公開日: 2021/01/21 (掲載号:No.403)
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税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第13回】「争いが生じやすい中古建物の評価」~鑑定評価で重視される市場性の観点~

筆者: 黒沢 泰

税理士が知っておきたい

不動産鑑定評価常識

【第13回】

「争いが生じやすい中古建物の評価」

~鑑定評価で重視される市場性の観点~

 

不動産鑑定士 黒沢 泰

 

前回、貸宅地(鑑定評価でいえば底地)の評価をめぐる税務の常識と鑑定評価の常識の相違について取り上げましたが、建物に関してもそれぞれの常識との間に隔たりが存在するケースがあります。それは中古建物の評価に係る場合です。

例えば、ある人が建築後相当期間の経過した建物を相続で取得し、それを親族で居住用に使用していたとします。相続人は、税申告の関係もあり不動産鑑定士に鑑定評価を依頼したところ、その建物は老朽度からして市場性に欠ける(= そのままでは建物の価値を見い出しえない)という理由で、家屋の撤去を前提とした評価額が求められたとします(すなわち、「建物及び敷地の評価額 = 更地価格 - 家屋の撤去費」という算式が適用されます)。

これに対し、財産評価基本通達にはこのような考え方はなく、「家屋の相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0」(= 固定資産税評価額そのもの)という算式が適用されることは税理士の皆様もご承知のことと思います。加えて、固定資産評価基準では、建築後一定年数を経過した建物であっても、評価額が再建築費の一定割合よりも下がらない仕組みとなっています。

そのため、納税者からすれば、「建物が古い割には相続税評価額が高いのではないか」という疑問が生じ、課税庁との間に紛争が生ずるケースもしばしば見受けられるようです。すなわち、そこには税務の常識と鑑定評価の常識の乖離が生じており、これを発端として国税不服審判所に審査請求が行われるという具合です。今回は、このようなよくあるケースについて、両者間には何故上記のような隔たりが生ずるのかを本質面から捉えてみます。

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「争いが生じやすい中古建物の評価」

~鑑定評価で重視される市場性の観点~

 

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前回、貸宅地(鑑定評価でいえば底地)の評価をめぐる税務の常識と鑑定評価の常識の相違について取り上げましたが、建物に関してもそれぞれの常識との間に隔たりが存在するケースがあります。それは中古建物の評価に係る場合です。

例えば、ある人が建築後相当期間の経過した建物を相続で取得し、それを親族で居住用に使用していたとします。相続人は、税申告の関係もあり不動産鑑定士に鑑定評価を依頼したところ、その建物は老朽度からして市場性に欠ける(= そのままでは建物の価値を見い出しえない)という理由で、家屋の撤去を前提とした評価額が求められたとします(すなわち、「建物及び敷地の評価額 = 更地価格 - 家屋の撤去費」という算式が適用されます)。

これに対し、財産評価基本通達にはこのような考え方はなく、「家屋の相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0」(= 固定資産税評価額そのもの)という算式が適用されることは税理士の皆様もご承知のことと思います。加えて、固定資産評価基準では、建築後一定年数を経過した建物であっても、評価額が再建築費の一定割合よりも下がらない仕組みとなっています。

そのため、納税者からすれば、「建物が古い割には相続税評価額が高いのではないか」という疑問が生じ、課税庁との間に紛争が生ずるケースもしばしば見受けられるようです。すなわち、そこには税務の常識と鑑定評価の常識の乖離が生じており、これを発端として国税不服審判所に審査請求が行われるという具合です。今回は、このようなよくあるケースについて、両者間には何故上記のような隔たりが生ずるのかを本質面から捉えてみます。

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連載目次

税理士が知っておきたい
不動産鑑定評価の常識

第1回~第40回 ※クリックするとご覧いただけます。

第41回~

筆者紹介

黒沢 泰

(くろさわ・ひろし)

大手鉄鋼メーカーの系列会社(部長職)にて不動産鑑定業務を中心に担当。不動産鑑定士。

【役職等】
不動産鑑定士資格取得後研修担当講師(財団の鑑定評価、現在)、不動産鑑定士実務修習修了考査委員(現在)、不動産鑑定士実務修習担当講師(行政法規総論、現在)、(公社)日本不動産鑑定士協会連合会調査研究委員会判例等研究委員会小委員長(現在)

【主著】
『土地の時価評価の実務』(平成12年6月)、『固定資産税と時価評価の実務Q&A』(平成27年3月)、『基準の行間を読む 不動産評価実務の判断と留意点』(令和元年8月)『不動産鑑定評価書を読みこなすための基礎知識』(令和2年12月)『土地利用権における鑑定評価の実務Q&A』(令和3年12月)『新版 実務につながる地代・家賃の判断と評価』(令和4年9月)『新版/税理士を悩ませる『財産評価』の算定と税務の要点』(令和5年7月、以上清文社)、『新版 逐条詳解・不動産鑑定評価基準』(平成27年6月)『新版 私道の調査・評価と法律・税務』(平成27年10月)、『不動産の取引と評価のための物件調査ハンドブック』(平成28年9月)、『すぐに使える不動産契約書式例60選』(平成29年7月)『雑種地の評価 裁決事例・裁判例から読み取る雑種地評価の留意点』(平成30年12月、以上プログレス)、『事例でわかる不動産鑑定の物件調査Q&A(第2版)』(平成25年3月)、『不動産鑑定実務ハンドブック』(平成26年7月、以上中央経済社)ほか多数。

    

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