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《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(令和3年7月~9月)」~注目事例の紹介~

 《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和3年7月~9月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、2022(令和4)年3月23日、「令和3年7月から9月までの裁決事例の追加等」を公表した。追加で公表された裁決は表のとおり、相続税法が6件、所得税法が1件で、合わせて7件となっている 今回の公表裁決では、国税不服審判所は、7件すべてで原処分庁の課税処分等の全部又は一部を取り消しており、納税者の審査請求が全面的に棄却又は却下されたものはない。 【表:公表裁決事例令和3年7月~9月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 相続税法関係の事例②から⑤については、同じ被相続人に係る相続税の申告に対する課税処分につき、4人の相続人がそれぞれ審査請求を行ったものである。本稿では、被相続人の妻が審査請求を行った事例②をもとに、国税不服審判所が、原処分庁の主張する課税財産認定の一部を否認して、過少申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消した理由について、その判断を検討したい。 なお、公表された裁決では、事例ごとに相続人ら関係者に使用されているアルファベットが異なっているが、本稿では、事例②において使用されているアルファベットに統一して用いることにする。   ➤ 相続税の課税財産の認定について、一部、原処分庁の主張を否認した事例・・・②~⑤ 1 事実関係 本件は、審査請求人が、①原処分庁所属の調査担当職員による調査を受けて相続税の修正申告をしたところ、原処分庁が、当該修正申告では被相続人(相続開始日は平成29年1月〇日)が保管していた現金及び相続開始前3年以内に贈与した財産の一部が申告漏れであったとして、相続税に係る更正処分等及び贈与税に係る決定処分等を行ったうえ、審査請求人の1人である被相続人の妻には被相続人名義の預金を解約して相続財産としなかった隠蔽行為があったなどとして重加算税の賦課決定処分等を行ったこと、また、②当該修正申告では他の相続人2名に相続開始日の3年より前に贈与された財産が相続財産とされており、納付すべき相続税額が過大であったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、請求の一部のみを認容した減額更正処分等を行ったことに対し、請求人が、原処分庁の認定には誤りがあるなどとして、これらの原処分の一部の取消しを求めた事案である。 審査請求人は、事例②は被相続人の妻。事例③は被相続人と妻の間の子H、事例④と事例⑤は被相続人とKとの間の子であるL及びMであり、被相続人は、平成27年4月2日、L及びMを認知しているため、本件に係る相続人は、被相続人の妻、被相続人と妻との間の子であるH及びJ、被相続人とKとの間の子であるL及びMの、合わせて5人である。 2 争点 3 国税不服審判所の判断 (1) 〔争点1〕N社金庫に保管されていた現金は、相続財産に含まれるか否か 国税不服審判所は、N社金庫に保管されていた現金については、被相続人が保管していたものと認定して、審査請求人の主張を斥けた。 ① 認定事実 争点となっている現金は、平成29年の秋頃、N社の事務室内に設置されていた金庫内からHが発見したものであり、令和2年5月8日にN社の会計帳簿の預り金勘定に計上されるまで、N社を含む関連法人のいずれの会計帳簿にも計上されていない。また、関連法人の経理担当者であったKは、Hが現金を発見するまで、現金が金庫に保管されていたことは知らなかったことから、この現金は、関連法人のいずれかに帰属するものとは認められない。 ② 判断 争点となっている現金が関連法人のいずれかに帰属するものであるとは認められないところ、現金を金庫に保管し、管理していたのが被相続人自身であり、被相続人が金庫に被相続人の個人的な財産についても保管していたことに加え、現金について、被相続人が他から預託を受けて保管していた金員であることをうかがわせる事情も見当たらないことに照らせば、現金は、被相続人が被相続人名義の預金通帳とともに金庫内に保管していた自らの固有財産と認めるのが相当であり、この現金は被相続人に帰属するものであり、相続財産に含まれると認めるのが相当である。 (2) 〔争点2〕被相続人からHに対しH名義口座に係る財産が贈与された時期はいつか 国税不服審判所は、被相続人からHへの贈与は、請求人の主張する平成13年から始まったものではなく、平成27年8月に行われたものであるという事実認定に基づき、この贈与は相続開始前3年以内に行われたものであると判断した。 ① 認定事実 被相続人は、子であるH、J、L及びMに対して、平成13年8月以降、毎年一定額を贈与する意思を表明した贈与証を作成し、Kに命じて、4人の子の名義預金口座を開設し、金銭贈与を行っていた。しかしながら、この贈与証には、受贈者の署名押印はなく、Hは、調査開始後の令和元年9月まで贈与証の存在を認識していなかったことからすると、贈与証の存在のみをもって、直ちに、被相続人とHとの間で、毎年のH名義口座への入金に係る贈与が成立していたと認めることはできない。 被相続人は、平成27年8月、Hに対し、H名義預金の残高全額を払い出した金員とともにH名義預金の通帳等を手渡したものであるが、被相続人は、口座開設から手渡しまでの約14年間、Hに対して、H名義預金の金融機関名や口座番号も知らせることなく、HがH名義預金を自由に使用できる状況には置かなかった。 ② 判断 我が国において、親が子に伝えないまま子名義の銀行預金口座を開設の上、金員を積み立てておく事例が少なからず見受けられることに鑑みると、H名義口座は、贈与証に記載したとおりの贈与の履行がされているとの外形を作出するために被相続人により開設され、平成27年8月まで被相続人自身の支配管理下に置かれていたものと認められるから、H名義預金は、被相続人に帰属する財産であったと認めるのが相当であり、被相続人は、平成27年8月、Hに対し、H名義預金の残高全額を払い出した金員を手渡し、Hはそれを受領していることから、被相続人とHの間においては、平成27年8月に、金員に係る贈与が成立するとともに、その履行がされたものと認めるのが相当であると判断した。 (3) 〔争点3〕M名義預金は、相続財産に含まれるか否か(具体的には、M名義預金は被相続人とMのいずれに帰属するものか) 国税不服審判所は、被相続人とMとの間の贈与契約について、Mの法定代理人であるKが受諾したうえで、M名義預金口座に入金していたものであるとして、M名義預金は、被相続人の相続財産には含まれないとして、原処分庁の主張を斥けた。 ① 認定事実 上記〔争点2〕で認定した事実のとおり、被相続人は、贈与証を作成のうえ、M名義預金口座に毎年一定額の入金をしていたところ、贈与証作成当時、Mは未成年であり、Mが成年に達するまでMの親権者はKのみであった。そして、Kは、L名義預金及びM名義預金の通帳及び印章を、口座開設当時からL又はMにそれぞれ引き渡すまで保管していた。 民法第824条《財産の管理及び代表》の規定により、Kは、Mが成年に達するまでは、Mの法定代理人として、その財産に関する法律行為についてその子を代表し、その財産を管理する立場にあったと認められることから、平成13年当時、Mの法定代理人として、被相続人からの贈与証による贈与の申込みを受諾し、その結果、平成13年から平成24年に至るまで、贈与契約に基づき、その履行として、Kが管理するM名義口座に毎年一定額が入金されていたものと認めるのが相当である。 ② 判断 M名義口座は、平成13年8月10日に開設された後、平成13年ないし平成24年までの各年に一度、被相続人からの一定額の入金が認められるほかは、利息を除き、入金は認められないことから、贈与契約の履行のために開設されたものであることは明らかである。M名義預金の通帳及び印章は、当初から、Kが保管していたものである。そうすると、M名義預金は、贈与証に基づく入金が開始された当初から、Kが、Mの代理人として自らの管理下に置いていたものであり、Mが成人に達した以降も、その保管状況を変更しなかったにすぎないというべきであることから、M名義預金は、平成13年の口座開設当初から、Mに帰属するものと認められるから、相続財産には含まれないと判断した。 (4) 〔争点4〕被相続人の妻に国税通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為及び相続税法第19条の2第5項に規定する隠蔽仮装行為があったか否か 国税不服審判所は、被相続人の妻の行為について、隠蔽仮装行為を認め、重加算税の賦課決定をした原処分庁の主張を認める判断を行った。 ① 認定事実 被相続人の妻は、被相続人名義預金を、口座開設当時から預金通帳を保管するなど、管理していたが、相続に関する手続等の取りまとめを行ったHから被相続人名義の預金に係る通帳の所在を尋ねられた際、自宅にはない旨回答し、調査の直前まで、税理士及び他の相続人に被相続人名義預金の存在を伝えていなかったうえ、被相続人名義預金を解約して、被相続人の妻名義の口座に入金した後、この口座も解約し、被相続人名義預金の通帳とともに廃棄した。 ② 判断 被相続人の妻は、被相続人名義預金が相続財産となるとの認識の下、被相続人名義口座を解約するとともに遺産分割の対象とさせないことを意図し、他の相続人や税理士にあえてその存在を知らせずに、相続財産の存在の証となる預金通帳を廃棄するなどにより、隠匿したとみるのが相当である。これらの行為は、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏するものということができるから、被相続人の妻には、国税通則法第68条第1項に規定する隠蔽の行為及び相続税法第19条の2第5項に規定する隠蔽仮装行為のいずれにも該当する行為があったと認められると判断した。 (了)

#No. 462(掲載号)
#米澤 勝
2022/03/28

《速報解説》 開示作成にあたり参考となる「記述情報の開示の好事例集2021」が更新される~「監査の状況」及び「役員の報酬等」の開示の好事例が新たに追加~

《速報解説》 開示作成にあたり参考となる「記述情報の開示の好事例集2021」が更新される ~「監査の状況」及び「役員の報酬等」の開示の好事例が新たに追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年3月25日、金融庁は、「記述情報の開示の好事例集2021」の更新を公表した。 これは、2022年2月4日の「記述情報の開示の好事例集2021」を更新するものであり、次のものについて好事例を追加している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 監査の状況の開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。   Ⅲ 役員の報酬等の開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。 (了)

#No. 462(掲載号)
#阿部 光成
2022/03/28

《速報解説》 国税庁、パブコメを経て所得税基本通達28-9を改正~非常勤の消防団員の出動日数に応じて支払われる金銭のうち、災害に関する出動は1日8,000円、それ以外の出動は1日4,000円まで非課税~

 《速報解説》 国税庁、パブコメを経て所得税基本通達28-9を改正 ~非常勤の消防団員の出動日数に応じて支払われる金銭のうち、災害に関する出動は1日8,000円、それ以外の出動は1日4,000円まで非課税~   税理士 菅野 真美   国税庁は令和4年3月23日付けで「「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」を公表、所得税基本通達28-9《非常勤の消防団員が支給を受ける金銭》の見直しを行った。なお本改正は令和3年10月1日付けでパブリック・コメントに付されていた。   〔消防団員の報酬の現行の取扱い〕 消防団は、全国の市町村に設置された消防防災活動を行う組織であり、消防団員はその構成員として災害発生時には消防活動等を行う。消防団員は非常勤特別職の地方公務員であり報酬もある。 報酬は、災害活動や訓練に出動した際の出動手当等と出動に関わらず定額で支給される報酬がある。現行の取扱いでは、出動手当等は職務遂行を行うために要した費用の弁償であるから課税されず、出動回数に関わらず支給される報酬のうち、年間の支給額が5万円以下であるものは非課税とされていた。   〔消防団への報酬の見直しとパブリック・コメント〕 災害数の増加と、消防団員数の減少から危機感を感じた消防庁は、消防団員に対する報酬を出動報酬と年額報酬に分け、報酬基準の見直しを行った。国税庁は、これらの報酬に関して所得税法上の取扱いについて通達改正の必要があることから、既報のとおり改正案を提示して、パブリック・コメント手続を実施することになった。 この案によると、年額報酬のうち年間の支給額が5万円以下のものについては、非課税であるが、出動の日数に応じて支給を受ける報酬については、原則的には、給与等として課税対象となった。   〔パブリック・コメントの結果改正された通達〕 令和3年10月1日から11月1日まで通達の改正案についてパブリック・コメント手続を実施したところ、34通の意見が寄せられた。これらのうち従来から課税対象とされていなかった出動手当部分が給与として課税対象になることに反対する意見が多く寄せられた。そこで、令和4年3月23日、国税庁は通達を改正して公表した。 この通達によると、出動日数に応じて支払われる金銭のうち、災害に関する出動については1日につき8,000円、それ以外の出動については4,000円までは費用弁償として支給されるものだから課税されず、超える部分については給与等として課税対象となる。出動日数にかかわらず定額で支給される金銭については年額5万円までは非課税として、超える部分については給与等として課税対象となる。つまり、現行の取扱いと大きく異なる改正は行わないこととなった。 なおこの通達は、令和4年4月1日以後に行う職務に応じて支給を受ける金銭と、令和4年4月1日以後に支給を受けるべき定額の金銭について適用される。 防災のために不可欠な人件費の課税上の取扱いに関しては、国税庁も真剣に耳を傾け柔軟に対応するようである。 〈改正後の所得税基本通達28-9〉 〈経過的取扱い〉 (了)

#No. 462(掲載号)
#菅野 真美
2022/03/28

プロフェッションジャーナル No.462が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年3月24日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.462を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/03/24

組織再編成・資本等取引の税務に関する留意事項 【第8回】「給与等の支給額が増加した場合の税額控除」

組織再編成・資本等取引の税務に関する留意事項 【第8回】 「給与等の支給額が増加した場合の税額控除」   公認会計士 佐藤 信祐   1 概要 令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度では、給与等の支給額が増加した場合の税額控除が認められている(措法42の12の5①②)(※1)。具体的な内容は以下の通りである。 (※1) 地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除(措法42の12)との重複適用の論点については、解説を省略するものとする。 (1) 原則的な取扱い(措法42の12の5①一) イ 適用要件 (※2) 国内雇用者のうち国内の事業所において勤務することとなった日から1年を経過していない者をいう(措法42の12の5③二)。なお、支配関係がある法人若しくは個人の事業所から異動した者及び海外の事業所から異動した者を除外するとともに(措令27の12の4の2③)、合併、分割、現物出資又は現物分配により異動した者については、被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人における雇用開始日を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人の雇用開始日として取り扱うことになる(措令27の12の4の2④)。 (※3) 適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内新規雇用者(雇用保険法の一般被保険者に該当する者に限る)に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金を除く)がある場合には、当該金額を控除した金額)をいう(措法42の12の5③五)。 ロ 税額控除 (※4) 適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内新規雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額)のうち、適用年度の調整雇用者給与等支給増加額に達するまでの金額をいうが(措法42の12の5③四)、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除(措法42の12)の適用がある場合には、所要の調整が行われる。なお、調整雇用者給与等支給増加額とは、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額をいう。 (※5) その教育訓練費に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額。 (2) 中小企業者等の特例(措法42の12の5②) イ 適用要件 (※6) 適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金を除く)がある場合には、当該金額を控除した金額)をいう(措法42の12の5③十)。 ロ 税額控除 (※7) 雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(当該金額が適用年度の調整雇用者給与等支給増加額を超える場合には、当該調整雇用者給与等支給増加額)をいう(措法42の12の5③十二)。なお、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除(措法42の12)の適用がある場合には、所要の調整が行われる。 地方税法においても、上記の中小企業者等の特例を適用する場合には、道府県民税及び市町村民税(法人税割)の課税標準額が給与等の支給額が増加した場合の税額控除を適用した後の法人税額をもとに計算されることから、道府県民税及び市町村民税(法人税割)も軽減されることになる(地法附則8⑬)。さらに、外形標準課税の適用上も、付加価値割額の計算上、一定の調整を加えた雇用者給与等支給増加額を控除することとされている(地法附則9⑬)。 このように、給与等の支給額が増加した場合の税額控除では、「比較雇用者給与等支給額」「新規雇用者比較給与等支給額」「比較教育訓練費」の計算を行うことから、これらの数値が組織再編成による影響を受けることになる。   2 解散事業年度における取扱い 解散の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度では、給与等の支給額が増加した場合の税額控除が認められていない(措法42の12の5①②)。ただし、合併により解散する法人については、給与等の支給額が増加した場合の税額控除が認められている。これは、適格合併を行った場合であっても、非適格合併を行った場合であっても同様である。 これに対し、①分割又は事業譲渡をした日の属する事業年度において分割法人又は事業譲渡法人が解散する場合には、解散の日を含む事業年度において、給与等の支給額が増加した場合の税額控除を適用することができず、②分割法人となる法人又は事業譲渡法人となる法人が解散した日の翌日に分割又は事業譲渡をする場合には、清算中の事業年度において、給与等の支給額が増加した場合の税額控除を適用することができない。   3 設立事業年度における取扱い 設立事業年度では、給与等の支給額が増加した場合の税額控除が認められていない(措法42の12の5①②)。これは、組織再編成により設立された場合も同様である(措法42の12の5③一)。   4 比較雇用者給与等支給額 (1) 合併を行った場合(措令27の12の4の2⑦⑳) (※8) 合併法人が当該適用年度開始の日においてその設立の日の翌日以後1年(当該適用年度が1年に満たない場合には、当該適用年度の期間)を経過していない法人(以下、「未経過法人」という)に該当する場合には基準日から当該合併法人の設立の日の前日までの期間を当該合併法人の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 (※9) 未経過法人に該当する場合には、基準日から合併法人の設立の日の前日までの期間を当該合併法人の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 この場合における月別給与等支給額とは、その合併に係る被合併法人の各事業年度に係る給与等支給額をそれぞれ当該各事業年度の月数で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月に係るものとみなしたものをいう(措令27の12の4の2⑧⑳)。 そして、基準日とは、以下に掲げる場合の区分に応じ、以下に定める日をいう(措令27の12の4の2⑫⑳)。なお、基準日の取扱いは、後述する分割、現物出資及び現物分配においても同様である。 (※10) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、当該設立の日から当該前事業年度の終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものとし、その分割等に係る移転給与等支給額が0である場合における当該分割等を除く。 (※11) 当該設立の日から当該合併又は分割等の前日(残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日)までの期間に係る給与等支給額が0である場合に限る。 (2) 分割、現物出資又は現物分配を行った場合(措令27の12の4の2⑨⑳) (※12) 未経過法人に該当する場合には、基準日から分割承継法人等の設立の日の前日までの期間を当該分割承継法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 (※13) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日の翌日。 (※14) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日。 (※15) 未経過法人に該当する場合には、基準日から分割承継法人等の設立の日の前日までの期間を当該分割承継法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 ここでいう月別移転給与等支給額とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日(※16)前に開始した各事業年度に係る移転給与等支給額をそれぞれ当該各事業年度の月数(※17)で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月(※18)に係るものとみなしたものをいう(措令27の12の4の2⑩⑳)。 (※16) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日の翌日。 (※17) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間の月数。 (※18) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間に含まれる月。 そして、移転給与等支給額とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日前に開始した各事業年度に係る給与等支給額(※19)に当該分割等の直後の当該分割等に係る分割承継法人等の国内雇用者(※20)の数を乗じてこれを当該分割等の直前の当該分割法人等の国内雇用者の数で除して計算した金額をいう(措令27の12の4の2⑪⑳)。 (※19) 分割事業年度等にあっては、当該分割等の日の前日を当該分割事業年度等の終了の日とした場合に損金の額に算入される給与等支給額。 (※20) 当該分割等の直前において当該分割法人等の国内雇用者であった者に限る。   5 新規雇用者比較給与等支給額 令和3年改正前租税特別措置法では、継続雇用者給与等支給額を基礎に税額控除の計算を行っており、組織再編成を行った場合であっても、移転先において継続雇用者の定義を満たさないことから、特段の調整計算は不要であった。 これに対し、令和3年度税制改正により、継続雇用者給与等支給額ではなく、新規雇用者比較給与等支給額を基礎に税額控除の計算を行うことになったため、組織再編成に伴う調整計算が必要になった。具体的な調整計算の方法については、比較雇用者給与等支給額と同様である(措令27の12の4の2⑦~⑫)。   6 比較教育訓練費 組織再編成を行った場合における比較教育訓練費の調整計算については、比較雇用者給与等支給額に関する調整計算を読み替えて適用するものとされている(措令27の12の4の2⑮⑯)。   7 適用除外事業者 試験研究を行った場合の税額控除の制度と同様に、適用除外事業者についても定められている(措法42の12の5②)。具体的な内容については、試験研究を行った場合の税額控除の制度(第7回参照)と変わらない。 (注) 令和4年度税制改正では、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が3%以上であるときに、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%の税額控除ができる制度に改組された。そのため、本稿で解説した内容も、令和4年4月1日以後に開始する事業年度では、令和4年度税制改正により変わるという点にご留意されたい。   (了)

#No. 462(掲載号)
#佐藤 信祐
2022/03/24

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例108(相続税)】 「相続税の当初申告において取引相場のない株式の評価誤り、非課税となる弔慰金の計上漏れ等があり、別税理士が更正の請求を行ったところ、これらが認められ、過大納付税額は回復したが、別税理士に支払った成功報酬につき損害賠償請求を受けた事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例108(相続税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆適格株式交換 適格株式交換の場合、完全親法人における完全子法人株式の取得価額は、株式交換直前の完全子法人の株主数により以下に区分される。したがって、完全親法人の純資産の部は、それぞれの取得価額が増加資本金等となる。 ◆純資産価額の計算時期 評価会社が課税時期において仮決算を行っていないため、課税時期における資産及び負債の金額が明確でない場合において、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときは、直前期末の資産及び負債を基に、課税時期の純資産価額を計算しても差し支えないこととされている。 ◆弔慰金等の取扱い(相基通3-20) 被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける弔慰金等については、退職手当金等に該当すると認められるものを除き、次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額として取り扱い、当該金額を超える部分の金額があるときは、その超える部分に相当する金額は退職手当金等に該当するものとして取り扱うものとする。 したがって、退職手当金等につきその区分が明らかにされていない場合であっても、上記金額は弔慰金等として退職手当金から差し引いて計算することができる。       (了)

#No. 462(掲載号)
#齋藤 和助
2022/03/24

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第29回】「二世帯住宅に生計一親族と生計別親族が居住していた場合の特定居住用宅地等の特例の適用の可否」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第29回】 「二世帯住宅に生計一親族と生計別親族が居住していた場合の特定居住用宅地等の特例の適用の可否」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲(相続開始日:令和4年3月20日)は、下記の土地及び家屋を所有していました。土地建物の生前の利用状況は、下記の通り、1階部分は長男である乙が居住の用に供し、2階部分は長女である丙及び丙家族が居住の用に供しています。 建物の各階ごとに玄関があり、構造上区分された建物で乙は1階で1人で生活をしていました。甲は乙及び丙から賃料は収受していません。なお、甲は5年前に自宅を売却し、老人ホームに居住していました。 【相続発生前の利用状況】 甲の相続発生に伴い、甲の所有していた上記土地及び建物を乙及び丙が1/2ずつ取得しました。相続人は乙と丙の2人です。乙は甲と生計を一にしており、相続後は引き続き上記の土地家屋に居住しています。丙は甲と生計を別にしており、相続後は引き続き上記の土地家屋に居住しています。 次のそれぞれの場合には、乙及び丙が適用できる特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用面積は何㎡でしょうか。 [A] 区分登記の有無に関わらず、乙は宅地等の面積の1/2相当である165㎡のうち1階部分に相当する90㎡(165㎡×120㎡/220㎡)について特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下単に「特例」という)を受けることができますが、丙は特例を受けることができません。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特定居住用宅地等の意義 被相続⼈⼜は当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた当該被相続⼈の親族(以下「被相続人等」という)の居住の⽤に供されていた宅地等(当該宅地等が2以上ある場合には、政令で定める宅地等に限る。「第19回で解説」)で、当該被相続⼈の配偶者⼜は一定の要件を満たす当該被相続⼈の親族(当該被相続⼈の配偶者を除く)が相続⼜は遺贈により取得したものをいいます(措法69の4③二)。 一定の要件を満たす被相続人の親族は、下記の(1)~(3)のいずれかを満たす親族をいいます。 (1) 同居親族 当該親族が相続開始の直前において当該宅地等の上に存する当該被相続⼈の居住の⽤に供されていた⼀棟の建物(当該被相続⼈、当該被相続⼈の配偶者⼜は当該親族の居住の⽤に供されていた部分として政令で定める部分に限る)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること。 政令で定める部分とは、次に掲げる場合の区分に応じてそれぞれに定める部分をいいます(措令40の2⑬、措通69の4-7の4)。 (2) 別居親族 当該親族が次に掲げる要件の全てを満たすこと(措令40の2⑭⑮、措規23の2④)。 (3) 生計一親族 当該親族が当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を⾃⼰の居住の⽤に供していること。   2 一棟の建物で区分登記がされていない二世帯住宅の場合の特定居住用宅地等の範囲 被相続人の居住の用に供されていた建物が一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物を除く)である場合には、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等として取り扱います(措令40の2④、措通69の4-7)。   3 本問への当てはめ 本問の場合には、入口の要件として被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するのか、出口の要件として取得者の要件を確認することになります。 入口の要件としては、1階部分については、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当しますが、2階部分については該当しませんので、1階部分のみが特例の対象となります。上記2の取扱いは、あくまでも被相続人の居住の用に供されていた建物が一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物を除く)である場合の取扱いであり、生計一親族の居住の用に供されていた建物については、上記2の取扱いはありませんので、注意する必要があります。 続いて取得者の要件ですが、取得者ごとに確認すると下記の通りとなります。 〔乙について〕 乙は上記1(3)の生計一親族の要件を満たすことになりますので、他の要件を満たせば特例の適用を受けることができます。ただし、特例の対象は、生計一親族の居住の用に供されていた1階部分のみとなりますので、乙が取得した土地等の面積を家屋の床面積で按分する必要があります。 なお、区分登記がされており、かつ、その区分登記ごとに敷地権割合も設定がされていた場合に、乙が居住している部分の家屋と敷地権割合を取得したときは、乙が取得した土地部分の全てについて、特例の対象にすることができます。 〔丙について〕 別居親族の場合には、上記1(2)の要件には記載していませんが、被相続⼈の居住の⽤に供されていた宅地等を取得した者であることが前提となります(措法69の4③二ロ)。したがって、そもそも生計を一にしている親族の居住用宅地等を別居親族が取得しても特例の対象にはなりません。生計を一にしている親族の居住用宅地等で特例対象になり得るのは、その生計一親族か配偶者のみとなります。   ★実務上のポイント★ 区分登記を行い、敷地権割合を設定することにより1階部分の全体に対して特例を適用することも可能となりますので、事前にアドバイスをすることも重要となります。   (了)

#No. 462(掲載号)
#柴田 健次
2022/03/24

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第15回】「家屋の増築が1月1日前に行われたかどうかについて、1月3日時点の航空写真に基づいて推測できるか否かが争われた裁決例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第15回】 「家屋の増築が1月1日前に行われたかどうかについて、1月3日時点の航空写真に基づいて推測できるか否かが争われた裁決例」   税理士 菅野 真美   ▷年の途中で新築・増改築した場合の固定資産税 土地や家屋を課税標準とする固定資産税は、その年1月1日に土地や家屋を所有している者に対して、土地や家屋の価格を課税標準として、市町村(東京都特別区の場合は東京都)が賦課決定するものである。したがって、1月1日に誰が何を所有しているかが問題となる。 通常は、登記簿に基づいた課税台帳で所有者を確認することになるが、家屋を年の途中で新築・増改築した場合、登記された日がその年1月1日前か後かで判断するのではなく、不動産登記規則第111条に準じて「屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるもの」が1月1日前なのかで判断する。 しかし、家屋を新築・増改築した者がこのようなことを理解して、直ちに市町村に連絡するとは限らない。適正な課税を確保するためには、行政側でも家屋の変化を確認する必要がある。 そのために、行政側では、飛行機を飛ばして航空写真を撮影して固定資産の現況調査を行っているところが多い。また、固定資産の現況調査は固定資産税の賦課にも影響を与えることから、年始に行われることが多いのである。 それでは、年始である1月3日に航空写真により家屋が写っているものについて、1月1日前に増築が行われたかどうかについて争われた事案で、納税者の主張が認められた珍しい事案について検討する。   ▷どのような事案か これは、課税台帳に登録されていなかった家屋の増築部分について、その建築年を平成26年として家屋(補充)課税台帳に登録し、平成27年度分から平成30年度分までの各年度にかかる固定資産税・都市計画税税額変更(賦課決定)処分を行ったところ、「平成26年に増築したと主張する行政側の事実認定疎明資料が存在せず、増築年月日の事実認定が成されないうえでの課税は納得出来ない」として審査請求した事案である。 審査請求をした人をX、行政庁をYと仮定する。 具体的な流れは次のとおりである。   ▷事案の争点 審査請求の争点は、本件家屋がいつ増築されたかである。 Xは、母と同居するために増築したものであるが、建築時期については定かではないと主張し、Yは、家屋を建築した時期は平成26年中であると主張した。   ▷審査請求から裁決までのプロセス 審査請求がなされると、審理手続を主宰する者として、審理員が指名される。この審理員は、審査請求に係る処分の決定に関与していない職員が指名され、処分庁から弁明書、審査請求人から反論書等の提出を受け調査を行い、裁決に関する意見書を審査庁に提出することになる。 審査庁は意見書の提出を受けた時は、原則的には、行政不服審査会(以下「審査会」という)に諮問し、審査会が意見書に基づいて答申を行い、その答申に基づいて裁決がなされる(通常は、処分庁(課税処分をした行政庁)=審査庁(審査をした行政庁)となる)。   ▷審理員が提出を求めたものは 審理員は次の事項を記載した反論書の提出をXに求めた。 さらに①ないし④の事実を明らかにし、又は、推認させる証拠資料(例えば工事請負契約書、工事代金の請求書又は領収書等)の提出も求めた。   ▷Xが提出したものは Xは反論書及び証拠書類を提出せず、口頭陳述で以下のように回答した。   ▷審理員の意見書は 審理員の意見書の結論は、以下の理由により、審査請求は棄却されるべきであるとした。   ▷審査会の結論、そして裁決は 審理員の意見書と異なり、審査会の結論、並びにその結論を受けた裁決は、各処分のうち、平成27年度分に係る固定資産税・都市計画税税額変更(賦課決定)処分について取り消し、他は棄却した。 その理由は、以下のとおりである。 1月3日の航空写真では1月1日に家屋が課税要件を満たしたとは確証できないとして、納税者の請求が一部認容された。 1月1日に家屋が課税要件を満たしているという完全な証拠がない限り、納税者の対応にかかわらず、賦課は難しいのだろうか。 (了)

#No. 462(掲載号)
#菅野 真美
2022/03/24

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《組織再編-合併》編 【第1回】「100%親子会社間の吸収合併」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《組織再編-合併》編 【第1回】 「100%親子会社間の吸収合併」   公認会計士・税理士 前原 啓二     はじめに 中小企業会計指針においては、合併等の企業結合が行われた際に、取得と判定された場合と、共同支配企業の形成、共通支配下の取引等と判定された場合とに分類・識別して会計処理を定めています。一方、税制上の合併の取扱いは、上記の会計上の取扱いと異なり、適格合併と非適格合併とに分類して規定されています。これらの分類のうち、実際に合併が実施されるのは、同一グループ内の中小企業間においては、主に税制上の適格合併に該当するケースです。 そこで、《組織再編-合併》編では、税制上の適格要件を満たす合併のうち、「100%親子会社間の吸収合併」と、「オーナー株主が100%所有する兄弟会社間の合併」の2例を取り上げます。今回は、「100%親子会社間の吸収合併」についてご紹介します。 【設例1】 当社(3月31日決算)は、当期(X1年4月1日~X2年3月31日)のX1年4月1日に当社100%子会社(当社がすべての発行済株式数を直接保有)であるS社(3月31日決算)を吸収合併しました。 (1) 当社所有の子会社株式(S社株式)の貸借対照表価額は、12,000,000円。 (2) S社のX1年3月31日現在の貸借対照表は、下記のとおりです。 いずれの資産及び負債の貸借対照表価額も、企業会計の基準等に基づいて算定された帳簿価額とします。 法人税上の資本金等の額は10,000,000円、利益積立金額は12,153,400円とします。 (3) 吸収合併契約書には、下記の記載が含まれています。 ・合併の効力発生日は、X1年4月1日です。 ・無対価合併(合併に際してS社株主である当社への対価は交付しません)。 ・合併による資本金及び準備金の増加はありません。   1 当社(吸収合併存続会社)の無対価合併時の仕訳 当社(吸収合併存続会社)の無対価合併時の仕訳は、次のとおりです。 〈X1年4月1日〉 中小企業会計指針において、合併等の企業結合が行われた際に、取得と判定された場合と、共同支配企業の形成、共通支配下の取引等と判定された場合とに識別して会計処理を適用します。取得は、一方の企業が他の企業を支配したと認められる企業結合で、共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合です。共同支配企業の形成は、複数の独立した企業が契約等に基づき、ある企業を共同で支配する企業結合です。共通支配下の取引等とは、親子間、又は子会社間などグループ内の組織再編です。 取得と判定された場合、吸収合併存続会社は原則として、吸収合併消滅会社から受け入れる資産及び負債に合併の日の時価を付さなければなりません。 また、共同支配企業の形成、共通支配下の取引等と判定された場合には、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額を付さなければなりません。ここで、適正な帳簿価額とは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌して算定された帳簿価額をいいます。したがって、企業会計の基準等に照らして帳簿価額に誤りがある場合には、その引継ぎに際して修正を行うことになります。吸収合併存続会社が受け入れる資産及び負債を時価以下の範囲で適宜に評価替えするような会計処理は認められません(中小企業会計指針81)。 この設例は、100%親子会社間の吸収合併なので、共通支配下の取引等と判定されます。したがって、当社が吸収合併消滅会社S社から受け入れる資産及び負債には、S社の適正な帳簿価額を付すことになります。この設例では、合併の日(X1年4月1日)の前日(X1年3月31日)におけるS社の適正な帳簿価額は、資産について、現金預金22,000,000円、器具及び備品1,100,000円、負債について、未払金300,000円、未払法人税等646,600円であり、当社はこれらの金額をもって受け入れます。 また、子会社から受け入れた資産(22,000,000円 + 1,100,000円)と負債(300,000円 + 646,600円)の差額(22,153,400円)と、親会社である当社が合併直前に保有していた子会社株式(これを「抱合せ株式」といいます)の適正な帳簿価額(12,000,000円)との差額10,153,400円を、当社は特別損益に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針206)。抱合せ株式は、合併に際して消滅することから、この特別損益の科目は「抱合せ株式消滅差損益」とします。   2 決算書の金額 決算書の金額は、次のとおりです。 X2年3月31日決算期 〈当期末損益計算書〉   3 法人税上の取扱い 税制上の合併の取扱いは、上記の会計上の取扱いと異なり、適格合併と非適格合併とに分類されます。 例えば、合併が被合併法人の株主に合併法人の株式その他の資産が交付されない合併(無対価合併)であるケースでは、合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係に限られますが、そのような合併当事者間の完全支配関係がある場合には適格要件を満たす1つの例です(法令4の3②)。この設問では、合併に際してS社株主である当社への対価を交付しない無対価合併であり、当社がS社のすべての発行済株式数を直接保有していることから、適格合併に該当します。 適格合併により内国法人である被合併法人(S社)が、合併法人(当社)に資産及び負債の移転をしたときは、その移転をした資産及び負債のその適格合併に係る最終事業年度(被合併法人S社の合併の日「X1年4月1日」の前日の属する事業年度「X1年3月31日期末の決算期」をいいます)終了の時の帳簿価額による引継ぎをしたものとしてその国内法人の各事業年度の所得の金額を計算します(法62の2①)。したがって、合併時に移転する資産及び負債の譲渡損益は認識されません。 これを受けて、適格合併により、合併法人(当社)における被合併法人(S社)からの資産及び負債の引継価額は、被合併法人(S社)におけるその資産及び負債の帳簿価額となります(法令123の3③)。 また、この設例では、適格合併に係る被合併法人(S社)の当該適格合併の日(X1年4月1日)の前日の属する事業年度終了の時(X1年3月31日)における資本金等の額(10,000,000円)から、合併により増加した資本金(この設例では0円)及び抱合せ株式の当該合併の直前の帳簿価額(12,000,000円)を減額した金額を、資本金等の額とします(法令8①五ハ)。 さらに、適格合併に係る被合併法人(S社)の当該適格合併の日(X1年4月1日)の前日の属する事業年度終了の時(X1年3月31日)における被合併法人(S社)から移転を受けた資産及び負債の帳簿価額の差額(22,153,400円)から、上記資本金等の額(△2,000,000円 = 10,000,000円 - 12,000,000円)、合併により増加した資本金(この設例では0円)及び抱合せ株式の当該合併の直前の帳簿価額(12,000,000円)を減額した金額(12,153,400円)を、利益積立金額として当社が引き継ぎます(法令9①二)。 これにより、当社の無対価合併時の法人税上の仕訳は、次のとおりです。 〈X1年4月1日〉   4 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 会計上の特別損益に計上された「抱合せ株式消滅差益」10,153,400円は、上記3より、法人税上は課税所得に算入されず、この設例では益金不算入として減算調整します(この設例とは反対に「抱合せ株式消滅差損」の場合には、損金不算入として加算調整となります)。 X2年3月期 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉   (了)

#No. 462(掲載号)
#前原 啓二
2022/03/24

2022年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】

2022年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】   史彩監査法人 公認会計士 西田 友洋   Ⅵ LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い   2021年3月5日にLIBOR運営機関であるICE Benchmark Administrationより、一部を除き、LIBORについて、2021年12月をもって公表を停止することが公表された。そして、LIBORが停止された場合に、ヘッジ会計の取扱いをどのようにするのかが論点として挙げられる。 そこで、ASBJより、2020年9月29日に実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(以下、「LIBOR取扱い」という)」が公表され、2022年3月17日に、適用期間の延長等のため、改正が行われた。 【用語(LIBOR取扱い4(3)~(5))】   1 適用範囲 LIBOR を参照する金融商品について金利指標を置き換える場合に、その契約の経済効果が金利指標置換の前後で概ね同等となることを意図した金融商品の契約上のキャッシュ・フローの基礎となる「金利指標を変更する契約条件の変更のみが行われる金融商品」及び「この契約条件の変更と同様の経済効果をもたらす契約の切替(既存の契約をその満了前に中途解約し、直ちに新たな契約を締結すること)に関する金融商品」が適用範囲となる。また、LIBOR取扱い公表後に、新たにLIBOR を参照する契約を締結する場合、その金融商品も適用範囲に含まれる(LIBOR取扱い3、4)。 なお、LIBOR取扱いは、LIBOR を対象としているが、LIBOR 以外の金利指標でも、金利指標改革に伴い公表停止が見込まれる場合には、当該金利指標を参照している金融商品についても、LIBOR取扱いを参考にすることが考えられる(LIBOR取扱い28)。 【LIBOR適用対象の例(LIBOR取扱い30、31、32、33)】 (※1) 金融リスクのみにさらされている金融商品だけでなく、固定金利と変動金利を交換する通貨スワップ(金利通貨スワップ)のように商品性として為替リスクも包含する金融商品の契約条件の変更又は契約の切替も含む。 (※2) LIBOR取扱いの適用対象外の金融商品については、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」及び企業会計審議会「外貨建取引等会計処理基準(以下、「外貨基準」という)」等が適用される。 (※3) スプレッドの変更が行われた場合、LIBOR と後継の金利指標の差分を調整するためのスプレッド調整であるのか、信用リスクのスプレッドの変更であるのかの判断が難しいことも想定される。経済効果が概ね同等となることを意図したものであるか否かの判断にあたっては、一律に定量的な分析が求められるわけではなく、定性的な分析を行うことが想定されている。   2 LIBOR取扱いにおける会計処理 LIBOR取扱いにおいては、「金利指標置換前」、「金利指標置換時」、「金利指標置換後」と3つの時点、それぞれについて特例的な会計処理を定めている。 (1) 金利指標置換前 ① 金利指標改革に起因する契約の切替 金利指標改革に起因する契約の切替が行われたときであっても、ヘッジ会計を終了又は中止せずに、ヘッジ会計の適用を継続することができる(LIBOR取扱い5)。 ② 予定取引 ヘッジ対象である予定取引が実行されるかどうかを判断するにあたって、金利指標置換前においては、ヘッジ対象の金利指標が、金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとみなすことができる(LIBOR取扱い6)。 ③ ヘッジ有効性の評価 ④ 包括ヘッジ 包括ヘッジを適用する場合、金利指標置換前においては、個々の資産又は負債のリスクに対する反応とグループ全体のリスクに対する反応が、ほぼ一様であると認められなかった場合であっても、包括ヘッジを適用することができる(LIBOR取扱い9)。 例えば、個々の資産又は負債の時価の変動割合又はキャッシュ・フローの変動割合が、ポートフォリオ全体の変動割合に対して上下10%の範囲内にあるかどうかにより、個々の資産又は負債はリスクに対する反応がほぼ一様であるかどうかを判断している場合、個々の資産又は負債の時価の変動割合又はキャッシュ・フローの変動割合が、ポートフォリオ全体の変動割合に対して上下10%の範囲外となった場合であっても、包括ヘッジの適用を継続することができる(LIBOR取扱い44)。 ⑤ 時価ヘッジ 金利指標置換前においては、繰延ヘッジを適用する場合について定めた上記③及び④と同様の取扱いとすることができる(LIBOR取扱い10)。 ⑥ 金利スワップの特例処理 金利スワップの特例処理を適用する場合、金利スワップの特例処理の適用条件のうち以下の条件を満たしているかどうかの判断にあたって、金利指標置換前においては、ヘッジ対象及びヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとみなすことができる(LIBOR取扱い11)。 金利スワップの特例処理の適用条件の1つである「金利スワップの契約期間とヘッジ対象資産又は負債の満期がほぼ一致していること」の条件については、当初契約時に金利スワップの契約期間とヘッジ対象資産又は負債の満期がほぼ一致しているかどうかの判断を行うことが想定されている。 例えば金利スワップの契約の切替が発生した場合には、金利スワップの新たな契約期間とヘッジ対象の満期が一致しないことが考えられるが、金利スワップとヘッジ対象の残存期間が同一であれば、当該条件を満たすとみなすことができると考えられる(LIBOR取扱い47)。 ⑦ 振当処理 振当処理を適用する場合、金利指標置換前においては、円貨でのキャッシュ・フローが固定されているかどうかの判断にあたって、ヘッジ対象及びヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとみなすことができる(LIBOR取扱い12)。 (2) 金利指標置換時 ① 金利指標改革に起因する契約の切替 金利指標改革に起因する契約の切替が行われたときであっても、ヘッジ会計を終了又は中止せずに、ヘッジ会計の適用を継続することができる(LIBOR取扱い5)。 ② 繰延ヘッジ 当初のヘッジ会計開始時にヘッジ文書で記載したヘッジ取引日(開始日)、識別したヘッジ対象、選択したヘッジ手段等を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(LIBOR取扱い13)。 ③ 時価ヘッジ 上記②と同様の取扱いとすることができる(LIBOR取扱い10)。 (3) 金利指標置換後 ① 金利指標改革に起因する契約の切替 金利指標改革に起因する契約の切替が行われたときであっても、ヘッジ会計を終了又は中止せずに、ヘッジ会計の適用を継続することができる(LIBOR取扱い5)。 ② 繰延ヘッジ 事後テストに関するLIBOR取扱い第8項の規定(上記(1)③《事後テスト》)を適用していたか否かにかかわらず、金利指標置換時以後、同項の取扱いを適用し、2024年3月31日以前に終了する事業年度までヘッジ会計を継続することができる。また、同項の取扱いを継続している間、再度金利指標を置き換え、ヘッジ文書の記載を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(LIBOR取扱い14)。 ③ 包括ヘッジ 金利指標置換前においてLIBOR取扱いの適用範囲に含まれる金融商品を含むグループをヘッジ対象として包括ヘッジを適用していた場合、包括ヘッジに関するLIBOR取扱い第9項(上記(1)④参照)の規定を適用していたか否かにかかわらず、金利指標置換時以後、同項の取扱いを適用し、2024年3月31日以前に終了する事業年度まで包括ヘッジの適用を継続することができる。また、同項の取扱いを継続している間、再度金利指標を置き換え、ヘッジ文書の記載を変更したとしても、包括ヘッジの適用を継続することができる(LIBOR取扱い18)。 ④ 時価ヘッジ 金利指標置換後においてはLIBOR取扱い第14項、第15項、第16項及び第18項(上記②及び③参照)の取扱いと同様の取扱いとすることができる(LIBOR取扱い10)。 ⑤ 金利スワップの特例処理 金利指標置換前においてLIBOR取扱いの適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段として金利スワップの特例処理を適用していた場合、金利スワップの特例処理に関するLIBOR取扱い第11項(上記(1)⑥参照)の取扱いを適用していたか否かにかかわらず、金利指標置換時以後、同項の取扱いを適用し、2024年3月31日以前に終了する事業年度まで金利スワップの特例処理の適用を継続することができる。 また、この特例的な取扱いを継続している間、再度金利指標を置き換えたとしても、金利スワップの特例処理の適用を継続することができる(LIBOR取扱い19)。 なお、金利指標置換後に金利スワップの特例処理に係る金融商品指針第178項の⑤(※1)以外の要件が満たされている場合、2024年3月31日以前に終了する事業年度の翌事業年度の期首以降も金利スワップの特例処理の適用を継続することができる(LOBOR取扱い19)。 金利指標置換時が2024年3月31日以前に終了する事業年度の期末日までに到来していない場合であっても、2024年3月31日以前に終了する事業年度までに行われた契約条件の変更又は契約の切替が金利スワップの特例処理に係る金融商品指針第178項の⑤(※1)以外の要件を満たしているときは、2024年3月31日以前に終了する事業年度の期末日後に到来する金利指標置換時以後も金利スワップの特例処理の適用を継続することができる(LOBOR取扱い19-2)。 (※1) 金利スワップの受払条件がスワップ期間を通して一定であることの要件。 ⑥ 振当処理 LIBOR取扱い第19項及び第19-2項の取扱い(上記⑤参照)は、振当処理にも同様に適用することができる(LIBOR取扱い19-3)(※2)。 (※2) この場合、金利スワップの特例処理に関するLIBOR取扱い第11項の取扱い(上記(1)⑥参照)を振当処理に関する第12項の取扱い(上記(1)⑦参照)と読み替える。また、「金利スワップの特例処理に係る金融商品指針第178項の要件」を「振当処理に係る「外貨基準一 1、2(1)及び注解(注6)」、「会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」第3項及び第5項」の要件」と読み替える。   3 注記事項 LIBOR取扱いを適用することを選択した場合、以下を注記する必要がある(LIBOR取扱い20)。また、当該注記は、2024年3月31日以前に終了する事業年度まで行う必要がある(LIBOR取扱い21)。 連結財務諸表において注記している場合、個別財務諸表での注記は不要である(LIBOR取扱い20)。 LIBOR取扱いは、ヘッジ関係ごとにその適用を選択することができるため、一部のヘッジ関係にのみ適用する場合には、その理由を注記する(LIBOR取扱い20、23)。 なお、計算書類において、上記の注記は必ずしも求められていないが、重要性に応じて注記が必要かどうか検討することが考えられる。 【事例】三協立山(株)(決算日:2021年5月31日) 4 適用時期 公表日以後適用することができる。   Ⅶ 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い   2019年12月に成立した改正会社法により、上場株式を発行している株式会社が、取締役等の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないことが新たに定められた(会社法202の2)。これを受けてASBJでは、2021年1月28日に実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(以下、「株式取扱い」という)」を公表した。 また、以下の会計基準も改正されている。   1 適用範囲 会社法第202条の2に基づく取締役の報酬等として株式を無償交付する取引を対象としている(株式取扱い3)。また、当該取引は、「事前交付型」と「事後交付型」が想定されている(株式取扱い4(7)(8))。 【用語】   2 会計処理 会社法第202条の2に基づく取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、ストック・オプションと類似しているため、ストック・オプション基準に準じて会計処理を行う(株式取扱い38)。 一方、会社法第202条の2に基づく取締役の報酬等として株式を無償交付する取引には、「事前交付型」と「事後交付型」があるため、株式が交付されるタイミングが異なる点や、事前交付型において、株式の交付の後に株式を無償で取得する点については、取引の形態ごとに異なる会計処理を行う(株式取扱いの公表に当たって ■会計処理)。 (1) 事前交付型の会計処理 事前交付型の会計処理について、「新株発行」の場合と「自己株式の処分」の場合に分けて規定されている(株式取扱い5~14、40、42、46)。 (※) 「没収」とは、事前交付型において、権利確定条件が達成されなかったことによって、企業が無償で株式を取得することが確定することをいう(株式取扱い4(16))。 (2) 事後交付型の会計処理 事後交付型の会計処理について、「新株発行」の場合と「自己株式の処分」の場合に分けて規定されている(株式取扱い15~18)。   3 注記事項 会計処理はストック・オプション基準に準じているため、注記についてもストック・オプション基準及びストック・オプション指針を基礎として、注記が求められている(株式取扱い52)。 (1) 注記事項 年度の財務諸表において、以下の事項を注記する(株式取扱い20)。 注記に関する具体的な内容や記載方法、株式取扱いに定めのない会計処理に係る注記については、ストック・オプション指針第27項、第28項(2)、第29項、第30項、第33項及び第35項に準じて注記を行う(株式取扱い21)。 (2) 1株当たり情報 (3) 関連当事者注記 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、資本取引の側面よりも報酬等としての側面を重視して、関連当事者との取引に関する開示は要しない(株式取扱い55)。 (4) 後発事象注記 上場会社が取締役等の報酬等として株式を無償交付することを、2022年3月期の定時株主総会で決議する場合には、重要な後発事象の注記が必要ないかどうか検討する必要がある。   4 適用時期 改正会社法の施行日である2021年3月1日以後に生じた取引から適用する。なお、その適用については、会計方針の変更には該当しない(株式取扱い23)。      Ⅷ その他の記載内容に関連する監査人の責任   2020年11月6日に監査基準の改訂が企業会計審議会より公表された。改訂の内容は、以下のとおりである(監査基準の改訂について一)。 また、監査基準の改訂を受けて、2021年1月14日に日本公認会計士協会より、監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任(以下、「監基報720」という)」の改正が行われた。   1 監基報720の対象 (1) 会社法及び金融商品取引法 会社法及び金融商品取引法関係の書類で、監基報720の対象となる書類は、監査報告書が発行される以下の書類である(日本公認会計士協会「監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」の適用を踏まえた会社法監査等のスケジュールの検討について」、監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」Q1-8)。 一方、監査報告書が新たに発行されない以下の書類については、監基報720の対象とならない。 (※1) 監査対象項目(連結財務諸表、財務諸表、注記)及び監査報告書以外の情報が監基報720の対象となる(「その他の記載内容」に該当する)。 (※2) 目論見書については、対応する有価証券届出書に準じて判断する。 (2) 統合報告書等 統合報告書等における監基報720の対象となるかどうかは、以下のとおりである(日本公認会計士協会「「その他の記載内容」に関する監査人の作業内容及び範囲に関する留意事項」Ⅱ1)。 (3) 英文アニュアルレポート等 統合報告書等における監基報720の対象となるかどうかは、以下のとおりである(日本公認会計士協会「「その他の記載内容」に関する監査人の作業内容及び範囲に関する留意事項」Ⅱ2)。   2 監基報720の改正内容 監基報720の改正により改正されていない点もある。そこで、以下では、従来の監基報720から改正されていない点と主な改正点を解説する。 (1) 改正されていない点 (2) 主な改正点   3 監査報告書 監基報720を適用した監査報告書の事例は、以下のとおりである。また、日本公認会計士協会の「監査・保証実務委員会実務指針第85号「監査報告書の文例」」に文例が記載されているため、参照いただきたい。 【事例1】三菱UFJ証券ホールディングス(株) 有価証券報告書/連結(決算日:2021年3月31日) 【事例2】(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ 計算書類/個別(決算日:2021年3月31日)   4 会社の留意点 監基報720は監査人が守るべきルールであるが、会社の決算においても留意すべき点がある。そして、計算書類と有価証券報告書の場合で、留意すべき点が異なる。   5 適用時期 監査基準の改定及び監基報720の改正は、原則、2022年3月31日以後終了する事業年度から適用する。ただし、2021年3月31日以後終了する事業年度から早期適用することができる。 (了)

#No. 462(掲載号)
#西田 友洋
2022/03/24
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