公開日: 2016/08/04 (掲載号:No.180)
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租税争訟レポート 【第29回】「不動産所得、返還しなかった敷金に対する課税(国税不服審判所裁決)」

筆者: 米澤 勝

租税争訟レポート

【第29回】

「不動産所得、返還しなかった敷金に対する課税(国税不服審判所裁決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

国税不服審判所平成27年11月4日裁決(名裁(所)平27-10)
(一部取消し)

(※) 国税不服審判所ホームページ

[審査請求人]

不動産貸付業を営む個人

[争 点]

(1) 所得税法に関する争点

イ 敷金は、請求人の平成24年分の不動産所得に係る総収入金額に算入すべきか否か

ロ 修繕費、修繕積立金、リフォーム代金等は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるか否か

ハ コンサルティング委託料及び会計税務委託料は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるか否か

ニ 減価償却費の計算における建物等の取得価額の算定方法の適否

ホ 減価償却費の計算における建物と建物附属設備の区分及び各取得価額の算定方法の適否

(2) 国税通則法に関する争点

イ 賦課決定通知書の理由附記に不備があるか否か

ロ 修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでない」といえるか否か

ハ 当初申告が過少申告であったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるか否か

ニ 更正通知書の理由附記に不備があるか否か

[裁決]

国税不服審判所は、争点(1)イについて審査請求人の主張の一部を認め(一部取消し)たものの、それ以外の争点については原処分庁の主張を認めた。

 

【事案の概要】

本件は、不動産貸付業を営む審査請求人が、所得税の修正申告をしたところ、原処分庁が過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してしたものではないなどとして、過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求めるとともに、請求人による修正申告について、原処分庁が、請求人が返還しなかった敷金は不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであり、一方、請求人が支払った設備の修繕費、修繕積立金及び委託料は必要経費に算入されないとして、また、減価償却費の計算に誤りがあるなどとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が、これらの処分等の一部の取消しを求めた事案である。

 

【審査請求人による不動産貸付のスキーム】

審査請求人は、その妻が代表取締役であるR社との間に各種の業務委託契約を締結していた(下図参照)。

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租税争訟レポート

【第29回】

「不動産所得、返還しなかった敷金に対する課税(国税不服審判所裁決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

国税不服審判所平成27年11月4日裁決(名裁(所)平27-10)
(一部取消し)

(※) 国税不服審判所ホームページ

[審査請求人]

不動産貸付業を営む個人

[争 点]

(1) 所得税法に関する争点

イ 敷金は、請求人の平成24年分の不動産所得に係る総収入金額に算入すべきか否か

ロ 修繕費、修繕積立金、リフォーム代金等は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるか否か

ハ コンサルティング委託料及び会計税務委託料は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるか否か

ニ 減価償却費の計算における建物等の取得価額の算定方法の適否

ホ 減価償却費の計算における建物と建物附属設備の区分及び各取得価額の算定方法の適否

(2) 国税通則法に関する争点

イ 賦課決定通知書の理由附記に不備があるか否か

ロ 修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでない」といえるか否か

ハ 当初申告が過少申告であったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるか否か

ニ 更正通知書の理由附記に不備があるか否か

[裁決]

国税不服審判所は、争点(1)イについて審査請求人の主張の一部を認め(一部取消し)たものの、それ以外の争点については原処分庁の主張を認めた。

 

【事案の概要】

本件は、不動産貸付業を営む審査請求人が、所得税の修正申告をしたところ、原処分庁が過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してしたものではないなどとして、過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求めるとともに、請求人による修正申告について、原処分庁が、請求人が返還しなかった敷金は不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであり、一方、請求人が支払った設備の修繕費、修繕積立金及び委託料は必要経費に算入されないとして、また、減価償却費の計算に誤りがあるなどとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が、これらの処分等の一部の取消しを求めた事案である。

 

【審査請求人による不動産貸付のスキーム】

審査請求人は、その妻が代表取締役であるR社との間に各種の業務委託契約を締結していた(下図参照)。

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連載目次

租税争訟レポート

第1回~第30回

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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