~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第10回】
「調査期間中に修正申告書を提出したが、
更正があるべきことを予知してされたものではないとして
加算税賦課決定処分が取り消された事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成24年9月25日東京地方裁判所[認容](確定)
(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。
〔概要等〕
原告の法人(X社)は、米国の100%子会社で半導体基盤の製造及び設計開発等を主な事業としている。X社は、機械及び装置の増加償却の特例の適用要件である増加償却の「届出書」(本件届出書)を提出していないにもかかわらず、増加償却の特例の適用があるものとして法人税の申告書を提出した。
X社の担当者は、税務調査の初日の朝、本件届出書の提出を失念した可能性に気づいた。その後、X社は、調査期間中に修正申告書を提出し、過少申告加算税が賦課されたため、国税通則法第65条第5項が適用されるべきであるとして、賦課決定処分の取消しを求めて争った。
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