理由付記の不備をめぐる事例研究 【第17回】「青色申告承認取消処分の理由付記制度の概要等」
本連載の【第1回】で述べたとおり、これまでの議論や事例の蓄積状況及び法人の9割以上が青色申告を行っている現状などを踏まえ、第1回~前回まで、法人税の青色申告書に係る更正の理由付記(法人税法130条2項)の十分性が問題となった裁判例・裁決例を中心に検討を行ってきた。
もっとも、理由付記については、青色申告書に係る更正のみならず、青色申告の承認取消しに係るものについても議論や事例が蓄積している。この青色申告の承認取消しは、その取消事由の存在する事業年度にまで遡って行われるものである上、その取消しによって青色申告者のみに認められている繰越欠損金(法人税法57条)や特別税額控除・特別償却(租税特別措置法42条の4、42条の6など)の利用が認められないことになるなど、納税者に対する影響は決して小さいものではない。そこで、今回から第19回までは、青色申告承認の取消処分の通知書(法人税法127条4項)に係る理由付記の事例研究を行う。
裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第13回】「譲渡制限株式の譲渡③」
前回及び前々回は、譲渡制限株式の譲渡が経営権の移動に準じて取リ扱うことができる場合として、東京高裁平成20年4月4日決定、福岡高裁平成21年5月15日決定について解説を行った。
本稿では、大阪高裁平成元年3月28日決定、広島地裁平成21年4月22日決定について解説を行う。
税務判例を読むための税法の学び方【88】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その16:「「退職所得」の意義③」(最判昭58.9.9))
前回の地裁の判断に引き続き、今回は控訴審(東京高裁昭和53年3月28日)の判断についてみていく。
これは裁判所ホームページにて判決が公開されているため、これを入手し、読んでいただきたい。そこには当事者の主張として付加された点も掲載されており、ここでは割愛するため、ぜひ見てもらいたい。
monthly TAX views -No.43-「AI(人口知能)とBI(ベーシックインカム)」
AIの発達は、新たなビジネスチャンスを生み出すが、一方でわが国の経済・産業・就業構造に計り知れない影響を与える。
経済産業省の新産業構造部会の中間報告には、職業別の従業者数の変化が記されており、高度サービス業の充実による雇用者の増加の一方で、製造・調達で300万人弱、バックオフィスで143万人などの雇用の減少が予測されている。
筆者の興味は、このような変化が、どのような所得格差をもたらすかということである。
贈与税の配偶者控除に係る添附書類の見直しについて~贈与契約書の作成及び名義変更登記を行わない場合の留意事項~
平成28年度の税制改正において、贈与税の配偶者控除の適用を受ける場合の添附書類の1つである贈与を受けた者が取得した「居住用不動産に関する登記事項証明書」について、「その他の書類で当該贈与を受けた者が当該居住用不動産を取得したことを証するもの」が新たに追加された。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q6】「円建利付債券の償還時に生じた償還差損の取扱い」
私(居住者たる個人)は日本法人発行の円建債券を保有していますが、日本法人の財務状況が悪化したことにより、債券が額面を下回る金額で償還されることとなりました。
この償還損はどのように取り扱われますか。
この社債は利付債であり、税務上の特定公社債に該当します。
〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第33回】「運送に関する契約書」
【問】当社は運送業者です。下記の文書は顧客との間で、運転手付きの車両を提供し、従業員の送迎業務を行うことを約する契約書ですが、印紙税の取扱いはどうなりますか。
連結納税適用法人のための平成28年度税制改正 【第7回】「組織再編関連税制の見直し」
外国法人に対する現物出資のうちその移転する国内資産のすべてを恒久的施設に直接帰属させるものについて、 適格現物出資の対象に加える(法法2十二の十四、法令4の3⑨)。
ただし、国内不動産その他の恒久的施設から国外本店等への内部取引が帳簿価額で行われたものとなる国内資産が含まれる場合には、現物出資後これらの国内資産について内部取引を行わないことが見込まれている場合に限る(法法2十二の十四、法令4の3⑨)。
租税争訟レポート 【第29回】「不動産所得、返還しなかった敷金に対する課税(国税不服審判所裁決)」
本件は、不動産貸付業を営む審査請求人が、所得税の修正申告をしたところ、原処分庁が過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してしたものではないなどとして、過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求めるとともに、請求人による修正申告について、原処分庁が、請求人が返還しなかった敷金は不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであり、一方、請求人が支払った設備の修繕費、修繕積立金及び委託料は必要経費に算入されないとして、また、減価償却費の計算に誤りがあるなどとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が、これらの処分等の一部の取消しを求めた事案である。