軽減額を計算する基礎となる財産から未分割財産を除外することになります(相法19の2②)。また、小規模宅地等の特例についても、分割されていない特例対象宅地等には適用されません(措法69の4④)。 ただし、相続税の申告期限後3年以内に遺産が分割された場合等には、遺産分割が成立した日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求書等を提出することにより配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を受けることができます。 そのためには、相続税の申告期限後3年以内に遺産分割が行われるかどうかにかかわらず、申告期限内に提出する未分割による相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することで、将来の配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用の余地を残しておくことができます(相法19の2②、措法69の4⑦)。 なお、相続税の申告期限後3年以内に分割されないことについて、相続に関する審判の申立てがされている等のやむを得ない事情がある場合には、相続税の申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月以内に申請書を提出し、所轄税務署長の承認を受けたときは、遺産の分割ができることとなった日の翌日から4ヶ月まで遺産分割の期限を延長することができます。   2 遺産の全部が分割された場合 本件では、自宅は相続税の申告期限までに母により相続することが確定していたため、当初より小規模宅地等の特例を適用することができましたが、配偶者の税額軽減の適用について制限が生じていました。 そのため、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が成立した場合には、配偶者の税額軽減を適用することにより、母の相続した財産が相続財産の半分までであれば、母については相続税が発生しないことになります。 一方、他の相続人は、遺産分割により取得した財産によっては、期限後申告、修正申告または更正の請求の手続きを行う必要があります。   3 結論 相続財産・債務が未分割のときでも、相続税の申告期限までに穴埋め方式により相続税の申告書を提出し、相続税を納税する必要があります。ただし、未分割財産に対して配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの特例規定を適用するために相続税の申告書提出時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しなければなりません。 具体的な対策については、弁護士、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)

#No. 639(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2025/10/09

街の税理士が「あれっ?」と思う税務の疑問点 【第10回】「自宅以外で亡くなった場合の小規模宅地等の特例の適用」~ホスピスの場合~

街の税理士が「あれっ?」と思う 税務の疑問点 【第10回】 「自宅以外で亡くなった場合の小規模宅地等の特例の適用」 ~ホスピスの場合~   城東税務勉強会 税理士 大塚 進一   問 題 父はがん治療のために入院しましたが、回復の見込みがないのでホスピス(緩和ケア病棟のある病院)に転院し、退院することなく亡くなりました。母は父の入院時には死亡しており、長女は父の入院時から死亡に至るまで、賃貸住宅に居住していました(いわゆる「家なき子要件」を満たす)。父の死亡後、その建物と敷地は長女が相続しました。 この場合、父の土地は相続開始直前において父の居住の用に供されていた宅地等に当たり、特定居住用宅地等として小規模宅地の特例は受けられますか。 回 答 特定居住用宅地等として小規模宅地の特例は認められるのではないかと考えます。 居住の用に供されていた宅地等に該当するかどうかは、その宅地上の建物に生活の拠点があったか否かにより判定します。生活の拠点とは生活状況や、その建物への入居目的等を総合的に判断します。 老人ホームに入居した場合、生活の拠点は老人ホームに移ったものと考えますが、老人ホーム等に入居する直前まで居住の用に供していた宅地等については、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に含まれます(詳細は【第7回】)。 病院への入院の場合、それは治療のためであり、治療が終わると退院前の住居に戻るため、生活の拠点はその建物にあると考えられます。よって、その敷地は被相続人の居住の用に供されていた宅地等となります(詳細は【第9回】)。 ホスピスは病院と異なり、病気治療や延命措置を目的としておらず、人生の終わりを有意義に過ごすことが目的で、安らかにご臨終を迎えるようにします。よって、入院前の住居には戻らないことが予想されます。 国税庁の質疑応答事例「入院により空き家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例」や老人ホームに関する法令を文章どおりのみに解釈すれば、ホスピスに生活の拠点が移り、入院前の住居の敷地は居住の用に供されていた宅地から除かれるとも考えられます。 しかし、末期がんや難病による終末期患者が転院する場合、積極的な病気治療は行わないとしても緩和ケア等の医療行為は行われており、治療入院の延長であるとも考えられます。一般的にはホスピスは入院と同じという感覚ですが、現状ではホスピスについての見解は税務上まだ未整備です。 余命いくばくもない人に対して投薬や手術などの治療を続けると、余命は伸びるかもしれませんが、さらに苦痛等を長引かせてしまうということが問題になっています。そこで病気治療をやめ、痛みを軽減する緩和ケアにとどめることは合理的です。緩和ケアのために病院を転院すると治療入院と異なる扱いとなるのは、入院した病院で治療の甲斐なく緩和ケアに移り亡くなる場合との整合性が取れません。よって、実務上は病院に入院する場合と同じ取扱いをする場合もあります。 考 察 入院中に亡くなった場合は、国税庁の質疑応答事例集に示されていますが、ホスピスに移った場合については何も示されていません。 ホスピスでは、治療の見込みがなくなった病気に対する緩和ケアを施す等の身体的ケアだけでなく、病気による苦しみや、死への恐怖心をやわらげるための精神的ケアや、患者の様々な手続きの申請を代行する社会的ケアを行っているところもあり、これらをまとめてホスピスケアと言います。 現状は治療入院から治療の見込みがなくなったため、緩和ケア病棟に移る場合や、緩和ケア病棟の充実した病院に転院する場合が多いようですが、老人ホーム等でホスピスケアを提供する施設も増えてきています。老人ホーム等の施設では身体介助に介護保険を利用するので、介護認定を受けている者が入居条件になることが多いです。 この場合、租税特別措置法施行令第40条の2第2項に規定される「介護保険法に規定される要介護認定または要支援認定を受けていた被相続人等が、老人福祉法等に規定される老人ホーム他に入居又は入所をしていたこと」に合致するため、入院中に亡くなった場合と異なり、老人ホームに入所した場合と同等になると考えられます。いわゆるホスピス(終末期を穏やかに過ごし安らかな最期を迎える施設)の定義はなされておらず、今後様々な形態のものが増えると考えられます。 税務的に老人ホーム入所(生活の拠点は移るが入所前の住居も居住用に含める旨の規定)と入院(治療が終われば入院前の住居に戻るのが前提なので生活の拠点は移らない)の場合については法令や見解が示されています。 ホスピスに入ると元の住居に戻らないことが予想されますので、税務的に老人ホーム入所と同様に考えることもできます。そうするとホスピスに関しては、生活の拠点は移るが元の住居を居住用に含める規定はありません。また入院と同様に、ホスピスへの入居は緩和ケアのための一時的なものと考えることもできます。よって、税務的な見解の整備が待たれます。 現状ではホスピス入所に至った経緯やその施設の概要(病院か老人ホーム等か)等を総合的に判断する必要があると考えます。 (了)

#No. 639(掲載号)
#城東税務勉強会
2025/10/09
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