公開日: 2018/03/08 (掲載号:No.259)
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平成30年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】

筆者: 西田 友洋

 

Ⅶ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組

 

1 「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」

内閣官房、金融庁、法務省、経済産業省は、平成29年12月28日に「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」を公表した。

また、金融庁と法務省は、平成29年12月28日に「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を公表した。

これらの中では、事業報告及び計算書類(事業報告等)と有価証券報告書の一体的開示をより行いやすくするための環境整備の一環として、以下の項目について、記載の共通化等が記載されている。

(1) 「主要な経営指標等の推移」/「直前三事業年度の財産及び損益の状況」

(2) 「事業の内容」/「主要な事業内容」

(3) 「関係会社の状況」/「重要な親会社及び子会社の状況」

(4) 「従業員の状況」/「使用人の状況」

(5) 「経営上の重要な契約等」/「事業の譲渡」等

(6) 「主要な設備の状況」/「主要な営業所及び工場」の状況

(7) 「大株主の状況」/上位十名の株主に関する事項

(8) 「ストックオプション制度の内容」/「新株予約権等に関する事項」

(9) 「役員の状況」/会社役員の「地位及び担当」並びに「重要な兼職の状況」

(10) 「社外役員等と提出会社との利害関係」/社外役員の重要な兼職に関する事項

(11) 「社外取締役の選任に代わる体制及び理由」/「社外取締役を置くことが相当でない理由」

(12) 「役員の報酬等」/「会社役員の報酬等」

(13) 「監査公認会計士等に対する報酬の内容」/「各会計監査人の報酬等の額」及び「株式会社及びその子会社が支払うべき金銭その他の財産上の利益の合計額」

(14) 財務諸表及び計算書類の表示科目

(15) 財務諸表及び計算書類の1株当たり情報に関する注記

詳細は、日本経済再生本部「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」及び「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について(参考資料)」を参考されたい。

 

2 当年度の改正

平成30年1月26日に金融庁より「「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について」が公表された。

(1) 改正内容

№ 内 容 ① 開示内容の共通化・合理化 【有価証券報告書及び事業報告における大株主の状況に係る記載の共通化(上記1(7)と関連】  有価証券報告書等の「大株主の状況」における株式所有割合の算定の基礎となる発行済株式について、議決権に着目している事業報告と同様に自己株式を控除することとし、両者の記載内容を共通化する。 ② 【新株予約権等の記載の合理化(上記1(8)と関連)】  「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」及び「ストックオプション制度の内容」の項目を「新株予約権等の状況」に統合する。この際、現行様式の表を撤廃し、企業の判断により過去発行分を一覧表形式で記載することを可能とする。  ストックオプションについては、財務諸表注記(日本基準の場合)で記載されている場合、当該記載の参照を可能とする。  「新株予約権等の状況」については、事業年度末及び有価証券報告書提出日の前月末現在の記載を求めているところ、事業年度末の情報から変更がなければ、後者については変更ない旨の記載のみでよい。 ③ 【株主総会日程の柔軟化のための開示の見直し(上記1(7)と関連】  有価証券報告書における「大株主の状況」等の記載時点を、事業年度末から、原則として議決権行使基準日へ変更する。 ⇒現状、多くの会社では議決権行使基準日=事業年度末であると考えられることから、影響はほとんどないと考えられる。 ④ 非財務情報の開示充実(「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に係る記載の統合と対話に資する内容の充実)  「業績等の概要」及び「生産、受注及び販売の状況」を「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に統合した上で、記載内容の整理を行っている。  併せて、経営成績等の状況の分析・検討の記載を充実させる観点から、以下の2点についての記載を求める。  事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について経営者の視点による認識及び分析  経営者が経営方針・経営戦略等の中長期的な目標に照らして経営成績等をどのように分析・評価しているか

(2) 適用時期

上記改正は、平成30年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から適用する。

平成30年3月期決算における会計処理の留意事項

【第3回】

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

-全体構成-

【第1回】

Ⅰ 税制改正

Ⅱ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理

【第2回】

Ⅲ 有償ストック・オプションの会計処理

Ⅳ 在外子会社等の会計処理の改正

Ⅴ 仮想通貨の会計処理

【第3回】(本稿)

Ⅵ マイナス金利

Ⅶ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組

Ⅷ 金融庁の平成28年度有価証券報告書レビューの審査結果

【第4回】 3/15公開

Ⅸ 収益認識

Ⅹ 税効果会計の改正

ⅩⅠ 監査報告書の透明化

 

Ⅵ マイナス金利

 

1 実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い

平成29年3月29日に実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い(以下、「マイナス金利取扱い」という)」が公表された。

マイナス金利取扱いは、退職給付債務、勤務費用及び利息費用(以下、合わせて「退職給付債務等」という)の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りがマイナスとなる場合の割引率に関する当面の取扱いを示すことを目的としている(マイナス金利取扱い1)。

(1) 会計処理

マイナス金利取扱いでは、退職給付債務等の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、利回りの下限としてゼロを利用する方法とマイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかの方法による(マイナス金利取扱い2)。

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連載目次

3月期決算における会計処理の留意事項

「2024年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

Ⅰ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準

Ⅱ 資金決済法における特定の電子決済の手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い

Ⅲ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い

Ⅳ グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)

Ⅴ グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)

Ⅵ 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)

Ⅶ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正

Ⅷ インボイス制度

Ⅸ 分配可能額

Ⅹ サステナビリティ開示

XI 税制改正

XII 四半期報告制度の改正

XIII 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

◎ 金融庁の令和5年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2023年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)
  • 【第2回】
    Ⅲ 時価の算定に関する会計基準の適用指針
    Ⅳ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第3回】
    Ⅴ 会社法施行規則等の改正
    Ⅵ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第4回】
    Ⅶ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い
    Ⅷ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準
    Ⅸ 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2022年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第2回】
    Ⅳ 収益認識に関する会計基準等
    Ⅴ 時価の算定に関する会計基準等
  • 【第3回】
    Ⅵ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅶ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅷ その他の記載内容に関連する監査人の責任
  • 【第4回】
    Ⅸ 会社法施行規則等の改正
    Ⅹ 金融庁の令和2年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 開示の好事例
  • 【第5回】(追補)
    ◎最近の不安定な世界情勢下における会計処理等の留意事項

「2021年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ 監査上の主要な検討事項(KAM)
  • 【第2回】
    Ⅳ 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
    Ⅴ 会計上の見積りの開示に関する会計基準
    Ⅵ 新型コロナウイルス感染症に関連する会計処理及び開示
  • 【第3回】
    Ⅶ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅷ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅸ 会社計算規則等の改正
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成31年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ その他留意事項及び参考情報
    Ⅻ 今後の会計基準の改正
  • 【第5回】(追補)
    ◎ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(案)の公表

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項
~新型コロナウイルス感染症の影響への対応~」(全2回)

  • 【前編】
    Ⅰ 新型コロナウイルス感染症に関連する省庁や各団体からの公表物
  • 【後編】
    (【前編】公開以降の公表情報について)
    Ⅱ 新型コロナウイルス感染症における会計処理の検討事項
    Ⅲ 会計上の見積りにあたって

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」の公表
  • 【第2回】
    Ⅲ 会社法の改正
    Ⅳ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
  • 【第3回】
    Ⅵ 企業結合会計基準等の改正
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ 時価の算定に関する会計基準等の公表
    Ⅸ 収益認識基準の早期適用
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成30年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 今後の改正予定

「2019年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税制改正
    Ⅲ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第3回】
    Ⅳ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
    Ⅵ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ マイナス金利
    Ⅸ 仮想通貨の会計処理等
  • 【第4回】
    Ⅹ 企業結合会計基準等の改正
    XI 金融庁の平成29年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    XII 今後の改正予定

「平成30年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
  • 【第2回】
    Ⅲ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅳ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅴ 仮想通貨の会計処理
  • 【第3回】
    Ⅵ マイナス金利
    Ⅶ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組
    Ⅷ 金融庁の平成28年度有価証券報告書レビューの審査結果
  • 【第4回】
    Ⅸ 収益認識
    Ⅹ 税効果会計の改正
    ⅩⅠ 監査報告書の透明化

「平成29年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税効果会計の改正
    Ⅲ 減価償却方法の改正
    Ⅳ 法人税等に関する会計基準の改正
  • 【第3回】
    Ⅴ マイナス金利
    Ⅵ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅶ リスク分担型企業年金
  • 【第4回】
    Ⅷ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
    Ⅸ 短信及び有価証券報告書の改正
    Ⅹ 金融庁の平成27年度有価証券報告書レビューの審査結果

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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