Ⅵ 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)
令和5年度税制改正において、完全子会社株式について一部の持分を残す株式分配のうち、当該一部の持分が当該完全子会社の株式の発行済株式総数の20%未満となる株式分配について、他の一定の要件を満たす場合には、完全子会社株式のすべてを分配する場合と同様に、課税の対象外とされる、いわゆる「パーシャルスピンオフ税制」が新たに設けられた。
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(注) 詳細については、経済産業省ホームページ「『「スピンオフ」の活用に関する手引』を改訂しました」をご参照ください。
そのため、2023年10月6日にASBJより、以下の改正案が公表された。
- 企業会計基準適用指針公開草案第80号(企業会計基準適用指針第2号の改正案)「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)」(以下、「自己株式適用指針案」という)
- 企業会計基準適用指針公開草案第81号(企業会計基準適用指針第28号の改正案)「税効果会計に係る会計基準の適用指針(案)」(以下、「税効果適用指針案」という)
また、2023年10月6日に、日本公認会計士協会より、以下の改正案が公表された。
- 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(公開草案)
なお、パーシャルスピンオフ税制による影響は限定的であると考えられることから、「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(公開草案)の解説については、本連載では省略する。
1 基準開発の範囲
パーシャルスピンオフ税制が時限的なもの(適用期限:2024年3月31日まで)であり早期に基準開発を行う必要があるため、まずは発生可能性が高い箇所に絞り、「保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社株式に該当しなくなった場合」を、基準開発の範囲としている(自己株式適用指針案28-4)。
2 個別財務諸表上の会計処理
現物配当実施会社の個別財務諸表上、保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社株式に該当しなくなった場合、配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもってその他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額する(自己株式適用指針案10)。
3 現物配当実施会社の税効果会計
現物配当実施会社の税効果会計については、現行の企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下、「税効果適用指針」という)の定めを変更していない。
また、保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社に該当しなくなった場合において、連結決算手続の結果として生じる一時差異については、連結財務諸表固有の将来減算一時差異又は連結財務諸表固有の将来加算一時差異に準ずるものとして定義に追加されている(税効果適用指針案4)。
4 適用時期
公表日以後ただちに適用する。なお、適用日の前に行われた取引(保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社株式に該当しなくなった場合)については、適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は必要ない(自己株式適用指針案23-3、税効果適用指針案65-3)。
(了)
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