公開日: 2026/03/19 (掲載号:No.661)
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2026年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】

筆者: 西田 友洋

Ⅵ 金融商品会計に関する実務指針

 

1 投資事業有限責任組合の会計規則

(1) 改正内容

投資事業有限責任組合の会計規則について、公正価値評価を進めるため、経済産業省より2023年12月5日に「中小企業等投資事業有限責任組合会計規則」が廃止され、「投資事業有限責任組合会計規則」(以下、「会計規則」という)が公表されている。

【参考】 経済産業省ホームページ
投資事業有限責任組合会計規則について
この改正で、ファンドが保有している投資先の株式評価について、以下のように改正されている(会計規則7)。

改正前 改正後
会計処理 投資は、時価を付さなければならない。ただし、時価が取得価額を上回る場合には、取得価額によることも妨げない。 投資は、原則として、時価を付さなければならない。
時価の定義

金融商品にあっては、計算を行う日において、市場参加者間で秩序ある取引が行われるとした場合におけるその取引において、組合が受け取ると見込まれる対価の額又は取引の相手方に交付すると見込まれる対価の額とする。

つまり、時価=「公正価値」と定義された。

評価方法 組合契約に定めるところによる。 組合契約に定めるところによる。

(2) 適用時期

[原則]

2024年10月1日以後に開始する事業年度より適用する。

[容認]

施行日(2023年12月5日)以後に終了する事業年度より早期適用も可能である。

 

2 金融商品会計に関する実務指針

近年、ファンドに非上場株式を組み入れた金融商品が増加しており、これらの非上場株式を時価評価することによって、財務諸表の透明性が向上し、投資家に対して有用な情報が開示及び提供されることになり、その結果、国内外の機関投資家からより多くの成長資金がベンチャーキャピタルファンド等に供給されることが期待されるとして、ASBJより2025年3月11日に移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下、「金融商品実務指針」という)の改正が公表された。

(1) 対象となる組合等

以下の要件を満たす組合等が改正の対象である(金融商品実務指針132-2)。

 組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること

 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること(※)

(※) 時価評価の方法としては、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」に基づいた時価で評価する場合のほか、IFRS第13号「公正価値測定」又は FASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)の Topic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測定している場合が含まれる(金融商品実務指針308-3)。

(2) 評価方法

組合等が保有する市場価格のない株式の評価は、以下のとおりである。改正により容認処理が追加されている。

原則 組合等の構成資産が金融資産に該当する場合には金融商品会計基準に従って評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする(金融商品実務指針132)。
市場価格のない株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とする(企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準 」19)。
減損は、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(基本的に株式の実質価額が取得原価の50%程度以上下落した場合に減損。金融商品実務指針92)に従い、会計処理を行う。
容認 上記(1)の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができる。この場合、評価差額の持分相当額は純資産の部の「その他有価証券評価差額金」に計上する(金融商品実務指針 132-2)。
減損は、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(基本的に株式の時価が取得原価の50%程度以上下落した場合に減損。金融商品実務指針91)に従い、会計処理を行う。

なお、上記評価方法は組合単位で決定し、容認処理を採用した場合は、出資後に取りやめることはできない(金融商品実務指針132-3、308-5)。

(3) 注記

有価証券報告書の「金融商品に関する注記」において、以下の注記が必要となる(金融商品実務指針132-5)。連結財務諸表において注記している場合は、個別財務諸表において注記不要である。なお、計算書類では必ずしも以下の注記は求められていない。

 金融商品実務指針132-2の定めを適用している旨

 金融商品実務指針132-2の定めを適用する組合等の選択に関する方針

 金融商品実務指針132-2の定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額

(4) 適用時期

[原則]

2026年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。

[容認]

2025年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することができる。

(5) 実務上の留意点

組合等で非上場株式を時価評価した場合、その金額は貸借対照表に計上されるため、その金額の妥当性は重要である。そのため、組合等において非上場株式の評価が適切に行われているかの検討が欠かせない。もし、自社内で非上場株式の評価の検討を行うことが難しい場合は、外部の専門家などに相談することも必要となる。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

2026年3月期決算における会計処理の留意事項

【第2回】

 

史彩監査法人 パートナー
公認会計士 西田 友洋

 

連載の目次はこちら

Ⅴ 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正

2026年2月20日に金融庁より「「企業内容等の開示に関する内閣府令(以下、「開示府令」という)及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について」が公表された。

主な改正内容及び適用時期について以下解説を行う。

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連載目次

3月期決算における会計処理の留意事項

「2026年3月期決算における会計処理の留意事項」(全3回)

Ⅰ 法定実効税率

Ⅱ 外形標準課税の改正

Ⅲ 令和8年度税制改正大綱

Ⅳ 未適用の会計基準等の注記

Ⅴ 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正

Ⅵ 金融商品会計に関する実務指針

  • 【第3回】 3/26公開予定

Ⅶ 有価証券報告書の株主総会前開示

Ⅷ 有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

Ⅸ 後発事象に関する会計基準

「2025年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

Ⅰ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正

Ⅱ 未適用の会計基準等の注記

Ⅲ 法定実効税率

Ⅳ 税制改正

Ⅴ 令和7年度税制改正大綱

Ⅵ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準

Ⅶ 「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等

Ⅷ 2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正

Ⅸ 分配可能額

Ⅹ 改正リース基準の準備

XI 有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

◎ 米国の相互関税による会計処理等への影響

「2024年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

Ⅰ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準

Ⅱ 資金決済法における特定の電子決済の手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い

Ⅲ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い

Ⅳ グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)

Ⅴ グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)

Ⅵ 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)

Ⅶ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正

Ⅷ インボイス制度

Ⅸ 分配可能額

Ⅹ サステナビリティ開示

XI 税制改正

XII 四半期報告制度の改正

XIII 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

◎ 金融庁の令和5年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2023年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】 ★無料公開中★
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)
  • 【第2回】
    Ⅲ 時価の算定に関する会計基準の適用指針
    Ⅳ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第3回】
    Ⅴ 会社法施行規則等の改正
    Ⅵ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第4回】
    Ⅶ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い
    Ⅷ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準
    Ⅸ 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2022年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】 ★無料公開中★
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第2回】
    Ⅳ 収益認識に関する会計基準等
    Ⅴ 時価の算定に関する会計基準等
  • 【第3回】
    Ⅵ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅶ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅷ その他の記載内容に関連する監査人の責任
  • 【第4回】
    Ⅸ 会社法施行規則等の改正
    Ⅹ 金融庁の令和2年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 開示の好事例
  • 【第5回】(追補)
    ◎最近の不安定な世界情勢下における会計処理等の留意事項

「2021年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】 ★無料公開中★
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ 監査上の主要な検討事項(KAM)
  • 【第2回】
    Ⅳ 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
    Ⅴ 会計上の見積りの開示に関する会計基準
    Ⅵ 新型コロナウイルス感染症に関連する会計処理及び開示
  • 【第3回】
    Ⅶ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅷ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅸ 会社計算規則等の改正
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成31年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ その他留意事項及び参考情報
    Ⅻ 今後の会計基準の改正
  • 【第5回】(追補)
    ◎ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(案)の公表

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項
~新型コロナウイルス感染症の影響への対応~」(全2回)

  • 【前編】 ★無料公開中★
    Ⅰ 新型コロナウイルス感染症に関連する省庁や各団体からの公表物
  • 【後編】
    (【前編】公開以降の公表情報について)
    Ⅱ 新型コロナウイルス感染症における会計処理の検討事項
    Ⅲ 会計上の見積りにあたって

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】 ★無料公開中★
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」の公表
  • 【第2回】
    Ⅲ 会社法の改正
    Ⅳ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
  • 【第3回】
    Ⅵ 企業結合会計基準等の改正
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ 時価の算定に関する会計基準等の公表
    Ⅸ 収益認識基準の早期適用
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成30年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 今後の改正予定

「2019年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税制改正
    Ⅲ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第3回】
    Ⅳ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
    Ⅵ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ マイナス金利
    Ⅸ 仮想通貨の会計処理等
  • 【第4回】
    Ⅹ 企業結合会計基準等の改正
    XI 金融庁の平成29年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    XII 今後の改正予定

「平成30年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】 ★無料公開中★
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
  • 【第2回】
    Ⅲ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅳ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅴ 仮想通貨の会計処理
  • 【第3回】
    Ⅵ マイナス金利
    Ⅶ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組
    Ⅷ 金融庁の平成28年度有価証券報告書レビューの審査結果
  • 【第4回】
    Ⅸ 収益認識
    Ⅹ 税効果会計の改正
    ⅩⅠ 監査報告書の透明化

「平成29年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税効果会計の改正
    Ⅲ 減価償却方法の改正
    Ⅳ 法人税等に関する会計基準の改正
  • 【第3回】
    Ⅴ マイナス金利
    Ⅵ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅶ リスク分担型企業年金
  • 【第4回】
    Ⅷ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
    Ⅸ 短信及び有価証券報告書の改正
    Ⅹ 金融庁の平成27年度有価証券報告書レビューの審査結果

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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