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相続空き家の特例 [一問一答] 【第15回】「家屋とともに敷地の一部を譲渡した場合」-対象敷地の一部の譲渡-

相続空き家の特例 [一問一答] 【第15回】 「家屋とともに敷地の一部を譲渡した場合」 -対象敷地の一部の譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、昨年12月に死亡した父親の居住用家屋(昭和56年5月31日以前に建築)とその敷地(200㎡)を相続により取得し、その家屋を耐震リフォームした後に、その敷地の庭部分(80㎡)を残して、本年8月に6,200万円で売却しました。 相続の開始の直前まで父親は1人で暮らし、その家屋は相続の時から譲渡の時まで空き家で、その敷地全体も相続の時から譲渡の時まで未利用の土地でした。 この場合、Xは、「相続空き家の特例(措法35③)」の適用を受けることができるでしょうか。 A その譲渡がその被相続人居住用家屋とともに行われたものであることから、対象敷地の一部の譲渡であっても、「相続空き家の特例」が適用できる譲渡に該当します。 ●○●○解説○●○● 「相続空き家の特例」の適用を受けられる者(相続又は遺贈による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした個人(【第2回】の解説を参照))が、同特例の適用対象となる被相続人居住用家屋の敷地等を区分して譲渡する場合に、その家屋を取り壊さずに、耐震リフォームを行って、その敷地等の一部を譲渡した場合には、措通35-17(被相続人居住用家屋の敷地等の一部の譲渡)(2)の定めにより次のとおり取り扱われます。 したがって、本事例においては、上記(イ)のとおり、その譲渡がその被相続人居住用家屋とともに行われたものであることから、「相続空き家の特例」が適用できる譲渡に該当します。 (了)

#No. 239(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/10/12

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第63回】株式会社AKIBAホールディングス「第三者委員会調査報告書(平成29年7月28日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第63回】 株式会社AKIBAホールディングス 「第三者委員会調査報告書(平成29年7月28日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【第三者委員会の概要】   【株式会社AKIBAホールディングスの概要】 株式会社AKIBAホールディングス(以下「AHD」と略称する)は、1983(昭和58)年設立。2015(平成27)年10月に純粋持株会社へ移行するともに社名変更。旧社名は株式会社アドテック。メモリ製品製造販売事業を中心に業容を拡大、ウェブソリューション事業などを手がける。売上高6,529百万円、経常損失13百万円、従業員数93名(数字はいずれも2017年3月期末)。代表取締役社長は下津弘亨氏(以下「下津社長」という)本店所在地は東京都中央区。JASDAQに上場。 内部通報により、不正取引が発覚した連結子会社のiconic Storage株式会社(以下「iconic社」と略称する)は、コールセンターサービスなどを手がけ、2016年(平成28年)3月に、AHDによって買収された。代表取締役は、AHD代表取締役の下津社長が兼務。 また、第三者委員会の調査の過程で不正が発覚した連結子会社の株式会社バディネット(以下「バディネット」と略称する)は、通信機器の開発・設計・運用を手がけ、2015(平成27)年1月、AHDに買収された。代表取締役はAHD取締役の堀礼一郎氏(以下「堀取締役」という)。   【第三者委員会調査報告書の概要】 1 調査に至る経緯 AHDは、平成29年4月12日、iconic社取締役より、iconic社からA1社への支払が架空発注によるものである旨の内部通報を受け、社内調査を行ったところ、元取締役甲がA1社を使っての資金を不正に利得した疑いがあること、また、元取締役甲が、A1社以外の会社を利用した不正取引も行っていた疑いがあることを認知した。 そのため、AHDは、より厳密な調査を行うとともに、調査の客観性及び信頼性を高めるため、平成29年5月26日、利害関係のない公認会計士及び弁護士による第三者委員会を設置した。 2 不正取引の概要(その1:iconic社) 第三者委員会は、まず、元取締役甲がiconic社に指示した不正な資金の流失について、調査を始めた。調査過程で、資金の流出先として名前が挙がったのは、A1社(代表者は元取締役甲と親密で、iconic社内に机を置いて、A1社の仕事をしていた)、A2社(A1社代表が設立した休眠会社)、G社(人材派遣会社)、X社などであった。 (1) A1社に対する架空請求書に基づく資金の流出 元取締役甲は、iconic社業務担当者に命じ、A1社に対して総額約4,900万円を振り込ませ、A1社代表に対しては、振り込まれた資金を、元取締役甲自身が実質的に支配するB社口座、元取締役甲の元配偶者名義の口座、iconic社業務担当者の口座などに振り込ませていた。 元取締役甲は、A1社への送金は、iconic社から貢献度に応じた報酬の支払を受けていたものであり、「実質的には受け取る理由がある」と主張しているが、第三者委員会は、架空取引の支払をしたものであり、元取締役甲に裏金を渡していたに過ぎないと判断した。 (2) G社案件 iconic社は元取締役甲の指示に基づき、事業活動を行っていないA2社に対する売上を計上して、それを原資に、G社に対して業務委託費用名目で、約2,900万円の支払を行っているが、G社は、実際には契約内容であるコールセンターへの人材派遣は行っていなかった。 本件支払いにつき、元取締役甲は架空発注であったことを認めているが、G社代表者は、G社では実際に約30名の派遣社員を集めて元取締役甲から派遣の連絡を待っていたが、連絡はなく、契約期間中は待機状態が続いていたものであると主張している。 これに対して、第三者委員会は、「業務委託費として営業費用計上することは大いに問題がある」と判断している。 (3) X社案件 元取締役甲は、平成27年6月AHD常勤監査役に就任したが、役員報酬は月額10万円と低額であったため、その補填として、連結子会社である株式会社エッジクルーからiconic社に対して、システムエンジニアリングサービスにかかるノウハウ提供料として月額40万円が支払われ、iconic社から元取締役甲が実質的に支配するB社に対して同額が支払われていた。 その後、iconic社がAHDの連結子会社となったため、スキームを変更。AHDとX社の間のプロパートナーズサービス基本契約に基づき、AHDはX社に月額40万円を支払うこととなった。この40万円のうち38万円は、X社から元取締役甲に支払われていた。 第三者委員会は、この契約が元取締役甲の役員報酬を補填する目的であったことを認める判断をしている。 3 不正取引の概要(その2:バディネット) バディネットは、AHDによる買収前から堀取締役とAHD取締役古賀弘幸氏(以下「古賀取締役」という)によって経営されている。第三者委員会は、調査の過程で入手した、関係者のメール、総勘定元帳等の会計データ、その他の関係資料を通じて、バディネットにおいて、平成28年3月期決算において利益を調整するために架空費用を計上し、翌平成29年3月期決算においてそれを戻すための取引を行っている疑いのある不自然な取引を発見し、バディネットの平成28年3月期決算を通査した。 第三者委員会はここでも関係者のメールから取引内容を把握している。 (1) Y社に対する架空費用の支払と架空請求 バディネット顧客である大手通信会社の通信サービス終了に伴う顧客訪問業務を受託したバディネットは、平成28年3月の約1ヶ月間に約9,700万円の売上を計上することとなった。この業務は、連絡がつかない顧客を訪問してサービスの終了を伝えるものであったが、短期間で15,000件に上る顧客を訪問するものであったため、バディネットは、複数の下請け業者に委託することとなった。 下請業者の1つY社に対して、堀取締役の依頼に基づき古賀取締役がY社代表者に対し、平成28年3月期の請求を1,500万円水増しさせて、これを支払った。 翌期に、バディネットは、Y社に対して1,470万円の架空請求を行い、Y社はこれを支払った。その結果、Y社に30万円の手数料を支払ったこととなった。 (2) Z1社からの過大請求 同じく平成28年3月において、堀取締役・古賀取締役はZ1社のオーナーに対して、訪問サービスの業務委託費用として1,200万円、通信サービスマイグレーションの業務委託費用として800万円の架空の業務委託契約を締結するよう依頼し、契約に基づく請求が行われ、バディネットはこれらを支払った。 しかし、この架空請求に関する返還はなされていない。 (3) X社、Y社、バディネットによるスキーム 平成28年3月期末、バディネットは、X社に対して1,100万円の顧問料を費用計上して支払っているところ、平成28年10月から12月において、バディネットはY社から1,090万5,000円の業務を受託し、Y社はX社から同じ期間に1,100万円の業務を受託していた。 バディネットは、平成28年3月期に架空の費用をX社に対して支払い、これをX社から直接戻すのではなく、Y社を迂回するかたちで還流させたものである。 (4) 堀取締役、古賀取締役の主張 第三者委員会の調査に対して、バディネットの経営にあたっている堀・古賀取締役は、予想外に利益が計上されることになったので、費用を過大計上して、税金の負担を少しでも軽くしたいと考えたものであることを認めている。 4 原因分析 (1) 不祥事発生の背景 第三者委員会は、今回の不祥事発生の背景として、以下の点を挙げている。 (2) 発生原因 そのうえで、第三者委員会は、発生原因として、次の6項目を挙げている。 このうち、コンプライアンス意識が醸成されていなかった例示として、第三者委員会は次のように述べている(調査報告書p.60)。 5 再発防止策 第三者委員会による再発防止策の提言は、次の6項目である。 この中では、「(4)内部監査体制の整備」に、以下のような記述がある点が気になった。 第三者委員会のこうした評価が正しいとすれば、AHDの平成28年3月期の内部統制報告書にある、「平成28年3月31日現在の当社グループの財務報告に係る内部統制は有効であると判断いたします」という文言の根拠が問われるのではないかと思われる。   【調査報告書の特徴】 買収により業容を一気に拡大してきた純粋持株会社の子会社を舞台にした会計不正事件。本件が他の同様の事件と異なる点は、持株会社の取締役が、実際に不正を行っていた点にあった。 1 会計上の修正仕訳に関する詳細な記載(調査報告書p.36以下) 第三者委員会は、事実認定に基づき、財務諸表の修正について詳細な記述を行っている。その手法は、不正と認定した取引ごとに、(1)会社側の意図(資金の返還を求めるか否か・取引を取り消すか否か)、(2)現状の会計処理、(3)四半期ごとの修正仕訳の具体的提示といった形で進められている。調査報告書のページ数にして24ページに及ぶこの記述は、会計不正事件が発覚した後の過年度修正仕訳の考え方を知るうえで大変参考になるものである。 もっとも、資金の返還を要求するために修正された「未収入金」に対する貸倒引当金の設定や法人税、消費税の修正申告、繰延税金資産負債等については、「派生的に修正が必要となる可能性もある」としながら、「派生的な影響に関する検討は行っていない」ということで、この点、少し残念な気がする。 貸倒引当金の設定に関する判断基準、法人税、消費税等の修正申告、源泉税の追加納付、繰延税金資産負債の計上の是非などについて、基本的な考え方を例示していれば、経理担当者にとって、会計不正発覚時の良い教科書になったのではないかと思料する。 2 会計監査人の異動 AHDが8月2日にリリースした「公認会計士等の異動に関するお知らせ」によると、会計監査人である優成監査法人から、以下のような申し出を受けて、会計監査人を異動することが公表された。 引用した文章の前に、「平成29年3月下旬頃より、報酬について打診をしていた」という記述があるが、平成29年3月期の監査報酬について平成29年3月下旬に打診をしていることそのものが、会計監査人による監査の軽視という、AHD管理部門の体質を現しているように思えてならない。 その後、AHDは、8月7日に一時会計監査人にKDA監査法人を選任したことを公表し、同月25日にはKDA監査法人を会計監査人に選任することを公表した。 3 特別損失の計上 AHDが9月1日にリリースした「特別損失の計上並びに平成30年3月期第2四半期及び通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」によれば、第三者委員会による調査費用と会計監査人の訂正監査費用の総額は約85百万円に達した。 業績予想の修正理由を引用する。 4 新しい経営体制 AHDは、8月25日、下津代表取締役社長が「経営責任を明確にするため」退任し、新代表取締役社長に、KDDI株式会社で監査役を務めた経験を有する馬場正身常勤監査役を選任することを公表した。 馬場新社長の選任理由について、リリースでは、「当社グループ全体のコンプライアンス意識の向上のため、上場企業を含む各種企業での監査役経験が豊富」であるとしている。 9月29日に開催された定時株主総会を受けて公表された「新役員体制」では、馬場新社長を含む新任の取締役2名、常勤監査役を含む新任の監査役2名が就任し、役員体制が刷新されている。 なお、一連の不正会計発覚の発端となった元取締役甲であるが、5月1日の不正行為発覚のリリース時点で「当社元取締役」と記されており、内部通報のあった4月12日からそれを公表した5月1日までの間のどこかの時点で辞任している模様だが、AHDのIR情報を見る限り、公表はされていないようである。 5 AHDによる再発防止策 その後、9月29日になって、AHDは、「再発防止策」を公表する。その中では、まず、取組体制として、次のとおり、組織的な取組体制が強調されている。 次に、具体的な再発防止策は以下のとおりであり、概ね、第三者委員会による提言に沿った内容となっている。 第三者委員会から、「機能していない」と評された内部監査委員会については、「(3)内部監査体制の強化」の中で、以下のようにまとめられている。 (了)

#No. 239(掲載号)
#米澤 勝
2017/10/12

収益認識会計基準(案)を学ぶ 【第8回】「収益の額の算定①」-取引価格に基づく収益の額の算定及び取引価格の算定-

収益認識会計基準(案)を学ぶ 【第8回】 「収益の額の算定①」 -取引価格に基づく収益の額の算定及び取引価格の算定-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 【第2回】において、「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「収益認識会計基準(案)」という)における収益認識のためのステップとして、次の5つがあることを解説した。 今回は、ステップ3及びステップ4のうち「取引価格に基づく収益の額の算定及び取引価格の算定」を解説する。 「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下「収益認識適用指針(案)」という)では、取引価格の算定に関連する設例が多く作成されているので、実務の適用の際に参考になる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取引価格の算定 「取引価格」とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額をいう(収益認識会計基準(案)7項。ただし、第三者のために回収する額を除く。「第三者のために回収する額」については本連載の【第1回】参照)。 取引価格のうち履行義務に配分した額が、履行義務を充足した時に又は充足するにつれて(履行義務の充足。本連載の【第7回】参照)、収益として認識される(収益認識会計基準(案)43項、51項)。 1 取引価格の算定に関する留意点 取引価格の算定に関する留意点は次のとおりである。 関連する収益認識適用指針(案)の設例は次のとおりである。 2 変動対価 「変動対価」とは、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分をいう(収益認識会計基準(案)47項)。 契約に変動対価が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積ることになる(収益認識会計基準(案)47項)。 変動対価の見積りに関する留意点は次のとおりである(収益認識会計基準(案)48項~52項)。 3 契約における重要な金融要素(契約金額からの金利相当分の区分処理) 顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合には、取引価格の算定にあたっては、約束した対価の額に含まれる金利相当分の影響を調整する(収益認識会計基準(案)54項)。 収益は、財又はサービスに対して顧客が支払うと見込まれる現金販売価格を反映する金額で認識することになる(収益認識会計基準(案)54項)。 契約における重要な金融要素に関する留意点は次のとおりである(収益認識会計基準(案)53項、55項、124項)。 4 現金以外の対価 契約における対価が現金以外の場合、取引価格の算定にあたっては、当該対価を時価により算定する(収益認識会計基準(案)56項)。 対価が現金以外の場合の留意点は次のとおりである(収益認識会計基準(案)57項~59項)。 5 顧客に支払われる対価 顧客に支払われる対価は、企業が顧客(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対して支払う又は支払うと見込まれる現金の額や、顧客が企業(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対する債務額に充当できる金額等を含む(収益認識会計基準(案)60項)。 顧客に支払われる対価に関する留意点は次のとおりである(収益認識会計基準(案)60項、61項)。 関連する収益認識適用指針(案)の設例は次のとおりである。 6 取引価格に基づく収益の額の算定に関する意見 返品権付きの販売について、以下の論点が検討されている(第341回企業会計基準委員会(2016年7月25日)の審議事項(4)-2の13項~15項、第348回企業会計基準委員会(2016年11月4日)の審議事項(3)-6の13項~19項)。 変動対価について、以下の論点が検討されている(第341回企業会計基準委員会(2016年7月25日)の審議事項(4)-3の12項、17項、第349回企業会計基準委員会(2016年11月18日)の審議事項(4)-5の11項、18項)。 第351回企業会計基準委員会(2016年12月20日)の審議事項(6)-6の9項では、工事契約においては、我が国において出来高払いは一般的ではなく、竣工払いの割合が大きいうえに、出来高に応じた工事代金の支払いが1年以内となることは少ないため、本論点の影響を受ける可能性があること、工事契約は個別性が高いことから、一般に観察可能な現金販売価格はないため、金融要素の調整は実務上極めて困難であること、金融要素の調整が必要な場合、受注高の管理や債権管理に極めて大きな影響があることが述べられている。   Ⅲ 重要性等に関する代替的な取扱い 返品調整引当金(Ⅰのステップ3関連)に関する代替的な取扱いは規定されておらず(収益認識適用指針(案)157項)、現行の日本基準又は日本基準における実務の取扱いは認められないこととなる(第341回企業会計基準委員会(2016年7月25日)の審議事項(4)-2の6ページに仕訳例の比較がある)。 また、収益認識適用指針案は、次の項目に関する代替的な取扱いを規定していない。   Ⅳ 会計システム等への影響 次の影響が考えられる(「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(企業会計基準委員会、平成28年2月4日)75項~77項)。 (了)

#No. 239(掲載号)
#阿部 光成
2017/10/12

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《自己株式》編 【第3回】「自己株式の消却」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《自己株式》編 【第3回】 (最終回) 「自己株式の消却」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 「中小企業会計指針」は、(1)自己株式の取得及び保有、(2)自己株式の処分、(3)自己株式の消却について、言及しています。 会社法により、A社自身が取得して保有しているA社株式(自己株式)を、原則として取締役会決議により、消却することができます。 《自己株式》編の最終回となる今回は、「(3)自己株式の消却」についてご紹介します。   【設例3】 A社は、×3年8月5日の取締役会においてA社自身が保有するA社株式6株の消却を決議し、×3年9月20日に自己株式の消却手続が完了しました。 非上場会社であるA社(3月31日決算)の×3年3月31日決算の貸借対照表上の純資産は次のとおりです。 資本金40,000千円、資本準備金10,000千円、その他資本剰余金80千円、利益準備金5,000千円、繰越利益剰余金40,000千円、自己株式△480千円、純資産合計94,600千円 A社の消却直前の保有自己株式は6株で、×1年7月20日に@80,000円/株にて取得したものです。 A社の発行済株式数は1,000株(普通株式の1種類のみ発行)です。 前々回【設例1】の×2年3月31日現在、及び前回【設例2】(1)の×3年3月31日現在におけるA社の資本金等の額及び利益積立金額を、この設例でも引き継ぐものとします。 自己株式の消却に関する付随費用はないものとします。   1 仕訳 A社の仕訳は、次のとおりです。 自己株式の消却は、単に発行済株式総数と自己株式の帳簿価額を減少させる手続であり、自己株式の帳簿価額の減少については、前回既述した自己株式の譲渡(処分)時と同様であると考えて、会計上は自己株式の消却手続が完了した時点において、消却する自己株式の帳簿価額を「その他資本剰余金」から減額し、さらに控除しきれない場合には、その他利益剰余金の「繰越利益剰余金」から減額します(中小企業会計指針70(3))。 このため、自己株式の帳簿価額480,000円(=取得単価@80,000円/株×6株)を、まず「その他資本剰余金」から減額し、「その他資本剰余金」残高が80,000円なので、これを超える額の400,000円を繰越利益剰余金から控除しました。   2 決算書 決算書の金額は、次のとおりです。 〈株主資本等変動計算書-「自己株式の消去」に係る部分を抜粋〉   3 法人税法の規定における取扱い 既に自己株式の取得時に、資本の払戻しとして資本金等の額と利益積立金とのマイナス処理が済んでいるため、自己株式の消却時において税務処理はありません。   4 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 上記3(法人税法の規定における取扱い)のとおり、税務上の仕訳はなく、これと上記1の会計上の仕訳を比べると、損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得への調整には影響がありません。 別表五(一)においては、資本金等の額(合計)は調整が不要ですが、会計上その他資本剰余金から控除しきれずに繰越利益剰余金から控除した400,000円は、税務上とズレがあるので、利益積立金額を400,000円増額調整し、次のように記載します。 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 (《自己株式》編終了)

#No. 239(掲載号)
#前原 啓二
2017/10/12

税理士業務に必要な『農地』の知識 【第12回】「生産緑地法の改正」

税理士業務に必要な 『農地』の知識 【第12回】 (最終回) 「生産緑地法の改正」   税理士 島田 晃一   平成29年(2017年)6月15日に改正生産緑地法が施行された。 今回の改正では「特定生産緑地制度」の創設が大きなトピックとなっている。この改正により、生産緑地を所有している農家は、原則として2022年までに特定生産緑地指定を受けるかどうか選択しなければならない。 この選択の結果、固定資産税・都市計画税や納税猶予などの課税関係が大きく異なってくるため、今回の改正内容は正しく理解しておきたいところである。   1 生産緑地の概要 まず、【第5回】において述べた改正前の生産緑地の概要についておさらいしてみよう。 生産緑地とは、市街化区域内にある一団の農地について、都市計画法に基づき市町村の指定を受けたものをいう。その運用については生産緑地法に則っている。生産緑地指定を受けた場合、宅地造成や農業生産に必要な建築物(農産物の生産又は集荷用の施設)以外の建築はできず、当該土地を農地として適正に管理していくことが求められる。 三大都市圏の特定市の市街化区域内においては、平成3年(1991年)の生産緑地法改正に基づき、該当する農地所有者が生産緑地かそれ以外の農地にするかを選択し、平成4年(1992年)に指定が行われた。 生産緑地指定を受けた農地については、指定から30年を経過する日までは、農業従事者が死亡したり心身に著しい故障を負い農業継続が不可能であると認められたときに限り、市に買取り申出を行うことができる。一方、指定から30年を経過した日以後はいつでも市に買取り申出ができる。 市は買取り申出を受けても通常買取り等は行わない。この場合、買取り申出から3ヶ月以内に「行為制限の解除」といい、宅地造成の禁止といった制限が解除される。 生産緑地指定を受けた農地の固定資産税・都市計画税については、農地評価・農地課税が行われるため周辺の土地に比較して著しく低くなる。また、三大都市圏の特定市の市街化区域内においては、原則として相続税・贈与税の納税猶予は受けることができないが、生産緑地指定を受けている農地に関しては納税猶予を受けることができる。   2 今回の生産緑地法の改正内容 今回の生産緑地法の改正は、次に掲げる3つのトピックがある。 (1)の改正は、市が条例により定めた場合に限り、生産緑地の対象となる「一団の農地面積」について、その下限を300㎡を限度として引き下げられるというものである。 また、前述したように従来は生産緑地内に農業生産に必要な建築物以外は建てられなかったが、(2)の改正によって農産物の加工場、農産物の直売所、生産緑地地区内で生産された農産物を主な食材としたレストラン等の建築を行うことが可能になった。 (3)の特定生産緑地制度とは、従来の生産緑地に加える形で設けられたものである。特定生産緑地に指定されると、その後10年間は農業従事者の死亡等により農業継続が不可能と認められない限り営農を継続しなければならない。 つまり、現在ある生産緑地の多くについて、その指定後30年が経過する2022年に実質的に行為制限が解除されるのを受け、解除により宅地化された農地が大量に供給される事態(いわゆる2022年問題)をある程度抑えるために、買取り申出時期を10年間先送りする制度ができたわけである。 さらに、特定生産緑地指定後10年を経過した後は、再度特定生産緑地指定を受けることで特定生産緑地を継続することができる。一方、特定生産緑地の指定を受けなかった農地は、都市計画法上においては生産緑地であるがいつでも買取り申出(≒行為制限解除)を行うことができる形になる。ここでは特定生産緑地の指定を受けなかった農地を便宜上「一般生産緑地」と呼ぶことにする。 具体的には、当初の生産緑地指定から30年を経過する日を申出基準日とし、市が農地所有者の申請に基づき申出基準日までに特定生産緑地指定を行う。言い換えれば、1992年に生産緑地指定を受けた農地については、2022年までに特定生産緑地指定の申請を行う必要があるということである。以後、特定生産緑地指定を受けた日を申出基準日とし、そこから10年を経過する日が新たな申出基準日になる。 【特定生産緑地のイメージ】 ここで注意してほしいのは、期限までに特定生産緑地指定の申請を行わなかった場合、二度と特定生産緑地指定を受けることができないということである。 例えば、2022年までに特定生産緑地指定を受けず一般生産緑地になった場合、10年後に改めて特定生産緑地指定を受けることはできない。また、2022年において特定生産緑地指定を受けたとしても、10年後の2032年に再指定を受けなければ、これ以後は特定生産緑地指定を受けることはできない。   3 生産緑地法改正と関連税制 今回の生産緑地法の改正により、農地に係る税務に関して影響が出てくる。まず、固定資産税・都市計画税については、現在は生産緑地指定を受けていれば農地評価・農地課税になるが、2023年度以降は特定生産緑地指定を受けた農地のみが農地評価・農地課税の対象になり、一般生産緑地は農地評価・農地課税の対象から外れることになることが予想される。 これによる負担増がどのくらいになるか本稿執筆段階では不明であるが、いずれにしても一般生産緑地については相当な負担増は避けられないであろう。 相続税の納税猶予については、改正項目(1)の下限面積の引下げに基づき生産緑地指定を受けた農地は、納税猶予の対象になる。一方、改正項目(2)で設置が認められた生産緑地地区内に建築された直売所等の敷地は、農地ではないので納税猶予の対象にはならないと思われる。 (3)の特定生産緑地に関しては、2022年以降特定生産緑地指定を受けていない農地は納税猶予の対象から外される可能性が高い。ただし、既に納税猶予を受けている農地については、2022年において特定生産緑地指定を受けなかったとしても、すぐに納税猶予が打ち切られるのではなく、農地所有者が死亡するまで納税猶予は継続されるようである。 *  *  * 以上、生産緑地法の改正と関連税務について述べてきた。税務上の取扱いについては不明な点があり、今後の税制改正を待ちたいところである。 いずれにしても、2022年までには、特定生産緑地指定を受けるかどうかの選択を迫られることになるため、クライアントが生産緑地を所有している場合、税務上の取扱いがはっきりした時点においてクライアントに説明及び意思確認を行う必要がある。 特に次世代において納税猶予を受けるときは、特定生産緑地指定が必須になると見込まれるため特に注意が必要になろう。 -連載終了にあたって- 今回で12回にわたって連載させていただいた「税理士業務に必要な『農地』の知識」はひとまず終了する。 農業政策とその税務に関しては、「集約化」と「都市農地の保全」というキーワードに沿った展開が予想される。今回解説した特定生産緑地制度の創設はその一環であろう。 もちろん一連の解説で、農地とその税務について全てが解説できたわけではなく、個々の事例によっては、より深く掘り下げなければならない場面も当然でてくるであろう。 特に市街化区域にある農地を持つクライアントがいる場合や、相続財産に農地が含まれている相続税の申告依頼がある場合は、細心の注意を要する。 そのようなときには、本連載の内容を農地についての理解を深めるための入口として活用していただければ幸いである。 (連載了)

#No. 239(掲載号)
#島田 晃一
2017/10/12

税理士のための〈リスクを回避する〉顧問契約・委託契約Q&A 【第2回】「委任契約に基づく義務と付随的義務」

税理士のための 〈リスクを回避する〉 顧問契約・委託契約Q&A 【第2回】 「委任契約に基づく義務と付随的義務」   弁護士・税理士 米倉 裕樹 弁護士・ 関西大学法科大学院教授 元氏 成保 弁護士・税理士 橋森 正樹   Q X社は、税理士Yとの間で、税務代理、税務書類の作成、税務相談及びこれらの業務に付随する財務関係書類の作成、会計帳簿の記帳代行を行うことを内容とする税務顧問契約を締結していた。 ところで、X社の100%親会社であるZ社は、X社が行うべき業務のうち総務等のいわゆる本部機能に属する部分を行っており、X社は、その対価として、期末にZ社に対する特別管理費を計上した上で短期貸付金と相殺していたが、この特別管理費については、特に合理的な算定根拠を定めていなかった。 そして、税務調査の際に、X社はこの特別管理費の金額に関する裏付資料を提出できなかったことから、これが寄附金であるとの指摘を受け、最終的にX社はやむを得ずこの点に関する修正申告に応じることとなった。 X社はYに対し、このような特別管理費の計上が税務上不適切であることを知りながら、その計上に異議を述べず、また、他の処理を提案するなどの助言を行わなかったとして、その損害賠償を請求した。 実際には、YはX社に対して、「特別管理費を期末に一括計上するのであれば、事前にロイヤリティー契約を締結することが望ましく、また、実費相当額であることを明らかにしなければ費用として認められない可能性がある」との説明をしていたのであるが、それに対し、X社代表者はYに対して、「計上している特別管理費は実費相当額であるが、その多くは色々な費用の中に紛れ込んでおり、資料としてまとめるには時間がかかる」などと伝えており、それを信じたYは、特別管理費の内容をあえて客観的資料によって確認まではしていなかった。 このようなケースで、仮に、X社がYを税理士過誤で訴えた場合、Yはその責任を問われるのか。 A 税理士と依頼者との法律関係は、民法上の委任関係に該当し、受任者である税理士は委任者である依頼者に対し、民法上の受任者としての義務を負うことになる。 民法においては、委任契約における受任者の義務として、善管注意義務(民法644条)、報告義務(同645条)、受取物引渡義務(同646条)、金銭消費の責任(同647条)などが定められている。そして、税理士のような専門家については、善管注意義務の内容として、依頼者から依頼された内容の実現にあたり、依頼者から特別の指示や要求があったか否かに関わらず、関係法令や実務に通じた標準的な専門家として尽くすべき配慮をしなければならず、また、善管注意義務の一環として、依頼者に対して、有効かつ必要な情報を提供し、また依頼者が適切な判断をなし得るように助言をする義務を負うと解される。 上記の事例は、山形地裁鶴岡支部平成19年4月27日判決を題材としたものである。この事例において、判旨は、一般論として と述べた上で、 と認定し、 と結論づけて、税理士の責任を肯定した。 また、税理士は依頼者に対し、事前にロイヤリティー契約を締結するか、あるいは実費相当額であることを明らかにしなければ特別管理費として認められないと説明・助言を行っていたものであるが、この点については、 とした上で、 と断じている。 *  *  *  * 近年、税理士に限らず、専門家責任が追及されるケースが増加している。これは、法的な観点からは、委任契約に基づく付随的義務について、より高度なものが求められるようになっているものとも評価できる。 日常の業務を処理するにあたっては、専門家として、依頼者の説明のみに依拠するのではなく、必ずしも税務に精通しているわけではない依頼者とは異なる視点に立って事案を検証し、場合によっては必ずしも依頼者の意向にそぐわないことがあっても、より高度な説明、助言を行うことが求められるようになっているのである。 なお、上記裁判例においては、税理士が一定程度の説明、助言をしていたにも関わらず原告代表者がこれに従わなかったことなどが考慮され、実際に税理士に支払が義務付けられた損害額は、納税額の約2分の1とされた。 (了)

#No. 239(掲載号)
#米倉 裕樹、元氏 成保、橋森 正樹
2017/10/12

家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第23回】「家族信託の活用事例〈不動産編④〉(兄弟で共有している不動産について、意思決定権限を1人に集中させ、賃料の分配の整理をする事例)」

家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第23回】 「家族信託の活用事例〈不動産編④〉 (兄弟で共有している不動産について、意思決定権限を1人に集中させ、賃料の分配の整理をする事例)」   弁護士 荒木 俊和   今回は、「兄弟で共有している不動産について、今後の処分に関する意思決定権限を1人に集中させ、賃料の分配の整理をする」ことを目的とした事例を解説する。 - 相談事例 - 私の父はマンション1棟を所有していましたが、昨年死亡し、私と妹と弟で3分の1ずつの共有財産として相続しました。実際には私が単独でこのマンションを管理しており、賃料は私が預かっている状態です。 今のところ表立った争いにはなっていませんが、妹の夫がマンションの権利について強い関心を持っているようであり、今後、過剰な権利主張がなされないか心配しています。 私としては、兄弟間で賃料を平等に分けることはやぶさかではありませんが、将来、マンションの大規模修繕をしたり、マンションの売却をする場合に、妹の夫が妹を通じて反対してこないか危惧しています。 このような状態において、できれば私1人でマンションの意思決定ができるようにしたいのですが、どのような方法があるのでしょうか。   1 家族信託活用のポイント (1) 不動産共有の問題 不動産が共有状態になると、民法第251条及び第252条に従って保存、管理及び処分(変更)しなければならないことになる。 すなわち、以下のように整理される。 不動産に当てはめていえば、「保存」とは現状を維持する行為であり、日常的な保守等がこれに当たる。また、「管理」とは共有物の現状を維持し、これを利用し、さらに改良してその価値を高めることを意味し、賃貸借契約の締結や解除等がこれに当たり、小規模な修繕もこれに含まれると考えられる。 そして「処分」とは共有物に根本的な変更を加えることをいい、売却等がこれに当たり、大規模な修繕もこれに含まれる可能性がある。 以上のように、本件で本人がマンションを管理しようとすると、妹や弟の同意を要する場面が生じうることになり、同意が得られなければうまく管理が進められない状態となる。 このような問題に対応するため、不動産の所有権を単有とするべき必要性が生じる。 (2) 賃料、売却代金の帰属 家族信託を活用する場合、これまで述べてきたように、形式的な所有権が受託者に帰属する一方で、実質的な財産権は受益者に帰属することになる。 このため、家族信託を活用した場合には、所有権を受託者に集約することで受託者において管理処分が可能となり、一方で受益権は元の共有者に残存することとすれば、受益者が利益を享受することができる。 ここでの具体的な利益としては、マンションの賃料収入とマンション売却時の売買代金が挙げられる。 (3) 売買、贈与との比較 共有を解消するための方法としては、他に「売買」や「贈与」が挙げられる。事案によっては共有者が他の共有者に売買や贈与を行うことにより共有状態を解消することが有効なケースもある。 しかし、売買の場合には買主たる共有者が資金を用意できるかという問題、売主たる共有者に譲渡所得が発生するという問題及び不動産流通税が発生するという問題がある。また、贈与の場合でも受贈者に贈与税が発生するという問題及び不動産流通税が発生するという問題が挙げられる。   2 本件におけるスキーム (1) スキームの概要 以上のことから、本件では大要、以下のようなスキームが考えられる。 (2) 受託者の権限 本連載の【第18回】で述べたとおり、受託者は、信託財産を管理又は処分する一切の権限を保有する。このため、特に信託契約上、受託者の権限を制限する定めのない場合には、当然に、受託者がマンションを処分する権限までを有する。 (3) 受益権の構成 上記のスキームを実現するためには、受益権を2本にして妹と弟に保有させる方法と、受益権を1本として妹と弟の準共有にさせる方法がある。本件では整理のしやすさの観点から、受益権を2本とし、それぞれに保有させる方が有効と考えられる。 (4) 信託の終了 信託の終了原因としては、「マンションの全部が信託財産に属さなくなった場合」や「本人、妹及び弟のうち2名が死亡した場合」等と設定することが考えられる。 信託が終了した場合の帰属権利者については、マンションが残存している場合に共有とならないようにする配慮が必要であろう。 なお、本人が保有している持分については信託財産に属していないことから、本人が死亡したことを原因として信託が終了する可能性がある場合、単有状態を維持するために、本人が家族信託とは別に遺言を作成しておいた方がよい場合がある。 (5) 受益者連続型の検討 各人の子らにマンションの収益を配分したい場合には、信託を終了させず、受益者連続型として、本人、妹又は弟の死亡時にそれぞれの子らに受益権が移転する定めをしておくことも考えられる。 ただし、この場合には「管理の負担を背負う受託者を誰にするのか」という問題をクリアする必要がある。 (了)

#No. 239(掲載号)
#荒木 俊和
2017/10/12

《編集部レポート》 第44回日税連公開研究討論会が新潟で開催

《編集部レポート》 第44回日税連公開研究討論会が新潟で開催 Profession Journal 編集部   日本税理士会連合会(神津信一会長)は、第44回日税連公開研究討論会を新潟で開催した。 公開研究討論会は、税理士による研究成果の発表、討論の過程を通じて、税制・税務行政及び税理士業務の改善・進歩並びに税理士の資質の向上を図るとともに、本会が行う研修事業に資することを目的として実施する、との理念の下、毎年開催されているもの。討論会は、15税理士会を次の7グループに地区割りし、 順次開催するものとされている。 今回の担当は、3グループ=関東信越税理士会、東京地方税理士会、千葉税理士会の3税理士会が担当し、それぞれ次のテーマで発表を行った。 当日の発表の模様は、日税連の会員専用「研修ホームページ」で視聴できる。 発表に引き続き開催された懇親会では、佐渡の伝統芸能、鬼太鼓(おんでこ)が披露され興を添えた。また、会場に新潟の銘酒が並ぶなか、参加者には税理士会員章(バッジ)のデザインが施された特製のおちょこが配られる“サプライズ”も用意された。 (了)

#No. 239(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2017/10/12

《速報解説》 証券取引等監視委員会、「開示検査事例集」を公表~課徴金納付命令勧告以外の不正会計事例も紹介~

 《速報解説》 証券取引等監視委員会、「開示検査事例集」を公表 ~課徴金納付命令勧告以外の不正会計事例も紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   証券取引等監視委員会事務局は、去る10月3日、「開示検査事例集」を公表した。 これまでは、「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」という名称で公表されてきたものを、「課徴金納付命令勧告を行った事例だけでなく、さまざまな事例を積極的にご紹介することとした」ために名称を変更したと説明されている。 公表された「開示検査事例集(以下「事例集」と略称する)」の目次は次の通り。 本稿では、事例集のうち、最近の開示検査の動向を知るうえで参考になると思われるⅠからⅢまでを中心にその内容をご紹介したい。   Ⅰ 最近の開示検査の取組みについて 事例集冒頭、最近の情報開示に不備が認められた事案の特色として、以下の3点が挙げられている。 そのうえで、証券取引等監視委員会(以下「監視委」と略称する)は、開示規制違反の早期発見・早期是正及び開示規制違反の再発防止・未然防止を確実に推し進めるため、開示検査について次のような取組みを実施している。 また、平成28年度の開示検査の実績としては、以下のとおりである。   Ⅱ 最新の検査事例 次に、事例集は「最新の検査事例」として、具体的事例を9件、個別事例を3件、公表している。【事例1】から【事例3】までは、開示検査後、上場廃止となっている。 なお、事例集では、会社名等は公表されていないが、上場廃止になった3件について会社名を記しておくと、【事例1】株式会社メディビックグループ、【事例2】モジュレ株式会社、【事例3】株式会社MAGねっとホールディングスである。   Ⅲ 最新の事例の特色・傾向 平成28年度の開示規制違反のほとんどは、不適正な会計処理による有価証券報告書等の虚偽記載であり、架空売上の計上、売上の前倒し計上など、上記【事例1】から【事例9】に記載のとおり、売上をめぐる不適正な会計処理が目立ったということである。 そして、開示規制違反の背景・原因としては、多くの場合、 が背景としてあり、次のような開示規制違反の原因を把握したということである。 事例集の最初に《証券取引等監視委員会からのメッセージ》として、監査役・監査委員、会計監査人に対する監視委の期待が述べられている。引用して、本稿を締め括りたい。 (了) ↓お勧め記事↓

#No. 238(掲載号)
#米澤 勝
2017/10/11

《速報解説》 「不正調査と人工知能(AI)」をテーマに第8回 ACFE JAPANカンファレンス開催~AIの台頭と士業への影響についても議論を交わす~

 《速報解説》 「不正調査と人工知能(AI)」をテーマに 第8回 ACFE JAPANカンファレンス開催 ~AIの台頭と士業への影響についても議論を交わす~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   一般社団法人日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)は、10月6日(金)、御茶ノ水のソラシティ カンファレンスセンターにおいて約300名の参加者のもと、第8回ACFE JAPANカンファレンスを開催した。 カンファレンスの開催概要、プログラムはこちら。 午後1時過ぎ、ACFE JAPAN理事長である濱田眞樹人氏の開会挨拶に続き、メディアアーティスト 筑波大学学長補佐・図書館情報メディア系助教 デジタルネイチャー研究室主宰 落合陽一氏による基調講演「脱近代へ」からカンファレンスがスタートした。 壇上の落合氏は、持参したPCを操作しながら、早口気味に、自身の作品の解説を始める。ACFE会員の多くは企業の内部監査部門に属する会社員、公認会計士、弁護士などで、ほとんどが文系人間だと思われる。一方、「数学が大好き、得意」と公言する落合氏の講演は、広範な物理学・数学の知識を基にした新しい技術の成果やアートが中心で、筆者を含め、どの程度理解できているのか、心許ない。 イントロダクションに続いて、本日のテーマである「脱近代へ」と話がつながっていく。 統計判断が難しい事象について、少ないデータセットから判断できる人、勘所の良さやデータに対する繊細さをもつことが大事であると説き、そのためにはケーススタディが重要であると言葉を連ねる。荘子の「胡蝶の夢」から華厳経の「事事無碍」の世界を語り、松尾芭蕉の英訳された俳句を紹介して、「この何がいいのか、日本人以外にはわからない」と会場の笑いを誘う。頭の中に溢れる知識に口から出る言葉が追いつかないような講演だった。 講演の終盤、「世界は実年より1.8倍速く進んでいる」という事例として、少し前まで修士論文のテーマになっていた実験を、今の中学3年生が3日あればできるという話を挿入し、「下手に自分で考えるよりは誰かがやってくれるのを待っていた方が早い時代」においては、学び方を身につけておかないと間に合わなくなってしまうと話し、依存度の高いことは決して悪いことではなく、失敗を防ぐことにつながっているのだと「生存戦略」へ話をまとめた。 ◆  ◆  ◆ 続いては、青山学院大学大学院教授の八田進二先生との対談。八田先生が、落合氏の話を「半分以上は理解できない人がいたのではないか」と言いながら進めた対談で、何よりも印象的だったのが、八田先生の問いかけの最中に、落合氏が「いま思いつきました」と言って、八田先生の話を遮って話し始めたことだった。筆者は長く、八田先生による対談やパネルディスカッションを聞いてきたが、他人の話を遮ることはあっても遮られることはなかった八田先生が、たじたじとなりながら、話が進む。 (落合陽一氏(右)、八田進二氏(左)) 無理に落合氏の話を「不正とAIの関係」に話を誘導した八田先生の問いに応えて、落合氏は、「会計システムにAIを入れてもダメ」だが、「個人の特性をAIで分析して魔が差す要素をマッピングする」ことが可能で、「リスクの発生は機械学習で減少できる」と言う。 ◆  ◆  ◆ 休憩をはさんで、もう一つの講演、弁護士の井上朗氏による「AIを活用した不正調査の現状と今後の課題」。 落合氏とは打って変わって落ち着いた口調で、井上弁護士がこれまで手がけてきた国際カルテル事件におけるアメリカ司法省との戦いの中で、どのようにAIを活用してきたかが語られる。1億を超える電子メールやドキュメント類をすべて読むことなど不可能で、これをAIによって重要なドキュメントに絞り込み、それを読み込んで仮説の修正や裏付けを行い、インタビューによって事実を明らかにしていくというプロセスが説明された。 (井上 朗 氏) 実はカンファレンス当日の午前中、プレカンファレンスが行われ、その中で、PwCアドバイザリー合同会社ディレクターの池田雄一氏による「AIを活用した不正調査」という講演が行われていた。講演の中で、池田氏から「ドキュメントの仕分け」「レビュー」に使われているAI技術の詳しい解説があり、筆者も含め、池田氏の講演を聞いていた参加者は、井上弁護士の説明が大変わかりやすく感じたはずだ。 井上弁護士は、今後のAIを使った不正調査について、「兆候を入力すると不正の全体像(仮説)や調査の道筋が示されること」を挙げる一方、人力に頼らざるを得ない「証拠収集の複雑化・困難さ」を課題として講演を締め括った。 ◆  ◆  ◆ カンファレンスの最後は、パネルディスカッション。八田先生をモデレーターに、4人のパネリストが壇上に並ぶ。 井上弁護士は、「AIが採用、業績評価、昇進といった人事面で幅を利かせることになり、殺伐とした会社組織になるだろう」と予言し、「兵隊のように単純作業をするだけの弁護士は不要になる」と、AIの未来を語る。公認会計士の丸山琢永氏も、「AIにより、不正の兆候を発見するための全件精査が可能となる」とその効用を認めたうえで、「ロボットや機械学習のアルゴリズムを作る人は残るが、それ以外の会計士は不要になる」と、井上弁護士の考え方に同調した。一方、弁護士の山口利昭氏は、両名の主張に異を唱え、「本音と建前の使い分けや信頼関係の構築はAIにはできない」と反論。 ディスカッションの最後には、八田先生から「不正抑止のために大事なこと」を問われ、井上弁護士は「経営資源を投入すること」、丸山会計士は「すべてのデータをデジタル化すること」、守本氏は「経営者の自覚」、山口弁護士は「不正抑止にAIは不可欠であり、AIによる調査の適法性について監査役・監査役会がチェックすること」をそれぞれ挙げて、ディスカッションを終えた。 (パネルディスカッションの様子) 最後にACFE JAPAN事務局長の脇山太介氏による閉会挨拶をもって、カンファレンスは終了した。 *  *  * ACFE JAPAN事務局から、第8回カンファレンスで「AI」を取り上げるということを筆者が聞かされたのは6月頃であっただろうか。正直なところ、「?」と「大丈夫かな」という懸念が同時に浮かんだものだったが、結果的には、落合陽一氏というゲストスピーカーを迎えることができたことで大いに盛り上がり、パネルディスカッションでも、AIが変革を迫る会計士業界や弁護士業界の未来について、大きく意見が分かれていることがかえって関心を惹き、良いテーマ選定であったと参加者の多くが認めるところとなった。 (了) ↓お勧め記事↓

#No. 238(掲載号)
#米澤 勝
2017/10/11
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