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収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第86回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第86回】 (最終回)   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也     〈Q12〉 収益の計上額と金銭債権の貸倒れの見込み 売主であるA社は、B社にA社の商品を販売した際、B社の財政状況が悪化していることを把握していた。A社は、この取引に係る収益を計上する際にその貸倒れ見込み額を収益の額から減額して計上することは認められるか。 〈A12〉 収益を計上する際にその貸倒れ見込み額を収益の額から減額して計上することは認められない。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 資産の販売等に係る収益の額として、法人税法22条の2第1項又は第2項の規定により、益金の額に算入する金額は、別段の定め(法人税法22条4項を除く)があるものを除き、その販売や譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額である(法法22の2④)。 この場合の引渡しの時における価額又は通常得べき対価の額は、資産の販売等につき次の事実が生じる可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合における価額である(法法22条の2⑤)。 ところで、収益認識会計基準によれば、契約において、顧客と約束した対価に変動する可能性のある部分(変動対価)が含まれる場合には、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積もることになる。契約上の対価の金額をそのまま収益の額(取引価格)とするのではなく、値引きやリベートの取決め、返品権の存在などを織り込んで算定することになる(基準8、17(3)、50、指針23等)。 場合によっては貸倒れの見込みも考慮し、貸倒れの可能性がある部分を収益として計上しないというのであれば(指針設例2参照)、法人税法の立場からするとドラスティックな印象を受ける。 ただし、収益認識会計基準は、企業が顧客から「受け取る」と見込んでいる金額で収益を認識するのではなく「権利を得る」と見込む対価の額で認識する(基準8、16、47)ものである。IFRSの「結論の根拠」の説明も参考にするならば、かかる対価の額に顧客の信用リスク(債務不履行リスク)を反映させるものではないようである。企業が顧客から回収できないおそれのある金額についての調整を反映しないという意味において、総額で収益を認識するということである(IFRS/BC259~261)。 ただし、対価の回収可能性を評価するに当たって、企業が顧客に価格の引下げを提供する又は黙示的に価格を譲歩する可能性があるため、対価に変動性があると考えられる場合には、企業が権利を得ることとなる対価の額は契約に記載される価格よりも低くなることがありうる(企業会計基準委員会事務局・公益財団法人財務会計基準機構編『詳解 収益認識会計基準』22頁(中央経済社2020)、秋葉賢一ほか「新会計基準・改正税法から読み解く収益認識の実務論点」企業会計70巻8号30頁、IFRS/BC190~194参照)。 この意味で貸倒れの可能性も間接的には考慮事項になりうるようである(指針設例2参照)。 なお、収益認識会計基準における収益認識のための5つのステップのうち(本連載第1回)、ステップ1「契約の識別」では、「顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと」などの要件を満たす顧客との契約を識別するところ、「当該対価を回収する可能性の評価にあたっては、対価の支払期限到来時における顧客が支払う意思と能力を考慮する」こととされている(基準19、118)。 見積もられた変動対価の額の全てが直ちに収益から減額されるわけではないことにも注意が必要である。見積もられた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めることになり(基準54)、それ以外の部分を取引価格に含めない、言い換えれば、収益の額から減額することになる。 いずれにしても、法人税法の立場からすれば、取引価格の算定に見積りの要素が入ると、同様の取引であっても個々の企業によって収益の額が異なることにつながり、ひいては課税の公平に反するのではないかという懸念が生じる。企業が顧客に価格の引下げを提供する又は黙示的に価格を譲歩する可能性があるという理由で収益の計上額を減額することも、法人税法としては受け入れ難いであろう。 少なくとも、流出するものの時価に焦点を当てて収益を計上するのが法人税法の考え方であると理解する場合には(本連載第45回)、直接的であるにせよ、間接的であるにせよ、貸倒れや返品の見込みの影響を考慮してその分を収益の額(取引価格)から減額するような処理も直ちには認め難いであろう。 結局、貸倒れの見込みについて、法人税法においては、基本的に貸倒引当金(法法52)の問題として捉えられることになり、収益の計上額を減額する要素として考慮されることはないと考える(泉絢也「法人税法と収益認識会計基準(2)-法人税法22条の2第4項の『価額』・『通常得べき対価の額』-」千葉商大紀要58巻3号87頁以下参照」)。   連載の終了に当たって 本連載では、収益認識会計基準の公表を契機として創設された法人税法22条の2及び関係する通達の内容や疑問点を中心に考察を行ってきた。管見の限り、法人税法22条の2や関係する通達をめぐって、実務上、多くの混乱が起きているというわけでもなく、納税者と課税庁との対立や学説間の対立などが頻発しているというわけでもないようである。むしろ、不気味なほど静かであるといってもよい。 なるべく従前の取扱いと変わらないように配慮するという立法的試みが功を奏したのか、関係する通達が整備されていたことに起因するのか、その理由は必ずしも明らかではない。 もっとも、本連載でたびたび指摘してきたように、関係法令を読んでもその規定内容がはっきりと理解できない部分も少なくない。また、関係する通達の内容を見る限り、その法的根拠に疑問を提起せざるを得ないものも存在する。 よって、今後、申告実務、課税実務及び争訟実務において、法人税法22条の2及び関係する通達をめぐって様々な紛争が生じる可能性は十分にある。 本連載は、法人税法22条の2及び関係する通達の基本的な内容や基底にある考え方を理解するために有用であるほか、上記のような紛争を解決する場面においても有益な知見や情報を提供するものであると考える。本連載における考察が申告納税主義の理念の実現にいくばくかでも寄与することを期待したい。 (連載了)

#No. 485(掲載号)
#泉 絢也
2022/09/08

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第45回】「遺言書の効力と遺産分割協議、遺留分における留意点」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第45回】 「遺言書の効力と遺産分割協議、遺留分における留意点」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) シニアマネジャー 税理士 佐藤 達夫   相談内容 私はX社(製造業)の社長で、X社を30歳で起業し、X社の事業の拡大に努めてきました。5年前に、長男を後継者として指名し、X社のすべての株式を相続時精算課税制度を活用して贈与するとともに、社長を長男に譲りました。現在は、相談役として社長である長男のサポートを行っています。 私も70歳になったため、所有している財産の承継を考えており、遺言書の作成を検討しています。遺産分割にあたって、遺言書の作成の有無などにより、どのように遺産分割へ影響するか懸念しているのですが、留意事項がありましたらご教示ください。 私の親族関係、財産の内容は、次のとおりです。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 遺言書の有無による各人の相続財産への影響 過去に長男への多額の生前贈与(特別受益)があることを考慮すると、遺言書の有無や特別受益の持戻し免除の有無により、相続人間で相続する財産の額が変わる可能性があります。 仮に、遺言書により、長男へ自宅(土地・建物)、長女へ現金預金を相続させると定めた場合には、長男・長女の相続財産や相続税額は、次のとおりとなります。 (注1) 遺留分侵害額の判定 ・遺留分算定の基礎となる財産:200,000千円(相続財産)+200,000千円(生前贈与財産)(注2)=400,000千円 ・遺留分額:400,000千円×1/4(1/2×1/2)=100,000千円 ・遺留分侵害額:100,000千円-100,000千円(長女の相続財産)=0円 ➡ 遺留分の侵害なし (注2) 生前贈与財産は、原則として相続開始前10年間にされた贈与で特別受益に該当するものに限ります(例外については後記[3]の(注1)をご参照ください)。 (注3) 長男の具体的相続分 ・みなし相続財産:(200,000千円(相続財産)+200,000千円(贈与財産))×1/2=200,000千円 ・長男の具体的相続分:200,000千円-200,000千円(特別受益の持戻し(注4))=0円 (注4) 長男が過去に贈与により取得した財産は、特別受益として相続開始時の価額により持戻しがされます。   [2] 遺産分割・特別受益・持戻し免除について 相続財産は、遺言書がある場合には、遺言書に基づいて相続人又は受遺者に承継されます。そのため、遺言書により特定の相続人に承継させることを定めた財産は、原則として遺産分割協議の対象外とされています。ただし、そうした財産であっても、相続人全員の同意があれば、遺言書の定めによらず、相続人間の協議により遺産分割の対象とすることも可能です。 相続人間の協議により遺産分割が成立しない場合には、家庭裁判所へ遺産分割の調停を求めることができます。この調停では、共同相続人間の公平を図るため、次のとおり、みなし相続財産を算出し、各相続人の具体的な相続分を算出します(民法903条1項)。 なお、この生前贈与は、特別受益として婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本としての贈与に該当するものに限られます。また、その価額は、生前贈与財産が相続開始時においてなお原状のままであるものとみなした価額になります(民法904条)。つまり、相続開始時点の価額になります。 また、みなし相続財産の計算には、過去の生前贈与(特別受益)を相続財産に足し戻す(持ち戻す)こととされていますが、被相続人の意思により、持ち戻すことを免除することも可能です(民法903条3項)。この持戻し免除の制度は、特定の相続人に多くの財産を残してあげたいという被相続人の意思を尊重するという趣旨によります。 持戻し免除の意思表示は上記のとおり各相続人の具体的相続分の算出において適用されますが、遺留分の算出においては、持戻し免除の意思表示は考慮されません。   [3] 遺留分制度について 遺留分制度は、被相続人の有していた相続財産について、一定の相続人に一定割合を承継することを保障する制度です(民法1042条~1049条)。なお、遺言書があった場合においても、相続人から遺留分の権利を奪うことはできません。 (1) 遺留分権利者 兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属) (2) 遺留分の割合 ① 総体的遺留分 ② 個別的遺留分 相続人ごとに、上記①総体的遺留分の割合に法定相続分を乗じた割合 (3) 遺留分侵害額の算定方法 (注1) 具体的には、たとえば、次のような贈与が含まれます。 ・相続人以外の第三者に対し、相続開始前1年間にされた贈与 ・相続人に対し、相続開始前10年間にされた贈与(特別受益に当たるものに限る) ※ただし、贈与の双方の当事者が他の相続人に損害を加えることを知って贈与をされた場合には、1年間・10年間にそれぞれ限定されません。 (注2) 特別受益(生前贈与)の価額は、生前贈与財産が相続開始時においてなお原状のままであるものとみなした価額になります(民法904条)。   [4] 結論 ご相談の事例では、ご長男に承継される相続財産は、遺言書の有無によって大きく変わります。事業の承継者であるご長男へ特定の財産を承継させたい場合には、遺言書の作成や特別受益の持戻し免除の意思表示をするとともに、ご生前に長男・長女へ財産承継のお考えの趣旨をお伝えし、長男・長女のご理解を得ておくことが重要です。 遺言書は、弁護士等の法律の専門家と相談のうえ、作成されることをお勧めします。   (了)

#No. 485(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2022/09/08

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第79回】「千代田区宅地評価額事件」~最判平成15年6月26日(民集57巻6号723頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第79回】 「千代田区宅地評価額事件」 ~最判平成15年6月26日(民集57巻6号723頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 485(掲載号)
#菊田 雅裕
2022/09/08

〔顧問先を税務トラブルから救う〕不服申立ての実務 【第17回】「審査請求事件に係る国税不服審判所の内部事務」

〔顧問先を税務トラブルから救う〕 不服申立ての実務 【第17回】 「審査請求事件に係る国税不服審判所の内部事務」   公認会計士・税理士 大橋 誠一   1 議決までの手続 (1) 事件検討表の作成 審査請求書が提出されて、形式審査の結果、却下事件ではないと判断された場合には、担当審判官等の指定決裁を経て実質審理の段階に入る。 まず、担当審判官は、審査請求書や原処分庁から徴求した原処分関係資料を基に、以下の諸点(国税不服審判所支部によって多少異なる)をまとめた「事件検討表」を作成することで事案の概要を把握する。 (2) 当初合議の開催 事件進行の初期の段階で、担当審判官・参加審判官2名からなる合議体(審判官・副審判官)による当初合議を開催して、職権調査方針、主張整理のための求釈明事項や証拠収集のための質問事項の協議などを行う。 当初合議に限らず、合議の場には、合議体のほか、担当審判官を補佐する分担者(審査官)が出席するほか、法規審査担当審判官・法規審査担当者(副審判官又は審査官)がオブザーバー参加することが多い。 また、国税不服審判所支部によっては、合議体に弁護士の民間出身審判官がいない場合には、審判部に所属する弁護士出身審判官がオブザーバー参加して意見を述べることもある。 合議における議決権はあくまで合議体の3名にしか存しないが、実際には、数名のオブザーバーが合議に参加して意見を述べることから、合議の場の雰囲気としては、合議体とオブザーバーに明確な発言権の相違はないことが多い。 そして、合議体と法規審査部門で処理方針に違いがあっても、議決の前の段階から法規審査部門の関与があることによって、比較的早期に処理方針の統一が図られることが多いようである。 (3) 職権調査 原処分庁である税務署(又は国税局の担当部署)に臨場して税務調査時の収集資料を確認することはほとんどの事件で必須の手続となるほか、必要に応じて、関係人に対する質問調査、現地視察、関連する裁判の傍聴などを行う。 また、多くのケースで請求人面談が行われ、主張と審査請求人が知り得る事実関係の確認を行う。 (4) 中間合議・事件検討会・未済事件説明会 国税不服審判所支部によって会議体の名称や運用が異なることがあるが、筆者が所属していた当時の大阪支部は、 によって、国税不服審判所の判断形成が行われていた。 (5) 審理手続終結合議・最終合議 国税不服審判所としての結論(主文と理由の骨子)が固まった時点で、訴訟でいう結審に当たる審理手続終結のための手続に入り、合議体としての結論であり裁決書原案となる「議決書」の文言修正や数字のチェックを行うための最終合議が開催される。 支部によっては、この段階で支部所長に対して報告する機会が設けられる(大阪支部では、所長室において、担当審判官が所長の目の前に着座して議決書の報告を行う慣行があった)。 そして、議決書に担当審判官と参加審判官が署名押印の上、「議決報告書兼裁決決議書」とともに主張書面・証拠書類等の一件書類が法規審査部門に回付される。   2 議決後の手続 (1) 法規審査 法規審査担当者は議決の前から合議にオブザーバー参加しており、議決内容(主文と理由の骨子)を把握しているのが通常であるが、改めて以下の視点から審査が行われる。 特に、基幹支部といわれる東京・大阪・名古屋・関東信越・広島の各支部においては、裁判官又は検察官出身の審判官が法務省から出向しており、その者を経由して審査される。 また、他の支部においても、必要に応じて本部のリーガル担当審判官(検察官出身)や税目別の審判官と連携の上で文書審査が行われる。 (2) 本部が関与する事件 原則として、各々の審査請求事件は、場所的に管轄する国税不服審判所支部に係属して、その支部所長(首席審判官)が決裁するため、支部の中で審理手続は完結する。 しかし、法令解釈の全国統一性などの行政不服審査ならではの要請もあり、例えば以下のような事件については、本部が主体的に関与することや、処理方針の決定につき本部の了解を必要とする。 (3) 裁決 法規審査を経た裁決書案は、部長審判官(沖縄支部は管理担当審判官)・次席審判官(東京・大阪・名古屋のみに配置)を経て、本部所長から裁決権が委任されている支部所長(首席審判官)が決裁する。 支部所長の属性(出身)や個性、支部の規模にもよるだろうが、筆者の経験の限りでは、報告だけ受けて決裁印を押印するといった形式的な関与ではなく、熟読の上、細部にわたり字句修正を行ったり、証拠に遡って事実関係を確認したりと、一般的なイメージよりも関与の度合いが深かった印象がある(大阪支部の所長が裁判官出身者であるからかもしれない)。   3 裁決後の手続 (1) 裁決番号 各裁決は、例えば「大裁(諸)令3第10号・令和3年10月1日裁決」と記載されるが、この例では、「令和3年10月1日に大阪支部所長が決裁した令和3事務年度の(令和3年7月1日以後)10番目に発出された、所得税・法人税以外の税目(相続税・贈与税・消費税・登録免許税など)の裁決」であることが表現されている。 (2) 合議体・法規審査・管理課による最終チェック 主文(「棄却」「取消し」といった結論)が変わらないとしても(変わるようであれば合議体に差戻しになる)、法規審査や所長決裁時に理由の記載の字句修正が入ることがある。 そのような場合を含めて、 などについて、改めて全般的に各方面からのチェックが入る。 (3) 裁決書の発送 裁決書原本は国税不服審判所に保管され、管理課管理係の審査官がその謄本(全部コピー)に「裁決書原本に相違ない」旨の支部首席審判官の証明印を付して、配達証明郵便により審査請求人と原処分庁の双方に発送する。 国税不服審判所は、審査請求書を受領してから裁決書を発送するまでの期間を1年以内に済ませる事件の割合を全体の95%以上とする業績目標を設定し、その達成状況を毎年度公表しているが、1年を経過する日(内部ではこれを「誕生日」と例えることがある)が迫っていると、法規審査担当者や管理係の審査官などの一連の手続の後工程を担う者は、期限管理に迫られることになる。 実際に、筆者が代理人を務めた事件において、12月23日に審査請求書を提出し、裁決書が送達されたのが翌年12月23日(裁決日は12月17日)だったことがある。 (4) 審理手続終結通知から裁決書発送までの期間 審理手続終結通知を受領すると、意見書の提出、口頭意見陳述の申立て、証拠書類の提出、閲覧請求などをすることができなくなる。 それが故に、通知を受領すると「もうすぐ裁決書が届くのだろう」という期待を抱くことも理解できる。 国税不服審判所としては、審理手続の終結から裁決書発送までの期間をおおむね2ヶ月以内に収め、その間に「議決・法規審査・裁決・裁決書チェック・裁決書謄本発送」の各手続を行うことになる。 (了)

#No. 485(掲載号)
#大橋 誠一
2022/09/08

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2022年8月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2022年8月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年8月1日から8月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 新会計基準関係 企業会計基準委員会から、「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第43号)が公表されている。 「金融商品取引業等に関する内閣府令」における電子記録移転有価証券表示権利等の発行・保有等に係る会計上の取扱いを示すものである。 2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。 ただし、実務対応報告の公表日(2022年8月26日)以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することができる。   Ⅲ 人権尊重のためのガイドライン(案)関係 経済産業省が「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」を公表し、意見募集を行っている。 欧米を中心に人権尊重を理由とする法規制の導入が進み、企業として取組の強化も求められていることもあり、わが国において、サプライチェーンにおける人権尊重の取組に関する業種横断的なガイドラインを作成するものである。   Ⅳ IPO等に関する見直しの方針関係 東京証券取引所が「IPO等に関する見直しの方針について」を公表している。 新規上場の品質を維持しながら、新たな産業の担い手となるスタートアップに多様な新規上場手段を提供する観点から、IPO等に関する諸施策について、順次、検討を進める。   Ⅴ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 保証業務実務指針3000研究文書「「我が国におけるサステナビリティ及びその他の拡張された外部報告(EER)に対する保証業務に関するガイダンス(試案)」に係る研究文書」(内容:サステナビリティ及びその他の拡張された外部報告(EER)に対する保証業務の実施にあたって参考となるもの) ② 「監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」の改正について」(公開草案)(内容:開示書類等で監査報告書を開示せず、監査を受けている旨の記載を企業が行う場合の留意点などを示す)   Ⅵ 監査役等の監査関係 監査役等の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「監査役監査基準」等の改定(内容:2022年9月施行の「株主総会資料の電子提供制度」に対応するもの) ② 2022年版「監査役監査と監査役スタッフの業務」の公表(内容:会社法改正及びコーポレートガバナンス・コード適用開始後に定着した事例や実態を反映するものなど) (了)

#No. 485(掲載号)
#阿部 光成
2022/09/08

ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第30回】「ハラスメントが犯罪行為に該当し得る場合の対処法」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第30回】 「ハラスメントが犯罪行為に該当し得る場合の対処法」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社の男性社員(「本件男性社員」といいます)が、勤務時間中に当社の女性社員(「本件女性社員」といいます)の社用アドレスに何度もメールを送信して交際を迫ったり、当社のビルの前などで本件女性社員を待ち伏せしてつきまとうなどしています。メールの中には、「君と付き合えないなら、君を殺して僕も死ぬ。」といった内容のものもあり、本件女性社員は精神的に参って業務に支障が出ています。 当社は、本件男性社員に対して、何度も注意・指導を行ったり、懲戒処分を科したりしましたが、本件男性社員のこれらの言動が止まる気配はありません。当社はどのように対応すべきなのでしょうか。 【Answer】 本件男性社員を懲戒解雇処分としたり、自宅待機処分とすることなどが考えられます。また、本件女性社員の身体に危害が加えられるおそれもあることから、警察に相談することなどが考えられます。 ● ● ● 解 説 ● ● ●   1 セクハラと犯罪行為 セクハラとは、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることを指し(男女雇用機会均等法11条1項)、本件男性社員の言動はこれに該当し得る。 会社は、労働者に対して雇用契約上の安全配慮義務(労働契約法5条)を負担し、かつ、男女雇用機会均等法11条1項に基づき、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じるべき事業主としての措置義務を負う。よって、会社は、本件男性社員の言動について、これらの義務を負うことになる。 本件において特筆すべき点は、本件男性社員の言動がセクハラの域に留まらず、以下等のとおり、犯罪行為に該当する可能性があるという点である。 このように、ハラスメントが犯罪に該当する可能性がある場合については、会社としては、以下の点に注意して、対策を講じるべきである。   2 本件男性社員に対する措置 会社は、本件男性社員に対して、何度も注意・指導を行ったり、懲戒処分を科したりしているが、本件男性社員は問題の言動を止めないということであるので、本件男性社員を懲戒解雇に処することを検討すべき段階にあると言える。また、本件男性社員が会社内に立ち入らないように、本件男性社員に対して自宅待機命令を発することも考えられる。 もっとも、解雇や自宅待機処分によっても、本件男性社員の言動が止まない可能性があるため、以下の対策も検討するべきである。   3 警察への相談等 会社としては、まず早急に警察に相談すべきである。警察への相談におけるポイントは以下のとおりである。 (1) 相談先 本件男性社員・本件女性社員ともに会社の従業員であり、また、本件男性社員によるつきまとい行為が会社の周辺で行われていることなどから、まずは、会社の所在地を管轄する警察署に相談することが考えられる。 また、本件男性社員が本件女性社員を尾行するなどして本件女性社員の自宅の所在地を把握している可能性があることから、本件女性社員の自宅を所管する警察署に相談することも考えられる。 (2) 相談方法 警察に対して状況を的確に連携し早急な対応を促すという目的と、会社が安全配慮義務等を尽くしていることの裏付けを残すという観点に照らすと、警察への相談は書面(被害届等)を提出することにより行うことが望ましい。 もっとも、本件男性社員から本件女性社員へのメールの中に「君を殺して僕も死ぬ。」といったものがあることなどから、かなり差し迫った状況にあると評価できる。よって、取り急ぎ口頭で相談を行うということも考えられるが、その場合であっても、相談を行った日時や警察からのアドバイスの内容等を内部的な記録に残しておくべきである。 (3) 本件男性社員への連絡 更に、本件男性社員に対して、警察に相談したことを伝えて警告を発することにより、本件男性社員の問題行為が止む可能性がある。警察から連絡してもらった方がよい場合や、連絡しない方がよい場合もあるため、具体的には警察に相談して進めるべきであろう。   4 家族への連絡 本件男性社員は、会社からの度重なる注意・指導や懲戒処分にもかかわらず、本件女性社員に対する問題行為を止める気配がない。このような場合、本件男性社員が合理的な判断をすることができない精神状態にある可能性を考慮する必要がある。本件男性社員が合理的な判断ができる精神状態にない場合、上記の警察への相談・本件男性社員への警告等を実施しても、本件男性社員によるメールの送信や、つきまとい行為が止まらない可能性がある。また、本件元社員の精神状態次第では、医療機関等での治療を要する可能性もある。 そこで、本件男性社員の履歴書や身元保証書等に記載された本件男性社員の家族に対して連絡をするという手段も考えられる(※)。 (※) 使用者は、労働者に不適任・不誠実な事柄があり、身元保証人の責任が発生するおそれがあるとき等は、身元保証人にその旨を速やかに通知しなければならないとされているので(身元保証法3条1号)、本件の状況においては、本件男性社員の身元保証人に連絡しなければならない状況であるともいえる。   5 会社のセキュリティ体制の整備 仮に本件男性社員を懲戒解雇処分としたり、自宅待機処分としたりした場合であっても、本件男性社員が会社のビルに侵入して本件女性社員に対して危害を加える可能性もある。この点、会社のビルにセキュリティゲートや警備員等のセキュリティ整備がなされている場合はともかくとして、このようなセキュリティ整備がない会社の場合、どこまで対応しなければならないかが問題となる。 この点、そのようなセキュリティが整備されたビルに転居することまで求められているわけではないと思われるが、例えば、本件女性社員に在宅勤務を認めるとか、遅い時間まで残業させないなどの配慮は必要になると思われる。 (了)

#No. 485(掲載号)
#柳田 忍
2022/09/08

《速報解説》 各府省庁公表の令和5年度税制改正要望が取りまとめられる~既存制度の延長・拡充が中心も一部時流に応じた抜本強化・新制度創設を要望~

《速報解説》 各府省庁公表の令和5年度税制改正要望が取りまとめられる ~既存制度の延長・拡充が中心も一部時流に応じた抜本強化・新制度創設を要望~   Profession Journal編集部   例年通り8月末から9月頭にかけて各府省庁からの税制改正要望が公表された。その内容については概ね既存制度の延長・拡充を求めるものが中心であるものの、時流に対応した抜本強化・新制度創設も一部見受けられる。 本稿では、これから本格化する令和5年度税制改正に向けた議論の下地となる各府省庁からの要望事項について、主なポイントを確認していきたい。 はじめに、経済産業省は、我が国経済の発展、国際競争力の向上などを念頭に、スタートアップ・エコシステムの抜本強化のための税制措置を要望している。 「スタートアップ・エコシステム」とは、グローバルにインパクトを生み出す起業家やスタートアップ、イノベーション企業が自律的、連続的に生み出される仕組みのこと。しかし、我が国では様々な課題がこの仕組みの好循環を阻害している現状があり、これを打破すべく4つの税制措置が要望事項として掲げられている。 まずその中の1つとして「ストックオプション税制の拡充」がある。現行制度においてもストックオプションの利便性・魅力を向上させ、スタートアップ企業の人材獲得に一定程度寄与している一方で、現行の要件等が実態に即していないとの指摘があることから、更なる利便性向上に向け、権利行使期間の延長その他の所要の措置を要望している。 また、同じくエコシステム抜本強化のために、「暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し」が要望されている。現在内国法人が有する暗号資産については、税務上、期末に時価評価し、評価損益は、課税の対象とされているところ、こうした取扱いは、キャッシュフローを伴う実現利益がない中で、継続して保有される暗号資産についても課税を求めるものであり、国内においてブロックチェーン技術を活用した起業や事業開発を阻害する要因として指摘されていることから、自己発行・自己保有の暗号資産については、期末時価評価課税の対象外とすることが要望されている。 なお、その他のエコシステム抜本強化のための要望としては、個人によるスタートアップ投資を促進するエンジェル税制の申請手続に係る所要の見直しや非上場株式を担保とする場合の納税猶予手続につき、株券によらない担保提供を可能とするための国外転出時課税制度に関する所要の措置が掲げられている。 上記エコシステム抜本強化以外の経産省の要望には、平成29年度税制改正により創設されたスピンオフ税制に関し、「スピンオフの実施の円滑化のための税制措置」の拡充が求められており、その内容は、事業切出しの手法の1つであるスピンオフについて、段階的に事業を切り出そうとする企業などが活用できるよう、スピンオフを行う企業に持分を一部残す場合についても、スピンオフの実施を円滑化するための所要の措置を講じることとなっている。 その他、来年の3月末で適用期限を迎える研究開発税制、DX投資促進税制の拡充及び2年延長に加え、現在の社会情勢を受けた半導体の供給制約・物価高騰等の影響による自動車産業の厳しい事業環境などを踏まえた車体課税の見直しも要望にあるほか、中小企業に関する要望には、昨今の自然災害頻発への事前対策強化として、来年の3月末で適用期限が到来する中小企業防災・減災投資促進税制の2年延長及び対象設備に耐震装置を追加する要望等が見受けられる。 次に金融庁からは、「資産所得倍増プラン」に関連する要望として、「NISAの抜本的拡充」等が掲げられている。令和2年度税制改正により2階建ての「新しい一般NISA」が令和6年1月より施行されるところ、今回、次のような刷新を行うという大胆な要望がされている。 その他金融庁は、昨年と同様に「金融所得課税の一体化」も要望しており、昨年の税制改正大綱においては「デリバティブ取引に係る金融所得課税の更なる一体化については、金融所得課税のあり方を総合的に検討していく中で、意図的な租税回避行為を防止するための方策等に関するこれまでの検討の成果を踏まえ、早期に検討する。」との記載もあったことから、今後の議論の動向も含めて注視したい。 次に国土交通省からは、高経年マンションが今後急激に増加することを背景に、「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置」の創設が要望されている。これは、管理計画認定マンションその他の一定の要件を満たすマンションについて、必要な修繕積立金が確保され、長寿命化に資する一定の大規模修繕工事が実施された場合に、そのマンションの建物部分について、大規模修繕工事が完了した翌年度分の固定資産税額を1/3減額する特例措置を、令和5年4月より2年間講じる内容となっている。 また同様に社会問題への対応の観点から、来年12月で適用期限を迎える「空き家の発生を抑制するための特例措置(3,000万円控除)」につき、売買契約等に基づき譲渡後一定期間内に耐震改修工事又は除却工事が行われる場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象とする拡充措置及び4年間の延長が要望されている。 ほかには文部科学省からの要望として、来年3月末が適用期限となる「教育資金一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」につき、2年の延長と非課税上限額の引上げ等の拡充が要望されているほか、厚生労働省の要望事項では、医業承継の後押しとなる「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置」につき、現行制度が来年9月末までの措置であるため3年延長とするとともに、更なる承継促進のため、移行期限の要件を緩和する要望が出されている。 (了)

#Profession Journal 編集部
2022/09/07

《速報解説》 内閣官房より「人的資本可視化指針」が公表される~今後、有価証券報告書で開示が求められる人的資本に関する項目への対応も記載~

 《速報解説》 内閣官房より「人的資本可視化指針」が公表される ~今後、有価証券報告書で開示が求められる人的資本に関する項目への対応も記載~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年8月30日、内閣官房の非財務情報可視化研究会から、「人的資本可視化指針」が公表された。 これは、人的資本の可視化への期待が高まる中、人的資本可視化指針は、特に人的資本に関する資本市場への情報開示の在り方に焦点を当てて、既存の基準やガイドラインの活用方法を含めた対応の方向性について包括的に整理した手引きとして編纂されたものである。 有価証券報告書における対応についても記載されている。 付録として、次のものが公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 主な内容は次のとおりである。 1 人的資本の可視化を通じた人的投資の推進に向けて 多くの投資家が、企業が将来の成長・収益力を確保するためにどのような人材を必要としていて、具体的にどのような取組を行っているか、人材戦略に関する経営者からの説明を期待している。 人材戦略が取締役会やCEO・CXOレベルで議論され、コミットされているか、かつ現場従業員の共感を得て浸透しているかは、企業にとっては戦略の強靱性を高める上で重要であり、投資家にとっては戦略の実現可能性を評価する重要な判断軸となる。 2 人的資本の可視化の方法 人的資本の可視化について、企業・経営者には、次のことが期待されている。 人的資本可視化指針は、投資家の関心が開示事項と長期的な業績や競争力との関連性にあることを踏まえ、まず、原則主義のフレームワークを参照し、自社の経営戦略と人的資本への投資や人材戦略の関係性(統合的なストーリー)を描くことを推奨しており、その上で、統合的なストーリーに沿って具体的な事項(定性的事項、目標、指標)を開示することが望ましいとしている。 「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの要素は有価証券報告書に新設が予定されるサステナビリティ情報の記載欄においても採用される方向となっており、人的資本についてもこの4つの要素を検討することが効率的である。 具体的開示事項の検討は、大きく、次の2つの類型に整理される。 3 可視化に向けたステップ 基盤・体制確立(取締役会・経営層レベルの議論、従業員との対話など)、可視化戦略構築(価値協創ガイダンスに沿った人的資本への投資や人材戦略の統合的ストーリーの検討など)について記載されている。 4 有価証券報告書における対応 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(2022年6月)において、次のことが示されている。今後、開示府令の改正を経て、有価証券報告書の記載事項として上場会社等の開示が求められていくこととなる。 人的資本可視化指針で示されたことを踏まえ、積極的に開示していくことが期待されている。 (了)

#阿部 光成
2022/09/02

《速報解説》 経産省、「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」及び「価値協創ガイダンス2.0」を公表~SX実現に向け、企業の長期的価値向上のための目標設定、戦略構築など具体的な取組示す~

 《速報解説》 経産省、「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」 及び「価値協創ガイダンス2.0」を公表 ~SX実現に向け、企業の長期的価値向上のための目標設定、戦略構築など具体的な取組示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年8月30日付けで(ホームページ掲載日は2022年8月31日)、経済産業省の「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」は、次の報告書を公表した。 「サステナビリティ」(S)への対応は、企業が対処すべきリスクであることを超えて、長期的かつ持続的な価値創造に向けた経営戦略の根幹をなす要素となりつつあるとし、「トランスフォーメーション」(X)とあわせて、「サステナビリティ・ トランスフォーメーション」(SX)の実践の重要性及びSXの実現に向けた具体的な取組、ガイダンスについて述べている。 SXとは、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期化」させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革(トランスフォーメーション)を指している。 社会のサステナビリティとは、持続可能な社会に対する要請への対応である。 企業のサステナビリティとは、企業が長期的かつ持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の維持・強化である。 「同期化」とは、社会の持続可能性に資する長期的な価値提供を行うことを通じて、社会の持続可能性の向上を図るとともに、自社の長期的かつ持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の向上と更なる価値創出へとつなげていくことを意味している。 「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」がいわば「理論編」であり、「実践編」たる「価値協創ガイダンス2.0(2022年) 」、「人材版伊藤レポート2.0(2022年)」、「人的資本可視化指針(2022年)」などと併せて参照することで、これらの レポート・フレームワーク全体を、一体的かつ整合的に活用することが推奨されるとしている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)の主な内容 SXを実現するための具体的な取組として、次の事項について述べている。 1 社会のサステナビリティを踏まえた目指す姿の明確化 企業には、社会への長期的かつ持続的な価値提供に向けて判断軸となる価値観を明確化し、それに基づき、自社の事業活動を通じて解決する重要課題を特定することが求められる。 その上で、それら自社の価値観や重要課題とも整合的な形で、どのように社会に価値を提供していくか、それによってどのように長期的な価値向上を達成するかという、目指す姿を設定することが重要である。 2 目指す姿に基づく長期価値創造を実現するための戦略の構築 企業には、目指す姿に基づき具体的にどのように価値創造を実現していくか、 企業全体の長期価値創造の在り方を示す長期戦略を構築するとともに、 その具体化に向けた短・中・長期別の戦略を組み立てることが求められる。 3 長期価値創造を実効的に推進するためのKPI・ガバナンスと、実質的な対話を通じた更なる磨き上げ 長期的かつ持続的な企業価値向上を実効的に推進するためには、KPIの設定とガバナンス体制の整備が有効である。 これらを通じて、企業には、目指す姿とそれに基づく戦略を着実に構築・実行するとともに、外部環境の変化等に応じて適切な見直しを図ることが求められる。   Ⅲ 価値協創ガイダンス2.0 現行価値協創ガイダンスを「価値協創ガイダンス2.0」として改訂するものである。改訂により、SX実現のフレームワークとしての位置づけの明確化が行われている。 改訂の主なポイントは次のとおりである。   Ⅳ SXの加速に向けた更なる検討課題 SXの加速に向けた更なる検討課題として、次の事項が記載されている。 (了)

#阿部 光成
2022/09/01
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