検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10562 件 / 9421 ~ 9430 件目を表示

税務判例を読むための税法の学び方【29】 〔第5章〕法令用語(その15)

税務判例を読むための税法の学び方【29】 〔第5章〕法令用語 (その15)   税理士 長島 弘   10 期限や期日を示す表現 (① 「以前」と「前」、「以後」と「後」) 【第27回参照】 (② 「期限」「期日」「期間」、③ 期間計算に関する国税通則法の定めと民法、④ 「・・・から・・・まで」)【前回参照】  ⑤ 時をもって定める期限 次に、前回見た国税通則法第10条第2項において、期限が日曜や休日の場合の例外規定において、括弧書きに「時をもって定める期限その他の政令で定める期限を除く。」とあった、この時をもって定める期限等について説明しよう。 まずこの括弧書きであるが、「「時をもって定める期限」その他の「政令で定める期限」を除く」とあることから、「時をもって定める期限」については「政令で定める期限」に含まれ、例示となっている(第15回参照)。 したがってこの適用が除外される項目は、国税通則法施行令第2条第1項に示されている。 この国税通則法施行令第2条第1項の例として、第1号の「出国の時」について、所得税法第115条(出国をする場合の予定納税額の納期限の特例)を見てみよう。 ただし「出国」とは、一般的なものと異なり、所得税法には「居住者については、国税通則法第117条第2項 (納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいい・・・(所得税法第2条第1項第42号)」と定義されている。したがって、離日前に納税管理人の選任・届出がある場合には本来の納期限までに納付すればよい。 ⑥ 期限の特例と各種消費税の届出書 前回見たように、国税通則法第10条第2項においては、期限が日曜や祝日の場合の特例を規定しているが、よく消費税の各種届出書について、なぜ申告書と同一の基準ではないのであろうかという疑問の声を聞く。 例えば、平成25年6月30日が日曜であったため、4月末決算の法人税申告書は7月1日が提出期限である。しかし7月1日が事業年度初日の法人についての消費税課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書は、この7月1日に提出した場合は、6月30日までに提出したものとは扱われない。 消費税法第9条第4項には、以下のようにある。 また消費税法第37条第1項には、以下のようにある。 このように、消費税法上の条文においては、各種届出書の効力について、「当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間」から適用される旨規定しているだけであって、各種届出書の提出期限が規定されているわけではない。 したがって、先の例で7月1日に届出した場合には、届出書を提出した翌課税期間から適用されるのであるから、届出書を提出した7月1日を含む期間に適用がないことになる。 しかし国税庁のホームページや各パンフレット等には、期限として「課税期間の初日の前日まで」とある。 例えば、消費税簡易課税制度選択届出書(第24号様式)については、提出期限として「選択しようとする課税期間の初日の前日まで」とあるが、実は条文としてはこのような規定ではない(なお私見としては、紛らわしい表記であるから、改めるべきと思っている)。 なお条文に、この「初日の前日」までという文言が全くないわけではない。 消費税法第9条第9項では、以下のように「課税期間の初日の前日まで」と規定している。 また消費税法第37条第7項には、以下のようにある。 このように、消費税法上の条文において、各種届出書の提出期限について「課税期間の初日の前日まで」と規定しているように誤解される箇所もある。 これらの規定から、条文として「課税期間の初日の前日まで」を期限として定めていると誤解すれば、「前日」は「日」であるから、これも「日、月又は年をもって定める」ものとなり、特例が適用されると誤解されかねない。 このような誤解を生じかねないため、先に書いたホームページやパンフレット等だけではなく、これらの条文もこの表現を改めるべきであろう。 なおついでに書けば、この届出書提出について、例えば先の例で6月30日の閉庁後にこのことに気が付いた場合には、当日24時前に郵便による郵送(原則、発信主義が適用される。その発信主義適用の範囲については「国税通則法第22条に規定する国税庁長官が定める書類を定める件(平成18年国税庁告示第7号)」等で定められている)、又は翌朝正規勤務時間前に税務署に設置してある時間外文書収受箱に投函すれば6月30日付となるが、年末は特別の扱いとなっている点には注意を要する。〔下記追記参照〕 ⑦ 国税通則法第10条第2項の期限の特例に関するその他注意点 この第2項の特例は、「「国税に関する法律に定める」「申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収」に関する期限」であるから、税法の定めによるのではなく行政処分により定められる期限の場合(この場合は指定する際に調査して休日の翌日は指定すべきである)には適用されない。 例えば申請に基づき納期限の延長を承認する場合の指定日等がこれに該当するが、ただし納期限の延長しうる期間が法定されている場合のその最終日である期限は国税に関する法律に定める期限であるから、この特例が適用され、その翌日を指定日とすることができる。 同様にこの特例は、「「国税に関する法律に定める」「申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収」に関する期限」であるから、単に計算の基準となっている期間の末日や課税内容を定める際に基準となる期間の末日、一定事実の判断の基準としている期間の末日はこれに該当しない。 また同項には、「日曜日、国民の祝日に関する法律(略)に規定する休日その他一般の休日又は政令で定める日」という文言があった。この「政令で定める日」として、国税通則法施行令第2条第2項において以下のように規定されている。 土曜日や年末年始が日曜や祝日と同様に扱われるのは、この規定があるからである。 (了)

#No. 57(掲載号)
#長島 弘
2014/02/20

設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる~設備投資における管理会計のポイント~ 【第4回】「設備投資における実務上の問題点」―終了・撤退―

設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる ~設備投資における管理会計のポイント~ 【第4回】 「設備投資における実務上の問題点」 ―終了・撤退― 公認会計士・税理士 若松 弘之   〈設備投資に関して実務で見られる問題点〉 前回、設備投資に関して実務でみられる問題や留意点を次の3つの過程に分けて解説を行ってきたが、引き続き、設備投資の終了・撤退局面における実務上の問題と設備投資実務を通してのチェックポイントなどを解説していく。 ③ 設備投資の終了・撤退段階(廃棄・売却時) この段階で考慮すべきポイントは、当初見積もった経済的な耐用年数と実際の使用状況を比較し、対応を修正することである。具体的には以下の2つのケースに分かれる。 A  当初の経済的耐用年数満了よりも早く設備投資効果がなくなったケース このケースで検討すべきことは、何らかの追加的機能増強や追加(資本的支出)によって、当初の効果が回復・増大するかである。もしも、費やすコスト以上の回復・増強効果が見込めないのであれば、適時に設備の除却、売却及び更新を検討すべきである。特に、設備投資額を既に回収済み、または、それに近い状態であればなおさらである。 一般的には、「いまだ償却すべき簿価が残っており、この状態で事業の用から外すと多額の除却損が出てしまう」とか「当初見込んだ程の投資効果ではないが、設備更新による多額なキャッシュ・アウトを回避しながら、細々であってもキャッシュ・インフローがあるのだから、なんとか今の設備を維持していこう」という考え方もあるだろう。しかしながら、これは非常に危険な考えを含んでいる。 まず、会計上の「固定資産除却損」の計上を回避することでは何ら実態は改善しない。課税所得が発生している状況であれば、適時適切な除却を通じて損金算入することで納税負担を減らし、内部留保された資金を取替更新に充てるべきである。 次に、僅かなキャッシュ・インフローを追いかけながらだましだまし生産性の悪い設備を使用し続けることは、製品やサービスの品質低下や故障・トラブルの増加、従業員の士気低下など、様々な部分でマイナス影響を及ぼすため、単なるキャッシュ・アウトの回避では済まなくなることも多い。いずれは設備更新時期がやってくる以上、これは、まさに問題の先送りといえよう。 B  当初の経済的耐用年数満了してもなお設備投資効果が続くケース このケースは、うれしい想定外といえるものであるが、留意すべき点もある。一般的には「追加の資金投下も当面必要なく、減価償却費も計上されないため、営業キャッシュ・フローと営業利益の双方に有利な状況。少しでも営業利益が出ている間は、現在の設備を使い続ける方が得だ。」という考え方になると思われる。しかしながら、いつかは最新設備に取り替える時期が来るのだから、その時期が早いか遅いかの違いともいえる。本来、耐用年数の満了時以降は、「現状使用継続案」と「新規設備取替案」の有利不利を定期的に比較検討すべきといえよう。 経営管理の視点からは、どうしても投資回収や利益優先、原価率改善というコスト面のメリットに目が行きがちである。しかし、企業内部ばかりに目が向いていると、競合他社との相対的な比較において、製品やサービスの質の低下が進んでいる状況に気付くことが遅れる可能性もあり、いつの間にかシェアを奪われていた、ということにもなりかねない。適切な設備更新やテコ入れ時期を逃すと、シェア回復までに相当の時間を費やすことも多い。 ここで大切なことは、耐用年数満了後も引き続きキャッシュ・インフローが出ている状態に満足せず、積極的に設備投資の更新を行うことで、新たな需要を掘り起こし、競合他社からシェアを守り続けながら高い収益力を維持することである。どのタイミングで、「守り」から「攻め」に転じるのかを適切に判断できる企業こそ持続的な成長を実現していけるのではないだろうか。 *   *   * 次回は設備投資の意思決定を具体的に進めていくうえで必須の知識である「設備投資の経済性計算」について解説していく。 (了)

#No. 57(掲載号)
#若松 弘之
2014/02/20

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第3回】「会計方針の変更と表示方法の変更」

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第3回】 「会計方針の変更と表示方法の変更」   公認会計士 阿部 光成   《解 説》 過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用指針に基づいて解説を行う。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 会計方針と表示方法が区別されている 過年度遡及会計基準では、会計方針と表示方法を分けて、それぞれの定義が設けられている。これに合わせて、会計方針の変更と表示方法の変更も区別されている(過年度遡及会計基準4項(1)(2)(5)(6))。 「企業会計原則」において、会計方針は、会計処理の原則及び手続だけでなく、表示方法を包括する概念である(「企業会計原則」注解1-2)。 過年度遡及会計基準は、会計方針と表示方法を別々に定義し、会計方針は表示方法を含まない定義となっている(過年度遡及会計基準36項、37項)。 会計方針の変更の定義と表示方法の変更の定義も別々に規定し、取扱いもそれぞれ異なっている。 このように、会計方針と表示方法を区別し、それぞれの取扱いを規定していることが、それまでの会計基準等と異なっている。   Ⅱ 会計方針の変更と表示方法の区別 1 以前の区別の方法 「正当な理由による会計方針の変更」(監査委員会報告第78号。平成23年3月29日に改正されている)は、会計方針の変更とは、従来採用していた会計処理又は表示方法から他の会計処理又は表示方法に変更することをいうと述べていた。 監査委員会報告第78号は、会計方針の変更と表示方法の変更の区別について、次のように規定していた(監査委員会報告第78号2(2))。 2 過年度遡及会計基準等における区別の方法 過年度遡及会計基準は、表示方法の変更(過年度遡及会計基準4項(6))には、財務諸表における同一区分内での科目の独立掲記、統合あるいは科目名の変更及び重要性の増加に伴う表示方法の変更のほか、財務諸表の表示区分を超えた表示方法の変更が含まれると規定している(過年度遡及適用指針4項)。 過年度遡及適用指針は、会計方針の変更と表示方法の変更について次のように整理している。 会計方針の変更と表示方法の変更を区別するポイントは、会計処理の変更を伴うかどうかであり、それは資産及び負債並びに損益の認識又は測定について変更が行われるかどうかということである。 このような整理を受けて、「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」(会計制度委員会研究報告第14号)では、売上高と売上原価の総額表示と純額表示に関して、次のように述べている。 (了)

#No. 57(掲載号)
#阿部 光成
2014/02/20

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第34回】税効果会計③「税効果会計における一時差異」~ 一時差異の類型

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第34回】 税効果会計③ 「税効果会計における一時差異」 ~ 一時差異の類型   仰星監査法人 公認会計士 菅野 進   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 X1年3月31日(決算日) (*1)棚卸資産評価損30×40%=12 (*2)圧縮記帳額20-圧縮記帳額に係る税効果8(*3)=12 (*3)圧縮記帳額20×40%=8 〈会計処理の解説〉 前回、税効果会計は資産負債法を前提としており、当該資産負債法で捉えられる差異が一時差異であることを解説しました。今回は、一時差異にはどのようなものがあるのかについて解説します。 税効果会計は資産負債法を前提とするため、企業会計と税務の相違を会計上の資産及び負債の金額と税務上の資産及び負債の金額との差額と捉えます。 この相違は、適正な期間損益計算を目的とする企業会計と公平な課税を行うことを目的とする税務の目的の違いから生じる相違です。 そして、企業会計と税務の相違は、「一時差異」、「永久差異」の2つに分けることができます。 ご質問の場合の各取引から発生する相違は、それぞれ以下の分類に該当します。 交際費の損金算入限度超過額 20 → 永久差異 棚卸資産評価損 30 → 一時差異 土地の圧縮記帳の金額 20 → 一時差異 これらのすべてに対して、税効果会計を適用するわけではありません。 例えば、税務上の交際費の損金算入限度超過額や受取配当金の益金不算入額のように、企業会計上は費用又は収益として計上されますが、税務上は永久に損金又は益金とならない項目もあります。 これらは「永久差異」といい、税務上、永久に損金又は益金とならないため、税効果会計の対象とはなりません。 一時差異を発生原因別に分類すると、個別財務諸表上は以下の2つに分類できます。 さらに発生原因別の一時差異は、将来の課税所得を増加させるか減額させるかで以下の2つに分けることができます。 ご質問の棚卸資産評価損は①に該当し、土地の圧縮記帳額は②に該当します。 以上をまとめると、下図のようになります。 税務上の繰越欠損金は一時差異ではありませんが、課税所得と相殺することにより法人税等を減額する効果を有するため、一時差異と同様に取り扱うことになります。 (了) ※3月は、消費税に関する会計処理について解説します。

#No. 57(掲載号)
#菅野 進
2014/02/20

人的側面から見た「事業承継」のポイント 【第3回】「事業承継計画と後継者教育」

人的側面から見た「事業承継」のポイント 【第3回】 「事業承継計画と後継者教育」   社会保険労務士法人スマイング 代表社員 特定社会保険労務士 成澤 紀美   1 計画立案の手順 会社の事業承継を進めていくにあたり重要なことは、事業承継のゴールを明確にし、計画に沿って進めていくことである。 事業承継の失敗事例の多くは、この「計画性」に欠けていることが原因であるため、次の観点から計画を立てていくべきである。 これらの計画を統合して、最低でも3年間の中期計画を策定し進めていく。 事業承継計画を立案する際には、まず最初に会社をとりまく状況を正確に把握し、その上で、具体的な計画に落とし込んでいく。 事業承継計画では、次の内容について具体的な対策と実施時期を掲げていく。 中長期的なものとなるため、計画途中での見直しも必要となる。   2 後継者教育 事業承継計画に基づいて、後継者を選定した後には、下記のように会社の内部や外部で教育を行い、経営者としての能力や自覚を築き上げていかなければならない。 円滑な事業承継のためには、意識的な「後継者の育成」が不可欠である。 (1) 社内での教育として (2) 外部での教育として ◆  ◆  ◆ 次回は本連載のまとめとして、事業承継を成功させるためのポイントについてお伝えしたい。 (了)

#No. 57(掲載号)
#成澤 紀美
2014/02/20

〔税理士・会計士が知っておくべき〕情報システムと情報セキュリティ 【第12回】「情報システムと不正発見」

〔税理士・会計士が知っておくべき〕 情報システムと情報セキュリティ 【第12回】 (最終回)  「情報システムと不正発見」   公認会計士 神崎 時男   ◎公認会計士業界の状況 情報システムの内部には、大量のデータが保存されていることは言うまでもない。 昨今「ビッグデータ」という言葉も登場しているが、こういった大量のデータは、販売促進を行うためのデータ分析に利用することが多い。 しかしながら、大量のデータは不正な取引を実施したときに現れるデータの異常性の検出に利用することも可能である。公認会計士業界の周辺においても、CAATを利用することによって、そういった対応が始まっている。   ◎CAAT CAATとは、“Computer Assisted Auditing Techniques”の略で、「コンピュータ利用監査技法」と訳される。 一般的な方法としては、監査人が基幹システム等から監査対象期間のデータを入手し、様々な観点からデータを検証する。勘定残高の合計チェック、利息や償却費の再計算、不正仕訳データの抽出など、対象となる企業やデータの特性に応じて必要な検証を行っている。 紙ベースの台帳や元帳からサンプルベースで検証するのに比べ、全件を検証対象とすることに大きな特徴がある。 監査ツールとしては、Microsoft社のExcelやAccessを使うこともあるが、大手監査法人を中心としてCAAT専用ツールを使うことが一般的になりつつある。 CAAT専用ツールには、次のような特徴がある。   ◎CAAT利用拡大の背景 CAATの利用拡大には、次のような背景がある。 ① 不正事件の増加に伴う監査基準の厳格化 オリンパスの事件に端を発し、そのような事件の再発防止策として、監査に関連する基準の厳格化が行われている。 平成25年3月14日には、「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定について」が公表されている。 監査基準委員会報告書240「財務諸表監査における不正」においても、「仕訳入力及び修正を監査対象期間を通じて検証する必要性を考慮すること」といった記載があり、CAATの利用を想定するような記述が見受けられる。 ② 内部監査部門における新たな監査手法の模索 内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)が一段落し、監査法人のみならず上場企業の内部監査部門が、新たなる監査手法を探し求める時期に来ている。また、監査法人と同様に企業内部においても、不正への対応ニーズが生じている。 ③ 監査法人における新たなサービスラインの構築 監査法人等のサービス提供側もJ-SOXバブル後の新たなコンサルサービスとしてCAATを広めていきたいと考えている。 ④ テクノロジーの進歩 昨今のPC端末や各種周辺機器の低価格化と処理能力の向上により、安価なPC端末でも大量のデータがストレス少なく処理できるようになっている。   ◎監査法人におけるCAATの具体的利用方法 上述したように「仕訳入力及び修正を監査対象期間を通じて検証する必要性を考慮すること」とされているため、特に大手監査法人を中心に、会社の全仕訳を入手し、分析するケースが増えている。 一般的に「仕訳テスト」と言われるが、例えば、監査基準委員会報告書240に例示のある、次のような仕訳データを抽出し、検討している。 また、IT業務処理統制の検証にも利用されている。 例えば、販売システムから会計システムへ、データが正確かつ網羅的にインターフェースしているかを検証するに際して、これまでは、ある得意先のある月のデータのみを抽出して照合するといったことが多くあった。 それは、データ量が膨大になるとエクセルでは取り込み不能になることが理由のひとつであったが、CAAT専用ツールの利用により、全データを取り込み、また、迅速に検証することが可能になったため、全データの照合をするケースが増えている。 さらに、預金や借入金の利息計算や、固定資産の減価償却計算、各種引当金の計算、棚卸資産や債権の滞留データの抽出に関しても、元データを全件入手し、監査人自らCAAT専用ツールに計算ロジックを設定して再計算することがある。   ◎最近の企業におけるCAATの具体的利用方法 CAATを利用して具体的に不正な取引を検出する手法は様々である。 例えば、給与計算システムに各社員が登録した勤怠時間データとタイムカードの組込みシステムに蓄積された入退社時間データを照合し、残業時間の過大申請や、逆にサービス残業が行われていないかを検証することがある。また、決算期末前に計上された販売データと当該取引の納入予定日付データの整合性を検証し、販売実績計上の繰上げが行われていないかを検証することがある。さらには、社内規則で上席者の承認が不要な金額の上限で行われている取引を抽出して、不正に承認を回避しているケースがないかを検証することもある。 ただ、会計士業界も、また、企業においてもこういった検証パターンを蓄積できておらず、今後ますます「実務における利用と検証パターンの蓄積」が必要である。 さらには、こういった不正な取引がデータに現れるパターンは様々であるため、蓄積された一定の検証パターンを前提とした上で、会社ごとの取引、業務プロセスおよびデータフローを理解した上、状況に応じた分析を行うことが重要となってくる。 あるアンケートによると、CAATの一般企業における認知度の指標として、『「CAAT」という言葉を知っているか』という質問をしたところ、約5割弱がYesとの回答であった。 また、『CAATを利用したことがあるか』という質問に対しては、約3割程度の会社がYesとの回答であった。そのうち『CAAT専用ツールを利用しているか』という質問に対しては、約2割程度の会社がYesとの回答であった。 これらの数値からは、少しずつではあるが公認会計士のみならず、一般企業にもCAATが普及して来ていると言える。 CAAT専用ツールを積極的に利用している企業では、検証パターンを100パターン以上も用意し、年間を通じ様々な検証を継続的に行っている。 (連載了)

#No. 57(掲載号)
#神崎 時男
2014/02/20

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第36回】「個別決算業務のKPI(その③ 期中対応)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第36回】 (最終回)  「個別決算業務のKPI (その③ 期中対応)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 最終回は、個別決算業務を構成する複数のKPIから、期中対応に関連する業務プロセスに着目したKPIを取り上げる。 経理財務部門が行う個別決算業務には、確定決算である年度決算に加えて、中間決算、四半期決算、月次決算がある。上場会社による四半期決算と四半期報告書の提出を選択していない非上場の金融商品取引法適用会社による中間決算は、いずれも法定義務であるから、その態様は一定の範疇に収まっている。しかし、月次決算となると、これは会社が経営管理のために独自で行う決算であるから、その態様は百社百様となりうる。しかも、月次決算の積み上げが年度決算であるから、月次決算のあり方が、年度の個別決算業務のサービスレベルを少なからず左右する。 そこで、個別決算業務の期中対応という視点で月次決算のあり方を評価するKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、月次決算を行う月次業績管理業務において、会社が担う一般的な機能として、「月次決算」と「業績分析」の2個の機能を挙げている。 また、個別決算業務と同義の単体決算業務において、会社が担う一般的な機能として、「決算準備」、「決算手続」、「役員報告」、「監査対応」の4個の機能を挙げている。 今回解説するKPIは、「月次業績管理業務」の「月次決算実施」、「単体決算業務」の「決算手続」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:月次業績管理業務で会社が担う機能〉 〈経済産業省スタンダード:単体決算業務で会社が担う機能〉  (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、月次決算の「月次決算実施」において決算整理手続という業務プロセス、年度決算の「決算手続」において決算数値確定という業務プロセスを次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:8.1.2決算整理手続〉 〈経済産業省スタンダード:9.2.10決算数値確定〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   月次決算の決算整理手続と年度決算の決算数値確定を比較すると、フローチャートが示す作業内容が異なるように見えるが、いずれも業務の流れは同じである。すなわち、日常的に発生する取引の仕訳を行い、一定期間における諸勘定を集計し、さらに決算特有の決算整理の仕訳を行い、残高試算表を作成し、貸借対照表と損益計算書を作成するという具合に業務は流れて行く。 決算においてのみ処理する決算整理項目は、会社によって異なるが、仮勘定の処理、経過勘定と未経過勘定の処理、期末確定費用の期間配分、棚卸高の確定、各種資産負債の評価、勘定科目の誤りを正す勘定振替、税金の仕訳等である。 今回のKPIは、月次決算を年度決算の期中対応として位置づけ、月次決算の決算整理項目が年度決算のそれを網羅している割合を比率で問うものである。   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「期末決算処理項目」とは、決算整理項目とも呼ばれ、一般的には次のような項目をさす。 もっとも、会社が行う事業や会社が置かれた財政状態によって、処理すべき期末決算処理項目が異なる。また、処理すべき期末決算処理項目が同じでも、それを細かく分類して決算事務を管理する会社もあれば、大まかな分類で済ませている会社もあり、会社によって項目分類の粒度が異なることがある。上記の例は、大まかな分類であり、実務においては、より細かく項目を洗い出して分類しておく必要がある。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルでこのKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、年度における個別決算数値の精度を高めるため、期末決算処理項目を期中の月次決算で対応することが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 では、期末決算処理項目を期中の月次決算で対応することに、どのような意味があるのか。それは、月次決算と年度決算の関係をどのように捉えるかによるだろう。 たしかに、年度決算のような法の要請と異なり、月次決算は会社の経営管理の一環で行うものである。そのような主要目的の差異を重視すると、年度決算は正確性が重んじられるが、月次決算は迅速性が重視され、経営管理という目的に適う限りにおいて合目的的に正確性を犠牲にすることが許容される。年度決算で処理する決算整理項目のうち月次決算では処理されない項目は、迅速性を正確性に優先させた部分の反映である。 しかし、両者の業務の流れが同じであるという実態を見れば、本来的には月次決算と年度決算との間に差異は見出しにくいのではないか。さらに、日常的な仕訳と決算処理項目の両面において、月次決算の積上げの先に年度決算の姿が見えてくるという月次決算と年度決算の関係に即して言えば、本質的には、決算処理項目に差異を設けるべきではないと思われる。 実務においても、月次決算において網羅的な処理をしておけば、年度決算までに処理すべき事項が整理されるし、経理財務部門が月次決算によって年度決算に必要な知識や経験を積み上げることができるため、結果として、年度決算における誤りが少なくなり、精度が高まるという効果がある。 そこで、スコアリングモデルでは、月次決算を年度決算の期中対応として一体的に把握するという旗幟(きし)を鮮明にし、迅速性が求められる月次決算において年度決算と同じ程度の正確性を追求している程度を比較するため、月次決算の決算処理項目が年度決算のそれを網羅している割合をKPIとした。割合は%で表されるが、この数値が大きい会社が小さい会社よりも相対的に望ましいと考えている。 では、どの程度の割合が望ましいのか。月次決算においてすべての期末決算処理項目を処理することは、月次決算の迅速性を阻害するだけでなく、年度決算の正確性を高める効果が乏しい項目もあろう。この問題に対しては、各会社が提供したKPIデータ群によって形成されるベンチマークが答を示すわけだが、その割合こそ、月次決算の迅速性と正確性の現実的な権衡点となろう。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、月次の個別決算業務が組み込まれていることを確認していただきたい。 それを前提に、例えば、決算年度の個別決算業務における期末決算処理項目と月次決算処理項目を比較し、後者が前者に占める割合を確認いただきたい。 さて、読者の顧問先において、個別決算業務の月次決算で期末決算処理項目を処理する割合は何%になったであろうか。   連載のさいごに この連載は、主に事業会社を顧問先に持つ税理士や公認会計士の読者に向けて、スコアリングモデルの解説を試みたものである。「顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル」などと、ずいぶん尖がった題名にしたが、これは編集者との打ち合わせの成り行きの結果である。 誤解を恐れず言えば、筆者は、外からはめた制度や基準という人為的な枠組みで会社の人々の仕事を管理し評価し尽くせると考える楽観的な設計主義には懐疑的な立場であり、スコアリングモデルにそのような倨傲さを持たせる意図はないと謝罪しなければならない。 たしかに、経理財務などという業務は、それが分からない経営者や他部門の人々にとっては、琴柱に膠す如き小役人が鋳型にはめたように事務を執る単純作業と見られがちである。しかし、そのような見方は、針の穴から天空を覗くようなもので、経理財務業務や経理財務部門が果たすべき役割を見失ってしまうという問題意識があり、それらを5つの視点で捉えるべきという点にスコアリングモデルの主意がある。 筆者としては、毎回限られた紙面で委曲を尽くしたつもりであるものの、最終回を書き終えて改めて振り返れば、読者に主意をしっかり伝えることができたであろうか、各説明に牽強付会の憾を免れていないのではないかと、心怏々として楽しまず、正直寝覚めが悪い。 グローバル化の煽りを受けて経理財務業務を取り巻く制度も変更が頻繁に続いたためであろうか、会計、税務、経営、IT等の諸分野から経理財務のあるべき姿を説く専門家は百鬼夜行し、助言を受ける会社の経営者や経理財務部門から見れば、各家の説くところは多岐亡羊であろう。そんな中では、スコアリングモデルも九牛の一毛に過ぎない。 今さら、そんな繰言が何になろう。この連載を通じて、経理財務業務のあるべき姿を一望千里できる展望鏡の覗き窓のように、スコアリングモデルが些かでも受け入れられることを静かに望みたい。 (連載了)

#No. 57(掲載号)
#島 紀彦
2014/02/20

女性会計士の奮闘記 【第14話】「ケイカソチのアドバイスは慎重に、慎重に。」

女性会計士の奮闘記 【第14話】 「ケイカソチのアドバイスは慎重に、慎重に。」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   ◆ワンポントアドバイス◆ 平成26年4月1日から施行される消費税増税の制度は、経過措置等もあり慎重に適用する必要があります。お客様の業種や取引ついて詳しく調べた上で、アドバイスをしましょう。 また、お客様の取引が経過措置に当てはまらない場合、その措置を細かくしてしまうと、かえって誤解を生んでしまうことがあります。 実務に必要かどうかを見極め、必要ならば重点的に、逆に必要でないならば、さらっと説明するに留めましょう。 (了)

#No. 57(掲載号)
#小長谷 敦子
2014/02/20

《速報解説》 税率8%及び経過措置に対応した消費税確定申告書・付表の公表と作成時の留意点

 《速報解説》 税率8%及び経過措置に対応した 消費税確定申告書・付表の公表と 作成時の留意点   アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩   2月5日付け、国税庁ホームページにおいて、平成26年4月1日以後終了する課税期間分における消費税及び地方消費税の申告書及び添付資料の様式が公表された。 今回の様式等については、平成26年4月1日からの税率改正に伴う変更も含まれており、具体的には以下の様式等である。 仕入税額控除の計算方法が原則課税の場合における平成26年4月1日以後の課税期間については、経過措置の適用を受けて旧税率が課税される取引が生じることが考えられ、旧税率である5%と新税率である8%が混在することとなり、従来の添付資料である付表2の作成に代えて、複数税率の計算をするための付表1及び付表2-(2)を作成し、確定申告書に添付することとなる。 なお、その課税期間において、新税率の8%が課税された取引のみである場合には、従来と同様に付表2を用いて計算し、添付することとなるので留意されたい。 上記と同様に、仕入税額控除の計算方法が簡易課税の場合における平成26年4月1日以後の課税期間について、経過措置の適用により旧税率が課税される取引があることで複数税率となるときは、付表5に代えて付表4及び付表5-(2)を作成し、経過措置の適用がなく新税率のみとなるときは、従来と同様に付表5を作成して確定申告書に添付することとなる。 その課税期間の取引が5%又は8%のみといった単一の税率となる場合には、確定申告書を作成することで、消費税の税額計算が容易に行うことが可能であったが、複数税率となった場合には、確定申告書のみでは税額計算を行うことができず、まず付表1又は付表4により、それぞれの税率における税額計算をした上で、その集計した金額を確定申告書に反映させることとなる。 また、原則課税の場合において、従来作成していた付表2の課税売上割合・控除対象仕入税額の計算表は、複数税率に対応していないことから、施行日以後の課税期間で複数税率となる場合には、複数税率に対応した付表2-(2)を作成することとなる。 同様に、簡易課税の場合に作成する付表5の控除対象仕入税額の計算表は、複数税率に対応していないことから、複数税率に対応した付表5-(2)を用いて計算する。 したがって、今後複数税率が適用されている場合の消費税の確定申告書及び付表の作成については、以下の手順で作業を行うこととなる。 【確定申告書作成の流れ】 確定申告書及び付表を会計システム等により作成する場合において、これらの帳票が仕訳処理と連動していれば特に問題は生じないが、各帳票が会計システムと連動していない場合には、その帳票を作成するにはどのような数値が必要となるのか、付表の記載項目を詳細に確認しておかなければならない。 例えば、付表2-(2)を作成する場合(一部抜粋)には、以下のような数値が必要となる。 なお、消費税の税額計算は、原則として、消費税込の金額で計算することから、新税率が適用される課税売上げや課税仕入れの税込金額と旧税率が適用される課税売上げや課税仕入れの税込金額を区分して、その金額を基に計算されることとなるので注意が必要である。 上記のように、消費税の確定申告書及び付表の作成については、従来の消費税の税額計算と比べて複雑となることから、消費税の計算構造を正確に理解することが重要となる。 (了)

#No. 56(掲載号)
#島添 浩
2014/02/19

「確定申告(平成25年分)」関連記事のご紹介

「確定申告(平成25年分)」関連記事のご紹介 平成25年分の確定申告について、参考となる記事をまとめました。

#Profession Journal 編集部
2014/02/17
#