〈IT会計士が教える〉
『情報システム』導入のヒント (!)
【第2回】
「なぜ『導入したはずのシステムが使えない』のか?」
公認会計士 中原 國尋
-連載の目的-
この連載は、「日本IT会計士連盟」に所属する者が有志により、企業がさまざまな形態の『情報システム』を導入する際に遭遇し抱え込んでしまう“ありがちな疑問・問題”について取り上げ、その解決の糸口を示すことで、企業がスムーズにそのシステムを導入・運営できるよう手助けすることを目的とする。
はじめに
情報システムの導入により業務効率が向上し、利便性が高くなるはずにもかかわらず、「うちの会社のシステムは使えない」という話をよく耳にする。なぜそのようなことが起こってしまうのか。
実施すべき手続とのギャップを見ながら、その理由に迫りたい。
▼システム導入の当初目的▼
情報システムの導入目的は、もちろん業務の効率化とそれに基づく生産性の向上にある。
情報システムの導入を検討するにあたっては、例えば、
- 表計算ソフトで作成している帳票の作成を自動化したい
- 入力項目を減らしたい
- 手作業しているデータの集計を自動化したい
などのユーザー(利用者)ニーズを満たすことによって、業務が円滑に遂行できることを目標とするのである。
▼まずはユーザーニーズの抽出と確定▼
情報システムの導入は、一般に以下のステップで行われる。
(1) ユーザーニーズの抽出
(2) 実現するニーズの識別
(3) 要求仕様の確定
(4) パッケージの選定
(5) システム設定・カスタマイズ
(6) テスト
(7) リリース
まずは、新しいシステムに実現する機能を確定するために、ユーザーニーズを収集し、そのうちシステムに機能として実装するものを確定しなければならない。
ユーザーニーズの収集は担当部署に対するヒアリングをベースに行われるが、ユーザーに対してただ「実現したいこと」を問うても、具体的な話に落し込むのは困難であるため、現在の業務フローチャートを作成して、それをベースに議論を進めることが多い。
その中で現在の業務における不都合な点や問題点を相互に認識しながら、次期システムにおいて解決すべき項目を抽出する。
しかし、ここで抽出されたユーザーニーズをすべてシステム的に実現することは非現実的である。もちろん、ユーザーは自動化することにより業務が簡便になり効率化が進むと考えているが、本当に効果があるのか、優先的に対応すべきか否かについて判断しなければならない。
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