〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第29回】「「中小PMIガイドライン」を積極活用しよう」~その4:案件規模別に活用しよう~
【第28回】まで3回にわたり、「中小PMIガイドライン」にもとづいて、主に中小M&Aの当事企業である買い手・売り手企業がM&A全般、PMI(※)の段階で遭遇する失敗事例を取り上げ、M&Aの成功に欠かせない対応策のポイントを紹介しました。
(※) Post Merger Integrationの略語で、狭義には、「M&A成立後の一定期間内に行う経営統合作業」を指しますが、本ガイドラインでは、M&A成立前後の「継続的な取組を含めたプロセス全般(PMIプロセス)」を中小PMIと定義しています(中小企業庁「中小PMIガイドライン」7ページ)。
失敗事例に基づくPMIの取組ポイントの紹介は、本ガイドラインの柱となっており、買い手・売り手が知りたいPMIにおける対応策はこれだけで十分に盛り込まれていますが、本ガイドラインには、これ以外にも実際のPMI実務において活用できる内容が豊富に用意されています。そこで、今回は、本ガイドラインの構成を踏まえて、案件の規模に着目して本ガイドライン活用のポイントを紹介します。
《速報解説》 国税庁が「グループ通算制度に関するQ&A」の改訂を公表~令和4年度税制改正を踏まえ、既存11問の改訂とともに5問を新設~
令和4年7月29日、国税庁は「グループ通算制度に関するQ&A」の改訂を公表した。
この「グループ通算制度に関するQ&A」は、通算制度に係る税務上の取扱いを図表や計算例を用いQ&A形式で解説したもの。
令和4年7月の改訂では、令和4年度の税制改正等を踏まえ、既存のQ&A(11問)の改訂が行われるとともに、実務家が気になる新たなQ&A(5問)の追加が行われている(全79問 ⇒ 全84問)。
以下では新設されたQ&Aのポイントを紹介する。
《速報解説》 会計士協会、「「我が国におけるサステナビリティ及びその他EERに対する保証業務に関するガイダンス(試案)」に係る研究文書」を公表~EERに対する保証業務実施の際に理解が必要となる事項を実務解説~
2022年7月21日付けで(ホームページ掲載日は2022年8月1日)、日本公認会計士協会は、保証業務実務指針3000研究文書「「我が国におけるサステナビリティ及びその他の拡張された外部報告(EER)に対する保証業務に関するガイダンス(試案)」に係る研究文書」を公表した。
《速報解説》 監査役協会が「監査役監査基準」等を改定~9月施行の「株主総会資料の電子提供制度」に対応し条文を追加~
2022年8月1日、日本監査役協会 監査法規委員会は、「「監査役監査基準」等における電子提供制度に係る条文の追加について」を公表し、「監査役監査基準」等を改定した。
これからの国際税務 【第32回】「2つの柱の合意実施についてのスケジュール遅延」
コロナ・パンデミック後の経済復興課題に加えて、ロシアのウクライナ侵攻が及ぼす経済課題も議題としてインドネシア・バリで開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議(7月15~16日)においては、2つの柱から成る新しい国際課税の合意についての実施計画も議論された。同会議の議長を務めたインドネシア財務大臣・中央銀行総裁による議長総括(注1)では、第2の柱の実施計画は予定通り(2022年中の法改正、2023年からの施行)とするが、第2の柱と同時実施とされていた第1の柱の実施計画については、1年遅らせることが確認された。昨年10月の予定と比較した繰延べの具体的状況は、議長総括で確認されるところによれば、以下のとおりである。
(注1) G20 Joint Press Release(No.24/191/DKom, No.SP-107/KLI/2022)
谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第16回】「課税要件事実の認定に関する実質主義」-未経過固定資産税等相当額清算金の性質決定に関する裁判例の検討-
前回扱った財産評価も、税法における事実認定であることは前回Ⅳ(おわりに)でも述べたが、税法における事実認定には、ほかに、事実状態・事実行為の確認、法律行為・契約の解釈、公正妥当な会計処理(法税22条4項)の結果の確認も含まれる。これらにおいて認定されるべき課税要件事実とは、課税要件に包摂されるべき事実をいい、それは、課税要件を組成する法律要件要素(課税要件要素 [Steuertatbestandsmerkmal])に高められ抽象化された類型的事実(法律事実)ではなく、法律事実に該当する個々の具体的事実(税法の適用・税法的評価を受ける前のいわゆる「ナマの事実」)を意味する事実的概念である(以上については拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【56】参照)。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例112(贈与税)】 「新築マンションの購入につき、贈与年の翌年3月15日までに引渡しを受けていないとして住宅取得資金贈与の非課税特例の適用が受けられなくなってしまった事例」
令和X年分の贈与税につき、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(以下「住宅取得資金贈与の非課税特例」という)の適用をして申告したが、所轄税務署より、「購入した新築マンションについて贈与年の翌年3月15日までに引渡しを受けておらず、要件を満たしていない」との指摘を受け、暦年課税で修正申告することになってしまった。これにより、修正申告となった贈与税額につき損害が発生し、賠償請求を受けたものである。
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第46回】「被相続人以外の者が建物を所有している場合の特定同族会社事業用宅地等の特例の適否」
被相続人である甲の相続発生に伴い、甲の所有していた土地建物を長男乙が取得した場合には、乙が適用できる特定同族会社事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用面積は何㎡でしょうか。
乙は甲と生計を一にしていた者に該当し、A社(相続開始の直前において100%の株式を乙が保有しています)の代表取締役として飲食店を経営しています。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第19回】「固定資産税の課税標準である土地の価格は収益還元法に基づくか否かで争われた事例」
固定資産税の課税標準となるものは、土地の場合は、賦課期日における価格で土地課税台帳もしくは土地補充課税台帳に登録されたものとするとされている(地法349①)。
固定資産の価格は、固定資産評価基準によって決定しなければならないとされている(地法403①)。つまり、「固定資産評価基準は、一種の委任立法であり、補充立法である」(※1)。
(※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年)794頁。