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〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2025年5月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2025年5月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年5月1日から5月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 なお、四半期ごとの速報解説のポイントについては、下記の連載を参照されたい。   Ⅱ 法令関係 次のものが公表されている。 〇 「特定目的信託財産の計算に関する規則」等の改正(案) (内容:「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)等を受けたもの。意見募集期間は2025年5月29日まで) (了)

#No. 622(掲載号)
#阿部 光成
2025/06/12

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第10回】「中途採用者に対する退職勧奨及び解雇のポイント」

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第10回】 「中途採用者に対する退職勧奨及び解雇のポイント」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社の従業員Aについてご相談があります。当社はAの職歴等に照らしてAが当社の業務に関する高いスキル等を有することを期待して中途採用しましたが、Aは当社が期待したとおりのパフォーマンスを上げていません。 また、Aには、周りの従業員に対して高圧的に接してトラブルを起こすといった問題も見られます。 よって、Aに退職してほしいと考えていますが、Aに退職してもらうために注意すべきポイントを教えてください。 【Answer】 従業員Aに対して退職勧奨を実施する場合は、Aのそれまでの経験やスキル等に対する自負を尊重したやりとりを行うことがポイントになります。 Aを解雇する場合は、Aには特定の業務に関する能力だけでなく、マネジメント能力やコミュニケーション能力が不足していることを解雇の理由とすることになると思いますが、まずはそれらの能力があることがAとの雇用契約の内容になっているかどうかを確認することがポイントになります。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 1 中途採用者に対する退職勧奨 従業員を退職させることを検討する場合に、実務上、まずは退職勧奨が実施されることが多いことは、本連載【第6回】において論じたとおりであるが、これは中途採用者についても当てはまる。 特に、(あくまで筆者の経験に基づく感想ではあるが、)中途採用者は自分の経験やスキル等に自負があることが多かったり、転職慣れしていることなどから、その会社では自分の経験やスキル等を活かせないと悟ると、比較的スムーズに退職勧奨を受け入れて次の転職先を探すことが少なくないように思われる。 なお、中途採用者の多くが自分の経験やスキル等に対して自負を持っていると思われることに照らすと、会社は当該中途採用者の経験やスキル等自体を否定するものではなく、あくまで会社が求めているスキルや仕事のやり方に合致しないだけであり、当該中途採用者がもっと活躍できる場所が他にあると思う、といった方向で話を進めるのがよいのではないかと思われる(ただし、当該中途採用者が退職勧奨に応じなかった場合に解雇のプロセスに進む可能性がある場合には、会社が当該中途採用者のスキル等に全く問題がないと評価していると見られないよう、表現等に注意すべきである。)。   2 中途採用者の解雇 従業員Aが退職に合意しない場合に従業員Aを退職させるためには解雇を検討せざるを得ない。この点、従業員Aには特定の業務に関する能力だけでなく、マネジメント能力やコミュニケーション能力の不足が見られるようなので、これらの点を解雇の理由とすることが考えられる。 (1) 特定の業務に関する能力不足を理由とした解雇 本連載【第2回】において説明したとおり、解雇は客観的に合理的な理由及び社会的相当性が認められなければ無効となり、勤務成績や勤務態度の不良に基づく解雇においては、雇用契約上の労務提供義務の不履行に至っているといえるほどに労務提供能力や適格性が欠如しており、指導や教育訓練、配置転換等によっても改善等が期待できず、解雇を回避することが難しいといえる必要がある。 このことは、中途採用者の解雇についても同様であるが、中途採用者は特定の業務について高い能力・スキルを有することを前提として採用されることから、能力不足が判明した場合、新卒採用者の場合と比較すると解雇の有効性が認められるハードルは低くなる。例えば、新卒採用者については能力不足が判明した場合であっても、改善指導等を経てもなお能力不足等が解消されないといった事情がなければ解雇が無効となる傾向にある。 一方、中途採用者はそもそも高い能力・スキルを有することが前提であることから、新卒採用者に対して求められるほど改善の機会を与えることは要求されない。 また、職種限定合意(本連載【第7回】参照)が認められる場合はもちろんのこと、そうでない場合においても、中途採用者については一定の職種やポジションにおいてパフォーマンスを発揮することが期待されて雇用されることから、新卒採用者ほどに配転等の機会を与えることが求められるわけではない。 もっとも、以上は、中途採用者に高い能力・スキルがあることが契約内容になっていることが前提であり、単に会社が一方的にそのような期待をしているというだけでは当てはまらない。 よって、会社においては、募集要項や雇用契約書、採用過程でのコミュニケーションの内容などに照らして、中途採用者に高い能力・スキルがあることが契約内容となっているかを確認する必要がある。 (2) マネジメント能力・コミュニケーション能力等の不足を理由とした解雇 一般に、コミュニケーション能力や協調性の欠如、上司への反抗的態度なども解雇事由となり得る。社会人経験を持つ中途採用者については、業務上の能力やスキルだけでなく、他の従業員とうまくやっていく高いコミュニケーション能力やマネジメント能力を有することを前提に採用されることが多いことから、業務上の能力やスキルの欠如・不足を理由とする解雇と同様、これらを理由とする解雇についても比較的緩やかに認められる傾向にある(以下裁判例参照)。 筆者の経験上、解雇の対象となる中途採用者には、業務上の能力やスキルに関する問題点もさることながら、自分のスキルや経験に自信があるあまり、自分の仕事の進め方に固執して会社に反抗したり、他の従業員とのコミュニケーションがうまくいかないといった問題が見られるケースが(新卒者と比較すると)多いように思われる。よって、中途採用者の解雇に際して、場合によっては、マネジメント能力やコミュニケーション能力等の問題点について重点を置いて主張を展開することも考えられる。 (了)

#No. 622(掲載号)
#柳田 忍
2025/06/12

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第19回】「任意後見契約に記載すべき事項」

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第19回】 「任意後見契約に記載すべき事項」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 顧客からの依頼で任意後見契約の締結を実際に進めていくことになりました。契約書にはどのような事項を記載すればよいのでしょうか。また何か注意点はありますか。 【A】 任意後見契約は多くのひな形が紹介されていますが、ポイントを理解しないまま作成を進めるとトラブルにつながります。 いったん任意後見契約を締結した後、内容を変更したいと考えた場合は、改めて公正証書を作成する必要があることも頭に置いておきたいところです。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 任意後見契約に記載すべきこと 任意後見契約のひな形は公証人役場のホームページなどでも紹介されていますが、主に以下のような条項が記載されています。   2 任意後見契約の変更 いったん作成した任意後見契約を変更したい場合、公正証書による変更契約で対応できる場合と、いったん任意後見契約を解除して改めて任意後見契約を締結することが必要な場合があります。変更契約で対応できるケースには報酬額の変更が該当します。 いったん任意後見契約を解除して改めて任意後見契約を締結することが必要なケースには、委任者から受任者に代理権を付与する事項の変更が該当します。委任者から受任者に対していかなる代理権を付与するかは、任意後見契約の重要なポイントといえるため次回解説を行います。 (了)

#No. 622(掲載号)
#北詰 健太郎
2025/06/12

《速報解説》 リース会計基準等の修正を受けた「財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令(案)」が公表される~リースの借手・貸手の定義を会計基準に合わせて改正~

《速報解説》 リース会計基準等の修正を受けた「財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令(案)」が公表される ~リースの借手・貸手の定義を会計基準に合わせて改正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025(令和7)年6月6日、金融庁は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。財務諸表等規則ガイドラインも改正する。 これは、「金融商品会計に関する実務指針」(改正移管指針第9号)、「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)等の修正を公表したこと等を受けたものである。 意見募集期間は2025年7月7日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 財務諸表等規則等の主な改正 1 リース会計基準関係 リースの借手の定義を「リースにおいて原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に獲得する企業をいう」から、「リースにおいて原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に獲得する者をいう」と改正するなど、「企業」から「者」に改正する(貸手も同様。財務諸表等規則8条の6、連結財務諸表規則15条の24、67条の2)。 2025年4月23日に、企業会計基準委員会が公表した「企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の修正について」では、2025年2月5日に公表された「会社計算規則の一部を改正する省令案に関する意見募集について」に対して寄せられた意見への対応として、「借手」の定義に企業以外の者が含まれることの明確化が図られていることを契機としてリース会計基準における「借手」及び「貸手」の定義を見直した結果、リース会計基準においても同様の対応を行うこととしたとしている。 2 金融商品実務指針関係 「金融商品に関する注記」において、組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする取扱いを行っている場合には、その旨、当該取扱いを行う組合等の選択に関する方針及び当該取扱いを行っている組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額を併せて注記するものとする(財務諸表等規則8条の6の2、138条、連結財務諸表規則15条の5の2、111条)。   Ⅲ 施行日等 公布の日から施行する予定である(経過措置に注意)。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#阿部 光成
2025/06/10

《速報解説》 東京国税局、非財務指標を組み入れた業績連動型株式報酬の税務上の取扱いに係る文書回答事例を公表~業績連動指標と非業績連動指標が混在している場合の取扱い示す~

 《速報解説》 東京国税局、非財務指標を組み入れた 業績連動型株式報酬の税務上の取扱いに係る文書回答事例を公表 ~業績連動指標と非業績連動指標が混在している場合の取扱い示す~   税理士 坂井 晴行   令和7年6月5日、国税庁ホームページにおいて、東京国税局による令和7年5月20日付文書回答事例「非財務指標を組み入れた業績連動型株式報酬の税務上の取扱いについて」が公表された。   (1) 要旨 業績連動型株式報酬制度に係る報酬として各業務執行役員に対して交付する株式の数を、業績連動指標と非業績連動指標であるESG対応状況を示す指標を組み合わせて算定した場合には、全額を否認するのではなく、業績連動指標を基礎として客観的に算定された部分は損金算入業績連動給与の額として取り扱って差し支えがないとする回答を公表した。   (2) 事前照会の内容 次の算式で算定される交付株式数による株式報酬を業務執行役員に対して支給することとしている。 [算式] (注1) 役位ごとに定められた交付株式数の基準となる株式の数 (注2) 当社の株式成長率を示す指標(0~150%)(株式交付割合Ⅰは、業績連動指標) (注3) 対象役員のESG対応状況を示す指標(80~120%)(株式交付割合Ⅱは、非業績連動指標) (注4) 役務提供期間における在任月数の割合 照会者は業績連動指標を基礎として客観的に算定された部分がある場合における当該部分、すなわち、本件株式報酬のうち上記[算式]の「株式交付割合Ⅱ」を80%(最小値)として算定するとしたならば算定される部分(以下「本件業績連動部分」という)(下記[算式a])の額については、損金算入業績連動給与の額として取り扱っても差し支えないかを照会した。 [算式a]本件株式報酬のうち本件業績連動部分 [算式b]本件株式報酬のうち本件業績連動部分以外の部分   (3) 見解 東京国税局は、照会者の見解で差し支えない旨を示した。 今回の事例により、業績連動指標と非業績連動指標が混在していたとしても、その株式報酬のうち、業績連動指標を基礎として客観的に算定された業績連動部分の額は、損金算入業績連動給与の額として取り扱って差し支えないことが明らかにされた。 (了)

#坂井 晴行
2025/06/06

《速報解説》 日本監査役協会、四半期開示制度の改正など各種制度改正を反映した「監査役監査実施要領」の改定版を公表

《速報解説》 日本監査役協会、四半期開示制度の改正など各種制度改正を反映した「監査役監査実施要領」の改定版を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年6月3日、日本監査役協会は、改定版「監査役監査実施要領」を公表した。 これは、2024年4月の金融商品取引法における四半期開示制度の改正などの各種制度改正を反映したものであるが、全体にわたって記載内容を修正しているとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改定内容 次のとおりである。 (了)

#阿部 光成
2025/06/05

プロフェッションジャーナル No.621が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年6月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.621を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/06/05

monthly TAX views -No.148-「石破総理の「国債発行による消費税減税」への警鐘は間違っていない」

monthly TAX views -No.148- 「石破総理の「国債発行による消費税減税」への警鐘は間違っていない」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   筆者は常々、日本の政治家はマーケット(市場)にあまりにも関心が低い、と思ってきた。このことが、野党政治家が安易に財源なき消費税減税を主張する要因の1つではないかとも考えている。 このような中、国会で興味深い論戦が行われた。石破総理は5月19日の参議院予算委員会で、「日本の財政状況はギリシャよりも悪い」とし、「財源を示すことなく国債発行で減税するという考え方は賛同しかねる」と答弁した。 これに対し国民民主党の玉木代表は翌日の記者会見で、「日本国の首相が、自国の国債市場に影響を与えるような発言を平気でするのは信じられない」と批判した。 産経新聞の阿比留記者もコラムで、「石破首相の『財政、ギリシャより悪い』は江藤発言より危険」という見出しを付け、総理の財政はよくないとの発信が、対外的に投資は控えた方がいいということにつながると非難した。 このやり取りはどこか滑稽だ。質問者(国民民主党)が財源なく15兆円もの財源を失う消費税5%への減税を主張したのに対し、総理は「大規模な減税をすれば財政危機を招く」として批判した。財源なき減税論を主張する方が、それを否定する方に「自国の国債市場に悪影響を与える」と批判するのは、全くの筋違いと言えよう。 国民民主党の質問者のよって立つ論理は、いわゆるMMT(現代貨幣理論)で、「自国通貨を発行する政府は財源に制約されることなく、財政支出を拡大し貨幣を供給することができる」という考え方である。この考え方は、本場米国でもすでに「終わった理論」でいまだに唱えている経済学者はごく少数である。 総理が「ギリシャ」を持ち出したのがおかしいという批判があるが、ギリシャ危機発生時のストックベースの債務残高GDP比は128%で現在のわが国は同240%であるため、数字を見る限り的外れではない。日本国民は、財政破綻のイメージとして、テレビで繰り返し放映されたギリシャ国民の暴動の場面を思い浮かべるので、総理はそれを例に出したのではないだろうか。 問題の本質は、ギリシャの財政状況が日本の現状に類似しているかどうかではない。国民民主党の主張する「国債発行による消費税5%への引下げ」が市場に与える不測の影響への危機感を持つことの重要性を述べたものだ。 筆者は、「財政破綻」するかどうかが問題の本質であるとは思わない。国民にとって重要なことは金利の上昇や加速するインフレで、こちらはすでに目の前に生じている。これ以上の急激な金利上昇や加速度的なインフレは国民生活に大きなマイナスを与えるので、それを引き起こす財政規律なき減税論には警鐘を鳴らす必要がある。 *  *  * 国債市場は、日本銀行が金融正常化を進め国債買入れ額を減額し、国内機関投資家や銀行が国債購入を控える中、外国人投資家頼みになっている。とりわけ30年物日本国債の利回りは2004年以来の高値を記録した。日本国債の格付けの引下げもささやかれている。国民民主党のよって立つMMTの主張がいかに空想的か、市場の動向を見れば明白だ。 政治家はもっと市場の動向に注意を向け、安易な減税論からくる市場の警鐘を知る必要がある。石破総理はその役割を果たしたまでである。 (了)

#No. 621(掲載号)
#森信 茂樹
2025/06/05

仕入税額控除制度における用途区分の再検討-ADW事件最高裁判決から考える- 【第5回】

仕入税額控除制度における用途区分の再検討 -ADW事件最高裁判決から考える- 【第5回】 (最終回)   森・濱田松本法律事務所 外国法共同事業 パートナー 弁護士・税理士 栗原 宏幸   8 用途区分に関する近時の裁決例の検討 本稿の最後に、用途区分の判定に関連する近時の裁決事例を2件取り上げ、若干の検討を行う。いずれも金融機関のATMの相互利用に関する課税仕入れが問題となった事案である。 (1) 国税不服審判所令和5年9月1日裁決・データベース未登載(※5)(結果:棄却) (※5) 裁決書は筆者のnoteの記事のリンクから入手可能である。 ① 事案の概要・争点 納税者(請求人)は金融機関であり、提携金融機関と契約を締結し、提携金融機関のATM等(提携ATM等)を自行の顧客が請求人との取引に関して利用した場合に、提携金融機関に対し、取扱件数1件当たりにつき、契約で定められた所定の手数料を支払っていた。この顧客が提携ATM等を利用して行う請求人との取引には、預金(ないし貯金)の引出しなどのほか、請求人から顧客に対する貸付(本件貸付)に係る取引も含まれていた(裁決書がマスキングされているため詳細は不明であるが、定期預金(ないし定期貯金)を担保とする担保貸付と推測される。)。 本件では、請求人が提携金融機関に対して支払う上記の手数料のうち、本件貸付を伴わない取引に係る手数料(本件支払手数料)の用途区分が争われた。 請求人は、顧客が提携ATM等を利用して行った請求人との取引に関し、請求人は顧客からATM利用手数料(課税売上)を収受することから、本件支払手数料は、ATM利用手数料のみに対応する課税仕入れであるとして、課税対応課税仕入れに当たると主張した。 これに対し、課税庁(原処分庁)は、請求人が本件貸付の受取利息(非課税売上)を収受することに着目し、本件支払手数料は、納税者の顧客に対する役務提供から生じるATM利用手数料(課税売上)と受取利息(非課税売上)に係る収入全体に寄与する費用であるとして、共通対応課税仕入れに該当すると主張した(※6)。 (※6) 上記のとおり、本件で用途区分が争われたのは、請求人が提携金融機関に対して支払った手数料全てではなく、顧客が提携ATM等を利用して行った請求人との取引のうち、本件貸付を伴わない取引に係る手数料(本件支払手数料)に限られており、本件支払手数料に係る取引から直接生じるのは課税売上(ATM利用手数料)だけであり、非課税売上(本件貸付の受取利息)は生じない。そのため、原処分庁は、顧客が提携ATM等で行った個々の取引単位で対応関係を判断するのではなく、提携ATM等を利用した取引全体との対応関係に基づいて共通対応を主張したのではないかと解される。 ② 審判所の判断(裁決)の概要 審判所は、用途区分の判断枠組みとして、ADW事件最高裁判決の判示内容(【第3回】の4(2)①)と同旨を述べた上で、㋐本件支払手数料の用途区分について、納税者と提携金融機関との間の契約書の記載内容から、本件支払手数料は、請求人がその顧客に提携ATM等を利用させてサービスを提供することにより生じる収益全体に寄与するものであり、これに対応する収益は、各取引の種類ごとに区別されるものではなく、請求人がその顧客に提携ATM等を利用させてサービスを提供することを通じて得られるもの全体、すなわち、ATM利用手数料(課税売上)及び本件貸付の受取利息(非課税売上)というべきであるとして、本件支払手数料は共通対応に区分されると判断した(原処分庁の主張と同旨)。 さらに、請求人が、提携ATM等の取引に係る情報から個々の取引単位で用途区分の判定ができると主張していたことから、審判所は、㋑仮に当該主張を前提とした場合に、契約書上は本件貸付を伴う取引に係る課税仕入れと本件貸付を伴わない取引に係る課税仕入れとに区別されていないとしても、本件支払手数料の内容及び性質等から用途区分上の区別ができるかどうかを検討し、請求人が提携金融機関に支払う手数料の額がATM利用手数料の額を上回るケースがあることに着目して、本件支払手数料は、その内容等に照らし、提携ATM等の利用を通じた既存の顧客の維持あるいは新規顧客の獲得という効果がある支出であり、具体的な収入と直接的な対応関係がない支出ともいえるなどと述べて、課税対応課税仕入れに該当するとはいえないとして請求人の主張を排斥した。 ③ 検討 裁決が共通対応への区分の論拠として掲げた㋐と㋑の関係性は必ずしも明確ではない。㋐が直接の論拠であり、㋑は請求人の主張する事実関係(提携ATM等の取引に係る情報から個々の取引単位で用途区分の判定ができること)が認められると仮定した場合の仮定的判断にすぎないようにも思われるが、仮定的判断とはいえ、㋑は㋐と矛盾する内容である上(㋐は対応関係が認められる売上を積極的に認定しているのに対し、㋑は、むしろ対応関係が認められる売上を積極的に認定することは困難であることを前提とするものである。)、契約書の定め方というある種形式的な理由のみに基づいて対応関係を判断することが合理的とも思われない。 このように裁決の論理構成には疑問がある上、全般的な印象として、提携ATM等に関する提携金融機関との提携の内容や請求人のビジネスモデルに照らし、フラットな視点で用途区分を判断しているというよりも、「本件支払手数料が課税取引のみに対応している(純度100%で課税取引に対応している)」という請求人の主張が正しいかどうかという観点で検討し、その主張が成り立たないこと(純度100%の対応関係とは言い切れないこと)を理由に共通対応という結論を導いているように見える。「審判所」の判断であることからやむを得ないという評価もあり得るが、この裁決のように、あたかも請求人が用途区分の立証責任を負っているかのような判断手法が果たして妥当かどうかは、今後、租税法学者や租税実務家の間で真摯に議論されるべき問題であると考える。 (2) 国税不服審判所令和5年3月16日裁決(※7)・TAINSコードF0-5-390(結果:全部取消し) (※7) 本裁決はADW事件最高裁判決の10日後の裁決であり、同判決の内容を前提にしてはいないと考えられる。 ① 事案の概要・争点 請求人は、提携金融機関との間でのATMの相互利用に関し、提携に係る経費の分担金と、自行の顧客の提携ATMの利用件数に応じた提携金融機関に対する手数料(本件支払手数料等)を負担しており、本件支払手数料等が共通対応に区分されることを前提に、本件支払手数料等に係る控除税額の計算に用いる準ずる割合として、大要、以下の内容の割合の適用を申請し、所轄税務署長(原処分庁)の承認を受けた。 ところが、原処分庁は、請求人に対する税務調査の結果に基づき、準ずる割合の承認を取り消す旨の処分をした。 裁決書がマスキングされているため詳細は不明であるが、原処分庁は、請求人が恒常的に実施していた顧客に対するATM利用手数料のキャッシュバックに着目し、提携ATMにおける課税取引は実質的には課税取引とはいえず、上記の計算方法は合理的な算定方法ではないとして取消処分を行ったようである。 ② 審判所の判断(裁決)の概要 審判所は、本件支払手数料等は共通対応に区分されると述べた上で(本件では元々用途区分の判定は争われていなかった。)、本件支払手数料等の額がいずれも取引件数を基礎として算定されることを指摘し、このことから上記の準ずる割合は合理的であると判断した。 そして、キャッシュバックに関する原処分庁の主張に対しては、上記の準ずる割合の計算方法は、キャッシュバックの対象取引が計算式中の課税取引の件数に含まれることを前提にするものではなく、対象取引が課税取引の件数に含まれるかどうかは準ずる割合を具体的に計算する際の適用上の問題であって、その計算方法自体の合理性に影響を及ぼす事情とはいえないと述べて、原処分庁の主張を排斥し、処分を取り消した。 ③ 検討 本裁決は、事業者が準ずる割合の申請を検討する際に参考になるものと考えられる。本件の計算方法について合理性が認められたのは、本件支払手数料等の額が取引件数を基礎として算定されることを踏まえ、取引件数を用いて準ずる割合を計算するものであったからであろう。 他方、本裁決が指摘するように、「計算方法自体の合理性」と「その計算方法を用いた実際の計算の妥当性」は別の問題であり、その計算方法自体に合理性が認められて承認を受けることができたとしても、その具体的な適用を誤る場合には、その計算方法に基づく控除税額が過大であるとして否認される可能性があるため注意を要する。   9 おわりに 本稿で検討したとおり、ADW事件最高裁判決は、今後の用途区分の判断のあり方に多大な影響を与えるものであるといえる。事業者としては、同判決の内容を踏まえ、取引の商流や契約書の内容などを吟味してこれまでの用途区分の取扱いを見直すとともに、必要に応じて準ずる割合などを活用し、税務調査での否認リスクに備えておく必要があろう。 また、同判決は、用途区分以外の仕入税額控除に関する諸問題(帳簿やインボイスの保存要件など)において、納税者に不利な形で援用される可能性があり、課税庁や今後の裁判例等の動向を注視する必要がある。 (連載了)

#No. 621(掲載号)
#栗原 宏幸
2025/06/05

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例75】「医療法人の理事長に対する貸付金に係る利率の水準」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例75】 「医療法人の理事長に対する貸付金に係る利率の水準」   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、今年で創業50周年を迎える、東北地方のある県の県内第二の都市に病院や診療所、訪問看護ステーション等を開設する医療法人社団X(3月決算法人)において、事務長を務めております。 医療業界はご承知の通り、ここ数年はコロナ禍に振り回されており、現場が疲弊して多数の離職者が出るなど、散々な有様でした。当医療法人においても、コロナが猛威を振るっていた2020年春から2022年末までの時期には、医療スタッフがそれへの対応にかかりっきりとなったため、管理部門のスタッフもそれにより手薄となった業務へのバックアップに入るなど、両者が一体となってただ走り続けることによりなんとかその嵐の中を潜り抜けてきたといったところでした。幸いなことにその時期は、国からコロナ関連の様々な補助金を交付されていたことから、法人の経営状況は意外に悪くなったのですが、コロナが感染症の5類に分類された2023年5月以降は、一転して補助金で上げ底となっていた収益性が一気に落ち込み、病院経営の体質改善への取り組みが待ったなしとなりました。そのため、現在、法人を挙げて業務の効率化、収益性の向上に取り組んでいるところです。 さて、そのような中、先週から所轄税務署の税務調査を受けております。そこで現在問題となっているのは、法人の理事長に対する貸付金に関してです。すなわち、医療法人傘下の診療所の建物を建て替える際、その2階及び3階部分を理事長の自宅としたのですが、その部分の建設費用相当額(約1億円)及び生活費充当金額(約2,000万円)につき一旦、銀行から法人に対し融資を受け、さらに法人から理事長個人に転貸するという方法を採っています。当該貸付金につき、法人は銀行から受けた融資と同等の金利で理事長に貸し付けていることとして、当該利息相当分に係る経済的利益につき源泉徴収を行っていますが、調査官は、建設費用相当額はともかくとして、生活費充当金額に対する貸付金利は低すぎるとして、利子税の特例基準割合によるべきと主張しております。法人としては、当該貸付金につき得も損もしていないため、銀行融資に係る金利と同等の金利で貸し付けることに何の問題もないと考えておりますが、税法上はどのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。 【A】 医療法人からその理事長への貸付金については、それに係る利率が、法人以外の第三者から貸付を受けた場合の通常の利率(第三者利率)よりも低い場合には、法人が理事長に対してその差額相当分に係る利息金額の経済的利益を供与したことになり、理事長側においては当該経済的利益が給与所得に該当するため、法人は源泉徴収義務者として源泉徴収する必要があります。 この場合、ここでいう「第三者利率」は、当該貸付金につき、法人が銀行から受けた融資を原資に貸し付けたものであることが明確である場合には、一般に、当該融資に適用されている金利によることとなります。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 法人からその役員へ貸付金 本件は、医療法人からその役員(理事長)に対して貸付を行った場合、その貸付金利息に係る利率が問題となった事案である。本件取引を図示すると以下の通りとなる。 〇貸付金に係る取引関係図 銀行からの融資は、医療法人の経営する診療所の建物の建替資金という名目のものであったようであるが、その一部は理事長個人に転貸され、同人が個人的に使用した費用(約1億2,000万円)に充てられることとなった。当該転貸融資金のうち、理事長の自宅に該当する診療所の2階・3階部分のものは約1億円であり、残りの約2,000万円は理事長の生活費充当額である。   (2) 法人からその役員への貸付金に係る利率 さて、上記(1)のような医療法人からその役員である理事長への貸付金については、税務上、それに係る利率が、法人以外の第三者から貸付を受けた場合の通常の利率(第三者利率)よりも低い場合には、法人が理事長に対してその差額相当分に係る利息金額の経済的利益を供与したことになり、理事長側においては当該経済的利益が給与所得に該当するため、法人は源泉徴収義務者として源泉徴収する必要がある。それでは、当該貸付金に係る金利(第三者利率)はどのように設定されるのであろうか。 これについては、所得税法の原則に従えば、そのような経済的利益を享受するときの価額(すなわち時価)により評価することとなり(所法36②)、通常は、理事長が他の金融機関等から借り入れた時の金利をベースに評価するのが妥当ということになるのであろうが、それを把握することは実際には困難である場合が多い。そのため、所得税基本通達において、源泉徴収義務者の予測可能性を高めるといった目的から、当該貸付金が法人において他から借り入れて貸し付けた(転貸した)ことが明らかである場合には、その借入金の利率によることとされている(所基通36-49)。上記(1)で示した本件のような貸付金については、正に当該規定が適用されることとなる。したがって、その利率は、当該貸付金につき法人が銀行から受けた融資を原資に貸し付けた(紐づけ可能な、転貸した)ものであることが明確であることから、当該融資に適用されている金利によることとなる。 ただし、銀行が建物部分と生活費相当分とに同一の金利を適用しているのかどうかについては、融資条件によることとなるであろう。しかし、そもそも、建物向けの融資を生活費に流用していると捉えられる場合には、融資条件違反となる可能性が否めない。 なお、同通達では、転貸融資のように紐づけられるものではない場合には、貸付を行った日の属する年の租税特別措置法第93条第2項(利子税割合の特例)に規定する特例基準割合(2025年中は0.9%)による利率で評価することとされている(所基通36-49)。   (3) 医療法人の理事長に対する貸付金に係る利率の水準が争われた事例 それでは本件と同様に、医療法人の理事長に対する貸付金に係る利率の水準が争われた事例(東京地裁平成27年9月15日判決・税資265号-137(順号12720)、TAINSコード:Z265-12720)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 本件は、平成5年7月21日に設立された医療法人社団であり、その理事長である甲の所有する建物において診療所を開設している原告が、処分行政庁から、(ア)平成21年7月から平成22年6月までの事業年度の所得に対する法人税に関し、更正及び過少申告加算税の賦課決定を受けるとともに、(イ)平成18年1月から平成22年6月までの理事長の給与等について源泉徴収をすべき所得税に関し、納税の告知及び不納付加算税の賦課決定を受けたのに対し、その税額が過大であるから違法であるなどと主張して、上記各処分の取消しを求めている抗告訴訟(処分の取消しの訴え)である。 原告は、その設立以来、随時、甲に対して金銭を貸し付けてきた。なお、本件貸付金に関しては、契約書は作成されていない。本件貸付金の利息は、原告の総勘定元帳の「受取利息」勘定及び「未収入金」勘定において、以下の表の通り計上されていた。 〇貸付金利息の内訳 (注) 平成22年6月30日の837万6,435円は、帳簿上、当初は918万9,835円と記載されていた。 ② 事案の争点 ③ 裁判所の判断 《争点1について》 《争点2について》 なお、本件は控訴されずに確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 本裁判例については、本件との関連で、専ら争点2についてみていきたい。法人(特に同族会社)がその役員(代表取締役等)に金銭を貸し付けるケースは珍しくないが、その際には当然のことながら、法人は当該貸付金に係る利息を貸付先である役員から徴収する必要がある。その利率はどの程度であると税務上問題ないといえるのかというのは、実務上、地味に重要な問題である。 これについては本裁判例でも挙げられた通り、所得税基本通達に目安が示されている。すなわち、給与等とされる経済的利益の評価方法が定められたもののうち、使用者から役員等に貸し付けられた金銭に係る利息の評価方法を定めた所得税基本通達36-49において、法人が貸し付けた資金が金融機関から受けた融資を原資としていることが明らかな(紐づけが可能な、転貸融資の)場合には、法人が受けた当該融資に係る金利を用いればよいとされ、また、それ以外の場合には、法人が役員等に対して貸付を行った日の属する年の租税特別措置法第93条第2項(利子税割合の特例)に規定する特例基準割合による利率で評価することとされている。裁判例のケースは、後者に該当し、通達が利子税の特例基準割合をもって利率として定めている点は、経済的利益の供与の額の算定方法として必ずしも不合理ではないというべきである、と判示している。 本件の場合は、前者の紐づけが可能な転貸融資に該当することから、法人が受けた当該融資に係る金利を用いればよいということになるであろう。ただし、当該転貸融資が、元の融資である金融機関から法人への融資条件に反する場合、すなわち、建物の取得資金として融資した金額の一部を理事長がその生活資金に充てたとされる場合には、金融機関から即時返済を求められるといったペナルティーが科される可能性が否めない。 建物への融資と生活費への融資とではリスク等の条件が異なるため、金利も異なる(生活費の方が高い)と考えられる。実際に、本裁判例においても、「使用者の役員等に対する貸付金は、一般に、使用者と役員等との特殊な関係を反映して、担保権を設定せず、その使途及び返済期限も特に定めない形態をとることも少なくないということができ、客観的にみれば貸倒れのリスクが比較的高い類型のものであるところ、そのような類型の貸付けにおける金利は一般に必ずしも低廉なものとはいえず」とされている。しかし、これは第一義的に金融機関と法人との間の融資条件の問題であり、それが直ちに税務上の取扱いに影響を及ぼすか(すなわちリスクの違いに応じた金利を設定すべきか)どうかについては、必ずしも明確ではない。   (4) 本件へのあてはめ 医療法人からその理事長への貸付金については、それに係る利率が、法人以外の第三者から貸付を受けた場合の通常の利率(第三者利率)よりも低い場合には、法人が理事長に対してその差額相当分に係る利息金額の経済的利益を供与したことになり、理事長側においては当該経済的利益が給与所得に該当するため、法人は源泉徴収義務者として源泉徴収する必要がある。この場合、ここでいう「第三者利率」は、当該貸付金につき、法人が銀行から受けた融資を原資に貸し付けたものであることが明確である場合には、一般に、当該融資に適用されている金利によることとなる。   (了)

#No. 621(掲載号)
#安部 和彦
2025/06/05
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