ストーリーで学ぶ
IFRS入門
【第4話】
「概念フレームワークを学ぶ(後編)」
仰星監査法人
公認会計士 関根 智美
(以下で説明する概念フレームワークは、2010年9月に公表されたものに準じています。)
● ○ プロローグ ○ ●
6月23日木曜日、午前7時30分。桜井と藤原の早朝IFRS勉強会も、今日で3回目だ。
「入社3年目、経理部のホープ桜井弘樹は、頼りがいのある藤原先輩の下、今日も概念フレームワークの勉強に勤しんでいるのであった。」
桜井は、椅子ごと回転させて隣の藤原に向き直った。
「先輩、缶コーヒーをマイク代わりに変なナレーションをつけるの、止めてください。」
「悪い、悪い。」
「それよりもIFRS導入のプロジェクトの方は、順調なんですか?」
そもそも桜井がIFRSの勉強をすることになったのは、会社がこれからIFRSを導入するか検討を始めたためである。IFRS任意適用会社は順調に増加傾向ではあるが、桜井の勤めるような中堅の上場会社はまだ相対的に少ない。
「んー、まあ予定通り、ってところだな。」
藤原にしては歯切れの悪い返事が返ってきたので、桜井は意外に感じた。
「あれ?藤原君に桜井君じゃない。早いのね。」
そこに、同じ経理部の橋本が近くのカフェのタンブラーを片手にオフィスに入ってきた。
「おはようございます。橋本さんこそ、今日は早いですね。」
橋本は派遣社員を除くと経理部唯一の女性社員で、主に税金関係を担当している。まだ子供が小さいことから時短勤務で働いているため、早朝出社は珍しい。
「今日はダンナが有休取ったから、子供の保育園の送りを任せてきちゃったの。ほら、6月ってまだ忙しいじゃない?朝だったら邪魔されずに自分の仕事できるでしょ?」
そう言いながら、橋本はテキパキと荷物を置き、パソコンを立ち上げる。
「僕たちは、IFRSの勉強会なんですよ。藤原先輩から教わっているんです。」
「えー、藤原なんかに教えてもらって・・・大丈夫?」
「藤原なんか、って失礼ですよ。俺だって後輩指導くらいできます。」
「そっかぁ、藤原君ももうそんなになっちゃったのね~」
橋本は椅子の背もたれに寄りかかりながら、向かいの藤原を感慨深げに見上げる。桜井は、橋本が藤原よりも前に入社しているのは知っていたが、具体的に何年に入社したかは知らなかった。逆算すると年齢が分かるため、橋本の入社年は無言の箝口令が経理部内で敷かれているからだ。
「そんなに、って、どんなになってるんですか、俺は。」
「やだ、褒めてるのよ、これでも。大丈夫。ジャマはしないから、2人とも気にせず続けて。」
そう言うと、橋本はバッグからイヤホンを取り出し、仕事に没頭し始めた。
「じゃあ、俺たちも始めるか。」
毒気を抜かれた藤原は「コホン」と咳払いをして桜井に話しかけた。桜井も素直に頷く。
● ○ 概念フレームワークの範囲 ○ ●
(前回の続き)
財務諸表を構成する要素の定義、認識及び測定
【概念フレームワークの範囲】
▷ 財務報告の目的
▷ 有用な財務情報の質的特性
▷ 財務諸表を構成する要素の定義、認識及び測定
▷ 資本及び資本維持の概念
「上の図を覚えているか?」
「はい。前回から勉強している概念フレームワークで取り扱っている範囲のリストですよね。」
「そうだ。今日は3つ目の項目、『財務諸表を構成する要素の定義、認識及び測定』について勉強していく。今日が概念フレームワークでは一番のメインになるから、しっかり理解しろよ。」
それを聞いて、桜井は少し緊張した面持ちで頷いた。だが、ふと疑問に思い、質問した。
「どうして、ここが肝になるんですか?」
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