公開日: 2025/03/13 (掲載号:No.610)
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2025年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】

筆者: 西田 友洋

Ⅴ 令和7年度税制改正大綱

令和7年度の税制改正大綱のうち、特に重要なものとして以下が挙げられる。なお、防衛特別法人税については、「Ⅲ 法定実効税率」を参照されたい。

改正内容

1 新リース会計基準に関する税制改正

2 グローバル・ミニマム課税

3 外国子会社合算税制の見直し

 

1 新リース会計基準に関する税制改正

(1) オペレーティング・リース

各事業年度にオペレーティング・リース取引によりその取引の目的となる資産の賃借を行った場合に、その取引に係る契約に基づきその法人が支払う金額があるときは、その金額のうち債務の確定した部分の金額は、その確定した日の属する事業年度に損金算入することとされた。つまり、従来から実質変更はない。

〈適用時期〉

2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用される。

新リース会計基準では、オペレーティング・リースも原則、資産計上される。そして、会計上、期間に応じて減価償却費及び支払利息で費用計上されるが、税務上は、支払時に損金算入される。

そのため、会計と税務で差異が生じるため、税務調整が必要であり、かつ、税効果にも影響する。

〈オペレーティング・リースの処理〉

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

(2) 所有権移転外ファイナンス・リースの減価償却

2027年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引に係る契約に係るリース資産の減価償却について、リース期間定額法の計算において取得価額に含まれている残価保証額を控除しないこととし、リース期間経過時点に1円(備忘価額)まで償却できる。

改正前

リース資産の取得価額から残価保証額を控除した上で、リース期間定額法で計算

改正後

リース資産の取得価額から残価保証額を控除せずに、リース期間定額法で計算

ただし、2027年3月31日までに締結された所有権移転外リース契約に係るリース資産(その取得価額に残価保証額が含まれているものに限る)については、2025年4月1日以後に開始する事業年度の償却方法につき改正後のリース期間定額法により償却できる。

(3) リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例の廃止

リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例は、廃止される。改正後は、リース資産の引渡し時に一括で譲渡損益を計上する。

ただし、2025年4月1日前にリース譲渡を行った法人の2027年3月31日以前に開始する事業年度において行ったリース譲渡について、延払基準の方法(同日後に開始する事業年度にあっては、リース譲渡に係る利息相当額のみを同日後に開始する各事業年度の収益の額とする方法に限る)により収益の額及び費用の額を計算することができる。また、2025年4月1日から2027年3月31日までの間に開始する事業年度において延払基準の適用をやめた場合の繰延リース利益額を5年均等で収益計上する(消費税は10年均等で資産の譲渡等の対価の額とする)ことができる。

 

2 グローバル・ミニマム課税

令和5年度税制改正において、以下のIIRは法制化されており、残りのUTPRとQDMTTについて、令和7年度税制改正大綱に記載された。

(出所:経済産業省「令和7年度(2025年度)経済産業関係 税制改正についてP.22

〈適用時期〉

2026年4月1日以後開始する対象会計年度から適用される。

 

3 外国子会社合算税制の見直し

グローバル・ミニマム課税の更なる法制化により、対象企業への追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、合算時期の見直しと申告書添付書類の簡素化が令和7年度税制改正大綱に記載された。

(出所:経済産業省「令和7年度(2025年度)経済産業関係 税制改正についてP.21

〈適用時期〉

親会社の2025年4月1日以後開始する事業年度から適用される(その外国関係会社の同年2月1日以後に終了する事業年度に係るものに限る)。

〈経過措置〉

親会社の2025年4月1日前に開始した事業年度に係る外国関係会社の課税対象金額等(その外国関係会社の2024年12月1日から2025年1月31日までの間に終了する事業年度に係るものに限る)についても、合算時期を、その外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から4ヶ月を経過する日を含むその親会社の2025年4月1日以後に開始する事業年度とすることができる。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

2025年3月期決算における会計処理の留意事項

【第2回】

 

史彩監査法人 パートナー
公認会計士 西田 友洋

 

連載の目次はこちら

Ⅲ 法定実効税率

2024年12月27日に閣議決定された令和7年度税制改正大綱に、2026年4月1日以後に開始する事業年度から防衛特別法人税の創設が明記され、2025年2月4日に防衛特別法人税の導入を盛り込んだ税制改正法案が国会に提出された。

防衛特別法人税の導入が盛り込まれた税制改正法案が2025年3月31日までに国会で成立した場合には、2025年3月期決算から、当該防衛特別法人税を考慮して法定実効税率を算定する必要がある。

また、2025年3月31日に決算日を迎える企業の税効果会計に関する取扱いを明らかにするため、2025年2月20日にASBJより「補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」(以下、「補足文書」という)」が公表された。

防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される予定のため、一時差異等の解消時期に応じて、法定実効税率を使い分ける必要がある。具体的には、2026年4月1日前に開始する事業年度中に解消する見込みの一時差異等については改正前の税率で計算した法定実効税率を使用し、2026年4月1日以後に開始する各事業年度中に解消する見込みの一時差異等については改正後の税率で計算した法定実効税率(防衛特別法人税を織り込んだ法定実効税率)を使用することになる。

 

1 防衛特別法人税

防衛特別法人税は、以下のように計算される。

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連載目次

3月期決算における会計処理の留意事項

「2025年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

Ⅰ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正

Ⅱ 未適用の会計基準等の注記

Ⅲ 法定実効税率

Ⅳ 税制改正

Ⅴ 令和7年度税制改正大綱

  • 【第3回】 3/19公開

Ⅵ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準

Ⅶ 「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等

Ⅷ 2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正

  • 【第4回】 3/27公開

Ⅸ 分配可能額

Ⅹ 改正リース基準の準備

XI 有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2024年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

Ⅰ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準

Ⅱ 資金決済法における特定の電子決済の手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い

Ⅲ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い

Ⅳ グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)

Ⅴ グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)

Ⅵ 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)

Ⅶ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正

Ⅷ インボイス制度

Ⅸ 分配可能額

Ⅹ サステナビリティ開示

XI 税制改正

XII 四半期報告制度の改正

XIII 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

◎ 金融庁の令和5年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2023年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)
  • 【第2回】
    Ⅲ 時価の算定に関する会計基準の適用指針
    Ⅳ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第3回】
    Ⅴ 会社法施行規則等の改正
    Ⅵ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第4回】
    Ⅶ 電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い
    Ⅷ 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準
    Ⅸ 金融庁の令和4年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項

「2022年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
  • 【第2回】
    Ⅳ 収益認識に関する会計基準等
    Ⅴ 時価の算定に関する会計基準等
  • 【第3回】
    Ⅵ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅶ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅷ その他の記載内容に関連する監査人の責任
  • 【第4回】
    Ⅸ 会社法施行規則等の改正
    Ⅹ 金融庁の令和2年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 開示の好事例
  • 【第5回】(追補)
    ◎最近の不安定な世界情勢下における会計処理等の留意事項

「2021年3月期決算における会計処理の留意事項」(全5回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正等
    Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い
    Ⅲ 監査上の主要な検討事項(KAM)
  • 【第2回】
    Ⅳ 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
    Ⅴ 会計上の見積りの開示に関する会計基準
    Ⅵ 新型コロナウイルス感染症に関連する会計処理及び開示
  • 【第3回】
    Ⅶ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い
    Ⅷ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
    Ⅸ 会社計算規則等の改正
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成31年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ その他留意事項及び参考情報
    Ⅻ 今後の会計基準の改正
  • 【第5回】(追補)
    ◎ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(案)の公表

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項
~新型コロナウイルス感染症の影響への対応~」(全2回)

  • 【前編】
    Ⅰ 新型コロナウイルス感染症に関連する省庁や各団体からの公表物
  • 【後編】
    (【前編】公開以降の公表情報について)
    Ⅱ 新型コロナウイルス感染症における会計処理の検討事項
    Ⅲ 会計上の見積りにあたって

「2020年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」の公表
  • 【第2回】
    Ⅲ 会社法の改正
    Ⅳ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
  • 【第3回】
    Ⅵ 企業結合会計基準等の改正
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ 時価の算定に関する会計基準等の公表
    Ⅸ 収益認識基準の早期適用
  • 【第4回】
    Ⅹ 金融庁の平成30年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    Ⅺ 今後の改正予定

「2019年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税制改正
    Ⅲ 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正
  • 【第3回】
    Ⅳ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示
    Ⅴ 監査上の主要な事項(KAM)
    Ⅵ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅷ マイナス金利
    Ⅸ 仮想通貨の会計処理等
  • 【第4回】
    Ⅹ 企業結合会計基準等の改正
    XI 金融庁の平成29年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項
    XII 今後の改正予定

「平成30年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第1回】
    Ⅰ 税制改正
    Ⅱ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
  • 【第2回】
    Ⅲ 有償ストック・オプションの会計処理
    Ⅳ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅴ 仮想通貨の会計処理
  • 【第3回】
    Ⅵ マイナス金利
    Ⅶ 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組
    Ⅷ 金融庁の平成28年度有価証券報告書レビューの審査結果
  • 【第4回】
    Ⅸ 収益認識
    Ⅹ 税効果会計の改正
    ⅩⅠ 監査報告書の透明化

「平成29年3月期決算における会計処理の留意事項」(全4回)

  • 【第2回】
    Ⅱ 税効果会計の改正
    Ⅲ 減価償却方法の改正
    Ⅳ 法人税等に関する会計基準の改正
  • 【第3回】
    Ⅴ マイナス金利
    Ⅵ 在外子会社等の会計処理の改正
    Ⅶ リスク分担型企業年金
  • 【第4回】
    Ⅷ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理
    Ⅸ 短信及び有価証券報告書の改正
    Ⅹ 金融庁の平成27年度有価証券報告書レビューの審査結果

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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