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上西左大信・佐藤善恵の 「令和8年度税制改正大綱」のここに注目! 【第4回】「法人課税・消費課税・納税環境整備と今後の展望」

上西左大信・佐藤善恵の 「令和8年度税制改正大綱」のここに注目! 【第4回】(最終回) 法人課税・消費課税・納税環境整備と今後の展望 税理士法人ゆづりは 代表社員税理士 上西左大信 社員税理士 佐藤 善恵   はじめに 【第1回】・【第2回】では令和8年度税制改正大綱の基本的考え方と政治的背景を、【第3回】では個人所得課税と資産課税の具体的改正内容を見てきた。最終回となる【第4回】では、法人課税・消費課税の改正、納税環境整備、そして検討事項から見えてくる今後の税制改正の方向性について解説する。 中小企業向け税制の拡充、画期的な特定生産性向上設備等投資促進税制の創設、インボイス制度の経過措置延長など、実務に直結する重要な改正が並ぶ。また、大綱の検討事項に何が残されたのか、何が書かれなかったのかを読み解くことで、次の改正の方向性も見えてくる。   中小企業向け税制の拡充──少額減価償却資産30万円から40万円へ 佐藤:法人税の改正について見ていきたいと思います。まず、中小企業にとって使い勝手の良い制度として定着している少額減価償却資産の特例はどうなりましたか。 上西:取得価額の上限が30万円から40万円に引き上げられました。 佐藤:物価上昇を反映した改正ですね。実務的には、これまで30万円ギリギリで購入を抑えていたものが、40万円まで一括償却できるようになるので、かなり使いやすくなります。年間合計額の上限はどうなりますか。 上西:年間合計額については、従来通り300万円のまま据え置かれています。取得価額の上限は引き上げられましたが、年間で取得できる総額は変わっていないということです。なお、個々の金額の判定は事業年度に関係なく、令和8年4月1日からの事業供用分からとなります。 佐藤:取得価額の上限が上がったのは良いニュースですが、一方で要件が厳しくなった部分もありますね。従業員数要件が変更されました。現行では常時使用する従業員数が500人以下の法人が対象でしたが、改正後は400人以下に引き下げられます。つまり、従業員数が400人を超える法人は対象外になるということです。 少額減価償却資産の特例の見直しに連動して他の制度も引き上げられれましたね。 上西:そうなんです。少額減価償却資産の特例が40万円まで使えるようになったので、それと整合性を図るための改正です。ただし、制度によって改正された資産の範囲が違うので、そこは注意が必要です。金額基準が見直されたのは、中小企業投資促進税制では「工具」、中小企業経営強化税制では「工具及び器具備品」です。また、中小特例ではありませんが、特定事業継続力強化設備等の特別償却制度は「器具備品」が引上げ対象です。   大胆な設備投資の促進に向けた税制措置──建物も対象 佐藤:今回の税制改正の目玉の一つが、特定生産性向上設備等投資促進税制の創設ですね。対象企業はどのくらいの規模ですか。 上西:投資下限額が35億円となっていますが、中小企業については5億円となっているので、頑張っている中堅企業であれば十分に対象になり得ます。 佐藤:青色申告法人であれば業種は問われてないのですね。特例の内容はどうですか。 上西:即時償却または税額控除7%が選択できます。そして注目すべきは、建物や建物附属設備についても4%の税額控除が認められている点です。 佐藤:令和7年度改正の「100億円企業を目指す」改正の時に建物と建物附属設備が入ったことが話題になりましたが、今回創設された制度にはさらっと建物が含まれて4%になっています。   インボイス制度──経過措置の2年延長と2割特例の見直し 佐藤:インボイス制度についても動きがありました。 上西:大きく2つの改正があります。一つは2割特例の見直し、もう一つは適格請求書発行事業者以外からの仕入れに係る経過措置の延長です。 佐藤:まず2割特例の方から教えてください。 上西:新たにインボイス発行事業者になった小規模事業者に対して、消費税の納税額を売上税額の2割とする特例がありましたが、これを段階的に引き上げることになりました。 佐藤:個人についてのみ3割特例というのが新設されたんですよね。 上西:そうです。2割特例の後、いきなり簡易課税や本則課税に移行するのは負担が大きいので、「踊り場」として3割特例を設けたんです。2割特例が終わった後、3割特例を経て、簡易課税や本則課税に移行していく流れになります。 佐藤:二つ目の適格請求書発行事業者以外からの仕入れに係る経過措置の改正も確認しましょう。 上西:現行では、適格請求書発行事業者以外からの仕入れについて、80%、50%の2段階で経過措置が終了する予定でした。でも、小規模事業者が取引から排除されないようにするため、これを2年間延長することになったんです。 佐藤:具体的には、どういうスケジュールになりますか。 上西:80%控除の期間はそのまま維持します。その後、70%で2年間の「踊り場」を設け、50%の期間を3年間から2年間に短縮して1年間後ろに引っ張ります。そして、ゼロになる前に30%という新たな段階を1年間設けます。結果として、合計2年間延びることになります。 佐藤:かなり細かく刻んで、ソフトランディングを図っているんですね。 上西:ただし、濫用的な利用を防ぐための措置も同時に講じられています。免税事業者からの課税仕入れのうち、本経過措置の対象とできる上限が10億円から1億円に引き下げられます。本来小規模事業者を保護するための経過措置が、大規模な取引に利用されるケースがあったためです。例えば、新しく法人を設立して取引を分散させ、経過措置のメリットを享受するといった使い方も可能でしたから。 佐藤:本当に小規模でやっている事業者の方々を保護するための制度ですから、大規模な取引については制限を設けて、制度の趣旨に沿った運用を図るということですね。   納税環境整備──eLTAXのシステム障害対応 佐藤:納税環境整備についても見ていきましょう。 上西:今回、eLTAXのダイレクト納付について大きな利便性向上が図られました。 佐藤:どのように変わるんですか。 上西:現行では、eLTAXで申告等を行った後、改めて納付手続を行う必要があったんです。申告は申告、納付は納付と、二段階の手続が必要でした。 佐藤:確かに、それは少し手間ですね。 上西:今回の改正で、申告等を行う際に「自動ダイレクト」のチェックボックスにチェックを入れるだけで、法定納期限当日に自動的に納付が行われるようになります。改めて納付手続をする必要がなくなるんです。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 佐藤:申告と納付が一体化するということですね。 上西:そうです。ただし、法定納期限当日に申告と併せて自動ダイレクトのチェックを入れた場合は、金融機関の対応時間外である場合などは、実際の引き落としが法定納期限の翌取引日になります。 佐藤:それだと延滞金がかかってしまうのでは。 上西:そこが今回の改正のもう一つのポイントです。その場合でも、期限内納付があったものとみなして、延滞金を課さないという特例が設けられました。ただし、税額が1億円以下の場合に限られます。これで、e-Taxと同様になりました。 佐藤:法定納期限当日ギリギリに申告しても、延滞金の心配がないということですね。 上西:はい。これまでは、期限当日の金融機関の対応時間外に申告した場合などは、翌日以降に再度納付手続が必要で、延滞金が課されることがありました。今回の改正で、そういった心配がなくなります。 佐藤:適用時期はいつからですか。 上西:令和10年4月1日以後に行うダイレクト納付の手続について適用されます。   固定資産税の免税点引上げ──償却資産税150万円から180万円へ 佐藤:固定資産税についても改正がありましたね。 上西:償却資産税の免税点が150万円から180万円に引き上げられました。これは実務的に結構重要です。 佐藤:償却資産税は、事業用の機械や備品などにかかる固定資産税ですね。 上西:そうです。土地や建物の固定資産税は皆さんご存じですが、事業で使っている一定の機械、器具、備品などにも固定資産税がかかるんです。これを「償却資産税」と呼んでいます。 佐藤:150万円未満だと課税されないという免税点があったわけですね。 上西:そうです。償却資産の評価額が150万円未満の場合は課税されません。この基準が180万円に引き上げられたので、小規模な事業者の負担軽減になります。 佐藤:この改正は令和9年度以後の改正なので、令和8年度の申告(令和8年1月末期限)では、まだ従来通り150万円が基準になります。この点も間違えないよう注意が必要です。   検討事項──何が残されたのか 佐藤:今回の大綱の検討事項について見ていきたいと思います。 上西:検討事項は、例年に比べて項目数が絞られている印象です。重要度の高い項目に焦点を当てた構成になっていると言えるでしょう。 佐藤:具体的にはどんな項目が残っていますか。 上西:たとえば、国外居住親族に係る扶養控除等の適用についても、引き続き検討するとされています。令和2年度改正で、海外に何十人も扶養親族を持っている人がいたので、証明書類の提出を求めるなど要件を厳格化し、現行制度が令和5年1月1日から施行されて3年経つので、見直しを行うということです。 佐藤:実態調査を行うとも書いてありますね。 高校生年代の扶養控除については・・・。 上西:これは検討事項に残りました。「児童手当の支給対象の高校生年代までの拡充や高校無償化の所得制限の撤廃等の歳出面での対応や、本扶養控除の見直しの方向性を踏まえた住宅ローン控除や生命保険料控除の先行的な拡充も念頭に、引き続き検討を進め、結論を得る。」という表現になっています。 佐藤:結論が出るまでには、もう少し時間がかかりそうですね。 上西:そのようですね。他の制度との関係も含めて、慎重に検討されているということでしょう。 佐藤:ベビーシッター費用の控除についても言及されていますね。 上西:これは新しい項目です。人口減少に伴う人手不足が深刻化する中、育児や子どもの不登校を理由に会社を辞めなければならない人が出てくる。それを防ぐために、ベビーシッター制度をもっと育てていく必要があるということです。 佐藤:税制上の優遇措置を検討するということですか。 上西:そうですね。ベビーシッター費用の一部を所得控除や税額控除の対象にすることなどが考えられます。これは非常に良い方向性だと思います。   今後の税制改正の方向性 佐藤:最後に、今後の税制改正の方向性について、上西先生のお考えをお聞かせください。 上西:今回の大綱を通読して感じるのは、「公平性の確保」と「経済成長の促進」のバランスを取ろうとしているということです。 佐藤:具体的にはいかがでしょうか。 上西:公平性の確保という面では、マンション節税や小口化商品のような租税回避的なスキームに対する規制が強化されました。一方、経済成長の促進という面では、大型の投資促進税制や、研究開発税制の拡充が図られています。 佐藤:高市政権の「強い経済、世界で輝く日本」というビジョンが反映されているということですね。 上西:そうです。そして、物価連動による基礎控除の引上げという新しい仕組みの創設は、本当に画期的だと思います。今までは物価が上がっても控除額は据え置かれて、実質的な税負担が増えていた。それを解消する仕組みができたことは、大きな前進です。 佐藤:一方で、課題も残されていますね。 上西:給付付き税額控除については、大綱の表現を見る限り、「議論の中で検討する」とあります。今後の対応が注目されます。 また、法人税については、累次の税率引下げが本当に投資や賃上げにつながったのか、不断の検証が必要だと大綱に書かれています。内部留保が増えているだけではないか、という批判に対して、政府も意識しているということです。 佐藤:今後、税制がどう変わっていくか、注視していく必要がありますね。 上西:そうですね。特に、複数年財政均衡という考え方が強調されていることは注目すべきです。単年度主義に過度にとらわれない、柔軟な財政運営を目指すということですから、今後の税制改正にも影響してくる可能性があります。 佐藤:防衛財源の確保についても、引き続き議論が続きますね。 上西:令和9年1月から防衛特別所得税1%が始まり、復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がります。実質的な負担は変わりませんが、税制の形としては大きな変化です。 高市総理の所信表明演説を読むと、防衛力強化に対する強い意志が感じられます。今後の税制にも反映されていくでしょう。 佐藤:最後に、実務家に向けて何かあればお願いします。 上西:実務家として今後の税制改正の動向にも注意を払いながら、顧問先の皆様に最適なアドバイスができるよう、準備を進めていきましょう。 (連載了)

#No. 652(掲載号)
#上西 左大信、佐藤 善恵
2026/01/15

社長からの無理難題の断り方・かわし方 【第1回】「愛人への給与」

社長からの無理難題の 断り方・かわし方 第1回 愛人への給与 〈JUN税会〉 税理士 植西 正   ◆ ◇ ◆ 連載開始にあたって ◆ ◇ ◆ 「先生、これ何とか経費にしておいてよ」 「うまいこと処理するのが、先生の仕事でしょ?」 税理士業務の現場において、経営者から投げかけられるこうした「無理難題」。 コンプライアンスを盾に「無理です」と即答するのは簡単ですが、それでは社長の心情を害し、信頼関係にヒビが入りかねない――そんな実務家としてのジレンマに、日々頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。 本連載は、十数名の士業が集う勉強会「JUN税会」で検討された、現場の知恵と解決策を共有するものです。 机上の空論としての法解釈にとどまらず、「社長の意図を汲みつつ、いかに専門家として適切な方向へ導くか」という、実務の現場で求められる対応の勘所に焦点を当てます。 違法な要望に対しては、なぜそれが認められないのかを論理的に説く「断り方」。そして、正面衝突を避けながら、適法な代替案やリスクの所在を示すことで矛先を変える「かわし方」。本連載では、一筋縄ではいかない難問を前に、専門家集団がどのように法的・税務的論点を整理し、最適解を導き出していくのか、その思考プロセスを多角的に検証していきます。 *   *   * * * 解 説 * * 1 事実関係の把握 本件では、以下の事実が確認されました。   2 法的論点の整理 (1) 給与所得の成立要件 ① 所得税法上の「給与等」の意義 支払った給与が給与所得とされるためには、所得税法28条1項に定める給与等に該当しなければなりません。 ここでいう給与等とは、雇用契約(民法633)に基づくものや労働法上の賃金(労基法11)と同意であり、労働の対償として支払われるものを指します。 ② 最高裁判所の判断基準 最高裁は、給与等について次のように判示しています(昭和56年4月24日判決)。 (2) 役員給与としての取扱い 愛人への給与と認められない場合、私費流用として社長の個人所得(役員給与)とされる可能性があります。この場合、以下の2つの論点が生じます。 ① 事前確定届出給与との関係 所轄税務署長に事前確定届出給与に関する届出書を提出している場合(法法34①)、愛人への給与が社長個人への役員賞与と認定されると、届出どおりに支給されていた役員賞与も合わせて損金に算入することができなくなります。 1回でも事前の定めのとおりにされたものではないものがあるときには、役員給与の支給額全体が事前の定めのとおりにされなかったことになるとされた裁判例もありますので、注意が必要です。 ② 隠蔽・仮装による役員給与 本来は社長が経済的利益を受けているにもかかわらず、勤務実態のない愛人への給与としていることが、隠蔽又は仮装による経理に該当する可能性があります。 隠蔽又は仮装して経理することにより支給された役員給与であると認められると、その額は損金に算入されません(法法34③)。これには「経済的な利益」を含みますので、その金員が社長に直接支払われたかどうかは関係ありません(法法34④)。 (3) 特殊の関係のある使用人 仮に愛人が従業員として勤務している実態がある場合でも、支払金額の一部が損金不算入となる場合があります。 社長と「事実上婚姻関係と同様の関係にある者」(法令72二)に該当する場合、又は社長から「生計の支援を受けている者」(同令三)に該当する場合には、愛人は「その役員と特殊の関係のある使用人」となります。 この場合、愛人に支給する給与の額のうち、「不相当に高額な部分の金額」は、各事業年度の損金の額に算入することができなくなります(法法36)。 (4) 源泉所得税 社長個人の役員給与となる場合、所得税法183条により、甲社には源泉徴収義務が生じます。 源泉徴収義務は、実際に金員が支払われたかどうかに関係なく生じるものとされます。つまり、会社が愛人に直接支払った場合でも、それが社長への役員給与と認定されれば、社長に対する源泉徴収義務が発生します。 (5) 贈与税 愛人への給与が実質的に社長の役員給与からの横流しであるならば、社長から愛人への贈与と認められる可能性があります。   3 本件事例への当てはめ (1) 給与所得の成立要件について 本件では、労働条件通知書に署名し、発行された従業員証を身につけているという形式は整っています。 しかし、実態を見ると、以下の点が問題となります。 これらの事実から、労働条件通知書に署名し、従業員証を身につけているだけでは、愛人が甲社で勤務している実態があるとするのは大変困難です。 そのため、愛人に支払った給与は、所得税法28条1項に定める給与等には該当しないと考えられます。 (2) 役員給与としての取扱い ① 事前確定届出給与との関係 「事前の定めのとおりにされたものではない」役員賞与が生じているのであれば、その事業年度及び翌事業年度の役員給与の全額が損金不算入となります。 社長が事前確定届出給与の届出をしている場合、本件の愛人への給与が社長への役員賞与と認定されることにより、届出済みの役員賞与まで損金不算入となるリスクがあります。 ② 隠蔽・仮装の該当性 本来は社長が経済的利益を受けているにもかかわらず、勤務実態のない愛人への給与としていることが、隠蔽又は仮装による経理に該当する可能性があります。そうなると法人税法34条3項及び4項が適用され、この支払額は損金に算入されなくなります。 現状では、労働条件通知書に記載された内容の業務をしていないこと、勤怠管理をしていないことを課税庁が指摘したとしても、これらを隠蔽・仮装とまで認定するのは難しいと考えられます。 ただし、本来は社長が受けている利益を愛人への給与にすり替えているという実態があれば、隠蔽・仮装と認定されるリスクがあります。 ③ 無理に形式を整えることのリスク 勤務実態があるように見せるため、事実を意図的に変更することは、さらに大きなリスクを伴い、重加算税を課されることもあります (3) 特殊の関係のある使用人について 社長の愛人は「事実上婚姻関係にある者」とは認められませんが、「生計の支援を受けている者」に該当する可能性はあります。 ただし、法人税法36条は、勤務実態のある者が「役員と特殊の関係のある使用人」である場合に過大な給与が支払われた場合の規定です。 本件は勤務実態自体が認められない事例ですから、36条の適用対象ではありません。したがって、月額20万円の給与が「不相当に高額な金額」に該当するかどうかは関係がありません。 (4) 源泉所得税について 愛人に支払った給与の額が社長への役員賞与とされた場合には、社長に支払ったものとして源泉所得税が発生します。 この場合、以下の処理が必要です。 社長への通常の役員給与に愛人の給与額を加算した金額をもとに源泉徴収税額を計算することになりますので、金額が大きくなる可能性が高くなります。 (5) 贈与税について 愛人に支払う給与は、愛人の給与所得ではなく社長個人からの贈与となる可能性があると考えられます。 (6) その他 愛人に支払った電車賃やタクシー代金も(1)~(5)の検討対象に含まれます。   4 金銭の流れの整理   5 近年の裁判例 愛人や内縁の妻に支払った従業員給与をめぐる裁判例には次のようなものがあります。 判決 概要 裁判所の判断 東京地裁 令和元年5月 30日判決 納税者 敗訴 内縁の妻を有限会社の従業員として支払った給与 (月額45万円)。 重加算税も賦課。 法人代表者の役員給与の額と認定。法人税法34条3項・4項の隠蔽または仮装に該当。 高裁も原審を維持し、確定。 札幌地裁 令和6年1月 29日判決 納税者 敗訴 雇用契約書はあるものの愛人は労働契約を認識していない。重加算税も賦課。 労務の対価とは認められず生 活費援助と認定。  

#No. 652(掲載号)
#植西 正
2026/01/15

令和7年分 確定申告実務の留意点 【第3回】「特に注意したい事項Q&A-特定親族特別控除の創設に伴う申告書への影響等-」

令和7年分 確定申告実務の留意点 【第3回】 (最終回) 「特に注意したい事項Q&A -特定親族特別控除の創設に伴う申告書への影響等-」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   本連載の最終回は、令和7年度税制改正事項に関連するものの他、確定申告において注意が必要と考えられるもので、過去に取り上げていない5項目をQ&A形式でまとめることとする。 なお、本稿では、特に指定のない限り令和7年分の確定申告を前提として解説を行う。   〈令和7年分の確定申告書の様式〉 【Q1】 令和7年度の税制改正において、特定親族特別控除が創設された。令和7年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書にどのように記載するのか。 【A1】 第一表の㉔に「特定親族特別控除」欄が設けられている。ここに特定親族の人数及び合計所得金額に応じた控除額の合計額を記入する。 (※) 国税庁ホームページ「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」の5頁より抜粋。なお、赤の囲みは筆者追記。 また、第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄に特定親族の氏名等を記入し、「特親」欄に特定親族の合計所得金額に応じた控除額を万円単位で記入する。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 国税庁ホームページ「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」の6頁より抜粋。なお、赤の囲みは筆者追記。 -解説- 令和7年度税制改正において、大学生年代の子等を対象とする特定親族特別控除が創設された。特定親族特別控除の詳細については、下記拙稿をご参照いただきたい。 第一表の㉔欄の「人数」欄には、特定親族特別控除の適用を受ける人数を記入し、第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄には、特定親族ごとに「氏名」「個人番号(マイナンバー)」「続柄」「生年月日」と、各特定親族の合計所得金額に応じた控除額を万円単位で記入する。     〈第一表の「区分」欄〉 【Q2】 確定申告書第一表には、「区分」欄が設けられている項目がある。「区分」欄は、どのような場合に記入するのか。 【A2】 第一表の「区分」欄には、次のように記入する。 (※1) 「所得金額調整控除」については、拙稿「〈令和2年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第1回】」もご参照いただきたい。 (※2) 「給与所得者の特定支出に関する明細書」については、国税庁ホームページをご参照いただきたい。 (※3) 第二表「配偶者や親族に関する事項」欄に必要事項を記入する。   (※4) 第二表「特例適用条文等」欄に該当条文を記入する。 (※5) 第二表「特例適用条文等」欄に居住開始年月日を記入する。 以下の場合は、居住開始年月日の頭部に次のように記入する。 以下の場合は、居住開始年月日の末尾に次のように記入する。 特別特例取得等の定義については、国税庁ホームページ「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」の40頁もご参照いただきたい。     〈ワンストップ特例と確定申告〉 【Q3】 給与所得者で、ふるさと納税先は5団体、ふるさと納税の都度ワンストップ特例の申請をしている。医療費控除の適用を受けるため確定申告をする場合、ふるさと納税の金額も寄附金控除額の計算に含めるのか。 【A3】 確定申告をする場合には、ふるさと納税のワンストップ特例の申請は無効となる。よって、確定申告では、ワンストップ特例の申請分も含めて寄附金控除額を計算する必要がある。 -解説- ふるさと納税として寄附した金額について、控除を受けるためには、ふるさと納税を行った年分の確定申告をする必要がある(所法78)。 しかし、平成27年4月1日以後、確定申告が不要な給与所得者については、ふるさと納税先が5団体以下の場合に限り、ふるさと納税先自治体に申請を行うことによって寄附金税額控除の適用を受けることができる(地税附則7①②、「ワンストップ特例」)。 なお、5団体を超える先にふるさと納税を行った場合や、医療費控除等の適用を受けるため確定申告をする場合に、ふるさと納税について寄附金控除の適用を受けるためには、ふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含めて確定申告を行う必要がある(地税附則7⑥一)。     〈扶養控除と特定親族特別控除〉 【Q4】 次の生計を一にする親族を有する場合、所得者本人(居住者)が適用できる所得控除は何か(記載されている事項以外は考慮しない)。 【A4】 -解説- (1) 控除対象扶養親族の範囲 扶養控除の対象となる扶養親族を控除対象扶養親族という。控除対象扶養親族の範囲は、親族が居住者か非居住者かによって異なる(所法2①三十四の二)。 〈表1〉控除対象扶養親族の範囲 (2) 特定親族 特定親族特別控除の対象となる者を特定親族という。特定親族とは、居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等 (※)で、合計所得金額が58万円超123万円以下の人である(所法84の2①)。 (※) 配偶者及び青色事業専従者等を除く。 (3) 各ケースの検討 以上より、①から④のケースについて検討する。 ①の子は、(1)〈表1〉①に該当するので控除対象扶養親族に該当し、扶養控除の適用対象となる。 ②の子は、(2)の特定親族に該当する(給与収入150万円-給与所得控除65万円=給与所得85万円)ので、特定親族特別控除の適用対象となる。 ③の子は、(2)の特定親族に該当するので、特定親族特別控除の適用対象となる。なお、特定親族の要件は、控除対象扶養親族のように居住者と非居住者で違いはない。 ④の子は、(1)〈表1〉②のいずれにも該当せず、(2)の特定親族にも該当しない。したがって、扶養控除及び特定親族特別控除いずれの適用対象にもならない。   〈非居住者の基礎控除額〉 【Q5】 令和6年12月以前に海外支店へ転勤し、令和7年は1年を通して非居住者であった。日本国内に貸付用不動産を所有していることから、納税管理人を通して令和7年分の確定申告を行う。確定申告の対象となる所得が不動産所得350万円の場合、確定申告において適用できる基礎控除額はいくらか。 【A5】 基礎控除額は58万円である。 -解説- 令和7年度税制改正において、基礎控除の見直しが行われた。所得税法(本則)の規定による基礎控除額が48万円から58万円へ10万円引き上げられたことに加え、令和7年分以後は、居住者について合計所得金額が655万円以下である場合、一定の金額が加算される特例が設けられた(所法86①、措法41の16の2①)。 令和7年分の所得税の基礎控除額(本則分+特例分)は、以下のとおりである。 特例分は、居住者についてのみ適用されることから、令和7年中を通して非居住者であった場合に特例分は適用されない。   (連載了)

#No. 652(掲載号)
#篠藤 敦子
2026/01/15

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第16回】「ハンドキャリーによる輸送品についての輸出免税の適用」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第16回】 「ハンドキャリーによる輸送品についての輸出免税の適用」   税理士 石川 幸恵   【Q】 当社は美術工芸品の販売業を営んでいます。海外であるA国に居住するB氏に対し、美術工芸品を販売しました。本件では商品の破損を避ける目的もあり、担当者がこの美術工芸品を手荷物として航空機に持ち込み(いわゆるハンドキャリー)、現地でB氏に直接引き渡しました。代金は現地で現金により受領しています。 この場合における消費税に関する注意点を教えてください。 【A】 ハンドキャリーによる輸出であっても消費税の輸出免税の適用を受けることは可能ですが、実際に相手国で商品を引き渡した事実があるとしても、その事実のみをもって直ちに輸出免税が認められるものではありません。 出国の際に税関長から「輸出証明書等」の交付を受け、輸出取引等を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又は事務所等の所在地に保存する(消規5①)ことが必要です。 また、令和8年10月1日以後は、現金により輸出取引の代金を受領したものについては、輸入国における輸入許可書等の保存も必要となる予定です(令和8年度税制改正大綱)。 さらに、外国から100万円を超える現金を持ち込む際には税関に「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」の提出が必要となる点にも留意が必要です。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 取引の実態が海外で消費・使用されるものであれば、輸出免税を受けられると考えがちであるが、輸出免税の適用には政令等で定める方法による輸出証明が要件(消法7②)とされている。 本解説ではハンドキャリー取引が争われた裁決事例を取り上げ、輸出証明のどこが問題とされたのかを確認する。   1 美術工芸品のハンドキャリー取引(令和4年1月26日関東信越国税不服審判所、TAINSコード:F0-5-352) (1) 取引の概要 美術工芸品の販売業等を営む法人は、日本国内で仕入れた美術工芸品を中国上海市に居住する者に販売した。商品の引渡しは、当該法人の代表者が上海に渡航する際に、手荷物として航空機に持ち込む方法(ハンドキャリー取引)により行われていた。 (2) 問題点 本件では、当該取引が輸出取引等に該当するか否かが争われた。具体的にはハンドキャリーによる輸出について、税関長から輸出許可書等の交付を受けていない点が問題とされている。 納税者は、本件ハンドキャリー取引は「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け等(消法7①一~四)に類するものとして政令で定めるもの(消法7①五)」に該当すると主張したが、裁決はハンドキャリー取引を消費税法第7条第1項第1号の輸出取引そのものと整理した上で、輸出許可書等の交付を受けていない以上、輸出免税の適用要件を満たすものとはいえないと判断している。 これにより、納税者が輸出証明になり得ると主張していた金銭の受取記録や渡航記録はいずれも勘案されなかった。   2 魚介類のハンドキャリー取引(平成30年1月11日東京国税不服審判所、TAINSコード:F0-5-227) (1) 取引の概要 食料品輸出業を営む法人は日本国内で仕入れた魚介類等をタイ王国に所在するA社に譲渡していた。商品の輸送については、A社のスタッフにより旅客手荷物として飛行機に持ち込まれる方法(ハンドキャリー取引)により行われていた。 (2) 問題点 本件でも、当該取引につき輸出許可書等の交付を受けていないことから、消費税の輸出免税の適用要件を満たしているかについて争われた。 納税者は日本の水産庁が発行した「産地証明書」によりタイ王国において本件商品の輸入の許可を受けており、産地証明書は税関長証明書類に代わるものであることから、輸出免税規定の適用は認められる旨主張した。しかし、裁決では、産地証明書は財務省令に規定する輸出証明書(消規5)とは異なるものであり、これを同視する旨の法令上の規定もないことから、輸出免税規定の適用は認められないと判断している。 海外で消費・使用されるものに日本の消費税を課さないというのが輸出免税の趣旨であるが、輸出免税の適用は実態や事情を事後的に積み上げることによって判断されるものではない。 本稿で紹介した裁決事例からは受取記録や渡航事実、さらには公官庁が発行した証明書であっても、消費税法が求める輸出証明に代替し得ないことが明確に示されている。 なお、ハンドキャリーにより海外に持ち出す場合も、輸出許可書の交付を受けることは可能である。詳しくは税関のホームページ等を参照するか、税関に問い合わせてほしい。   (了)

#No. 652(掲載号)
#石川 幸恵
2026/01/15

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第84回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第84回】   東洋大学法学部教授 泉 絢也   キ CARFの限界 本連載第74回では、OECDのCARF(Crypto-Asset Reporting Framework:暗号資産等報告枠組み)について、次のような構造的特徴と懸念を指摘した。 この点について、以下では、OECDのCARFには次のような限界があることを確認する。 OECDは暗号資産の台頭がもたらす課税上の問題への対応に取り組んでいる。 すなわち、OECDは、2022年から2023年にかけて、暗号資産取引に関する税務情報を、納税者の居住地国との間で、標準化された方法により、自動的に交換することで課税の透明性を確保する世界的な枠組みであるCARFを策定した。 CARFにおいて、顧客から提出された自己証明書の妥当性を確認し(デューデリジェンス義務)、税務当局に報告義務を負うのはRCASPと呼ばれる暗号資産サービスプロバイダーである。 RCASPは、事業として、顧客のため又は顧客に代わって交換取引(報告の対象となる暗号資産と法定通貨との交換及び報告の対象となる暗号資産同士の交換)を実行する(effectuate)サービスを提供する個人又は事業体である。 つまり、RCASPは、暗号資産の流通・交換の場を提供し、利用者の代わりに取引を成立させる主体として、暗号資産等に係る報告制度の要となる。 上記のようなRCASPの定義は、単なる技術提供や接続支援にとどまらず、取引の意思形成・執行過程に実質的に関与するか否かがRCASP該当性の判断基準とされているという側面を有する。 個人又は事業体は、取引プラットフォームに対して支配力(control)を有し、又は十分に影響力(sufficient influence)を有している限りにおいて、当該プラットフォームを提供しているとみなされ、RCASPとして報告義務を課せられる。 このため、 DEXと称している取引所の関係者がRCASPに該当すると認定されるケースもあると考えられる。 上記の支配や十分な影響力の判断は2012年のFATF勧告及び関連するガイダンスと整合的な方法により評価される(OECD, INTERNATIONAL STANDARDS FOR AUTOMATIC EXCHANGE OF INFORMATION IN TAX MATTERS: CRYPTO-ASSET REPORTING FRAMEWORK AND 2023 UPDATE TO THE COMMON REPORTING STANDARD 22, 53-54, 68 (2023)(※))。 (※) CARFが手本としているFATFの勧告やガイダンスによれば、規制当局は、DeFiについて、CARFのRCASPに相当するVASP(Virtual Asset Service Providers)に対応する主体を特定し、責任主体を捕捉するための規制枠組みを作る必要がある。もっとも、DeFiが分散化や分散型の看板を掲げていてもそれは名目的なものであるケースがある一方、DeFiのアレンジメントに対して支配力や影響力を行使しており、VASPに該当しうる個人又は事業体を特定することは困難を伴うケースもある(See FATF, UPDATED GUIDANCE FOR A RISK-BASED APPROACH TO VIRTUAL ASSETS AND VIRTUAL ASSET SERVICE PROVIDERS, 27-28, 31-32(2021); FATF, TARGETED UPDATE ON IMPLEMENTATION OF THE FATF STANDARDS ON VIRTUAL ASSETS/VASPS 27 (2024); FATF, INTERNATIONAL STANDARDS ON COMBATING MONEY LAUNDERING AND THE FINANCING OF TERRORISM & PROLIFERATION 137-138(2012, rev. 2023))。 なお、FATFの基準自体は技術中立の立場をとっているため、FATFはVASPの活動に係る基盤技術を規制しようとしているわけではなく、所定の活動を他の自然人又は法人に代わって事業として行うような技術の背後に存在する自然人又は法人を規制しようとしている(FATF, UPDATED GUIDANCE, at 22, 24, 31-32)。 FATF基準によればDeFiアプリケーション(すなわちソフトウェアプログラム)はVASPに該当しない(FATF, UPDATED GUIDANCE, at 27)。 ただし、上記の支配力や影響力の定義、該当者が存在する場合の適用のあり方は必ずしも明確ではなく、DEXによってはRCASPに該当しないように運営される可能性もあることから、より詳細な解釈・適用に関するガイダンスが待たれる。 併せて、結局、DeFiのアレンジメントに対して、支配力や影響力を行使する個人又は事業体を特定することは依然として困難であることが認識されていることも理解しておく必要がある。 すなわち、多くのDeFiのアレンジメントは分散化を標榜しているものの、それは名目上のものにすぎないと考えられている。 他方で、FATF基準をDeFiのアレンジメントに適用する際には、特に規制上のアンカーポイントの特定のほか、DeFiプラットフォームの所在地、運営場所及び/又はライセンス取得や登録・届出の状況の特定に関して、依然として規制上の課題があると認識されている(FATF, TARGETED UPDATE, at 27)。 実際、DeFiやDEXの運営形態は多様であり、名目上は分散化を標榜していても、実態としては特定の開発者や運営者が重要な管理機能を保持している例も少なくない。見方によっては「偽装された分散性」といえるようなケースに直面した場合、誰がRCASPに該当するかの判断は極めて困難である。 他方で、ルールに曖昧さが残る中で、RCASPに該当しない者をあたかも該当するかのように当局が規制の圧力をかける事態も懸念される。 いずれにしても、 DEXの関係者の中にRCASPに該当する者が存在しない場合には、報告義務が課せられる主体が存在しないため、CARFは効果を発揮できない。 これは暗号資産の分散性に関わる問題であるところ、DEXの分散性の程度について、分散性の意義や評価指標は複数存在しうることからすると、税務執行の文脈において単に抽象的な分散性の議論を取り上げるだけでは十分ではない。 ここでは指摘にとどめるが、伝統的な金融機関と同様の役割を果たすべき又は果たすことが可能であると認められる者がDEXの関係者の中に存在するかどうかという観点から、規制の策定と執行の各場面で向き合うことになると考える。 また、暗号資産の利用者が、CARFに参加しない国(※)のCEXを通じて取引を行っている場合には、CARFは有効に機能しない。 (※) 2025年12月4日現在、76の国・地域が2027年~2029年の間に情報交換を開始するのに間に合うようにCARFを実施することを約束している(OECD, Jurisdictions Committed to Implement the Crypto-Asset Reporting Framework (CARF) in Time to Commence Exchanges in 2027 or 2028 as Part of the Global Forum’s CARF Commitment Process (2025))。 暗号資産取引量やウォレット保有数量が比較的多い発展途上国(OECD非加盟国)との関係でCARFの枠組みがうまく機能するかという問題が指摘されている(See Bob Michel & Tatiana Falcão, OECD(2022) Public Consultation on the Crypto-Asset Reporting Framework and Amendments to the Common Reporting Standard: Comments by B. Michel and T. Falcão 9(2022))。 オフショアのCEXの利用が拡大する場合には、これらのCEXの所在地国がCARFに参加するかどうかがCARFの有効性を決定づける重要な要素となる。そして、CARF参加国の拡大が国際的な暗号資産の透明性を高める1つの鍵となる。 仲介者に依存するCARFによる捕捉を回避するためにCEXやDEXなどの仲介サービスを利用せずに、RCASPに該当しないウォレットサービスプロバイダーが提供するプライベートウォレットを利用して取引を行っている場合にもCARFは有効に機能しない。 ただし、MetamaskやLedgerなどのウォレットプロバイダーも、顧客に対して交換サービスを提供している場合にはRCASPとみなされる可能性がある。 注目すべきことに、本人確認を行わない又は行っていても他国の税務当局が情報交換を期待できないようなCEXは、税務当局からするとブラックボックスであり、利用者の身元や取引内容に関する情報を把握する手段がかなり限定されるため、DEXよりも深刻な課題を提起する。 CARFがCRSの延長線上にあることからも明らかなように、国際課税制度の中核を担う「仲介者モデル」の限界が、分散型技術によって浮き彫りになったともいえる。 今後、CARFの実効性を補完するためには、スマートコントラクトやブロックチェーンのトランザクションの分析など、よりテクノロジー主導の課税執行手法の導入が不可欠であろう。 さらに、DeFiやDEXを念頭に置いた新たな法的枠組みや、RCASP該当性の明確な指針の整備が急務となる。 規制の明確性と技術的実行可能性を兼ね備えた制度設計が、CARFも含めた暗号資産課税の執行体制における重要な課題となるであろう。   (了)

#No. 652(掲載号)
#泉 絢也
2026/01/15

国際課税レポート 【第22回】「OECD「ピラー2・共存パッケージ」」~いくつものセーフハーバー~

国際課税レポート 【第22回】 「OECD「ピラー2・共存パッケージ」」 ~いくつものセーフハーバー~   税理士 岡 直樹 (公財)東京財団上席フェロー   OECD「ピラー2・共存パッケージ」の公表 2026年1月5日、OECDは「共存パッケージ」を公表した。形式的には、147の国が参加する包摂的枠組みの合意だが、実質的には、140余りの国が参加する包摂的枠組みと米国が、ピラー2のグローバル・ミニマム税を米国多国籍企業に適用しないことについて了解したものと評価することが可能だ。 グローバル・ミニマム税は多国籍企業に適用される制度であり、900もの多国籍企業を持つわが国でも関心が高い。今回のパッケージには、東南アジアに進出した日本企業にとって有利と思われる、優遇税制の軽減が実効税率の計算上不利になる範囲を狭める方向の改正も含まれている。本稿では共存パッケージの内容を紹介することとしたい。   ピラー2のこれまで 2021年10月、140あまり(当時)の国が参加するOECD/G20包摂的枠組みは、デジタル化に伴う課題への対応として二本の柱による解決策に合意し、その一環として、多国籍企業が最低限の税負担を確保する「グローバル・ミニマム課税」(ピラー2)を策定した。 ピラー2は「共通アプローチ」とされ、各国に採用義務はないが、採用するなら合意成果と整合する形で実施・運用し、さらに他国による適用(ルール順序や合意セーフハーバーを含む)を受け入れることが合意された。 その後、OECD合意では導入義務はないものの、「二本の柱による解決策」を主導した欧州においては、2022年12月に曲折を経てEU域内各国にグローバル・ミニマム課税の導入を義務付ける「EUピラー2指令」を採択し、各国は国内法の整備を進めている。わが国も2024年4月以降開始する事業年度から「所得合算ルール」(IIR)の適用を開始している。 しかし、2021年の合意から4年余りが経過したが、グローバル・ミニマム税導入国は地理的な広がりをみせていない。2025年11月時点で49か国(立法ベース)にとどまり、その大半は導入が義務付けられているEU加盟国である。欧州以外では、アジア・大洋州の8か国、米州の1か国、アフリカ等の3か国であり、欧州以外への広がりを見せていない。包摂的枠組みの共同議長1人(個人の資格)の出身国の出身国も導入していない。 (※) 導入国数について、OECDは55か国と説明している。OECD(2025)「Recognising progress and reducing burdens in the BEPS minimum standards」4頁 他方、世界第一の多国籍企業大国である米国、第三の中国は導入予定がない。それどころか、米国議会(共和党)は、ピラー2のグローバル・ミニマム課税、なかんずく軽課税所得ルール(UTPR)は不公正で差別的な外国の税として、これを米国企業に課す外国に対して報復的な課税を行う立法(899条)を準備し、2025年5月には下院で法案を承認した。 この対抗措置を招く流れは、2025年6月28日に発出された「グローバル・ミニマム課税に関するG7声明」による「共存システム」(注)により食い止められた。声明の骨子は、G7各国はグローバル・ミニマム税を米国多国籍企業に適用しない(IIR及びUTPRの対象外とする)ことを了解し、米国は報復的な課税の立法を行わないことを約束することにある。同声明は、①多国籍企業の利益に対し最低限の税負担を求める制度(ピラー2)と、②米国内国税法上のミニマム課税制度(NCTI=旧GILTI)を「共存(co-existence)」させる一般理解を示したものである。 報復課税を可能にする条項が成立直前になったことを重く見た各国は、米国が多国籍企業に対して実質的にグローバル・ミニマム税の要求する15%の税負担を課す制度を持っていることを理由に、米国多国籍企業へのグローバル・ミニマム税の適用をあきらめたという構図に見えなくもない。 ディールを可能にした米国国内法のミニマム課税は次の2つだ。後述するが、今回の共存パッケージで追加された「共存システムセーフハーバー」は、これら米国の制度をなぞっている。 2023年以降、CAMT(Corporate Alternative Minimum Tax)の規定により、大企業(所得10億ドル超)の会計上の利益に対して最低15%の負担の課税が行われている(国内課税) 2025年のトランプ税制改革(OBBBA法)で、それまでのGILTIがNCTIに改組され、より幅広い被支配外国子会社の所得が14%程度のミニマム税率で合算課税されることになった(全世界課税) 今回公表されたパッケージは、2025年6月のG7声明で示された「共存」原則を実施するための設計文書である。 (注) 詳しくは、本連載【第18回】「G7共存システムの具体化とピラー2」及び【第21回】「「多国籍企業課税制度と課税ベース」~ワールドワイドvsテリトリアル~」参照   「共存パッケージ」の内容 共存パッケージには、次の項目が盛り込まれている。   簡素化されたETR(実効税率)セーフハーバーの恒久化 ~ 2027年より開始する会計年度に適用 「簡素化ETRセーフハーバー」を恒久的な措置として導入する。狙いは、ミニマム課税のためのトップアップ課税リスクが低い多くの国において、包括的な実効税率計算を行うことを不要にし、コンプライアンス負担を大幅に軽減することにある。 実効税率の計算は、主として連結財務諸表作成に用いる財務会計データに基づいて行うことができ、調整は最小限とされる。なお、繰延税金の扱いでは一定の調整を行うこととする。   移行期CbCRセーフハーバーの延長 簡素化ETRセーフハーバーが円滑に運用されるまでの猶予として、包摂的枠組みは移行期CbCRセーフハーバーを1年間延長することとした。移行期間中は「簡素化ETR」か「移行期CbCR」のいずれかを選択できる構造となり、制度移行の急激な負担増を緩和する。 対象を、開始:2027年12月31日以前に開始する会計年度、終了:2029年6月30日を超えて終了しない会計年度まで拡張する。   実体に基づく税制優遇措置(SBTI)セーフハーバー 多国籍企業が一定の「適格税制優遇」により軽減された税額を、グローバル・ミニマム税の計算上、対象税額(分子)に加算することを認める。これにより、トップアップ税額を減らす、あるいは0とすることができる。 適格税制優遇の定義は、「一般に利用可能なもの(個別のものではない)」で、かつ税優遇の金額が①支出金額に基づいて計算される優遇(expenditure-based)又は②当該国の国内で生産された有形資産の量に基づいて計算される優遇(production-based)とされている。 なお、適格税制優遇による軽減であっても、無制限に“加算扱い”できるわけではなく、次の上限がある。 支払給与の5.5%の金額、減価償却費の5.5%の金額のいずれか大きい金額 代替として(選択により)土地を除く有形資産帳簿価額の1%の金額(1度選択したら5年固定) 〈BOX  実体に基づく税優遇措置(SBTI)セーフハーバーの具体例(典型的なもの)〉   共存システムセーフハーバー(Side by Side Safe Harbour) 2025年6月のG7声明に基づき今回はじめて導入された。多国籍企業単位での税負担(実効税率)を問題とするのではなく、多国籍企業の母国における税制を問題として判定される。 (1) 対象(誰が使えるか) 究極の親会社(UPE)が所在する国が、適格国内税制(eligible domestic regime)と適格全世界税制(eligible worldwide regime)の両方を有すると包括的枠組みにより認定された場合、その国に究極の親会社のある多国籍企業だけが利用できる。 2026年1月以降開始会計年度から適用 【表1】共存システムセーフハーバーの前提となる制度 (※) これらの制度は、原則として、2026年以前に制定・施行されていること 適格国内税制 適格全世界税制 a. 法人所得税率(名目)が少なくとも 20%であること; b. 財務諸表上の所得に基づき算定される 15%以上のミニマム税又は QDMTT を有し、当該管轄区域における対象多国籍企業グループの事業活動から生じる総所得の大部分に適用されること;および c. 優遇税制を考慮しても、15%を下回る実質的なリスクが存在しないこと。 a. 全世界所得課税の税制を有すること; i. 留保所得が対象となること ii. 最低課税の政策目的と整合する限定的な所得除外のみが適用されること(例:高率除外) b. BEPSリスクに対処するため、一方的に機能する実質的なメカニズムを組み込んでいること;および c. 優遇税制を考慮しても、15%を下回る実効税率を課される実質的なリスクが存在しないこと。 (2) 効果 グローバル・ミニマム税の計算(実効税率やトップアップ税)を省略 他国による合算課税ルール(IIR)及び軽課税所得ルール(UTPR)の適用免除(IIR、UTPRのためのトップアップ税が0とみなされる 実質的に「その国の制度で最低課税は達成されている」とみなす (3) 典型的な想定(事実上米国の制度に限定) 米国の法人税+外国子会社合算税制(GILTI/NCTI等) 高税率・全世界所得課税(留保所得を含む)を行う国の制度   究極親会社(UPE)セーフハーバー 2025年6月のG7声明に基づき今回はじめて導入された。多国籍企業単位での税負担(実効税率)を問題とするのではなく、多国籍企業の母国における税制を基準として判定する。 (1) 定義 (誰が使えるか) 究極の親会社(UPE)が所在する国の税制が、グローバル・ミニマム税と同等の最低課税機能を果たしていると包括的枠組みにより認定された場合に適用される。 2026年1月以降開始会計年度から適用。 (2) 効果 その国に究極の親会社を持つ多国籍企業グループについて、他国は、少なくとも究極親会社所在国の利益に関して軽課税所得ルール(UTPR)課税を行わない(Top-up Taxを0とみなす) (3) ポイント 「究極の親会社」がどこに所在するか 親会社国の制度への信頼を前提に、他国による課税介入(UTPR)を抑制 共存システムセーフハーバーと異なり、適用単位がグループ全体に及ぶ点が特徴 【表2】 共存システムセーフハーバーと究極親会社セーフハーバー 観点 共存(SbS)セーフハーバー 究極親会社(UPE)セーフハーバー 着眼点 国内・国外を通じ、15%以上の税負担が課される税制を持つ国であること UPE所在国の課税能力 適用 その国に究極の親会社を持つ多国籍企業グループが所在する各国 究極親会社所在国 目的 グローバル・ミニマム税との重複適用回避 他国によるUTPR 適用防止 性格 技術的・制度比較的 究極親会社所在国の主権への配慮 想定例 米国制度とグローバル・ミニマム税の共存 米国を母国とする多国籍企業   手続 共存システムセーフハーバー、究極親会社セーフハーバーの適用を受けるためには、包摂的枠組みが適格性を審査することとなっている。   おわりに 2021年10月に包摂的枠組みが合意したとき、二本柱による解決策は100年に1度の国際課税改革であり、税の引き下げ競争に終止符を打つと高揚した声で歓迎された。しかし、合意から4年がたって明らかになったのは、米国、中国という巨大経済圏の不参加と、欧州内部における不協和音だ(本稿では省略したが、一部の国から共存システムの受け入れは不平等などとして批判があったことが報じられている)。 欧州委員会は1月12日、通知をEU官報に掲載し、1月5日のOECD包括的枠組み合意(実質的には米国との間の合意)の内容を、ピラー2指令第32条に基づくセーフハーバーとして承認したが、EU指令そのものを変更せずに実質的に同合意を実施することについては、租税法律主義の観点から問題があるという指摘もなされている。欧州委員会がEU指令の改定に消極的なのは、全会一致が要請される中、あらためてグローバル・ミニマム税について加盟国の同意が取り付けられるか自信がないという理由のようだ。 国際課税の分野で知られるフロリダ大学のミンディ・ハーツフェルド教授は、二本の柱による解決策を巡る“大失敗”(fiasco)は、OECDが政治的な力学を適切に管理する能力を持つか否かについて疑問を投げかけていると指摘する。また、米国議会の一部には、OECDへの資金削減を訴える声もある。このプロジェクトがもたらした資源の浪費と悪意は、今後数年にわたりOECDを悩ませるだろうとも指摘している(Tax Notes誌2026年1月5日号)。 皮肉な見方だが、多国籍企業課税のためにスタートしたピラー2において、ここへきて我々が目にしているのはセーフハーバーの乱立と拡張だ。 特に、今回米国のために追加された共存システムセーフハーバー、究極親会社セーフハーバーは、制度の適格性を判断するための要件を多国籍企業の母国が持っているかどうかを包摂的枠組みが審査・認定することが予定されている。グローバル・ミニマム税を持たない包摂的枠組み参加国の代表者(欧州以外の国の多くはグローバル・ミニマム税を導入していない)が、他国の制度を審査する能力・経験や正統性・公平性には疑問なしとしない。 今回のパッケージは、2029年までに、共存システムセーフハーバーの運用・効果(副作用を含む)をデータに基づいて点検することも予定している。今後の運営における専門性や公平性によって制度への信頼が確保されることを期待しておきたい。   (了)

#No. 652(掲載号)
#岡 直樹
2026/01/15

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第179回】「2025年における調査委員会設置状況」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第179回】 「2025年における調査委員会設置状況」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   本連載では、個別の会計不正に関する調査報告書について、その内容を検討することを主眼としているが、本稿では、第三者委員会ドットコムが公開している情報をもとに、各社の適時開示情報を参照しながら、2025年において設置が公表された調査委員会について、調査の対象となった不正・不祥事を分類するとともに、調査委員会の構成、調査報告書の内容などを概観し、その特徴を検討したい。 第三者委員会ドットコムが公開しているデータを集計したところ、2025年において、調査委員会の設置を公表した会社は43社と1地方自治体(兵庫県)であり、2024年の77社及び2023年の71社を大きく下回っている。43社のうち、同一の事案で2つの調査委員会設置を公表した会社が6社あったため、設置が公表された調査委員会の数は50となる。 これらの6社については、会社数としてはそれぞれ「1社」とカウントする一方、委員会の構成については委員会ごとに、不正・不祥事の分類はその区分ごとに集計しているため、一部、合計数が合わないことをお断りしておく。 設置が公表された50の調査委員会のうち14の委員会は、本稿執筆時点において、まだ調査報告書(その概要を含む)を公表していない。このうち2つの委員会は「外部調査委員会」への移行に伴うものであり、さらに、5つの調査委員会については、設置そのものが12月であり、または調査が長期化していることが報じられており、まだ調査が終わっていないと考えられる。   【市場別分類】 市場別分類では、東証プライム上場会社が19社と全体の約43%を占めた(複数市場に上場している会社は東証の市場区分に含めている)。上場会社数は2025年12月29日現在。 東京証券取引所以外では、未上場のいわき信用組合、兵庫県が、それぞれ調査委員会の設置と調査報告書を公表している(下表では「その他」に分類)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   【会計監査人別分類】 会計監査人別の分類では、いわゆる大手4大監査法人の監査を受けていた会社が22社、中堅以下の監査法人の監査を受けていた会社が21社となっている。兵庫県の報告書には会計監査人の記載がないため、会計監査人の合計は「43」である。うち2社については、監査法人ではなく、個人の公認会計士が会計監査人に就任している。 2025年は、大手4大監査法人のクライアントの占める比率が低くなっているが、そのなかでは、有限責任監査法人トーマツのクライアントで調査委員会の設置を公表した社が7社と最も多く、EY新日本有限責任監査法人、有限責任あずさ監査法人およびPwC Japan有限責任監査法人はそれぞれ5社のクライアントで調査委員会が設置されている。 なお、中堅以下の監査法人で複数のクライアントが調査委員会を設置したのは、有限責任中部監査法人および太陽有限責任監査法人が各2社となっている。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   【調査委員会の構成による分類】 一部、委員名を非公表または選定中としている委員会を含めた調査委員会の構成ごとの分類では、日本弁護士連合会が2010年に公表した「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠していると明言している調査委員会及び明言はしないまでもその趣旨に沿って外部の委員のみを選定していると認められる調査委員会は22であった。 また、2018年から続いていた、調査委員会の構成や委員名について、非公表とする傾向については、2025年も9社が「非公表」としており、他に3社が「選定中」となっている。また、従業員による横領事案を中心に、刑事告発の影響を考慮してか、調査報告書を非公表としていると推察できる委員会が増加傾向にある。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   【調査委員会を設置することとなった不正・不祥事の分類】 調査対象となった不祥事別にこれを分類すると次表のとおりとなる。なお、分類上、経営者や従業員の不正であっても、決算修正等、公表している決算報告書に影響を及ぼす可能性のあるものについては、「会計不正」としている。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   【会計不正の態様】 次いで、「会計不正」に分類された41件について、それぞれの不正の態様を見ておきたい。設置された56の調査委員会については次表をご参照いただきたい(黄色の網掛けは本連載でとりあげた報告書を意味している)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)

#No. 652(掲載号)
#米澤 勝
2026/01/15

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2025年12月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2025年12月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年12月1日から12月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 なお、四半期ごとの速報解説のポイントについては、下記の連載を参照されたい。   Ⅱ 企業内容等開示関係 次のものが公表されている。 〇「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等 (内容:「期中財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第37号)等及び「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第72号)を受けたもの。意見募集期間は2026年1月23日まで)   Ⅲ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「監査基準報告書570「継続企業」の改正について」(公開草案) (内容:継続企業の評価期間の改正などを行うもの。意見募集期間は2026年1月15日まで) ② 「サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」の公表に伴う監査基準報告書等の改正について」(公開草案) (内容:2025年10月15日に公表した「サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」」(公開草案)に伴うもの。意見募集期間は2026年1月16日まで) ③ 期中レビュー基準報告書第1号「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」、期中レビュー基準報告書第2号「独立監査人が実施する期中財務諸表に対するレビュー」及び期中レビュー基準報告書第2号実務ガイダンス第1号「東京証券取引所の有価証券上場規程に定める四半期財務諸表等に対する期中レビューに関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正(公開草案) (内容:「期中財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第37号)等の公表を受けたもの。意見募集期間は2026年1月16日まで) ④ 品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」及び品質管理基準報告書第2号「監査業務に係る審査」の改正(公開草案) (内容:2025年10月15日に公表した「サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」」(公開草案)等に伴うもの。意見募集期間は2026年1月16日まで) ⑤ 倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正に関する公開草案(外部の専門家の作業の利用及び倫理規則改正公開草案に伴う適合修正) (内容:2025年10月15日に公表した「倫理規則」の改正に関する公開草案に伴うもの。意見募集期間は2026年月16日まで) (了)

#No. 652(掲載号)
#阿部 光成
2026/01/15

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第17回】「問題行為を反省しない従業員を解雇するために必要な指導等の回数」

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第17回】 「問題行為を反省しない従業員を解雇するために必要な指導等の回数」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社のA部長は部下の指導の際の発言がきつく、複数の部下から苦情が出ています。A部長に対して、部下に対する発言には気を付けるよう指導しましたが、「はっきり言わなければわからない」とか「できない奴にできないと言って何が悪い」などと述べ、全く改めようとしません(なお、A部長の部下の業績は良いとはいえませんが、特別悪いというわけでもありません。)。 解雇が有効になるためには、指導や配転を何度か経て、もはや改善は期待できず、解雇するしかないといえる状態でなければならないと聞いたことがありますが、A部長を解雇できる状態にあるでしょうか。それとも、何度か指導や配転をする必要があるのでしょうか。 【Answer】 少なくともあと1~2回は指導を行い、反省を促す必要があると思われます。 一方、A部長の配転が可能であれば実施しておくべきですが、A部長が他の部署でも同様の言動に及ぶ可能性が高いと思われることから、実施しなくても解雇の有効性が否定される可能性が高いとまではいえないと思われます。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 1 はじめに 勤務成績・勤務態度等の不良を理由とした解雇の有効性の判断に際しては、(ⅰ)勤務成績・勤務態度等の不良が企業経営に支障を生ずるなどして企業から排斥すべき程度に達しており、(ⅱ)指導や教育訓練、配置転換や休職などによっても改善等が期待できず、解雇を回避することが難しいといえる必要があると考えられている(拙稿【第2回】参照)。 この点、どのような場合に、(ⅱ)改善等が期待できず、解雇を回避することが難しいといえるかについて、実務上、しばしば問題となる。筆者も「他の従業員が(当該問題社員の問題行為に)もう耐えられないと言っているのだが、何回指導すれば解雇できるのか。いつまで我慢すればいいのか。」といった相談を受けることも少なくない。 また、改善のためには、行為者が自分の問題行為を認識する必要があるが、本問のように、行為者が自分の言動の問題点を認識しておらず、認識する意欲すら示さないような場合は、もはや改善が期待できないのではないかとも思われるし、行為者が自分の言動の問題点を認識していないことから、再度同様の行為に及ぶ可能性が高く、当該行為者を企業等から排斥する必要性が高いといえるようにも思われる。 そこで、本稿においては、行為者が反省の態度を示さない場合、その時点で「改善等が期待できず、解雇を回避することが難しい」といえるのか、それとも、更なる指導や配転が必要なのかについて論ずるものとする。   2 必要な指導等の回数を考慮するうえでのポイント どの程度の指導や配転等を行ったら改善等が期待できないと判断してよいかは、行為者の反省の程度や事案の重大性(行為者を企業から排斥すべき緊急性)などにもよるため、一概には言えないが、以下がポイントになると思われる。 (1) 行為者が反省の態度を示さなくても複数回の指導等を実施しておくべきである 以下3のバイオテック事件においては、対象者Xの部下に対する態度に関する注意は1回しか行われていないが、それ以前に会社がXのその他の問題行為に対して複数回の指導を行ったところ、Xが部下等に冷たくあたるなどの行為に出たことから指導を控えたという事情がある。また、ディーコープ事件においては、対象者Xへの厳重注意が行われたのは1回だけであるが、被害者のうち1名は別の部署に異動せざるを得なくなり、もう1名は適応障害に罹患し傷病休暇を余儀なくされるなど、その結果が重大であったこと等の事情がある。よって、このような事情がある場合を除き、1回の注意・指導で十分とするにはリスクが高い場合が多いのではないかと思われる。 (2) 必ずしも懲戒処分を経ておく必要はない 以下の参考裁判例がいずれも行為者に懲戒処分歴がない事案であることに照らすと、必ずしも解雇を実施する前に懲戒処分を経ておく必要はないと思われる。もっとも、懲戒処分歴があると、当該対象者に企業から排斥すべき程度の勤務態度等の不良があることの裏付けにもなり得ることから、懲戒処分が可能な事案が生じた場合には懲戒処分を行っておくに越したことはない。 (3) 問題の言動に外的要因が見当たらない場合等には必ずしも配転を経る必要はない 本問のように、行為者の言動等に問題がある事案で、かかる問題の言動が複数の従業員に対してなされているような場合であり、特段の外的要因が見当たらないようなときは、配転を経なくても「改善等が期待できず、解雇を回避することが難しい」場合に当たるといえると思料する。このような場合は、行為者の問題行為が他者との関係で惹起されているというよりは行為者本人の問題から生じているものであるから、他の部署に異動して同僚や部下が入れ替わったからといって改善が期待できるわけではなく、他方で他の部署においても同様の問題行為に及んで被害を生じさせるリスクが高いと思われるためである。   3 参考裁判例 (了)

#No. 652(掲載号)
#柳田 忍
2026/01/15

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第26回】「任意後見と死後事務」

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第26回】 「任意後見と死後事務」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 顧客の任意後見人になる予定ですが、「私が死んだらその後のこともお願いしたい」と言われています。どのような準備が必要でしょうか。 【A】 人が亡くなった後には、葬儀や納骨などの手続が必要になります。死後に必要となる手続を「死後事務」といいますが、任意後見人であっても本人が亡くなったら当然に死後事務を行う権限を持っているわけではありません。別途「死後事務委任契約」を締結することが必要になります。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 死後事務の種類 人が亡くなった後に必要となる葬儀や納骨の手続を「死後事務」といいますが、主に以下のようなものがあります。 【死後事務の種類】 任意後見人の職務は本人の死亡によって終了するため、任意後見人であっても当然に本人の死後事務を行う権限を持つわけではありません。しかし、近くに死後事務を行ってもらえる親族がいない場合などには、任意後見人が死後事務を行うことが周囲からも期待され、様々な問い合わせが寄せられることになります。顧客と税理士が深い信頼関係のもとで任意後見契約を締結していることを考えると、死後事務についても担うことが望ましいでしょう。 【任意後見と死後事務のイメージ】   2 死後事務委任契約の締結 死後事務委任契約を引き受けることが決まったら、本人との間で「死後事務委任契約」を締結します。死後事務委任契約は必ずしも公正証書によって作成する必要はありませんが、死後事務を行うのが本人の死亡後であることを考えると、公正証書によって作成して、本人の意思を明確に示すことができるようにしておくとよいでしょう。任意後見契約は公正証書によることになるため、同時に作成することが効率的です。 死後事務委任契約書については様々なひな形が紹介されていますが、最も注意を払う必要があるのが、どのような死後事務を委任するかという点です。 【死後事務契約書のひな形(委任事務の範囲)】 上記の他にも本人の希望に応じて、本人の死後においてペットを指定した施設に預けることを委任事項として記載するような例もあります。死後事務委任契約は、本人の死亡後の憂いを少なくし、安心して生活してもらうために重要な契約です。本人の意向を時間をかけて聞き出すとよいでしょう。   3 死後事務の報酬 死後事務の報酬は当事者の合意で自由に決めることができますが、一般的に20万から100万円程度で設定されることが多いと思われます。死後事務には報酬以外にも葬儀費用や入院費用の支払い、遺品の整理などに多額の費用(実費)がかかることから、報酬と実費に充てるために「預託金」という形で事前に受任者が一定額を預かっておき、業務完了後に精算するという形もとられています。高額な預託金を預けることに本人が不安を感じている場合には、預託金の信託サービスなども存在するため利用を検討するとよいでしょう。 (了)

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#北詰 健太郎
2026/01/15
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