Ⅵ 金融商品会計に関する実務指針
1 投資事業有限責任組合の会計規則
(1) 改正内容
投資事業有限責任組合の会計規則について、公正価値評価を進めるため、経済産業省より2023年12月5日に「中小企業等投資事業有限責任組合会計規則」が廃止され、「投資事業有限責任組合会計規則」(以下、「会計規則」という)が公表されている。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 会計処理 | 投資は、時価を付さなければならない。ただし、時価が取得価額を上回る場合には、取得価額によることも妨げない。 | 投資は、原則として、時価を付さなければならない。 |
| 時価の定義 | - |
金融商品にあっては、計算を行う日において、市場参加者間で秩序ある取引が行われるとした場合におけるその取引において、組合が受け取ると見込まれる対価の額又は取引の相手方に交付すると見込まれる対価の額とする。 ⇒つまり、時価=「公正価値」と定義された。 |
| 評価方法 | 組合契約に定めるところによる。 | 組合契約に定めるところによる。 |
(2) 適用時期
[原則]
2024年10月1日以後に開始する事業年度より適用する。
[容認]
施行日(2023年12月5日)以後に終了する事業年度より早期適用も可能である。
2 金融商品会計に関する実務指針
近年、ファンドに非上場株式を組み入れた金融商品が増加しており、これらの非上場株式を時価評価することによって、財務諸表の透明性が向上し、投資家に対して有用な情報が開示及び提供されることになり、その結果、国内外の機関投資家からより多くの成長資金がベンチャーキャピタルファンド等に供給されることが期待されるとして、ASBJより2025年3月11日に移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下、「金融商品実務指針」という)の改正が公表された。
(1) 対象となる組合等
以下の要件を満たす組合等が改正の対象である(金融商品実務指針132-2)。
① 組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること
② 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること(※)
(※) 時価評価の方法としては、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」に基づいた時価で評価する場合のほか、IFRS第13号「公正価値測定」又は FASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)の Topic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測定している場合が含まれる(金融商品実務指針308-3)。
(2) 評価方法
組合等が保有する市場価格のない株式の評価は、以下のとおりである。改正により容認処理が追加されている。
| 原則 | 組合等の構成資産が金融資産に該当する場合には金融商品会計基準に従って評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする(金融商品実務指針132)。 市場価格のない株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とする(企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準 」19)。 減損は、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(基本的に株式の実質価額が取得原価の50%程度以上下落した場合に減損。金融商品実務指針92)に従い、会計処理を行う。 |
|---|---|
| 容認 | 上記(1)の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができる。この場合、評価差額の持分相当額は純資産の部の「その他有価証券評価差額金」に計上する(金融商品実務指針 132-2)。 減損は、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(基本的に株式の時価が取得原価の50%程度以上下落した場合に減損。金融商品実務指針91)に従い、会計処理を行う。 |
なお、上記評価方法は組合単位で決定し、容認処理を採用した場合は、出資後に取りやめることはできない(金融商品実務指針132-3、308-5)。
(3) 注記
有価証券報告書の「金融商品に関する注記」において、以下の注記が必要となる(金融商品実務指針132-5)。連結財務諸表において注記している場合は、個別財務諸表において注記不要である。なお、計算書類では必ずしも以下の注記は求められていない。
➤ 金融商品実務指針132-2の定めを適用している旨
➤ 金融商品実務指針132-2の定めを適用する組合等の選択に関する方針
➤ 金融商品実務指針132-2の定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額
(4) 適用時期
[原則]
2026年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。
[容認]
2025年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することができる。
(5) 実務上の留意点
組合等で非上場株式を時価評価した場合、その金額は貸借対照表に計上されるため、その金額の妥当性は重要である。そのため、組合等において非上場株式の評価が適切に行われているかの検討が欠かせない。もし、自社内で非上場株式の評価の検討を行うことが難しい場合は、外部の専門家などに相談することも必要となる。
(了)
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