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固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第14回】「不動産取得税の課税標準である「固定資産の適正な時価」が何かについて争われた判例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第14回】 「不動産取得税の課税標準である「固定資産の適正な時価」が何かについて争われた判例」   税理士 菅野 真美   ▷不動産取得税の価格について不服を申し出ることができる人は 不動産取得税は、不動産を取得した者に対して、不動産の価格を課税標準として、その不動産所在の道府県が課する税金である(地方税法第73条の2、第73条の13)。この価格とは、適正な時価とされ(地方税法第73条第1号)、課税標準となる不動産の価格は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、その価格に基づく(地方税法第73条の21第1項)。 固定資産課税台帳の登録価格(以下「固定資産税評価額」という)について不服がある場合は、固定資産所在地の市町村の固定資産評価審査委員会への審査の申出をしなければならないが、この審査の申出ができるのは、その年1月1日において不動産を取得した者に限られ、年の中途において不動産を売買により購入した者は、固定資産評価審査委員会への審査の申出はできない。 不動産取得税に不服がある場合は、納税者は審査請求をすることができるが、不動産取得税の取得者が、固定資産税評価額より時価が低いとして減額を求める訴訟をしても否定される場合が多い(【第13回】参照)。不動産取得税の課税標準を固定資産税評価額としたのは、固定資産評価基準に基づいた登録価格により画一的に処理をすることにより、膨大な徴税事務コストやトラブルを低減するためと考えられる。しかし、明らかに固定資産税評価額が時価よりも高い場合でも、納税者の主張は認められないのだろうか。 今回は、大量に売れ残った傾斜地の別荘についての不動産取得税の課税標準となる不動産の価額について争われた事案を検討する。   ▷どのような事案か 不動産の固定資産税評価額よりも時価が低いため、時価を超える部分の不動産取得税を取り消すことができるか否かを争った事案である。 問題となった別荘地は、別荘地として開発して30年以上経過しても、総区画数の5%程度しか利用されておらず、その他の土地は山林同様の状態にある土地であったが、固定資産税評価額の算定は、修正前も修正後も通常の別荘地の評価額に基づいて調整したものであった。 時系列に並べると次のようになる。   ▷事案の争点 争点は、2つあり、1つは、不動産取得税の賦課決定について、知事に対する訴えが適法か否かである。もう1つは固定資産税評価額が適正な時価とは言えないにもかかわらず、固定資産課税台帳の登録価格に基づく賦課決定は違法であるか否かの点であるが、本稿においては後者に絞って地裁から最高裁までの流れを検討する。   ▷地裁の判断 地裁は、次のような理由からXの請求を棄却した。   ▷高裁の判断 地裁の判決に不服なXが控訴した。 高裁は、原判決を変更し、違法と認められる限度で賦課決定を取り消すという、不動産取得税の裁判では画期的な判断を下した。具体的な判決理由は次のとおりである。   ▷最高裁の判断 高裁の判決に不服な行政庁Yが上告した。 最高裁は、以下のような理由から、高裁の判決のうち敗訴部分を取り消して、その部分について東京高等裁判所に差し戻すとした。   ▷まとめ このように、本件においては、固定資産税評価額による課税標準が高裁により覆され、最高裁においては、高裁が判断した評価方法は独自の評価方法として否決されたが、急傾斜地であることによる評価減等を考慮すべきとして高裁に差し戻したから、行政庁Yが決定した固定資産税評価額を是認したものでもない。 高裁はXの主張を認めたが、国家としては独自の方法を不動産取得税の評価額として認めることは弊害が大きいので、その部分は認めない。しかし、裁判の過程で固定資産税評価額の算定方法に杜撰な部分も見受けられたことから、現行の評価基準を認めながら、個別に問題がある部分は調整せよというところを落としどころとした。 最高裁の立場を考えると判決は合格点なのだろう。 (了)

#No. 458(掲載号)
#菅野 真美
2022/02/24

〔具体事例から読み取る〕“強い”会社の仕組みづくりQ&A 【第1回】「なぜ内部統制報告制度を導入しても不正や会計上の誤りはなくならないのか」

〔具体事例から読み取る〕 “強い"会社の仕組みづくりQ&A 【第1回】 「なぜ内部統制報告制度を導入しても 不正や会計上の誤りはなくならないのか」 米国公認会計士・公認内部監査人 打田 昌行   ◆◇ 解 説 ◇◆ 次の3つの問いかけに対し、自社としてどこまで自信を以て応ずることができるだろうか。他社の多くの失敗や躓きに隠された教訓から学びを得ることが大切である。   1 その①:「直訴」の実践的な仕組みが、使いやすく正しく機能しているか ここでいう「直訴」とは、組織上の権限と責任を持つ窓口に、違法あるいは反倫理的な行為について知り得たことを直接通報することをいう。内部統制の仕組みでいえば、内部通報制度がその典型といえる。よく似た仕組みとして、ほかにも経営者(社長)に対し、全社員が電子メールで直接に、相談や通報をできるよう工夫をしている会社もある。 実際に、通報制度によって不正や不祥事が早期に把握され、効果を上げる場面も数多く見聞きする。正しく使えば、誠実な従業員の通報によって早期に不正や不祥事の芽を摘み取ることができる。しかし他方で、せっかく経営者に直接実情を訴えられる仕組みがあっても、実際には使い勝手が良くないために、運用されずお飾りとなってしまっているケースも耳にする。 冒頭の品質検査不正事件に関し、三菱電機株式会社の杉山社長(発覚当時)は、記者会見で社員の通報による情報の迅速な収集について問われ、記者に次のように応じている。 (※) 三菱電機株式会社「鉄道車両用空調装置等の不適切検査/当社の品質風土改革に向けた取り組みに関する会見 質疑応答(報道機関)」7頁より一部引用。 制度を作っただけで安心せず、使い手の使いやすさをしっかりと考慮することが大切だ。次のことを十分加味し、制度の実践をしなければ、効果が半減してしまうことに注意すべきである。 (1) 制度利用の目的を周知して心理的な壁を取り除く 通報すると会社の利益が損なわれ、上司にも迷惑が及ぶと考え、通報をためらう従業員がいる。これではせっかくの制度の趣旨を活かすことはできない。通報制度の趣旨を十分に社内に周知することが肝要である。それに加え、通報には匿名を認め、制度を使う社員の心理的な抵抗感を取り除く工夫も求められる。 (2) 通報の秘匿性を確保する メールによる通報時は、システム上で発信者の特定ができないようにして通報者の秘匿性を確保し、使いやすさを考慮することも大切である。 (3) 通報者の利益を必ず守る約束をする 顕名による通報の場合、会社が通報者に対し不利益を与えないことを約する必要がある。せっかくの制度も社員からの信頼がなければ、いきなり外部のマスコミや監査法人に通報され、会社のリスク管理責任が問われかねない。通報内容が会社の方針等に反することを理由に不利益を与えれば、通報する者はなくなり、制度は形骸化するばかりとなる。 (4) 通報に基づき改善結果をフィードバックする 正しい通報の結果、改善を施した場合はその成果を社内全体に、あるいは通報者(顕名の場合のみ)に必ずフィードバックして制度自体の信頼性を高める努力をすべきである。 (5) 制度の悪用者を厳しく処罰する 他方、偽りの通報で他者を陥れようと企む者は、厳しく処罰する必要がある。内部通報制度は、ナチスや旧社会主義の東欧諸国が用いた密告とは性格を全く異にする。通報制度では、通報内容の真実性が求められ、他者を悪意により陥れる手段では決してない。 (6) リニエンシー制度を併用する リニエンシー制度を用い、複数による不正にも効果的に対応することができる。自らが関わった(複数人による)不正を自主的に通報した者には、懲戒処分などの社内処分の減免をする仕組みをリニエンシー制度といい、これを通報制度と併設して使うことも望ましいと考えられる。   2 その②:教育こそ内部統制報告制度運用のための礎と考えているか 内部統制に関する社員教育を継続することは、口にするのは簡単だが実際に行うとなると難しい。なぜなら教育に対する投資は、一定のコストを要する反面、数値など客観的な物差しによって成果が計りにくいからである。とはいえ、経営者はじめ従業員の意識や日頃の行動に強い影響をもたらし、不正や不祥事を許さない企業風土を培うために、やはり教育の継続を欠かすことができない。 現状を追認するコトナカレ主義、不正や不祥事を見て見ぬふりをする意識や行動様式は、長年にわたり繰り返される因習や行動パターンによって形成されてゆくものである。こうした組織の垢を新陳代謝によって取り払うには、根気強い教育研修に頼らざるを得ない。実際に会社が取り組む次の事例を参考に挙げることができる。 (1) 経営層が自分の言葉でコンプライアンスの大切さを伝える コンプライアンスに関する社内研修は、経営層が直接従業員に訴える場とする。年度初め、期中、期末、予算・決算の発表、節目に応じて定期的に経営層が従業員に向けてコンプライアンスに関するメッセージを送る機会を確保する。メッセージは、経営層自らの言葉で、分かりやすく伝える。間違ってもマスコミや報道が伝える、ありきたりな標語を使うことは避けるべきである。 (2) 感染症の流行を制度定着のチャンスと考える コスト、時間、機会のどれを考慮しても、コロナ禍の今こそ、教育研修に取り組む絶好のチャンスとなり得る。感染症の流行に端を発したテレワークが浸透するにつれて、オンラインによる教育研修を充実させる会社が増えている。物理的な身体の移動はなく、海外や地方などいかに遠方でも旅費等のコストを要せず、研修室や会議室のイスの数に制約されずに多くの参加者が一度に研修を行うことができる。 (3) 研修内容は自社や他社の失敗事例を大いに活用する 研修の内容は、マスコミで報道された他社の事例はもちろんのこと、自社の監査で指摘された案件、場合によっては社内の社内調査委員会や第三者委員会で公知となった不正や不適切事例でも研修材料として用いることが非常に有効である。   3 その③:常に第三者の眼に晒される機会を作っているか 昨今、会社の不正や不適切な会計処理を巡り、調査のために第三者委員会を設ける件数が増大している。モノ言う株主が増加し、ますます企業経営に対する説明責任が厳しく問われている証拠でもある。内部統制上で不備や問題があれば、改善に加え社会に対する説明責任が厳しく求められる。そのため、企業活動を第三者の眼に晒す努力をすれば、広く公平性や客観性、信頼性を得ることができるのも確かである。 例えば、前述の通報制度も、通報窓口を社内に設置し、社外の弁護士事務所にその運用を委託することで、通報する者が持つ心理的なプレッシャーを和らげる効果が得られ、かつ制度の客観性や信頼性も確保できる。 品質管理問題の場合でいえば、品質に関する外部専門家による検証や検査を定期的に実施し、社内ルールが遵守されていることを客観的に検証することが重要となる。ただし検証や検査は各グループ会社単位では行わず、必ず本社主導でグループの壁を越えて徹底的に実施することが、ものづくりのプライドを守る意識の醸成に繋がるはずである。 *  *  * 前述した三菱電機株式会社の社長が引責辞任にあたり、報道機関に次のように応じた。あらためて、内部統制が取り組むべき問題の根深さを実感する。 (※) 前掲「質疑応答」13頁より一部引用。 (了)

#No. 458(掲載号)
#打田 昌行
2022/02/24

税理士事務所の労務管理Q&A 【第6回】「在宅勤務導入に当たっての留意点②(賃金管理)」

税理士事務所の労務管理Q&A 【第6回】 「在宅勤務導入に当たっての留意点②(賃金管理)」   特定社会保険労務士 佐竹 康男   今回は、在宅勤務(テレワーク)における賃金(基本給、通勤手当等の手当)の取扱いについて解説します。 * * 解 説 * * 1 在宅勤務における賃金 通常、在宅勤務における賃金は、基本給は在宅勤務者も変更せず、通勤手当は、月給者の場合、在宅勤務の頻度によって、通勤定期代相当額(定額)か実費で支給するかを決めることになります。 (1) 基本給及び諸手当 在宅勤務においても、基本給及び諸手当(通勤手当については(2)を参照)の減額は、不利益変更になるためできません。 ただし、在宅勤務により、通常の勤務より労働時間が短くなるような場合に、その時間に応じて、基本給を変更することは可能です。 (2) 通勤手当 在宅勤務を月単位で実施し、1日も事務所に出勤しない場合は、就業規則を変更することで定額支給をしなくても問題ありません(〈就業規則規定例〉参照)。 週単位等の場合は、事務所に出勤する日もあることから、その往復に要する費用を実費で支払うことで合理性が満たせると考えられます。ただし、その出勤日の勤務地が自宅であるか事務所であるかにより、社会保険料等を算定する場合の賃金に該当するか否かが変わってきます(後述の「3 社会保険料等の算定基礎に係る在宅勤務(テレワーク)における交通費の取扱い」参照)。 また、在宅勤務の導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなる、支給方法が月額から日額単位に変更される等の固定的賃金に関する変動があった場合には、標準報酬月額の随時改定の対象となる場合がありますので、健康保険と厚生年金保険に加入している事務所は注意が必要です。 〈就業規則規定例〉   2 費用の負担及び情報通信機器・ソフトウェア等の貸与 在宅勤務に係る通信費やパソコン等の費用については、事務所負担ではなく、在宅勤務者が負担することも考えられます。労使のどちらが負担するのかをあらかじめ協議して、就業規則で定めます。 〈就業規則規定例〉   3 社会保険料等の算定基礎に係る在宅勤務(テレワーク)における交通費の取扱い 在宅勤務(テレワーク)を導入した際の交通費を社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含めるべきか否かについては、厚生労働省年金局の「業務連絡(令和3年4月1日付)」の17ページに以下のように示されています。 〈厚生労働省年金局「業務連絡(令和3年4月1日付)」より抜粋〉   4 結びに 在宅勤務の留意点として、2回にわたり、労働時間管理と賃金管理について、就業規則の規定例を示しながら説明しましたが、労使双方が共通の認識の下、労働関係法令を踏まえ労働条件を協議する必要があります。 コロナ禍への対応のみならず、働き方改革により多様な働き方が求められています。在宅勤務等導入に当たっては、その費用の一部を助成する事業(厚生労働省の助成金等)もありますので、検討してみてはいかがでしょうか。 (了)

#No. 458(掲載号)
#佐竹 康男
2022/02/24

〔相続実務への影響がよくわかる〕改正民法・不動産登記法Q&A 【第3回】「法定相続分に基づく相続登記の後に遺産分割協議が成立した場合の注意点」

〔相続実務への影響がよくわかる〕 改正民法・不動産登記法Q&A 【第3回】 「法定相続分に基づく相続登記の後に遺産分割協議が成立した場合の注意点」   司法書士 丸山 洋一郎 弁護士 松井 知行    【Q】 法定相続分に基づく相続登記の後に遺産分割協議が成立しました。この場合に気を付けることを教えてください。 【A】 遺産分割協議の結果、法定相続分を超えて所有権を取得した者は、その遺産分割の日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない。 -《解説》- 本来は、死亡 ➡ 相続人による遺産分割協議 ➡ 遺産分割に基づく相続登記 をすべきだが、相続人間のもめごと等により遺産分割協議がすぐに成立しないこともある。このような場合、相続人全員の関与がなくてもできる法定相続分の相続登記を申請することがある。 法定相続分の相続登記の申請をした場合でも相続登記の申請義務が履行されたことになる。 このような法定相続分による登記がされた後に、さらに遺産の分割があったときは、その遺産の分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は、その遺産分割の日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない(不動産登記法76条の2第2項、同法164条1項)。 相続実務に関わる税理士としては、上記の追加的義務である遺産分割に関する登記申請義務を依頼者に伝え、司法書士事務所へ取りつなぐことがこれまで以上に求められる。 追加的義務の具体的な内容は以下のとおりである。 例えば、Aが死亡し、その相続人が妻・長男・次男である場合、Aの死亡後に妻1/2、長男1/4、次男1/4の割合で法定相続分の相続登記がなされたとしよう。その後、妻・長男・次男の間で不動産を長男が単独で相続する旨の遺産分割協議が成立した。この場合、長男は遺産分割協議が成立した日から3年以内に、自身を所有権の登記名義人とするための登記を申請する必要がある。この申請は更正の登記(登記事項を訂正する登記のこと)によることができ、長男が単独ですることが可能である。 〈改正前後でどう変わるか〉 (了)

#No. 458(掲載号)
#丸山 洋一郎、松井 知行
2022/02/24

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例68】グレイステクノロジー株式会社「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」(2022.1.27)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例68】 グレイステクノロジー株式会社 「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」 (2022.1.27)   公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、グレイステクノロジー株式会社(以下「グレイステクノロジー」という)が2022年1月27日に開示した「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」である。 同社は、2021年11月9日に「特別調査委員会の設置及び2022年3月期第2四半期決算発表の延期に関するお知らせ」を開示し、「会計処理の適切性につき外部からの指摘を受け、事実経緯の確認のために社内調査、検討を進めた結果、一部の取引について、2017年3月期から2022年3月期第1四半期までの期間において、会計処理の適切性に疑念があることを認識」したため、特別調査委員会を設置するとしていた。その調査報告書を受領したのである。 なお、同社は、今回の開示と同時に「2022年3月期第2四半期報告書の提出見込みについてのお知らせ」と「2022年3月期第2四半期報告書の提出未了及び当社株式の上場廃止の見込みに関するお知らせ」を開示し、2022年2月28日に上場廃止となる予定であるとしている。 2022年3月期第2四半期報告書の提出期限を2021年11月15日から2022年1月17日に延長することが認められていたのだが(2021年11月15日開示「2022年3月期第2四半期報告書の提出期限延長申請に係る承認のお知らせ」)、2022年1月17日までに提出することができず(2022年1月14日開示「特別調査委員会による調査の継続、2022年3月期第2四半期報告書の提出遅延及び当社株式の監理銘柄(確認中)指定の見込みに関するお知らせ」)、それから休業日を除いた8日目の日にあたる2022年1月27日になっても提出できなかったからである(東京証券取引所・有価証券上場規程第601条第1項第10号、同・有価証券上場規程施行規則第601条第10項第1号)。   2 売上の前倒しから架空売上へ 調査の結果、2016年3月期以降、不正会計が行われていたことが判明したのだが、その手口は、循環取引や連結子会社外しといった手の込んだものではなく、単純な売上の前倒し計上や架空売上の計上だった。始まりは売上の前倒し計上だった。グレイステクノロジーにおいては、無理のある売上目標が設定され、それを達成するために行われるようになったのである しかし、次第にこの売上の前倒し計上だけでは売上目標を達成することが困難になったため、今度は架空売上の計上が行われるようになった。   3 自己資金による売掛金の回収偽装 不正会計の手口は単純なものであったが、その後始末、すなわち監査法人を欺くための方策は手の込んだものであった。 架空売上を計上する場合、架空の売掛金も併せて計上することになるが、それをそのまま放置しておくと、長期間回収されない売掛金ということで、貸倒引当金の計上や貸倒れの処理が必要になってしまう。それを避けるために売掛金の回収偽装が行われるようになるのだが、グレイステクノロジーにおいては、同社の役職員がストックオプションの行使により得た同社株式の売却益が原資とされた。なお、その株式の売却益は、架空売上により株価が上がったため、得られたものである(不正会計で市場を欺き、それにより得られた利益でさらに不正会計を)。 文中の「A氏」とは、同社の創業者であり、代表取締役会長だった松村幸治氏(以下「松村氏」という)だが、記載のとおり、2021年4月13日に他界している(2021年4月14日開示「代表取締役会長の逝去および異動に関するお知らせ」)。 同社の架空の売掛金への対処方法は、回収を偽装するだけにとどまらなかった。どこから入金するのかについても注意を払っていた。監査法人に怪しまれないように、わざわざ顧客の本店のある地域まで行き、そこにある銀行から入金していたのである。   4 様々な偽造 架空売上の計上の後始末としては、文書等の偽造も行われる。グレイステクノロジーにおいても、監査法人から架空の売掛金の相手先へと送付された残高確認状を、「弊社の監査法人からの連絡で、今年の残高確認(売掛金書類)を間違えて発送してしまったことが判明致しました。大変恐縮なのですが、封を開けないまま、私に戻して頂けますと非常にありがたく存じます。」などと言って引き取り、回答を記入した上で、偽造した社印を押印して、監査法人に送付するといったことが行われていた。 そうした文書偽造は、これまでの架空売上の計上の事例でも見られたのだが、同社では、さらに顧客担当者のメールも偽造されていた。 また、次のような方法によるメールの偽造も行われていた。 監査法人は、同社の取引に対して強い疑念を抱いていたようである。調査報告書の記載からも、慎重な監査手続が行われていたことがうかがえる。しかし、グレイステクノロジーのあの手この手の嘘により、残念ながら欺かれてしまった。その無念は察するに余りある。   5 なぜここまで? グレイステクノロジーは、なぜここまでしたのだろうか(その知恵とエネルギーを正しい方向に用いればよかったのにと思えてくるのだが)。根本原因は松村氏にある。 社外取締役や社外監査役に公認会計士や弁護士が入っていれば(少なくともまともな専門家の方が入っていれば)、牽制できたのかもしれないが、当然、こうした松村氏がそうした専門家を役員に入れるはずがなく、自分の言うことを聞く者だけを役員に据えていた。 松村氏は、会社の成長のために同社を上場させたはずだが、上場後は投資家からの評価を得ることに囚われるようになってしまったようである。松村氏は会議の場で以下のような発言をしていた。 本来、きちんと事業を行い、会社が成長し、その結果として投資家から評価されることになるはずだが、同社の場合、投資家から評価されることだけが目的となり、成長を偽っていた。松村氏の急死の原因には、ストレスもあるのかもしれない。まったく同情はできないが、哀れではある。 松村氏は、決して特異な経営者ではない。むしろ、上場後、本来の目的を忘れ、数字に取り憑かれて、というのは、よくあるパターンかもしれない。同様な経営者は他に存在しているかもしれないし、今後も現れるはずである。 (了)

#No. 458(掲載号)
#鈴木 広樹
2022/02/24

《速報解説》 会計士協会、「監査人のためのIT教育カリキュラム」の改正を公表~IT環境における監査の実施能力の修得やCPE、実務補習においての利用を想定~

《速報解説》 会計士協会、「監査人のためのIT教育カリキュラム」の改正を公表 ~IT環境における監査の実施能力の修得やCPE、実務補習においての利用を想定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年2月17日付けで(ホームページ掲載日は2022年2月21日)、日本公認会計士協会は、「IT委員会研究報告第27号「監査人のためのIT教育カリキュラム」の改正」を公表した。 これは、IT委員会研究報告第57号「ITの利用の理解並びにITの利用から生じるリスクの識別及び対応に関する監査人の手続に係るQ&A」を受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 目的 監査人が活躍できる業務分野において、ITの役割を無視することはできない。 監査人は、ITと情報システムの利用についての能力を保持する必要があり、その能力についての内容を明確にしておく必要がある。 研究報告は、監査事務所が、IT環境において監査を実施する公認会計士の育成を図る上で参考となるIT教育カリキュラムの例を記載している。 研究報告は、次のような利用を想定している。 2 構成 監査人に必要なITに関する一般的知識と技能について、カリキュラムⅠとカリキュラムⅡの2段階に分けて記述している。 3 カリキュラムⅠ カリキュラムⅠは、次の5つの分野(大分類)から構成されている。 各分野について詳細に説明されている。 4 カリキュラムⅡ カリキュラムⅡは、次の4つの分野(大分類)から構成されている。 各分野について詳細に説明されている。 (了)

#No. 457(掲載号)
#阿部 光成
2022/02/22

プロフェッションジャーナル No.457が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年2月17日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.457を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/02/17

日本の企業税制 【第100回】「第1の柱の利益Aに係る「ネクサスとソースルールに関するモデルルール案」の公表」

日本の企業税制 【第100回】 「第1の柱の利益Aに係る 「ネクサスとソースルールに関するモデルルール案」の公表」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   OECD/G20包摂的枠組みは、2月4日、第1の柱の利益Aに係る「ネクサスとソースルールに関するモデルルール案」を公表した。今回のモデルルール案に対するコメントの募集締切りは2月18日前となっている。 第1の柱に関しては、昨年12月に公表された第2の柱のモデルルール(前回参照)のように、最終版が決定されたわけではなく、制度のパーツごとにモデルルール案が策定されコンサルテーションに順次付されていく途上にある。今回のモデルルール案に続き、課税ベース、二重課税除去、セグメンテーションなどに関するモデルルール案の提示も順次行われる見込みである。   〇ネクサス 「ネクサス」とは法域としての課税権の有無、すなわち利益の配分を受けることができるかどうかを判定する基準である。従来の国際課税の原則では恒久的施設(PE)の存在の有無が決め手となっていたのであるが、第1の柱は、恒久的施設がなくとも売上の生じている市場国に利益を配分するという新しい考え方に基づくものであることから新しい基準が必要となったのである。 ネクサスに関しては、対象となる多国籍企業グループの一定期間の売上高が100万ユーロ(GDPが400億ユーロ未満の法域においては25万ユーロ)以上の法域に利益Aの配分が行われる。一定期間が12ヶ月に満たない場合や12ヶ月を超える場合には、それに比例して売上高の基準を調整することとされている。   〇ソースルール ソースルールとは、上記のネクサスの有無を判定するとともに、どの法域にどれだけの利益を配分するのかを割り出すため、売上の源泉地(ソース)を特定するためのルールである。 ソースルールは、実務上の関心が非常に高い事項であり、今回のルール案でも、別紙(Schedule A)にて詳細な設計が提示されている。 (1) 取引類型 それぞれの取引ごとに(transaction-by-transaction basis)、その主たる取引の実質的な性格に応じて次の7種類の取引類型に分け、それぞれに応じた配分方法(Reliable Method)が提示されている。なお、付随的取引は主たる取引の分類に準じることとされている。 (2) 配分方法 配分方法は、「信頼できる指標(Reliable Indicator)」によって決定されることが原則である。 例えば完成品の販売(直販)であれば最終消費者への配送宛先あるいは最終消費者への販売を行う店頭の場所が「信頼できる指標」となる。 完成品の販売であっても、独立販社を経由した販売の場合には、「信頼できる指標」は、原則として、直販の場合と同じく、最終消費者への配送宛先となるが、独立販社が多国籍企業グループとの間の契約により、独立販社の所在する法域でのみ販売することが認められている場合や、独立販社が完成品の最終消費者への配送宛先の法域に所在すると推定することが合理的な場合には、独立販社の所在地をもって「信頼できる指標」とすることができる。 また、部品の販売の場合には、原則として、部品が組み込まれた完成品の配送宛先が「信頼できる指標」となる。 ただし、上記の部品の販売のように完成品のメーカーに問い合わせなければ完成品の配送宛先は判明できないが、そのような情報を確実に得られるかどうかはわからない。そこで、多国籍企業グループが「信頼できる指標」を見いだすのに合理的な手段(Reasonable Steps)を講じたにもかかわらず、「信頼できる指標」により源泉地の特定が困難であると結論付けられる場合には、最終消費支出額や従業員数等などのマクロ指標に基づいた配分キー(Allocation Key)を用いることが許容され、さらに適切な配分キーが見いだせない場合には、国連貿易開発会議が公表している最終消費支出額やGDP比によって按分するグローバル配分キー(Global Allocation Key)という最終手段も用意されている。 (了)

#No. 457(掲載号)
#小畑 良晴
2022/02/17

〔令和4年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】「「研究開発税制の見直し」「大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直しと延長」」

〔令和4年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】 「「研究開発税制の見直し」 「大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直しと延長」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和3年度税制改正における改正事項を中心として、令和4年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。第2回は「デジタルトランスフォーメーション (DX) 投資促進税制の創設」、「カーボンニュートラル投資促進税制の創設」及び「繰越欠損金の控除上限の特例の創設」について解説した。 第3回は「研究開発税制の見直し」及び「大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直しと延長」について解説する。   1 研究開発税制の見直し 研究開発税制とは、青色申告書を提出している法人において試験研究費が発生する場合に、その金額の一定割合について税額控除が認められる制度である。 令和3年3月期までは、基本の税額控除である「総額型(中小企業者等においては中小企業技術基盤強化税制)」とその上乗せ措置、及び「オープンイノベーション型」が設けられていた。 【令和3年3月期における研究開発税制のイメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 これが令和3年度税制改正によって見直されており、その主なポイントは次の通りである。 ① 「一般型(旧総額型)」の税額控除率の見直し(令和5年3月31日まで) 「総額型」を「一般型」に変更し、研究開発投資の増加インセンティブを強化するため、税額控除率の見直しが行われている。試験研究費の増減割合に応じて税額控除率が変動するが、改正前は、増加率8%を基準点として税額控除率が変動した。改正後は増加率9.4%が基準点となるため、9.4%を超えて試験研究費を増加させるほど税額控除率が上昇することになる。 税額控除率の下限が6%から2%に引き下げられたが、中小企業者等においては変化はない。 ② 「一般型(旧総額型)」の控除限度額の上乗せの見直し(令和5年3月31日まで) 「一般型」の控除限度額は法人税額の25%となっているが、売上高試験研究費割合(平均売上高に対する試験研究費の割合)が10%を超える場合には、その割合に応じて控除限度額が上乗せ(法人税額の0~10%)されることとなっていた。この上乗せ措置が2年間延長されている。 また、中小企業者等においては、試験研究費増加率が8%を超える場合は、控除限度額に法人税額の10%を上乗せする措置が設けられていた。これが、試験研究費増加率が9.4%を超える場合に適用されることと改正された。 ③ 「一般型(旧総額型)」の控除限度額上乗せの追加(令和5年3月31日まで) 「一般型」「中小企業技術基盤強化税制」ともに、基準年度(令和2年2月1日前に最後に終了した事業年度)と比較して、売上高が2%以上減少しながらも試験研究費を増加させた場合は、税額控除額の上限に5%上乗せすることとされた。 ④ 「オープンイノベーション型」の拡充 「オープンイノベーション型」の対象となる研究の範囲が拡大されたり、事務手続の運用改善が行われたりしている。主な改正のポイントは次の通りである。 ⑤ 試験研究費の範囲の拡大 次の通り試験研究費の範囲が拡大されている。 以上より、令和4年3月期における研究開発税制のイメージは下記となる。 【令和4年3月期における研究開発税制のイメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2 大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直しと延長 所得が増加しているにもかかわらず、賃上げや設備投資に消極的である大企業については、研究開発税制等の税額控除が適用できない制度が設けられている。令和3年度税制改正において、対象となる税額控除に「デジタルトランスフォーメーション (DX) 投資促進税制」、「カーボンニュートラル投資促進税制」が追加された上で、令和6年3月期まで3年間延長されている。 この改正は令和3年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるので、令和4年3月期決算申告にも適用される。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)

#No. 457(掲載号)
#新名 貴則
2022/02/17

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第35回】「業績連動給与の減額可否」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第35回】 「業績連動給与の減額可否」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 業績連動給与の概要 「業績連動給与」とは、利益の状況・株式の市場価格の状況を示す指標等、内国法人の業績を示す指標を基礎として算定される額の金銭による給与、及び当該業績を基礎として算定される数の株式や新株予約権による給与等をいう(法法34⑤)。この業績連動給与の損金算入制度は、法人が役員に中長期的なインセンティブ効果を持たせること等を目的として、多様な形態の給与を支給する事例が増加しつつある背景と、旧・利益連動給与との不整合を整理するために改正されたものである(※1)。 (※1) 藤山智博他編『平成29年版 改正税法のすべて』(大蔵財務協会、2017)301頁。旧・利益連動給与では計算根拠として認められていなかった株式の市場価格の状況を示す指標、そして売上高の状況を示す指標も算定指標として追加されたことが大きな特徴といえる。 業績連動給与の支給額を損金算入するためには、内国法人である非同族会社等(※2)が業務執行役員に対して支給する業績連動給与で、一定の要件を全て満たすことが必要となるが(法法34①三)、最も重要な要件はその算定方法を有価証券報告書にて開示することだろう。 (※2) 同族会社のうち、同族会社以外の法人との間に当該法人による完全支配関係があるものも対象となる。 具体的な算定方法としては、「交付される金銭の額」、「株式・新株予約権の数」及び「交付される新株予約権の数のうち無償で取得・消滅する数」の算定方法が、 を基礎とした客観的なものであることが必要となる(法法34①三イ)。 なお、具体的な利益の指標について法人税法施行令69条10項に定めがあり、経済産業省「『攻めの経営』を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~(2021年6月時点版)(以下、「導入の手引き」という)」83頁に分かりやすく図示されているため以下に引用する。 【参考】一般的に用いられる利益指標の例 注:その他、利益に一定の調整を加えた「修正ROE」、「平準化EBITDA」や「潜在株式調整後EPS」なども対象に含まれる。 企業は、これら一定の指標に準拠し、有価証券報告書に記載する算定方法をある程度自由に定めていると考えられる(※3)。 (※3) 金融庁「記述情報の開示の好事例集2020」のうち、「7.『役員の報酬等』の開示例」にて、参考となる事例が揃っている。なお、2022年2月4日に更新された2021年版は、本稿公開時点で「7.『役員の報酬等』の開示例」が示されていない。   (2) 業績連動給与の減額可否 ここで、企業があらかじめ有価証券報告書で業績連動給与の算定方法について開示した後、支給する役員報酬額を任意に減額できるのか否かが問題となる。というのも、企業の業績悪化や対象役員の病気・不祥事等の個別的な事情等から、企業が算定方法開示済みの報酬の減額を検討するケースも考えられるからだ。 法人税法施行令69条が用意する「臨時改定事由」及び「業績悪化改定事由」は、業績連動給与について定める法人税法34条1項3号をその対象としていないため、業績連動給与はこれらの事由による改定ができない。 ここで、旧・利益連動給与の損金算入性について争点となった国税不服審判所令和元年6月7日裁決があるのでその概要を紹介する(※4)。 (※4) 裁決事例集未登載、TAINS:F0-2-912。 本件は、審査請求人たる納税者が有価証券報告書に記載した算定方法として、考課係数を採用し、「上限を1.0にする」、「マイナス考課により、考課係数を1.0未満とすることができる」、「マイナス考課については、取締役社長が算定する」と示していたのみであり、代表取締役社長に考課係数1.0を適用していなかったことで問題となった事例である。 この事例の意義は、「マイナス考課とするか否かも含めて、事後的に取締役社長が決定」していたという事実認定がなされた上で、有価証券報告書に示す算定方法は「個々の業務執行役員の給与の支給時期・支給額の決定に恣意が働かないような算定方法、すなわち、当該算定方法に利益に関する指標等を当てはめさえすれば個々の業務執行役員に対して支払われるべき利益連動給与の額が自動的に算出される算定方法」である必要があると示した点にある。 上記事例は業績連動給与として改正される前の論点ではあるが、上記赤字「客観的なもの」の意義について判断に迷い、有価証券報告書にどこまで記載すべきか悩むこともあり得る現状において、参考となる事例であるといえる。「導入の手引き」Q71において、社長や役員の裁量により報酬額を確定するような報酬は、業績連動給与として損金算入できない旨の記載があることからも、有価証券報告書に厳密に算定方法を記載しなければならないことが分かる。 同時に、「導入の手引き」Q73では、業績連動給与を減額する場合について「その対象となる行為、減額する額又は割合などの算定方法をあらかじめ定めて開示していれば損金算入ができると考えられます」とも記載があるが、上記裁決例が示唆する通り、業績連動給与を減額するためには、「指標等を当てはめさえすれば自動的に算出」できる水準で算定方法を明らかにしておく必要があるだろう。 (了)

#No. 457(掲載号)
#中尾 隼大
2022/02/17
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