Ⅳ 在外子会社等の会計処理の改正
平成29年3月29日に実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「在外子会社取扱い」という)」がASBJより公表された。
また、同日に実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「持分法取扱い」という)」が改正された。
1 連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い
(1) 対象範囲
改正前在外子会社取扱いでは、国内子会社が国際財務報告基準(IFRS)を適用することは想定されていなかった。
しかし、在外子会社取扱いが在外子会社に国際財務報告基準の利用を認めた趣旨を踏まえ、指定国際会計基準に準拠した連結財務諸表を作成して、金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社を在外子会社取扱いの対象範囲に含める(在外子会社取扱い 平成29年改正)。
同様に、ASBJが公表した「修正国際基準」を国内子会社が適用する場合に関しても、在外子会社取扱いの対象範囲に含める(在外子会社取扱い 平成29年改正)。
したがって、対象範囲のみが変更となっただけで、会計処理自体に変更はない。
なお、国内子会社を在外子会社取扱いの対象範囲に含めたことから、在外子会社取扱いの表題が、「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」から「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」に変更されている(在外子会社取扱い 平成29年改正)。
(2) 適用時期
在外子会社取扱いは、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。ただし、在外子会社取扱いの公表日以後、適用することができる(在外子会社取扱い 適用時期等(5))。
なお、在外子会社取扱いの適用初年度の前から国内子会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、適用初年度に「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」の当面の取扱い(以下、参照)を適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(在外子会社取扱い 適用時期等(5))。したがって、原則、遡及処理及び注記が必要となる(遡及基準6(1)、7、10)。
〇「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」の当面の取扱いとは・・・
在外子会社の財務諸表が、国際財務報告基準又は米国会計基準に準拠して作成されている場合、及び国内子会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合(当連結会計年度の有価証券報告書により開示する予定の場合も含む)には、当面の間、それらを連結決算手続上利用することができる。
ただし、以下の①から④の項目については、当該修正額に重要性が乏しい場合を除き、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社等の会計処理を修正しなければならない。なお、以下の①から④以外の項目についても、明らかに合理的でないと認められる場合には、連結決算手続上で修正を行う必要があることに留意する。
【①:のれんの償却】
在外子会社等において、のれんを償却していない場合には、連結決算手続上、その計上後20年以内の効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却し、当該金額を当期の費用とするよう修正する。
ただし、減損処理が行われたことにより、減損処理後の帳簿価額が規則的な償却を行った場合における金額を下回っている場合、連結決算手続上、修正は不要であるが、それ以降、減損処理後の帳簿価額に基づき規則的な償却を行い、修正する必要がある。
【②:退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理】
在外子会社等において、退職給付会計における数理計算上の差異(再測定)をその他の包括利益で認識し、その後費用処理を行わない場合には、連結決算手続上、当該金額を平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に処理する方法(発生した期に全額を処理する方法を継続して採用することも含む)により、当期の損益とするよう修正する。
【③:研究開発費の支出時費用処理】
在外子会社等において、「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費に該当する支出を資産に計上している場合には、連結決算手続上、当該金額を支出時の費用とするよう修正する。
【④:投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価】
在外子会社等において、投資不動産を時価評価している場合又は固定資産を再評価している場合には、連結決算手続上、取得原価を基礎として、正規の減価償却によって算定された減価償却費(減損処理を行う必要がある場合には、当該減損損失を含む)を計上するよう修正する。
2 持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い
(1) 対象範囲
改正前持分法取扱いでは、国内関連会社が国際財務報告基準を適用することは想定されていなかった。
しかし、持分法取扱いが在外関連会社に国際財務報告基準の利用を認めた趣旨を踏まえ、持分法取扱いでは、国内関連会社が指定国際会計基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合、当面の間、在外子会社取扱いに準じることができる(持分法取扱い 平成29年改正)。
同様に、「修正国際基準」を国内関連会社が適用する場合に関しても、当面の間、在外子会社取扱いに準じることができる(持分法取扱い 平成29年改正)。
したがって、対象範囲のみが変更となっただけで、会計処理自体に変更はない。
(2) 適用時期
持分法取扱いは、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。ただし、持分法取扱いの公表日以後、適用することができる(持分法取扱い 適用時期等(4)、在外子会社取扱い 適用時期等(5))。
なお、持分法取扱いの適用初年度の前から国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、適用初年度に「持分法適用関連会社の会計処理の統一」の当面の取扱い(以下、参照)を適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(持分法取扱い 適用時期等(5))。したがって、原則、遡及処理及び注記が必要となる(遡及基準6(1)、7、10)。
〇「持分法適用関連会社の会計処理の統一」の当面の取扱いとは・・・
投資会社及び持分法適用関連会社が採用する会計方針の統一にあたっては、原則的な取扱い(会計方針を統一する)によるほか、当面の間、監査・保証実務委員会実務指針第56号「親子会社間の会計処理の統一に関する監査上の取扱い」に定める会計処理の統一に関する取扱い(必ずしも統一を必要としない会計処理として、資産の評価方法及び固定資産の減価償却の方法が挙げられている)に準じて行うことができる。
また、在外関連会社の財務諸表が国際財務報告基準又は米国会計基準に準拠して作成されている場合、及び国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合(当連結会計年度の有価証券報告書により開示する予定の場合も含む)については、当面の間、在外子会社取扱いに準じて行うことができる。