谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第15回】「「租税法上の一般原則としての平等原則」と事実認定による否認論」-財産評価基本通達総則6項事件・最判令和4年4月19日裁判所ウェブサイト-
前回は、税法における要件事実論的解釈の意義と限界について、消費税帳簿等不提示事件に関する最判平成16年12月20日判時1889号42頁を素材にして検討したが、そのⅣ(おわりに)では、同最判に関する調査官解説の説く「対偶」論(髙世三郎「判解」最判解民事篇平成16年度(下)792頁、805頁参照)にみられる「論理則のワナ」を指摘し、関連して同様の指摘を私法上の法律構成による否認論にみられる「経験則のワナ」についても行った。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例42】「同一事業グループからの借入金に係る同族会社等の行為計算否認規定の適用」
私は、関東南部の政令指定都市に本店を置きホテル業を営む株式会社Aにおいて経理部長を務めております。当社は元々、首都圏において富裕層向けの高級旅館を経営していましたが、地方に存する温泉旅館を経営する法人(C及びD)から事業承継の打診があり、持株機能を有する事業会社B(持分割合100%)を別途設立し、その傘下に当該温泉旅館を経営する法人を置く資本構成としました。BのC及びDに対する持分割合はいずれも50%超です。その後、安倍政権のインバウンド拡大政策の流れに乗り、傘下の法人を外国人旅行者向けの宿泊施設に順次切り替えることで、2年ほど前までは順調に業績を伸ばしてきました。しかし、ご承知の通り新型コロナウイルス感染症が猛威を振るって外国人宿泊者の需要が事実上ゼロにまで落ち込んだため、2期連続で赤字決算となっております。
この苦境を脱し、傘下の法人C及びDの金利負担の軽減を図り、経営再建を軌道に乗せるため、C・Dが従前から借り入れている資金を金融機関に全額返済し、代わりに持株会社Bからの低利の借り入れに切り替えることとしました。これにより、C及びDの赤字は相当額減少し、Bも余剰資金を効率的に運用することが可能となりました。なお、Bは従前から持つホテル事業が赤字であるため、当該受取利息は課税されません。
ところが、先日来Aグループに対して行っている国税局の税務調査で、調査官から、本件借入れに係るC・Dから持株会社Bへの支払利息は、Bが赤字であり当該利息が課税されないことを利用するための租税回避行為であるから、同族会社等の行為計算否認規定により、C及びDにおいては損金に算入できない旨を指摘され、困惑しております。上記の通り、本件借入れに係る支払利息の損金算入は、経営再建に伴う資金調達の合理化の一環で行ったものであり、経済合理性は十分あるといえることから、同族会社等の行為計算否認規定の適用の余地は全くないものと理解しています。当社のこの考え方は税法に照らして適正といえるのかどうか、ご教示ください。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第20回】「実特法の手続要件は租税条約による優遇措置の適用要件となるか」
実特法が規定する手続要件が満たされないと、租税条約の優遇措置は適用されないのでしょうか。
遺贈寄付の課税関係と実務上のポイント 【第12回】「遺贈寄付における受遺団体の注意点」
遺贈寄付を受けた受遺団体は、領収書を寄付者に発行することになるが、その場合に悩むポイントがある。そのポイントにつき遺言による寄付、相続財産の寄付に分けて見ていくことにする。
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第43回】「アパート等の空室がある場合の貸付事業用宅地等の特例の適否」
被相続人である甲は令和4年5月1日に相続が発生し、その所有するAマンション(Aマンションの敷地は300㎡で各階の床面積は同一です)を配偶者である乙が相続し、引き続き、貸付事業の用に供しています。
Aマンションは、昭和50年に被相続人が購入し、第三者に賃貸しています。相続開始時点において、15室のうち3室(101号室、201号室、301号室)は空室となっていますが、その空室の状況は、下記の通りとなります。
〈会計基準等を読むための〉コトバの探求 【第6回】「“役員報酬”に関する会計基準から勘定科目を考える」-混同しがちな「報酬等」の定義-
会社法361条では、取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益を「報酬等」とし、定款に一定の事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定めると規定している(会社法361条)。
今回は、役員報酬に関する会計基準を取り上げ、勘定科目について考えるとともに、混同しがちな「報酬等」に関する用語も丁寧に確認していく。
〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第28回】「「中小PMIガイドライン」を積極活用しよう」~その3:失敗事例から学ぶ③~
前回、前々回と、2022年3月17日に中小企業庁が取りまとめ公表した「中小PMIガイドライン」の中から、PMIに起因する失敗事例のうち、「経営統合」「業務統合」の領域に関する失敗事例を中心に取り上げ、対応上のポイントを紹介しました。今回も、前回までに続いて本ガイドラインに掲載されている失敗事例を見ていきます。
今回は、前回に一部を紹介した「信頼関係構築」の領域に関する失敗事例の続きを解説します。
《速報解説》 会計士協会、公認会計士のサステナビリティ教育に向けた検討事項をまとめ、報告書として公表~今後、シラバスの開発やプラットフォームの整備等も進める方針~
2022年6月30日、日本公認会計士協会は、サステナビリティ教育検討プロジェクトチーム報告書「公認会計士のサステナビリティに関する知見及び能力の育成に向けた検討」を公表した。
《速報解説》 「公認会計士の社会的認識の分析を通じた監査の現場力強化に向けた提言」をJICPAが公表~企業・公認会計士双方の認識の差異を明らかにし、業務及びコミュニケーションの改善へ~
2022年6月30日、日本公認会計士協会のホームページにおいて、学校法人先端教育機構 社会構想大学院大学による研究報告書「公認会計士の社会的認識の分析を通じた監査の現場力強化に向けた提言」が公表されている。