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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第95回】外貨建取引④「外貨建金銭債権債務の決算および決済時の処理」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第95回】 外貨建取引④ 「外貨建金銭債権債務の決算および決済時の処理」   仰星監査法人 公認会計士 上村 治   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① 取引実行時(X1年3月1日) (※1) 1,000ドル×100円/ドル=100,000円 ② 決算日(X1年3月31日) (※2) (108円/ドル-100円/ドル)×1,000ドル=8,000円 ③ 回収時(X1年4月30日) (※3) 1,000ドル×115円/ドル=115,000円   〈会計処理の解説〉 1 外貨建金銭債権債務の意義 外貨建金銭債権債務は、契約上の債権額または債務額が外国通貨で表示されている金銭債権債務をいいます(外貨基準注解4)。これには外貨預金が含まれます(外貨基準一.2.(1)①)。 2 取引実行時の会計処理 取引価格が外国通貨で表示されている物品の売買は外貨建取引です(外貨基準 注1)。そのため、取引発生時の為替レートで会計処理することになります(外貨基準一.1)。 事例では、製品の輸出取引を行っており、売上高・売掛金ともに取引発生時の為替レートである1ドル100円で会計処理されます。 3 決算日の会計処理 外貨建金銭債権債務については、決算時の為替レートにより換算します。また、決算時における換算により生じた換算差額は為替差損益として処理します(外貨基準一.2.(1)②)。 事例では、決算日において、売掛金1,000ドルを決算時の為替レートである1ドル108円で換算替えします。この換算替えにより生じる8,000円は為替差益として処理します。 なお、金銭債権債務ではない場合でも、決算時の為替レートにより換算する項目があります。それは、未収収益及び未払費用です。 未収収益および未払費用は計算期間末日における期日未到来の経過勘定であり、厳密には金銭債権債務ではありません。しかしながら、外貨建未収収益及び未払費用は、期日が到来した時点で外貨建金銭債権債務となり、将来に外貨の授受があることから、為替換算上、外貨建金銭債権債務に準じて処理します (外貨建取引等の会計処理に関する実務指針27、68)。 4 決済時の会計処理 外貨建金銭債権債務の決済に伴って生じた損益は、原則として、当期の為替差損益として処理します(外貨基準一.3)。 事例では、決算時の為替レートが1ドル108円であるのに対して、決済時の為替レートは115円であり、決済差額が7,000円生じるため、為替差益として処理します。 *   *   * 次回は、外貨建取引に関する会計処理のうち、外貨で授受した前渡金・前受金の会計処理について解説します。 (了)

#No. 138(掲載号)
#上村 治
2015/10/01

[平成27年9月30日施行]改正労働者派遣法のポイント 【第1回】「労働者派遣法改正の背景」

[平成27年9月30日施行] 改正労働者派遣法のポイント 【第1回】 「労働者派遣法改正の背景」   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   第1回は、改正の内容をみる前に、なぜ今労働者派遣法が改正されたのか、改正の背景や目的について確認する。   1 改正の契機は「附帯決議」 今回の改正は、平成24年の労働者派遣法改正時に「附帯決議」として衆参両議院の厚生労働委員会で示された事項が契機となっている(【資料1】)。 参議院のサイトによると、「附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものですが、実際には条文を修正するには至らなかったものの、これを附帯決議に盛り込むことにより、その後の運用に国会として注文を付けるといった態様のものもみられます」とある。附帯決議は、法的に拘束力を持つものではないが、決議事項についてはその後の取組について国会で確認されることになるため、政治的には拘束力を持つものとされている。 附帯決議をきっかけに検討がなされ、法律として成立することはしばしばみられるが、今回はまさにこの例であり、平成24年改正時に積み残された課題等について検討が行われ改正されるに至った。 【資料1】   2 わかりにくい現行制度 労働者派遣は、職業安定法で禁止されている「労働者供給」(=供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること)の例外として、“臨時的・一時的な労働力の需給調整手段”として“常用代替のおそれが少ないもの”、つまり、正社員の職場を奪わないことを前提に解禁された。このため、派遣可能期間には制限が設けられ(原則1年、上限3年)、3年を超える長期間の派遣は認めない仕組みとなっていた。 しかし、いわゆる「専門26業務」(政令で定めた業務(【資料2】)、平成24年改正により26業務から28業務へ変更)は、専門的な知識や特別の雇用管理が必要なため“常用代替のおそれがない”として、例外的に派遣可能期間に制限を設けず、長期間の労働者派遣が可能となっていた。 【資料2】 政令で定めた業務 「専門26業務」であれば派遣可能期間に制限がなく長期間の労働者派遣が可能なため、その該当性が重要になるのだが、「専門26業務」にあたるか否かについては判断に迷うことも多く、行政と企業で見解が異なる場面もみられた。また、「専門26業務」の周辺業務として、「付随業務」と「付随的な業務」という2つの考え方があり、派遣労働者を「付随業務」に従事させるのはいいが、「付随的な業務」に従事させる場合は業務全体の1割以下でなければならない等、複雑な仕組みとなっていた。 そこで、実務的にも判断に迷うことがないわかりやすい制度へ変更する必要があった。   3 「10.1問題」 法律の成立からわずか19日で、しかも、通常1日施行が多い中で30日施行となった背景には「10.1問題」がある。これは、平成24年改正時に創設された「労働契約申込みみなし制度」が平成27年10月1日から施行されることに伴い、労務トラブルが多発するのではないかと懸念されている問題だ。 ここで、「労働契約申込みみなし制度」について、改めてその概要を確認しておこう。 「労働契約申込みみなし制度」は、派遣先が違法派遣であることを知りながら派遣労働者を受け入れていた場合、違法状態が発生した時点で、その時点における同一の労働条件で派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込みをしたものとみなす制度だ。 この制度の対象となる違法派遣は4タイプ(【資料3】)。これら4タイプのいずれかに平成27年10月1日以降該当していた場合は、派遣先の意向に関わらず、自動的に派遣先が派遣労働者へ労働契約の申込みをした扱いとなり、派遣労働者が承諾すれば労働契約が成立することになる。 【資料3】 労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣 先述の「専門26業務」のわかりにくさを解消することは、違法派遣の4タイプのうち「③ 期間制限に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること」と関係する。 例えば、派遣先が「専門26業務」に該当していると考えて3年を超えて労働者派遣を受け入れていたところ、ある日、突然、派遣労働者から『私がやっている業務は「専門26業務」には該当しないのではないですか?既に3年を超えているので「労働契約申込みみなし制度」の対象となり、直接雇ってもらえると聞いたのですが。』と言われたらどうするか。「専門26業務」への該当性を明確に説明できる状況になければ、派遣先は対応に苦慮することになるだろう。 このような状況下で、トラブルを避けるために平成27年9月末までに終了する派遣契約が増えるのではないか、また、平成27年10月以降「労働契約申込みみなし制度」の適用を巡る訴訟が多発するのではないかと考えられていた。そこで、混乱を避けるためにも、期間制限の考え方に関するわかりにくさを10月1日前までに解消しておく必要があった。   4 改正の目的 今回の改正の目的としては、大きく次の3つがあげられる。 まず1つめは、実際に働く派遣労働者や派遣元・派遣先にとってわかりやすい制度にすることである。「専門26業務」にあたるかどうかで派遣可能期間の取扱いが大きく変わる現行制度を見直し、新しい考え方が導入されている。 2つめは、派遣労働者の雇用の安定と処遇改善を推進することである。リーマンショック以降に“派遣切り”が社会問題となり、平成24年改正から「派遣労働者の保護」が法律名にも明記され、派遣労働者を保護する施策が追加されたが、今回の改正でさらに付加されている。 3つめは、派遣事業への規制強化である。労働者派遣は法制定以降、派遣労働が可能となる対象業務を拡大する等の規制緩和を進めてきたが、悪質な派遣業者も少なからずいることから、平成24年改正より緩和から規制へと軸を変えている。今回の改正は派遣事業の許可そのものに関わる内容を含んでいる。 *   *   * 以上、労働者派遣法が改正された背景や改正の目的について確認したが、労働者派遣を導入して既に30年が経過し、運用上の不具合を是正する時期にきているといえるのではないだろうか。 【第2回】からは、個別の改正点についてみていく。 (了)

#No. 138(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2015/10/01

経産省研究会による会社法の「法的論点に関する解釈指針」のポイントと企業実務への影響 【後編】

経産省研究会による 会社法の「法的論点に関する解釈指針」の ポイントと企業実務への影響 【後編】   西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 柴田 寛子   【前編】に続き、「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」(以下「本研究会」という)が2015年7月24日に公表した「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革」(以下「本報告書」という)の別紙3「法的論点に関する解釈指針」(以下「本指針」という)で示された内容と企業実務への影響について解説していく。   4 役員就任条件(報酬・会社補償・保険料負担・提訴判断) 本指針は、その第3項目として「役員就任条件(報酬・会社補償・保険料負担・提訴判断)」についての解釈指針を示している。 具体的には、①インセンティブを強化した役員報酬の導入、②役員に対する損害賠償請求についての会社補償の許容範囲、③会社役員賠償責任保険(D&O保険)の保険料負担の許容範囲、及び④会社が取締役に対する責任追及訴訟を提訴するか否かの判断プロセスの見直しの各項目について、現行法上の問題点の分析と新たな法解釈を示すものである。 また、これらの各項目の検討に共通して、役員としての責任を適切に限定・軽減することが積極的な職務執行へのインセンティブとして重要である一方で、責任限定・軽減には利益相反を伴うため、手続の適正を確保する必要があるという基本的視点が示されている。 (1) 役員報酬 会社法上、取締役の報酬は、株主総会の決議で定める必要があり(会社法361条1項)、その趣旨は、取締役同士の馴れ合いにより、過剰な報酬を支払うこと、つまり「お手盛り」の防止であると解されている(最判昭和60年3月26日)。 実務においては、株主総会における枠取り決議を行った後、個別の報酬は取締役会又は(取締役会により委任を受けた)代表取締役が決定している場合が多く、かかる報酬決定のプロセスも、上記趣旨に照らし適法であると解されている。 本指針は、報酬にインセンティブの機能を強化するべきとの基本方針を示すが、具体的な報酬内容の決定は、会社の経営戦略と密接に関連するものであるから、株主総会においてその内容を決定することが適切であるとは言い難いとする。したがって、現在の実務以上に、株主総会が報酬決定に関与することを求めるものではない。株主との関係については、むしろ、インセンティブ機能を分かりやすく開示する取組みが重要であるとされている。 報酬制度の決定プロセスに関して、本指針は、社外取締役の関与を求めている。現在の実務における報酬決定手続においては、株主と取締役との間の利益相反は、株主総会における枠取り決議により解消されているが、報酬枠の範囲内で取締役会に委任された具体的な報酬の配分の決定に際して、個々の取締役の配分決定における利益相反は完全には解消されていない。 このような取締役間の利益相反の解消の観点から、社外取締役を構成員とする委員会や社外取締役の同意や意見を得るとの決定プロセスを確保することが望ましいとされている。 (2) 会社補償の許容範囲 会社補償とは、役員がその職務に関して第三者から損害賠償責任を追及された場合に(会社法429条)、会社が当該損害賠償責任額や争訟費用を補償することをいう。 本指針は、役員の職務執行について、故意又は重過失による任務懈怠がない場合には、その職務執行に関し損害賠償を請求されることは、職務執行から生じる不可避的なリスクであり、会社にとっては費用と位置づけられるとの考え方に基づき、〈表3〉の要件を満たす場合には、現行法のもとでも、適法に会社補償を行うことができるとする。 〈表3〉 会社補償の要件 本指針において、補償契約の締結及びこれに基づく補償の実施について、株主総会の決議は不要との考え方が示されたことで(職務執行に伴う相当の費用であり、報酬には該当しないこと、また、利益相反については取締役会決議により解消されることの解釈に基づく)、実務における利用可能性は高まったと考えられる。 もっとも、取締役との利益相反的取引として、補償契約の内容については、事業報告や有価証券報告書での開示が必要となる可能性が高く、株主や投資家の監視には服すると解される。 また、上記の対象としているのは、取締役の第三者に対する責任であり、会社に対する責任は、会社法上の責任減免規定に基づくべきものであり(会社法424条から427条)、上記の対象外とされている点は念のため注意する必要がある。 (3) D&O保険料負担の許容範囲 現在の実務においては、D&O保険の保険料のうち、株主代表訴訟担保特約(代表訴訟に敗訴した場合における損害賠償金と争訟費用を担保する特約)部分の保険料(以下、「本保険料」という)は、役員個人が負担している。この実務は、一般的に、本保険料を会社が負担することは、利益相反・忠実義務違反の懸念があると考えられていることに基づく。 本指針は、役員の会社に対する損害賠償責任の有する意義を2つの観点から検討し、〈表4〉の整理を行うことにより、会社が本保険料を負担することに会社法上の問題点はなく、また、職務執行に伴う不可避的なリスクを緩和する適切なインセンティブと位置づけられるから、上記の利益相反・忠実義務違反の問題は生じないとする。 〈表4〉 会社による本保険料負担がもたらす影響の分析 もっとも、本指針も、会社による本保険料の負担には利益相反の要素があることは否定しておらず、これを解消する手続として、上記(2)の補償契約の締結についての手続要件(〈表3〉のイ)と同じ手続をとるべきことを提案している。 なお、本項目に関しては、現在の税実務では、会社が本保険料を負担した場合、役員に経済的利益の供与があったとして給与課税の対象となるとされている点に留意する必要がある(平成6年1月20日付け個別通達(課法8-2・課所4-2))。 本指針により、本保険料の会社負担について会社法上の問題点が解消された場合でも、負担額が給与所得の対象となるとの税実務に変更がない場合には、(現在も本保険料相当額を報酬に上乗せして支払われていることが多いため)役員にとって実質的なメリットは乏しく、インセンティブ付与との効果を発揮できない可能性がある。 (4) 責任追及訴訟の提訴判断 会社法上、会社が取締役に対して訴えを提起する場合、監査役が会社を代表し(会社法386条1項)、また、監査役が提訴の判断をすると解されている。加えて、株主代表訴訟において、株主が提訴請求すべき相手方は、監査役とされている(同条2項1号)。 これらの規律の趣旨は、取締役間の仲間意識により適切に提訴の判断がされない可能性を考慮して、取締役とは独立した立場にある監査役にその判断をさせるとの点にあり、決定手続の構造的な利益相反性に着目した手続規制である。 本指針は、上記の趣旨に鑑み、提訴判断は、社外取締役の監督機能を発揮すべき場面であり、監査役のみならず、社外取締役を積極的に関与させることが「実務上望ましい」とする。 また、本指針で直接には言及されていないが、将来的な検討課題として、社外取締役の監督機能を適切に活用した上で、監査役が合理的な不提訴の判断を行ったにもかかわらず、株主が代表訴訟を提訴した場合、裁判所が当該訴訟を却下できる仕組みの提案がなされている(経済産業省経済産業政策局産業組織課長・中原裕彦他「コーポレート・ガバナンスの実践〔下〕」商事法務2078号(2015年9月15日)29頁)。   5 新しい株式報酬の導入 本指針の最終項目は、新しい株式報酬の導入に関する解釈指針である。これは、海外において普及している、役員報酬として株式を直接に付与する制度が、日本では実施しにくいとの指摘を受けて、現行法制度のもとでも、それを実現するための解釈を示すものである。 具体的には、本指針は、報酬債権を現物出資することで、役員に対して株式を直接割り当てることが可能との解釈を示している。実務においては、このような割当方法については、仮装払込(会社法209条2項、213条の2、213条の3等)に該当するのではないかとの懸念があったが、報酬債権は株主総会の報酬決議を得ている(上記4(1)参照)ことを根拠に、上記懸念は当たらないとの解釈が示された。 もっとも、株式を直接に割り当てる制度の普及のためには、役職員向けのストック・オプションについての有価証券届出書の提出義務の免除(金融商品取引法4条1項1号、同施行令2条の12、開示府令2条1項・2項)と同様の特例の導入等、金融商品取引法の整備も必要であると考えられる。 さらに、実務では、株式報酬を含むインセンティブ報酬については、法人税法上、損金算入の認められる業績連動報酬の要件(法人税法34条1項各号)が極めて限定されているとの点が、その導入を妨げる一要因となっている。 この点については、本年8月25日に経済産業省が公表した「平成28年度税制改正に関する経済産業省要望」において、複数事業年度の経営指標を用いた業績連動報酬や株式報酬についても、損金算入を可能とする法改正が提案されている。   6 おわりに 以上の通り、本指針は、攻めの経営を可能とするためのインセンティブ強化(職務執行に伴う責任範囲の限定を含む)及び監督機能の確保という観点から、上記4つの項目について、その提言を実現するための法解釈を示すものである。 本指針の策定には、法務省民事局参事官室も参画していることから、従来、解釈上問題があると考えられてきた点についても、立法上の課題と明示されているものを除き、現時点においても、本指針示されている法解釈に依拠することは可能であると考えられる。 その意味で本指針は実務上非常に有用であるが、新制度の実現・普及には、本稿で検討した通り、税務及び金融商品取引法等の関連法制の見直しも併せて必要であり、今後の議論に引き続き注目する必要がある。 (連載了)

#No. 138(掲載号)
#柴田 寛子
2015/10/01

社外取締役の教科書 【第8回】「社外の知見・ノウハウの取り入れ(その2)」

社外取締役の教科書 【第8回】 「社外の知見・ノウハウの取り入れ(その2)」   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   1 「プラクティス集」からの事例紹介 【第5回】、【第6回】で紹介した「コーポレート・ガバナンスの実践」の研究会報告では、「社外の知見・ノウハウの取入れ」に関連した企業の取り組み例も取り上げられている。 この点に関する具体的なイメージを持っていただくために、今回は、「我が国企業のプラクティス集」に掲載されている事例につき紹介したい。   2 社外の事業経験の取入れの具体例 新卒で入社し、そのまま社内またはグループ会社での勤務一筋で取締役へと上り詰めた場合、入社以来一貫して取り組んできた分野・経験については蓄積が著しいが、その半面「視野が狭い」、「頭がカタい」ということも避けられない傾向である。 その中で、社外から、自社の経営陣とは全く異なる経験を積んできた人材を招くことは、非常に有用なことである。その一端を示す実例が、上記である。 また、社外取締役による助言・提案が効果的に働いた事例として、以下もある。 【「あの提案だけで60億円分の価値があった」-「無印良品」における実例】 (平成27年2月8日付け日本経済新聞より) 藤原氏は、衣料品店の全国チェーンを展開してきた中での物流戦略の経験上から、また酒巻氏は『キャノンの仕事術』、『会社のアカスリで利益10倍!』等の著者として“経営のムダとり”の専門家としての見地から、社外からのアドバイスが非常に大きな利益をもたらした好例といえよう。   3 専門知識の取入れの具体例 弁護士や税理士といった士業が社外取締役に就任する場合、前回にも触れたように、経営戦略そのものに対する助言よりも、その専門分野からのコンプライアンス上の助言を期待されるケースが多いであろう。 たとえば、一般消費者向けの食品を製造販売する企業を例に取ってみよう。 弁護士が社外取締役に就任している場合、当然に、同業種におけるコンプライアンス上の取り組み例や、過去における他社の著名な不祥事につき知識と経験を有し、これらに関して自社の取り組みを強化すべく適切な助言をなす役割を期待されるであろう。いわゆる「不祥事対応」「危機管理対策」と呼ばれる分野である。 この場合は、社外取締役として、どのような助言が可能か。 【「危機管理対策の専門家」が社外取締役に就任したら? -期待される役割】 近年に発生した大々的な“不祥事”に対する対応を見てみると、企業側の場当たり的な対応が余計に「火に油を注ぐ」結果となり、世間の評判を著しく落とすという場合が少なくない。 特にマスコミ対応は、極めて慎重かつ大局的な見地からの取り組みが要求される。ここで対応を誤れば、マスコミ発表の一部だけを切り取られて面白おかしく報道され、ネット上でも話題となり、いわゆる“炎上”状態に陥るからである。 企業としても、消費者との接点が多い業態、たとえばB to Cの製造・販売業や飲食業等においては特に意識すべきであろう。   4 今後の動向 国内外での経営競争は激しくなるばかりであり、企業の生き残りと発展とを賭けて、社外の知見・ノウハウを取り入れていく必要は増すばかりであろう。 その中でも、特に社外取締役に女性と外国人を迎える傾向は、今後より一層増加するものと考えられる。取締役会に多様性(ダイバーシティ)を求める動きである。 ある女性経営者は、「女性を主な顧客として企業であるにもかかわらず、女性取締役が1人もいない会社が多いことは驚くべきである」とのコメントを過去に出していた。 この点、平成27年7月時点で、東証一部上場企業約1,900社のうちで女性の社外取締役は343人であり、前年度と比較して2.2倍に増加している。全社外取締役3,584人に占める割合は9.6%とのことである(平成27年9月9日付け日本経済新聞より)。 企業経営への女性参画は、数字の上でも顕著な伸びを示している。 (了)

#No. 138(掲載号)
#栗田 祐太郎
2015/10/01

税理士ができる『中小企業の資金調達』支援実務 【第4回】「具体的な資金調達支援の流れ(その1)」~資金調達の相談を受けた時にまずどうするか~

税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第4回】 「具体的な資金調達支援の流れ(その1)」 ~資金調達の相談を受けた時にまずどうするか~   公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆   1 会社が融資を受けるまで 会社が融資を得るまでの段階、順序は次の通りである。 今回から、各段階の順に支援内容を説明していく。まず最初は、社長から資金調達の相談を受けた場合の対応について解説を行う。   2 資金調達支援の第一歩は、まず会話と質問から 顧問税理士として社長と会話する中で、「資金が必要」「資金を調達したい」という相談を受けた場合に、最初にするべきことは資金調達の目的や希望金額などを社長に質問することである。 最初に会話・口頭レベルで相談を受けた段階では、社長の中での資金調達の必要性や使用目的、金額などが具体的になっておらず、「資金調達を行いたい」という気持ちも固まっていないことが多い。 そこで、税理士からの質問に答えることによって、資金調達の必要性を再認識するとともに、調達に向けての意志を固めてもらう。調達に向けての第一歩である。会話や質問をすることも、税理士にとって重要な支援の1つなのである。   3 融資制度の判断についてはプロに任せる 調達に向けての意思が固まると、次に社長の関心は「どの金融機関から、どれくらい融資を得られるのか」「金利はいくらか」という点に移る。 税理士としては、日頃から融資に関する情報を集め、こういった社長の疑問に即答できるのが理想ではあるが、現実的には不可能である。 というのも、融資制度は非常に複雑だからである。融資判断は銀行や信用金庫、支店によって異なるのはもちろん、担当者レベルでも異なる。さらに各金融機関には、新事業開拓用、海外展開用、設備投資用等、様々な融資制度が用意されており、それぞれ融資上限や返済期限、金利水準も異なる。 融資のプロではない税理士にとって、どの金融機関のどの融資制度が一番有利なのか判断するのは難しい。 よって、どの融資制度が良いかは、その融資のプロである金融機関に相談した方が確実である。社長にはまず金融機関に相談に行くようにすすめる。その方が、結果的に会社の状況や資金使途に合わせて、最も有利な融資制度を紹介してもらえることに繋がる。 金融機関出身の税理士であれば、自身で適切な融資制度を紹介できるかもしれない。しかし、そうではないほとんどの税理士は「この融資制度が使える、使えない」と安易に言うべきではない。 一例ではあるが、筆者が以前、神奈川県の中古車販売業の会社から融資相談を受けたときのことである。 相談を受けた段階で、それまでの筆者の経験から「あまり大きな融資は得られないだろう」と予想していた。しかし実際に社長が金融機関に相談に行ったところ、特別な融資制度があることを紹介され、その結果、筆者の予想を大きく上回る額の融資を受けることができた。 融資についての正確な判断は、融資のプロにしかできないのである。 しかし、「とりあえず相談に行って下さい」と伝えても、社長からさらに詳しい情報を、と求められることもあるだろう。その場合は、融資制度の一覧を社長に見せるのが良い。 中小企業の場合、日本政策金融公庫から融資を受けるか、信用保証協会の保証を受けた上で、金融機関から融資を受けるというケースがほとんどである(詳細は【第5回】で解説する)。 日本政策金融公庫や信用保証協会のホームページには融資制度の一覧が公表されているので、情報を求められた際には「一覧の中のどれかが利用できるかもしれません」というように、それらを参考情報として提示すればよいだろう。   4 融資全体の流れを説明 初めて融資を検討する社長には、申し込みの手続の流れや、事業計画書、資金繰り表などが必要になること、申し込みから口座入金まで2~3週間程度かかることなどを説明する。 その際、税理士は仲介者として財務資料の作成支援をすること、金融機関等から財務の質問があった場合には対応することを伝える。そうすれば社長に心強く感じてもらえるだろう。 また、金融機関に訪問する際の細かい留意点として、以下のような内容も社長に伝えておくとよい。 *   *   * 以上、税務顧問先の社長から融資相談を受けた場合の対応について解説を行った。融資制度に詳しくないのであれば、下手なことは言わず、社長には金融機関に相談に行くようすすめた方が会社にとって有益かつ効率的である。 次回は、では社長に相談に行ってもらうとして、一体どの金融機関に向かえば良いのか、という点について説明する。 (了)

#No. 138(掲載号)
#西田 恭隆
2015/10/01

〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第1話】「書面添付(その1)」~意見聴取後の修正申告~

〈小説〉 『資産課税第三部門にて。』 【第1話】 「書面添付(その1)」 ~意見聴取後の修正申告~ 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「おい、谷垣君!」 田中統括官が谷垣調査官を呼んだ。 昨年7月の人事異動で、谷垣調査官は、河内税務署資産課税第三部門に配属された。 谷垣調査官は、国専(国税専門官採用)40期生である。 「法人課税部門からこんな資料をもらったんだけど。」 田中統括官はそう言いながら、資料を谷垣調査官に見せた。 「何ですか?」 谷垣調査官は、資料を見ながら尋ねた。 「見れば分かるだろう。」 田中統括官は、少し怒ったように言った。 「法人課税部門の調査結果だよ。」 谷垣調査官は、資料をもう一度見直した。 「確かに『棚卸資産の漏れ1億円』とか『売上除外6,000万円』とか、書かれていますね。」 谷垣調査官はうなずきながらつぶやいた。田中統括官が確認する。 「そこの会社の名前・・・『株式会社兼田建設』となっているだろう。」 「兼田建設・・・どこかで聞いた名前ですね。」 谷垣調査官は頸をかしげた。 「半年前に相続税の申告があった兼田悦三の会社だよ。」 田中統括官は少し声を高くした。 「兼田悦三?・・・そうそう、相続税の申告が出てましたね。」 谷垣調査官は大きくうなずく。兼田悦三は、兼田建設の会長である。10年前に社長の地位を長男の周平へバトンタッチしている。 「確か、総遺産価額が5億円を超えていましたね。ですから、兼田という、その名前を覚えていたのでしょう。」 谷垣調査官は田中統括官の顔を見た。 「ところで、この資料を私に見せたと言うことは、相続税の申告に関係があるということですか?」 田中統括官はニヤリと笑って言った。 「そうだ。兼田悦三は兼田建設の株式を50%所有していたから、法人税の税務調査によってその株価の評価額が変われば、相続財産も当然増える・・・」 谷垣調査官は、田中統括官が資料を手渡した意味をようやく理解した。 「この法人税の税務調査によると、株価もかなり高くなりそうですね。」 谷垣調査官は、じっと資料に書かれている数字を見ている。 「さっそくその資料に基づいて、兼田建設の株価を再計算してくれ。」 田中統括官は谷垣調査官に株式の評価額の算定を指示した。 「はい。それで、相続税の税務調査に行けばよいのですか?」 谷垣調査官の声は弾んでいる。 「大きな増差額が期待できそうですね。」 谷垣調査官はうれしそうに資料を見る。ただ、田中統括官は浮かない顔をしている。 「しかし、この相続税の申告書には、書面添付がなされている・・・」 「書面添付?」 谷垣調査官は、目をパチパチさせた。 「おいおい、税理士法33条の2に規定している計算事項等を記載した書面だよ。」 田中統括官は困った表情を浮かべた。 「書面添付ですか? どこかで聞いたことがあるような・・・」 谷垣調査官はまだ頸をかしげて言った。 「税理士法35条1項を読みなさい!」 田中統括官は、強い口調で言った。谷垣調査官は、机上にある税務六法を手に取り、ページをめくった。 谷垣調査官は条文を読み上げたあと、田中統括官に尋ねた。 「・・・ということは、兼田悦三の相続税の税務調査をする前に、意見聴取をしなければならないということですか?」 「そうだ。」 田中統括官が答えた。 「とすると、意見聴取の段階で納税者から相続税の修正申告書が提出されたら、どうなるんですか?」 「どうなるって・・・修正申告に対して加算税を課すことができるか、という意味を聞いているのか?」 田中統括官の問いに、谷垣調査官は大きくうなずいた。 「意見聴取は、調査を行うかどうかを判断する前に行うものだから、意見聴取の質疑応答に基因して修正申告書が提出されても、その申告書は、更正があるべきことを予知してされたものに当たらないとされている・・・」 田中統括官は、引き出しから事務運営指針(平成24年12月19日)を取り出して、谷垣調査官に見せた。 谷垣調査官の表情が険しくなる。 「ということは、重加算税はとれない、ということですね・・・意見聴取であれば・・・」 田中統括官は、苦笑いしながらうなずいた。 (つづく)

#No. 138(掲載号)
#八ッ尾 順一
2015/10/01

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#Profession Journal 編集部
2015/09/28

《速報解説》 金融庁、会計監査の信頼性確保に向けた取組みを含む「平成27事務年度 金融行政方針」を公表~会計不正事案など受け「会計監査の在り方に関する懇談会」の設置も~

《速報解説》 金融庁、会計監査の信頼性確保に向けた取組みを含む 「平成27事務年度 金融行政方針」を公表 ~会計不正事案など受け「会計監査の在り方に関する懇談会」の設置も~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年9月18日、金融庁は「会計監査の在り方に関する懇談会」の設置を含む「平成27事務年度 金融行政方針」を公表した。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 会計監査の在り方に関する懇談会の設置 金融庁は「会計監査の在り方に関する懇談会」を設置することを公表した。 この背景には、近年のIPO(株式新規公開)を巡る会計上の問題や会計不正事案などを契機として、改めて会計監査の信頼性が問われている状況にあるとの認識がある。 なお、「会議の構成員は、経済界、学者、会計士、アナリストなど、関係各界の会計監査に関する有識者とする」とのことである。   Ⅲ 平成27事務年度 金融行政方針 平成27年9月18日に公表された「平成27事務年度 金融行政方針」は、金融行政が何を目指すかを明確にするとともに、その実現に向けて述べている。 会計監査の在り方や開示及び会計基準の質の向上について、以下のように述べられている(7~10ページ)。 1 会計監査の質の向上   2 開示及び会計基準の質の向上 以下の事項のほか、証券取引等監視委員会による勧告・告発等の厳正な対応、虚偽記載等の原因となった内部管理上の問題の指摘・改善、適正な開示のための取締役、監査役(委員)等に対する働きかけの強化についても述べている。 (了)

#No. 137(掲載号)
#阿部 光成
2015/09/24

プロフェッションジャーナル No.137が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年9月24日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.137を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/09/24

山本守之の法人税“一刀両断” 【第15回】「『一般に公正妥当と認められる基準』について」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第15回】 「『一般に公正妥当と認められる基準』について」   税理士 山本 守之   Ⅰ 立法にいたるまで (立法の経緯) 法人税法第22条第4項においては、各事業年度の金額の計算上益金の額及び損金の額に算入すべき収益、原価、費用、損失の額の計算については、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする」としています。 この規定は、昭和42年の法人税法の改正によって追加されたものですが、この規定に集約されるまでには、企業会計と税法との調整や税制の簡素化を背景として多くの論議がありました。 1 企業会計審議会の意見 昭和27年6月16日の「税法と企業会計原則との調整に関する意見書」(企業会計基準審議会中間報告)においては、企業利益と課税所得について税制上又は税務上の理由により差異の生ずる事実は無視し得ないとしながら「公正妥当な会計原則に従って算定される企業の純利益は課税所得の基礎をなすものであり、税法上における企業所得の概念は、この意味における企業の利益から誘導されたものであることを認めなければならない」としています。 つまり税法における課税所得計算の基本理念も一般に公正妥当と認められた会計処理の基準に根拠を求めなければならないと述べているのです。 この考え方は、同審議会における昭和41年10月17日の「税法と企業会計との調整に関する意見書」に引き継がれました。 同意見書では、課税所得は企業利益を基礎として税法特有の規定を適用して計算されるものであり、このような趣旨を明確にするため法人税法の課税標準の総則的規定として「納税者の各事業年度の課税所得は、納税者が継続的に健全な会計慣行によって企業利益を算出している場合には、当該企業利益に基づいて算出するものとする」旨の規定を設けることが適当であるとして次のように述べています。 2 日本租税研究協会の意見 昭和41年8月25日には、日本租税研究協会が「企業利益は、健全な会計慣行にしたがって計算されるものであるから、課税所得も健全な会計慣行によって計算されるものであることを法令において明らかにすることが適当である」という意見を発表しました。 3 税制調査会の答申 このような会計学会、産業界の意見を受けて、税制調査会では、「税制簡素化に関する第一次答申」(昭和41年12月)を発表しましたが、このなかでは、次のように述べています。 なお、中間答申においては、企業会計審議会の考え方を受け入れ、 とし、さらに、 (答申第3-Ⅰ、1(1)) として、適正な会計慣行によって課税所得を計算すべきであることを明らかにしています。 4 制定当時の受け取り方 このような意見や答申を受け入れて実定法に規定したのが現行の法人税法第22条第4項ですが、この規定が創設された当時は、さまざまな受け取り方をされたようです。 会計学者のなかには、税法が企業会計原則を全面的に受け入れたとする者もあり、他方税務当局者のなかには、この規定は従来から採ってきた税法の原則を成文化したものにすぎず、単なる訓示的又は宣言的規定であるから、これによって課税庁は何ら新たな拘束を受けるものではないとする者もいました。 (『税務通信』1967年5月号、5頁) なお、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に対する考え方については、 (武田昌輔・後藤喜一編著『DHC 会社税務釈義』第1巻1449~1449の2頁) とする見解があります。   Ⅱ 公正妥当と認められる会計処理基準の内容 1 別段の定めとの関係 法人税法第22条第4項では、「第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額」について一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するものとしていますが、第2項に規定する収益の額は、「当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、・・・資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」としており、「前項各号(第3項各号)に掲げる額」についても、同条第3項では「・・・別段の定めがあるものを除き」とされているから、法人税法第22条第4項の適用除外となっていると考えるべきです。 第4項の規定を別段の定めに及ぶという主張をする者も見受けられますが、法人税法第22条第4項では、収益の額、原価、費用、損失の額としないで、わざわざ「第2項に規定する」「前項各号に掲げる額」としたのは、別段の定めについて適用除外をするためと考えられるのが自然でしょう。 2 企業会計原則・商法との関係 実定法上で表現されている「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」とは、具体的にはいかなるものを指すのかについては議論の存するところです。一般的には、客観的な規範性を持つ公正妥当と認められる会計処理の基準という程度の意味であり、企業会計原則のような明文化された特定の基準を指すものではありません。 もともと公正妥当な会計処理は、社会情勢や経済的要因によって相対的に変化していくものであり、固定的な概念と解すべきではないからです。 もっとも、 (故中村利雄著『法人税の課税所得計算』81頁) とする見解も存します。 課税標準である所得の計算は、企業会計に依存せざるを得ないため、法人税法第22条第4項の解釈として企業会計原則自体が法規範性を持つという考え方については、多くの批判があります。 この批判の基礎となるのは、 (松沢智著『租税実体法』139頁) という考え方なのです。 確かに、企業会計原則そのものが法的規範ではありませんが、この原則によって会計処理が行われることが慣行化され、社会もそれを容認していけば、その部分については規範性を帯びることになります。 つまり、企業会計原則そのものを法規範とするのではなく、そのうちの社会的に妥当なものとして容認され、慣行化したものが結果として規範性を持ち、「一般に公正妥当な会計処理の基準」となり得るというのです。 この意味では、企業会計原則は社会的・経済的変化に伴って修正が行われたといっても、長い年月にわたって企業における会計処理の基準として現実に容認され、多くの企業における会計処理がこれに依拠した事実を考えれば、そのすべてではないとしても、相当部分が結果として規範性を持っているといえましょう。 「企業会計原則に従って処理がなされておれば、公正妥当な処理基準と考えて差し支えなかろう」としているのは、このような考え方をふまえているものと考えられます。 ただ、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準は、税法の別段の定めのない白地部分に適用されるものですから、「企業会計原則に反する法律の規定は違法である」という論理は成立しません。 つまり法人税法第22条第4項で「第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は・・・」としているのは、法人税法に定める別段の定め及び資本取引に係るものを除外した収益、原価、費用、損失の額に適用される規定であることを意味しているのです。 商法では、「商業帳簿ノ作成ニ関スル規程ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」(商法第32条第2項)旨が明文化されています。 ここでいう「公正ナル会計慣行」が、法人税法にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」といかなる関係があるかについては議論のあるところです。 この点については次のような見解もあります。 (武田昌輔・後藤喜一編著『DHC 会社税務釈義』) 3 「一般に」の意味 公正妥当と認められる会計処理基準における「一般に」については、税法的要求を除外して考えられたものであり、政策的要求を含む商法的要求(繰延資産の償却等)も除外して考えるべきであると解説されています(武田昌輔稿「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」『税大論叢』第三号)。 また、この場合の「一般に」は、誰にとって一般になのかが問題になります。 これについては、ある学会で会計学者から次のような発言がありました。 つまり、「一般に」は「会計学者にとって」という意味だというのです。 確かに、当初アメリカで論議されたように、「一般に」は会計学者や会計処理を行うという固定的な考え方だけでは解決できない複雑な事態なのです。 「会計処理の基準」には、税法的又は商法的要求がなく、あくまでも会計上の適正処理基準であるとしても、これが補充規定ではあっても税法という法律のなかに組み込まれた以上は、政策的要素を除外しても公平な課税標準計算の規定として適正であるか否かの検討を免れるわけにはいきません。 もちろん、公正処理基準は概念的・抽象的なもので客観的基準の存在をその内容とするものではないかもしれません。経済取引の変化に伴って相対的に変化するものでしょう。いわんや、現在のところ特定の会計処理基準といえる国際会計基準が、また直ちにその全部が「一般に」公正妥当と言い切れるものではありません。 一般に公正妥当と認められる会計処理基準を尊重するとした法人税法第22条第4項の規定は、現実に企業が会計処理に際して用いている基準や慣行のうち、一般に公正妥当と認められないもののみを税務でも認めないこととし、原則として企業の会計処理を認めるという基本方針を示したと考えるべきでしょう。 したがって、企業が特殊な会計処理を行った場合に、それが一般に公正妥当な会計処理基準に適合しているか否かは、具体的事例についての判断(裁決・判決等も含む)を積み重ねていくことにより、次第に明らかになっていくものと考えます。 この意味からすれば「一般に」は決して「会計学者にとっての」と解すべきではありません。   Ⅲ 「一般に公正妥当」が問題となった裁判 1 競走馬の売却収益計上時期 (事例の検討と私見) 法人税基本通達2-1-1では、棚卸資産の販売収益計上の日を「引渡しのあった日の属する事業年度」としています。 ところで、この場合の「引渡し」をどのように認識するかが問題です。 法律上の引渡しには、現実の引渡し(民法182条1項)、簡易の引渡し(民法182条2項)占有改定(民法183条)、指図による占有移転(民法184条)等がありますが、法人税法における引渡しの考え方は、必ずしも法的な基準を予定しているわけではなく、経済的実態に適合する限りは、企業会計の記帳慣行を尊重すべきであるとするものもありますから、以上のような基準を継続適用し、この基準がその棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じてその引渡しの日として合理的であれば、これが税務上も認められます(法基通2-1-2)。 事例の場合の引渡日の判定については、課税庁では馬匹の売買契約書で平成X+1年10月末日となっており、その後に引渡日を変更した事実は認められないとして、同日の収益の額に算入すべきであるとして更正処分をしたのです。 しかし、収益の認識基準を決定するためには、その商品を取り扱う業界の取引や経理処理の慣行は尊重されなければなりません。 馬匹の場合は、これを譲り受けた側ではすぐに競走馬として使い物になるわけではありませんので、売主の牧場で飼育、調教を相当期間受けなければならなくなります。調教やトレーニングをしたが競走馬として使い物にならないという場合は、代わりの馬を引き渡すか前受金を返さなければならないでしょう。 売買代金を手形としているのは、トラブル防止の意味もあるかもしれません。競走馬として使い物になるか否かの見極めに、ある程度の期間が必要ですから、使い物にならない場合は決済を留保することになるでしょう。 一方、売主の側でも、競走馬のわずかな瑕疵を理由に支払いを拒絶されるおそれもあるので、代金を受け取ってみなければ安心できないという取引といえましょう。 このため、売主である牧場が所属する農業協同組合等では、馬匹の売買に係る所有権の移転を契約締結時等早期に行うと、買主が馬匹のわずかな瑕疵を理由に残代金の支払いを拒絶する例があることから、その譲渡代金の全額入金時以後に馬匹の引渡しを行うように組合員に指導しているところがあるようです。 つまり、買主は引き渡され馬匹が競争馬として満足できるものか否かを見極めるために代金の全額支払いをできるだけ先に延ばそうとし、一方売主は買主の引渡し後の代金支払拒否を担保するために、代金の全額受領後に馬匹の引渡しをしようとする。このようなそれぞれの異なった立場の事情がせめぎ合いながら取引慣行が成立するのです。 この事件を取り扱った国税不服審判所では、 (平成4年6月8日裁決) としています。 この裁決では、法人税法第22条第4項の具体的適用について次のように述べています。 一般に公正妥当と認められる基準については、次のように述べているものもあります。 (金子宏著『租税法(第20版)』318頁) 2 分掌変更の場合の役員退職給与の分割支給の損金性 この事例では、課税庁はもとより、審査請求を審理した国税不服審判所も国側の更正処分を支持し、裁判所の判決ではじめて「課税要件法定主義」に基づく納税者勝訴としました。 この判決は筆者が早くから主張していたものですが、多くの税理士や学者は国の考え方に沿った解説をしていました。 国税不服審判所では、次の第二金員は退職給与に該当せず、法人税法第34条第1項の適用を受けて損金不算入となると裁決しました。平成27年2月26日の東京地裁では、第二金員は退職給与であるから法人税法第34条第1項の適用はできず、損金の額に算入されるという逆転判決を出し、国側は高裁への控訴を断念したので、納税者勝訴が確定しました。 (通達の解釈) 役員退職金については、次のような2つの通達があります。 まず、第一通達では、ただし書きで退職給与の支給額を支給日の属する事業年度で損金経理することと認めています。役員退職の翌期に支払った第二金員も、この取扱いによれば損金の額に算入できるというのが納税者の主張です。 これに対して、国側は、第一通達のただし書きは完全退職の場合のみに適用され、分掌変更の場合は適用できないとしました。 なお、納税者反論のなかに「中小企業における事業承継の実態」がありますが、これは とする納税者主張でもうなずけます。 訴訟においても、納税者の次のような主張があります。 (了)

#No. 137(掲載号)
#山本 守之
2015/09/24
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